文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第8回)

日時:平成26年11月19日(水)
    10:30 ~12:30
場所:文部科学省東館 3F1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービス等と著作権について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
株式会社アンク提出資料(56KB)
資料2
株式会社エム・データ提出資料(115KB)
資料3
ロッカー型クラウドサービス以外のサービスに関する検討について(案)(101KB)
資料4
岸委員提出資料(89KB)

議事内容

【土肥主査】  時間も若干定刻を過ぎておりますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員の第8回を開催いたします。
 本日は,お忙しい中,御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われます。既に傍聴者の方には入場をしていただいているところでございますが,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴を頂くことといたします。
 そこで,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  確認いたします。お手元の議事次第の下半分を御覧ください。資料1と資料2としまして,今回の検討対象のサービスに関する事業者からの資料としまして,株式会社アンク様と株式会社エム・データ様からそれぞれ御提出いただいた資料をお配りしております。それから,事務局作成資料としまして,ロッカー型クラウドサービス以外のサービスに関する検討について(案)と題する資料を,資料3としてお配りしてございます。それから,資料4としまして,岸委員の提出資料をお配りしてございます。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは議事に入りますけれども,初めに,本日の議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は(1)クラウドサービス等と著作権について,(2)その他,この2点となっております。
 早速(1)の議事に入りたいと思います。
 一般社団法人電子情報技術産業協会から検討の要望がございましたサービスについて,前回に引き続き検討を深めてまいりたいと思っております。
 初めに,これらのサービスのうち,実際のサービス内容が必ずしも明らかでないサービスに関しまして,実際にサービスを行っている事業者から,サービス内容の御説明,あるいは著作権法に対する御意見につきまして,書面にて御意見を頂戴しているところでございます。こちらにつきまして,事務局からまず説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。

【秋山著作権課課長補佐】  失礼いたします。それでは,まず資料1を御覧いただけますでしょうか。こちら,株式会社アンク様からの御提出資料でございます。JEITA様の御提出のあった資料におけるサービスの中の,コピペルナーというサービスに関する事業を行っている会社からの御提出資料でございます。
 以下,代わって読み上げさせていただきます。
 JEITA殿資料「新しい産業の創出・拡大に資するクラウドサービスやメディア変換などの新規ビジネスの促進に向けて」に関する弊社見解。
 JEITA殿資料「新しい産業の創出・拡大に資するクラウドサービスやメディア変換などの新規ビジネスの促進に向けて」につきまして,株式会社アンクとしての見解を以下に記します。
 上記資料におきましては,ユーザーの利便性向上や社会的に有用であるサービスについては,著作権者の意見に優先して,適法となる法環境の整備をお願いしたと記述されております。また,その事例・実例・参考例として,弊社のコピペ判定支援ソフト「コピペルナー」が記載されております。
 しかしながら,弊社としましては,「著作権者の意見に優先して法環境の整備をお願いしたい」という考えを現在は持っておりません。その理由を以下に記述いたします。
 (1)コピペ判定支援ソフト「コピペルナー」について。コピペルナーは,レポートや論文などの文書ファイルを,インターネット上のWebページやユーザー所有の文書ファイルと比較し,コピペチェックを行うソフトです。各PC上で動作する「コピペルナーV3」とWebサーバー上で動作する「コピペルナーV2サーバー」があります。
 (2)コピペルナーのキャッシュ動作について。「コピペルナーV3」及び「コピペルナーV2サーバー」は,インターネット上の情報と論文の比較を行う際,インターネット上の情報を商用の検索エンジンを使って一時的に取得しますが,その情報を将来コピペルナーで利用するために保存しておりません。コピペルナーV3では,論文の比較を行った後,コピペルナーを終了すれば,一時的に取得した情報は自動的に削除されます。また,コピペルナーV2サーバーでは,一時的に取得したインターネット上の情報は,各ユーザーの課題ごとに管理されており,ほかのユーザーからその情報にアクセスすることはできません。また,課題を削除すれば,一時的に取得した情報は自動的に削除されます。これらの利用の態様は,一般の検索エンジンと同様のものであり,著作権法第47条の6により,適法に実施できていると考えています。
 (3)将来自社DBサーバーに論文データを保管する場合について。将来,弊社のデータベースに論文を保管してチェック対象とする場合は,論文データ・著作権を管理している企業・機関と契約を結んだ後に,契約範囲内の論文データを自社DBに保管し,チェック対象とする予定です。
 これらの理由により,現在著作権者の利益を侵害していることはなく,著作権者の意見に優先して法環境の整備をお願いしたいという考えはありません。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 以上。
 続きまして,資料2をお願いいたします。こちらは,株式会社エム・データ様からの資料でございます。エム・データ様は,法人向けのテレビ番組検索サービスなどに資するメタデータの生成・販売等をしていらっしゃる企業ということで,意見の提出を頂いてございます。
 以下,読み上げさせていただきます。
 最初に,エム・データについて。エム・データは,テレビ放送のメタデータを生成・販売している企業です。テレビ放送メタデータとは,「いつ」「どの局のどんな番組で」「誰が(どんな話題が,どの企業が,商品が,お店が)」「どのくらいの時間」「どのように放送されたのか」といった情報です。
 私どものメタデータの情報の形式は全てテキストデータです。映像・音声データは一切ありません。メタデータの生成のイメージは,テレビを見ながら詳しいメモを取っているといったものです。生成されたメタデータはテキストの集積としてデータベース化されます。その用途は多岐にわたりますが,私どもは「データの販売」を主たる収入源としております。一部,調査サービスやデータ検索サービスなどもメニューに入れておりますが,販売先が主体となった協業によるものです。詳しくは,私どものホームページを御参照ください。
 メタデータの役割,情報検索の基盤をなす重要要素。私どもが生成しているテレビメタデータは,デジタル時代を象徴するサービス(ないしはサービスが内包する機能)である「情報検索」の基盤をなす重要な要素です。どのようなすぐれた検索技術を採用したとしても「手掛かり」がなければ検索は成立しません。その「手掛かり」こそがメタデータなのです。
 ネット上をどのように精巧(せいち)に探っても,テレビ放送の情報は断片しか拾うことができません。確かにネット上にはテレビ番組表も掲載されておりますし,放送局自身が番組内容等の情報を逐次発信しております。しかしながら,例えば「夜21:00,女性歌手,昭和の演歌」といったキーワードから元の情報を探し出すのは,なかなか困難です。
 このとき,検索の対象としてテレビメタデータがあれば,たちどころに答えを得ることができます。これが,テレビメタデータの役割です。近い将来にあっては,テキストだけでなく,映像の断片や音の断片なども検索の手掛かりとなるでしょうが,メタデータの役割の本質は変わりません。
 メタデータと著作権。例えば作家と出版社によって制作され書店に並んでいる書籍を概観すると,「タイトルは何々,作者は誰々,発売時期はYY日MM月,判型は変形A5,ハードカバー,総ページ数は何ページ,ジャンルはドキュメンタリー,舞台は北極,シロクマやオーロラのカラー写真入り,価格は幾ら」といった情報が得られます。これは書籍についてのメタデータです。よく知られているように,このメタデータの中核的な部分は「書誌データ」として,図書館や書店での本の整理に用いられております。美術作品や映画,演劇,音楽等からもすべて同様のメタデータを得ることができ,同様に活用されています。
 私どもはテレビメタデータもこれらと同じ性質のものと考えています。もちろん,事業活動を行うに当たっては,テレビ放送の中核をなす放送局や制作会社,広告主や広告代理店,俳優,歌手,タレント及びそれらの関係者に十二分の相談や配慮を欠かさないことが大前提です。
 私どもはメタデータの採取処理のために,一時的に放送を蓄積視聴することはありますが,永続的に保管したり,メタデータの採取目的以外で視聴することもありません。こうした作業と著作権の関係については,平成21年度の著作権法改正によって担保されているところと理解しております。
 新種のサービスに関する意見とメタデータの利活用分野。以上述べましたとおり,私どもの現在の事業範囲は著作権法の改正による影響が現段階で想定できる材料は乏しく,その内容,関連産業へのインパクトを勘案しての判断が必要と考えます。加えて,私どもはメディア界においてもデジタル界においても,様々な意味で中立的な立場であり続けたいと考えています。
 以上。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 次に,本日御欠席でいらっしゃいます岸委員から,文書で意見表明の御要望がございましたので,こちらにつきましても事務局より説明いただければと思います。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,資料4をお手元に御用意いただけますでしょうか。こちらについても,かわって読み上げさせていただきます。
 前回の小委員会は欠席しましたが,当日配付された資料や議事録を確認したところ,フェアユースなどの一般的な権利制限規定を導入すべき,(具体的にどのような内容を指しているか不明であるが)柔軟性のある規定を導入すべきといった議論が唐突になされていることを知りました。本日の小委員会ではそれらについての議論が引き続き行われるようですが,所用により欠席せざるを得ないため,書面により意見を申し上げさせていただきます。
 そもそも前回の小委員会で配付された資料2-1,2-2において,JEITAが権利者の許諾なく実施できるようにしてほしいと主張している各サービスのほとんどは,権利者との契約によって対応すべきものであり,フェアユース規定や柔軟性のある規定の導入につながるものではありません。また,JEITAの要望ではそれぞれの事業の具体的内容が示されていない上,紹介されている海外の事例の適法性やフェアユース規定との関係についても十分に説明されておらず,要望そのものの整理が不十分であると言わざるを得ません。したがって,十分な立法事実が示されていない以上,フェアユースなどの一般的な権利制限規定の導入の必要性は,認められないと言わざるを得ません。
 加えて言えば,そもそも本小委員会が検討すべき課題は,クラウドサービスなどと著作権をどのように考えるべきかという点にあり,個別のサービスを離れてあらゆるサービスに関係するフェアユースなどの一般的な権利制限規定の導入の是非を抽象的に議論する場ではないと思います。したがって,小委員会のミッションという観点からも,フェアユースなどの一般的な権利制限規定の導入の是非を検討すべきではないことは明らかではないでしょうか。
 以上,説明を終わります。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,これらの発表内容,それから,これまでの各委員からの御意見等も踏まえ,各サービスの具体的な検討に入っていきたいと思います。
 まず,事務局において,検討事項等の整理を行っていただいておりますので,これにつきまして,まず事務局から説明を頂ければと存じます。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,説明申し上げます。
 資料3を御用意いただけますでしょうか。ロッカー型クラウドサービス以外のサービスに関する検討について(案)ということで整理をさせていただきました。大きく2つの柱に分けてございます。
 まず第1に,本小委員会における検討の対象とすべきサービスについてでございます。これは,一般社団法人電子情技術産業協会様から検討対象として提示のあったロッカー型クラウドサービス以外の9サービスのうち,アクセシビリティサービス及びeラーニングについては,法制・基本問題小委員会の検討事項とされております。これは平成26年7月18日の著作権分科会において御議論を経て,決定された事項でございます。これを受けまして,アクセシビリティサービスの主要な対象である障害者関係の権利制限規定の整備については,現在,同小委員会において検討がされてございます。
 また,eラーニングにつきましても,同小委員会において実態把握の必要性について意見がございまして,こうしたことから,文化庁において今年度,調査研究を行った上で,同小委員会で審議を行う予定としてございます。
 つきましては,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会では,上記2つのサービスを除いた以下の2ポツ記載の7つのサービスについて,検討の対象とさせていただきたいと考えてございます。
 続きまして,2ポツ,各サービスに関する検討についてでございます。ここでは,ある種,検討の手順と申しましょうか,そういったことの案を整理させていただいてございます。
 1つ目のマルでございますけれども,以下の7つのサービスについての検討を行うに当たり,どのような視点から検討を行うことが適切か。つまり検討に当たって考慮することが適切な共通的な視点について,整理を行うことが望ましいのではないかと,このように考えてございます。
 では,次に,各サービスについて,制度整備や円滑なライセンシング体制の構築などの要否及び対応方策の具体的内容について,どのように考えるべきかということについても議論をお願いしたいと考えてございます。
 以下の(1)と(2)につきましては,今回,議論をお願いしたい7つのサービスの項目と,その概要について,これまでも御紹介したとおりの内容を,改めて確認のために記載させていただいておるところでございます。
 説明は以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまの事務局の検討案等,そういったものを踏まえながら,これから意見交換を行っていきたいと思いますけれども,これら各サービスに関する問題を検討するに当たりまして,これまでの議論を踏まえて検討の視点というものを整理したいと考えております。これは,先ほどの事務局のまとめ案のマルの1つとしても,挙がっておったところでございます。
 御案内のように権利制限規定の検討に際しましては,著作権者の利益を不当に害することとならないことが条約上の要請として求められているということは,皆さん御案内のとおりなんですけれども,その際に,著作物を利用するサービスが,著作物の表現を享受するものであるか否かという点は,1つ重要な視点になるんだろうと思います。
 そこで,まずは,本日検討の対象である7サービスについて,著作物の表現を享受しているものであるのかどうかという観点,視点から,どう整備したらいいのか,この点について御意見をまず伺えればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 じゃあ,お願いします。末吉委員。

