文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会 (第10回)

日時:平成27年2月13日(金)
    10:00~12:00
場所:文部科学省東館 3F2特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会クラウドサービス等と著作権に関する報告書について
    2. (2)クリエーターへの適切な対価還元について
    3. (3)平成26年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(案)
    4. (4) その他
  3. 3 閉会

配布資料

資料1
文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会クラウドサービス等と著作権に関する報告書(589KB)
資料2
浅石委員・椎名委員・畑委員提出資料(851KB)
資料3
華頂委員・松本委員・一般社団法人日本映像ソフト協会提出資料(578KB)
資料4
平成26年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(案)(353KB)
参考資料1
クリエーターへの適切な対価還元に関する検討について(463KB)

議事内容

【土肥主査】  それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第10回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてですけれども,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 まず事務局において人事異動がございましたので,報告をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  本年1月21日付けで著作権課著作権調査官に小林左和が着任しております。

【小林著作権調査官】  調査官の小林左和です。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】  よろしくお願いします。次に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  お手元の議事次第,下半分のところを御覧ください。こちら,資料1から4としまして,まず資料1,クラウドサービス等と著作権に関する報告書,それから,資料2,資料3に関しては,それぞれ記載の委員及び団体からの提出資料,そして,資料4としまして,本小委員会の審議の経過等について(案)とする資料を御用意してございます。それから,参考資料としまして,クリエーターへの適切な対価還元に関する資料を御用意いたしております。落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお知らせください。

【土肥主査】  それでは,議事に入りますけれども,初めに議事の進め方について確認をしておきたいと思います。本日の議事は,1,文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会クラウドサービス等と著作権に関する報告書について。2,クリエーターへの適切な対価還元について,3,平成26年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について,4,その他の四点となります。
 初めに,1に関連いたしまして,前回の小委員会で,修正につき主査一任とさせていただきましたクラウドサービス等と著作権に関する報告書につきまして,前回の御議論の内容を踏まえ,必要な修正を行い,取りまとめさせていただきました。内容につきましては,事務局より簡単に御報告をいただければと存じます。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,御報告いたします。今回,この報告書におきましては,修正した箇所のうち,文意の変更や追加を伴うものなど,主なものにつきまして,便宜上,網かけをしてございます。その他,表現の適正化等の観点から必要に応じて修正を施しておるところでございます。これから主な修正箇所をポイントを絞って御報告したいと思います。
 それでは,まず15ページをお願いいたします。ロッカー型クラウドサービスのうちタイプ2の部分についての制度整備の必要性について述べた3ポツのところでございます。ここの1パラ目の結論部分につきましては,権利者の許諾を得ることは特段不要であるという意見が「示された」,としておったところですけれども,これを「一致した」というふうに修正しております。また,この以降の記述においてもこれと同じ趣旨のところは同様の修正をしておるところでございます。
 次に18ページをお願いいたします。こちらはロッカー型クラウドサービスに対応した集中管理による契約スキームに関する記述でございます。ここでは契約スキームの対象を明確にするべきであるという御意見がございましたことを受けまして,二つ目のパラグラフの後半部分の修正を施してございます。具体的には,「しかしながら」以下のところですけれども,「実際に展開されるサービスの内容及び今後の技術の発展に伴うサービス内容の進展によっては,私的使用目的の複製と整理される範囲を超える,境界が不明確なものも存在し得ると考えられる」とし,契約スキームの対象が私的複製と整理される範囲を超えるものについてのものであるということを明確化してございます。
 それから,次に30ページをお願いいたします。ロッカー型クラウドサービス以外のサービスについての検討の小括のところですが,ここでは主に事業者側の委員から御提出いただいた意見を明記するという修正をしてございます。小括の三つ目のパラグラフ,この1パラグラフを追加するという修正をいたしました。ここでは,「一方,他の事業者からは」,これはヒアリングを行ったサービス実施事業者以外の委員であられる事業者という趣旨でございますけれども,「からは,各サービスの提供の仕方や今後の進展によっては,現行著作権法により適法とされる行為の枠を超える可能性もあるとの意見や,このような場合に対応するため,これを立法事実として柔軟性のある規定の導入を検討するべきであるとの意見も示された」ということを明記してございます。
 それから,次に31ページをお願いいたします。網かけにはなっておりませんけれども,二つ目のパラグラフにつきましては,これは報告書の案のバージョンでは「今後への提言」のところに入っておりましたところ,全体の論旨の流れを適正化するという観点からこちらに移動してございます。
 それから,その下の三つ目のパラグラフの後段部分ですけれども,ここにつきましては,報告書案では,法改正を行うに足る「特段の」立法事実は認められなかった,という記述でございましたけれども,これを「明確な」に修正してございます。
 また,次のパラグラフの後半部分,その必要性を認めることは難しいという意見が「多数を占めた」というのが報告書案の記述でございましたけれども,ここでは意見の「一致には至らなかった」というふうに修正をさせていただきました。
 以上が主な修正ポイントでございます。その他,最後の「おわりに」でも,ここまでの修正に対応させた修正を適宜行ってございます。
 報告は以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,次の議事に入りたいと存じますが,議事の2にございますクリエーターへの適切な対価還元について,本日は関係の団体より御発表をいただき,その後意見交換を行っていただければと思ってございます。
 まず,私的録音に関係する団体の立場から,一般社団法人日本音楽著作権協会,浅石委員,公益社団法人日本芸能実演家団体協議会,椎名委員,一般社団法人日本レコード協会,畑委員の御発表でございます。本日は,三方を代表して椎名委員に御発表をお願いいたします。

