2018年1月4日
映画の神様
映画監督 谷本佳織
昨年,私は『花は咲くか』という長編映画を撮影しました。撮休なしで8日間。予備日もないのでとにかく天気が心配でしたが,週間天気予報はずっと晴れ。「これで撮影はばっちりだ!」と浮かれた私に先輩がひそひそ声で言いました。「そんなこと言ったら映画の神様に聞こえるよ」と。そうです,私はすっかり忘れていたのです。映画の神様は気まぐれでとてもひねくれているので,浮かれたり気を抜いたりしている人に容赦なく試練を与えるということを。そして時々とんでもない御褒美をくれることを。

『花は咲くか』
(C)2018東映ビデオ (C)日高ショーコ/幻冬舎コミックス
8日間ほぼ晴れという好条件の中,無事に撮影は終わりました。奇跡のような瞬間を何度も目の当たりにし,映画の神様の存在を忘れて浮かれることもありましたが,神様は御機嫌が良かったらしく見逃してくれたようです。そんな映画の神様に愛された(と私が勝手に言っている)『花は咲くか』(配給:東映ビデオ)は,2018年2月24日全国ロードショーです!

『花は咲くか』撮影風景
(C)2018東映ビデオ (C)日高ショーコ/幻冬舎コミックス
『花は咲くか』はとても順調でしたが,ここに至るまでの道のりは順風満帆とは言い難いものでした。助監督として映画業界に入ったものの,監督になる道を模索する日々。そんな中,若手監督に短編を撮らせてくださる「ndjc: 若手映画作家育成プロジェクト」の募集を知り,藁にもすがる思いで応募したところ『あかり』という作品を撮ることができました。35mmフィルムでプロのスタッフと映画を撮る。そのときの興奮が忘れられず,「映画を撮り続けたい」と改めて思いました。

『あかり』
©2012VIPO
しかしそれ以来,またしばらく映画制作から遠ざかり焦りまくっていた私に,恩師が「とにかく店を開け続けなさい」とアドバイスしてくださいました。その言葉通り,「映画を撮りたい」とアピールを続けていたところ,『花は咲くか』のお話を頂いたのです。原作もので映画を撮れるなんて想像したこともなかったので,不思議で幸福な御縁に導かれた長編デビューだと,改めて映画の神様の存在を思わずにはいられません。先日,久々に再会した恩師に「しぶとく残ってますね」と言われたとおり,諦めなかった私に映画の神様が御褒美をくれたのだと思っています。
思いどおりにならないからこそ,映画作りは面白いのだと最近つくづく思います。映画の神様の気まぐれはこれからも続くと思いますが,うまくいかないことが続いても「これは映画の神様からの試練だ」と前向きに捉え,決して諦めず,これからもずっとずっと映画を撮り続けていきたいです。
【プロフィール】
兵庫県神戸市出身。2000年に渡米しLos Angeles City Collegeにて2年間映画制作を学ぶ。2006年から2012年まで東映芸術職研修生の助監督として東映株式会社に所属。2012年,文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」を通じて35mmで制作した短編映画『あかり』(脚本/監督)を完成。
2017年,短編映画『夢のまた夢』(「東映 presents HKT48×48人の映画監督たち」主演:秋吉優花)脚本/監督。2017年度京都映画企画市で時代劇企画『冬牡丹と人魚』が優秀賞を受賞し,現在パイロット版を制作中。
2018年2月24日(土)より初長編監督作品『花は咲くか』が池袋HUMAXシネマズほかロードショー。