【末吉主査代理】  私は,このマル1からマル7までを拝見しまして,土肥主査が言われた,知覚することを通じて表現を享受するかどうかという観点から見てみますと,1つは,マル5のうちの盗作検証支援サービスというのがあって,これはコピペしているかどうかのチェックをするだけだとすると,著作物の表現を知覚するということはなく,1つこれに当たるのではないかと思いますのと,マル6において,やり方によっては,知覚を通じて表現を享受しないというやり方が1つ考えられるのではないかと思いました。
 ただ,残念ながら,マル6につきましては先回,詳細な御報告を頂いたと思いまして,契約関係の整備で十分ビジネススキームも立てておられるというふうに伺いましたし,マル5の今の盗作検証の点についても,今御説明いただいた資料1を拝見すると,現在は検索エンジンでやっておられるし,将来は契約でやっていきたいという趣旨が記載されているというところを理解いたしました。
 私からは以上でございます。

【土肥主査】  ほかに。
 はい,丸橋委員,お願いいたします。

【丸橋委員】  今の点なんですけれども,まず,評判分析サービスについては,ニフティも過去やっていたことがありまして,著作物の表現を享受させていないかというと,そんなことはなくて,検索エンジンのスニペット並みに評判を表す,いいとか,悪いとか,駄目だなとか,そういうキーワードが含まれるパラグラフを表示するような機能,これがないと使えないんですね。単に統計的に「いい」が70%,「悪い」が30%というような出力だけではないんです。
 それと同様にこのマル5の方も,盗作箇所が表示されないと,本当に評価できないんだと思うんですよ。ペーパーの方ではその辺が何かちゃんと書いていないですけれども,やはり盗作箇所が表示されて,確かに確認した上で盗作と決めつけるというプロセスに資するというものなので,必ずしも著作物の表現を享受していないかというと,ある程度は享受していると。それが,検索サービスも,権利制限のように一定の限度で本当に認められているのかどうかというのは,グレーなことは間違いないと思います。

【土肥主査】  ほかにいかがでございましょうか。
 松田委員,お願いします。

【松田委員】  最後の法人向けTV番組の検索でありますが,クラウド上に放送が既に録画されていて,これが,権利者の権利侵害のない適法な録画がまず存在することを前提にするならば,それをいかなるコンテンツがあるかについて検索をすること自体は,既にクローリングによる検索サービスの範囲内で対処がとられていると考えるべきでしょう。しかし,ここに7として掲げ,12モデルの1つとして掲げているわけですから,そういうことではないのかなと思わざるを得ません。そうすると,法人事業者は,そのクラウドの中から一定の番組を選び出して,そして,それを検索の対象にしている。ここの段階では,法人事業者がコンテンツを享受するという状況が1つあり得るかもしれないのであります。
 それから,その結果,特定のコンテンツが発見された場合,検索された場合に,視聴者の方が自由に視聴できるようにするということになりますと,視聴者がまさにその当該コンテンツを享受することになるわけであります。そして,これをサービスとして提供するならば,法人事業者はまさに享受の対象になります。
 従前議論した,いわゆるC類型において議論したときに検討をした「享受」に当たる可能性があるのではないかというふうに読まざるを得ないのですが,もしそうでないとするならば,既に適法に録画された膨大なコンテンツの中からクローリングをして,番組だけを特定するということであれば,それは何年何月どこどこの何ていうタイトルの番組と,これらが出力されたとしても,これは著作権侵害にはならないわけですから,それで,これは法的対処をとられているわけですから,こういうサービスではないのであって,なおかつどこまで享受するのかということを考えますと,どうも今までの議論の中では,やっぱり著作権法上,これに現段階で適法だという判断は加えられないし,これを,こういう事業であったとしたら,C類型をはるかに越えているのではないかと思わざるを得ないのです。もしそういうことではないのであれば,御教示願いたいとは思いますが。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。
 大渕委員,お願いします。

【大渕委員】  個別の話というよりは,先ほど主査が言われたメルクマールについてであります。議論する際には,やはり一定の方針を持ってやらないと議論が混乱してしまいます。その関係では,先ほどから出ているC類型というのは,何年か前にこの審議会で皆で議論した上で,C類型については,――フェアユースという言葉は適切ではないと思いますが,――個別的ではなく,一般性のある制限規定としてあるべしということで結論を得たところであります。そして,これが1つの重要な基準となるべきものと解されます。うなずいておられる方が,多いかと思いますが,先ほども出ておりました,「知覚を通じて著作物を享受する」かどうかというのが1つの大きなメルクマールであることは間違いなくて,あの際には,そのようなものでないものは,原則,権利制限成立でよいのではないかということでした。そのうちの一部分が具体的な条文として実現したという状態であると思います。具体的な条文は別として,このメルクマールは非常に大きな重みがあると思います。それとの関係では,一つ言えるのは,その「享受」というのは,恐らくこれは異論ないところかと思いますが,末端ユーザーにとっての享受だということであります,それを前提にメルクマールを置いてみると,かなりクリアに出て,先ほど言われたように,単なる情報の所在というものだけであれば,それは「享受」ではないということであります。スニペット表示のようなものは付随的についてくるようなものなので,そのようなものまで「享受」のうちに入れるのか,中心は書誌情報的なものだけであり,それらが見やすさのために少し表示されているにすぎず,「知覚を通じて著作物を享受する」とまではいえないのではないかという点については,いろいろ考えていく必要があり得ますが,やはり何といっても,C類型の「享受」というものを中心に考えていく必要があると思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにはいかがでございましょうか。今,大渕委員の御指摘もございましたように,著作物の表現を享受するというのが,これは一気通貫といいますか,末端のユーザーのところにおいて享受をするということがある場合については,これは要するに著作物が利用されているわけでございますので,そういう意味からすると,原則支分権の対象になるというふうに整理をしております。
 今,御発言いただいたところは,マル5,マル6,マル7,盗作検証支援サービス,評判分析サービス,それから法人向けのTV番組検索サービスの全部ではないわけですけれども,一部においては,著作物の表現を享受しないものが考えられるのではないかという御指摘であろうと思いますけど,逆に言いますと,1,2,3,4については,いずれも著作物の表現を享受する,そういうサービスであるという皆様の御認識なのかどうか,いかがでございましょうか。それはそれでよろしいということでしょうか。
 丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  マル4のスナップショット・アーカイブというのは,目的が違うものが多いんだと思うんですね。誰か紛争状況になったときに,ある発言をしたなり,あることを論じたみたいなことを後で勝手に書き換えるおそれがあるために,取っておきたいというユーザーのニーズに応えているもので,あるいはこれは特許等の公知例検索みたいなところにも使えるものだと思いますけれども,ある情報がある時点で存在したことを助けるサービスだと思うので,知覚を通じて表現を享受したとも言えなくもないんですけれども,目的は,まず,そういう表現といったら表現なんですけど,そういうことがあったということを証明するためのサービスなんだろうと思います。そこで,ちょっと毛色が違うのかなと思います。

【土肥主査】  目的ですか。目的の観点はまた別なんだろうと思いますけれども,1から4までについては,何らかの形で,表現形式としての著作物を利用していると,そういうことはお認めなんだろうと思います。
 榊原委員の発言ありますか。

【丸橋委員】  そういう意味で,スナップショットの対象となる情報は著作物であるかもしれないし,全然著作物性がないかもしれないですよね。対象情報が著作物だったとしても,利用者はその著作物の表現ではなく,事実内容の記録を目的としているだけです。

【土肥主査】  その点をお尋ねしているわけでありますけれども,1から4まで,それから5から7まで,このあたりは1つどこかに線を引くとすれば,著作物の表現の享受という点からいえば1つあるんだろうと思いますけれども,この点について,委員の御意見を伺えればと思いますが,いかがでしょうか。
 笹尾委員,お願いします。

【笹尾委員】  放送関連でいきますと,2番と7番ということになります。今のお話の流れでいきますと,享受していると。両方とも享受しているのではないかと思います。7番に関しまして,先ほど松田委員から整理をしていただいたように,もしそれが適法にクラウド上にストレージされているというものがあるのであれば,それは,その時点で恐らく問題がなくなるんだと思いますが,そうでないというものもあるのかもしれません。そうでないものに関しましては,ある意味,2と同様の享受ということが成立するんじゃないかと考えております。
 以上です。

【土肥主査】  榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  先ほど,大渕先生の方から,末端のユーザーによる享受はあるかという御指摘があったんですけれども,著作物の表現を享受しているかといった問題提起に対して,誰がという問題があるかなと思います。どのサービスも,事業をやっている者がまず享受しているのかということと,最後の末端ですね,サービスを受けるユーザーや法人が享受をしているのかという2つがあると思っておりまして,以前のC類型がどちらなのかというのは,そこに限定されるべきなのかという問題にもなろうかと思うんですけれども,JEITAが前回意見書で出させていただいたときに共通要素として挙げていた,著作物の表現を享受しないのではないかといった趣旨は,末端のユーザーではなくて,その事業を行う人が,別に見たいというようなことではなくてという趣旨でした。
 それで,例えば検索エンジンでも,検索結果のスニペットの部分を,末端ユーザーは確かに享受をしていますから,そこは享受なんだろうと思いますし,あとは,ユーチューブなどのバックヤードの行為が適法化されたという改正がありましたけれども,あれも当然,ユーチューブを御覧になる末端のユーザーからすれば,視聴しているということですけれども,ユーチューブ側というか,ああいうネット事業者側は,別に動画を見たいとかということではないだろうということで,主体をどちらと考えるかというところも分けて議論をすべきではないかなと思います。

【土肥主査】  御指摘のとおり,事業者が著作物の表現を享受しているのか,末端ユーザーがしているのか,あるいはいずれか一方がしているのか,あるいは両方ともしていないのか,いろんな組合せがあると思うんですけれども,末端ユーザーが著作物の表現を享受している場合に,事業者が享受していなければ,それは権利制限の対象とすべきであると,こういう御趣旨ですよね。
 どうぞ,松田委員。