【椎名委員】  それでは,お手元の資料の2を使って御説明してまいりたいと思います。この資料の2でございますが,以前Culture First推進団体名義で1回この会議の中で御説明をさせていただいたものと,それから,私的録音録画実態調査の結果を受けてということで御説明させていただいた資料の2種類を御提出しております。実態調査の結果を受けた部分につきましては,参考資料ということで,その前段の新たな制度創設に係る提言についてという部分を使って御説明をしてまいりたいと思います。
 まず「はじめに」ということなんですが,私的録音録画補償金制度の見直しについては,2003年4月4日,文化庁私的録音補償金制度見直しの検討という会議が組織されまして,そこでの議論を皮切りに,2004年から2005年にかけては法制問題小委員会,2006年から2008年までは私的録音録画小委員会の場において議論が行われてまいりましたが,2012年11月のSARVH東芝訴訟最高裁決定により,現行の私的録音録画補償金制度は事実上その機能を停止してしまいました。
 このような状況を打開するために,ユーザーの利便性向上に配慮しつつ,クリエーターへの適切な対価の還元を実現するための新たな制度に関する考え方について提言を行いたいという趣旨でございます。
 現行の補償金制度導入以前ということですが,旧著作権法においては,明治32年に施行された旧著作権法におきましては,発行済みの著作物の私的複製は著作権侵害と見なさないこととされていましたが,器械的化学的方法によらないことが要件として付されていたということで,その方法は手写等に限定されていました。
 現行著作権法におきましては,1970年に著作権法が全面改正された当時,複写・録音機器等は発達・普及の途上にあったこと,また,国民の私的領域における教養・娯楽などの文化的諸活動を円滑に行わせる必要があったこと,私的複製に係る複製権を制限しても権利者への不利益は零細であったことなどに鑑みて,現行著作権法では,従来どおり私的複製は権利者の許諾を得ることなく自由かつ無償で行うことができることとするとともに,複製手段を手写等に限定する要件は廃止されました。
 なお,この法改正と併せて,今後複製手段の発達・普及のいかんによっては,著作権者の利益を著しく害するに至ることも考えられることから,この点について将来再検討が必要であるとのことが指摘されていました。
 それで,デジタル録音録画の普及ということで,その後,録音・録画機器や記録媒体が急速に発達・普及し,私的複製が広範かつ大量に行われ,さらにデジタル方式の録音・録画機器や記録媒体の高性能化と低価格化が進み,市販用のCDやDVDと同質の複製物が簡単に作成されることとなりました。その結果,権利者の経済的利益が著しく損なわれ,ベルヌ条約9条2項や著作権法30条における複製権の制限の許容範囲を超えるような状況に至り,私的複製によって生じる権利者の不利益を救済することの是非について議論されるところとなりました。
 現行の補償金制度の導入から機能停止までということでございますが,補償金制度の導入に関しましては,録音・録画機器等が飛躍的に進歩していく中,1970年代から90年代にかけて私的複製と権利者の経済的利益の調整を図るための制度の検討が官民双方の場で行われた結果,1992年12月の著作権法改正によって,従来どおり私的複製は権利者の許諾を得ることなく自由に行えることとする一方で,権利者の経済的利益を保護するため,私的録音録画補償金制度を導入して,一定の補償措置が講じられることになりました。
 ところが,制度の導入後に生じたパソコンやその他その周辺機器等の爆発的な普及によりまして,音楽や映像の複製は,補償金制度が対象とする専用機器・媒体からそれらの汎用機器・媒体へとシフトしていきました。それに伴って,補償金制度は実質的な機能を次第に失っていきますが,ついに2012年,現行制度の脆弱(ぜいじゃく)性を突いて,アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーに係る録画補償金の支払を拒否した株式会社東芝と私的録画補償金管理協会との訴訟において,最高裁が録画補償金制度はアナログ放送を録画源とするものであるから,デジタル放送のみ録画する当該レコーダーは特定機器等には該当せず,補償金の対象とはならないと判断した知財高裁判決を支持したことで,録画補償金制度は致命的な打撃を受けました。
 この最高裁決定により,政令の定め方には不備があること,アナログ放送が停波した2011年7月24日以降,現行制度の下では事実上録画に関する特定機器等は存在しなくなることによって,録画補償金制度が崩壊することの二点が明らかになったと思います。
 これと並行して録音補償金制度についても,制度が対象とする機器・媒体等と実際に複製が行われている機器・媒体等に大きな乖離(かいり)が生じた結果,事実上録音補償金制度についても機能を失いつつあるということでございます。
 次のスライドは,私的録音録画補償金徴収額の推移ということでございます。実際に徴収が始まった1996年から2013年まで,私的録音補償金,私的録画補償金,それぞれこういった金額で推移をしてきたということでございます。
 私的録音補償金に関しましては,音楽用CD-Rなどの需要が下支えして,現在に至るも0円にはなっていないということでございますが,ピーク時の3%程度に激減していると。
 私的録画補償金に関しましては,先ほどの最高裁決定によりまして,東芝裁判の権利者側敗訴が確定しました。現行の製品は既にデジタル放送専用機に全て移行しておりますが,確定した判決においては,デジタル放送専用機が制度の対象とはならないと判断されたことにより,2013年にはついに徴収額が0円ということになっております。
 そうした点から,機能していない現行制度の概要と問題点ということでまとめました。まず概要でございますが,我が国の著作権法では,政令で指定された録音・録画機器と録音・録画用記録媒体,これらを特定機器等といいますけれども,これを用いて私的複製を行う者が補償金の支払義務者であることを原則としつつ,製造業者又は輸入業者が協力義務者として特定機器等の販売価格に補償金を上乗せし,購入者から受領(じゅりょう)した販売代金の中から補償金相当分を指定管理団体に支払うことを特則として定め,実際の補償金制度もこの特則に基づいて運営されてきたという実態がございます。
 次に問題点なんですが,第1に,補償金の対象範囲が内閣の制定する政令によって決められているという点でございます。そのため,新たな録音・録画機器等を政令で指定するに当たっては,関係省庁である文部科学省と経済産業省との間の合意が前提となることから,当該機器等が大量に流通していても関係省庁間の合意がなければ当該機器等は補償金の対象とはならないということがございます。
 実際この政令で指定する方式というのは,環境変化に即応できるというような説明もされていたところでございますが,実際は逆でございまして,環境変化に全くついていけていないということがございます。現実に高性能なデジタルオーディオプレーヤーや大容量の外付けハートディスクなどが次々と製造・販売され,録音や録画の手段として広く普及しているにもかかわらず,これらは依然として補償金の対象とされていません。
 第二に,特定機器等の製造業者等は,補償金の支払義務者でなく,補償金の請求・受領(じゅりょう)に関する協力義務者とされているという点でございます。前述したSARVH対東芝の裁判の一審判決は,製造業者等の協力義務は法的強制力を持つものではないと判示しましたが,この考え方によると,製造業者等が協力義務を遂行しなくても法律上何らの責任も負わないこととなり,そうなれば補償金制度は事実上機能しないわけでございます。
 私的複製に係る対価の還元という言われ方をするわけでございますけれども,その意義について,デジタル複製技術が高度に発達した現代社会におきましては,芸術や文化の享受は私的複製を抜きにして語ることはできない。その際,私的複製に関係するユーザー,複製手段を提供する者,権利者の三者の利益のバランスを考えることが必要だと考えます。ユーザーは自由かつ無許諾で著作物の私的複製を行うことを通じて,教養や娯楽などの文化的諸活動を簡便に行うことができます。また,複製手段を提供する者は,利用者が著作物の私的複製を行うことを前提として,複製機能を有する大量の機材を製造・販売したり,あるいはサービスを提供したりすることにより大きな利益を得ているわけでございます。これに対して権利者は,創作活動によって著作物を社会に提供していますが,複製権の制限を受け,日々行われる大量の私的複製から正当な対価の還元を受けることができません。現行の補償金制度が事実上機能しない現状におきましては,この三者の関係は余りにアンバランスと言わざるを得ません。また,このアンバランスは,世界中で顕在化している問題でもあります。
 このようなアンバランスな状態を正常な状態に修正するためには,上記の三者における利益の帰属の実態に着目して,経済合理性を備えた新たな制度を創設することが必要だと考えています。
 最後に二項目の提言ということになるんですが,その前に若干触れておきたい点がございますが,先ほど申し上げました2003年の私的録音補償金制度見直しの検討というところから始まって,私はこの補償金に関する議論に多分皆勤賞で参加していると思います。その間ずっと議論されてきた中身は,消費者と権利者の利害関係,この点にばかりに終始してきたと理解しています。例えばプレイスシフト,タイムシフトの話が出たり,ユーザーの私的複製が権利者の利益になるんじゃないかというふうに,消費者の利益と権利者の利益を相対させて,そこでの議論がずっと行われてきたものと理解しています。
 一方で,本日もお付けしている実態調査結果の分析でも明らかなように,私的複製が可能であることから利益を受けるという観点からみた場合,ユーザーだけでなく,複製手段やサービスの提供者の利害当事者としての存在は極めて大きなものです。大きな利益を上げていると先ほど申しましたけれども,そもそも当事者として十分な存在であるがゆえに現行制度で協力義務者というようなことになっているんでしょうが,これはもう当事者でしょうということが言えると思います。クラウドに関連する問題と同様に,コンテンツの訴求力を利用して成果を上げる事業者等が権利者に対して一定のリスクを負担していくことによってユーザーの安全と利便性を確保する,という観点は,こうした問題の極めて有効な解決策ではないかと思っています。
 それから,対価の還元を本旨とする制度ではありますけれども,補償という概念だけでなく,むしろ今後の利便性向上や新たなビジネス展開を進めるという趣旨からも,機器やサービスの提供者が広く薄く負担していくこと,補償という後ろ向きの概念に加えて,むしろポジティブな制度の導入が考えられないかということを強く思っている次第でございます。
 最後の新たな制度創設に係る提言ということで,この資料においては,意識的にでございますが,補償という言葉を一切使わずに作成をしております。その新たな制度創設に係る提言として,まず一番目は,制度の対象は私的複製に供される複製機能とすると。機器,媒体,サービスの別を問わず,私的複製に供される複製機能を対象としていく,カウントしていくんだということです。これは専用,汎用の議論がある一方で,既に汎用機に移行した実態が既成事実化していたりしますので,その問題を解決するにはそういうことなんだろうということでございます。
 それから,支払義務者に関しては複製機能を提供する事業者とする。これはこれまで御説明してきたとおり,やはりステークホルダーとして非常に大きい存在である私的複製に供される複製機能を構成する機器,媒体,サービス等の手段を利用者に提供する事業者さんが支払義務者となるということが,制度の実効性をもたらすのではないかということでございます。
 現時点での三団体からの提言は以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。では,続いて,私的録画に関係する団体の立場から,一般社団法人日本映画製作者連盟・華頂委員,一般社団法人日本動画協会・松本委員,一般社団法人日本映像ソフト協会の御発表でございます。三団体を代表して華頂委員,御発表をお願いいたします。

