文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第4回)

日時:平成28年1月29日(金)
10:00~12:00
場所:中央合同庁舎第7号館西館
共用第1特別会議室

議事

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1
畑委員提出資料(216KB)
資料2
畑委員提出資料(263KB)
資料3
山﨑氏提出資料(376KB)
資料4
若松氏提出資料(335KB)
資料5
浅石委員提出資料(327KB)
資料6
荒川氏提出資料(442KB)
参考資料1
ヒアリング出席者一覧(24.3KB)
参考資料2
クリエーターへの適切な対価還元に関する主な論点(69.1KB)
参考資料3
クリエーターへの適切な対価還元に関する主な意見(149KB)
 
出席者名簿(54.2KB)

議事内容

【土肥主査】時間でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第4回を開催いたします。本日は,お忙しい中,御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございます。この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 事務局の人事異動があったようでございますので,御報告をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】御報告申し上げます。本年1月1日付で文化庁次長に中岡司が着任しております。

【中岡次長】中岡でございます。どうぞよろしくお願いします。

【土肥主査】どうぞよろしくお願いいたします。それでは,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。その前に,配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課課長補佐】お手元議事次第下半分のところを御覧ください。資料1から6といたしまして,畑委員,山﨑様,若松様,浅石委員,荒川様からの御発表用資料となってございます。参考資料1から3としまして,その他の資料,この記載のとおり,御用意してございます。足りないもの等ございましたら,お近くの事務局員までお伝えください。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,初めに議事の進め方について確認しておきたいと存じます。本日の議事は,1,「クリエーターへの適切な対価還元について」,2,「その他」,この2点になっております。早速でございますけれども,議事に入りたいと存じます。クリエーターへの適切な対価還元の問題につきましては,前回の本小委員会におきまして主な論点を整理していただいたところでございます。今回及び次回の本小委員会では,私的録音・録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状を把握するため,委員及び有識者の方々に御発表をいただきまして,質疑応答の機会を持ちたいと存じます。なお,今回は,録音を対象に行い,次回は録画を対象に行う予定でございます。
 本日は3名の有識者の方々にお集まりをいただいております。御紹介させていただきます。株式会社レコチョク常務執行役員,山﨑様。

【レコチョク(山﨑氏)】よろしくお願いいたします。

【土肥主査】日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合専務理事,若松様。

【CDVJ(若松氏)】よろしくお願いします。

【土肥主査】株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス代表取締役,荒川様。

【JRC(荒川氏)】よろしくお願いします。

【土肥主査】どうぞよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。
 初めに,音楽コンテンツの流通と対価の支払いの現状及びパッケージの製作・流通と契約について,畑委員から御説明をちょうだいします。畑委員,お願いいたします。