【松田委員】  私も今の意見はそのように聞きました。そして,事業者が享受という言葉が議論の中で入り始めたときに,一体これは何だろうかなと思いました。確かに事業者と,それからその事業者が行うサービスの末端で,ユーザーといいますか,一般国民がまさにコンテンツを享受するというのは,場面としては違うことは間違いありません。
 でも,こういうふうに考えたら,事業者は,読んだり見たり楽しんだりする,いわゆる感性によってコンテツを受けとめるということの事業者ってありますか。ないんじゃないですか,そういうのは。そういうことで享受という言葉を,事業者とユーザーと両方同じ言葉で使うことは,どうも私は理解ができなかったわけであります。出版事業だって,もちろん編集者は誤字脱字を直すでしょうけれども,事業者が,事業体としての出版社が,当該出版物を読んで楽しむということにやっているわけではなくて,まさに本にして市場に送ることの事業をやっているわけです。そこに果たして享受という言葉を使っていいのかという問題はあると思います。最後に読者が購入し,書斎でその本を楽しむというのは,まさにこれは享受だと思います。
 そういうふうに考えたら,事業者が享受をしなければ,これは本来権利の制限にあるべきなんだと言ったら,全てのパブリックサービス,要するにコンテンツを利用した事業というものは,全部享受なんかしていないということになってしまいますよ。この享受の概念は,C概念では,当該コンテンツを受け取った利用者というか視聴者が,それを享受するような,読んで楽しむような場面でない場合については制限規定として入れようかというふうに従前の審議会では議論したのです。こういうふうに私は理解しております。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにこの点。
 龍村委員,お願いします。

【龍村委員】  今,松田委員のおっしゃった観点に同調するものですが,著作権法第1条の目的規定で,この法律の基本的な立場が示されていると思いますか,この文化的所産の公正な利用というのは,宛先は最終ユーザである国民一般が著作物に対して文化的所産とそれを捉え,これを利用するということを念頭に置いているのだと思います。本来のC類型,当審議会の分科会で議論されてきたC類型というのは,そのような立場から,もともと著作物を享受する,つまり見る,聞くといった意味で理解されているので,ユーザー層としては一般には国民一般を念頭に議論されていたのではないかと思います。御指摘の事業者基準は,事業者もある面,利用者ではありますが,享受の主体としての利用者として想定されていないので,現行の著作権法の本来の建前ではないのではないかと思います。
ところで,マル1からマル7の中で見ますと,主査がおっしゃるようにマル1からマル4のグループと,マル5からマル7のグループとで,やや色合いを異にするようにお見受けいたします。
 マル5,あるいはマル6あたりの,例えば評判に関するデータであるとか,あるいは盗作部分の特定であるとか,盗作箇所であるとか,こういったデータをどう捉えるかですが,例えば47条の7,情報解析のための複製,こういうところに擬されるのかどうかというあたりが問題になると思います。限界的なところになってくるのだと思いますが,47条の7の情報というのは,言語と音,影像その他の要素に係る情報であるとか,抽出される情報は,比較,分類という統計的な解析に用いられることを念頭に置いているので,果たして盗作箇所,評判に関するデータが,こういった統計的解析,どちらかというとメタデータを用いたものに分類分けされ切れるかは明確でない面もある。いろいろなケースがあるのだろうと思います。
 例えば盗作箇所といっても,センテンスごとに見るとすると,かなり広いセンテンスで指摘されることもあるかもしれませんし,あるいはパラグラフ単位でそういうものが特定されたりすることもあるかもしれませんし,あるいは評判に関するデータ,評判というのをどういうふうに表現するのか。評判の表現方法自体,1つの表現である可能性もあるという意味では,47条の7をはみ出していると読める可能性もある。その意味では,やはり5,6あたりも,そのすべてが享受するための利用と評価されることはないとまで,一義的に割り切ることにもやや難がある印象は残りました。以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。今,龍村委員から47条の7,情報解析のための複製等の規定を挙げていただいて,御見解を頂戴したところでございますけれども,こういった規定について,更に大渕委員,何か。

【大渕委員】  先ほどの補足です。1つの重要な出発点になるのがC類型であります。私は審議会の際に,ワーキングも委員会も参加していました。当時は,ほかの方も同じ認識で検討されたかと思いますが,この「知覚を通じて表現を享受する」主体というのは,ほぼ当然の前提として,エンドユーザーだというつもりで考えておりました。それが当然すぎるために,かえって,わざわざ「エンドユーザーが」という主語がついていないのではないかと思います。すなわち,当然の前提だったということであります。
 また,もともとこの種のサービスというのは,最終的には,コンテンツの「享受」者はエンドユーザーであります。主体は法的に,前の繰り返しになりますが,ユーザーが主体で,業者が幇助(ほうじょ)者・サポート者の場合もあれば,まねき・ロクラクⅡのように,ユーザーの方はリクエスト者的なものであって,業者の方が主体となることはありますけれども,いずれのケースでも,最終的には,コンテンツの「享受」者はエンドユーザーであります。このエンドユーザーは,私人ユーザーとビジネスユーザーの両方あろうかと思います。
 仮に,ここの仲介的ないし中間的な業者の「享受」が要件となるということとなると,先ほども言われたように,趣味的に見る人はいるかもしれませんが,ビジネスをやっておられる方は,自分で小説を読みたいからでも,音楽をやりたいからやっているわけでもないので,そうなると,そういうものが全て一括して全部C類型に当てはまってしまい,一律に権利制限に該当してしまうというのは,やはりC類型をつくった際に誰も想定していなかったのではないかと思われます。

【土肥主査】  ありがとうございました。C類型に基づいて47条の9なんかもできたわけでありますけれども,その前から47条の7というのはございまして,この中に,例えば5,6,7のサービスのうちの一部が入る,あるいはそれから漏れるものもある。あるいはグレーのものもあるというような御意見もあったところでございますけれども,そういう部分について,例えば47条の7を広げる必要があるのか,あるいはそういう部分については契約で対応していただくのがいいのか,このあたりについて何か御意見ございますか。
 笹尾委員,どうぞ。

【笹尾委員】  すみません,同じことを違う言い方にするだけになってしまうかもしれません。今,御議論の中で,1と4,それからそれ以下というところに1つの線が引ける可能性もあるということになっておりますが,7に関してでございます。
 7がもしその線を引けると,1から4とは別線だということになる条件としては,先ほど申し上げましたように,クラウド上に録画されるという部分に関して,これがあくまでも適法であるということが明示されていないと,例えばこの表現のまま線が引かれるということになると,非常に雑駁(ざっぱく)な例で申し訳ないんですけれども,許諾を受けていない,ライセンスを受けていない人が見逃し配信をしている,しかも法人向けにということになってしまうという懸念を持つのが放送側でございます。

【土肥主査】  松田委員,お願いします。

【松田委員】  もっと直裁に,この法人向けテレビ番組検索をやりやすいビジネスはどういうふうになるのかなと考えたら,テレビ局が有償ないしは無償で過去の番組をアーカイブ化しているところがありますが,これは全部やっているわけではもちろんありません。
 それとはまた別に,巨大なサーバーで全てのキー局の番組を全部収録してしまう。そして,それはだからテレビ局外がやることになるわけですね。それから,権利者外がやることになるわけですね。そういうサーバーがもしあるとすれば,検索機能付きテレビというものが売り出されるわけです。もう番組表で選ぶのではなくて,私の見たいものは何,こういう役者さんの出ているのは何と探せるようになる。これ,めちゃくちゃ便利ですよね。確かに法人向けと書いてありますから,こういう番組を事業目的で,そういう報道がないかとか,類似の商品についての解説がないかというふうに調べるとなると,大変に有益だと私も思います。もしそのサービスがあるならば,かなりの企業が採用すると私は思います。
 ところが,この巨大データベースと検索型テレビが出来上がると,これは法人が使うだけではないのです。まさに家庭の中に入り込むわけです。家庭の中に入り込めば,これもまた家庭の中で便利であります。
 ところが,この家庭の中の問題は,できればこういう制限規定ではなくて,個人的使用でありますから,30条の問題として処理されることを期待しているのではないかと思うわけであります。思うというよりは,いささか勘ぐると言った方がいいかもしれません。ところが事業者用のサービスは,30条で処理できないわけです。やっぱり何らかの法的対処をとらないと,この検索型テレビと権利者外データベースというものの事業が成り立たないわけです。
 私は,そういうことのためにもし行われるのであれば,これはもう明確に,データベースを作るところで違法データベースになるんだし,検索型テレビというものは,それ自体はもしかしたら違法ではないのかもしれませんが,一体として見るサービスとするならば,これは特に法人事業者においてのその後の視聴というものは,複製と自動公衆送信の侵害の典型的なパターンになるのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。非常に興味深い御指摘なんですけれども,榊原委員,手を挙げておられますし,奥邨委員が手を挙げられておりますので,どちらから先に。
 じゃあ,榊原委員からお願いします。

【榊原委員】  先ほどから何人かの委員の方が,47の7とか9とかですかね,検索エンジンの規定や,情報解析の規定でしたり,情報提供のための規定でしたりという複数の規定を挙げて,当たる部分もあればはみ出す部分もあるというような御指摘をされていて,JEITAも同じように考えていまして,今日意見を出された会社さんも,御自身のサービスが適法か違法かと聞かれれば,違法だとおっしゃるわけはなくて,その点について,ここで別に裁判ではないわけですから白とか黒とか言うつもりはないんですけれども,ああいう新しいサービスというのは,やり方によってはどうかというような御指摘をされた委員もおられて,本当にそのとおりで,やり方によっては何とか条文に当たり得るサービスもできれば,ちょっとやり方を変えるとはみ出してしまうということだろうと思います。
 やっぱりどうしても過去の条文というのは,具体的な立法事実に基づいて作っていますから,今出てきた新しいサービスに対応しないということなんだと思います。だからこそ受皿規定のような規定がないと,それぞれの,1個1個の条文を照らし合わせて当たらないと,もうそこで駄目となってしまうと思います。例えば今の検索エンジンの規定と趣旨的には似たようなもので,常識的に考えると認めるべきだと思われるものであっても,当たらなければバツだというふうになってしまう。そういう結果を救済するという意味で,受皿規定みたいなものが要るんじゃないですかということです。
 それから,著作物の表現を享受するかという共通要素について検討いただきたいとお願いをして,本日検討いただいているのは非常に有り難いんですけれども,例えば,じゃあ,最終のエンドユーザーが享受をするとなったら,もともとC類型ではそういうことを念頭に置いていなかったので,駄目ですよというようなことではなくて,JEITAの前回の意見書でも複数の共通要素を挙げておりまして,例えばエンドユーザーが享受をしないものは白になるという可能性が高いということなんだろうと思うんですけれども,享受する場合であっても,他の要素を加味して,やっぱり認めるべきではないかと思います。例えばそれが著作権者に与える影響が小さいですとか,契約を締結することが難しいとか,社会的な有用性が高いとか,複数の要素で判断を頂かないといけないのではないかということなので,一つ一つ議論するときには要素ごとに議論いただくのは構わないんですけれども,だから白,黒ということではないのではないかということを申し上げておきたいと思います。