【華頂委員】  今,椎名委員の方からほぼ全ての意見表明をしていただいたわけでございますけれども,私の方からは放送からの録画ということに絞ってお話をさせていただきたいと思います。この資料の表紙にもございますとおり,それから,主査の方からも御紹介ありましたとおり,日本映画製作者連盟,映連,それから,日本動画協会,日本映像ソフト協会,三団体としての意見をこれから申し上げたいと思います。
 まず表紙の下にございます1ページでございますけれども,私的録画の現状と課題ということで,著作物の私的録画,これは,冒頭でも申し上げましたけれども,主に放送からの録画でございまして,現在でも毎日大量の録画が行われているということでございます。しかしながら,このような状況にもかかわらず,御存じのように,次の著作物の再生産,それから,新たなクリエーターの育成,また制作環境の整備などの一助になっていた私的録画補償金制度,これは機能不全に陥っているというふうなことです。
 ちなみに,現在デジタル放送で運用されておりますダビング10の導入に際しましても,総務省デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会におきまして,ダビング10の導入については,クリエーターへの適切な対価の還元を伴うものであると明示をされております。ですから,当然にダビング10の範囲内の録画であっても,対価還元の対象となるというふうに我々は理解をしております。
 ページをおめくりいただきまして,次に私的録画補償金制度の現状と課題ということでございますが,現状の政令は,先ほど椎名委員の方からもお話ありましたけれども,アナログ放送を前提としたものであるという判決が確定をしております。その後新たな政令指定は行われていないと。デジタル放送からの録画についても,著作権法30条2項による補償金対象となるべきはずなのに,政令が対応していないために制度が機能していないのは,先ほども申し上げたとおりでございます。
 この状況を改善するためにも,デジタル放送時代に即した政令が速やかに制定されるべきであると考えております。
 それから,その下の3ページですけれども,その際に政令指定されるべき対象機器は様々あると思いますけれども,代表的なものとして,テレビ番組録画可能なハードディスク録画機,外付けのハードディスク,テレビチューナー付きパソコン。こういうものは政令により補償金対象として早急に指定されるべきではないかと思います。
 ページを更にめくっていただきまして,最後のページを御覧いただきたいと思います。ソフトとハード,これは両輪で,どちらが欠けても文化の振興は図れないというふうにまずもって申し上げておきたいと思います。
 さて,メーカーが製造・販売している機器,これは再生機能と録画機能を併せ持った機器が大半であると理解しております。そこでハードとソフトの関係性に着目すると,再生機能の方は,機器の方の再生機能ですけれども,これはVHSからDVD,今ブルーレイディスクというふうに記録媒体はどんどんどんどん進化をしているんですけれども,この進化に伴ってお互いにビジネスチャンスを享受していると。この関係性は今後も継続をしていくことと思います。
 一方,ソフトを複製する録画機能,これはどうでしょうか。かつては私的録画補償金制度によってソフトとハードのバランスは保たれておりましたけれども,この図にあるように,制度が機能不全となったために,均衡が崩れた状況にあると思います。
 ここにお示しいたしましたように,メーカーは機器を販売して利益を上げ,それを購入した消費者は利便性を享受していると。そんな中で,その根幹となるソフトを供給している権利者は,私的録画については,録画部分,これを遮断された状態にあるというふうなことでございます。
 デジタル放送に関しましても,私的録画補償金制度,これを機能させることによって一刻も早く,権利者,機器製造メーカー,ユーザーの利益バランス,これは先ほど椎名委員の方も意見を発表なさっていましたけれども,このバランスを回復をさせる必要があると考えております。
 以上,もろもろ,最後になりますけれども,意見を申し上げましたが,私的録画補償金制度,これにのみこだわっているわけではありません。真意,結論といたしましては,本小委員会のテーマでもあるクリエーターへの適切な対価還元の実行,これをいかなる方式によっても早期に実現すること,これが求められていると思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,ただいま御発表ございました内容に関しまして,あるいはこの内容を踏まえまして,御意見,あるいは御質問ございましたらお願いをいたします。松田委員。

【松田委員】  質問させていただきます。椎名委員の発表の最後のところで二つの提言が示されております。ここには複製機能を対象とすると記載されておりますが,これは法律で複製機能を特定して,そして,それに該当するものについては,政令を指定しないという方法を採るということですか,それともこの機能の上に更に政令で指定するという意味でしょうか。それが一点。
 二点目の華頂委員の発表でございますが,政令指定を速やかにしろと,こういうことでありますね。これは両方の意見の関係でいうと,とりあえず政令指定をしろという意味なのですか,それとも,現行法で政令指定をすれば,椎名委員の意見のような二つの提言までは至らないと,こういうことでしょうか。これが,それぞれ一点ずつでございます。

【土肥主査】  それでは,最初に椎名委員からお願いします。

【椎名委員】  政令によるのか,法定によるのかということについては,まだそこまで話がまとまっていませんが,法律で抽象的に定めて,具体的には政令でということになりますと,恐らく現在と変わりがない状況が出てきたりするんだと思うんですね。それ,制度を考える上での技術的な部分の話だと思いますので,これから検討していきたい部分でございます。

【土肥主査】  華頂委員,お願いします。

【華頂委員】  私の発表は,冒頭にも申し上げましたとおり,私的録画補償金制度にこだわって意見を表明させていただきましたので,この制度によれば,機器を政令指定していただかないとなかなか難しいので,そういう意味で申し上げました。ですから,最後に,私的録画補償金制度,これにこだわっているわけではなくて,違う何か方式があれば,クリエーターへの適切な対価還元を早急に行ってほしいということでございます。

【土肥主査】  というのが今お答えですけれども,松田委員,いかがでしょうか,この段階では。

【松田委員】  まあ,進めてみましょう。

【土肥主査】  分かりました。ほかにございますか。津田委員,どうですか。お願いします。

【津田委員】  音楽関連団体の新たな制度創設に対する提言なんですが,ページ7のところにある私的複製に係る対価還元の意義についてということなんですが,このユーザーのところで,ユーザーは自由かつ無許諾でということをここに書いてあるんですが,現状,これ,音楽と動画で状況が違うと思いまして,音楽は随分と一時期非常に厳しいDRMがかかっているという時代もあったんですが,ほとんど今自由に,DRMが外されたという意味では,ユーザーの環境としては非常に自由に音楽が利用できる環境にはなっていますし,その決断を音楽業界がされたということ自体はユーザーにとってはすごく評価すべきことだと思うんですが,同時に,ただ,録画に関しては,これ,ダビング10の導入経緯もあるんですが,自由に今できているという状況でもないですし,かなり取り回しとかも含めて不便な状況が続いているので,全部自由にできているというところに関してはちょっと異論があるかなということですね。
 もう一つ,そこの下のページ8の対価還元の意義というところなんですが,正直,この段階でこの提言をされていることの意味が僕は分からないというか,余りにも高めの球を投げ過ぎじゃないかとちょっと思うんですが,私的複製自体,複製機能全体に補償金をというような話ですし,これをやっていったら,YouTubeも,アップルも,グーグルも,ドコモも,auも,ソフトバンクも,あらゆるところにこういう補償金的なものを要求していくんですか。それは本当に現実味がある提案で,しかも,どんどんクラウドになっていって,じゃあ,クラウドの全ての業者にも要求していくんですかという話にもなっていきますし,これは本当にこの提言がどれだけリアリティがあるのかなというのがまず一点あるということとともに,やはりあと,支払義務者の方は事業者にするということで,ただ,これ,つまり,ユーザーがここから外された形になるわけですけれども,結果的には,大体こういう形でもしこの提案が通ったとして,事業者が何らかの支払をクリエーターへの還元ということでした場合,ほとんどの場合価格に転嫁されるので,結果的にはユーザーにとっては全てユーザーの負担になってくるので,むしろここに関していうと,ユーザーと事業者と権利者の三者間でのバランスを考えていくという意味でいうと,その三角形のバランスを崩すものなのかなという気がいたします。とりあえず。

【土肥主査】  御意見だと思いますけれども,椎名委員から何か。

【椎名委員】  今の御指摘でございますけれども,これ,音楽の三団体から出させていただいたもので,一応ここで著作物ということでいうと,音楽を想定してお話をしているということです。それから,今こんな高めの球をという御批判をいただいたんですけれども,津田さん,よくそういう言い方での議論をなさるんですけれども,むしろ中身についてコメントしていただけないかなと思います。高めか,低めかということは,そのときの投げる人,受ける人の気持ちにもよるわけですから,そういうことよりは,その球の中身がどうなのかという議論をちゃんとしていきたいと思います。
 それから,DRMとの関係でございますけれども,これは制度を設計する上の話だと思うんですね。具体的な制度を考えていく段階で,DRMとの関係はどうなんだという話は出てくると思うので,制度設計上でそういうものが無関係だとは思いません。究極のDRMでコピーネバーであれば,補償の必要はないわけですから,それはその制度の中身でそういった部分を反映,吸収していければいいのかなと思って聞いていました。
 それから,最後に,ユーザーにも転嫁されるんだということは,正にそのとおりだと思います。別にメーカーを支払義務者にしたからといって,ユーザーも利益を得ていないわけではないと思いますので,そこはユーザーもそういった間接的な形でそういう影響を受けるということがありますけれども,よくMIAUさんなんかが,ユーザーはお金払ってもいいんだよ,ちゃんと使わせてくれれば,みたいなことをおっしゃっていたりもするわけですね。だから,むしろ今回の提案というのは,ある程度そういった環境も作る。それから,今想定されている技術の範囲以外にもっと利便性が上がるかもしれない,そういったことを実現するための三者の間のある種のセーフティーネットとしてポジティブに考えられないかな,というのが今回の提案だと御理解いただければいいと思います。