【畑委員】レコード協会の畑でございます。私の方からは,まず資料1で音楽コンテンツ流通の全体像を説明させていただき,その後に,資料2でパッケージ流通に関する現状,契約に触れたいと思います。
 まず資料1でございますけれども,下側のページ,ページ番号1で音楽コンテンツ流通の概観を示させていただいております。音楽の流通については2次的利用まで含めると様々な形態があるわけですけれども,今日は消費者が音楽コンテンツそのものを利用・享受する代表的な四つの流通形態,ここに掲げておりますパッケージ販売,音楽配信のダウンロード,それとストリーミング,そしてCDレンタル,この四つの代表的な流通形態について現状把握ができればと思っております。
 それぞれの流通形態について,著作権者,実演家,レコード製作者,これは音楽に関するいわゆる3権利者でございますけれども,それとコンテンツ流通がいかに関わっておるのか,また,いかに対価が支払われておるのかという点について現状把握としての説明をさせていただきたいと思います。
 簡単にこの四つについて触れますと,まずCD等のパッケージ販売につきましては,いわゆる小売店,CDショップがリテールポイントになるわけですが,CDショップ等の契約相手というのは,レコード製作者,レコード会社になります。小売店はレコード会社との販売契約により,商品を仕入れて,その仕入れた商品を消費者に再販売するというのが流通モデルになっております。
 二つ目の音楽配信のうち,ダウンロードですけれども,音楽配信事業者は,著作権者と作品の使用許諾契約を結ぶとともに,レコード会社とも契約を結んで,ダウンロード販売する音楽コンテンツを集めるという形になります。この辺の契約の詳細については,後ほどレコチョク,山﨑さんの方から御説明がありますけれども,配信事業者はダウンロードに際して,購入していただい消費者に課金をして,購入代金を回収するというモデルになっております。
 三つ目の音楽配信のストリーミングですけれども,これにつきましては,音楽配信事業者が著作権者及びレコード会社とそれぞれ使用許諾契約を結んで,ストリーミング配信をする音楽コンテンツを集めるという形になります。御存じのとおり,ストリーミングにつきましては,消費者が複製物を所有するというモデルではございませんので,ストリーミングについては,配信事業者のサービスを消費者が利用していただいて,その月額利用料を支払っていただくというのが代表的なビジネスモデルになっております。これも後ほどレコチョク,山﨑さんの方から御説明がございます。
 最後にCDレンタルですけれども,レンタルショップは,著作権者,実演家,それからレコード製作者,それぞれと貸与許諾契約を結んで,レンタル商品を仕入れて,消費者に貸与して,レンタル料金を回収するというモデルになっております。これも仕組みについては後ほど若松専務の方から御説明があるかと思います。
 1ページの図の右側の方ですけれども,つまり,消費者の手元に音楽コンテンツが届いてから後の話でございますけれども,一消費者の手元にCDの形で届く場合,つまり,パッケージ,それからレンタルの場合ですけれども,御存じのとおり,CDはDRMに対応しておりません。したがって,複製は消費者の自由にできるというのが現状でございます。CDには孫コピーを制限するSCMSが搭載されてはおりますけれども,今の複製の主流環境であるPC,あるいはスマホ,そういったプラットフォームではSCMSは機能しませんので,消費者が希望する形で私的録音ができるというのが現状でございます。配信のダウンロードについても,ビジネスの初期段階では,配信のときにDRMをかけて,1回ダウンロードしたファイルからの複製を一定数に制限するということをやっていましたが,この2年ぐらい,特に今ではもうDRMをかけない配信が主流になっておりますので,ダウンロードについても消費者が自由に複製ができるということになっております。
 一方,ストリーミングの場合は,一般的には複製を防止する措置が講じられておりますので,私的複製はできないということになっております。
