文化審議会著作権分科会(第50回)(第17期第5回)

日時:平成30年3月5日(月)
14:00~16:30

場所:文部科学省旧庁舎6階第2講堂


議事

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)法制・基本問題小委員会の審議の経過等について
    2. (2)著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について
    3. (3)国際小委員会の審議の経過等について
    4. (4)文化審議会著作権分科会運営規則等について
    5. (5)平成29年度使用教科書等掲載補償金について
    6. (6)平成29年度使用教科用拡大図書複製補償金について
    7. (7)著作権等管理事業法に基づく裁定について
  3. 3閉会

配布資料

資料1
平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(1.3MB)
資料2
平成29年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(5.9MB)
※資料1,2は一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
資料3
平成29年度国際小委員会の審議の経過等について(241.5KB)
資料4
文化審議会著作権分科会運営規則改定案
資料5
「平成29年度使用教科書等掲載補償金について」関係資料
資料6
「平成29年度使用教科用拡大図書複製補償金について」関係資料
資料7
「著作権等管理事業法に基づく裁定について」関係資料
参考資料1
文化審議会著作権分科会委員名簿(114KB)
参考資料2
文化審議会関係法令等(136.6KB)
出席者名簿(60.9KB)

※資料4~7は非公開の議事のため掲載しておりません。

了承された内容はそれぞれ以下のとおりです。

文化審議会著作権分科会運営規則(73.5KB)

平成29年度使用教科書等掲載補償金額(1MB)

平成29年度使用教科用拡大図書複製補償金額(611.3KB)

著作権等管理事業法に基づく裁定について(答申)(131.2KB)

議事内容

【道垣内分科会長】2時になったようでございますので,そろそろ始めたいと思います。

文化審議会著作権分科会の第50回会合でございます。

本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

まず,議事の段取りでございますが,冒頭の紙にありますように,きょうの議題は七つございます。

最初は,幾つかの小委員会の経過報告です。最初が,「法制・基本問題小員の審議の経過等について」,続いて2番目「著作権等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議経過等について」,それから,「国際小委員会の審議の経過等について」になります。4番目は,今回の議題7にも関係するところがございまして,文化審議会著作権分科会運営規則等についての御審議を頂きたいと思っております。それから,5番目,6番目は,使用料部会で原案を作ったわけですが,「平成29年度使用教科書等掲載補償金について」と「平成29年度使用教科用拡大図書複製補償金について」でございます。7番目が,「著作権等管理事業法に基づく裁定について」,以上7点でございます。

本日は,冒頭,メディアによる撮影が入ってございますけれども,そろそろよろしゅうございますでしょうか。もし,よろしければ,ここまでが撮影とさせていただいて,メディアの皆様には御退出をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

(報道関係者退場)

【道垣内分科会長】では最初に,本日の会議の公開について,お諮りをしたいと存じます。

先ほど御紹介しました議事の内容を見ますと,議事の4番「文化審議会著作権分科会運営規則等について」は,会議運営上の委員の取扱いについてお諮りしたいと考えており,これに関する議事については公開にすることにより,公平かつ忠実的な審議に支障を及ぼす恐れがあると考えられますので,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」という平成24年3月29日の分科会決定に基づきまして,非公開としたいと思います。

また,議事の5から7につきましては,「使用料部会の調査審議事項に係る案件」でございますので,同じく「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」に基づきまして,非公開とさせていただきたいというのが原案でございます。

なお,その内容につきましては,議事録を作成し,事後に公開することとしたいと思います。

また,その他の議事につきましては,特段非公開するには及ばないと思われますので,公開といたしたいと存じます。

以上のことにつきまして,御意見ございますでしょうか。はい。

【堀内著作権課著作物流通推進室長補佐】議事録ではなくて議事要旨,議事要旨をお作りすると。議事録ではなかったですね。

【道垣内分科会長】確かに。そうですね,済みません。

非公開にすることを提案した4から7の案件については,議事要旨を作成して公開するというのが原案でございます。よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内分科会長】では,そのようにさせていただきます。

そうしますと,傍聴の方々には申し訳ございませんけれども,議事の3番が終了したところで御退室いただくことになります。

次に,前回お集まりいただいた会議以降,事務局の人事に異動がございましたので,御報告をお願いしたいと存じます。

【秋山著作権課長補佐】御報告申し上げます。

昨年9月19日付で国際課長に着任いたしております,奈良哲でございます。

【奈良国際課長】どうぞよろしくお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】昨年7月20日付で著作権課著作物流通推進室長に着任しております,白鳥綱重でございます。

【白鳥著作権課著作物流通推進室長】よろしくお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】同じく昨年9月1日付で国際課国際著作権専門官に着任しております,早川貴之でございます。

【早川国際課国際著作権専門官】よろしくお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

では次に,事務局から,配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】はい。お手元に議事次第を御用意ください。

資料1から3としまして,各小委員会の審議の経過等の案を御用意しております。資料4では「文化審議会著作権分科会運営規則の改定案」。資料5及び6は,補償金関係資料。資料7が,「著作権等管理資料に基づく裁定について」関係資料になります。あと,参考資料2点,それぞれ議事次第記載のものを御用意しております。

不備等ございましたら,お近くの事務局員までお寄せください。

【道垣内分科会長】では,議事に入りたいと存じます。

最初,議事の1番「法制・基本問題小委員会の審議経過等について」でございます。

では,土肥委員から報告をお願いいたします。

【土肥委員】それでは,御説明申し上げます。

今期の法制・基本問題小委員会における審議の経過でございますが,これは資料1を御参照ください。

今期の法制・基本問題小委員会では,昨年4月に著作権分科会に御報告いたしました報告書の取りまとめを行いました後に,知的財産推進計画等に示された検討課題を踏まえつつ,課題の優先順位も考慮し,まずリーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応と権利者不明著作物等の利用円滑化について検討を行いました。これらの検討状況につきまして,以下簡単に御説明いたします。

まず,資料1の2ページでございますけれども,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応でございます。

本課題につきましては,今期では,プラットフォーマー等からリーチサイトなどによる侵害コンテンツへの誘導行為に対する取組の現状や,法制面での対応の是非などについて,ヒアリングを行いましたほか,憲法を御専門にする学者から,リンク情報の提供行為やリーチサイトの運営行為を規制するに当たって,憲法的観点から考慮すべき事項について,ヒアリングを行いました。

