文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第3回)

日時:平成26年8月28日(木)
    16:00 ~18:00
場所:文部科学省東館 3F1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)私的録音録画に関する実態調査について
    2. (2)クラウドサービス等と著作権について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
浅石委員・畑委員・椎名委員提出資料 (819KB)
資料2
津田委員提出資料 (2.2MB)
資料3
河村委員提出資料 (382KB)
資料4
著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会等におけるクラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要(案) (397KB)
参考資料
ロッカー型クラウドサービスの分類について(平成25年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム(第2回)配付資料1) (975KB)

議事内容

【土肥主査】  それでは,定刻でもございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を開催したいと存じます。本日はお忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますが,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」との声あり)

【土肥主査】  それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方には,そのまま傍聴いただくことといたします。
 次に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  失礼いたします。それでは,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第の下半分をごらんください。
 資料1としまして,浅石委員,畑委員,椎名委員御発表資料,資料2としまして津田委員御発表資料,資料3としまして河村委員御発表資料を,それぞれ御用意させていただいております。また,資料4として,クラウドサービス等と著作権に関する主な意見概要に関する資料,それから参考資料として,ロッカー型クラウドサービスの分類に関する資料を御用意しております。
 配付資料は以上でございます。落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは議事に入りますけれども,初めに,本日の議事の進め方について確認をしておきたいと存じます。本日の議事は,1.私的録音録画に関する実態調査について,2.クラウドサービス等と著作権について,3.その他の3点となります。議事の具体的内容としましては,1については,第1回の本小委員会において御報告を頂きました私的録音録画に関する実態調査を踏まえ,今回は録音分野に関する権利者側からの意見発表を行っていただき,その後,意見交換を行いたいと思っております。次に,2につきましては,昨年度のワーキングチームと前回までの本小委員会において,事業者側と権利者側とから意見を頂戴したところでございますので,今回は利用者側の委員の方から御意見を頂戴したいと思っております。また,今までの議論の概要について,事務局においてまとめていただいておりますので,こちらについても説明を頂いて議論を更に深めていければと,このように考えておるわけでございます。
 それでは早速ですが,1の議題に入りたいと思います。
 まず初めに,私的録音録画に関する実態調査に対する録音分野に関する権利者側の御意見ということで,浅石委員,畑委員,椎名委員のお三方から御発表を頂きたいと思っております。このお三方を代表して,本日は椎名委員から御発表があろうかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。

【椎名委員】  本日はこういう発表の機会を頂きまして,ありがとうございます。芸団協の椎名でございます。本日は,本小委員会の中で音楽関連の権利者を代表する立場で参加させていただいておりますJASRACの浅石委員,それから日本レコード協会の畑委員と芸団協の私とで,その3人の下に,今回の実態調査の結果を分析する専門家を交えたチームを作りまして,これまでいろいろ検討を重ねております。そこで分かってきた事実の中で,その一部について,本日は私の方から発表させていただきたいと思います。
 本小委員会の課題として,対価の還元というタイトルになっているわけですけれども,私的複製に係る対価の還元の問題,この対価の還元の必要性については,本小委員会での検討に至る前の段階の法制・基本問題小委員会においても,その必要性には議論の余地がないということが確認されているわけですが,それでは,そこで言う対価とは何なのか,その実体像について,これまでいささか抽象的な観念論のやりとりに終始してきたのではないかというふうに思います。そういう問題意識から,今回の実態調査の結果を受けまして,その対価の実像ということについて分かった幾つかのファクトといいますか,数字なども含めてお話しさせていただけたらと思います。
 資料1のパワーポイントをごらんいただきたいのですが,本日の発表といたしましては,主だった項目として2項目。まず1項目として,膨大な保存総体と録音回数ということを挙げています。この調査結果から,国民全体で見て音楽データが大量に保存されている実態があることに加えて,音源を音楽CDに限っても直近1年間で膨大な数の録音が実施されており,非常に大きな私的録音ニーズが存在しているということが明らかになったと思います。また次に,2番目といたしまして,私的録音に供される機器の販売状況と補償金の現状ということで,こうした非常に大きな私的録音ニーズを背景に,メーカーは私的録音に供される機器を大量に販売しているわけですけれども,その大半が補償金の対象になっていないという状態がございまして,私的録音補償金の受領額が激減しているという実態がございます。その2点を中心に,お話をしてまいりたいと思います。
 まず,おめくりいただきまして,その膨大な保存総体と録音回数ということでございますが,まず私的録音を取り巻く環境の変化ということで,様々な機器で,いつでも手軽にということなんですが,これは報告書の78ページをごらんいただきたいと思います。音楽データの保存先ということで,どういう機器,媒体に保存されているかということでございますけれど,平均録音曲数の多い順に,パソコン内蔵のハードディスク・SSDだと39.4%,ポータブルオーディオプレーヤーの内蔵メモリが14.4,CD-R/CD-RWが11.9,スマートフォン内蔵メモリ10,パソコン外付けハードディスク・SSDが8.8,USBメモリーやSDカードなどのフラッシュメモリーが4.7,カーオーディオ,カーナビ内の内蔵HDD・SSDが3.8というようなことで,2002年時代に比べればはるかに多様な選択肢の中で,ユーザーが自由な録音環境の下で,多様な機器,媒体に音楽データを録音しているということが分かったわけであります。
 この2002年当時は,ほぼMDを中心としたMDコンポしかなかったわけですけれど,現状では,右側のごとく,音源となったものからパソコンを経由して,ここにありますiPodですとかスマートフォンですとかCD-Rとか,ここら辺は,この実態調査の各ページから拾ってきたものですが,こういった多様性が生まれて,ユーザーの選択肢が非常に広がっているということがございます。
 次のページでございますが,パソコンの主流化に伴うコピー制限のない私的録音環境への移行ということで,2002年当時というのは,MDコンポ等でCDをコピーする場合に,SCMS,これはシリアル・コピー・マネジメント・システムと言うそうですが,ジェネレーション保護といいますか,第1世代のコピーのみを許すと。コピーをしたMDからさらなるコピーはできないと,そういった技術的な保護手段が掛かっていたということなんですが,現在の時点におきましては,パソコンではこれは有効に機能しないということで,基本的にはコピー制限がない状態で音楽が回っているということになります。
 当然ながら大量の音楽データの保存が可能になったということで,次のスライドですけれども,今度は102ページをごらんください。音楽データ録音機器保有者に,各々の機器における保存曲数を聞いた設問では,今回の調査で最も保有率・使用率の高かったパソコンに内蔵のHDD・SSDで平均1,017.5曲,パソコン外付けのハードディスク等が平均2,258.2曲,ポータブルオーディオプレーヤーの内蔵メモリーでは778.2曲,スマートフォン内蔵メモリーでは平均309.2曲という数字が挙がっております。技術の進歩に伴って,ユーザーが大量の音楽データを保存できるようになったということが分かります。
 MDが主流であった2002年に行われました私的録音に関する実態調査では,MD保有者の平均保有枚数は25枚ということが挙がっておりまして,これを1枚当たり12曲,容量60分で1曲5分として計算した場合に,平均300曲相当を保有していたということになりますが,今回の調査で一番使っている率の多いとされたパソコンでの保存曲数1,017曲と比べますと,数ある選択肢の中でパソコンだけ取り上げても3倍ぐらいの保存曲数になっているという実態が分かると思います。
 それで,報告書の同じページを使って御説明いたしますが,次のスライドですが,ここで聞いている,どのぐらいの曲数を保存していますかという数字に関して,これを様々な機器別に,平均の保存曲数を人数に掛け合わせまして,これらの機器の中で総計何曲ぐらいが保存されているかということを計算してみました。その結果,下のところに総計とありますけれど,501万4,357.5曲と。これを人数で割りますと,1人平均1,670曲保存したということが分かります。
 次に、今回の3,003名のサンプルでございますが,今回の実態調査におきましては,15歳から69歳までの年齢別の人口構成を踏まえた調査ということになっておりますので,国民全体の音楽データ保存総数を試算することが可能になっております。こういう数字を算出したことは今までなかったと思いますが,すなわち総務省統計局の平成26年6月報人口推計を参考にいたしまして,15歳から69歳の総人口を8,751万8,000人といたしまして,15歳から69歳の国民全体の音楽データ保存総数を試算いたしました。そうすると,1人当たりの平均が1,670曲なのに対して,その年代の人口の総合計8,751万8,000人の,録音をしている人というものについては,前回,野村総研の御発表のときにも出ておりましたが,39.9%の人が録音を経験しているということで,ここで8,751万8,000人に39.9%を掛けますと,これが曲数換算で約583億曲という曲数。曲数といっても,同じ曲が何回もかぶっていますので,583億ユニークファイルという形でユーザーの手元に保存されているということになります。
 この39.9%という録音経験率については,先般も御指摘しましたとおり,パソコンに既に保存しているデータからの録音のみを行うユーザーというのは捕捉できていないんですね。だから少なめに最低限見積もって,こういう数字のユニークファイルがユーザーの手元にあるということでございます。これは,38ページを見ていただければ分かるとおり,音楽CDの複製や音楽CDからのデジタル録音に始まって,ネット上で無料で視聴できる動画サイトとか,有料の音楽配信とか,スマートフォン用のアプリを使ってアクセスできる音楽データとか書いてありますけれども,既存のファイルからのコピーというのはこの中で捕捉をしていないということから,最低限だというお話をしているのですが,一方で実はこの中には,有料配信のファイルも入っているわけですね。だから厳密に私的複製に関連するものかというと,そうではなくて,ユーザーがいろいろな手に入れ方をした中から複製したファイルが,583億ユニークファイルあるということでございます。
 今度は,次のページに行きまして,報告書の58ページをお開きいただきたいのですが,このデータから,同じような手法で試算いたしますと,録音経験のあるユーザー1人当たりの1年間の音楽CDからの平均録音曲数というのが分かります。
 これをどうやって求めたかというと,※印1が付いている5万9,469曲というのは,この58ページ上の,自分が過去1年間に新規に購入した市販のCDから始まりまして,図書館から借りたCDまでの5行,それから一番下の,自分が既に持っている市販のCDからというものまで合わせました6行について,それぞれ答えていただいています人数1,185人掛ける平均曲数15曲という形で,それらを掛け合わせたものを合算したものが5万9,469曲ということになります。これを3,003人で割りまして,ここで聞いているのは1か月ということでございますので,これに12か月を掛けると,1年間に音楽CDから,平均的に録音する曲数は237曲であるという数字が出るわけでございます。
 それを,先ほどと同様に15歳から69歳の人口統計に当てはめまして,1年間の音楽CDからの録音回数を試算すると,237曲掛ける8,751万8,000人掛ける28.1%。この28.1%というのは音楽CDからの録音経験者率ということで,先ほどの38ページにあった数字でございますが,これを計算いたしますと約58億曲ということになります。もちろんユーザーの利用動向というのは年々変わっていきますが,全体として先ほど申し上げた583億ユニークファイルというものがあって、毎年その中の58億曲がどんどん累積していくのか,入れ替わっていくのか分かりませんが,大体そういう数字の規模感になっているということでございます。
 これまで,権利者の不利益であるとか様々な言われ方をして,様々な数字が出たということがございますが,恐らくユーザーの手元にある音楽のユニークファイル数というのを試算できた調査は今回初めてだったと思います。ちなみに,この583億曲というのを記録媒体の容量でいいますと,ここには書いてございませんが,約277万テラバイト,それからCDの1年間の方だけでも約27万テラバイトということで,記憶容量だけ見ましても,かなりの機器の需要を喚起している,経済効果も生んでいる,あるいは雇用も生んでいるというような構造があるのではないかと思っております。
 次に,こうしてユーザーが様々な音楽について手元にコピーをすることができるということの利益を享受するのは誰なのかという議論でございますけれど,これはまずは,録音を行うユーザー,ここでいいますと8,751万8,000人掛ける39%ですから,3,491万9,682人のユーザーがこの恩恵に浴しているということが言えるのではないかと思います。その次に,やはりそういったことを実現するための複製機器や媒体を販売するメーカー等事業者,この大きな私的録音ニーズに応える機器,媒体を販売して利益を上げるメーカー等事業者さんに大きな利益が行っているということが言えるのではないかと思います。ユーザーさんの利益というのは,これだけの経済的価値を3,400万人で割るわけですから,個別の利益としては零細なものということになりますが,メーカー等は,僕は何社あるかよく分かりませんが,十数社あるいは何十社かでこうした利益を享受しているということが実態なのではないかと思います。
 それで,やはりクラウドの方でも議論がありました。私的複製なのか事業者が行う複製なのかというようなことの話があり,契約で解決できるのではないかということで議論が出たときに,ニワンゴの杉本社長の方からも,きちんと事業者もリスクをとっていくというようなお話がありましたが,この対価の還元,私的複製の問題に関してもきちんと,コンテンツの訴求力から生じる果実を享受している者は一定のリスクを負担していくという構造を作っていくことが重要になっているのではないかなというふうに思います。
 次に,おめくりいただきまして,私的録音に供される機器の販売状況と補償金の現状ということでまとめておりますが,12ページは,機器の出荷台数と私的録音補償金受領額の推移ということでまとめております。
 私的録音補償金に関しましては,2001年をピークに,こういった形で下がってきております。この間に東芝裁判等がありまして,支払義務者はユーザーなんだけれども,メーカーに与えられている協力義務というものの法的強制力の問題等々争われたりいたしました。その結果,その2001年をピークに,補償金を受領した金額というのは,こういうふうにどんどん下がってきております。それに反比例するような形で,パソコンが赤,スマートフォンが黄色,デジタルオーディオプレーヤーがグレー,タブレットがブルー,それから従来のMDオーディオ系が茶色ということでございますが,メーカーさん等は,その私的録音に供される機器を順調に販売して売上げを上げているということが,この図から見て分かることだと思います。
 最後のページは,既に確認されたように,非常に大きな私的録音ニーズが存在することに加えて,これらの私的録音に実際に使われる機器と補償金の対象となっている機器との大きなかい離が改めて確認されたということで,これは報告書41ページでございますけれど,結局ここで一番多いパソコンの67%から始まりまして,様々な録音に使用される機器というのが様々なシェアで使われているということでございますが,ここで現行の補償金制度の対象になっているのは下の2段,録音機能付き据置き型コンポとCD-R/RWレコーダー,この7.9%と4.5%にすぎません。ということは,現行の補償金制度はもはや,事実上,実態を捉えていない,全く機能していない状況にあるということがよく分かると思います。
 繰り返しになりますが,やはりコンテンツの訴求力を利用するステークホルダーは,一定のリスクの負担をすることによってのみコンテンツにもお金が戻るし,メーカーも機械を売ることができるし,ユーザーは豊富なコンテンツに触れることができるという好循環を生むと思うんですね。きょうお話ししたことはごくわずかでございますが,こういった見地から,今後,対価の還元の問題を考えていきたいというふうに思っております。  以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,質疑応答と意見交換に移りたいと思いますけれども,3人の中で,浅石委員,畑委員から特に補足があるようであれば今伺いますが,よろしゅうございますか。
 はい。それでは,今,椎名委員から御報告がございましたけれども,この内容についての質疑を行いたいと思います。あるいは意見でも結構でございます。御意見,御質問がございましたら,お願いいたします。
 津田委員,お願いします。