【土肥主査】  津田さん,まだ御意見あろうと思うんですけれども,華頂委員はこの段階で何かありますか。ダビング10とかありましたけれども。

【華頂委員】  いやいや,特に。

【土肥主査】  じゃあ,津田委員,どうぞ。

【津田委員】  短くしますけれども,これって,だから,ずっと2005年以降の,iPodに補償金をかけるかどうかからずっと続いている,専用機器と汎用機器の問題をずっと引きずっていると思うんですが,この提案がもし通ったとしたら,本当にほとんどの汎用機器,サービス機能,ソフトウェアみたいなものに対して薄く広く取っていくという制度になっていくということになると思うので,例えば音楽を利用するユーザーが,音楽にしか使わないためのサービスで,それは例えば何らかの著作権利用料を払うことで自由に使えるんだったらというんだったら納得すると思うんですけれども,音楽を聞かない人,要するにスマホに全く音楽とか動画とか入れずに,通話機能とか,又はビジネス利用だけしているというユーザーにそういう音楽や動画用の著作権料対価が含まれるんだよというと,到底多分納得できないような人が多くなってくると思うので,それの範囲が,2005年以降にやっていた汎用機器,専用機器の議論みたいなものの,それで汎用性があるものに関してはかけるのは妥当ではないという議論がずっとあるものを,そこを全てまた反故(ほご)にしてこういう提案をされるのかなというところが,そこが理解できかねるというところがあります。

【土肥主査】  お願いします。

【椎名委員】  汎用,専用の話というのは,ユーザーが支払義務者であったときに当然ながらそういう話があったわけですけれども,一方で,メーカーの上げる利益という点に着目すると,スマホに音楽や映像の複製機能が付いたものを買いたくないと思っている人でも,そういう機能が実装されている機械を買ってしまうわけですよね。そこでメーカーは一定の利益を上げるという構造はありますので,ちょっと質的に違うのかなと思います。

【土肥主査】  松田委員,どうぞ。

【松田委員】  議論をちょっと整理させていただきたいんですけれども,汎用機器や汎用サービスがどこまで広がるかというのは,津田委員が危惧なさっているところ,これは問題提起としてよく分かります。それは恐らくここで議論していくことになるんでしょうが,その一つの例としてYouTubeの例を示されましたけれども,これはここでの議論とは違うのではないかなと私は思っています。YouTubeにアップロードし,かつ,更にそこから先送信されるということについては,これは私的使用の問題を超えていますから,全く別の法制で対処していますし,この30条の中に取り込まれ,なおかつ,私的録音録画の問題には,私的にはならないということで理解してよろしいでしょうか。

【津田委員】  はい,分かりました。

【土肥主査】  ほかにございますか。じゃあ,河村委員,お願いします。

【河村委員】  ありがとうございます。私も,椎名委員の資料の中にあった自由かつ無許諾でというところが気になり,自由ではない場合のことを発言しようと思っておりました。ポイントを,華頂委員が御説明なさった資料に対しての意見として申し上げますけれども,私の理解によりますと,録画補償金というのは,DRMがかかっていないアナログ放送をデジタル録画すると,著作権保護がかかっておりませんから,いわゆる無制限にコピーができてしまう,そういう状態のときに,録画補償金が必要になるんじゃないかということになったと理解しております。その後,デジタル放送が始まり,結局大変な議論の末,私もその議論の場にいましたが,コピーワンスを経てダビング10ということになったわけです。10回できるのが多いか少ないかということもありますが,孫コピーはできませんし,したがってメディアシフトができません。録画したメディアが廃れたら,公共放送であるにもかかわらず私的に録画したものが失われるということになります。それに加えて,ダビング10を導入するために様々な機器にかかったコストですとか,ダビング10の機能を担保するために公共の放送にスクランブルがかけられて,それを解除する仕組みも全て結局のところ消費者が負担していると言えると思います。このように著作権者の権利を守るために,それだけの負担をし,かつ自由が相当程度制限されているにもかかわらず,補償金のようなものを消費者が負担するということは到底納得できません。やはりアナログ放送のときのように,地上波の公共性のある電波にはスクランブルかけるようなことをしないで放送する,B-CASカードとか,そういう仕組みが必要じゃない,要するに,消費者の私的な録画の自由が確保されているのであれば,何らかの対価の還元策についての議論の可能性もあると考えます。消費者が自由を制限され,著作権保護のコスト負担もしている上に,当然補償金だという議論には到底納得することはできません。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかに御意見,御質問ございますか。龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】  椎名委員の御報告の新たな制度創設に係る提言の二点目についてですが,これは新たな視点の御指摘だと思います。私的録音録画の問題をめぐっては,ステークホルダーとしては,消費者,権利者だけではなく,製造業者やサービス提供業者が入っているのは事実かと思います。この三者の関係で見ていかなければならないのではないかとの観点はもっともと思います。従来,単純に消費者対権利者という構図のみで捉え,104条の5におきましても製造業者は協力義務者という立てつけになっていて,この組合せで,製造業者は脇役として位置づけられてきたわけですが,消費者に価格転嫁できるという意味では消費者との関連性は深い立ち位置にはありますが,製造業者はむしろ重要な当事者の1人でもある。この三者の関係や,著作権法上に協力義務と明記した点,この辺りを一度見直すといいますか,議論する時期に来ているのかという気がいたします。
 それから,もう一つは,対象機器の指定の方法といいましょうか,指定する仕組みといいましょうか,これが現在は,政令指定ということに一任されているわけですが,何をもって対象機器とするか自体についても,権利者側,あるいは製造業者側にいろいろ意見があろうかと思います。ここの決め方の仕組みといいましょうか,あるいは,対象機器を指定する手続といいましょうか,例えば権利者なり製造業者が当事者として意見をたたかわせたりする手続,そういう部分も整備する必要がないのかというような観点も一つ考えてもいいのではないかと思いす。
 それから,三点目は,これまで言われていた専用機と汎用機を区分する考え方,いわば専用機のドグマといいましょうか,この辺をいったいどう考えるのか。この区分が適切なのか,それはメーカー側の製品開発や作り込みに依拠する面もあろうかと思います。このロジックをどのように考えるのか,この辺も議論していただきたいと思った次第です。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。龍村委員の御意見のところではかなりメーカー,事業者に関するお考えが出ておるわけですけれども,そういうものを受けて,榊原委員,何かございませんか。

【榊原委員】  今の御意見に対してというのではなくてもよろしいでしょうか。発表いただいた二つの意見に対してですけれども,大きなところでは,参考資料の1,発表資料ではございませんけれども,参考資料の1で,この検討会に対して投げられている課題が書かれていて,ここではクリエーターへの適切な対価の還元云々(うんぬん)かんぬんと,コンテンツの再生産につながるようというふうに書かれているんですけれども,今回の権利者の方々の提言というのは,全て私的複製に関する対価の還元というところに限定をされていて,適切な対価の還元と言われると,クリエーターの方というのは,著作物をクリエートして,創作をして,流通に乗せていくと思います。その相手はいろんなルートがあるんだと思うんですけれども,私的複製というのはその最後の出口部分だと思うんです。放送に乗せるとか,CDを作るとか,映画になるとか,いろんな流通経路があると思うんですけれども,適切な還元というのが,適切なという言葉も,何が適切なのか,十分じゃないのかとか,そういうことも,こういう適切な還元がないから提言をされているということだと思うんですけれども,その部分が欠けているかなと思いますし,今言った流通の一番上流から下流まで行く中で,対価の還元はしなきゃいけないというのは多分そこに関わっている人が全員なんだろうと思いますけれども,本来はやっぱり契約で対価が還元されているのではないかと思います。対価というのは,普通契約で,何かを購入したときに払う対価という言葉だと思うので,それがなされていないかどうかということも全く検証がなくて,最後の部分についてだけ言われているわけです。全体のクリエーターへの適切な対価還元の一部の議論だけで,メーカーが売り上げているからと言われると,取りやすいところから取りましょうという制度にしかやはり聞こえないということがまず一点目の感想です。
 それから,スライドの中の椎名さんのスライドで若干気になりましたのが,小さな話なんですけど,6ページの(1)の制度概要のところで,3,4行目ですね。「補償金を上乗せし,購入者から受領(ずりょう)した販売代金の中から補償金相当金を指定管理団体に支払うことを特則として定め」とあるんですけれども,法律自体は,上乗せをするとか,販売代金の中からどけておくというようなこと,規定はなくて,協力義務というのは,知財高裁の判決でもはっきり書かれていますけれども,具体的な義務性というのは否定をされているというのが制度なので,制度の説明としては不適切というか,誤りがあるかなと思いました。
 大体今のところは以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。今,榊原委員の御質問の中にあったクリエーターへの適切な対価還元という,参考資料1でいう四角枠の中にある文言の意味内容といいますか,背景について,事務局から何か御説明ございますか。