 消費者の手元に届いてから後の音楽コンテンツの利用,複製というのは,正に閉鎖的空間内の出来事ですので,コントロールができないと。したがって,補償金制度によって担保されていたわけですが,これが今十分に機能していない。この分にかかる対価というのが還元されていないと言わざるを得ないということです。
 また,私的複製の対価がプライシングインされているのではないか,提供価格に含まれているのではないかという見方が一部にあろうかと思いますが,いずれの流通モデルでもその分は対価に含まれていない,含めていないという理解をしております。これについてはまたそれぞれ後ほど御説明があろうかと思います。
 次のページですけれども,御参考に,それぞれのモデルの流通規模というのはどうなのかというところで,パッケージと配信について2ページ目でお示しをしております。2015年の数字がまだ配信の方が完全にまとまっておりませんので,若干古くなりますけれども,1年前,2014年通年のCDパッケージ,それとデジタル配信の実績をお示しいたしました。上段が数量ベース,下段が金額ベースになります。数量につきましては,CDパッケージ,これはアルバム,シングルありますけれども,合計で1億7,000枚強のCDが消費者に購入されて市場に出回っていると。これが年間の数字ということです。デジタル配信の方も,シングルトラックのダウンロードとアルバムのダウンロードがありますけれども,合計で約1億2,900万の楽曲が消費者にダウンロードされているというのが通年の実績でございます。
 この数量の数字だけ見ていただきますと,配信がパッケージに拮抗してきたかのように映りますけれども,※で書かせていただいておりますが,配信のシングルトラックについては正に1曲ごとのダウンロード,その数量でございますけれども,CDシングルにつきましては,1タイトルに最低2曲,多い場合で4曲程度入っておりますので,そういった面では,集計ベースが配信とパッケージでは異なっておるというところに御留意いただければと思います。
 いずれにせよ,これだけの音楽商品,音楽コンテンツが毎年市場に流通しておるという数字でございます。
 金額ベースの方でございますけれども,CDの方が合計で1,840億,配信の方が370億というのが合計の数字になります。シェアでいきますと,CDの方が83,デジタルの方が17という比率になっております。
 ここで見ていただきたいのは,ストリーミングの規模でございますけれども,ストリーミングも昨年から幾つか新しいサービスがサブスクリプションという名前で始まり,今,成長著しい分野ではあります。年々40~50%ぐらい伸びている分野ではありますけれども,金額の全体規模の中ではまだまだ小さな流通形態ということが言えようと思います。
 これが音楽コンテンツの市場規模になります。これを踏まえていただいて,これ以降,代表的な四つの流通形態の話に移りますけれども,まずパッケージの製作・流通,契約については,私の方から続いて御説明させていただきます。資料2になります。
 パッケージビジネス,下側の図ですけれども,真ん中のレコード会社のところに円盤の図があって,原盤と書かれております。まず音楽ビジネスというのは原盤を制作するところから全て物事が始まっていきます。原盤というのは,それの複製物であるCDの正にもとということであって,いわゆるマスターと言っております。マスターを指しております。この原盤を様々なビジネスにおいて活用する,その主体的役割というのは通常はレコード会社が担っています。その役割を果たすことによって,原盤は,CDあるいは配信において活用されて,ビジネス展開されていくということになります。
 この原盤の制作にはいろんな事例とか形態があります。これはレコード会社が自ら原盤を作る場合であるとか,別の事業者が作った原盤をレコード会社がCD化する場合とか,いろんな形態がありますけれども,ここでは一番分かりやすいということで,レコード会社自らが原盤を制作する場合を図示,例に取って御説明したいと思います。
 まず原盤を作るに当たりまして,レコード会社は,著作権管理事業者,作家を代表する,作家の権利を管理するJASRACさん等の著作権管理事業者と使用許諾契約を結んで,作品の提供を受けます。また,実演家とも契約して,実演の提供を受けて,原盤を制作するわけです。場合によっては,レコード会社の外部の方,著名な外部プロデューサーとか,そういったプロデューサーに依頼して,原盤制作,あるいはアーティストの売り出し方,そういったものをプロデュースをしていただき,それに対する対価を支払うというケースも多々ございます。