さらに,権利者,プラットフォーマー,インターネットユーザー,憲法学者といった方々から,ヒアリングの結果も踏まえまして,まず,著作権者の利益,財産権の尊重という問題と,表現の自由,情報アクセスの自由といった憲法上重要な権利とのバランスの観点から,本課題の検討に当たって押さえるべき観点を踏まえて,その観点から,本課題の検討に当たって,本課題の検討に入ったわけでございます。

その上で,民事について差止請求権の対象といたしまして,特に対応する必要が高い悪質な行為類型について,その範囲につき,議論を行いました。

さらに,刑事について,現行制度における対応可能性を踏まえました新たな制度整備の必要性や,可罰的な行為類型の範囲についての議論を行ったところでございます。

さらに,仮に新たな制度を設けます場合,どういった立法形式によるべきかについても,議論を行ったところでございます。

この課題は,引き続き,本小委員会,法制・基本問題小委員会の重要課題といたしまして,表現の自由への過度な委縮効果を生じさせないよう配慮しながら,著作権保護の実効性を確保するという観点から,具体的な検討を進めていくことになろうかと存じます。

次に,権利者不明著作物等の利用の円滑化でございます。これは資料1の13ページを御覧ください。

この13ページ,拡大集中許諾制度でございます。これにつきましては,平成27年度に,文化庁において諸外国調査を行い,昨年度には,我が国における制度導入の可能性や問題点に関しまして,調査研究が行われたところでございます。

本小委員会におきましては,これらの調査結果の報告を受け,拡大集中許諾制度の導入については,その正当化根拠や団体の在り方など検討が必要となるであろう課題が多いことを確認するとともに,今後検討を進める場合には,具体的な場面を想定した上で,補償金請求権を伴う権利制限とか報酬請求権など,他の手段の可能性も含め,検討を進める必要性があることを確認したところでございます。

本年度は,こうした検討の方向性の下,まず事務局において,文化庁に寄せられておりますニーズ等を踏まえ,関係者へのヒアリングが行われましたので,来年度は,その結果の報告を踏まえて,必要に応じ,本小委員会等で検討が行われることになっております。

このほか,この資料の15ページでございますけれども,著作権者不明等の場合の裁定制度の見直しにつきましては,今年度政令が改正されまして,申請手数料が大幅に減額されることになっております。

16ページを御覧いただきたいと存じますけれども,「その他の課題の検討状況について」でございます。

以上申し上げたことに加えて,法の適切な運用環境の整備,教育の情報化の推進,障害者の情報アクセス機会の充実,改善,新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備についても検討すべき課題として位置付けまして,その検討の具体的な方法としては,政府による調査研究や関係者間の協議等,様々な方法によることとしておりまして,それぞれ検討が進められてございます。

以上,誠に簡単ではございますけれども,法制・基本問題小委員会の審議経過報告について御報告を申し上げます。以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

ただいまの御報告につきまして,委員の皆様方から,御意見等ございましたら,よろしくお願いいたします。

どうぞ。

【河野委員】御報告ありがとうございました。

私は,利用する立場で,今の御報告を伺っていたところでございます。

最初に御報告いただきましたリーチサイトの件,昨年末に警察の摘発が行われたという情報もありました。実際のところ,その際の,被害に遭ったと言いましょうか,漫画のサイトの話だったのですけれども,その後,一般的に公開された情報を伺っていますと,発売日の翌日ぐらいにはもう既に無料で閲覧できるサイトに上がっているということで,そういった状況に対して,何とか手を打たなければいけないということだと思います。

法規制には,そこに至るまで,様々な利害関係者がいらっしゃいますでしょうし,今後に向けて,適切,バランスをとった対応策が検討されなければいけないとは思いつつ,こういうものが,今後に向けて更にしっかり検討していきましょうと先送りにされることによって,現場の業界の皆様が疲弊していくのではないかと心配です。

文化的な価値のあるものは,再生産につながるだけの対価は発生すべきであると思っておりますし,そこのところが,ある意味リーチサイトのような規制されていないところに利益が行ってしまうことによって,徐々に,先につながっていかないのではないかという恐れを感じています。

是非,関係する先生方においては,私たち利用者も含めて,皆が豊かになる社会の未来像を描ける形で,スピード感を持って対応していただければと望んでいます。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

何か今の点について。

【土肥委員】御質問ありがとうございました。

我々と言いますか,法制・基本問題小委員会で議論いたしましたのは,今おっしゃった具体の案件については,当然ながら検討の対象にはなりません。一般的にリーチサイトとして心配されておられる情報,状況を踏まえて,リーチサイト型のみならず,アプリ型のものも含めて,現状を踏まえた上で,憲法上の,これは表現の自由にも関わる重要な問題でございますから,その問題と同時に,財産権としての著作権の実効性の両者のバランスと言いますか,そういう観点から,誘導行為でございますから,誘導行為という面を踏まえて,最も悪質な,と言いますか,そういう著作権の実効性を害する最も悪質な部分について,どういうところがということを,民事,刑事,双方にわたって検討させていただいたということでございます。

審議の中では,特定新聞報道等でなされておる,そういう具体の案件については,やっておりません。

【道垣内分科会長】今の御質問の中のもう1点,スピード感を持って追及してほしいという点についてはいかがでしょうか。

【土肥委員】スピード感は,スピード感,重要なことですけれども,確かにスピード感,一般的に全て重要ですが,これは,何分憲法上の問題も絡むものですから,拙速は考えられないテーマではないかと,私個人的には考えてございます。

少なくとも,今期重要な検討課題と言いますか,テーマ,観点といったことは,全て一応洗い出せましたので,次年度におきましては,4月以降については,おっしゃるようなスピード感を持って一定の成果を,ここに御紹介あるのではないかと思っております。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

