2020年4月7日
当コーナーでは,暮らしの文化の旬な人やイベントを紹介していきます。
※暮らしの文化とは,文化芸術基本法第12条に記載されている,茶道・華道・書道・食文化などの「生活文化」と,囲碁・将棋などの「国民娯楽」を始め,私たちの暮らしと係りを持っている様々な文化を指します。
昨年,11月,いけばな発祥の地「六角堂」を望む,京都・池坊会館を会場にして「Ikenobo花の甲子園-今 咲かせよう,君の花」の全国大会が開催されました。本大会は2009年から始まり,池坊いけばなを実習する高等学校の生徒であれば誰でも参加できるものです。計147校が参加した15地区大会を通過した高等学校の生徒が一堂に会し,日頃の稽古で積み重ねた研鑽を作品として表現しました。大会前日には,出場者と各学校の顧問や池坊の教授者たちが参加する懇親会も開催され,花を通して御縁を結びました。
優勝校を囲んだ参加校の集合写真
「花の甲子園」とは
「花の甲子園」は3人1組で課題に沿って花をいける公開コンクール。昨年の全国大会の発表課題は「私たちの故郷(ふるさと)」。それぞれが用意した持ち込み花材1種と当日発表される十数種類の指定花材を用いて,制限時間30分(1人10分ずつのリレー形式)でいけ込みを行います。いけ込み後は,学校ごとに3分間のプレゼンテーションの時間が与えられ,作品に込めた思いを発表します。全校のプレゼンテーションのあと,審査員による最終審査を経て,優勝校が決まります。
いけ込み開始の合図で一斉に,手際よく花を扱う高校生たち。使用できる花ばさみは一丁。仲間と声を掛け合いながら,作品を形づくっていきます。花を見つめるまなざしは真っすぐで,大会にかける思いが伝わると同時に,何より花が好きだと,花をいけるのが好きだという気持ちが伝わってきます。制限時間があるためにスピードを要求されながらも,高校生の作業スペースは整理整頓され,作品だけでなく花をいける姿そのものが美しく感じられました。
いけこみの様子
プレゼンテーションでは,課題である「私たちの故郷」について,それぞれの学校が自分たちの作品に込めた思いを故郷の祭りや古典,郷土食などの紹介を交えながら,花器からあふれだす「心の風景」を説明しました。
プレゼンテーションの様子
審査の結果,全国から集まった15校の中から,2019年度「花の甲子園」の優勝校に選ばれたのは岐阜県立大垣東高等学校でした(なお準優勝には群馬県立桐生女子高等学校,3位には文化学園長野高等学校,4位には安田女子高等学校,5位には徳島県立徳島北高等学校,敢闘賞が北海道江別高等学校,秋田県立湯沢翔北高等学校,淑徳SC高等部,新潟県立中条高等学校,富山県立福岡高等学校,静岡県立御殿場南高等学校,愛知県立豊田北高等学校,京都女子高等学校,佐賀県立唐津南高等学校,熊本県立熊本高等学校に贈られました)。
今回,ぶんかるで2019年度「花の甲子園」を紹介するに当たり,優勝校に選ばれた岐阜県立大垣東高等学校の出場者3名が寄稿くださいましたので,以下に紹介します。
大垣は豊かな地下水による湧き水の恵みから「水の都」と呼ばれています。全国大会では,その「水」を表現するために,地元の水辺に生える葦(アシ)を持ち込み花材にしました。みんなで何度も話し合いながら練習を重ねていく中で,花の表情や個性をどのように生かそうか,そして,いける花にどんな思いを込めたいのかと深く考えるようになりました。花と向き合い,そして自分と向き合う中で,徐々に自分たちの思いを込めて作品が作れるようになりました。大会では自分たちの思いが,小さな花を通して観る人に伝えることができたことに感動し,涙があふれました。
いけばなを通して,どんな小さなお花にも生き物としての命があり,その命の尊さを感じるようになりました。今年は,ドイツの高校生に華道を教える機会があり,Ikebanaの魅力に改めて気づきました。是非海外の方にも日本の伝統文化であるいけばなの魅力を伝えていきたいです。これからも日々のお稽古を重ね,観る人を感動させられるような花をいけたいです。