【作花文化庁長官官房審議官】  参考資料1の枠組みというのは,これは文化庁が文責を持っているものではなくて,内閣官房の知的財産戦略本部の文章でございます。私はそちらの次長も兼務しているものですから,その立場で申し上げたいと思います。
 この枠組みというのは,ここの二つセットで書かれていて,またその二つのセットがこの文化審議会が引き受けていることですね。一つは,本年度集中的に議論したクラウド関係において円滑に著作物を利用するような体制整備ということが言われていたわけですが,それと同時にということでこの二つ目のポツとして,権利者への適正な対価の還元ということが書かれたわけでございます。文言的に適切な対価の還元ということ自体はかなり幅広い射程を持っていますけれども,ここで書かれた背景としては,その当時から危機に瀕(ひん)していた補償金制度をこの時点で見直す必要があるのではないか。要するに,機能するように見直す必要があるのではないかという問題意識で書かれたところでございます。
 したがって,適切な対価の還元という射程は広いのですけれども,ここで書かれた主とした政策目的としては,20年間機能していた補償金制度が危機に瀕(ひん)している。この状態をどうすべきかと。これだけのコンテンツ大国と言われる日本において,このままの状態でいいのか,それとも何らかの見直し。フランス,ドイツが模範かどうかはともかく,そこは評価はあろうかと思いますが,そういったヨーロッパ諸国との対比においてこのままでいいのかということをいま一度議論する,政府で議論する必要があるのではないかと,こういう問題意識で書かれているということでございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。要は,クリエーターへの適切な対価還元というのは,2行目との関係で理解をすると。「私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入」という,そこの部分とセットで意味内容を考えていくということでございます。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。もし特段本日の場ではないようであれば,以上の意見を踏まえて,次期以降の議論というふうになろうかと思いますけれども,よろしゅうございますか。

【末吉主査代理】  今の御説明にあった参考資料1で,今後取り組むべき施策が二つ並べて書いてあるというのは一つ大きな意味があるのではないかと私は思います。先ほど御報告のあった今回のクラウドサービスと著作権に関する報告書でも述べられているとおり,クラウドサービスの将来に関しては,関係当事者同士の話合いによる解決が残されていると思います。片や,話合いという課題が残されつつ,こちらの対価還元が置き去りということは,余り望ましくないのではないかと思います。いろいろ御議論があり,従前から議論されているところ,未解決の問題であるということは皆様方の共通認識であろうと思うのですけれども,何とかこの対価還元の問題について一歩踏み込んでいかないと,クラウドサービスの将来とか,あるいは更にコンテンツの発展ということを考えると,どうしても足踏みしてしまうような感がいたします。
 だから,何とか,これはもう次年度以降の課題かもしれませんけれども,対価還元の問題をこの場で更に深めていただき,かつ,この場ではないかもしれませんけれども,クラウドサービスの更なる発展のためにどういう形がいいのかということを関係当事者で話合いをいただきたいというのが私の意見でございます。以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございます。非常に重要な御意見だと思います。本日いただいた御意見で,いわゆるアカデミアからは全く意見をいただいていないんですけれども,よろしいですか。

【大渕委員】  この問題も,今までもずっと長い歴史をもって多くの議論が続いてきたところ,その間にいろいろ状況も変わってきていることも間違いがないわけですが,いろいろな切り口の可能性のある問題だと思います。私が以前,メディア変換についての権利制限を認めるかどうかというところの文脈で,お話ししたのと若干似ているところがあると思っております。先ほど出ていましたように,問題状況としては,クリエーター,権利者がいて,事業者がいて,ユーザーがいてという中で,どのようにこの三者の法的利益を調整するかという問題となってきます。最終的には,またこれも,著作権法の1条に戻ってしまいますが,「この法律は,著作物並びに実演,レコード,放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め,これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護を図り,もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」ということであります。ここに出ているように,要するに,著作権法の一番基本にあるのは,著作者の権利の保護と,ざくっと言ってしまえば,利用者等の対抗利益とをきちんとバランスすべしということであります。そのような観点では,今回も,事業者と権利者を二項対立的に捉えるというよりは,最終的には,ユーザーも交えて三者の中でせっかくのコンテンツはできるだけ利用された方がいいし,それにより利益も最大化して,全員が利益を得るという良い方向に持っていくべきものと思われます。そのような方向性を狙っていろいろ考えている中で,普通は著作権の場合には二者の関係がここでは三者になっていて,方程式が複雑になっていますが,根元にあるものは同じであるといえます。要するに最後は,メディア変換のときにもバランスだと申し上げて,メディア変換で権利制限をする際には,調整金等を含めて,バランスを組んでいくということも,立法政策的可能性の問題だから,要は最終的には適切な形でバランスが取れるのであれば,いろいろなやり方があるのではないかということであります。ここでも同様であります。排他権がいいのか,報酬請求権がいいのかも含めて,どのような形で法的なシステムを組んでいくのが,当事者の利益に合致して,最終的には著作権法の目的である権利者と事業者,ユーザーもそうなのでしょうが,それぞれの利益のバランスが図られるのかということであります。まさしく法の本質はバランスであるというように感じます。そして,結局のところは,片一方に寄った制度というのは成り立ち得ないのであって,まさしくちょうどバランスの取れたところに重心のような均衡点を見付け出すということこそが重要となってくるのであります。そのため工夫の1つとして,こういう今議論されているようなものが成り立つのかどうか,ないしは,どういう形で法制度を組めば今言ったような方向に持っていけるのかというのをきちんと議論していくことが必要だというのが一点目であります。
 また,従前の制度は最終的にはうまくいかなかったのですが,やはり議論するからには,法制度としてきちんとワークするようなものを考えていく必要があると思います。もちろん関係者全員の納得が得られるようなバランスのとれたものであるのと同時に,法制度としてきちんとワークするようなものでなければならないということであります。本日から既に検討が始まっておりますけれども,これがどのような制度となるかによって著作権制度全体ひいては文化全体に大きな影響を与えることとなると思います。もちろん現状のニーズをきちんと把握した上でありますが,権利者と利用者の間の単なる二項対立ではなく,どのようにすれば著作者の権利利益の保護と利用者の利用の最大化という社会全体にとっての利益が図られるのかということを考えていくべき大きな問題であります。このように,この問題は,議論を尽くして,何がベストの解なのかをじっくりと腰を落ち着けて考えていくべき非常に大きなテーマであると思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。奥邨委員,いいですか。

【奥邨委員】  すみません。私,不勉強で,必ずしも,この問題についてどうすべしという意見を今持っているというわけではないんですけれども,たしか先ほどの椎名委員や華頂委員の御発表の中の最後の方にあったかと思いますけれども,現状の制度に必ずしもこだわる,補償金という枠に必ずしもこだわるわけではないという趣旨のお話があったわけですけれども,私のような不勉強な身ですと,かつての議論,5年,10年遡ってということになりますとなかなかついていけない部分もありますし,また,同じことの繰り返しのところもあるかと思うので,どういう枠がよいか,どういう解決がよいかというのは正にこれから議論していかなきゃいけないわけですけれども,いろいろと広い視野で議論をするということであれば,何か答えが出る余地もあるのかな,と思うわけです。ただし,いろんな変数があるわけで,どの変数をどう変えるかというのはこれからの議論だと思います。現状の全てを固定したものと捉えて一つの答えを出すということではなくて,仕組み,状況などなど全てを変数と捉えて議論されるということであれば,議論が前に向いて進んでいく方向性はあるのかなと。ただ,そもそもゴールにたどり着くのか,どういうところにたどり着くのか,まだ私も不勉強でなかなか定見を持っていないんですけれども,過去にさかのぼってということばかりだとなかなか進まないけれど,そうではないということなのかなと,本日お話伺っていてそういうふうに思いました。

