2019年2月28日
五感に迫る歌舞伎の魅力
―12年ぶりの小劇場歌舞伎―
国立劇場制作部歌舞伎課 丹野秀俊
東京・半蔵門にある国立劇場では昭和41年の開場以来,多種多様なジャンルの伝統芸能を皆様にお届けしています。400年以上もの長い歴史を誇る”歌舞伎“もそのうちの一つ。通常,国立劇場の歌舞伎公演は1,500名以上を収容できる大劇場で上演していますが,今年の3月は小劇場で12年ぶりに実施します。
文楽公演でおなじみの小劇場ですが,歌舞伎公演の場合,大劇場の3分の1程度の客席数になります。俳優の熱演や,歌舞伎には欠かすことのできない“黒御簾音楽(※1)”,“ツケ(※2)”などの効果音を,より間近に感じることができます。大劇場とは趣が異なる舞台をお楽しみいただけることでしょう。
※1…客席から見て舞台の左側にある「黒御簾」という空間の中で演奏される音楽のことです。黒御簾の中では唄・三味線・太鼓・鼓・笛などが演奏されます。
※2…「ツケ板」という板に木を打ち付けて出される効果音。登場人物の動作や物音を強調する時に使用します。
3月歌舞伎公演では,赤穂浪士の討ち入り事件を題材にした劇作家・真山青果の傑作『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』と雪中に季節外れの桜が咲く幻想的な山中を舞台にした歌舞伎舞踊の大曲『積恋雪関扉』をお送りします。
《元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―》
主人公は後の六代将軍家宣となる徳川綱豊。浅野内匠頭による江戸城内での刃傷事件から一年後,桜花爛漫の綱豊の屋敷を舞台に物語が展開します。綱豊は浅野家を再興させるべきか,浪士たちに討ち入りをさせるべきか悩んでいますが,学問の師・新井勘解由との対話で討ち入りを支援したいという思いを強くします。更に綱豊は,浪士らの真意を探るため,その一人の富森助右衛門を呼び寄せますが……胸中を頑なに明かさない助右衛門との間で白熱した議論を繰り広げます。青果作品ならではの重厚な台詞の応酬,量感のある美しい舞台装置を濃密な劇場空間でお楽しみください。
徳川綱豊卿(中村扇雀)
《積恋雪関扉》
仁明天皇の崩御に乗じて天下を掌握しようとする大伴黒主は,謀反の機会を窺うため,関守の関兵衛に変装して逢坂の関に隠れ住んでいます。黒主の陰謀を背景に,良峯少将宗貞と小野小町姫の恋,黒主の野望を砕く傾城墨染(実は小町桜の精)の姿が描かれます。関兵衛・小町姫・宗貞3人の大らかな手踊り,関兵衛が盃に映る星の影を見て謀反の時節を悟る場面,互いに正体を現した黒主と墨染の激しい争い,大曲といわれる常磐津節の演奏を間近で御堪能ください。
関守関兵衛実ハ大伴黒主(尾上菊之助)
また,3月下旬からは劇場の前庭に植樹された多種多様な品種の桜が咲き誇ります。弥生の季節,歌舞伎と共に,古来日本人の”こころ”に寄り添ってきた桜の花を見物するという劇場の楽しみ方も,オススメです。歌舞伎を普段から楽しんでいただいているお客様も,観劇するのは初めてのお客様も,この機会に小劇場という凝縮された空間で,歌舞伎の持つエネルギーを体感してみてはいかがでしょうか?
国立劇場 3月歌舞伎公演(小劇場)
『元禄忠臣蔵―御浜御殿綱豊卿―』『積恋雪関扉』
(住所)〒102-8656 東京都千代田区隼町4-1
- お問合せ
- 【国立劇場チケットセンター】(午前10時~午後6時)
0570-07-9900,03-3230-3000[一部IP電話等] - 交通
- 東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅より徒歩5分,有楽町線・半蔵門線・南北線永田町駅より徒歩8分
都営バス都03(晴海埠頭-四谷駅)三宅坂下車徒歩1分 - 公演日時
- 平成31年3月3日(日)~27日(水)
12時開演 (午後3時40分終演予定) 10日(日)・11日(月)は休演
※ただし,5日(火)・9日(土)・12日(火)・16日(土)・20日(水)・23日(土)・26日(火)は12時・午後5時開演 (午後3時40分・午後8時40分終演予定) - 御観劇料
- 1等席:9,800円 2等席:6,000円
※学生・障害者の方は割引あり - ホームページ
- https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2018/3182.html
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