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平成24年12月号(No.531)

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特集

国立国会図書館のデジタル化資料の図書館等への送信について

国立国会図書館電子情報部電子情報企画課課長補佐 廣瀬信己

目次

  1. 1 図書館等への送信に係る著作権法改正の概要
  2. 2 資料デジタル化の現状
  3. 3 送信サービスの運用方針
  4. 4 今後の見通し

1. 図書館等への送信に係る著作権法改正の概要

 平成24年6月27日公布の著作権法の一部を改正する法律により,国立国会図書館は,絶版等資料に限定してではありますが,デジタル化した資料を全国の図書館等に送信し,図書館等においては,閲覧・複写サービスを実施できるようになります。
 具体的には,著作権法第31条に,新たに第3項が追加されました。同項では,まず,絶版等資料について,図書館等において閲覧サービスを行うことを目的とする場合には,国立国会図書館が,デジタル化資料を図書館等に自動公衆送信できる旨が定められました。加えて,当該図書館等においては,現行の著作権法第31条第1項に基づく複写サービスと同様に,利用者の求めに応じ,自動公衆送信された資料の一部分の複製物を作成し,一人につき一部提供することができる旨も定められました。これは,広く国民が国立国会図書館のデジタル化資料にアクセスできる環境を整備することを目的としています。

2. 資料デジタル化の現状

 国立国会図書館では,平成14年10月に,近代デジタルライブラリーhttp://kindai.ndl.go.jp/別ウィンドウが開きます)において,明治期刊行図書約3万冊のデジタル化資料を公開して以来,継続的に資料のデジタル化を進めてきました。
 国立国会図書館の所蔵資料のデジタル化実施状況は図1のとおりです。

図1 所蔵資料のデジタル化状況
図1 所蔵資料のデジタル化状況

 平成24年3月時点で,国立国会図書館の所蔵資料数約965万冊[※1]のうち,約225万冊について,デジタル化を実施済であり,おおむね全体の4分の1が完了したところです。内訳は,和図書約90万冊,和雑誌約112万冊,博士論文約14万冊,古典籍約9万冊です。
 さらに,年代別にみた場合,和図書については,明治期刊行図書,大正期刊行図書,昭和前期刊行図書のデジタル化をほぼ終え,戦後の昭和43年に受け入れたものまでデジタル化を完了しています[※2]。和雑誌については,紙質あるいは頻繁な利用により,資料の劣化損傷状況が著しい資料及び雑誌記事索引採録誌等を中心に,平成12年までに刊行されたものをデジタル化しました[※3]。博士論文については,平成3年度〜平成12年度に受け入れたものをデジタル化済です。

3. 送信サービスの運用方針

 国立国会図書館では,デジタル化資料の図書館等への送信サービスの具体的な運用方針の検討を行うため,著作権者・出版者団体,図書館等からなる「資料デジタル化及び利用に係る関係者協議会」において,調整を進めています。
 運用方針については,平成24年10月末時点において,まだ検討中ですが,主な方向性は,以下のとおりです。

(1)送信先機関
 第一に,送信先機関の範囲は,著作権法第31条第1項の適用がある図書館等です。したがって,現状,著作権法上の権利制限規定に基づき,複写サービスを実施している機関は,対象に含まれます。具体的には,公立図書館,私立図書館,大学・高等専門学校図書館等に加え,文化庁長官指定のある機関も対象です[※4]。送信を受けるためには,今後整備する登録制度の参加館として加入する必要があります。加入にあたっては,著作権法第31条第1項の適用があるかどうか,送信を受けるための機器及びネットワーク等が準備されているかどうか等の確認が必要です。

(2)送信対象資料
 第二に,送信対象資料は,一般に入手することが困難な資料に限定されます。具体的には,流通在庫(出版者,書店等の市場)がなく,かつ商業的に電子配信されていない等,一般的に図書館等において購入が困難である資料を想定しています。したがって,現状では,先述のデジタル化済の和図書約90万冊,和雑誌約112万冊,博士論文約14万冊のうち,市場で流通しているもの等を除外した上で,残りの資料が送信対象の候補となります。

(3)送信データの利用方法
 第三に,送信先機関における利用方法は,閲覧及び複写です。閲覧サービスについては,デジタル化の利点を生かし,同一資料について,国立国会図書館の所蔵部数を超える同時閲覧があった場合においても,制限を行わない方向です。また,複写サービスについて,送信先機関は,現行の著作権法第31条第1項の定めと同様に,一定のルールの下で,著作物の一部分の複製物を作成し,提供することが可能となります。
 利用の際には,現行の図書館間貸出と同様に,一定の手続を踏むことを想定しており,各図書館において,利用者からの申請に基づき,職員が利用を許可し,国立国会図書館から,技術的に保護されたコンテンツが送信される流れとなる見込みです(図2)。

図2 送信データの利用方法
図2 送信データの利用方法

4. 今後の見通し

 国立国会図書館では,先述の関係者協議会において,運用方針について合意を得た後,その合意に基づいてシステムの改修等を行うほか,送信対象資料を,入手することが困難な資料に限定するための処理等を実施します。このため,本格的に図書館等に対し,送信サービスを開始するのは,平成26年頃になる見通しです。

廣瀬信己

(氏名)廣瀬 信己  (職業)国立国会図書館電子情報部電子情報企画課課長補佐

【経歴・活動欄】
 国立国会図書館電子情報部電子情報企画課課長補佐。 平成12年国立国会図書館入館。関西館電子図書館課において,インターネット資料収集保存事業(WARP)の立ち上げに携わった後,総務部会計課,調査及び立法考査局,参議院事務局委員部等勤務を経て,平成23年10月より現職。現在は,改正著作権法によるデジタル化資料の図書館等への送信,改正国立国会図書館法によるオンライン資料の収集に向けた準備等を担当。

※1 平成23年度末時点の複本を除く古典籍、和図書、和雑誌及び博士論文の合計。ただし、博士論文については、平成13年度以降整理したものを除く。
※2 正確には、資料の排架場所によって実施対象範囲を区切ったため、昭和43年までに初巻を受入れた全集や多巻物資料等、昭和44年以降に受け入れた一部の図書もデジタル化対象となっている。
※3 出版者等と電子出版計画等についての調整を行ったものを除く。
※4 著作権法施行令第1条の3及び平成17年文化庁告示第15号に具体的な定めがある。

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