【津田委員】  幾つかポイントがあるので,資料を見ながら進めていければと思うんですが,多分最初の原則的には,音楽を楽しむユーザーからは,相当楽曲を楽しむ環境が,ここ5年,10年で大きく変わっているということがまず前提としてあると思います。その楽曲を楽しむ環境が大きく変わっているのに,余り数だけを見て推計しても意味がないのかなと思っておりまして,大事なのは今ユーザーが音楽をどういった利用態様で聞いているのかということに着目するということで,椎名委員のこの発表の資料を見ていると,やはりちょっと単純な掛け合わせが,データというか,数字の掛け合わせが多過ぎるかなというふうには思ったんですね。
 まず,例えば4ページや5ページの図を見てみると,結構,僕はここに答えがあるような気がしておりまして,例えば僕が自分で音楽をどうやって楽しんでいるかといったら,CDを買う,若しくは音楽配信でデータを買って,それを自宅のパソコンと,そして持ち歩きするノートパソコン,そしてまたiPhoneや,携帯を2台持っているので,Androidに入れていると。これは,買った曲,同じ曲を入れているんですね,いつでも聞きたいと思ったときに聞けるようにとなったときに。でもこれって4曲ではなくて,聞くのは買った曲1曲。それが4曲になってしまっているというところがあるので,果たしてそれを4曲というふうにカウントするのが正しいことなのかということがまずあります。
 6ページのところで,例えば,最も使用されている機器での保存量が3倍以上になった。2002年はMDで300曲だったのが,今は1,017曲になったということだったんですけれども,これもかなり,やはり聞く環境が変わったところがあるわけです。2002年当時はCDで音楽を聴くという人が当たり前のようにいましたけれども,今はもうほとんど,CDというよりもデータで音楽を聴くことが当たり前になっているので,視聴形態の変化という必然の増加ということもあるでしょうし,もう1つは,MDというのは基本的に,借りてたものをコピーする。MDに入っているデータというのは,私的複製なりレンタルで借りたものの複製というのがほとんどだったと思うんですね。それは議論の余地はないと思うんですけれども,今パソコンに入っている楽曲というのは,配信で直接買った人も含まれているので,それは必ずしも私的複製でコピーされたものでないということもあります。そうすると,この配信データ入りの数字もコピーとして推計するというのは余り正しくないのではないかということはあります。
 また,MDの場合は,テンポラリーに書き出しして,上書きして使うということもできますよね,ベスト盤を自分で作るみたいな。ただパソコンの場合は,ハードディスクに基本的にずっとためておけるので,容量が大きなハードディスクがあれば上限がないので,どんどん曲をためていくことができるという意味で,そういうことで必然的に曲数が増えていくということもあります。
 あともう1つ,結構重要なのが,パソコンって結構家庭で共有することが多いんですよね。家に1台パソコンがあって,音楽はとりあえずデータ化して,それを家族みんなで,じゃあ音楽データはここにまとめておこうというような利用の仕方をされていて,その場合,家族全員の音楽が入ってくるということで曲が増えていくということが当たり前になってくると。大体今,国民生活の基礎調査概況みたいなのを見ると,1世帯当たりの平均が2.51人ぐらいになっているので,この調査でも3人住まいの人が多いというふうに出ているので,実は,だからみんなで共有しているということを考えると,普通に音楽CDを借りてきて,パソコンにみんなで共有しているとなると,それは300曲から1,000曲になっても,まあ自然ではないかなという感じはしています。というのが6ページです。
 もう1つ,8ページの方なんですが,これは設問で,同じ種類のメディア機器が複数あって,それぞれに保存している場合は,メディア機器の種類ごとに合算してお答えくださいとなっているわけですけれども,これはさっき述べたのと同じように,基本的には同じデータをいろいろな機器で聞きたいから入れているということになるわけですね。あともう1つ,データで買った場合,今はクラウドに保存されているので,いつでもダウンロード可能になりましたけれども,やはりバックアップをとっておきたいと。データをバックアップとしてとっておきたいということで,ハードディスク若しくは複数のところに保存するというケースもあるので,そうすると,パソコンがトラブルを起こして聞けなくなるということを避けるためにバックアップをするためにコピーをするというケースもあるので,そういったことも含めると,その人の保存曲数が2倍とか3倍になってくるので,そういったものも含まれてしまうというところがあるのかなと。
 また,各デバイスの曲数の総数が,この回答者数で割ってはいるんですけれども,そうすると,今,音楽を聴いている人で,パソコンで音楽を聴いている人というのは,自分の持っているCDを全部データ化するという極端な人か,そうではなくて,もう本当にテンポラリーに音楽を聴くという人の,ヘビーユーザーとそうではないユーザーの偏りが結構大きかったりするんですね。なので,偏りが大きくなっているのも単純に算術平均で割るというのは,データ分析の手法としては余り適切ではないかなと思うので,中央値をとるとか,そういったデータ分析をやった方がいいのではないかなということです。
 9ページの方も,やはりかなり元々偏りがあるサンプルで,単純な算術平均にしてしまっているので,また,この辺を用いた実数予測というのは余り意味がないのかなという気もしますし,例えば記録媒体推計なども先ほどの説明にありましたけれども,音楽ファイルが厄介なのは,ビットレートとか保存するフォーマット,MP3にするのか,ロスレスで大きな容量のファイルで,いい音質で保存するのかというので,10倍ぐらい容量が変わってきてしまう。そうすると,この記録媒体の推計も余り意味がないだろうと。なので,そういったことも含めてこの分析自体が,もう少しちゃんと統計の専門家の方に分析させないと,意味があるものになってこないのではないのかなということを思います。
 そして,最後の10ページ目の利益を享受する者が誰かというところですが,これは,確かにユーザーは利益を享受はしているんですが,ただ,じゃあここ10年で音楽業界で何が起きたのかということを考えると,デジタル音楽についてはDRMが外れていったわけですよね。結果的にDRMを外すことによって売上げが下げ止まるという現象が起きましたし,そういうことによってコピーコントロールCDみたいなものもなくなりましたし,時代に合わせる,ユーザーの利便性を考えて,一度購入した音楽というのはどんなデバイスでもコピーして聞けるようにするという環境が整った結果,当たり前のようにみんな利用するようになってきているので,このデータ分析ということ自体は,その利用態様を示しているにすぎなくて,単純に違法な私的複製が増えたということを示すものではないのかなということは思います。
 ひとまずは以上です。

【椎名委員】  よろしいですか。

【土肥主査】  では,どうぞ。

【椎名委員】  津田君のおっしゃることを否定するつもりは全くないんですが,先ほどもお話ししましたが,ここでは従来みたいに権利者の不利益を立証しようとか,還元すべき対価の実体を出したいとか,そういう趣旨ではないんですね。一体ユーザーが手元にどれだけ持っているんだろうかということの実態がない中で、今まで話をしてきたということで,8ページなんかは,ここにもわざわざ書いていますけれども,有料配信から保存したものなども入っているわけですよ。だから有料配信でお金を払って買ったものについてはこういう中に入ってしまっているけど,9ページについてはCDだけ取り上げてやってみたというような試算で,しかもそれが不利益だとかそういうことに結び付けて言っているつもりは全くないので,ただ規模感だけ見ましょうということで,ある一定の仮説に基づいて試算した結果がこういうことだということになります。
 ユーザーが手元に持っている保存曲数というのは,これまでの実態調査の中で,明確に推計できるような聞き方をしていなかったんですね。今回の調査は幸いそういう聞き方をしていて,こういう計算方法が可能であるというふうな専門家のアドバイスも頂きましたので,まずは規模感を知る意味でそういう分析をしてみたということになります。津田さんのおっしゃるとおり,ユーザーの利用動向も次々に変わっている,そういった部分の分析もありますけれども,そこを無視するという意味ではなくて,今まで分析できているところはこういうところで,規模感を知りましょうというようなことでお出ししたものです。
 それから10ページのユーザーに関して違法がどうのこうのとおっしゃいましたけれども,違法との関連で申し上げるつもりもなくて,こういう総体からの恩恵を受けているのはこの人たちですよね,ということなんだけれども,むしろ僕が申し上げたいのは下の方のメーカーさんの利益でありまして,こういう容量が売れて,また保存のための複製機器なんかもすごく売れていますよねということを申し上げたかった趣旨でございますので,違法ユーザーを含むとかそういう話に言及したつもりはないので,誤解ないようにお願いします。

【津田委員】  となると,このデータは,規模感というのが見えてきた中で,それで権利者の方々が要望することというのをシンプルに言うと,どういうことになるんでしょうか。