そのほか,何か。どうぞ。

【瀬尾委員】取りまとめ,お疲れ様でございました。

今,スピード感と海賊版についての話題が出ましたので,1点申し上げます。

今,ある違法サイトが,非常に広く利用されてございます。これは,出版の方たち,特に漫画を作ってらっしゃる出版社さんの方たちに,既に数か月の間に致命的なダメージを与えていると伺っております。つまり,具体的に売上げが,それによって,数字で分かるぐらい落ちている現実があるというお話を伺いました。

このようなサイトに対して,違法状態の止め方は,非常に難しいものもありますけれども,ただ,侵害がより巧妙化して,より被害が甚大になってきたときに,通常の法制度改正には数年掛かるかと思うのです。このような状態が放置されて本当に新しい方法で被害が出た場合,数年たつと,大げさに言ってしまえば,出版社が一つ潰れてしまうとか,一つ漫画雑誌が廃刊してしまうという被害を与えかねない状況にあると認識しております。

ということは,この文化審議会で,きちんと正攻法で法的な対応を正面からすることはもちろん重要でございますけれども,緊急のときにきちんとできる対応も,この審議会,特に法制・基本問題小委員会の中で,現状に沿った対応策を,御検討いただきたいと思います。

単純に,数か月,若しくは半年というスパンが,検討にとっては大変少ない時間であることは,私も承知しております。ただ,今の被害の中で,半年という短い時間内に,経済的に大きなダメージを与えるサイトも出てきていることは,御承知おきいただきたいと思います。

スピードということに関連して申し上げますが,皆さんも,そのサイト名は検索しても出てくるのではないかと思います。本当に著作権法をものともしない違法っぷりは,もう見ていて驚くべきものがあります。是非御対応いただきたいと思います。

意見でした。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

どうぞ。

【土肥委員】事務局の方が適当ではないかと思うのですけれども。

【道垣内分科会長】事務局が適当かどうか分かりませんが,いかがでしょうか。

要するに,法制的に難しいことはよく分かるけれども,新しいものがどんどん出てきて,非常にダメージが大きいという現実を踏まえて,より迅速に,かつ技術的に何かできる可能性はあるのですか。具体的には,あるのですか。技術的手段はあるけれども,法に触れるおそれがあるということでしょうか。

【瀬尾委員】知的財産戦略本部の検証・評価・企画委員会で出ているサイトブロッキングという方法があります。

またサイトブロッキングも,先ほど土肥先生もおっしゃったように憲法的な話とか,非常に法的にはなかなか難しいものがあるのですけれども,ただ,サイトブロッキング以外では,今,阻止,緊急に阻止できない状況と伺っております。それは,技術的な対抗手段ですが,法的な裏付けが今確立していないという状況かと,私は承知しております。

【土肥委員】一般的な話ですが,一般的には,このリーチサイトによる誘導行為とか,今おっしゃった特定のサイトの名称のものについては,基本的に著作権を侵害する幇助としては,既に現行法上対応できるのだと認識しております。

したがって,新聞報道等でも一部に,そういう形で刑事的な立件と言いますか,公訴提起を進められていると聞いておりますので,報道等がございますので,基本的にそういうことは,既に現行法の枠の中で相当程度できるのだろうと思います。

我々が議論しておりますのは,そういうものの中で最も緊急的に対応すべき必要性のある部分について,どういうところかを類型的に捉えられるかどうか,あるいは,著作権法の中で,特別に何かそういう類型を規定できるかどうか,そこの話なのですね。

ですから,今瀬尾委員がおっしゃった,重大な被害が及ぶという,もし,場面が出てくるような場合は,現行法でもある程度対応できる部分がありますので,そこは,事務局辺りと御相談いただいて進めていただければと思いますが。

【道垣内分科会長】大渕委員,お願いします。

【大渕委員】今,土肥委員が言われたのに補足いたします。この問題は,全くさらで立法するという性質のものではなくて,現行法でもかなりの程度は,実は対応できるのですが,解釈に争いがあったりするので,そこを明確化するという色彩が強いのではないかと思います。

現行法の解釈論と,それから,現行法では不十分なので上乗せをするという新たな立法論の両にらみで考えなければいけない複雑な問題なので,難しくて非常に大変ですが,一歩一歩きちんとやっていくしかありません。先ほど言われたように,拙速はもちろんいけないのですが,スピード感は持ってやるということについては,きちんとやりつつスピード感を持つことは可能だと思います。現行法も踏まえた上で,きちんと一歩一歩積み上げていく地道な作業をしない限りは,前に進まないのではないかと思います。体系的な思考を踏まえつつ,種々の対抗利益も十分考えた上で,著作権という重要な権利の実効性がきちんと保たれるようにすることは,著作権制度の一番の根幹でありますので,そこを図っていく地道な努力が続くものと思っております。

【道垣内分科会長】そのほか,いかがですか。

どうぞ。

【永江委員】これは,むしろ文化庁にかもしれないのですが,先ほど話題になっているあるサイトのFAQを見ますと,合法的であると彼らが主張している論拠として,文化庁のサイトがリンクされているのですよ。ユーザーからしてみると,素直に読めば,文化庁のお墨付きでこのリンクサイトがあるんだと思えてしまうわけです。

これは,文化庁から,そのリンクは不当であるとか何とか言うことは,表明することはできないのでしょうか。うぶなユーザーが読めば,文化庁が認めているんだなと素直に読んでしまうと思うので,それは全く,それが被害拡大しているかどうかはともかくとして,まずいとは思うのです。それは何か緊急の措置みたいなことは,難しいのでしょうかね。リンクされてしまったら,もう諦めるしかないのでしょうか。

【道垣内分科会長】状況をちゃんと把握してないのですけれども,どういうページをリンクされているのでしょうか。その記載内容がいかにも問題あるサイトの合法性にお墨付きを与えているように読めるものなのでしょうか。

【永江委員】そのサイトの中に,幾つか質問のコーナーがあって,そこに,「これは違法ではありませんか」「非合法なのではありませんか」という質問に対して,「これは法的に認められています。合法です。なぜなら」とあって,そこにリンクがあって,それは文化庁のサイトに飛ぶとなっているのですよ。

もちろん,その中で議論がある,文化庁のサイトに飛んだ先でどうこうとあるわけではないですが,見掛け上は,文化庁お墨付きのリーチサイトであるようになっているのですね,現状。