【土肥主査】  ありがとうございました。榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  補償金制度ありきではないということなんですけれども,補償金制度ですら納得感がなくて,ぎりぎりの妥協の産物というようなことを以前学者の方なんかも評しておられたと思うんですけれども,その納得感がない制度でも,結局破綻をしてきたということで,補償金制度については,私はそういう意味では,誰の納得感も得られないので,廃止をされるべきだろうと思います。JEITAとしてもずっとそういう主張をしてきたのです。ただ,今回,それを増改築するものではなくて,全く新たな御提言だということで,こだわらないということなんですけれども,提言の内容が,もともとの補償金制度ですら納得感がないところで,納得感のなさがやはり倍増するという印象を持っております。
 先ほど諸外国のフランスやドイツがいいかという話が作花審議官から少し出たので,御紹介というか,御存じない方もいらっしゃると思いますけれども,欧州で補償金を払っているメーカーというのは日米の企業なんですね。ほとんどが日米。だから,外資から取られているという構図で,少し日本とは状況が違うんじゃないかなと思います。コンテンツで一番世界中でうまくいっているアメリカというのはほとんど補償金制度はないですし,権利者の方たちも,そういったものを求める声が全くないそうです。そういうのがなぜなのかというのを,やっぱりバランス,保護等でいろんなバランスということであれば,いろんな諸外国を見なければいけないと思います。
 この審議会に課されている新たなサービスへの環境整備というところで,産業界からは一般条項のようなものが必要だという意見を申し上げさせていただいたとともに,多くの諸外国で最近そういう制度が導入されているという御紹介を以前させていただきましたけれども,そういった国は全て補償金制度のような制度を持っていないんですね。そうすると,じゃあ,コンテンツの保護を軽視しているかというと,そうではないようなので,やっぱりそういうところも比較対照して,広くどういうものが一番望ましい制度設計なのかということを考えないと,むしろバランスは更に崩れるのではないかなと思います。

【土肥主査】  ありがとうございます。私,伺っていて一つお尋ねしたかったのは,日米のみがドイツやフランスの補償金制度で取られているというような御趣旨だったと思うんですけれども,その意味,ちょっと分からなかったのですが。

【榊原委員】  支払をしているメーカー,会社が,日本やアメリカの企業であるという趣旨です。アメリカでいうと,IT企業,日本でいうとメーカー,ハードメーカーということになろうかなと思います。

【土肥主査】  ドイツにも電気機器メーカーたくさんあると思うんですけれども,そういうところは当然払うんじゃないですか。

【榊原委員】  例えばドイツですと,JEITAに似たような団体,ビットコムというのがございますけれども,そこの参加メーカーの大手をリストで見ていくと,ほとんどが日本やアメリカの企業が,ほとんど補償金の支払の大半を払っているということなので,やはり現地では制度に対する反対というのが,地元の大きな企業が反対をしないと反映されにくいということです。他方,日本ですと,日本の企業が大きい支払をしてきていますので,やっぱり納得感がないというふうになっていくということは,実際どういうことが起こっているかというのは,それが事実だろうなと思います。

【土肥主査】  松田委員,どうぞ。

【松田委員】  今榊原委員が言われた,欧州の状況がそうだというのはおおよそ予想つきますわね。日本とアメリカのメーカーがそういうものを負担しているというのは,そうだろうなと思う。かつての資料によりますと,ドイツ,フランスは,補償金として支払っているメーカーの金額が恐らく300億円ぐらい,日本円にして。それから,メーカーがほとんどないスペインで,ほとんど日本の機器しか売れていないだろうと思われるスペイン,経済規模は4分の1だったと思いますが,それでも当時は90億円あったんですよね。日本は,日本のこの経済規模で,なおかつ,メーカー,世界中で日本が代表するメーカーになっているわけでしょう。それで最大のときでせいぜい40億円だったんですよね。このバランス感覚からしたら,どうして欧州では大きな反対運動が起こらないんでしょうか。欧州のメーカーが大きな反対運動を起こさないから,日米のメーカーはそれに追従せざるを得ないというのは一つのお答えかもしれないけど,だけど,比較したら,圧倒的に10倍ぐらいの,1国でですよ,1国で10倍ぐらいの補償金を支払っている日本のメーカーが,なぜヨーロッパでは戦わないんでしょうか。

【土肥主査】  もしお答えできるようであればお願いします。

【榊原委員】  日米のメーカーとかIT企業は非常に欧州では反対をしております。ただ,ヨーロッパの地元の大企業はそこにほとんどいないということで,なかなか政治には声が届かないということだろうと思いますので。そういうものだということです。

【土肥主査】  さはさりながら,そういう状況の中で日本のメーカーは大いに欧州市場においてシェアを確保しているわけですよね。大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】  先ほどの御説明ありがとうございました。現象面は分かるのですけれども,要するに,先ほどの話,欧州では,日本や米国の企業が補償金を払わされていて,地元の企業は余り払っていないということだったかと思います。だから,地元の方からは補償金に対する反対は少なかろうと,そういう御趣旨だったかと思うのですけれども,その理由というのは,何なのでしょうか,平等にかければ別にどの国でもかかりそうなのに,欧州の地元企業は欧州の制度の中で補償金が余りかかっていないというのは何かいろいろなバックグラウンドなどがあるのでしょうか。

【土肥主査】  ドイツなんかでも,メーカーにも支払義務あるんだと思うんですけれども,輸入業者にもありますよね。だから,輸入業者がドイツの企業であれば当然払っているんだろうと思うんですけど。

【大渕委員】  その辺の説明を。

【榊原委員】  制度は当然どの国のメーカーかということは関係なく平等に適用されますけれども,やはり大きなところがどこの国の企業かということです。全世界で見たときに,ITとかハードメーカーというと,もちろん韓国なんかも,ハードメーカー,大きなところがものすごくありますけれども,欧州の企業で大メーカー,大ITメーカーって余りいないと思います。単純にそういうことだと思います。ただ,欧州で払っているから日本で払いなさいという議論なんでしょうか。やはり納得感があるかというと,やっぱり納得感はない制度であるということは,どの国であっても同じで,そういう制度がない国,ないしは導入を求めていない国もたくさんあるので,フランスやドイツだけの例をここで模範のように議論するのは,じゃあ,なぜフランスやドイツの方がいいのかと思います。アメリカとか韓国とかイスラエルとかシンガポールとか,そういう制度がなくて,イノベーションも非常に起こっていて,コンテンツもうまくいっているという国を,そういう議論の方が大事なんじゃないのかなと思います。少なくともドイツとか,コンテンツでうまくいっているというふうな話は聞いたことがなくて,むしろアメリカや韓国の方がそういう例としては挙がるのではないかと思うんですけれども,補償金が高い国だけを挙げられるというのはちょっと不思議な感じがいたします。

【土肥主査】  椎名委員。

【椎名委員】  一点,フェアユースのある国には補償金制度がないというお話だったのですが,アメリカには私的録音補償金制度がございます。誤っていますのでそれを指摘させていただきたいと思います。
 それと,ヨーロッパでは払っていて,日本では払わない。納得性がない。両方とも納得性がないんだという御説明なんですが,海外では必要と思って支払っているものをなぜ日本で支払わないのかなと,権利者側から見ると,そういう思いがいたします。以上です。