 そういった著作権管理事業者,原盤制作に携わった実演家,プロデューサーには,レコード会社からそれぞれの契約に基づいて対価が支払われております。
 原盤は工場で複製されてCDになるわけですけれども,CDを製造する,商品にするためには,その他いろいろな素材があります。CDに封入される解説書だったりライナーノーツなどは,レコード会社がライターさんに発注をして,原稿に対して原稿料を支払うという形になっております。
 また,ジャケット等の写真,あるいは中の封入物の写真,あるいはそれらのデザイナーという方々にも,カメラマン,デザイナーにレコード会社が発注して,それぞれギャラやデザイン料を支払うという形になっております。
 また,新譜の発売に際しましては,レコード会社はプロモーション,あるいは宣伝を行いますので,その宣伝の材料,宣材と言ったりしますけれども,あるいはテレビスポットを打つ場合には,そのクリエイティブであったり,また媒体料の支払い,そういったものもレコード会社の負担経費としてかかってまいります。
 そういったCD製造に必要な素材を持って,レコード会社は印刷工場,それとCD工場に製造の発注をして,完成したCD商品は,レコード物流網を通じて卸あるいは小売店に届けられます。卸・小売店はレコード会社と販売契約を結んでおりますので,それに基づきパッケージ商品を仕入れて,小売店は仕入れた商品を消費者に再販売して代金を回収するというモデルになっております。
 この右の消費者から下の方に伸びておる矢印でございますけれども,消費者が購入したCDの利用,どういうふうに利用するかということは消費者に委ねられるわけですけれども,CDパッケージを御覧になるとお分かりになるかと思うんですけれども,私的な範囲を超える権利者の許諾のない複製,あるいは許諾のない送信可能化,そのような利用はできませんということが明示をされております。
 一方,私的録音については,30条1項により,消費者は自由にできるわけですけれども,その対価還元策として,1992年に創設された補償金制度,これが現在機能不全に陥っているということで,私的複製の対価,私的録音の対価というのが現在は十分に還元されてはおらないというのが現状でございます。
 最後のページでございますけれども,このような形で音楽パッケージの製作,製造,流通の過程で,様々な対価をレコード会社から各権利者あるいは各業務上の関係者に支払っておりまして,そういった様々な経費を考慮してレコード会社は音楽パッケージの価格を決定しております。
 一方,私的録音の対価については,そもそもが30条2項の補償金制度で担保されてきたという歴史的な経緯がありますので,その対価を上乗せしてレコード会社がパッケージの価格設定をしているという経緯はないと申し上げたいと思います。
 なお,レコード協会はCDの小売価格についてデータを取っております。これはいろんな目的で取っているのですが,そのデータをひもときますと,12センチCDアルバムの全体の平均小売価格の推移を見ますと,私的録音補償金徴収額のピークが2001年でございましたが,2001年に比べて2014年は,我々のデータでは約17%下がっておるという数字がございます。この下落には様々な要因があるかと思います。経済的要因,いわゆるデフレであったりとか,環境的な要因とか,あるいはビジネス上の戦略とか,いろんな要因がありますので,単純に比較してどうなのかという御意見もあろうかと思いますけれども,一応そういう実態があるということを御参考に最後に付け加えさせていただきたいと思います。
 私の説明は以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。質疑応答は全て御発表の後にまとめて行いたいと思っております。それでは,続いて,音楽配信における対価還元の現状につきまして,山﨑様より御説明をちょうだいします。よろしくお願いします。