【道垣内分科会長】そこを見て,ユーザーは自分で判断してくれということでしょうか。

これは著作権の話ではないかもしれませんけれども,人が勝手に自分の運営しているサイトのURLを引用したときに,文句を言うという権利はあるのですか,ないのですか。

久保田委員,教えていただければ。

【久保田委員】基本的にはなくて,情報モラルとかリテラシーの問題としてやめてくれということを言っていますね,現状は。

【道垣内分科会長】少なくとも,その程度の抗議をしているかどうか。まだしていないのであれば,今の御意見は,すべきではないかということだと思いますが,いかがですか。

【秋山著作権課長補佐】久保田委員のおっしゃるとおり,他人が文化庁のウェブサイトのURLをリンクすることについて文化庁が文句を言う法的な権利があるということではなかろうかと思っておりますので,そのサイトで貼られているリンクの態様等を見てそれが社会的にどのような影響を与えるかも確認をさせていただきまして,対応の要否も含めて検討させていただければと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。

どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】重ねて同じことになってしまうのですけれども,刑事手続の現場は,本当にこの国はちゃんとしていて,デュープロセスに則ってやっているので,重大なことの場合にはとか言っても,警察は動きません。

ここは,ある意味,僕らが信頼関係を持っている中で,罪刑法定主義の下で,特に著作権に関しては,もうほぼデッドコピーしか動かない。知的財産秩序の観点から言うと,刑事手続はデッドコピーというレベルでしか動かないところもある。その手続においては,多少なりともそこに疑義が生じるようであれば,現場の警察官もまたその上の検察官も動かない。我々は日々,著作権侵害に対応しているところでは,まずそれが前提です。

その前提において,どうしようもないという被害の中にあると,まあそろそろ,高度情報化社会と言いましょうか,もう最近「超」が付きますから,超高度情報化社会においては,こういった著作物の利用形態に関して,端末の高性能化とかネットワークの高速化技術というものを踏まえたときに,もう待ったなしだろう。

そういう意味では,当協会としては,ここまで適切に皆さん議論していただいているのですが,是非早急な法改正をお願いしたいということで,とどめたいと思います。

【道垣内分科会長】では,時間の観念を十分に入れて,早く結論に至り,さっさと適切な措置をとれればいいと思いますので,よろしくお願いいたします。

では,よろしゅうございますでしょうか。この審議の経過等についての報告を了承したことにさせていただきたいと存じます。

続きまして,議題の2番目,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過報告につきまして,これも主査の土肥委員から御報告をお願いいたします。

【土肥委員】それでは,御説明申し上げます。

今期の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会における審議経過でございますが,これは資料2でお示ししてございます。したがいまして,資料2を御参照ください。

今期の保護・利用流通小委では,急速なデジタルネットワークの発達に対応した法制度等の基盤整備のため,知的財産推進計画2017などに示された検討課題を踏まえながら,昨期に引き続き,クリエーターへの適切な対価還元に係る課題につき,検討を行ってまいりました。

本年度は,対価還元の手段について,録音ですね,私的録音,これに焦点を当てて検討を行いました。これらの検討状況について,御報告をいたします。

資料2の2ページでございます。まず,私的状況の実態調査をやっておりまして,この文化庁による委託調査の結果の概要が紹介されております。

簡単に申しますと,録音経験者は,全体の約4割であること。録音の使用機器としましては,パソコンやスマートフォンなど,使用割合が比較的高いこと。過去1年間録音対象とされた曲数は,3年間で減少しておりますけれども,その中で,有料の音楽配信サービスからの録音対象曲数は増えておりますこと。それから,実際に録音された曲の総数も,3年間で増加しておることなどが分かったわけであります。

この3年間とは,前回の2014年の調査と比較対照する上で,2017年に実態調査をやりましたので,3年間の時間の経過という観点で見ておるわけでございます。全体版は,参考資料として,後ろにくっつけておりますので,これを御覧いただければと思います。

11ページを御覧ください。この対価還元手段に関する基本的な考え方についてでございます。

私的録音に係る三つの対価還元手段について,基本的な考え方の検討状況を整理いたしました。対価還元については,一つに私的録音・録画補償金制度,二つ目に契約と技術による対価の還元,3としてクリエーターの育成基金という三つの選択肢についての検討を行い,その結果が,12ページ以下に整理されてございます。

まず,対価還元手段については,各手段の組合せも含めて総合的に検討し,探っていく必要があることや,私的使用を目的とする複製のうち,契約による許諾に含まれない複製が,私的複製に該当することを確認したところでございます。

私的複製の実態につきましては,双方の立場から,双方の立場と言いますのは,権利者側,それから,利用者,事業者,あるいは一般ユーザーの方,立場になるわけでありますけれども,私的複製の量は,補償を必要としない程度まで減少したと言えるのではないかという御意見と,それから,現時点では,補償の必要性がない程度にまで私的複製の量が減少しているものではなく,現行制度上の補償金制度を廃止することに必要と言える立法事実があるとは言えないという意見がございまして,これが相当程度対立してございます。

検討の方向性につきましては,こうした様々な御意見がありましたが,契約と技術による対価還元モデルが,今後実効性ある形で構築され,どのように機能しうるのか,推移を見守っていくことが重要であるとされておりますほか,クリエーターに関する対価還元手段の在り方については,代替措置が構築されるまでの手当として,引き続き補償金制度により対価還元を模索していくことが現実的であるという意見が多く示されております。

これは,私的録音・録画補償金制度について,複製の実態に沿った,より柔軟なスキームにする,そういった工夫を,更に講じていく考え方でございます。

このような基本的な考え方を踏まえつつ,18ページ以降では,三つの手段それぞれについての検討結果を記述しております。

18ページ以下を御覧いただきたいと思います。まず補償金制度の代替手段として,特に念頭に置かれておりました契約と技術による対価還元手段について,指摘された課題を踏まえつつ,一律の対価の上乗せ,私的複製の対価部分をコンテンツの対価に上乗せをしていく課題を踏まえつつ,手段の妥当性についての検討を行ったところでございます。

この手段については,実効性についての課題も検討されたところでございますが,結論としては,今後実効性のある契約と技術による対価還元モデルが構築され,どのように有効に機能し得るのか,推移を見守っていくことが重要とされております。

