平成14年度採択事業一覧事例紹介

1.地域連携事業

授業に役立つ博物館活用ガイド作成事業

(授業に役立つ博物館活用ガイド作成実行委員会埼玉県立歴史資料館他10館)

ガイドブックの表紙と内容

新学習指導要領の完全実施に伴い,「総合的な学習の時間」での教科枠を越えた学習や選択科目の充実などに対応した博物館から学校への学習支援が必要になってきています。そのような要望に対応できる新しい学校向けのガイドブックを作成する事業を実行委員会を結成して行いました。本事業には美術・歴史・考古・民俗・自然・文学などの専門分野を持つ県立の11館が参加しました。本書は各館が収蔵する学習素材,授業に活かせる学校向けプログラムを一冊にまとめたものです。そして,埼玉県内の国公私立の小学校,中学校,高等学校,養護学校へ各校3部ずつ配布しました。
本書の体裁はA4版114ページ,オールカラーです。内容は3部構成で,第Ⅰ章は「楽しく学べる博物館の世界」と題し,各館の学校向けの案内をまとめました。続く第Ⅱ章は「活用の窓」と題し,教科学習等とタイアップした学習展開例を34本掲載しました。ここでは博物館が行う具体的な学習支援と,使用する収蔵資料を明記しました。第Ⅲ章は「学校の博物館利用について」と題し,利用上のお願いや対応状況を一覧にしました。編集に当たっては写真を多くし,各館の雰囲気,展示品や収蔵資料がどのようなものなのか,視覚に訴えるように工夫しました。
事業成果の一つは,各館の情報を共有できたことにより,複数館が連携し,教科枠を越えた学習支援体制を確立する今後の目標を持てたことです。

地域連携事業「伝えるということは?学芸員が贈る子どもたちへのメッセージ」

(愛知県博物館協会子どもと博物館研究会一宮市博物館・愛知県陶磁資料館)

「つくって遊ぼう!」実施風景

本事業は,愛知県博物館協会内に組織された子どもと博物館研究会が実施しました。研究会は様々な分野の学芸員からなり,それぞれ取り扱う資料や研究方法が異なります。そこで,各分野の学芸員が「伝えたいこと」を主眼に「子ども」を対象にしたワークショップ案を練り,さらにそれに附随したものとして,分野の連関を意識した展覧会を企画し同時開催しました。
事業を10のワークショップで構成し,4つの会場で行いました。会場の一つである一宮市博物館では,日曜日に来館した子どもたちを広く対象にし,「つくって遊ぼう!」,「さわって,感じて,作ってみよう」(陶芸),「おてがみ道場」「江戸時代の遊び」,「縄文人になろう!」,「いろんな絵の具をためしてみよう!」「おしゃべりなロープ」という毎週メニューが異なる贅沢なものでした。「縄文人になろう!」の内容をとっても,石器・布・土器・骨・干し貝やドングリを食べるなど,通常1回では実施できない規模のテーマを,そして学芸員を一堂に会して行ったと言えます。
そして,少人数を対象とするものとして,愛知県陶磁資料館で陶芸の,鳳来寺山自然科学博物館を会場に「ひな祭りのひし餅をつくろう」,豊橋市美術博物館を会場に「体験!弥生生活」を実施しました。
組織の異なる学芸員が集うことにより,連絡不足や日程の調整の難しさなど大変なこともありましたが,歴史系,自然系,美術系など,いつもは狭い分野の中で暮らしている学芸員自身への刺激にもなった事業でした。

2.先進的な展示・教育普及手法の開発事業

学校貸出用アートゲーム(鑑賞教育支援教材)の開発事業

(滋賀県立近代美術館)

アートゲーム・ボックス

滋賀県立近代美術館は,鑑賞教育における学校との連携をはかるために,アートゲームの研究および普及に取り組んでいます。アートゲームは約20年前にアメリカで開発された鑑賞教育法で,美術作品の複製図版を用いた様々なゲームを楽しむことにより,作品の細部を観察し,それを自分の言葉で表現する力を身に付けることができます。アートゲームは複製図版さえあれば,美術の専門家がいなくても手軽に鑑賞教育の授業を行えるうえ,ルールを覚えるのも簡単なので,学校現場における鑑賞教育に適した教材なのですが,残念ながら現状では,アートゲームそのものがあまり知られておらず,教師がゲーム用の図版を集めるのも困難です。そこで当館は,文化庁の平成14年度芸術拠点形成事業の一環として,学校への無料貸出しを前提としたアートゲーム用ツールの詰め合わせボックスを10セット製作し,今年4月から広く貸出しを開始いたしました。ボックスの中には古今東西の美術作品の図版300枚(著作権許諾が必要なものは取得済)と,詳細なガイドブック,ゲームのルールを説明したビデオなどが収められています。
ボックス完成後,県内の小学校,中学校,養護学校の教師を集めての使用法説明会を3月末と8月中旬の2回開催し,好感触を得ています。貸出し実績は平成15年8月末現在で21件とまだ低調ですが,利用校の感想は極めて好評であり,今後次第に口コミで広まってゆくことを期待しています。

3.諸外国との交流事業

日韓文化芸術交流史の解明と普及による芸術文化拠点形成事業

(芸術拠点形成事業大阪市実行委員会大阪歴史博物館他6館)

海外交流講演会「初期高麗青磁の様相」の様子

大阪市では,平成12年度から,博物館等の学芸員が共同して「朝鮮半島と日本の相互交流に関する総合学術調査」を実施し,韓国の学芸員等との学術交流や調査成果の普及に努めてきました。この経験を活かし,新たに大阪歴史博物館を核として美術館・東洋陶磁美術館・科学館・自然史博物館・近代美術館建設準備室・文化財協会が連携して実行委員会を形成し,本事業を実施することにしました。
事業のテーマは,総合学術調査の経験を活かし,大阪の歴史や今日的事情を考慮して「日韓文化芸術交流史の解明と普及による芸術文化拠点形成事業」としました。具体的には,(1)朝鮮時代の文化・芸術の特徴と我が国への影響,(2)高麗青磁の成立・発展と我が国への影響,(3)韓国の近代デザインと日本の3つのサブテーマを掲げ,日韓文化芸術の特質や相互交流の実態を解明しながら展覧会・講演会等を開催することを通じて,最新の成果・作品を紹介することで市民の目を拠点館に向けさせるとともに,イベント等への直接の参画を促すことを目指しました。平成14年度は,海外交流展覧会の開催に向けた現地調査を含む事前準備,講演会の開催,事業の詳細を集録した報告書の刊行を通じて成果の普及に努めました。この中で市民向けに開催した2つの講演会では,韓国の研究者から直接,高麗青磁の成立に係わる最新研究成果や韓国デザイン界の現状と作品を紹介していただき,好評でした。

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