【レコチョク(山﨑氏)】それでは,私の方からお話しさせていただきたいと思います。
 私の方から音楽コンテンツの流通と対価の支払いについて御説明させていただきます。いわゆるデジタル販売,デジタル商品といったところが私の説明範囲ということになると思います。
 音楽サービスは,1ページ目にありますように,ダウンロードサービス,よくいうアラカルトダウンロードと呼ばれているペイ・パー・ダウンロード,1曲ずつにお金を払っていただいて,ダウンロードして,コピーが手元に届くというようなやり方。それから二つ目には,ストリーミングサービス。昨今では月額制ということを捉えて,サブスクリプションサービスというふうな言い方をしていることもありますけれども,ストリーミングにより,ユーザーの手元には複製物が残らない形で,随時インターネットからデータを取り寄せながら再生をしていくようなサービス,この大きく二つが今現在,デジタル商品,音楽コンテンツとしての流通方法になっております。
 次のページ行きまして,2ページ目,音楽配信サービスの契約形態ということで書かせていただいております。これは主な代表例ということで考えていただければよろしいかと思いますが,いわゆるレコード会社さんや著作権管理事業者様などが管理をされている広義の意味での著作権の権利者,この方々と配信事業者である我々が契約をしていくということで配信がなされていくわけですが,この契約形態は大きく二つに分かれるというのが実態です。
 1番目は業務委託契約ということで,ここではまずは隣接権であるレコード会社さんから楽曲についての許諾を得て,それで販売をしていくということが事のスタートになっていきますので,レコード会社様との契約ということが主な説明内容になりますので,御承知おきください。1番目,業務委託契約は,レコード会社さんと配信事業者が契約をするに当たって,楽曲についての販売の業務を配信事業者に委託をする場合というのがこの業務委託契約です。したがいまして,レコード会社は販売手数料などを配信事業者に支払い,自らが決めた小売価格によって販売,配信を行っていくというのが1番の業務委託契約になります。
 2番目の原盤使用許諾契約は,いわゆるライセンス契約というふうに呼ばれるような契約形態になりますけれども,配信事業者がサービスの価格や実態を決め,管理,運営をし,レコード会社様においては原盤のライセンスを各事業者に与え,事業者はライセンスに従った対価を支払っていくというような形です。
 また,著作権使用料のところにつきましては,サービス形態が既にあらかじめ決められた著作権使用料の料率に従って,業務委託契約の場合は配信主体であるレコード会社さんがお支払いする。それから,原盤使用許諾契約,ライセンス契約の場合は,事業者が販売主体になっていますので,配信事業者が著作権使用料をお支払いすると,このような違いがあるといったところをまず踏まえた上で,3ページ目の音楽配信ビジネスの流れというところに移っていきたいと思います。
 先ほど畑様の方から話がありました,レコード会社さんを中心とした各権利者さんへの分配というところを受けて,我々はレコード会社さんと配信事業者で,先ほど申し上げたような契約形態に基づき,販売に対する楽曲の許諾を得て販売が開始するといったところから始まってまいります。
 真ん中のサービス事業者である例として,弊社レコチョクでございますが,こちらの方が許諾を得た楽曲をいわゆる店頭に並べて,スマートフォンであればこういった画面の中に楽曲を並べて,お客様からダウンロードをしてもらったり,またはストリーミングで楽曲を聞いていただいたりというふうな流れになっております。
 お客様からいただいた代金は,決済代行業者を経由しまして,サービサーである配信事業者側に代金が流れてきまして,その代金を契約に基づいてレコード会社様に分配をし,更には著作権管理事業者様への分配も同時に行うというようなものが,お金の流れ,ビジネスの流れとなっております。
 先ほどの契約形態に応じて支払い主体が若干変わるところはありますが,お金の流れとしては,ここに示したような流れで,楽曲データとともに対価が流れていくというような形になっております。
 次,4ページ目に移らせていただきまして,こういった流れでいっているダウンロードサービス,それからストリーミングサービスについて,サービスの概要とビジネスモデルを少し掘り下げて御説明を差し上げます。
 まず1番目,ダウンロードサービスにつきまして,今現在,サービスの概要としましては,大体1曲200円から250円,アルバムでいうと2,000円前後といったところが販売価格の小売価格の主たる価格帯というふうに御理解いただければよいと思います。
 今今は,最近ハイレゾの配信とかも徐々に人気になってきておりますけれども,今のところの主流は,あくまでも圧縮音源,CDデータの5分の1から10分の1ぐらいに圧縮されたデータをお届けする,ダウンロードしていただくというのが主流の配信サービスになっておりまして,これも先ほど畑様より御説明ありました著作権保護技術,いわゆるDRMは現在はかけずに配信をしているといった状態です。著作権保護技術がかかっておりませんので,お客様は自分の手元に来た楽曲データをある種取り出して,自由に自ら私的複製の範囲でコピーをしてほかの機器でも楽しむということができるような商品形態になっておりますが,とはいえ,スマートフォンなどを中心としたデバイスでダウンロードした楽曲データをメモリーカードに取り出すといっても,メモリーカードがそう簡単に取り出せないとか,物理的な煩わしさというのは結構ありますので,現在配信事業者の多くの方々は,1課金につき,複数台のデバイスでダウンロードができるというようなサービスまで適用範囲を広げて,ユーザーさんの利便性を考えて配信を行っております。例で申し上げますと,弊社では1課金で10台までのデバイスへのダウンロードができるというのがこのサービスの立て付けになっております。