それから,22ページ以下に,クリエーターの育成基金について述べてございます。クリエーターの育成基金についてでございますけれども,これは個々の権利者への対価還元ということから離れて,私的録音を総体として捉えた上で,その対価を広く,一般に文化芸術の発展に資する,将来のクリエーターを育成するという事業に充てようとする考え方であり,その意義と課題について検討を行ったところでございます。

この手段については,課題も大きいところでございますが,目指す方向性については,一定の共有,共通の認識が得られまして,具体的には,例えば私的録音・録画補償金制度と関連付けて,この制度の改善方策としても検討を行ったところでございます。

24ページ以下を御覧ください。最後に,私的録音・録画補償金制度でございます。

特に対象機器の問題,それから,媒体の範囲や定め方,現在の事業者の協力義務といった問題,及び補償金の分配や保証金の一つの在り方などについても検討を行いました。

それぞれの詳細の議論の内容は,審議の経過等を御覧いただきたいと思いまして,ここでは割愛をさせていただきますけれども,基本的考え方の箇所において御報告いたしましたとおり,私的複製の実態を踏まえた制度の見直しについて,意見が出されてございます。詳細は,24ページから30ページの間にまとめられております。

以上,簡単でございますが,報告とさせていただきたいと思っております。

対価還元手段の検討につきましては,引き続き私的録音に関する対価還元手段の,具体的な制度設計に向けた検討ですね,具体的な制度設計に向けた検討を深めると同時に,私的録画です,私的録画に係る対価還元手段の在り方についても検討を行い,その方向性を示していくことが,今後重要であろうと承知をしております。

なかなか難しい問題であったわけではありますけれども,保護利用・利用流通小委の委員の皆様方には大変精力的に議論いただきまして,審議経過報告,審議の経過等の中で御報告しておりますように,有意義な検討が行われたものと思っております。この場をお借りして,お礼を申し上げたいと思います。

保護・利用流通小委の審議経過報告につきましては,以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

それでは,ただいまの御報告につきまして,委員から御意見等ございましたら,よろしくお願いいたします。

【椎名委員】保護利用小委で私的録音・録画補償金制度の問題を検討してきた報告を頂いたのですが,この補償金制度の問題,制度の不完全さが顕在化して,約15年間,制度の見直しが進まないままに経過しております。

先ほど河野委員もおっしゃったように,何よりもスピード感を持って解決していかなければならない問題ではないかと思います。

すなわち,制度が整備されないことイコール権利者の得べかりし利益がどんどん増大していく状況の中で,録画補償金について言えばついに0円,録音補償金については微々たる数字というところまで細くなってしまっています。

今回の審議経過報告ですが,利用者さんと権利者,それぞれ意見が拮抗していく中で,この実態調査のファクトを踏まえた上で,主に有識者の先生方が詰めた議論をしていただいたこと,そのことが,報告書にも現れているのではないかと思います。

来期におきましては,一定の結論を得られるように,スピーディな議論をお願いしたいと思います。

以上でございます。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

では,河野委員から。

【河野委員】続けてよろしいですか。

【道垣内分科会長】はい。

【河野委員】御報告ありがとうございました。

今,椎名委員がおっしゃっているように,長い時間を掛けて検討してくださっており,かつ詳細な報告を頂いたということで,委員の先生方には敬意を表したいと思います。

ただ,先ほどの,最初の議題でも申し上げたとおり,この分野における技術の進歩は,物すごいスピードで進んでいます。今回は録音の話でしたが,今後録画についてもとおっしゃっていましたけれども,今は,録音と録画が同時で,メディアミックスという形で,様々なものが様々な手法とデバイスによって,複合的に組み合わさって,私たち利用者のところに届けられていて,メディアというのは,常に変化していると思います。

その辺りに対して,法律の解釈論というよりは,根本的な考え方に踏み込んでいただければ,とてもありがたいと感じたところです。

とても気になったのが,報告書の中で,パソコンやスマートフォン等の汎用機器は現在対象とされていない,それを除外した形で検討が進められることは,今の様々な音源ですとか映像源に対して触れている私たちからすると,そういう検討でいいのかしらと,何となく根源的な疑問が付くところです。

是非,その辺り,様々な御検討の下でこういう報告だと思いますが,この分野も,超高速で技術の進化がある分野だと思いますから,現実に即した形で対応をしていただければありがたいかと思いました。

それから,今後に向けての方策として,先ほど,一つ,プラットフォームと言いましょうか,クリエーター育成基金というアイデアが出されていました。私は,これはとてもいいことだと思いました。

日本の国内で「スマートジャパン」と言って,日本の文化的なコンテンツを海外に売り出したいという,歴史のあるものもそうですけれども,そういったところに力を入れている割には,文化的な事業ですとか産業に対する支援が,そんなに手厚くはないのではないかという感じは持っておりましたので,他産業と比べて,この分野も,なかなか目には見えにくい部分ですが,しっかりと主張していって,こういうクリエーター育成基金,将来に向けての種まきをしっかり御提案いただけると,とてもいいことだと思いました。

以上です。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

今御指摘の中で,汎用機器については,現在の私的録音・録画補償金制度の対象にはなっていないけれども,審議の対象にはなっているということですが,その辺りのこと,合わせて御紹介いただけますでしょうか。

【土肥委員】御意見ありがとうございました。

非常に,私同感の部分が多々ございまして,そのとおりだと思っておるのですけれども。

まず,汎用機器の問題です。これは,25年ぐらい前にできて,現行の制度が,そのときの議論の成果を踏まえて,制令に指定された機器と,現行法上なっているのですね。

したがって,制令に指定された機器に汎用機器も入っていけば,何ら問題はないのでございますけれども,そこが仮に入ったとしても,例えば,パソコンというものを考えたときに,パソコンで,ここにおいでになる委員の方が,どのぐらい音楽をそこにストレージされておられるかとなってきたときに,結構議論が分かれるのです。