【土肥主査】  奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】  すみません,今から申し上げるつもりのことに,もう今,先に反論があったもので,私が先に発言した方がよかったのかもしれないですが,ちょっと順番が逆になってしまいました・・・。47条の9によって,マル5,6,7については,いわゆるバックヤードの部分というのは,もちろんやり方次第なんですけれども,かなりの部分がカバーされるということであると思います。47条の9を作ったときに,やはり線引きとして,バックヤードの部分はここまではできるけれども,そこから先,プラス踏み込んで許すべきかどうなのかということは,47条の9としてではなくて,個別に考えるべきだろうという1つの判断があったということになるのだと思います。それを全部取っ払って,全て同じように,プラスの部分まで全部オーケーになるというのは,当時の整理から考えてもかなりハードルが高いのではないかなと思います。そういう意味では,この5,6,7の整理も,どれもバックヤードの部分と,そこから先の出していく部分が一気通貫になっているんですけれども,現状は,バックヤードの部分であれば,かなりの部分がカバーできているところが見えないわけです。逆に一気通貫になっているので,何か全部駄目と見えるようになっていて,若干,何もかもを巻き込んでしまって議論になっているところが気になります。
 巻き込んでしまっているという意味では,例えばちょっと別になりますけれども,マル1とマル3なんかでも,これ,特にマル3なんかは,キャラクターを使わなければいいわけで,自分が描いた絵とか自分が撮った写真とかいうのが基本的な使い方だとすれば,これはマル1にしてもマル3にしても何の問題もないわけであって,問題のないサービスも巻き込んだ形に見えて,一般の方が誤解しないか・・・。ちょっと議論の対象,それを個別に細かく見るという意味ではないんですけれども,かなり幅広に取って,何もかも一緒になって議論して,少しぼやけてしまっているのかなという感じはちょっと持っています。
 いずれも,さっきJEITAさんから反論があったところで,何かちょっと順番が逆になってしまったんですが,ただ,私はそういうふうな感じを持ったということを申し上げます。

【土肥主査】  当然ながら,これは著作権の審議会の関係なもんですから,プリントサービスにしてもメディア変換にしても,当然,著作権が成立するようなものについてのサービスということを前提として議論していたと思います。
 それで,ちょっと先ほど松田委員がおっしゃっていただいたところに戻るんですけれども,ああいうような検索機能付きのテレビとか,何かそういうようなものが出るということのために,現行法でできない場合について,現行法ではできないので無理だというふうに言うのか,あるいは,それはメーカーとか,あるいはテレビ事業者とか放送事業者とか,そういったものが何らかの団体等をつくって,そういうサービスが可能になるような契約ベースでそういったものができていくという,あるいは,そういうものを更に第三者が利用できる窓口ですかね,1つの窓口が出来上がっていくということは,非常に重要なことではないかなと思うんですけれども。こういうようなことをもし可能にするために,必ず現行の著作権法を変えなくちゃいけないのか,あるいはその外で十分できるんじゃないかというような,私は松田委員の御意見だと思うんですけれども,このあたり,更に御意見ございますか。

【松田委員】  ちょっと最初に補充だけさせていただけますでしょうか。
 私,先ほどの意見のところで,事業者にとっても個人にとっても大変有益なサービスになると強調いたしました。だけど,それは何らかの対処をとらなければ,このサービスはできないということになります。もしこのサービスができたら,テレビ界というか,コンテンツを楽しむ文化はかなり変わるんじゃないでしょうか。それで,もしかしたら日本でそんなことを考える以前に,アメリカの某社はしたたかにそのことのための準備をしているんじゃないでしょうか。
 だとしたら,テレビ番組と,それからインターネット検索を踏まえた文化の伝達方法というのは,次の世代のときにはごく普通のことになり,そして,チャンネルを変えるという過去の方法がなくなるということすら予想しておかなければならないんじゃないでしょうか。できることならば,日本がそういうものを早く作り上げた方がいいのではないかとすら思っております。
 これは,この法人向けテレビ番組検索サービスということに関する限りにおいては(実は法人向けではないんだろうなと私は思っていますけれども),これは,日本の高度技術を持った端末機器としてのテレビを作る企業体とテレビ局全部が集まれば,話合いができる。もちろんテレビ局の後ろ側には,音楽も映像も実演もあるわけですから,これをどうするかという大問題が起こるわけであります。
 でも,これはもうしようがない。日本流で言うならば,話合いをしてやるほかないですよ。アメリカみたいに,民事訴訟法規則の23条で,ケースを作ればほかの者にも同一のものを強制できるような法制を持っていない我が国においては,これは話合いでやるほか絶対ないと思うんです。話合いで,アメリカよりも早く日本がそういうものを作り上げて,新しい文化を発信すべきです。権利者と利用者で作っていただきたい。実にそういうふうに思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 これに関して丸橋委員,ございますか。

【丸橋委員】  権利処理の可能性について言えば,例えば5番について言うと,世界中のあらゆる論文というものが学術論文データベースに入るということは多分ないだろうと思いますし,6番についても評判についてはまさにCGMの世界なので,そんなものの権利処理なんてできやしないので,こういうものについて,47条シリーズの組合せで合法になることもあるけどならないこともあるという状態は,解消した方がいいのではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。いずれにしてもこの7サービスに関して,あえて引くとすれば4と5の間に1つ線が引けるけれども,5以下についても,グレーの部分,あるいは現行の権利制限規定から当然外れそうなものがある。逆に,1から4までのものについても,サービスそれ自体については,これはサービスという単位からすれば,全てが現行法に抵触するといいますか,先ほどのお話で言うと,自分の写真等,そういったものについてのサービスはもちろん可能であると,こういうことになるわけでございましょう。
 そのときに,仮に今言われているような,事業者にとって著作物の表現を享受しないようなものについて,何らかの手当てをするのがいいのか,あるいはもともと著作物の享受があるということは,著作物がユーザーのところにおいて利用されているわけですから,著作権の原則に立ち戻って考えるべきであって,現行法を超えてしまう部分について法改正をしていくのか,あるいは,もともと著作権として構成されているところでありますので,そういうものを契約ベースなり,事業者団体を構築していって,それでやっていくと。その方が,文化産業全体にとって,我が国において絶対プラスであるというお話もございました。
 でも,それもできないような分野がもしあるとすれば,それは例えばある種,いわゆる著作物の享受という観点でない権利制限,つまり補償金等の対価の問題で処理をしてしまう。これも,ある種の権利制限になるんだろうと思うんですけれども,契約ベースでその団体が構築されていって,そこの中でこういったサービスができるようにする。そして,それができない場合には,また先を考えていくというようなことも考えられるのではないかと思います。
 いずれにしても,権利者と事業者の間で様々な円滑なライセンシング体制,あるいは第三者の利用による窓口の構築,そういうことの必要性について,もう既に松田委員から頂きましたけれども,ほかの委員の中からこの点についてございましたら,お伺いしたいと思いますけれども,奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】  今,主査がおっしゃったとおりだと思います。ただ,契約と言ってしまうと,少し硬いイメージがするんですけど,私の場合は,ビジネス取引でまず解決するというアプローチなんだろうと思うんですね。というのは,権利制限であったり,いろんな補償金であったりというのは,どっちにしても1・ゼロの解決になるわけであります。補償金にしても掛ける,掛けないとか,それから,権利制限にしてもする,しないと。
 しかしビジネスディール,ビジネス取引ということであれば,それはいろんな応用が利くわけであります。これはもちろん私が申し上げることではありませんけれども,やり方としては,例えば最初の1回から,最初の1個からライセンス料を取らなきゃいけないわけではなくて,ある程度の規模まではライセンス料は要らないけれども,そこから先は指数級数的に上がっていくとか,そういういろんな工夫ができるわけです。権利者にとっても,それから事業者にとっても,サービスを伸ばしていくという方向のいろんな工夫ができるのに対して,これを法律にしてしまうと,そこは1・ゼロになってしまって,どっちかにプラスだったり,どっちかにマイナスだったり,結局使い勝手が悪かったりということになる。
 ただ,もちろんそれで全てが解決するわけでありませんので,いろいろやったけれども,こういうところはどうしようもないというのは,それはそれで,主査もおっしゃったように,またその段階で考えるということはあってもいいのではないかという気はいたします。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 大渕委員,お願いします。

【大渕委員】  今,奥邨委員が言われたのと少し違うが,同様の路線かと思います。まさしく最初に主査が御整理されたとおりかと思いますけれども,先ほどはC類型に当たって「享受」に当たらないのであれば,権利制限が成立するということであって,これは1つの権利制限等のパターンでありますが,それ以外に,「享受」に当たるけれども,対抗利益を理由として,別の形の権利制限等が問題となり得ることとなってきます。もともと――また釈迦に説法で申し訳ありませんが――著作権法というのは,権利者の権利の保護と利用者の対抗利益とのバランスの上になっているということなので,先ほどのような,「享受」しないから最初からターゲットに入ってこないというのとはまた全然違う形で,むしろそのような別の形で見直した方が議論が前進するのではないかと思います。その観点では,最終的にはどうなるかは別として,例えば,理論的観点からであれば,特にニーズがあるという観点からではなくて,例えば,ワーキングやこの委員会の始まった最初の頃は,メディア変換というのは非常に重視されて議論されてきました。また,例えば,それと少し似ていますけれども,現在,係争中なのでやや機微なところがありますが,自炊代行のようなものについても,同様の可能性があり得るように思われます。現行法であれば,これはまた繰り返しになりますが,私人が主体だということになれば白(侵害不成立)だし,業者が主体になれば黒(侵害成立)だということであり,オール・オア・ナッシング的な解決となってきます。以前少し申し上げたとおり,これは恐らく業者が主体になる方向になるのではないかと思われます――余りはっきりは申し上げませんが。
 ただ,そうであったとしても,何らかの形で,先ほど言われましたように,最初から著作権の対象にならなければそれで終わりですけれども,なることを前提に,包括契約なり何なりで,要するに最終的には利用者と利益が合致するように話合いで,事業者と権利者の方で契約をしていくというような,――以前少しクラウドの関係でそのような話が出ておりましたけれども,――あのような路線で行くのもありだと思います。あるいは,そのような契約的な処理がmarket-failureのようなもので現実的に成り立たないのであれば,権利制限の可能性もあり得るかと思います。最近論文で書きましたし,前にも申し上げましたけれども,その際には,先ほど出ていたような,新補償金の可能性もあり得ると思います。今までの権利制限であれば,基本的に,オール・オア・ナッシング的であって,1かゼロかだけで中間的なものはないという色彩が強かったといえますが。補償金と言うと,私的録音録画補償金の印象が強くて,これは,非常に特殊でありますが,現行法を見ましても,教科書補償金等のように,最終的には権利者と利用者とのバランスをとるためには,使うことは合法的に可能だけれども一定の合理的な額の金員を払うという形でバランスをとるという形も大いにあり得るのであって,工夫の余地はいろいろあると思います。まずは契約でいろいろ頑張っていきますけれども,それがうまくいかないときには,新補償金付きの可能性も含めた新権利制限という形も可能性の一つとしてはあり得ると思われます。抽象論だけやっているよりは,地に足が着いた,具体的な形で議論をしていく必要があると思います。要は,せっかくの著作物ですから,利用者が,きちんと利用ができて,他方で,権利者にきちんと利用の対価が還元されるという形をどうやってうまく実現していくのかというのは,もっと具体的に考えていった方がよいのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 今子委員,どうぞ。