 その下に,ビジネスモデルは,先ほどの著作権者との許諾契約とレコード会社さんとの契約,それから対価として販売価格に対する料率支払いというのは御説明したとおりですが,簡単に図で書き表しますと,小売価格に対して権利者様への対価をお支払いした上で,決済手数料,それから残った部分でサービス運営費,それから事業利益を生んでいくと,そんなようなビジネスモデルになっております。
 先ほど申し上げた10台のデバイスにといったところで御説明したものを図式化しておるのが次の5ページ目になります。1購入というのは,一番左側,お客様が楽曲を購入するという行為とともに,お客様の認証を何らかの形でさせていただく。これは個人を特定することによって私的な範囲においてということが成立すると考えておりまして,認証を取った上で,自分が持っているデバイス,10台までであれば,この楽曲のダウンロードが自由にできますと。これはあくまでも御自身がデータをコピーしていろいろな機器に持っていくことをあらかじめある程度利便性を考えて助けてあげましょうというような背景からこんなようなサービスをしております。
 また,CDなどは,1枚買っておけば,もちろんCDプレーヤーが古くなって買い換えても,そのCDを聞けるわけなんですが,スマートフォンなどに代表されるこういったデバイス,古くなったり壊れたりすると新しい機種に変えます。新しい機種に変えると,今までですと,1課金1ダウンロードという範囲の中では,再ダウンロードというものが利かなくなり,せっかく買ったのに何で自分の機器でまた聞けないのというようなクレームもかなり多くなったようなことが背景となり,10台までの再ダウンロードというところが今の主流になってきております。
 続きまして,最後のページの6ページ目,7ページ目の御説明ですが,ストリーミングサービスについてでございます。現在,ストリーミングサービス,これ,月額制のサービスがほとんどですので,月額費ということで考えていただきたいのですが,税込みで324円から980円というのが割と多い価格帯ということになっております。
 配信形態は,ダウンロードと違いまして,これは著作権保護というよりも,データの伝送経路の暗号化がかかっています。皆様も銀行のオンラインでお金の出し入れをやるときに,セキュリティがかかったサイトですというようなことを御覧いただくことが多いと思いますが,このようにデータ通信の中での通信網で暗号化をかけるということによってこのストリーミングサービスが展開されておりますので,結果として,横取りがされない,複製がされないような処置が施されていると考えていただければと思います。
 1課金というのが,1ID,1人のお客様というのを特定して課金をしていきますので,このお客様であるといういわゆるユーザーID,それからパスワードというものでお客様を特定することができれば,御自身が持っているデバイスのみならず,ほかの共用部分の例えばパソコンで聞きましょうとか,そういった場合も,個人認証さえ取れれば,配信を受けることができます。ただ,多くのサービサーが今展開しているのは,1IDにつき1課金というところが主流になっていますので,同時に同じIDでアクセスをした場合,例えばお父さんが課金を持っていて,息子さんもIDパスワードを知っていれば同時アクセスすることが物理的には可能になりますが,そこはサーバーの方で制御をしておりまして,後から入ってきた人が優先されるような形で,常に1課金1IDでサービスを利用するというような形になっているサービスが非常に多い状況でございます。
 ビジネスモデルも,冒頭から申し上げているとおりものでありまして,こちらも権利者様への対価と決済手数料とサービス運営費,この大きな三つの要素でビジネスモデルが成立しております。
 下の絵柄につきましても,先ほど申し上げた1IDがどこに行っても1カ所でしかアクセスできませんよというのを表現しようと思っていた部分でございまして,絵にすると重なってしまっていますけど,まずスマートフォンで聞いていきて,次にパソコンで聞こうとした場合,スマートフォンでのストリーミングができなくなるというような制御をかけているというのが今のストリーミングサービスの実態でございます。
 以上のように,ダウンロードサービスから始まって,特に去年から始まったストリーミング,サブスクリプションサービスというのが出てきて,これが今後どのぐらいの割合でお客様に受け入れられていくかというのは,正にお客様の認識,音楽の聞き方のスタイルの変化によって大きく変わりますので,我々もいろいろ予想,想像しながら次のビジネスを考えていこうと思っていますが,まだまだお客様がどっちの方向に流れていくのか,何をもって音楽の楽しみ方が,このスタイルがいいよねというふうに認識されていくのか,分からない状況ですので,新しいサービスやビジネスモデルがどんどん出てくるような気配が今年もしております。それに合わせまして,我々も権利者様への権利を守るということを考えながらも,より一層音楽が流通するように努力をしていきたいと考えている所存です。
 以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,続きまして,CDレンタルにつきまして,若松様から御説明をお願いいたします。

