2018年10月30日
明治150年 -苦難を物語る装束-
国立能楽堂 企画制作課 諸貫洋次
今年は明治維新から数えてちょうど150年。江戸時代約260年間,太平の世を誇った幕藩体制の崩壊は,扶持を得て舞台生活を送っていた当時の能役者にとって大激震となって襲ってきました。実は,国立能楽堂には,明治維新を想起させる二つの装束が所蔵されています。そのうちの一つが能装束「紅地雪持椿模様唐織」です。
能装束「紅地雪持椿模様唐織」
この唐織は,宝生流で能「道成寺」に専用で着用する装束です。もともと宝生宗家に伝来したものを,幕末から明治・大正にかけて活躍した16世宗家・宝生九郎が明治維新後の困窮のなかで,観世流の初世梅若実に手渡したものと考えられます。能「道成寺」は能の中でも特に大切に扱われる演目です。それほどの装束を手放し,能の道を諦めかけた九郎でしたが,その後流派を立て直して能界を主導,やがて梅若実,金春流の櫻間伴馬とともに明治の三名人と讃えられ,現代の能楽繁栄にまで繋がる礎を築きました。
12月と1月の国立能楽堂特別企画公演では,この装束を使用して,宝生・梅若の現当主が時代を超えて能「道成寺」を演じます。
そして,もう一方の明治維新を想起させる装束が狂言装束「黒地紋尽模様半袴」です。
狂言装束「黒地紋尽模様半袴」
この装束は,現在も続く狂言の大蔵流・和泉流で使用されている袴と違い,模様の丸紋に彩色が施されているのが特徴です。これは,明治の混乱を経て廃絶した鷺流が使用していた装束だと言われています。今回特別にこの装束を復元した袴を用いて狂言を上演します。
幕藩体制が崩壊して扶持を失い,能・狂言を演じる場を失った明治の能役者たちの困窮はいかばかりだったでしょう。あるいは道を諦め,あるいは廃絶の憂き目に遭いました。しかし,先人達は再び力を振り絞って後世に能・狂言を残し伝えてくれました。明治150年を迎える記念すべき年に,明治の先人達に想いを馳せるとともに今後の能楽の繁栄を築くべく,ゆかりの装束を活用した必見の舞台を開催します。
国立能楽堂開場35周年記念
12月/1月特別企画公演〈明治150年記念「苦難を乗り越えた能楽」〉
(住所)〒151-0051 渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
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- ・平成30年12月22日(土)午後1時開演
狂言「呼声」/能「道成寺」 - ・平成31年1月25日(金)午後6時開演
狂言「棒縛」/能「道成寺」 - 御観劇料金
- 一般 正面9,800円/脇正面7,700円/中正面6,700円
学生 脇正面5,400円/中正面4,700円 - ホームページ
-
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