【土肥主査】  大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】  要するに,欧州では,日本も米国も欧州企業も平等に払わされているが,大きな企業というか,JEITAに対応するようなものがないから,実際余り払っていないという,それだけの事実上の話なのでしょうか。それが先ほどの地元の企業が余り払っていないため反対も少ないから続いているのではないかという,そこに続いていく御趣旨だったのでしょうか。今後,いろいろな形で検討する前提として,前々からやられている補償金制度についての各国の調査をまた最新の形でやる際には,法律の条文や制度それ自体等だけを見るのではなくて,どのように企業に影響を与えるのか,あるいは,各国の人にとってどれだけ満足度があるのかとかいう点等も含めて総合的に検討していく必要があるのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございました。確かにパイオニアとか,ソニーとか,パナソニックとか,いろいろな企業が進出していると思うんですけれども,ヨーロッパにあるソニーなりパナソニックなり,そういった企業は,やっぱり欧州の企業として設立された企業なんでしょうね。だから,やっぱり欧州の企業が補償金を払い,その国の文化の一端を支えているということだろうと思います。
 いずれにしても,この問題についてはまだまだ緒についたばかりでありますし,先ほどどちらかの委員から御質問ありましたように,録画と録音と,このペーパーに出てきている議論の方向性というのは,法改正に行くのか,政令で行くのかという,そういうようなところも踏まえて,大きく違うところがございますし,そういうものを詰めていって,次回,次期以降,末吉委員からもおっしゃっていただきましたけれども,一つを目指して,いつか来た道ということにならないように是非,そろそろ成果を出せればと期待させていただきたいと思います。
 事務局におかれましても,恐らく大変だろうと思いますが,是非ひとつ,私も覚悟いたしますので,事務局の方,是非よろしくお願いをいたしたいと思います。
 時間的にはちょうど次の議題に入りたいと思っております。3の議題なんですけれども,平成26年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等についての検討でございます。本日は今期最後の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会でございますので,著作権分科会が開かれますけれども,そこでは私から本小委員会の審議の状況について審議経過報告という形で報告をさせていただきたいと思っております。
 それでは,資料にあります審議の経過等の報告案について事務局から説明をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  それでは,資料4を御覧ください。本小委員会の審議の経過等について(案)としまして,この資料のとおり整理させていただきました。
 「はじめに」というところにつきましては,この小委員会の目的として,急速なデジタルネットワークの発達に対応した法制度の基盤整備ということを掲げまして,検討課題としましては,クラウドサービス等と著作権,それからクリエーターへの適切な対価還元に係る課題について検討したというようなことやその他経緯を説明してございます。
 そして,各課題の審議の状況という2番のところでございますけれども,まずクラウドサービス等と著作権に係る課題につきましては,検討の経緯ということで,まず私的使用目的の複製に関係するクラウドサービスについて,その後,ロッカー型クラウドサービス以外のサービスについての検討を行い,その際,関係者のヒアリングを行ったというようなプロセスについて説明をしております。
 検討結果としましては,この報告書が取りまとめられた旨を記述してございます。
 2ページをお願いいたします。次に,クリエーターへの適切な対価還元に係る課題の審議経過でございます。検討経緯としましては,前年度のワーキングチーム以来検討が進められてきたこと,関係団体より制度創設に係る提言があり,それから,私的録音録画に関する実態調査の結果報告がなされ,更にその結果を受けた分析の報告が関係団体よりされたというようなプロセスであったこと,そして,本日この場で改めて関係権利者団体より意見発表がなされ,意見交換が行われたことを記述してでございます。
 次に検討の状況でございます。下の括弧書きの網かけのところにございますように,本日いろんな御意見をちょうだいしましたので,それらを改めて整理をしたいと考えてございますけれども,これまでの議論の状況ということで,本日の会議開催時点のものを整理してございます。
 検討の中身についてですが,まず,調査結果の分析について権利者団体より御発表があり,意見交換が行われたところです。その発表におきましては,音楽データの保存状況や録音状況についての言及がありまして,非常に大きな私的録音のニーズが存在しているという御説明がございました。それから,メーカーは私的録音に供される機器を販売しているが,大半が私的録音補償金の対象外ということで,補償金受領額が減少しているという指摘もあった旨紹介してございます。これに対する意見としましては,私的録音の数の推計に大きな意味はないということや,音楽の利用態様に着目することが重要であるという御意見や,それから,音楽を持ち出して聞いてもらうことができるのであるから著作権者も利益を享受しているのではないかというような御意見があったところでございます。
 最後に,「おわりに」でございますけれども,今後の検討課題としましては,②のクリエーターへの適切な対価還元に係る課題については,これからも関係者の意見を踏まえながら更なる検討が求められている,というふうに締めさせていただいてございます。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。それでは,ただいま説明いただきました審議経過等についての案でございますけれども,この点について何か御質問,御意見ございましたら,お願いいたします。特によろしゅうございますか。椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】  検討の状況のところで,調査結果の分析について私から説明した部分を書いていただいていると思うんですが,その部分,二つのことを申し上げたと思います。その下の「第10回小委員会の審議内容を踏まえ,追記を予定」されている部分の書き方次第でもあると思うんですが,ひとつは,非常に大きな私的録音のニーズが存在していて,それを背景にメーカーは私的録音に供される機器を販売して利益を上げている点に着目すべきだ,ということ。それと同時に,その大半が私的録音補償金の対象でないので補償金が激減していること。この二つのことを申し上げたつもりですので,この部分何か工夫していただければと思います。

【土肥主査】  ほかにございますか。じゃあ,津田委員,どうぞ。

【津田委員】  「おわりに」のところにあるところで,今後,来期についてということでもあると思うんですが,終わりの方での本日の提言なんかも含めて,新しい制度,ユーザー,そしてメーカー,そして権利者の新しいスキーム,枠組み作りをやるところの議論の中で,僕が一点だけ危惧しているのが,どうしても対価還元の話だけになっているなという感じがするんですね。もちろんクリエーターへの適正な対価還元,これはすごく必要なことだとは思うんですけれども,同時に,コピー制限,それはダビング10も含めて,要するにユーザーがどれだけのコピーの制限,あと,私的複製の関係でコピーの制限についてどこが本当に適正なバランスなのかというですね。ユーザー団体としては,対価還元の議論とともにコピー制限に対する議論,これがやはり両輪で初めて保護と利用のバランスが取れた制度を作れるものになると思うので,そこに関してはやっぱり排除していただきたくない。また,コピー制限というのをどうするのかというところの延長の議論として,フェアユース,若しくは一般条項。これはそのままアメリカとかのものを入れてくるのかどうか,日本型にどうするのかというのはあるわけですけれども,やはりネット時代に対応した,ある程度広く取った権利制限の一般条項のようなものを同時に,そこの議論も排除せず,次につなげていくということを希望します。
 あと,もう一点,これ,事務局に確認したいところでもあるんですが,時事ニュースのネタでもあるんですが,TPPで知財の問題で,保護期間延長ですとか,もう一つは,非親告罪化,今も報道でそちらの二つの大きな話題が入ってきて,特に非親告罪化が入ってくると,相当ここの審議会で話しているいろいろな議論の前提も相当大きくバランスも含めて変わるところだと思うので,そのあたりというのはどこまでキャッチアップされていて,今後にどう影響を与えるのか,それについてお伺いしたいなと思います。

【土肥主査】  それでは,お願いします。

【作花文化庁長官官房審議官】  津田委員も十分御承知と思いますけれども,TPP交渉につきましては,その内容についてはクローズドになっておりますので,残念ながら一切申し上げることができません。ただ,今おっしゃったような問題については,文化庁としてもこれまで十分認識はしているところでございます。という以外に今申し上げようがないということでございます。

【土肥主査】  華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】  今津田委員の方からコピー制限についてもこの審議会で検討した方がいいんじゃないかと。そう言われるとダビング10というのが頭に浮かんでくるんですけれども,この審議会でダビング10のことを審議した後に,ダビング10の運用に影響を及ぼすことができるんでしょうか。その結論をもってしてですね。

【作花文化庁長官官房審議官】  どなたもお答えにならないので申し上げますが,ダビング10は,相当な議論をして,総務省の情報通信審議会でも議論して,しかも,放送事業者とか,あるいはメーカー全体を巻き込みながら一つのルールがやっと形成されたということでございますので,この文化庁の審議会でその根幹に関わるところを触れるというのは,なかなか行政としても簡単なものではないと考えております。
 ただ,我々,受けとめ方としては,津田委員の御提言というのは,いろいろ私的目的の複製,録音,録画を考える際に併せて,じゃあ,DRMとの関係,それとのバランスで,そういう視点でやはり考える必要もあるのではないかと,こういうことだろうと思うんですね。ですから,ダビング10そのもののルールについて今文化庁の審議会でそれを打ち出すということは現実的には難しいなということは受けとめております。

【華頂委員】  すいません。ありがとうございます。そういうふうなことでしたら,それをやること自体徒労じゃないでしょうか。以上です。

【土肥主査】  私,先ほど聞いていた津田委員の触れるというのは,委員会において議論をこれからしていくというような,そういう文脈ではなくて,ここの中でそういうような観点も文章の中で触れてほしいという,そういうことじゃなかったんですか。

【津田委員】  可能であれば,今後の議論につなげるという意味で,この委員会自体は,デジタル・コンテンツの流通等の促進というのも,保護と利用というところが入っているわけなので,そこに関して文言を配慮していただきたいなということがあるということと,ダビング10をどうこうしようという話というよりかは,繰り返しになりますけれども,対価還元とそしてユーザーの私的複製のコピー制限のDRM運用というのを,それをやはりセットでやらないと,保護と利用のバランスの取れた総合的な議論ができないのではないかという問題意識ですね。その延長に恐らく一般条項のようなものもあってしかるべきということを意見として申し添えたという,そういう認識でよろしいですか。