【椎名委員】  それはこれからの話だと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。
 では,榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  ありがとうございます。今,この資料の目的が規模感を知ることだということでやりとりをされていたんですけれども,その点で,対価の還元というテーマだからということだったと思うのですが,対価と言われると,普通は逸失利益だとか経済的な不利益だとかということにつながると。対価が還元されているかどうかということを見ると思うんですけれども,そういうことをおっしゃる趣旨では全くないということなのか,どういう趣旨なのかがちょっとよく分からないなと。これからだということなんですけれども,そこは非常に,ではどう見ればいいんだろうかということを思いました。
 それから,重なる点ではあるんですけれども,資料の中で,例えば5ページ目ですが,昔はコピー制御がされていて,今はされなくなったということで,コピー数が増えたということなんですけれども,それはユーザーのニーズというのももちろんありますけれども,著作権者自身がその方がいいと思って,そういうビジネスモデルに変えられたのではなかったのかなということを思いました。
 それから6ページ目については,質問というか,よく分からないなと思ったのが,300曲が1,000曲ぐらいに増えたという話で,でも2002年当時はパソコンはなかったんでしたっけということが,ちょっとよく分からないです。単純に増えたのではないんじゃないかという津田委員の意見とほぼ,結論的には一緒です。
 それから8ページ目なんですけれども,これは年齢別のという話をされると,15歳から69歳まで,ティーンエージャーから約70歳までとなると,40%の録音経験率ということなんですが,やはり年配の方というのは,10代とか20代と同じようにしないのではないでしょうか。それでこういう数値を出すということ自体がちょっと,正しい分析方法なのかということを思います。
 それと10ページで,利益を享受するものは誰かということで,ユーザーと事業者だけを挙げられているんですけれども,私は,これは著作権者自身も入るのではないかと,イーブンに入るのではないかという気がします。コピーができなければ音楽を持ち出してそもそも聞けないとか,テレビも今は録画で見る人がほとんどで,録画機がなかったらもう見ない,見られないわけで,なぜユーザーと事業者だけを挙げているのかなというのが不思議に思いました。
 以上です。

【土肥主査】  どうぞ。

【椎名委員】  まず,今回の資料の趣旨でございますが,榊原さんのおっしゃっているような権利者の逸失利益ということを言うつもりは全くありません。そういうところまで情報もありませんので,そういうことを言いたいのではなくて,このボリュームがどういう経済効果を生んでいるのか,ひいてはメーカーさんがどれだけもうかっているのか,ということを考える材料にしたいと思っています。
 それから2番目の御質問,技術的保護手段を外すことは権利者が選択したのではないかということに関しましては,CCCDのことをおっしゃっていると思いますけれど,ここではSCMSのことを言っています。SCMSというのは,先ほども御紹介したとおり,CD-RにせよMDにせよ,最初のジェネレーションにコピーしたものが世代を超えてはコピーができないという,いわゆる世代制限でございます。それに関して,パソコンというものが録音に供される機器の主流になっていった中で,パソコンはSCMSを実装していなかったということがありまして,これはメーカーさん側の取り計らいでそういうふうになっていった。権利者がそうしてくれとお願いをした経緯はございません。SCMSのことを言っているということでございます。
 それから,2002年にパソコンがあったのかないのかということでありますけれど,ここでは,その当時,録音に供される機器として主流だったのがMDであって,今回の調査ではパソコンが主流になっているということを比較検討しただけでございまして,2002年当時にパソコンがあったのかないのかというのは余り関係のない話ではないかと思います。
 それから年齢に関してですが,今回は,この3,003人の調査対象ユーザーを抽出する際に,総務省の年齢別の人口統計を参照して,年齢別に人数を調整しているそうなんですね。だからそういう意味では,これと8,751万8,000人とおぼろげには相似形を持つ傾向を持つサンプルであろうということで,これを類推して計算してみたということでございます。もちろん高齢者になれば録音率は下がってくると思いますが,年齢別に抽出したものを使って質問したということになっています。だからこの計算方法も成り立つというふうな専門家のアドバイスを頂いております。
 それから最後に,権利者も利益があるのではないかということを言われましたけれども,確かにコンテンツが浸透していくようなところでの権利者が得る利益というものはあるのではないかと思います。実際にプロモーションなどの目的で,コンテンツを無償で提供することを選択する権利者も存在するわけですけれど,基本的には権利者はコンテンツを有償で社会に提供することで生計を立てるという構造があるんですね。そうすると,バランスの問題でもあるんですが,この総体というかボリュームというものを考えた場合に,ユーザーさんやメーカーが得る直接的な利益から比べれば,権利者の得る利益は比較できるレベルではないのではないと考えて,ここには書いていません。
 例えばメーカーさんなどが開発した商品のプロモーションのために,商品を無償で配布するなんていうことも,健康器具なんかではあるようですけれど,それをまた永遠に続けるということはあり得ないわけですよね。一定のバランスに配慮して,自らのコントロールの下にそういうことを行うわけですけれど,私的複製については権利者のコントロールが及ばない領域でこういったことが起きているという点で,そこを同列に論じることはできないのではないかなと思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 河村委員は挙手されていましたか。どうぞ。

【河村委員】  重なる部分もあるかと思うので,1点だけ。保有曲数の比較として2002年の3倍になっているというのは説得力を欠いている感じがします。なぜかと申しますと,最も使用されている機器と書いてあるんですが,今は主にPCが使われているということがあるかもしれませんが,では2002年のときにほとんどMDで録音されていたということがあるのでしょうか。私もすごく音楽ファンですが,実はMDは持っていなかったんですね。カセットテープの次はCDでコピーしていたように思います。最も多い機器がMDだったとしても,それと近い割合でいろいろな機器が使われていた時代だったと考えると,この3倍というのは余り正確な比較の仕方ではないのではないかなというのは感じました。
 以上です。

【土肥主査】  どうぞ。

【椎名委員】  僕も余り大した数字だとは思っていないんですね,確かにおっしゃるとおり,2002年にパソコンもあっただろうと。この調査の3倍という数字は,余り大したものだと思っていなくて,その当時の主流であったMDと今の主流のパソコンを比べているだけで,全体像として2002年当時と2014年が3倍になったという話ではないと思います。これは一番トップだったものを比べたという比較であって,そういう話をしていても始まらないので,それでは絶対値として今どれだけボリュームがどれだけあるだろうということを考え始めたのが7ページ以降なんです。その規模感を知った上で,この議論をしていった方がいいと思いますので,3倍というのは余り意味がないというのは僕も同感でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。
 はい,榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  済みません,2回目になりますが,先ほどお答えいただいた点で,この資料の趣旨,目的が経済効果が幾らぐらいあるのかとか,メーカーがどれだけもうかっているのかとおっしゃったので,メーカーがどれだけもうかっているのかというのを検討する資料なんですかと,ますますちょっと分からなくなりました。これは感想です,別にやりとりをしても仕方のないことですので。
 それから,人口構成の件は,ちょっと私の説明の仕方が悪かったのかもしれませんけれども,要は年齢別の人口構成に合わせているというのであれば,60代とか50代が非常に多いはずですよね,単純に言えば逆ピラミッドというか。そうすると,余りやらない人が多いところで,平均値の40%なんかで掛けるというのがちょっと変ではないかなという指摘をしたつもりでした。
 あと,利益を享受する,著作権者の方も一定限度利益を享受しているということだったんですけれども,有償で提供をされるビジネスだというのは当然私も理解をしています。ただ,例えば一旦お金を払ったCDについて,違う,いろいろな,パソコンにコピーしたりスマホとかにコピーしたりというときに,それができないと持ち出せないわけですから,最初のところでやはりお金を払っているわけですね。そこ以降のコピーということについて,ここでいろいろ換算されているわけですけれども,著作権者の方というのはそれがなければ聞いてもらうことができないわけだから,すごくいいんじゃないかなと思うので,そういう意味では三者並んで利益享受者なのではないかという意味です。
 以上,補足です。

【椎名委員】  統計の専門的なことは僕はよく分からないので,ただ専門家に相談をしながらやったのがこの調査の分析ということになります。確かにメーカーの利益を直接表示している資料ではございませんので,それは別途な角度での検討が必要だと思いますが,これまでは権利者が得べかりし利益というところに話が集中していたと思うので,そういう観点から少し見方を変えてはどうかという意味で数字を出してみたということになります。
 あと,私的な複製と権利者がそこから得る利益というもの,不利益というものというのは,単純に,例えば自分が使い勝手がいいようにということから,あるいはそれが共有されていったりとかということも含めて実態としてはあるわけで,そういうものをどう包括するのかということは,これまでの議論の中でもいろいろ出てきていますけれど,そういうものをおしなべて見たときに,権利者に利益があるとは到底言えない状態ではないかなというふうに思いますので,そこは同列には論じられないのではないかなというのが,御意見を伺っても思っているところであります。

【土肥主査】  ありがとうございます。ほかにございますか。よろしゅうございますか,この点については。
 椎名委員をはじめ非常に御苦労の下に,このデータの分析をしていただいたと思います。規模感,ボリューム感,そういったものについては,具体的なこういう数字については驚くものがあるわけですが,およその勘として,12年前以上に現在ではこういうボリュームで音楽コンテンツが複製されているというところは,勘としては分かるわけでありますので,1つ,こういったものを今後の検討の資料としていければというふうに思います。どうもありがとうございました。
 それでは次ですけれども,2つ目の議事であります「クラウドサービス等と著作権について」に移りたいと思います。
 本日は,まず,ロッカー型クラウドサービスの分類に対する利用者側の御意見ということで,津田委員,河村委員のお2人から御発表いただいて,その上で意見交換ができればと思っております。意見発表の時間ですけれども,これまで大体お1人10分ぐらいでお願いしておりましたので,今回も大体そのぐらいでお願いできればと思っております。
 初めに,一般社団法人インターネットユーザー協会より,津田委員,お願いいたします。