【今子委員】  先ほど主査より御質問があった点なんですけれども,私は,情報活用サービス全般について,契約だけで発展させていくのは難しいのではないかと考えています。例えば5番の論文検証支援サービスについて,先ほど丸橋委員からもお話のあったところですが,コピペルナーの場合,ウエブページなどで比較してコピペを発見するということですけど,それが他人の論文とか書籍,新聞とか雑誌,いろんな著作物を調査対象としてサーバーに複製するということになると,現行法に照らして適法性に疑義が生じるということになるので,このようなサービスが発展していくのは難しいのではないかと,危惧するところです。
 書籍とか論文等について,許諾を受ければいいじゃないかという意見があり,それはもちろんそうだと思いますけれども,非常に様々な著作物が存在していて,かつ,それらの権利の管理が,今のところ万全に行われているというのは言い難いのではないかと思っておりまして,やはり全てについて許諾を得るというのは不可能だと思われます。
 また,論文のチェックのためにデータベース化をしていくというのは,比較対象として用いるだけですし,この部分がコピーですよといったことも示す程度であれば,バックエンドの複製にとどまるので,権利者に不利益があるというふうにも思えません。ですので,権利制限が適切ではないかと考えております。
 それからもう1点,今回のペーパーから抜け落ちているというか,入っていない点なんですけれども,もともと「仮想化」という項目がございました。様々なサービスを提供するためのバックエンドの複製とかの処理として,仮想化は非常に重要な技術でして,現行法における47条の5とか47条の9とか,そういった条文では対応できないというような課題があって,かつ,そういうバックエンドの複製すべてについての権利者から許諾を得るというのは,不可能だと思われます。
 論文検証サービスに限らず,様々なサービスのバックエンドにおける複製等については,契約だけでは対応できないですし,現在の権利制限規定は個別具体的,限定的でカバーしきれていない場合が多いので,柔軟な規定の導入が必要なのではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】  2つ申し上げたいと思うんですが,まずは,松田先生の御指摘があった,テレビの見方が変わるんじゃないかということ。例えば今はざっくりと,フジテレビだから見よう,日本テレビだから見よう,というようなところから始まって,毎日の習慣の繰り返し中でテレビを見ているわけですけれども,それが,番組の出演者なりシチュエーションなりを目がけて検索をして,そこを追っかけていくというような視聴に変わっていくと。これはもう本当にテレビ文化全体が変わっていくことだと思うし,音楽にだってそういう変化はあるんだと思います。そしてまた,松田先生もおっしゃったように,そのことは権利者側にもメリットのあることかもしれません。
 そういうことを踏まえて,じゃあ,権利者はどういう努力ができるのかというと,集中管理だったり,手続処理の円滑化であったりというところで努力ができるだろうと。それに対して,権利者から許諾を取るなんてあり得ないだろうなどとおっしゃっているけれども,その努力をなさったんですか,今まで。利用者団体もない。やってみればいいんだと思うんですよ。そういう中で,利用者である事業者も権利者も,両方メリットのある方式にシフトしていけば,これは両方にとってウイン・ウインになる話なのではないかと思います。
 それから,もう1点。知的財産権というのは,クリエーターが一生懸命汗水垂らしてつくった作品もそうですが,企業の中で開発をする研究者なり,そういった方々が知的財産権としての特許を取ったり,工業所有権を取ったりと,そういうことがあるわけですね。
 ですが,なぜか著作権だけが,権利制限の対象として言われることが多いわけですね。これはどうしたことなんだろうと常々思うわけですけれども,例えば榊原さんのおられるパナソニックさんなんかは,かつてMASH方式という,1ビットでAD変換する方式を開発されて,その技術が今のいわゆるハイレゾ,DSDの技術なんかに引き継がれていると思うんですが,例えば,そういう技術を開発したにもかかわらず,新しい産業の創出拡大に資するために無償で提供できるような権利制限規定を導入してほしいという議論が巻き起こったら,榊原さんはそこでイエスと言うんですか。これは質問ですけど。

【榊原委員】  御質問ということですので,お答えできる範囲で。今おっしゃった特許のことを私,余りよく存じ上げておりませんけれども,特許の世界と著作権の世界で,特許では余り権利制限という議論がないのに,なぜ著作権ではあるのかという御指摘については,特許は事業者対事業者の世界なわけです。著作権というのも,最初は割と事業者,プロの著作権者の方の世界だったと思いますけれども,前回の意見書にも書きましたとおり,もう今やユーザーの方も著作権を利用するとかだけではなくて,発信する側(がわ)にもなっていて,非常に国民一般との,さっき大渕先生が対抗利益とおっしゃいましたけれども,そこと関わることだと思うんです。
 どんな著作権も100%ではなくて,やっぱりいろんな利益と対立したときには,その部分がへこむというのは,それはそれで文化の発展にいいということですから,だから,これだけ権利制限規定がたくさん並んでいるんだと思うんですね。それによって文化も発展するから著作権者にとってもいいだろうという,全体の利益を考えてそうなっているということで,誤解がないように,JEITAの柔軟性のある規定を導入してほしいという意見も,例えばアメリカなんかがたくさん出した判例を見ていても,前回,台湾の例も提示させていただきましたけど,台湾の経済分析なんかを見ると,そういった規定を入れた後,コンテンツ産業の売上げが非常に伸びているということがあるんですね。例えばライブのところの利益が伸びたりと。
 ですから,1つの利用を見て,例えばメディア変換されたら,そこで機会損失があるとなっても,仮になったとしても,それ以上にプラスがコンテンツ産業に上がっているという結果が出ているので,そういう場合については受皿規定があると認められていくということがあって,みんなにとってもいいんじゃないかということで,どなたかの資料に,著作権者の利益を優先するような規定についてはどうかという御意見があったんですけれども,著作権者の利益を犠牲にしましょうというような提案ではないわけです。アメリカの規定なんかでも,そこはちゃんと規定で十分見られていると思うんですね。
 ですから,話を戻しますと,特許とはやっぱりそこは違うのではないかなということでお答えしておきたいと思います。

【椎名委員】  質問したのは,著作権だけが権利制限の対象になるのはなぜかということじゃなくて,例えばパナソニックさんの持っている知的財産権について,ユーザーの利便性にも資する,それから新しい産業の創生・拡大にも資する,なおかつあなたにもメリットがありますよと言われて,その権利をオープンにしてください,権利を制限する規定を作りますと言われたら,賛成なさるかどうかということを質問しているんです。

【土肥主査】  その御質問に対しては,かなり個別の話になってくるように思われます。著作権法規定との関係で様々なサービスをどのように取り扱うのかということで御審議をお願いしております。従いまして,今ここでの議論は,一般的な,そういう観点からの議論にならざるを得ないんだろうと思います。
 それで,ちょっと戻しますけれども,要は,JEITAさんがおっしゃっておられるのは,こういう各種のサービスを認めてほしいということで,それで,事業者にとって著作物の表現を享受しないようなものをはじめとするエレメントで一般条項を作ってほしいと,こういうことなんだろうと思います。
 現在,個別の権利制限規定の中で,幾つかのものについてはもう対応できるところがある。これはもうお認めだろうと思います。多分,それを漏れるというおそれがあったり,グレーな部分があったりするんじゃないかという御指摘もあるわけであります。一般条項で規定を作っても,先ほど大渕先生も言われたわけですけれども,要するにエレメントの問題で,要件ではないわけですから,それで,そういう規定が入ったとしても,絶対にこのサービスが承認されるわけではないわけですよね。そうすると,そこでもう1回もし判断等が出て駄目だったら,それを可能にしてほしいということを多分おっしゃってくるんだろうと思うんですけれども,それも結局,個別的な権利制限規定に行かざるを得ない。つまり,今の場合でも,個別的な権利制限規定のところでここまで行けるかどうかは,チャレンジする可能性は事業者に残されているわけですよね。
 ですから,そこの部分について,これまでヒアリングをし,あるいは意見を頂いているところからすると,現行法のもとで十分事業としてはやっていけるんだと。だけど,皆さん,委員の方が,いやいや,例えばこういうものについては限界があるんじゃないかと。その場合は,例えば今子委員の御意見について申しましても,そういう文献等に関しては,例えば複製権センターなんかを中心に,1つのそういうサービスが可能になるような団体を構築していくというようなことも,可能性としては当然残っているんだろうと思うんですね。
 ですから,まずは,ここまでできて,ここまでできないんだという,ここから先はできないんだという立法事実を明確にしていただいて,その部分については,事業者団体等のライセンスの仕組みで対応できる部分はする。それから,そこで対応できないものについては,例えばもう一つの別の権利制限,つまり著作物の表現の享受の部分になってくる場合には,それは対価を払えば自由に利用できるというような,そういう細かい手当てをしていかざるを得ないんじゃないかと思うんですけれども,皆さん方どのようにお考えでございましょうか。
 津田委員,どうぞ。

【津田委員】  先ほど松田委員が言われたことに僕は大賛成で,まず,テレビのクラウドサービスみたいなものができてきたら,やはりそれは利用者にとってもとても便利であると。そしてまた,情報というのは公共財という側面もありますから,それが流通する,広く利用しやすい形で利用するということは,いろんな意味で意義が大きいんだろうなと思っている。
 問題は,そこを,じゃあ,どう実現するのか。じゃあ,契約で処理すればいいのか。また松田委員の方は,これはもう権利者と事業者が話合いで作るしかないというお話もあったんですが,それで考えたときに,じゃあ,アメリカではどうなっているかといったら,例えばもう始まっているわけですよね,テレビのクラウド型のサービス。いろんな形でモバイルやタブレット,クラウドで置いてあって,それを利用者がお金を払うことで対価が還元されて,オンデマンドで見られるようなサービスが始まっている。
 じゃあ,何でアメリカではできて日本ではできないのかというところに話が行くわけですが,多分そこに関しては,やはりそこの話合いが適正に行われる,若しくは話合いで,じゃあ,この辺が落としどころですよねということの呼び水があるからだと思うんですね。
 そこで,この委員会の存在意義に戻ってくると思うんですけど,じゃあ,その呼び水を作る,契約で処理する,話合いで作る,どちらも同じことだと思いますけれども,呼び水を作ることはどうすればいいのかと。契約でできればいいのか。それが一番理想ですよね。でも,現実はなかなかそうでもない。じゃあ,権利制限でやるのか,若しくは補償金でやるの。僕は何でもいいと思います。ユーザーにとっては,正直どうでもいいです。お金を払うことで使いやすいサービスができるのであれば,ユーザーにとってはそれが一番のメリットなので,契約だろうが補償金だろうが,権利制限であろうが,それは何でもいいんですが,ただ問題は,この話合いをするときに,ユーザーが今までずっと蚊帳の外だったわけですよね。そこで,我々みたいなユーザーの団体がなかったということもありますけれども,ユーザーがどんどん蚊帳の外で,そこに関しての,こうだという意見を言うところがなかった。
 また,椎名さんの先ほど,許諾をとればいいじゃないかということは,それは正論だと僕も思います。ただ,実態としてどうかというと,事業者側が話合いをしようと思っても,特に10年前,15年前は門前払いであるというケースも多かったですし,そこはやっぱりなかなか協力的な関係が築けなかったということが,今の,今子委員の先ほどの話にも,多分,契約じゃ難しいんじゃないかという話にもつながっていると思うんですね。
 ただ,そんな中,ようやく変化も出てきました。音楽業界で,この委員会でも提案がありましたけれども,隣接権も含めた許諾スキーム,こういうものを契約ベースで作りましょう。僕はこれ,すばらしい動きだと思います。
 ただ,じゃあ,この動きがなぜここの2014年ぐらいになって出てきたかというと,これは権利者側の理解が進んだ,時代に合わせようとしてきたのか。そういう部分もあるんですけれども,僕はやはり一番大きな要因というのは,iTunes Match,Spotifyと言われた新しい音楽のサービスが出てきて,外資の音楽サービスが現実問題として支配的になってきたので,そして,今までのアナログのCD……,アナログというか,デジタル,CDですね,物理物のCDを売ってきたというビジネスがじり貧になってきたから,じゃあ,そういうことも認めて,広く薄く取っていこうということで転換していたというところもあるわけですね。
 それでは多分もう駄目でしょうと。デジタルやネットでコンテンツの利用態様というのが大きく変わってきているわけですから,やはりそれは今までのスキームの延長の継ぎはぎでやっても恐らく対応は難しいという状況があって,この委員会で話し合われていることもやっぱりデッドロックになってしまいがちなことが多分問題で,じゃあ,それで何が起きるのかというと,アメリカ型のサービスだけが実質的に普及していって,結果的に日本のコンテンツから上がる収益というのは相当外資に吸い上げられていきますけれども,それでいいんですかという問題はあると思うんですよね。そうしないために,日本のコンテンツ権利者と事業者で日本型のスキームを作っていくということを話し合うためのきっかけの場にこの委員会はすべきでしょうし,契約で処理する,話合いで作る,権利制限をやるべき,何でもいいんですけれども,ただ今議論すべきというのは,それがやっぱり有効に機能させるための呼び水をどう作るかということで,そこを話せないで,自分たちの利益につながる話だけをしていると,結局10年たっても20年たっても,この委員会で話し合っていることを10年後も20年後もしているんじゃないかという危惧が僕はあります。
 もう一つ,ちょっと,きょうはこの発言で僕はいいと思うんですけど,ユーザーはもう,コンテンツの話,どう利用されるのかという話をしているんですけれども,現実問題,スマホがこれだけ普及して,LINEをみんな利用している。これはコミュニケーションですね。コンテンツが今もうコミュニケーションに負けているという状況で,コンテンツが利用しやすい環境というのを……。もう今,だからコンテンツ産業というのは,ユーザー同士のコミュニケーションが大きなライバルになっている。そこに対して負けてしまう。
 そのときに,コミュニケーションというのはどんどん使いやすくなっていきますから,そこをライバルだと思って,コミュニケーションではなく,コンテンツが利用しやすい環境をどう作っていくかということを考えて,そのために契約でもいいです,話合いでもいいです,権利制限だったらここまで認めてやりましょうか,でもそこでどういう環境を作るのかということの,少なくともこの会議を結論するときに,前向きな,次へつながるステップみたいなものを作らないと,やっぱりこの委員会そのものの存在意義が僕は疑われるんじゃと思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。松田委員,どうぞ。