【CDVJ(若松氏)】日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合の若松と申します。私どもは,ナショナルチェーンですと,TSUTAYAとかGEOとかいうお店がありますが,そういったところを含めまして,CDレンタル店の100%,それからDVDレンタル店の90%が加盟する商業組合でございます。
 お配りいただきました資料4,「CDレンタルの許諾スキーム」のペーパーに沿って御説明させていただきたいと思います。まずCDレンタルの歴史を簡単に記載しております。CDレンタルといいますのは,後ほど申し上げますけれども,今現在,世界の中で唯一日本だけが合法的に許諾されている国であるということであります。
 1980年に初めて,当時大学生が始めたということで,アイデア商法とか言われましたけれども,全国各地に貸しレコード店が一斉に誕生いたしました。1年間で1,000店を超えるほどの勢いでございます。これはその前の年,1979年にソニーからウォークマンが発売されました。それに誘発されたと言っても過言ではございません。ウォークマンが発売されたことによりまして,音楽を聞くスタイルがインドアからアウトドアに移ったということで,ここで貸しレコードというビジネスが誕生したわけであります。これは当然著作権を侵害する,もしくは貸しレコードが出てきたおかげでレコードが売れなくなったというような批判を呼びまして,様々な著作権に関わる裁判ですとか,それから,国会におきましても一時,貸しレコードを規制する法案が審議されたりということがございました。
 そういう中で,私どもは,著作権を当然守りつつ,新しいビジネスとしての市民権を得るために,誕生してからすぐですが,当時通産省の御指導もありまして,日本レコードレンタル商業組合というものを発足し,何とか当事者意識を出そうということで活動してまいりました。
 そういうさなかに,1984年の5月に著作権法が改正されまして,貸与権というものが新設されました。それ以降,私どもはこの貸与権の許諾を得る対価として使用料を支払うと。一部には発売から一定期間レンタルを差し控えるという期間もございますが,あくまで貸与権という権利に基づく使用料の支払いということをしてまいりました。
 当初は,邦楽,これは著作権法の制度の問題もございまして,当時,洋楽につきましてはまだ保護の対象ではございませんで,1991年の著作権法改正によって,ようやく洋楽に係る実演家の権利等が発生するわけですけれども,それに先立ちまして,例えば1989年の日米構造協議ですとか,93年のGATT・ウルグアイ・ラウンド,それから96年のWIPO著作権条約等々におきまして,アメリカのレコード会社が何とか日本の貸しレコードというのを根絶やしにしたいということで禁止法案を出されたわけですけれども,これも当時,文化庁と当時の通産省の強力なバックアップで何とかしのいできたと。結果として,冒頭申し上げましたように,日本においてのみ今現在CDのレンタルが許諾されている状況になっております。
 そういった経緯を踏まえまして,1998年には,今度は,当時ビデオレンタルというものも,これはアメリカから逆にやってくるわけですけれども,それと一緒になる形で,日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合という現在の組合に改組し,今日に至っているということでございます。
 次のページをめくっていただきますと,CDレンタル店舗数の推移というものが書いてございまして,当然バブル期が一番のピークでございまして,6,000店を超える時期もございましたが,今現在は,CDレンタルで2,200店,DVDレンタルを含めても3,000店を切るような,そういう状況になっております。
 一方,下のグラフでございますけれども,組合に加盟しているお店の兼業率を書いてございます。これを御覧いただきますと,DVDレンタルとCDレンタルに加えまして,ブックレンタルというのは,コミックのレンタルですとか,それから,CDの新品の販売も半分以上のお店でやっておりますし,それから,書籍の販売,ゲームソフトの販売といったものを手がけておりまして,こういった兼業をすることで,いわゆる総合エンタメショップという色彩が非常に強くなってきております。
 右の次のページ,これは私どもから申し上げるまでもございませんが,先ほど来畑さんからも御説明いただきましたように,CDの売上げの推移とそれに配信がどう関わってきたかということでございますけれども,ここでことさらこのグラフについて申し上げるということでもありませんけれども,去年辺りからは大分地殻変動といいますか,CDの全体の販売状況というのは横ばいではございますけれども,内容が相当,複数枚の購入がかなり進んで,それによって支えられていることとか,それから,配信とパッケージの関係で,実は私どもも,きょう私はここに来て,なかなか余り威勢のいいことが言えないといいますのは,昨年からレンタルの売上げがかなり悪くなってきております。これは配信が昨年,特にストリーミングの配信サービスが出まして,無料お試し期間ということで,ユーザーが一旦向こうの方に行って,有料になった途端に,大分潮が引けたようになっているんですけれども,実は無料お試し期間に移ったユーザーが有料マーケットに戻ってこないという,この現象が半年ぐらい続いております。私ども,今,緊急に店頭調査ですとかインターネットの調査等で,その辺の構造変化があるのか,ないのかというところを真剣に今調査しているところでございますけれども,ひょっとすると,日本の音楽マーケットというのもかなり変わるかもしれないという,ちょっとそういう予感をしているところであります。ちょっと蛇足でございました。
 それで,次にCDレンタルの許諾スキームということで,これは一つは禁止措置ということで,レコードメーカーとの間で,邦楽のアルバムにつきましては,発売日から3週間のレンタルを禁止し,それ以降は著作権使用料をお支払いするという許諾スキームになっております。
 ただ,残念ながら,洋楽につきましては,海外の権利者の許諾というか,理解を得ることがなかなかできませんで,与えられた許諾権の1年間丸々をレンタル禁止という措置で,洋楽については残念ながら今もって発売日から1年間はレンタルができないという状況が続いております。
 最後のページになりますが,こういったものを踏まえまして,今現在,CDレンタル店が各権利者に対してどのような方法で使用料等をお支払いしているかということであります。これは日本音楽著作権協会,JASRACさんと,それから芸団協CPRAさん,日本レコード協会さんの三者に対しまして,一番下がCDレンタル店でありますが,それぞれ若干支払い方が違っておりますけれども,店舗の基本使用料,最低使用料を定めまして,あとは売上げに基づいてお支払いする。それから,一番右側,レコード会社さんには,レコード,CDを仕入れるごとに,1枚ごとに品代に上乗せして著作権使用料をお支払いすると。そういったことで,それぞれ3団体,ちょっと契約スキームが違うものですから,金額がちょっと違ってきますけれども,2014年で総額73億円の著作権使用料をお支払いしているといったところが現状であります。
 若干駆け足でございますが,以上,説明を終わらせていただきます。