先を進んでいるヨーロッパなどを見ても,28の国の中で,パソコンがこういう私的録音・録画の中に入っているのは,かなり少ないのですね。恐らく10以下ではないかと思います。もっとも,フランスなどでも,1人当たりの国民の補償金の額は,300円とか400円ぐらいですけれども,日本の場合は,今のところは全体で5,000万円ぐらいですから,0.5円なのです。ですから,ヨーロッパのルーマニアなど一番少ない国で,二,三円の,1人当たり二,三円ですが,その6分の1ぐらいが日本の状態になっています。つまり,それぐらい現状としては取り残されてしまったわけですね。

そこで,できるだけ,これこそまさにスピード感を持って対応すべきところがあると,私は思うのですが,諸般の事情ですね,中においでになるとすぐに分かるのですけれども,諸般の事情でなかなか難しい。

それから,録画は,結構DRMと言いますか,技術的保護手段という,DRMがかかっているということがございますので,地上波のテレビ映像ぐらいしかないものですから,余り音楽,録音のような深刻性,深刻な問題がないこともあって,そこを切り分けて議論をした経緯があるのですね。

いずれにしましても,おっしゃるように,問題状況としては非常に深刻なところもあり,クリエーターに対する対価還元の問題として,現在のクリエーターに対価を還元するのか,将来のクリエーターに対して対価を還元するのかと言ったら,それは現在ということを,まず考えていかないといけないのだろうと思うのですね。将来も分からなくはないのですが,将来のクリエーターに対価を還元するのだったら,基本的には,まず現在を考えた上でということかと,私などは思っておりました。

以上でございます。

【道垣内分科会長】私が聞くのも何ですが,「諸般の事情」とおっしゃったのは具体的にはどういう事情でしょうか。この分科会としては,御報告を受ける場ですから,可能な限りで,客観的に,現状を御説明いただければと存じます。なぜもめているのかを,今御質問に答える形でお願いしたいと思います。

【土肥委員】諸般の事情とは,一つは,DRMとの関係があると申しました。それから,プライシングインという問題があるのですね。

要するに,コンテンツの対価の中に,私的複製というものが,社会的に,一般的な状況としてなっている場合には,そこにプライシングインされているのではないか。つまり,例えば1,000円なら1,000円のCDの中に私的複製の対価がです。

そういうアプローチの意見と,いや,そういう,現に1,000円のコンテンツの価格の中に,昔の1,000円が,例えば,最近私的複製が実際問題として補償金の対象にならなく,現実にですよ,技術が進歩したために対応できなくなったときに,コンテンツの価格が上がっているかというと,上がっていないわけですよね。コンテンツの価格は一緒なわけですから。

だから,その権利者の委員の方は,そういうわけではない,そういう問題はないとおっしゃるわけですけれども,ここのところを,どう腰を据えて議論的に詰めて,議論をしていくかという,覚悟みたいなものが,委員だけではなくて,事務局辺りにも,当然必要になるのだろうと思うのです。

だから,この審議会は,全体として,そういうものにじっくり腰を据えて取り組んでいただかないと,なかなか進むべきところが,進めるべきものが進まないとなってくるのではないかと思っておりますので,次期におかれましては,是非とも,そういう覚悟を持って取り組んでいただきたいと要望しておきましたので,よろしくお願いします。

【道垣内分科会長】よろしいでしょうか。

【永江委員】感想のようなものです。

録音・録画という概念が,あと何年もつだろうかとは思いまして,音楽に関しては,もうほとんどストリーミングです。何か録音すること自体,私自身も,この一,二年は,専らストリーミングでしか音楽を聞いていないなと思いますので,これは,もしかして小委員会の結論が出た頃には,もう録音も録画も,日本国民は誰もしていない状況になっているのではないかという気もしなくはなくて。

だからどうだということではないのですけれども,議論している概念そのものがあと何年もつだろうかと,ある種未来予測もしながらしていかないと,という気はいたします。

【土肥委員】今のところですけれども。

報告書の2ページ以降に,その辺りのことを実態調査としてやっているわけですけれども,ストリーミングは,確かに,この3年間の間でも増えてきておるわけです。

増えてきておるのだけれども,それによって,実際,録音というものが減っているのかというと,それは減っているわけではなくて,かなり憂慮すべき状況にもあるわけです。

つまり,ストリーミングというものが,この3年間の間に確かに増えてきて,有料配信サービスなど増えてきているわけですが,では,私的複製がないという状態までは,まだいっていない。そういう状態だと思います。

ですから,その辺りの実態調査は,ここによく調べておいていただいておりますので,これは,何ページのどこが一番いいですかね。

【白鳥著作権課著作物流通推進室長】はい,資料で申し上げますと,15ページの最後のパラグラフです。「今後の見通し等については」というパラグラフが,それに関わっての記述になります。

【土肥委員】これ,読むわけにはいかないですよね。たくさんあるので。

簡単に言うと,どういうことですか。

【白鳥著作権課著作物流通推進室長】調査結果につきましては,まずこれは簡単に申し上げると,実際に録音を行っている方に対する質問でありまして,今録音を行っている方が,今の録音の状況について,今後二,三年の将来において,それが増えるか減るか,あるいは変わらないかをお伺いしている問いになっております。

積極的に「増える」あるいは積極的に「減る」と回答した方が,3年前に比べて減る一方で,「変わらない」という御回答の方が,逆に増えている状況でありました。

こうした,録音している方自身による回答についての紹介のほかと,今実際にどれぐらい録音されているか,過去1年間にどれぐらい録音されているかといった状況につきましては,実際の録音曲数が,この3年間で増加している状況もございました。

このようなことや,少なくとも,現時点で客観的に将来の複製動向を正確に予測することは困難と考えられることから,近い将来のうちに,私的録音の全体の量が,確実に更に減少していくといった主張は,広い支持は得られなかったとまとめられております。

【土肥委員】ありがとうございました。

そういうことで,確かにそういう事象は,我々も認識しておるのですが,では,その私的複製というものがなくなっていくのかというと,そうでもなさそうなのですね。

そういう状況を御了解いただければと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

一般論としては,特定の時代の特定の技術を前提に立法してしまうと,すぐに陳腐化してしまう。ただ,立法が余りに先走るのも極めて難しいし,かえって迷惑なこともあるので,そこのバランスがなかなか難しいことだと思います。とはいえ,著作者にしかるべく対価還元されることを可能にする法律的な対応を考えて,できるだけ早く,それをインプリメントするのが必要ではないかと思います。