【津田委員】  発表の機会を与えていただき,ありがとうございます。時間もないのでぱっぱといきたいと思うのですが,まず,ユーザーの目線から考える,このロッカー型クラウドサービス,そして著作権の在り方ということで,やはり先ほどの音楽を利用する,聴取する環境が変わってきたというのと同じで,相当,僕はどちらかというとITとか技術がどう社会を変えていくのか,ビジネスをどう変えていくのかということを取材する専門家ではあるのですが,その取材する立場から見ても,本当に2006年以降,クラウドというものが出てきたのが2006年からですから,それがコンシューマーまで普及し始めた2009年,2010年ぐらいからの,ここ5年間ぐらいで大きくいろいろなものが,ウエブサービスも含めて変わってきているなということが挙げられると思います。
 2ページ目,まず,前提をやはり確認するということが今回は大事だと思って,それに注力した発表になっております。クラウドロッカーと著作権の環境を考える上で,今どのようなことが起きているのか。ほとんどパソコンで,我々がふだん仕事をするときにパソコンはなくてはならないものになりましたけれども,そのハードディスクにデータを置いて使っていたという,ローカルにデータを置く時代から,もうデータのほぼ全てがクラウドに置かれる,そのような時代になることが予想されてはきています。ブロードバンドの発展自身は非常に続いていますし,また音楽や動画を扱う上で非常に重要なのがデータ圧縮技術で,これの向上というのが非常に目覚ましくなっておりまして,画質はそのままでデータ量がどんどん,半分になってきて,結果,今までクラウドに動画データを置くという余り現実的でなかったことが,かなり現実味を帯びてきているんですね。
 2ページ目の下のところにノートパソコンが置かれていますけれども,これはグーグルが作っているクロームブックというものです。今年から日本でも恐らく市場投入されてきて,売れるのではないかと言われているような,いわゆる本当にクラウドを前提としたパソコンなんですね。これはカタログを見ると,ストレージの容量が116ギガストレージと書いてあるんですけれども,実は中に入っているのは,ストレージというのはSSDが16ギガだけで,それ以外の100ギガというのは,もうグーグルが提供しているクラウドサービス,この100ギガ分をあなたにあげますと。それで,ここに全部のデータを置いて利用してくださいと,あとはブロードバンドで通信して利用しましょうよという,パソコンのOSの中にもう完全にクラウドがインクルードされているというようなパソコンが出てきたということです。こういうものが出てきていて,ほぼデータというものは,何らかの形,パソコンだけではなくて,タブレットやスマートフォンというのは,より当たり前のようにクラウドに置いて,それをダウンロードして利用して,呼び出して使いましょうよという,パソコンのローカルのハードディスク,SSDの代わりにクラウドを利用する,そういう時代になってきた。それが可能になったのは,データ圧縮技術と通信速度の向上によって,それが現実に使えるようになったということがまず前提としてあると。
 そして,1枚めくっていただいて,クラウドロッカーと著作権の関係を考える上での前提その2。これまでのパソコンというのは,データやアプリケーションというのは,パソコンとかスマートフォンの端末内の資源で全てこなしていた。これがクラウドになると,本当に,データやアプリケーション,もうデータだけではなくて,クロームブックに関して言うとアプリケーションまでがクラウドに置かれる。そして,必要な資源を必要な分だけ通信で,高速に,LTEなどを使って利用するという時代になってきているということです。これがこれからのトレンドというか,標準になっていくということです。
 そして,1枚めくっていただきまして,これが今回の本論でもあるんですけれども,一口にクラウドといっても,今回のこの小委員会でも4つ分類があったわけですが,更に技術的に見ていくと,相当細かく分けられてしまうんですね。いわゆるソフトウエアをサービスとして提供するSaaSというものもあれば,ソフトウエアを動かすプラットフォームをサービスとして提供する,いわゆるPaaSというものもあります。そしてまたインフラストラクチャーです,サーバーやCPUやネットワークのインフラなどをサービスとして提供するようなものもあったりとかなのですが,では結局何が言いたいのかというと,SaaS,PaaS,IaaSというのがあるんですが,こういうものが出てきている中で,例えば,ではDropboxはどこになるのかというときに,保存領域を与えているという言い方もできるので,ではこれはIaaSなのではないかとか,そういうことを言い始めると結構切りがなくて,何が言いたいのかというと,Dropboxが今回よく想定しているところで話に出てきているわけですけれども,Dropboxに対して何らかの,権利制限なのか,若しくは補償金なのか,若しくは権利行使をするのかみたいな,そういう議論をするのであると,我々が普通に使っている,ほかのクラウドを使ったサービス,例えばGmailとかそういったものまで,全てこのクラウドの中に入ってしまうわけです。なので,クラウド上のサーバーにデータが保存されて,ネットワーク上で何かを操作するという視点で考えると,Dropboxのようなクラウドロッカーも,Gmailのようなウェブメールも,全部SaaSに分類されてきて,しかもそれは技術的にはどっちもほとんど同じことをやっていると。技術的に同じことをやっているといったときに,もう技術者から見ると区別が付けられない。では,それを全部一緒くたにして何らかするというのは法的にどうなんですかという,ここが結構,技術の視点から見ると出てくるのではないかということが挙げられます。
 1枚めくっていただいて,ここからが我々の主張でもあるんですが,このクラウドロッカーと著作権に関する制度設計,結論から先に言うと,相当難しいであろうということです。ただ,その制度設計は多分必要でもあるだろうと,ただ,その制度設計を行う上で,必要性があるのであれば,クロームブックみたいなものが出てきたことも踏まえた今後のIT技術の発展,やはりこのロードマップというものをきちんと把握した上でやるべきであろうということと,また,そういった制度を作るのであれば,制度が技術発展を阻害しないような,そういった視点を持つべきであろうと。何かしらの制度を作ることによって,将来的に,この制限があるからこのクラウドサービスがなかなか展開できないんだよねという,思わぬ悪影響を与えないように,そこへの配慮が必要であろうということが我々の主張でもあります。
 それを踏まえた上で,また1枚めくっていただいて6ページ目,ここの小委員会で話されている大きな話題でもあるんですが,クラウドロッカーへのデータ保存,これが許諾が必要な複製に当たるのかということが大きな1つの論点になってくるのだと思います。ただ,もう実際にユーザーの利用態様を見ていれば,ほとんどのサービスというものは,いわばこのクラウドロッカーというのはワイヤレスに存在するハードディスクやSSDであるということなんですね。技術の進歩によってネットワーク上にデータを保存するということがほぼ当たり前の状況になってきている,そしてそれは個人が個人の利用目的で使うということが大半であるということなので,実質的にハードディスクやSSD,パソコンの中に入っているものに対して私的に複製しているのと同様の利用態様になっているということが非常に重要な事実ではあると思います。
 もう1つ,ただ,そうはいってもクラウドサービスというのは不特定多数に公開する機能があるじゃないかと。これも事実ではあるんですけれども,違法なファイル共有というものをクラウドサービスを使って公開した場合,それは結構検挙がしやすいわけです。実際に共有したリンクというのは,誰がこういう形で公開したのかということがひも付いているので,発信者情報が追い掛けられます。例えば僕は,前回の資料を不特定多数に公開するように,自分のDropboxを使って公開しましたけれども,それは誰が公開したのかというのは,ユーザー名が分かるので,違法なものを公開したら,あのユーザーが公開しているということが分かるわけです。
 もう1つは,割とこれも重要な話になってくると思うのは,そうはいっても音楽が主たる目的の利用になっているクラウドサービスの場合は何らかの許諾が必要なのではないか,若しくは包括契約が必要なのではないかとなったときに,そうではなくて,実際に利用していく際……,Dropboxの場合,ユーザー名は追い掛けられないですけれども,どのユーザーが公開しているかというのはサービス事業者は把握することができますし,あともう1つ,利用者がどういうファイルをクラウド上で公開している,共有しているかということです。例えば,クラウドサービス,Dropboxに,では音楽ファイルは何%使っていて,動画ファイルが何%あって,著作権上問題がない普通の書類ファイルをどれだけやっているのかということを,事業者が利用者の許諾なく中身を検閲する,調査するとなると,これは目的外利用に当たるということになるので,こういったものの個人識別性低減データの取扱いについては,また別のプライバシーの議論の観点から法改正の作業中でもあるということなので,事業者に中身を把握しろというふうに言うわけにもいかないというところです。
 では,そのあたりの実際の利用のされ方を考えたときに,やはり,一番上に書いたワイヤレスハードディスク,SSDのようなものですよねという形で処理するのが一番スムーズであろうと。つまり,個人がクラウドサービスを使って自分のデータをコピーする,アップロードするという作業は,これは私的な複製とほぼ同様のものであるというふうに理解して考えるのが,この問題に関してユーザーから見たときの一番分かりやすいやり方ではないのかなと思います。
 もう1つ,1枚めくってもらうと,例えばクラウドサービスを使って不特定多数にファイルを共有しますとやったときに,それで,先日の小委員会でのJASRACさんの資料を,共有リンクを使って僕がシェアしたんですけれども,実際にはこうやっていろいろな人がそれをダウンロードしようとすると,エラー画面が出てくるんですね。なので,パブリックリンクにたくさんのトラフィックが発生すると,それは元々,これはDropboxの方の運用の話で,それはもう少人数のための共有ではなくて,そうではない利用でしょうということで,こういう形で規制をして,3日間,事業者の方でストップするというような,そういうセーフティーロックも掛かっているんですね。誰が公開したということも既に分かっていますから,これで違法なファイルを公開していたとしても何らかのストップが掛かるし,しかも誰が公開したのかというのは分かるわけですから,それに対して粛々と現状の法律で対処しておけばいいということがありますので,クラウドサービスに共有リンク機能があるからといって,そこまで,それに対して,ではどういう法整備をするのかということまで考える必要はないのではということがあります。
 もう1つ,ページをめくっていただけると,この小委員会でも幾つか議論が出てきています,ではクラウド事業者に対して対価還元義務,これを与えるかどうかというところなんですけれども,具体的に,例えば,補償金なのか何か分からないですが,契約なのかも分からないですけれども,音楽ファイルや動画ファイルに対してきちんと権利処理をして対価還元をしてくださいという法整備がされたとすると,多分起き得ることというのは,かつてデータCD-Rと音楽用CD-Rで起きたようなことが起きると思うんですね。例えば,ほとんど事業者の方は利用規約で,弊社が提供しているクラウドサービスについては音楽ファイルや映像ファイルをアップロードしないようにしてくださいというような利用規約になるのか,若しくはプランを2つ用意すると。音楽をクラウドに上げたい人はこっちの高い,今は月300円とかで利用しているものを,月500円の方を利用してくださいというような,そんな別契約を求めるみたいな,そういうことになるんじゃないかと。
 なので,そうすると結果的には,データ用CD-Rと音楽用CD-Rがあったときに,どっちも中身は同じでしたから,音楽ユーザーというのはデータ用のCD-Rを買ってきて音楽をコピーするというようなことがよくあったように,それがあったところで多分期待どおりの対価還元は得られないだろうということとともに,最も考えられるのは,そうはいっても日本の事業者だけがそういうサービスになってきたときに,多分海外の方がそういうことに対応するとは,クラウドサービス事業者が対応するとは思えませんから,そうすると,ユーザーから見ると,そういった制限がない,若しくはそういったもののコスト的に安く済む海外のサービスを使っていくだろうと。結果的にそれは国内の事業者の撤退とか,参入障壁になってしまうので,これはクラウドサービスを用いた,日本のクラウドサービスを作った事業者の振興,イノベーションというところでいくと,余りいい影響がないというか,ネガティブな影響があるのかなということなので,そういう意味で考えたときに,クラウドというものを私的複製の延長で考えて,そしてまたこのクラウド事業者,メーカーも含めたクラウド事業者に対して対価還元義務を課すということは,結果的に国内産業の空洞化の原因になるのではないかと。それは成長戦略として本当に適当なんですかという問題があるのだと思います。
 また,技術的な観点というのもいろいろありまして,9ページ目の方に紹介したような,Dropboxというのは事業者と契約するようなクラウドサービスですが,今,ownCloudといったフリーソフトウエアがありまして,これを使って,例えばレンタルサーバーの事業者と契約して,Dropboxの環境というのを自分で実現することができるんですね。ただ,そういうものに対して,自分でこれを運営したときに,自分でこのクラウドサーバー,クラウドサービスを自分の借りているレンタルサーバーのスペースで実現した場合に,これでクラウドサービス事業者に何らかの対価還元を求めるとなったときに,では誰に求めるんだということになっていくと思うんです。
 もう1つ,10ページ目の方にもありましたけれども,これは小さなスタートアップベンチャーの話で,スタートアップベンチャーがウェブを使って,何らかのクラウドを使ったサービスをやるときに,ほとんどが今,アマゾンといったようなクラウドサーバーをレンタルしてサービスを立ち上げているんですね。実際にそのデータが置かれているというのはアマゾンのクラウドなんですけれども,でもサービスを提供しているのはそのA社だったりするときに,ではクラウド事業者に対して対価還元を求めていくといったときに,実際にデータが置かれているのはアマゾン,しかしそのアマゾンのデータを使ってサービスを提供しているのは立ち上げたA社,そしてユーザーがいると。でも,これはなかなかややこしいですね,アマゾンとユーザーが直接データをやりとりしているんだけれども,その間にA社というウェブサービスが挟まっているとなったときに,ではこれは,クラウド事業者に対して何らかの対価還元を求めていく先が,アマゾンなのか,それともこのサービスを仲立ちしているA社なのか。それをやるときにどういう法,技術的にそれを作るのかというややこしい問題というのも出てくるということです。
 きょうは技術的な話もすごく多いので,ちんぷんかんぷんという方もいらっしゃるかもしれないですが,そのちんぷんかんぷんということが分かっていただけるといいのかなと思っていて,それで最後に意見をまとめると,このクラウドサービス,非常に変化も早いです。利用者側もそうですし,サービス提供側も含めて非常に変化が早いというところで,今後どうなっていくのかというロードマップを十分把握した上で,未来を見据えた制度設計,検討すべきということと,あともう1つ,これはインターネットユーザー協会からの提案なんですけれども,多分この著作権に関する議論についても技術面を語るワーキングチームが必要ではないかということが挙げられると思います。ここで,例えばグーグルやアマゾン,若しくはいろいろなサービス事業者を含めた,ウェブの技術的に,こういったサービスは著作権等の議論でどうなるのかということをきちんと技術の側面から語る技術ワーキングというものを作らないと,こういったネット時代の著作権を語るときに対応できないのではないのかということを思っております。
 そして,クラウドロッカーの利用というのは実質的に,ほとんどのユーザーの利用態様を見ていくと,今までの私的複製の延長として利用されているので,そこから考えていくと,クラウドサービスを通じた権利者の対価還元というのは,現状のクラウドサービスの利用のされ方を見る限り不必要ではないかということです。
 そしてもう1つは,これはMYUTA裁判なんかでも論点になりましたけれども,では,そのクラウドを利用する際にデータ変換などもサービス側で行われているケースがある,そのときにどうするのか。このクラウドコンピューティングというのは,単にデータを保存するだけではなくて,保存したデータの中でデータの変換なんかも行える,そういった機能も提供して,それが利用者にとって利便性をもたらしているというところもあるわけです。そうなったときに,実質的に私的複製的に見えるような利用というので,でもフォーマット変換が行われているから著作権侵害だというようなこと,そのあたりも含めて,合法化するような議論というのもあってしかるべきではないのかなと思いますし,これはやはり,もう1つ大きな視点で言うと,ユーザーや事業者にこういったところでのリスクをとっていく,対価還元を求めていくというところであると,やはり,ここ数年ずっと懸案事項にもなっている,もう少し幅広い形の一般的な権利制限とセットで行うなどのことをしないと,バランスがとれないのではないかというふうに思います。
 非常に,ちょっと技術の話が多くなってしまったんですけれども,ユーザーからの,我々の団体からとしての意見発表は以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは続いて,主婦連合会から河村委員,お願いいたします。