【松田委員】  このまま長く議論しているのは,いささか無駄だと。それから,これから先も同じことでは困る。だから,この委員会の次のステップとして,何か具体的なことを考えなきゃならない。これについては私は大賛成です。それに是非議論を向けていただきたいと思っております。

【土肥主査】  龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】  5番,6番あたりが現行法でも適法の範疇(はんちゅう)に入るかどうかの限界線だろうと思いますが,論文については,学術論文系は,特に厳格なレビューを受けるべき分野なのだと思うのですが,こういう分野については日本学術会議傘下の各学会等が,著作権を処理の仕方として,多くは学会の方に著作権を召し上げてしまう,そういう方法で,統一窓口を学術分野で設けることは可能なのじゃないのか。そういうところを窓口にして,重要な論文についてレビューをする仕組みを作るというのは,学術上も重要なことですし,そういう仕組みというのはあり得るのではないかと思います。
 問題は,そういうものに乗らないグループについては問題は残るわけですけれども,これも論文審査のサービス内容を工夫することによって,その一部は,現行法の権利制限規定の中に押し込める方法もあり得るのではないかと思います。その意味で,コアのところを契約処理し,あるいは権利制限内とし,それらに漏れたところをどういうふうに対応するのかという思考アプローチで,問題を詰めていけばいいのではないのかと思う次第です。

【土肥主査】  じゃあ,次,お願いします。

【椎名委員】  今後の議論にということでお話も出てきたので,ちょっとお話ししておきたいんですが,契約による対価であろうと,権利制限の補償金であろうと,もう何だっていいと僕も思うんですよ。なんだけど,先ほどコンテンツを取得する利用じゃないとか,そういう話が出てきたけれど,結局は,ユーザーのコンテンツへのニーズに乗っかって様々な事業が展開されて利益を上げるのだとすれば,そういう人たちが,やはり権利者と向き合って,きちっとウイン・ウインの関係を作っていくということが,この委員会の到達点を見出(いだ)す唯一の方法だと思うんですね。
 全部権利制限でお願いねというようなことを言い続けるんじゃなくて,事業者さんの方もきちっと努力をしてほしいです。その考え方に立って,この委員会の結論を見出していきたいなと,これは強くお願いしたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 じゃあ,榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  資料3の1なんですけれども,ちょっと話が,最初に申し上げた方がよかったのもしれませんけれども,1のところで,アクセシビリティとeラーニングは別の委員会でも検討しているのでということで,外してはどうかということなんですけれども,身障者関係の権利制限規定をまず整理されるのでということについては,それはそれで必要なのであればいいと思うんですけれども,アクセシビリティで問題提起をさせていただいたものというのは,別に身障者だけに限りませんで,例えば私のような健常者であっても,非常に目が疲れているので,夜遅くなってからは読書をやめて,それを音にして聞きたいとか,身体障害者の人に限定されない情報へのアクセスをやりやすくするというような点も,たしか具体例で挙げさせていただいていたかなと思いますし,例えば子供の本を読むときに,親が読んであげる分にはいいんですけれども,親がいないときに振り仮名追加機能みたいな例も,別に身体障害者ではなくて,子供の情報へのアクセスとか教育的な目的というものもあって,新しいサービスっていろいろあり得ますのでということだったので,そういったはみ出し部分がやはりあろうかということで,受皿規定が必要だという主張になります。
 eラーニングについて,どこまで法制・基本問題小委員会で検討対象にされているのか分かりませんけれども,現行法は,やっぱり事業の場だけを考えておられるように思いますけれども,前回御紹介をさせていただいた,例えばアメリカのグーグルブックスの例なども念頭に置いておりまして,そういったものについて,あれは大学と事業者と両方につての裁判事例ですけれども,そういうものが残るのではないのかなということで,結局JEITAの主張というのは,いろんなものがあり得ますよねということなので,そこについても,やはり検討対象には漏れる部分がある以上は残していただけないかと思います。
 それから,先ほど今子委員が指摘してくださった仮想化についても,具体例ということで1つの事例になるものではなくて,今挙げてくださっている例,例えば4とか5とか6とか7あたり,ネットサービスなんかには特にだと思うんですけれども,必ずセットで出てくる論点だろうと思いますので,その部分についても挙げていただきたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。アクセシビリティサービスに関して,法制小委で検討中というのは,おっしゃるように現行規定は視聴覚等障害者の方を限定してなされておりますが,マラケシュ条約との関係でみますと,条約の方が広めにアクセシビリティの改善を求めているんですね。どのくらい広いかということに関して,もし榊原委員が確認を御要望であればお尋ねしますけれども。要するに,必ずしも今,現行法の視聴覚等障害のある方という意味での狭い意味ではないと承知をしていますけど。つまり,マラケシュ条約との対応関係で,日本がそれを批准する場合に,どういう著作権法の見直しが必要になってくるのか。また,この機会に,条約のレベルを超えてに広く改善を行うべきなのかどうかというのはまだ出ないと思います。現行の法制小委での議論の経過を,途中だと思いますが,榊原委員の御質問にお答えいただけますか。

【秋山著作権課課長補佐】  お答えいたします。今回,法制・基本問題小委員会においては,マラケシュ条約の締結をきっかけといたしまして,障害者の権利制限規定の見直しについて広く御議論いただいておるところでございます。御承知のとおり現行の権利制限規定においても,視覚障害者といった具体の障害種に限定することなく,様々な視覚による表現の認識に障害がある者について対象にしております。現在,そうした規定について,まさにアクセシビリティ,情報アクセスの拡大を図るという観点で,多様な障害ですとか,いろんなハードルを抱えていらっしゃる方について,どのように利用の円滑化を図ることが望ましいかということを御議論いただいていると承知してございます。

【土肥主査】  よろしいですか。要するに,いずれにしても法制小委の中で,アクセシビリティがサービスとしてどこまで見直しが必要なのかということは,まずやらせていただければと思います。それを見ていただいて,まだ足りないというようなことがあれば,その段階の議論だろうと思いますけれども。よろしいですか,その点は。
 それではほかの御意見で。今子委員,どうぞ。

【今子委員】  先ほど津田委員の方から御発言がありまして,権利制限でも契約でも報酬請求権でも,どういう手段でもよいのでサービスをできるようにすべきだということをおっしゃっておりましたが,私も全くそのとおりだと思っております。日本でも,権利者と事業者が協力して,諸外国に後れをとらないよう,サービスを実現できる環境を整えていくべきかと思っております。
 ただ,契約に関して1点申し上げたいのは,契約スキームに限界があるという点です。著作物の利用で,契約に適しているものと適していないものがあると考えていまして,例えばクラウドサービスの場合でしたら,タイプ1や3は契約に適していると。配信型ですので,当然,権利者の許諾を取って配信しなければならないけれども,タイプ2は契約には適していないと申し上げました。今回の情報活用サービスについても,複製等の対象となる著作物があらかじめ特定できないためにすべての許諾を得ることが困難であり,かつ,円滑化,効率化を目的としたバックエンドにおける複製等,権利者に与える不利益がほとんどないと考えられる利用行為は,契約には適していないと考えています。仮に権利者団体と契約したとしても,その団体の中で契約を拒否する権利者,団体に入っていない権利者からの許諾は得られず,円滑化,効率化の観点からのバックエンドの複製が適法に行えないということになってしまいます。
 なお,この機会に,前回の小委員会で配付された参考資料3というのがありまして,前回発言したかったのですが,発言の機会がありませんでしたので,一言触れさせていただければと思います。1の契約スキームに関して,私の発言が反映されていなかったので入れていただきたいと思っていまして,その発言の内容は,集中管理による契約スキームについて,タイプ2については有用性はないという内容でしたので,反映をお願いしたいと思っております。
 以上です。

【土肥主査】  どの部分だったかちょっと分からなかったんですけど,事務局はよろしいですか,今。

【秋山著作権課課長補佐】  議事録を確認しまして,対応させていただきたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 じゃあ,奥邨委員,どうぞ。その次,大渕委員。

【奥邨委員】  簡単にですけれども,私がビジネスと申し上げているのは,例えば,確かに契約をするのは難しいというものはあると思うのですが,逆に言うと,サービスをサービスとして魅力のあるものにするためには,契約していかないといけないということの方が多いのではないかなと思うのですね。例えばこの論文検索にしても評判分析にしても,権利制限で自由ということにしてしまうと,結果的に,元の情報を提供する側(がわ)は,例えば,出版社や学会誌は,重要な論文は有料の会員制サイトで提供するというような形式に,通常は移行するであろうと思うのです。
 そうすると,ライセンスを取らない限りは,ネットにある,よく分からない,出どころの分からない論文ばかり集めて検証サービスをすることになってしまうわけです。やっぱり価値のある情報というのは,基本的には囲い込みに入るわけです。その囲い込みをされる権利者や提供者の努力を破ってまでというような権利制限規定ができるわけではありませんので,そうなると,本当の肝のところ,価値のあるコンテンツ,情報については契約をしなきゃいけないということになるわけです。つまり手当てすべきは,あとアウトサイダーはどうするかとかいう話なのではないでしょうか。そう考えると,ちょっと,何というんですかね,権利制限規定があればサービスがいいものになるかというとどうなのか。むしろ,やっぱりビジネスの中身としては,本当に重要なものというのは価値があって提供されている以上,契約しないとできないものの方が多いのではないかなという気がいたします。
 そうなると,やはりビジネスとしてまず捉えていくということが重要なんじゃないかなと。その後で,法律なりで,環境整備ということはあり得るのかなというようなことを思っております。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 それじゃあ,大渕委員,次にお願いします。