大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】先ほど,スピード感について申し上げましたが,これはもともと非常に難しい問題で,十何年もの間ずっと余り前進もなくきたのですが,この一,二年で急に本格的に進みだしたと感じています。

これは,先ほどのような調査もそうですし,問題点として,どこが一番ポイントかが,ようやく明らかになり始めてきたと思います。私も何度も委員会では申し上げましたが,30条2項の補償金の問題だけではなくて,1項で,これは土肥先生が非常にお詳しいところですが,日本の30条1項は,比較法的には非常に私的複製に優しく我々全員にとって大変ありがたいものとなっています。そのようなものの後支えとして2項の補償金制度が付いているからこそ,30条1項の幅広い私的複製が許されるという,我々全員の利益になっております。

そのトータルなもの全体を視野に入れた上で,どう30条1項をしっかり守って,それを含む著作権制度全体を維持するか。当初は,2項が機能するという前提で,全体ができていました。それが機能しなくなったというのが,時代に合わなくなっているので,先ほどのような汎用機が入っていないなど,いろいろな点,それは,汎用機も入れる方向で,これは出ておりますので,そのような実態に合わせた形で,単純に言うと,制度の骨格は今までどおりですが,時代の変化に合っていない面があるので,そこは合わせようという,シンプルな話ではないかと思われます。

そこに向けての前進が出始めているところなので,今後,着実に予測しつつ,一歩一歩進めていけば,必ず解はあるのではないかと思います。

【道垣内分科会長】ありがとうございます。

どうぞ。

【久保田委員】もうハードの時代ではないし,多分,いわゆる日本のハードメーカー,なくなってしまうのではないですかね。

トヨタ自動車だって,車の価格の半分以上,制御系のソフトや人工知能を積んだ車を作っている時代ですから,どうもその意味では,端末だけがハードっぽいイメージを持ちますが,その中で端末と言っても,もうそこで(情報の)再生産ができる状態になってくると,それも端末という概念で捉えていていいのかという問題があります。もう一つ,これはずっと,私も30年この仕事をやっていて思うのは,私的な領域で楽しむコンテンツ,エンターテイメントみたいなものが,そもそも私的な領域で複製ができたり,ストリーミングで楽しめてしまうこと自体,どう考えるのかというのが大きな問題としてあるのですね。

ゲーム業界などを見ていると,完全にソフトウェアの方が,このような面白いソフトを作りたいからスペックはこうでなくてはいけないのだとなって,まさに手塚先生が夢のような世界を描いた時代に,その後にハードが付いてきたということですね。

特に産業構造から言っても,現在の教育現場でも,知的財産という中で,子供たちが創造的な,クリエイティブな作業をすることが,我々の国の財産の元になる。いつまでもハードに固執した議論は,それも日本のハードメーカーがどんどん撤退している中で,調整がうまく進まない理由の本質は何ですか。

【道垣内分科会長】土肥主査,お願いします。

【土肥委員】ハード機器メーカーも,私の個人的な考え方では,ハード機器メーカーも,音楽コンテンツがあることによって,多大な利益を受けている。ハード機器メーカーが,これから廃るのではなくて,より発展してもらいたいと,私は思っているのですね。

要するに,ハード機器メーカーも発展してもらいたし,それから,クリエーターの方にも,より豊かなものをいろいろ作っていただいて,「コンピュータソフトなければただの箱」の「ハード機器音楽なければただの箱」になるわけですので,したがって,両者,つまり,ハード機器メーカーも,ハード機器を前提にしたクリエーターの様々なコンテンツの創造,そういうものによって生ずる利益,それから,それを消費されると言いますか,需要者であるところの一般ユーザーですね,一般ユーザーに関しては,言ってみれば,よく言われるデジタル社会の中で「ガラスの箱の中の消費者」ということを言いますけれども,要するに全てデジタルの技術によってコントロールされていくことは,必ずしも一般ユーザーにとって利益にはならない。

つまり,現在の仕組みは,先ほど大渕委員がおっしゃったように,私的複製が,世界に類のないぐらい,日本の場合,広いのです。これぐらい広い例は,まずない。そういう中で,一般ユーザーの方は,その複製によって著作権侵害という犯罪として立件されないのは,30条があるからですね。

だから,30条は,そういう広い範囲を保っている一方で,それに対する2項の補償金によってカバーされて,クリエーターの方々に対しての還元が行われるという構造になっているわけです。メーカーは録音録画機器の販売で利益を受ける。

私は,前から言うのですが,要するに,30条の下で権利者もクリエーターも,一般ユーザーも,それぞれ三方一両得になっているはずだと。つまり,これは,どうもお金を出す側の,ユーザーの方がお金を出すことによって,経済的な不利益を被ると考えられるかもしれないのだけれども,決してそうではなくて,権利者もクリエーターも一般ユーザーも,30条の中で,この仕組みは大きな意味があって,30条が狭く絞られていくことになると,当然,それは著作権侵害罪を問われる範囲が拡大することになってきますので,そういう状況を,今のところは懸念のない状態にしておりますから,これを大事にして,制度を本来予定されているものにきちんと回復していくことが大事ではないかと思うところでございます。

長くしゃべり過ぎました。

【道垣内分科会長】ありがとうございました。

時間の関係もございますので,著作物等の適切な保護と流通に関する小委員会の審議経過報告を頂いたということで,分科会としてお受けしたとさせていただきたいと存じます。

では,続きまして議題3,国際小委員会の審議の経過等につきまして,これは,私が小委員会の長をしておりますので,私から,資料3に基づきまして,報告をさせていただきます。

国際小委員会における平成29年度の審議状況でございます。

今期の国際小委員会におきましては,二つのテーマ,一つは,著作権法に向けた国際的な対応の在り方,2番目が,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方,この二つを審議いたしました。

まず,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方についてでございます。

これにつきましては,WIPOの議論が主でございます。WIPOの場での議論を事務局からこの小委員会において御報告いただきまして,小委員会では,今後の我が国がとるべき立場等につきまして議論を行いました。