【河村委員】  消費者からの意見の発表の機会を頂いて,ありがとうございます。非常にシンプルな資料を用意しました。あらゆる消費者が新しい技術の恩恵を享受できるようにという観点からの意見を書かせていただきました。
 そもそも論から書いているんですが,消費者とは,つまり生活を営んでいる生身の人間であって,組織の後ろ盾のない,一人一人の個人のことです。消費者は生きていくために,また健康で文化的な生活を維持するために物やサービスを買って,利用しています。
 主婦連合会というのは消費者団体として,そのような消費者の権利を守るために活動しています。余談ですが,消費者の権利という言葉を最初に言ったのはアメリカのケネディ大統領です。何でこういうそもそも論から始めたかということですが,消費者のための活動をしていて,いろいろな製品の安全とか食の安全ですとか,あるいは表示の問題とか,消費者団体のメインテーマといえる分野では,消費者の権利を守る,というフレーズが使われる機会が比較的あるんですが,著作権の分野では議論の中で消費者の権利ということが,言及されることが少なくて,それを言う人の数も少なくて,非常に消費者の権利がないがしろにされているというふうに考えています。ここの会議でも,権利者の方と事業者の方の間の契約で解決すればいいじゃないか,それを消費者が選択すればいいじゃないかということがいろいろな方から言われるわけですが,そのようにして用意された選択肢が消費者の権利を尊重していない,損なっているものであれば,その状態はアウトなのです。そういうことがないようなビジネスの設計をするということがまず大前提だと消費者団体は考えております。これは何も,何でもかんでも自由にさせてくれと言っているのではありません。技術がどんどん進歩していくと,機械的に,技術的に,消費者は簡単に支配され,縛られ,本来維持されるべき自由を奪われるということが起こっています。ですから,著作権の分野でも消費者の権利というのはすごく大切になってくると考え,そもそも論から言わせていただきました。
 私的複製の方法が時代とともに,技術の進歩とともに変化していくときに,ルールもまたその進歩に沿って,時代に合った複製の方法を容認していかなければ,今この社会を生きている消費者が技術の進歩の恩恵を受けることができません。したがって,大前提として,ロッカー型クラウドサービス,資料には共有機能を有しない限りと書きましたけれども,これは事務局の類型でいうところの不特定多数での共有という意味で,公開に近いものということですが,そういうものでない限り,消費者が正当に入手したコンテンツの私的複製物としてそれを保管したり,自由に引き出すことができるロッカーとして安心して使える,そういうことがルールとして担保されることを求めます。これは大前提だと考えます。
 どんな人でも新しい技術の恩恵が受けられることが大切と書きましたが,クラウドだ何だといいますと,すぐ若い人たちやマニアックな人たちのことを想定されるんですけれども,そうではないと考えているので,あえて,ほかの方が余り言及なさらないことを書いています。超高齢化社会といわれますが,例えば高齢になり,さまざまな理由でこれまで暮らしていた広い住居から狭い,コンパクトな住居に引っ越ししなければいけないとか,体の衰えからケア付きの住居や施設に移るというような場合に,その人たちが,自分がそれまで人生で正当に取得してきて,大事にしてきたコンテンツ,それがたくさんの蔵書だったり,たくさんのレコードやカセットテープやCDだったり,様々な映像のコレクションだったり,それをクラウドで保管して自由に視聴できる仕組みがあったら,どんなに人々の老後の生活に光を当てるだろうかと私は考えております。たくさん人生を歩んできた人ほど,たくさんの大事なコンテンツがあるはずで,それは物としてはかさばるわけで,重くて,所有し続けることが困難なんですけれども,データにすれば,自分の大事な宝物のようなコンテンツを持ち続けることができるんですね。
 消費者,利用者目線で,どんなふうに魅力的なサービスが可能になるかということを,それを最優先に考えると,ビジネスはおのずと後からついてくるのではないかと私は考えております。どんなメディアでも変換してくれるサービスですとか,自室の棚に向かうようにコンテンツを容易に,楽しみやすくする魅力的なインターフェースですとか。このとき,認めるべき自由は認め,フェアなルールを設定するという,その原則が何よりも大切と考えています。近視眼的に,それが直接利益を生むか生まないかということから,利益を生む部分は認めるけれども,そうでないものは消費者の権利を度外視して自由を認めないということであれば,消費者はますますコンテンツから黙って離れていくだけだと考えています。
 今まで取得したコンテンツが無駄にならずに,より便利に楽しめる世界が開けたときに,と書きましたが,その世界は今,全く開けていません。もうメディアが古くなったものはほとんど捨てていかなければならないのかという状況になっていますが,もしそういう世界が開けたら,年齢を問わず,消費者は新しいコンテンツをそのコレクションに増やしていきたいという気持ちが芽生えるというふうに考えています。
 少し付け加えさせていただきますと,この書籍,音楽,映像などの中には,テレビ番組の録画というのが入ってくると,映像の中に入ってくると思うんですけれども,華頂委員,今日はいらっしゃらないですが,この間,華頂委員が,テレビ番組の録画が「ネットに出る」ということで強く意見をおっしゃっておられましたけれども,最近,リモート視聴というサービスというか機能があるテレビが売り出されています。あるメーカーさんに今のところ限られているみたいですけれども,自宅のハードディスクの中にたまった録画,あるいは現に今放送されているテレビを,複数の自分のデバイスから,外からリモートで再生して見たり,今行われている放送を見たりすることができるというものです。私はずっとそういうのがあればいいのにと思っていましたが,それはルール上できないと,放送事業者さんたちが作っている団体の規格上できないと思っていましたし,できないと聞いていました。しかしそれは,そのルールを書き換えることによって可能になっているんですね。
 何が言いたいかと言いますと,半歩進んだということを申し上げたいのです。それはクラウドにアップするという方式ではなくて,自宅のテレビにアクセスするわけですけれども,華頂委員がおっしゃっていた言葉で言えば「ネットに出て」いるわけです。インターネットを介して見るという仕組みですから。それをクラウドに保管してそこにアクセスして見るというのは,もうあと半歩踏み出せばできると思っています。リモート視聴の場合は事業者さんたちの,ARIBの規格の変更で可能になっていますが,そのような規格であったり,著作権法であったり,いろいろなルールをきちんと時代に合ったものにしていくことによって,せっかく技術的にはできるのに,便利なサービスが受けられていない,老若男女そういうサービスの恩恵が受けられるはずなのにできていないという現状を,この小委員会で解決していけたらと強く願っております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは次に,意見交換に移りたいと思っていますけれども,このクラウドサービス等と著作権の問題につきましては,昨年度の法制・基本問題小委員会や,その下に設置されましたワーキングチーム,そして今年度の本小委員会において,既に様々な観点からの議論,御意見,こういったものが活発に示されているところでございます。本日の議論,さらには今後の議論をより深いものとするために,一応,事務局において,これまでの議論を整理する形で概要をおまとめいただいておるようでございますので,これについての説明をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,御説明申し上げます。
 資料4をごらんください。今回の意見の整理では,当面議論の対象とすべきサービスについて,それからロッカー型クラウドサービスの分類に関する意見というものと,それから,権利者への適正な対価の還元と,3つの柱に分類して整理させていただきました。なお,参考資料としてお配りしているロッカー型クラウドサービスの分類に関する資料も,必要に応じて御参照いただければと存じます。
 まず,1ページ目のローマ数字1.当面議論の対象とすべきサービスについてでございます。この点につきましては,大きく分けて2つ,御意見がございました。私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスを中心に検討すべきというものと,私的使用目的の複製に関係するクラウドサービス以外についても検討すべきという見解でございました。
 前者につきましては,まず,全てのサービスを同時に検討することは混乱を招くため難しい,安定的に運営がなされており,共通の理解の下に検討ができるサービスとして私的使用目的の複製が関係するクラウドサービス,すなわちロッカー型クラウドサービスが当面検討のターゲットになるのではないかとの御意見がございました。また,私的使用目的の複製に関する問題を中心に議論を進めつつ,契約で解決することができる部分は契約で処理するといった観点から問題を分析するべきという御意見。それから,議論の選択と集中をしなければ議論が発散するという御意見でございまして,その際,議論を整理する上でロッカー型サービスの4分類が分かりやすいという御趣旨の御意見がございました。
 他方,私的使用目的の複製に関係するクラウドサービス以外についても検討すべきとする見解としましては,私的使用目的の複製が関係するクラウドサービス以外のクラウド上の情報活用サービスについても海外では広く展開されているものがあり,我が国においても早期に検討をお願いしたいとの御意見がございました。こうした御意見に関しましては,海外におけるサービスについて,各国の法律において適法なサービスとして展開されているのか不明であると,事業者がリスクを負って展開しているものもあるのではないかという御意見や,例えばアメリカと日本では法律の在り方が全く異なるので,そこを無視して議論をしても仕方がないという御意見がございました。
 次のページをお願いいたします。こうした議論を踏まえまして,当時のワーキングの土肥座長から,当面は私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスから検討を行ってはどうかとの御提案がなされ,特段異議は示されなかったことから,私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスについて検討がなされることとなったところでございます。
 次に,ローマ数字の2のロッカー型クラウドサービスの分類に関する意見について,紹介申し上げます。ここでは,参考資料にあるタイプ1から4,それぞれについて議論を整理させていただいております。
 まず,タイプ1及びタイプ3の配信型に対する御意見でございます。これについては,権利者とクラウド事業者との間で締結される利用許諾契約による対応で必要十分であるということで,権利者と事業者との契約によって対応すべきとする御意見が多数でございました。
 次に,タイプ4,共有・ユーザーアップロード型というものでございますが,この点につきましては,まず次のように,権利者と事業者との契約やプロバイダー責任制限法等によって対応すべきとする見解が示されております。すなわち,いずれのクラウドサービスも契約関係によりサービスを提供することが適当である。利用促進のためのビジネスモデルを構築することも必要であり,その際,許諾を受けようとしたときに誰に話していいか分からず時間が掛かる状況があるので,それに対応する機構を構築することが求められるという御意見がございました。また,一部関係権利者との契約で導入されているサービスもあるが,契約がない場合には,まさに無許諾アップロードの代表的類型であるため,権利制限規定等の法制度の見直しという解決策は不適切であり,契約で解決すべき旨の御意見もございました。
 これに関し,タイプ4に関しては,権利者とクラウド事業者との間で包括的利用許諾契約が締結されるかは個々のケースによるとしつつ,契約締結判断に当たり間接侵害の成立範囲が明確になっている必要があることから,その成立範囲の明確化を期待する旨の御意見がございました。それから,タイプ4におきまして,利用者が著作権者等の許諾なくコンテンツをインターネット上で公開するのは著作権等侵害に該当するところ,事業者はプロバイダー責任制限法の枠組みの中で,事後的に申告等に基づき削除の措置をとるなどしている旨の御説明があったところでございます。
 3ページをお願いいたします。タイプ4に関しては,映画やアニメ等の分野では,以下のように,タイプ1及び3において確立したビジネスモデルがあるため対応の必要はない旨の見解が示されております。すなわち映画については複製禁止を原則としており,あり得ない対応であるとしつつ,映画配信についてはMovieNEXなどのユーザーのニーズに応じた配信の取組を進めているとの御意見。またアニメについても,自由にやりとりできるデータをユーザーに販売している状況にはないという御説明がございました。
 次に,3ポツのところでございます。タイプ2に対する意見を紹介いたします。タイプ2全体にわたる御意見,議論としましては,大きく分けますと,私的使用目的の複製と整理されるべきとする見解,それから,法的に明確に切り分けることは困難であるという見解,それから,権利者と事業者との契約によって対応すべきという見解がございました。
 まず1つ目の見解としまして,ユーザーが用意したコンテンツや,ユーザーが用意してはいないがネットなどから入手できるコンテンツについて,どの著作物を保存し,送信するのかを意思決定するのもユーザーであるという場合には,ユーザーが行為主体と考えるべきではないかとの御意見がございました。また,自分自身で便利に使う限りにおいて,違法な手段ではなく,正規に持っているものをロッカー型クラウドに上げて自由に使えるようにするべきであるという御意見もございました。
 これに対し,法的に明確に切り分けることは困難であるという見解としまして,事業者の関与度合いが低く,私的使用目的の複製と整理できるものもあるが,タイプ2の全てがそう言えるわけではなく,クラウドに様々な機能を付加することによって事業者が関与度合いを高めていくことも可能。今後もクラウドサービスが多様に発展していくことに鑑みると,そこに何かしら法的な明確性を求めることは難しいのではないか,結局は事業者側で,どの範囲まで,どのようにしたらサービスが提供できるかということを考えて進めていくことが必要であるとの御意見でございました。
 また,権利者と事業者との契約によって対応すべきとの見解につきまして,既に事業者,権利者間で契約が実現された事例があるということ,仮にユーザーの行為が私的な行為という評価であったとしても,様々な検討すべき法制上の課題があるということ,これを考えると,契約処理の促進によりサービスを実現することが現実的ではないか。それによって利用者も安心して,適法に,早期にこの先進的サービスを利用できる環境が整うのではないかという御意見でございます。放送につきましては,今後展開される具体的なサービスに応じて,利用者の利便性と権利者の利益のバランスを考慮しながら,関係者間で適切な方策について合意されることが重要であるという御意見がございました。また,タイプ4のところでも御紹介しましたが,いずれのクラウドサービスも契約によりサービスを提供することが適当であるとしつつ,権利処理のための機構の構築を求めるという御意見を頂いております。
 このような契約により対処すべきとの意見に対しては,契約処理でうまくいかない現状があるとして,多様化するビジネスに対応するためには,著作権法に柔軟性のある規定を制定することが必要ではないかとの御意見がございました。他方,こうした議論に対しましては,知的財産に関する取引も基本的には契約によって処理されるべきであり,契約で対応できない部分があるからといって,その部分を取り出して特別な対応をせよというのは経済取引の原則から考えるとおかしいのではないかとの御意見がございました。
 なお,契約処理の実施に関する御意見としましては,権利者団体と事業者団体との間で協約的な権利処理を行うのではないかとの御意見がございました一方,権利者の団体を全て集めて事業者の団体と契約することは実際には難しいのではないかとの御意見もございました。このような議論に関しては,スピード勝負のところもあり,まずはまずは契約処理に積極的な権利者と事業者との間でモデルを作るなど,できるところから始めることでよい。ネット事業者が契約処理モデルの成立に前向きになるべきである旨の御意見もございました。
 なお,映画及びアニメ等については,タイプ4に対する意見のところでも御紹介したとおりでございます。
 次に,4ポツのところでございますが,タイプ1から4に係る個別の議論以外の点に関する御意見としまして,今後は個人で購入する作品が個人の端末でどこでも楽しめるようにするという流れが不可避であるという中で,権利者と事業者はお互いの立場を尊重した上で,利便性の高いサービスの実現に協力していくことが求められるのではないかとの御意見がございました。それから,クラウド上の情報活用サービス等の多くはクラウドやインターネット特有の問題ではなく,私的使用目的の複製にとどまらない複製権の権利制限全体に関わる課題であるということで,慎重に取り扱うべきとの御意見もございました。
 最後に,ローマ数字の3.権利者への適正な対価の還元に関する御意見を紹介いたします。この論点につきましては,大きく3つの観点で御意見がございました。
 まず1つ目として,ロッカー型クラウドサービスにおいて,権利者がコントロールできない流通が増大し続けている現状下にあっては,コンテンツの訴求力から生じる果実を享受している事業者が権利者への対価の還元について一定の負担をしていく仕組みを確立することが重要との御意見。一方,対価還元の問題は,コンテンツ流通の上流から下流までのあらゆる局面を包含するものである一方,限定的な一局面にのみ関わるクラウドの課題とセットで議論すると論点が錯綜するのではないかという御意見がございました。このほか,権利者への適正な対価の還元は,原則的には契約処理によって担保されるはずであるとしつつ,将来にわたって日本のコンテンツの制作力や制作過程が担保される土壌を守っていく必要があり,補償金というよりは,クリエーターの育成と創作拡大に向けた支援金という形を考えていくべきではないかとの御意見もあったところでございます。
 これらが議論の整理でございます。以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,これまで一般ユーザーといいますか,利用者の方からの御意見を伺いましたし,それから,ただいま事務局から,これまでの議論の整理を紹介していただきましたけれども,これらについて御意見あるいは質問,こういうものがございましたら,まずお出しいただければと思います。
 津田委員,どうぞ。