【大渕委員】  基本的には,先ほどの繰り返しであり,かつ今の奥邨委員のと似たところになってきますが,まず,皆さん強調されているとおり,これは議論自体に意味があるわけでなくて,もともとの問題意識が,こういうようなビジネスがきちんと展開できれば,権利者にとっても事業者にとってもユーザーにとっても望ましい話なので,それをできるだけ早く目に見える形で実現するというのが第一目標だと思っております。そのためには先ほどあったように,契約だろうが権利制限だろうが,要は,先ほどのようなことが実現できればよいわけであります。契約というのもいろいろ工夫もあるかと思いますが,できるだけ現実的に,確実に成果が出るような,それは1ルートだけじゃなくて,複数やってみてどれが一番早くできるのかというのもあろうかと思います。そのような意味で,抽象論よりは,やはりかなりこれを見ると個別にいろいろ違ってきているものですから,まとめてやった方がいいのか,分けてやった方がいいのかも含めて検討するということであります。また,少し気になったのは,本日,岸委員も出されているとおり,この委員会というのはもともとクラウドを中心に来ているので,マンデート論的ないしミッション論的にこれを全部やるのが果たしていい場か。それもあって,先ほどからいろいろなものは,全部一遍にここでやるのが現実路線としていいのか,先ほどのアクセシビリティはほかのところでやるというような点も考えていく必要があります。
 ここでまとめてやってしまえば,それが早いと言えば早いのですが,そこの点についても,できるだけファイナルの確実な成果物を出すためにはどのルートが一番いいのかということについては,ここで基本線だけ決めて次の他の場に回すなど,いろいろな現実的なアプローチがあると思います。その際には,本日午後にある特許法の職務発明の審議会でさえも,契約が決め手となるという点が改めて非常に強調される結果となる議論になっていますけれども,考えれば考えるほど,契約というのは非常に良くできた,重要なものであります。すなわち,国の法律で直律的に全部決めてしまうのではなくて,民・民で自主的にルールをつくるというのは非常によくできた制度なのであります。ここでも,このような契約を活用するということが一つの鍵となってきます。
 ただ,先ほどあったように,market-failure(市場の失敗)ということになるかと思いますが,契約することが現実的に期待できないようなものであれば,契約の努力を幾らやっても意味がないからということになってきます。このように,まずは契約の努力を尽くしてみて,それができるのであればそれはそれでよいし,できないのであれば別のことを考えるというような形で,できるだけ具体的で,かつ現実的なもの,すなわち,単なる議論というよりは作業を進めていった方がいいのではないかと思っております。

【土肥主査】  華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】  先ほどから今子委員が繰り返し言われていることに対する質問なんですけれども,きょう資料1で,コピペルナーという事業を展開している企業の方からの資料が提出されているんですけれども,その(3)に,今の事業を更に充実させるためには,契約をする努力をすると書かれているんですけれども,今子委員は,要するにこの(3)の意見,努力するんだということを完全否定しているのか,あるいは努力はしたくないんだというふうにおっしゃっているのか,どちらなんですか。

【今子委員】  契約をする努力をすべきでないということを言っているわけではないですし,できるところは契約を進めていくべきだとは思いますが,将来いろいろなサービスが生み出されていくということを考えたときに,契約できるものが全てであれば,確かに契約だけで足りると思うんですけど,契約できないような論文や書籍等が多いのではないかという点が懸念され,そうすると,その点をどうしていったらいいのか,解決策が欲しいなと考えたという次第です。

【土肥主査】  よろしいですか。
 榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  すみません,ちょっと話が戻ってしまうんですけれども,先ほどアクセシビリティの件で,事務局から御説明があったのは,身障者の方だけじゃなくてハードルのある方もということだったんですけれども,私が言った趣旨は,健常者についてのアクセシビリティの点も議論いただきたいので,はみ出るところがあるのではないかということでした。
 それから,そこの議論を待ってからということだったんですけれども,あちらの小委員会は特に期限がなかったのではないかなと思っておりまして,こちらの小委員会はむしろ,ちょっとペースは分かりませんけど,2週間に1回開催されていて,非常に速いペースで議論しているので,あっちを待ってからこっちに戻ってくるというのが,時間的な前後関係を考えるとどうなのかなと思いました。
 あと,eラーニングの点についても,アメリカの判例みたいなものについては,検討対象にはあちらではならないんじゃないかなということも,意見として申し上げました。

【土肥主査】  今の2点,事務局から何か。特にeラーニングのようなことに関しても,もっと早くやれという御趣旨じゃないかと思うんですけれども,何かありましたら。

【作花文化庁長官官房審議官】  私の方から説明いたします。法制・基本問題小委員会で今議論しているのは,まさに榊原委員のおっしゃったとおり,障害者のための著作物へのアクセス環境を改善するということが主目的です。先ほどちょっと主査の方から言及がありましたけれども,主目的は,昨年6月策定された新しいマラケシュ条約に日本が加入するための整備ということでございます。ただ,その整備だけでありますと,今,我が国の著作権法が持っている視覚障害者のための制限規定で,かなりの部分が既にカバーされていて,若干の修正によって,基本的にはマラケシュ条約の水準を満たすことができると考えております。
 ただし,既に私ども,障害者の方々の団体ともいろんな意見調整をしていますが,やはりどうせこのマラケシュ条約に入るということであれば,この機会に,マラケシュ条約の水準以上に障害者の方々のためのアクセス環境を整備してほしいという意見が出ていますので,マラケシュ水準以上のものも含めて,この法制・基本問題小委員会ではこの際議論していただきたいと,事務局としては考えていると。
 それで,今おっしゃった,健常者のためのアクセシビリティということをこちらでやってほしいということでございますが,であれば,先ほどの,目が疲れたからどうのこうのとなりますと,私的使用の範囲ではかなりの部分は今自由にやっているというか,やれるところもあろうかと思います。もちろん同一性保持権だ何だという,かつてのときめきメモリアルか何かでしたっけ,最高裁を批判するわけにはいきませんが,そういう判例もございましたが,基本的には私的使用の範囲内であれば,かなり使えるのではないかと思うし,例えば読み上げ機能のソフトを消費者に配ったからといって,それは同一性保持権侵害だというような訴訟も現実には起きておりませんから,いいとは思うんですが,ただ,委員が懸念されている,そうであっても,例えばこういうものは健常者にとって是非使いやすくしてほしいという,もうちょっと具体例をお出しいただいて,その上でこの委員会で議論するということはあり得るのではないかと思っています。
 それから,もう一つのeラーニングの問題でございますが,これは結局,今,日本でも,MOOCに代表されるような大規模な遠隔教育のための試みというものがアメリカに後れること何年でスタートしているし,文化庁というよりは文部科学省としても,その方向性はやはり促進していかなければならない課題だと思っております。その際に,著作権法上の問題ということを議論しなきゃいけないんですが,まずは,我々としては実態をきちっと把握しなきゃいけない。つまり抽象論で「これはやっぱり日本の公教育のためには制限規定が必要だ」とか,「いや,これはライセンスできちっと許諾を取ってやるべきだ」とか,「いや,やはりそれは報酬請求権制度の方がいいんだ」と議論してもしようがなくて,実際に遠隔教育なりeラーニングをやっているその場面において,それは法的にはどのような処理をするのが最も適切かということを判断しなきゃいけない。
 例えば今,一番日本で中心的なのは放送大学です。私自身も教官ですけれども,放送大学の理工系なんかは,かなりそこはライセンスを取って,他者の著作物を放送画面に使ったりしていると。じゃあ,その場面というのは具体的に分析してみて,これはやっぱり今までどおりライセンスを取るべきと判断すべきなのか,それとも,やっぱりこれは権利制限の方でやっても権利者にはそんなに不利益じゃないんだろうと判断するのかは,やっぱりこれ,具体的に見ていかないと分からない。
 ということで,このeラーニングについては,まずは私どもの予算で実態をきちっと把握した上で,この審議会で法制的な議論をしていただきたいと,こういう段取りで今考えているところでございます。

【土肥主査】  よろしゅうございますか。
 ほかに。松本委員,どうぞ。

【松本委員】  松本です。前回と前々回参加できなくて非常に申し訳なかったんですけど,前々回,この議題というかテーマが出されて,何だこりゃというのが正直な感想でした。今後ずっと先のことを考えると,先ほど津田委員がおっしゃったように,新しいシステムといいますか,デジタル時代の新しい放送なりテレビなり,あるいは画像,動画の提供の世界というんですかね,やり方が変わるということに対しての新しい何か仕組みをいろいろ検討していくというのは非常に賛成です。
 それで,個々に言いますと,メディア変換にしても,2番の個人向け録画視聴サービスにしても,飽くまで個人視聴については,個人で利用するについては,もともとのテーマにあるように,タイプ2と4の関係での説明をさせていただきましたけれども,特に2番の,これは矛盾していると思うんですけど,この言葉からとった場合ですけど,「事業者により録画されたテレビ番組」,これ,事業者がいわゆるエアチェックをして録画して,それを提供するということだと思うんですけど,事業者がエアチェックしたものを,我々著作権者は許諾をする前提がありません。
 というのは,今,デジタル放送にしても,それを録画すれば,当然デジタルHDクオリティーからSDクオリティーに落ちてしまうし,ユーザーはそれを望んでいないということで,このサービス自体が,今の流れからするとあり得ないと思います。
 プリントサービスについては,何をか言わんやで,何のコメントもありません。こんなことを出すこと自体が私は心外というのが正直な話です。
 特に2番と7番については,同じようなカテゴリーといいますか――になると思うんですけれども,特に7番の,「クラウド上に」というのは別として,放送を録画して,それを法人,あるいはユーザーが後で見るサービスを提供するというのは,既に今もありまして,今ですと約2週間ですかね,24時間2週間の分を録画して――全ての局の過去のテレビ番組を――,それを,例えば私が個人的に必要であれば,幾日の何時のこの番組を見たいということになると,その業者は提供してくれます。それはDVDに焼くか,VCに焼くか,焼いた形で提供して,それは当然有料で,数万円で提供するサービスがございます。それを,その事業者と著作権者とが何らかの形で契約しているかどうかは,私は把握していませんけれども,把握できる,契約で調整できるカテゴリーだと思っております。
 7については,今後の部分では,テレビシステム自体が,テレビ放送システム自体がなくなってしまう危機感といいますか,世界が変わるということの前提になると,ネット社会における放送の在り方,放送という言葉もなくなってしまうかもしれませんけど,その辺の世界が変わるという部分では,いろんなところからの意見といいますか,アイデアも含めて,これから全世界にかかる今度,動画の配信,あるいは放送サービスの在り方というのは議論するべきだと思っております。
 5番目については,私も論文の世界についてはよく分かりませんけれども,ここでサービスを云々(うんぬん)するよりも,学といいますか,学会といいますか,論文の審査の在り方,前に問題になった論文のコピペですとかありますけれども,要するに論文を書かれる方のモラルの問題が第一でもあるし,その審査の問題。ですから,ここで言うクラウドサービス云々(うんぬん)という部分にかける前に,その審査の在り方というものを検討すべきではないかと思います。
 全体については,権利者団体といいますか,映像を作っている団体からすると,先ほど今子委員からも,団体があって,そこと交渉しても全部をそこでクリアできないというのは当然で,やっぱり契約そのものは,団体があっても個々の契約,個別契約になります,著作権の利用という意味では。そういう意味では,そこの団体,あるいは窓口になっているところとの契約によって成立するわけですから,その団体で許諾される背景にあるコンテンツだけをそちらでサービスに使うということは,絶対条件として守ってもらわなきゃいけないし,著作権の利用という部分を間違えて判断されて,こうやってお願いしているのに,こういう答えがないじゃないかということは当然ある話であって,それを解決するために話し合い,あるいは契約の条件,いろんな付加するものが出てくるのであって,それを無視した形でこういうハード,クラウドサービスといいますかね,サーバーの大きいものができたというハードに対して,それに対するサービスを権利制限をすることで利用させるというのはすごく突飛な話だと,今回のこのテーマについては思います。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 じゃあ,杉本委員,お願いします。