まずは,放送機関の保護に関するテーマでございます。WIPOでは,デジタル化・ネットワーク化に対応した放送機関の権利の保護に関する新たなルールを策定することを目指して,放送条約の議論がずっと続けられております。昨年は,放送条約案のテキストに基づいて,議論が行われたということでございます。

審議の状況でございます。さすがに長く時間が掛かっておりまして,早く条約を締結しようという機運がようやく本格化してきたのではないかとの御意見がございました。しかし,他方で,それも何度も聞いたような思いもあるので,そうなればいいと思うとの御意見等がございました。

今期の小委員会では,放送機関が行う放送のインターネット送信,特にオンデマンド配信についての保護の在り方等について議論が行われました。

WIPOでは,義務的保護にするか,これを義務的な保護の対象にするか,あるいは,任意的な保護にとどめるかということで,議論の対立があるところでありますけれども,3ページにございますように,我が国としては,できるだけ早期に条約を作るべきだという観点,もう一つはネット配信事業者とのバランスを考慮すると,必ずしも義務的な保護にする必要はないのではないかという意見が複数の委員から出されたところでございます。

WIPOの2番目です。「権利の制限と例外」「その他」についてです。WIPOでは,放送条約のほかに,図書館あるいはアーカイブ,研究・教育機関のための権利制限,それから,追求権,これは,美術品がオークションなどで転売されるごとに,一定の割合,売価の一定の割合が,著作権者に渡るように,そのような権利を認めるという制度ですで,日本にはないものですが,これについてもWIPOで議論されたとのことであります。

昨年は,これらについて,WIPOでも研究報告がされたということでございまして,小委員会では,特に追求権につきまして,著作者に対するインセンティブにはつながらないのではないか,絵を描く方々にとって,将来のオークション市場あるいは美術品市場での取引から収入を得られることが,必ずしもインセンティブにならないのではないかという否定的な御意見もありました。他方,既に80か国において導入されていることから,我が国としても国際的ルール作りへの参画,検討を積極的に進めるべきだという意見もございました。小委員会といたしましては,引き続きWIPOにおける議論を注視していくというのが大方の議論でございました。

大きなテーマの2番目,「インターネットによる国境を越えた海賊行為への対応の在り方」でございます。これは,5ページでございます。

事務局から3点の報告があり,それに基づいて議論が行われました。

1点目は,我が国のコンテンツの,海外あるいはインターネットを越えた,侵害の実態調査についてでございます。今期の国際小委員会では,マレーシアにおける著作権侵害実態調査の結果報告が行われました。

2番目,5ページの丸2です。諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策に関する調査報告がございました。これは,今後我が国における著作権侵害対策に係る検討に資することを目的として,7か国のインターネット上の侵害,著作権侵害に関する状況が調査され,報告がございました。対象国は,5ページの下から3行目にありますように,アメリカ,カナダ,オーストラリア,イギリス,フランス,ドイツ,スウェーデンでございます。

3点目,これは6ページの丸3です。文化庁の取組として,特に平成30年度から新規にしていることとして,著作権に関する普及啓発教材の開発をしまして,侵害の発生が見受けられる国々との,政府と連携していくという,外国での著作権の啓発活動についての報告がございました。

以上のことを踏まえまして,委員からは,おおむね次のような意見がございました。

海外における普及啓発活動,普及啓発の取組でございます。なかなか評価されづらいことではあるけれども,しかし,キャラクターグッズの侵害対策などを見ると成果が上がっているのではないかという意見がございました。

それから,過度の禁止,これは駄目,あれは駄目という禁止だけを教えるのでは,若い人たちに必ずしも効果的ではないので,そういう点にも配慮が必要ではないか。もちろん,してはいけないことはしっかり教えなければいけないわけですが,駄目ということだけの教育ではうまくいかないのではないか,との御意見がありました。

それから,教育・普及啓発に当たっては,現地の教員の方々との信頼関係の構築や,教育方法,あるいは,その国によって違うでしょうけれども,習慣への配慮が必要ではないかという御意見がございました。

また,インターネット上の著作権侵害対策の調査につきましては,サイトブロッキングにつきまして,海外にサーバがある場合は,その国がこれを認めていればですが,有効な手段であるけれども,そうでない国もあるので,更なる調査をして,どこの国ならばサイトブロッキングを使えるかをしっかり把握しておくべきだという意見がございました。

それから,違法な行為の行われる背景には,正規に流通しているコンテンツがないということもありますので,環境整備として,正規コンテンツがちゃんと流通している状況を作る必要があるという御意見,御指摘がございました。

今後,海賊版対策,なかなか砂に水をまくようなこともあると言われるところでございますけれども,しかし,水をまかない限りはなかなか緑化もできないので,引き続きこのような活動は文化庁としても進めていっていただきたいというのが,この小委員会の意見でございます。

以上,簡単でございますが,国際小委員会の報告とさせていただきます。

なお,国際小委員会の委員の方々には,非常にお世話になりまして,協力いただきました。この場をお借りして,お礼を申し上げたいと存じます。

国際小委員会の審議経過の報告について,当分科会として,委員の方々から,何か御意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは,この委員会,国際小委員会の審議経過も,分科会として了承したことにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

それで,ここで,先ほど,最初に申し上げたことでございますが,次の4番目の議事に入りますので非公開にさせていただきたいと存じます。

何か,事務局からありますか,この段階で。よろしいですか。

では,このまま次の議事に移りたいと思いますので,傍聴の方々におかれましては,申し訳ございませんが,御退出をお願いいたします。

議事要旨

※議事(4)~(7)については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成24年3月29日文化審議会著作権分科会分科会決定)1(2)及び(3)に基づいて非公開で開催した。

議事(4)文化審議会著作権分科会運営規則の改定について審議が行われ,原案のとおり了承された。

議事(5)平成29年度使用教科書等掲載補償金について,使用料部会長及び事務局から説明が行われた後に審議が行われ,それぞれの補償金の額が決定された。

議事(6)平成29年度使用教科用拡大図書複製補償金について,使用料部会長及び事務局から説明が行われた後に審議が行われ,それぞれの補償金の額が決定された。

議事(7)著作権等管理事業法に基づく裁定について,使用料部会長及び事務局から説明が行われた後に審議が行われ,答申がとりまとめられた。

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