【津田委員】  確認なんですけれども,今日は,我々インターネットユーザー協会と,あと河村さんの意見があって,こちらの資料4のまとめには当然反映されていないと思うんですけれども,これはまた後ほど反映されるという理解でよろしいのでしょうか。

【秋山著作権課課長補佐】  はい。今日頂いた御意見は,今後の議論の参考にさせていただくことになると考えています。

【土肥主査】  意見の取りまとめの中に,意見概要の中に反映してほしいと,こういうことですね。

【津田委員】  はい。

【土肥主査】  よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】  はい。

【土肥主査】  話が2つあるのでちょっと難しいのかもしれませんが,利用者の方からの御発表について御質問,御意見があれば,これを先に,重点的にやりましょうか。いかがですか,この点についての御質問,御意見ございましたら。
 では,椎名委員,お願いいたします。

【椎名委員】  河村委員の御発表の後段の部分,まさにそのとおりではないかと思います。津田さんの列挙されたとんがったサービスもそうなんですけれど,基本的に普通の人がどれだけ便利に利用できていくのかというところに,多分消費者としても重大な関心があって,そういうところで,ややもすると著作権が原因で不便であると,すぐ言われるんですけれども,それはそうではなくて,ビジネスの業態上の問題だったりする。例の,河村さんと僕が一緒にやったコピーワンスの話も,権利者はコピーワンスを望んでいるとかという話から始まって,ダビング10まで行き着いたんですが,とかくユーザーの利便性に立ちはだかる権利者,ユーザーの権利というふうにもおっしゃいましたけれども,ユーザーの権利と権利者の権利が拮抗するような構造での話がやや多いんですね。それに対して権利者側は,では利便性を提供できるように集中管理を充実しましょうとかという努力をするわけですけれど,なかなかそういうところで利用者対権利者みたいな構造がぬぐえていない状況というのがかなりあると思っているんです。
 その理由は,やはり私的録音録画補償金制度はユーザーが支払い義務者だということがあって,メーカーさんなんかは協力義務だけで,ユーザーの権利と,権利者の権利,その利害の拮抗局面で語られることがすごく多くて,そういう座組みになってしまっていると思います。

 またこれは、津田委員の御発表も河村委員の御発表も共通して言えることなんですけれども,クラウドを提供している事業者も営利活動でやっているわけですよね,別にボランティアでやっているわけではない。そこで当然ながら大きな利益も上げられるからこそやっていく。そこのところの要素が一切言及されていないのは物足りないなというふうに,ちょっと思ったりします。その利益があたかも存在していないかのように触れられないことについては,ユーザーの目線としてはどうなのかなというのをちょっと感じてしまいます。僕も消費者の一人ですので,本来消費者というのは,提供されるサービスや製品の中身や対価,それから事業者が上げる利益なんかについて,それが妥当なものかということについて,それなりに敏感に,絶えず検証して,時にはジャッジをしていくというような権利を持っていると思うんですね,消費者というものは。そういう批判的な目線はなくて,次々にこういうサービスが用意されていって,これは津田さんの資料がそうですけれども,これに乗り遅れるともうみんなだめですよみたいなところに終始してしまうのは,消費者としてニュートラルなのかなと,ちょっと疑問に思うんですね。
 やはり機材の提供者もサービスの提供者も,それが儲かるからやるわけであって,そこの部分の利益というものも,このステークホルダーの利害の中に入っているんだということを,僕は強く申し上げたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】  御意見ということですね。

【椎名委員】  はい。

【土肥主査】  津田委員,どうぞ。

【津田委員】  今の椎名委員のお話を伺っていて思ったことというのは,例えばクラウドの事業者って,恐らくハードディスクを作っているメーカーとほとんど同じ意識であると思うんですよ。例えばハードディスクを作っているメーカーというのには,ハードディスクの中には文書も入れば音楽も記録できるし,動画も記録できるし,別に中身に何が入るのかということを想定せずやっているというわけですから,例えばコクヨという文房具メーカーがあって,コクヨがノートとか原稿用紙とかを作っているわけですけれども,でもあれは,我々のような著述業のような人間に,それを使っていることで商売になっているのだから対価をよこせというふうに言うのかというと,別にそれは言わないですよね。だから飽くまで便利なものを提供しているというときに,例えば録画機器とか,例えばテレビの録画ですとか映像のMDですとか,もう専門の,これはもうずっと前の私的録音録画小委員会のときから話がありましたけれども,専門性が高い,専門録画機器であれば,そこに対してのクリエーターへの適正な対価還元というものがあるということの妥当性というのはあると思うんですけれども,だからやはり汎用性が余りにも高い業者については,それはやはり求めるのは妥当ではないというのが多分ユーザーの当たり前の感覚だと思うので,この場合のクラウドの議論というのは相当やはり汎用性の高いものなので,その汎用性の高いものの議論をしている中でクリエーターへの対価還元の議論がないという話が出てくるのは,ちょっと違和感があるなということがまずあります。
 あとは,この委員会が設立された経緯,若しくは知財本部がフェアユースを入れた方がいいんじゃないかというようなことを文化庁によこした経緯なんかでもあったのが,やはり日本からコンテンツをきちんと盛り上げていくための,そういうネットのサービスの環境を整えるという意味合いもあったと思うんですね。この委員の中に杉本委員がいらっしゃるので,あえて申し上げますけれども,かなりドワンゴが,ニコニコ動画が成功できたというのはアクロバティックな実例だったというか,相当綱渡りで,僕はあれは成功したと思っているんですね。あれが本当に訴訟か何かを起こされて,サービスがなくなっていた可能性というのは随分あった中で,その中でもJASRACさんの包括契約みたいなもので道が開けて,結果的には,あれがあったことによって日本独自のコンテンツというのが育っているという状況もある中で,やはりそういった中での法的環境というものがイノベーションを起こすような環境にある程度整えることで,第二,第三のドワンゴを増やしていく,ニコニコ動画を増やしていくということが,恐らくこのクラウド時代の著作権について求められていることだと思いますし,そういった観点で我々は今回の発表もしたということがあるということを申し添えておきます。