【杉本委員】  ちょっとここまでの流れと変わっちゃうかもしれないですけれども,津田さんの話の何か補足みたいな感じで,僕としてはちょっと提案ということで,これまでもこの場所を超えて,いろんな話をもう少し具体的に話し合っていった方がいいんじゃないかなという話はしたとおりで,この場で結論を出したくないとか,そういう話では全然ないんですけれども,次のステップに向かうための,次のステップを作ろうということを,この会のある種の結論というふうに考えて,僕は是非この後もこういったメンバーで話をしていきたいんですけれども,現状で言うと,やっぱりどうしても論点整理が余りできていなくて,それぞれの立場の方々が,やりたいことや,やりたくないことを,それぞれ挙げているにすぎないような感じがどうしてもするんですね。
 なので,ある種,ここと場所を,ちょっとシチュエーションを変えることによって,もう少しブレスト的な,何ていうんでしょうね,環境に持っていくことで,そのときに,当然こういったサービスを作るときに関係してくる消費者サイド……,利用者サイドですね,利用者サイドの方と事業者サイド,それと権利者の方――権利者の方々は,今後に関しては,やっぱり仕組みのことを考えると,事業者にもなり得るという考え方があると思うので,ある種この三者というのは非常に必要だと思いますし,やはり当然,著作権,要するに権利の話が関わってきますので,法律家の方々も是非オブザーバーとして入っていただくということを前提に,特にいろいろと今まで上げられてきたような中でも,それぞれのリクワイアメントが何となく各論にどうしても入っていってしまっているので,結局この話というのは,ちょっと論点として合っているかどうかあれなんですけど,僕が考えるに,やっぱり海外資本のサービスというのが日本に進出したときに,それに対して対抗できませんよねというようなことを,きちっと論点として入れていくべきだと思うんですよね。
 それに対抗して,もっとグローバルのサービスというのをむしろ日本の国内に作っていったりとか,それを世界に広げていくために,それだけマーケットサイズの広いものをどういうふうに立ち上げるかということを,もう少しきちっと話していった方がいいと思います。
 ですから,ケースとしていろんなものが出てくるのはすごくいい話だとは思うんですが,やっぱりマーケットサイズだったり,より多くの利用者の方々に影響のある例えばサービスだったり事象というのを,もう少し具体的に話していこうとしたときに,何をやるべきかということだったり,それをやれた場合に,例えば権利者は何が困るのか。ただ,利用者は何を求めているのかといったところに関して,もう少し共通テーマで話し合ったときに,それぞれの関係者のデメリットとメリットというのをちゃんと論点整理でまとめてしていって,それをどういうふうに超えていくのかということを話し合う場を今後ちょっと作っていくということに,何かこの会のある種の結論というのが持てることが,僕は最大の成果じゃないかなと思うんですけど,どうしてもこのシチュエーションだと,例えば具体的な事例をホワイトボードに書きながら話すとかいうシチュエーションになりませんから,どうしても前提として,それは許諾を出す,出さないで,その後,じゃあ,それぞれ家に帰って,あるいはそれぞれの結論が出たものに対して,それぞれの業種の方々がどうしましょうというような,何というのかな,順番に陥りがちなので,そこをもう少し,原点回帰じゃないんですけど,順番を入れ替えることで,もう少し膝を突き合わせて話すようなことを,次のステップでむしろ逆にやっていった方がいいんじゃないかなと思いました。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 じゃあ,丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】  各論に陥って収拾がつかないという点はそうだと思いますが,権利制限の在り方について大きな視野で考えることは必要だと思います。そこで,議論を進めるためにあえて切り出すとすると,やはり47条シリーズについて,検索類似の出力結果をどう見るか,あるいは,テイクダウンというか,間接侵害的な要素も47条の検索のところに入っていたりするので,そういう整理の仕方を,少し抽象度を上げて論じるのがいいのではないかと思います。

【土肥主査】  大体,本日の御意見としては……。
 松田委員,最後にお願いします。

【松田委員】  この多様なモデルについて,事業として,産業として確立することの要請というのは,実は審議会を中心にして10年くらい議論してきました。最初は,個別的なモデルを提示されないで,将来のインターネット産業のために,緩やかな規定を設けろという議論がずっと続きました。その後に,デジタルコンテンツ流通に関する委員会ができて,著作権法とは違う二重の立法も必要だなどという議論もされました。そして,その後,皆さん方が言うC類型を議論したところの,日本版フェアユースの議論にもなりました。これも結局は,コンテンツをより産業的に利用して,日本の産業をこの分野でもっと高度化していこうという要望が,利用者,権利者の相互にあったからです。利用者だけじゃありません。権利者もその要請は必ずあるはずだと思っています。それで,やっとこさC類型というようなものも,少なくともこの審議会の場面では考えたのですが,実際上の立法の段階では,C類型たり得ないようなものになってしまったということは,私は大変残念には思っております。
 それとほぼ並行して,具体的なモデルを提示してもらって,それについての制限的規定の可否を論じなければならないということに,いよいよなっていったわけです。そして,12モデルが提出されたのです。12モデルが出たところで,おおよそ識者の先生方のお話を聞いている限りにおいて,私も同じ意見なのでありますが,12類型のうちアクセシビリティとeラーニングを除けば,これは福祉と教育ですからちょっと違う場面があります。一般のユーザーがより利用を高度化する産業との結び付きをどう考えるかについては,どうもストレージサービスの第2タイプは,何らかの対応をとらなきゃならないという,30条的対応をとらなきゃならないという意見がまとまりつつあったと思いますけれども,それ以外については,どうも個別的に条文を作っていくことは難しい。それから,C類型と対応しても,議論としても,結論的には消極に帰らざるを得ないというところに,収斂(しゅうれん)してきたと思っています。
 でも,何か有用なサービスがあるのであれば,日本の産業を興すためには,協力し合うべきだと私は思っています。そのことで日本が後れるということになれば,それこそこの審議会というか,著作権行政が国民に不利益を強いているような結果になってしまいます。これは大変残念なことです。すぐれたコンテンツとすぐれた技術があるのですから,それは,他の国々に負けない程度の制度を作るべきだと思っています。
 そこで,議論が最終的になると思いますが,私は,ある程度提案をしたいと思っています。既にこの委員会でも出ましたが,音楽3団体が提案をした,権利者団体が受皿を作って協議をする。これは,それほど緻密な議論ではもちろんありませんけれども,利用者団体の方もまとまって,むしろビジネスモデルを提示して,それを協議する場にしてもらいたいと思います。ビジネスモデルごとというのは,実を言うと,特定目的の利用に対して協議会を設定するということなんです。この特定目的の利用の協議会というのは,権利者団体の方の受皿をほとんど想定できると思います。利用者団体の方も,そんなにたくさんあるわけではないと思っています。
 そうすると,そういう人たちが集まったときに,協議が進んで成立すればいいのですが,なかなか協約や契約が成立しにくいという意見もあるのは,そのとおりだと思います。それをもう一歩,半歩でも進めるためには,著作権の契約ってどうやってやるんだろうかなということを,真摯(しんし)に考えなきゃならないところに来ているんじゃないんでしょうか。売ったり,買ったり,貸したりというような民法の債権法理論だけで著作権法もやっていけよねというの,もう無理なんじゃないでしょうか。
 ちょっと古く言えば,例えばシュリンクラップ・アグリーメントだって,契約が成立するのという議論なんかがあったわけです。それから,グーグルのいろんな報道から,世界的にはオプトイン・オプトアウトというものをどういうふうに取り扱うのという議論ができてきたわけです。それから,協約が一定の範囲内でできた場合に,それを社会的ルールとして承認していくという方法も,北欧などでは考えられているわけです。
 そうすると,著作権法が民法レベルの契約だけで処理をするというのではなくて,著作権固有の契約法理というものを考えて,そして,先ほど言った3団体が発展するであろう特定目的コンテンツ利用協議会における協約や契約をサポートするような著作権契約法の導入ということを考えるべきだと思っております。是非これについては,次期に,この審議会でなくてもいいかもしれませんけれども,契約をどうしようかということを,特に民法の先生方に入ってもらって検討すべきだと,私は思っています。これが2つ目です。
 それから,もう一つ,この民間レベルの話合いで成立ができない場合もあると思っています。その受皿として,次のステップを用意すべきだろうと思います。それは何かというと,現行著作権法はあっせん制度を持っています。あっせん制度を持っていますけれども,はっきり言って,あっせん制度はそれほど機能しておりません。
 ですから,このあっせん制度を将来のモデルについても検討ができる制度にして,そして,ビジネスモデル解決・権利処理案を出すようなあっせん制度に変えていけないかと考えています。現在のあっせん制度でこれができないのは,具体的な紛争(事件性)が求められるからです。具体的な紛争を離れてもあっせんを行うあっせん制度の改革をしてみたらどうでしょうか。
 これはもちろん,大変大きな制度の改革と,なおかつ文化庁における関与が必要になると思いますけれども,それぐらいのことを考えないと,10年間やってきた議論をまた10年間やらなきゃならなくなります。そして,契約がしにくいとか言わないで,とにかく特定目的を出して議論をし始めるという受皿を是非作ってもらって,今の契約法と,場合によっては,それで駄目な場合のあっせん制度――それが駄目な場合のあっせん制度が必要だというのは,その前で解決させるためなんです。アメリカも実はそうなんです。最後の最後は,1つのケースを一般化してしまう民事訴訟制度を持っているから,であるならば,どこかで和解しようとか,訴えを起こすのをやめて話合いをしようかという,絶対的な背景の圧力になっているんです。そういう圧力になるような制度を,公的なものとしていささか固めておく必要があるのではないかと私は思っています。
 以上が私の提案です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 予定の時間も当然とっくに過ぎておるわけでございますし,最後のあたりの各委員の御発言というのは,本小委の次のフェーズについて,ほとんど集中的に御意見が集まっておったように思います。いずれにいたしましても,JEITAの検討対象として御要望のあった9サービスのうち2つについては,アクセシビリティ,eラーニングについては別の法制小委等の検討課題とするということについて,御了解はあったと思います。
 それから残る7つのサービスについても,一部については現行法の個別的な権利制限規定によってある程度対応はできるけれども,それを越える部分やグレーの部分は残る。この部分について,いわゆる一般条項的な規定を用意して対応すべきなのか,あるいはそういったものは,まずはライセンス,合意,契約システムの中で考えていく,そういう御意見,ここが非常に大きく分かれておるところでございます。この点については,考えていきますと,集中的な,共同的な権利管理団体のようなものまでも想定した御発言がございました。いずれにいたしましても,ここの点については,恐らくこれ以上議論しても,余り両者の合意というのはなかなか得られないんじゃないかと思います。
 一方,事業者の方のペーパーを拝見しておりますと,格別ここをどうしてほしいということをおっしゃっていないわけであります。したがいまして,こういった部分についての御意見を前提にすると,明確な立法事実は現在のところ認められないということになろうかと思います。
 ここでの議論を超えて,次のフェーズで新しいデジタル社会,ネットワーク社会,あるいはもっと権利管理団体,あるいは集中的な権利処理の仕組み,紛争の解決,そういうような大きな重要な話になってきておりまして,本小委としては,もうこのあたりで締めたい,このように思っております。
 したがいまして,先日,事務局には既にお願いしておりますけれども,ロッカー型クラウドサービスの件については,恐らく現在,取りまとめ案を作成いただいておると思います。本日更にお願いしたいことは,このロッカーサービス以外のサービスにつきましても,前回,今回において議論も一定程度熟しているのではないか,このように考えますので,この点についての,事務局において,お忙しいと思いますけれども,取りまとめ案の作成に着手いただければと思っております。
 本日は,時間を超えて皆様に御協力いただきましたけれども,このくらいにしたいと思います。
 最後に事務局から連絡事項がありましたら,お願いをいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,取りまとめ案につきましては,主査の御指示を踏まえまして,作業を引き続き進めさせていただきたいと思います。
 次回の会議につきましては,調整の上,追って御連絡したいと思います。

【土肥主査】  それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第8回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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