【土肥主査】  はい。いずれにしても,本日頂いた各委員からの意見というものは,調整させていただいて反映をいたしますけれども,どこにどういう形で反映するか。例えば検討状況の意見として反映するのか,まとめの中で反映するのか,そういうようなことに関しては,御一任いただければ,最終的には私の方で,一任していただいて,その内容をもって分科会において報告をするという形にさせていただければと思っておりますけれども,よろしいですか。ほかにまだ御意見ございますか。杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】  先ほどの津田さんの意見の乗っかっちゃうような感じなんですけれども,この会にずっと出させていただいて,ちょっと論点がずれるかもしれないんですけれども,やはり全体的に議論の要旨として,津田さんは対価還元とおっしゃっていたんですけれども,僕は収益分配といったところに論点が絞られちゃっている気がして,それはそれで,現在においてこういう収益が上がっているといったところをどういうふうに適正分配するかということに関しては,議論としては間違っていないと思うんですけれども,やっぱり時間軸でいうと,どうしても現在から過去に,過去に学び,現在に向かって,現在の話しかしていないような気がするんですね。やっぱりこういったところで話をしていく以上は,そこで収益還元が適正に分配されたものが,それがどういうふうに投資に回っていって,これは私的複製補償金制度なんかもそうだと思うんですけれども,最終的にはクリエーターに対する投資という考え方ができると思うんですよ。そうなっていったとき,あるいは,クラウドの話も含めてなんですけれども,そういったものが今後のコンテンツマーケットであったりとか,文化創造の拡大とか育成とか,ちょっときれいごとを言うと,こういったものに対してどういうインパクトを与えて,それが例えば3年後とか5年後とか10年後にどういうふうに,例えば我が国でもいいですし,全世界のコンテンツマーケットでもいいですし,そういったものに対してどれぐらいできれば定量的にインパクトを与えるのかといったところが,導き出されるといったところをゴールの一つとして出てくるような話合いがされていった方がいいと思いますし,こういう「おわりに」のところにはそういうのをにわかに匂わすような,そういったことが組み込まれてくると,こういう話合いというのが,現在から過去に向かって話されているのではなくて,むしろ未来に向かってこの話はされるんだよというような,そういった結論につながっていくんじゃないかなと思って,そういう話合いをしたいなと思いました。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】  「おわりに」の表現自体は土肥先生に一任ということで異論はございませんけれども,保護と利用,両方バランスを取って議論をするという中で,保護の強化の論点だけが残ってしまうということはバランスとしてはどうなのかという津田さんの御意見に私も賛成で,コピー制限とか,一般条項とか,またTPPの論点も,今は開示はできないということであっても,今後ということもあると思いますけれども,そういうバランスについて併せて検討を続けるということで,今後についてお願いしたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。ほかにございますか。今子委員,どうぞ。

【今子委員】  一つ目の課題のクラウドサービス等と著作権に係る課題のところですが,前回欠席をしてしまいましたし,本日も機会をいただけなかったので,報告書について,少しだけコメントをさせていただければと思います。16ページのタイプ2のところで,結論として,制度整備を行う必要性は認められなかったとされております。確かにタイプ2は,利用者の私的複製であり,権利者の許諾は不要であるというふうに整理いただいたところではあるのですが,クラウドサーバーが……。

【土肥主査】  今現在は,報告書を取り上げているわけではなくて,資料4の審議経過報告について御意見を頂戴しているんですけれども。報告書について感想か何かということですか。

【今子委員】  コメントをさせていただければと思うんですが。

【土肥主査】  コメントですね。じゃあ,後でコメントをお聞きする時間を作ります。

【今子委員】  ありがとうございます。

【土肥主査】  審議経過報告について御意見ございますか。よろしいですか。
 審議経過報告につきましては,この期においてこの問題について審議をしてきた経過についてそのまま客観的に申し上げるということになるんだろうと思います。本日,審議経過報告についての内容について幾つか御意見等々頂戴いたしましたので,その部分については,事務局ともよく相談した上で,委員の御意見をできるだけ反映する形でまとめたものをしかるべき分科会において私から報告をさせていただこうと思っております。
 そういう意味で,審議経過報告の修正を踏まえて御一任いただくということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,そのようにさせていただきます。
 先ほど今子委員から報告書についてのコメントがあるということでございましたので,ここでお伺いしたいと存じます。

【今子委員】  ありがとうございます。16ページで,制度整備を行う必要性が認められなかったと記載されています。タイプ2について,利用者の私的複製であり,権利者の許諾は不要であると整理されたものの,クラウドサーバーが公衆用設置の自動複製機器に当たるとされるおそれがやはりなくなったわけではなくて,以前の会でもいろいろな立場からコメントがされているところですので,最終的な結論として制度整備を行う必要性が認められなかったというのは,果たしてそうなのかというふうに思っているというところです。
 それから,そもそもの話になってしまうんですけれども,「ロッカー型クラウドサービス」と書かれていますが,これではタイプ2に限った議論だったという誤解を生むのではないかと思います。「ロッカー」といいますと,通常,個人が自分のものをしまうために,自分だけが使える場所をイメージし,共有型などは含まないのではないかと思います。また,技術的にも,クラウドサーバーにロッカーのような固有の領域が存在するわけではないので,単に「クラウドサービスと著作権」という方が誤解がないのではないかと感じたところでございます。
 報告書の内容について,皆様からいろいろと御意見があったはずのところ,すべて主査に一任されたのだということであれば,本日申し上げても仕方がないということかもしれませんが,以上コメントさせていただきます。

【土肥主査】  御感想どうもありがとうございました。前回の委員会において今子委員の提出いただいたペーパーなんかも相当程度盛り込ませていただいて今回の報告書はできております。また,必要性云々(うんぬん)に関して,今後また新しい状況があれば,それは当然その段階で検討するということは,議事録を御覧いただくときちんと発言をしておりますので,そのように御了解いただければと思っております。
 本日,この期の最後の委員会ということになっておりますので,有松文化庁次長にはいつも御心配をかけて申し訳ないと思っておるんですけれども,一言,期の最後に御挨拶をいただければと思います。よろしくお願いします。

【有松文化庁次長】  ありがとうございます。それでは,今期の著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会,最後の会でございますので,一言御礼(おんれい)を申し上げたいと思います。
 この小委員会におきましては,クラウドサービス等と著作権の問題,そして,クリエーターへの適切な対価還元に係る課題といった我が国の著作権制度に関わる大変大きな課題について御議論をいただきました。先ほど取りまとめていただきましたように,クラウドサービスと著作権に係る課題につきましては,大変皆様方に集中的に御議論をいただき,大きな御尽力をいただいて,報告書をお取りまとめいただきました。
 特にロッカー型クラウドサービスにつきましては,著作者の許諾を不要とする範囲についての意見の一致が見られたのは大変大きな成果であると考えております。また,権利者側の委員から,音楽集中管理センターの御提案をいただきましたこと,こうした動きは,クラウドサービスにおける著作物の利用の円滑化を図る上で画期的なものと考えておりまして,皆様方の御尽力に心から御礼(おんれい)申し上げたいと思います。
 さらに,ロッカー型以外のサービスにつきましても,クラウドサービス等の発展に向けて円滑なライセンシング体制の構築などについても御提言をいただきました。
 今後,私どもとしては,この提言内容をいかに実現していくかが重要になってまいります。関係当事者の皆様におかれましても,ライセンシング体制の構築に向けた意見の取り組みを鋭意進めていただくようお願いを申し上げ,また文化庁としてもその動向を見守りつつ,必要な支援について行ってまいりたいと考えております。
 また,適切な対価還元に係る課題につきましては,先ほどの取りまとめでも今後更なる検討が必要ということにさせていただいているところでございます。大変大きな課題でございまして,文化庁といたしましても,覚悟をしてこれまで以上に力を注(そそ)いでまいりたいと思いますので,皆様方にはどうぞ引き続き御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 最後になりましたが,皆様方におかれましても,大変お忙しい中,並々ならぬ御尽力,御努力いただきまして,今日の取りまとめ,また今後の引き続きの議論の開始の時点に至りましたこと,改めて心より感謝を申し上げまして,簡単ですけれども,私からの挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。

【土肥主査】  有松次長,どうもありがとうございました。
 それでは,その他,事務局から連絡事項がありましたら,お願いをいたします。

【秋山著作権課課長補佐】  先ほど主査からも言及ございましたように,本小委員会の審議経過について御報告いただく著作権分科会の日程等につきましては,確定次第,ホームページ等でお知らせしたいと思います。それでは,1年間どうもありがとうございました。

【土肥主査】  本当に1年間どうも御苦労さまでございました。本当に私からも感謝申し上げたいと思います。
 では,以上をもちまして今期の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会を終わらせていただきます。本日もどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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