【椎名委員】  津田さんが今いろいろなことをまじえておっしゃったんですけれど,ハードディスクを売っているのと同じような気持ちでサービスを提供しているとしたときにも,そこでコンテンツが利用された場合にも使える。その次の汎用性の話と関係するかもしれませんけれども,それを前提に一定の事業活動としてそれを提供するわけですよね,そこで利益がないわけではない。そこの利益を全く無視していいんですか,ということを申し上げているんです。
 ここで,津田さんの資料で産業空洞化みたいなことまで書いてあるけれども,産業が空洞化しているのはコンテンツの方がとっくに空洞化している・・・ということがあるんですが、産業空洞化とまでおっしゃって,ユーザーと.そういったサービスの提供者の利益が全く合致しているかのようにおっしゃっているのは,何か,消費者としてどうなんだろうかというふうに思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。挙手をなさったと思います。
 浅石委員,どうぞ。

【浅石委員】  津田委員にお聞きしたいんですが,津田委員は,最終的に何か侵害があったときはエンドユーザーに責任を求めるべきだというふうにお考えになった上で議論を展開されているのか。権利者は,エンドユーザーの責任は全くなしとは言わないけれども,エンドユーザーに安全で安心なサービスを提供するために,事業者と権利者との間で契約関係を整える方がいいのではないでしょうかというような趣旨なんですけれども,津田委員は,やはり最終的には,エンドユーザーが責任を持つべきだというふうにお考えになっているのかどうかということ,そして,私的複製から議論が始まったときに大きく抜けているのが,公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器にクラウドサーバーが該当するかどうかということについて御意見がなかったので,この2つについて津田委員の御意見をお聞かせ願えればというふうに思います。

【津田委員】  何かあったときにエンドユーザーが責任をとるべきかということであれば,日本の場合,送信可能化権もありますし,それはそういう形で実際にアップロード,違法なアップロードをしたユーザーが逮捕されるという事例がありますから,それはクラウドであろうが何であろうが恐らく変わらないことだとも思いますし,それはサービス事業者も粛々とその手続にのっとってやればいいと思うんですね。
 逆に言えば,事業者の側がクラウドに実質的に,私的複製のように利用しているような,それを超えて不特定多数と共有するようなものを意図的に事業者がやる場合というのは,それはまた別の処理というのが必要になってくると僕は思いますけれども,多くのクラウドサービスというのは個人のリモートハードディスクのように使っている場合がほとんどですので,よほど悪質な場合であれば,ほかのいろいろな現状の法律で対応していけばいいというのが基本的な考え方ですし,違法アップロードする人間がいれば,それはそのエンドユーザーが訴えられればいいのではないというふうに思っています。
 もう1つのクラウドサーバーが該当するかというところで言えば,我々のプレゼンでもあるように,基本的には,もう実質的にほぼ私的複製と同じような形で,一度購入したものをタイムシフト,プレースシフト目的で利用するというのが当たり前のようになっていると。一部はそれが,アップルのように契約ベースで全て実現しているものもあれば,自分でクラウドにデータを置くことによって,自分だけで利用しているケースがあると。そうすると何が起こるのかというと,例えばNTTさんが提供しているクラウドサーバーに自分の所有している音楽とか動画を上げた場合は権利許諾や補償金が上乗せされるみたいなことがあるのと,じゃあ,そういうものを面倒くさく考えないようなアップルで買ったものというのは,そっちは利用できる,自由に利用できるという状況になった場合は,皆さんアップルとかグーグルとかアマゾンのサービスを利用しますよねという,これは先ほどの椎名さんの産業空洞化にという話にもつながるんですけれども,そういうことをやって得をするのが,基本的にもうアメリカの企業だけなので,そうではなくて,そこでの無用な足かせみたいなものを,実質的に私的利用というふうに使われているようなクラウドサービスについては求めていくべきではないというのが我々の考え方です。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【浅石委員】  あたかも海外の事業者さんは契約をとらないかのような発言をなさっているんですけれども。

【津田委員】  いや,そういう発言ではないですよ。契約が成立をしているという話なので。

【浅石委員】  少なくとも,ユーチューブさんについてもニコニコ動画さんにも,ユーチューブさんは外国資本ですし,ニコニコ動画さんは国内の資本ですけれども,そこは契約をしていただいておりますので。

【津田委員】  では逆にお伺いしますけれども,Dropboxに対しても包括契約をJASRACさんは求めていきますか。

【浅石委員】  この議論の結果によっては,当然そういう形になると思います。別に国内だろうが海外だろうが全然問題はないというふうに私たちは考えています。

【津田委員】  Dropboxに対してそれをやるとなると,多くのユーザーは恐らく,多分納得ができず,相当な反発も予想される気がします。

【土肥主査】  タイプ2の話とそれ以外のタイプの話と,ちょっと混乱があるようにも思います。

【津田委員】  そうなんですよ。だからそれをやるとなると,例えば世界中で最もシェアがあるアマゾンのクラウドサービスにも求めていくんですかみたいな話になると,結構,これは業界激震の話になってしまうと思うので,そこはちょっと整理された方がいいと思います。

【土肥主査】  ほかに挙手された方は。
 では,松本委員,どうぞ。

【松本委員】  津田さんのこの表から,ちょっと質問というか,聞きたい部分があるんですけれども,5ページ目からお伺いします。今まで,先ほどもお話あったように,私的録画補償金制度があって,それが崩壊したといいますか,解釈が変わったということ。それはかつてアナログからデジタルに変わったということも1つの要因だろうし,そういう意味では,ここに書かれているように,これからどういうふうにIT技術が発展していくかというロードマップの議論といいますか,将来を見越した議論というのは非常に大事だと私も思います。同感です。
 ただそういう中で,我々コンテンツの開発,権利者側から見ると,前回,私も説明させていただいたように,いろいろなツール,いろいろなインフラ,いろいろなネットワークができるごとに,それぞれに対応し,契約をした上で,その事業者と権利処理をした上で,条件をクリアにした上で,配信なりビジネスを展開しているという意味では,このクラウドも広くとれば,そう言っていいのかどうか定義は別として,ある意味ハードディスクの大きい,もう地球規模である,何億テラという容量のハードディスクだというふうに考えれば,ユーザー側から見ると,例えば2時間の動画として,それを100本録画をしようとすると,大体DVD,SDクオリティーで1テラから2テラあれば十分なんですね。その1テラ,2テラのハードディスクというのは一般の電気屋で数千円で買えるという部分と,個人で所有しているものをクラウドを使ってアップロードするという部分で,利便性,利用する実態ということを考えたときに,例えば私もDVD,ブルーレイ,数百本持っているんですけれども,それを全部上げても20テラもあればもう十分カバーできちゃうんですね。これが私が死ぬまで何本買えるか,キープできるか,それを全てクラウドに預けても数テラしか掛からない。その辺の個人ユーザー,動画のユーザーから見たクラウドサービスの利用の仕方というのをシミュレーションすると,そんなにクラウド,クラウドっていう,大事だということは,全体の流れとしては大事なんですけれども,それを利用する利便性というのは一個人に対してどれだけあるかというのは非常に疑問といいますか,があります。容量的に。
 もう1つは,津田さんもおっしゃっているんですけれども,事業者に対して対価還元義務を与えた場合どうなるかという部分になるんですが,クラウドの設置する,そのメーカーといいますか,ハードを作っているメーカーの考え方と,そのハードという,ハードディスクと言っていいんですかね,それを利用する事業者と,そのクラウドという仕組みができたものを使う一般ユーザーという観点から見ると,みんな違うと思うんですね,事業形態,あるいはそれから来る収益の構造も違う。ユーザーから見ると,我々アニメの業界からすると,テレビ放送したものを勝手にコピーされて,それをアップロード,要するにローカライズされて,中国語,英語で,無断で,違法で配信されてしまうということが,国によってはそれが何で悪いんだという話がよく出ます。テレビで放送しているのはただで見られるじゃないかと,ネットで配信してそれをただで見せるのが何で悪いんだと,反論するんですね。
 そういった意味のことに,このクラウドサービスの利用の仕方を間違えた解釈をしてしまうと,ユーザーにとってもそれは間違えた方向を示唆することになるし,メーカーあるいは事業者がその辺をきちんと,クラウドサービスの方向性はこうですよと,こういう利用の仕方をすることでこういう利便性がありますよと,実際,一個人,本当に1人が使ったときにはこれぐらいの範疇で使えるんじゃないですかと。それを世界規模,あるいは事業者に預ける,あるいは直接クラウドにアクセスできるような仕組みの中でどういうふうに使えるんだということの情報を,もっと出すべきだと私は思うんです。
 我々の業界は,今までいろいろ,先ほど言ったように出口がいろいろ変わりましたけれども,コンテンツ側から見ると出口はいろいろあった方がいいわけですね。その出口の1つがクラウドサービスに通ずるのか,クラウドサービスというものに包含されて,今までの細かいインフラのサービスがそこから発信されるのか,それの仕組み自体も,私はまだよく把握できていない部分があるんですけれども,そのクラウドというものの定義と考え方と将来性というものが一般のユーザーに,特に濃いユーザー,あるいはライトユーザーに対してどういう説明がつくかということは議論されてもいいのではないかという気が私はします。
 それから,津田さんの資料の11ページ目で,私的録画の範囲では要するに利益還元は不要だということを書かれていますけれども,やはり我々権利者は,私的録画であっても,我々の汗と知恵と時間を使って映像を作っていますので,それに対しては1円でもやはり回収したいという,当然事業としての,経営的な観点からすると必要だというふうに思っています。そういう意味では私的録画であっても,いわゆる本当の個人の使用であれば私的録画なので,それに対する課金,対価を求める気はもちろんないんですけれども,それがこのタイプ4のように第三者にも開示できてしまうような仕組みの中でクラウドが使われてしまうという部分については,これは何がしかの課金なり対価を求めるべきだと私は思います。この辺の2と4を混同されてしまうということは,非常に我々権利者,制作者サイドからすると,またかつてのテレビ放送が勝手に違法で配信されて,国によってはそれが当たり前だみたいなことの状況になってしまうというのを非常に危惧します。
 それと,この資料の中にも最後の方でフェアユースを導入するようにというものと,最後のページにクリエイティブ・コモンズのコメントもちょっとありますけれども,これも使う側からすると著作権フリーにしろというのが絶えず,いろいろな学府,見識者側からするとよくそういう言葉が出るんですけれども,ただで使わせる,だからいろいろ活用できるよという部分を,それがいろいろな学の部分で利用するんだからただで使わせろという論法にすり替わってしまう,その危険性もありますので,是非ともこのクラウドサービスを,私的複製というのから,第三者もその私的複製を活用,利用できてしまうのだという実態をきちんと整理した上で,この議論の終着点を見ればいいのではないかと私は思います。
 もう1つ,河村さんの御意見にもありましたように,ユーザーから見ると便利に使えた方がいいという,これは当然で,私もそのとおりだと思いますけれども,全てのユーザーに我々権利者側は,かつて出たハード,ソフト,仕組みについては全て対応しています。それに対して有償なのか無償なのかというその権利の条件は別として,全てに対応して,ユーザーにできるだけ広く見てもらうための我々としての努力はしていますので,河村さんの言われた広く使われないようになってしまうのは困るという言葉が,今までは使われていないような状況があったのかどうかという質問を逆にしたいんですけれども。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。お名前が出たので,河村委員からお答えいただけますか。

【河村委員】  テレビの録画で言えば,これは何回も言ってきたんですが,地上波のテレビ,つまり民放は広告モデルでやっている事業ですし,NHKには我々は受信料を払っておりますし,公共的ということで免許が与えられている事業だと思いますが,その地上波のテレビ番組の録画について,アナログの時代は私的複製として孫コピーもできてメディア変換が可能で,コピーの数も制限されていなかったわけです。ただ,デジタルになったときに,複製しても画質が落ちないからということで当初はコピーワンスで複製が1個しかできないルールで始まったのですが,いろいろな話合いの末ダビング10ということになって,インターネット送信はできない,コピー10個まで,孫コピーはできない,つまりメディア変換ができないものになったんですね。
 私はものすごく不自由だと思っておりまして,話が飛んで申し訳ないですけれども,この間,調査の結果,クラウドサービスにテレビの録画を入れている人が少ないという件について,榊原委員の方から,それは一般の人にはなかなか使えないような技術を使って行っているからなのではというお話がありましたが,その通りだと思います。ダビング10の運用を定めているARIBの規約では、テレビ番組の録画はクラウドにアップできないんですね。私はそこを調べたんですが,もしやったとしても,録画した機械でしか再生できない。要はクラウドで保存する意味がないんですね,ほかのデバイスで視聴できないですから。少数の,ある程度技術に通じている人が,いろいろな変換を行うなどしてクラウドに上げている部分があって,それが調査での低いパーセンテージの人の利用として出てきたと思っています。私は仕事や子育てで忙しくしていて,見たいテレビ番組をリアルタイムで見る時間はほとんどないんですけれども,いつでも,どこでも,ちょっとした時間が空いたときに,録画した番組を,いちいちメディアを持ち運ばなくても自分のデバイスで見られたらいいなと思っていました。
 先ほど申し上げたようにリモート視聴という仕組みが最近出たわけですが,それができる前に,そういうことがしたいなと思っていました。私は放送事業者関係のところのホームページに小さなコラムを書いていたことがあるんですが,そこで,そういうことが解決できる方法を調べて,消費者がこういうふうに工夫してやってみましたというコラムを書こうと思って一生懸命調べたのです。割と有名なメーカーさんからも,こういうことができますよと,自宅で録ったテレビ番組の録画を外で,他のデバイスで見られますよと。では,これを買ってがんばって自分で設定してやってみるというプロセスを原稿に書こうかしらというと,全部,それはグレーだからやめてくれ,それは真っ黒だからやめてくれと。だから技術的にできても,それはやってはいけないことになっていることだから書いてはいけないと。こんな技術が進んでいるのに,録画番組一つ,ただ自分自身のデバイスで外出先で見たいというだけの単純なこともできないのかと。ですから,それはもう,デジタル化しても全然便利になっていない。むしろどんどん不自由になっていて,せっかくそういうデバイスを持っていても,見られないと。つい最近,リモート視聴というものが,その規格を変えることによって出てきたわけですが,それは何か,いろいろな苦肉の策というとおかしいですけれども,デバイスを何十日かに一度,親機のところに持ってきてマッチングさせないとだめとか,そういうことによって本人とごく近い家族のような人たちだけで見ているということを担保する仕組みのようですが,今後更に,いろいろなそういう工夫やルール設定の見直しによって,もっと自由な使い方ができてしかるべきだと思っています。デジタル化して,高いお金を払っても,便利になっていないというのは実感として感じております。答えになっていますでしょうか。

【土肥主査】  では,津田委員,どうぞ。

【津田委員】  松本委員のお話の中で,僕は3つ重要な問題提起があったなと思っておりまして,1つ,不特定多数に公開するような事例が最後の方に出てきて,いわゆるタイプ4ですが,タイプ4に関しては,もう基本的に余り議論の余地はないというか,不特定多数に公開するんだったら課金をするべきでしょうし,若しくはそれは契約で処理をすればいいというふうに思っております。
 もう1つ,技術について非常に変わっていく中で,そこでの説明が十分ではないし,説明してほしいという話があったのは,我々もやはり,意見というか,意識を同じくするところで,だからこそやはり技術ワーキングチームが必要なのではないかというふうに思っております。
 もう1つ,3つ目の利便性のところの話で言うと,実はこの我々の発表と矛盾するようなところもあるんですけれども,利便性ということ自体の議論が余り意味なくなってくると思うんですね。どういうことかというと,クロームブックもそうですし,iOSなんかもそうですが,普通のユーザーはそもそもそんなにクラウドに保存しないと言うんですけれども,主体的に保存するのではなくて,もう既にOSレベルで保存先が全部クラウドになっていっている時代なので,本当によく分からない,スマートフォンなんか初めて使うというような人が,もう全てその人たちが利用している,保存している,音楽データや動画や何やらというのが実はもう,何の意識もしないでクラウドに保存されているというような環境にどんどんなってきているので,そうすると,多分一般的なユーザーがクラウドを利用するか否かではなくて,多分クラウドという言葉を知らない普通の女子高生とかが,実質的に,もう新しいスマホを買ったらクラウドを使っていくみたいな,そういう世界になって,変わってきつつあるので,そこを見据えてやはり制度設計していかないといけないのではという問題意識を持っています。
 以上です。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【松本委員】  今,津田さんがおっしゃるとおりだと私も思います。私は,ある配信事業に関わったんですけれども,もう十数年前。その当時から,やはり配信の事業としてハードディスクの負荷といいますか,初期投資がかなり負担ということの認識があり,私の会社ではハードディスクに投資をしませんでした。そのとき,今でもあるんですが,アカマイさんと連携して,日本含め世界各地にあるハードディスクを横つなぎして,我々の事業がボリュームアップしてきたら,いわゆるハードディスクのキャパをオーバーしたときに,次のハードディスクに連携するという仕組みだったんですけれども,それを利用させていただきました。今でいうクラウドと同じだと思うんですけれども,もう十数年前からその概念もあり,ハードもあった,仕組みもあったものが,今ここに来てクラウドという単語が先行して,これからクラウドだ何だかんだという部分の迷信といいますか,というのはあるような気がします。
 先ほど私が言った個人的な利用では,自分のパソコンなり何かでUSBを付ければ,2テラ,5テラのハードディスクには十分対応できますので,本当の個人の使用と事業としての利用,活用と,全世界的にそのクラウドがどうなっていくんだろうという部分は本当に見極めないと,何か観点がずれていくような気がしますね。

【土肥主査】  ありがとうございました。時間的に余りもうないので,どちらかというと,きょう御発言がない方で発言したいとお思いの方を優先して指名したいと思うんですけれども。
 では,どうぞ。

【末吉主査代理】  資料4に関してでもよろしいですか。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【末吉主査代理】  今のお話も含めて,ここまで伺って資料4を眺めますと,まず,私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスについて検討がなされるということに絞られたことが1回あって,それが今回,ワーキングから小委員会に移ったわけでございますけれども,恐らくこの点については変わらず,クラウドの問題と私的使用目的の複製に関係する問題に絞って議論を進めるという方向はやはり正しかったのではないかと思いました。
 それから,その中でロッカー型クラウドサービスについて,御意見とか御議論を伺っていますと,やはりタイプの問題がここで出てまいりますが,タイプ1と3,あるいは4につきましては,著作権法の30条を改正するという段階には今はないという点においては,これも余り変わらないのではないかと思いました。
 最後に残るのが,この資料4の3ページのところでございますけれども,ロッカー型サービスのタイプ2について契約で取り扱うのが適切でないというような事情があって,私的使用目的の複製等,つまり30条の手当てで何か介入する必要があるのかという点ですが,今回またいろいろ教えていただいたところでございますけれども,やはり明確に切り分けて取り出してくるというところがどうも見えてこないという点においては,ワーキングチームのときからそうだったのでございますけれども,そこを打ち破る事実関係,あるいは理論というものがいまだ出ていないのではないかというのが私の感想でございます。
 それで,恐らくこの小委員会の当初の御趣旨というのは,早急に立法的手当てをということで取り組んでいるのではないかと思いますが,いろいろ御議論はまだあろうと思うんですけれども,なかなかこのタイプ2に絞っても,30条の改正を見通すような議論に集約されるようにはちょっと思えないので,やはりこれはもう少し契約なり,ステークホルダーの方々のお話合いなりというものを進めていただくということでしか,短期的な対処というのは現況ではできないのではないかなというのが,私の意見でございます。
 以上でございます。

【土肥主査】  その点については,まだ今後議論をしていくんだろうと思います。今回の取りまとめいただいた主な意見の概要というものについては,本日一般利用者を代表されて発言なさったものを盛り込んだ上で,次回以降,論点を抽出して議論していければというふうに思います。例えばその30条問題に関しても,例えば津田委員はMYUTAのような問題について提案がありましたし,河村委員はサービスの提供のところについてのお話がメーンだったのかなというふうに思います。
 こういう話もこれあり,さらにまた,個人的に,4ページの協約の権利処理の問題というのは,私はタイプ2の問題よりも,タイプ1,タイプ3がメーンではないかというふうに承知をしておりましたので,そのあたり,意見の概要についての整理をもう少し検討した上で,次回以降お出しいただければというふうに思っております。
 時間的に,いつもの私の不手際で,もう既に10分ほど過ぎております。きょう御発言ない方で,もうお一方ぐらいいかがでしょうか。
 では,丸橋委員,お願いいたします。

【丸橋委員】  今,委員長から,4ページ目の協約的な権利処理を行うというのは,縦の流通関係であるタイプ1,タイプ3についてお考えになっていたとのことでしたが,私も,基本的には,そのような関係以外では協約的なものは成立し得ないのではないかとは考えます。これまでの色々な議論,あるいはこのペーパーの表現においても,タイプ2とタイプ4,タイプ2の中のスキャン・アンド・マッチとアンマッチの部分,そこを混在させた上で,契約による実績もあるというような説明がありますが,そこはきちんとそれぞれの利用形態の性質を踏まえた上で区別しつつ整理して議論すべきであり,契約による問題解消可能性について大枠,大雑把に議論すべきでないと考えます。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。今から恐らく1時間やると盛り上がるのではないかと思うんですけれども,やはり皆さん御予定もございましょうし,本日はここまでというふうにさせていただこうと思いますが。
 杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】  済みません。口幅ったいようなんですけれども,ちょっと思ったところだけ少し話させていただいて,これは提案という形で,ここで話せるかどうかというのは別なんですけれども,僕の個人的な考え方としては,私的複製に関して,きょう,津田委員であったりとか皆さんが話したとおり,ある程度やはり,先日僕が発言させていただいたとおり,技術革新とともにこれは当たり前のように使えるようになった方がいいかなというふうには思っているんですね。反面,私的録音という範囲のものがやはり複製権といったところに掛かってくるという考え方も当然同じだと思っているんですけれども,いま一度,例えば権利者の方と,あるいは事業者の間で,その複製権そのものというのが,私的を含めた形で,機会損失というか,商業的機会損失に本当になっているか,なっていないかというような議論をした上で,本当になっているのだったら,それをどこで解消していくのかといったところは,もしかしたらコンテンツの販売価格そのものを見直さなければいけないかもしれないし,もしかしたらそういったものを事業者間のサービスの中に内包させていくのかもしれないし,そういったところのその機会というのが必要なのであれば,いま一度話し合う機会ですね。それをもって,もしかしたらそこの私的複製の部分が,私的と言っている部分なので,そこから改めて複製権の行使にお金が掛かるのか掛からないかといったところは,エンドユーザーからはやはり分からないものなので,分からせるのであればそこは変えていかなければいけないし,これまでのとおり分からなくてもいいのであれば,分からないままにしておくんだけれども,そのためのコストなり,そのための商的機会というのをどこかに作るということに関しては,割と,特に国内の話になると思うんですけれども,そういった機会というのどこかで作っていってもいいのかなと思うんですね。そうすると割と前向きな議論になっていくのではないかなというふうには思いました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 議論がなかなか尽きないとは思いますけれども,次回以降,集中的に議論を進めていければというふうに思っています。今のところ大体月2回ペースでやっていますので,恐らく来月もまたそういうことになるのではないかと想像しておりますけれども,事務局から,その点を含めて,連絡事項がございましたらお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  次回日程につきましては調整をいたしまして,確定次第,御連絡したいと思います。

【土肥主査】  分かりました。
 それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を終わらせていただきます。本日は本当に熱心な御意見,議論,ありがとうございました。

―― 了 ――

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