【土肥主査】どうもありがとうございました。それでは,最後になりますけれども,著作権者への対価還元の現状につきまして,浅石委員と荒川様より御説明をいただきたいと思っております。まず浅石委員より御説明をお願いいたします。

【浅石委員】JASRACの浅石でございます。本日は,JASRACの利用許諾範囲の中で,音楽の録音の分野に限定して御説明をいたします。ストリーミングでも,こういうふうにやれば録音できますよというような部分についての説明は割愛しております。その後に,我が国におけるデジタル化,ネットワーク化の実態といいますか,そういったものをデータをもとに御説明をしたいと思います。
 表紙の下,右肩にページを振っております。2ページでございます。パッケージに対する利用許諾につきまして図式化をしております。レコード製作者の皆様とCDレンタル店の皆様に対する許諾の範囲を左側に記載しております。そして,絵の右下に「私的複製に該当」としている部分がJASRACの許諾の範囲外の私的複製に該当し,私的録音補償金の対象として,前年度に私的複製と整理されましたクラウドを含めまして記載しております。
 次のページで3ページでございます。ダウンロード配信におけるJASRACの許諾の範囲と私的複製に該当する部分を左と右に記載しております。さて,現在では配信の形態が,マルチデバイス対応とか,サブスクリプションモデルに変化しております。
 次のページでございます。去年7月3日の本小委員会の榊原委員の資料をお借りしておりますが,右に記載しておりますとおり,配信形態がマルチデバイス対応やサブスクリプションモデルに変化してきていることから,ダウンロード配信でありましても私的複製を必要としないサービスが主流になりつつあると書かせていただきました。ただ,マルチデバイスの出現によって全く私的複製ができないか等々につきましては,きょうの説明からは割愛をさせていただきます。
 では,次の5ページになります。今申し上げました配信とパッケージの比率でございます。前のページと同じ資料により作表しております。右端の2013年,少し古いですが,同じ資料を使いましたので,2013年を御覧ください。マルチデバイス対応,サブスクリプションへの移行としているいわゆる配信サービスは,10年かけましても全体の9.78%であります。それに対しまして,パッケージは80.14%であります。パッケージが70から80%台に上下している要因は,いわゆる着メロ,着うたという,携帯端末への着信音源の増減によります。
 では,その下の6ページを御覧ください。売上げベースで世界に目を向けて見たらどうなるかということでございます。2014年の「世界音楽売上トップ20」でございます。昨年9月にこのデータをもとに,海外の一部事業者から,日本は1人当たりインターネット端末を平均2.4台所有し,スマートフォンの普及率も半数を超えるモバイルファーストな国である,一方音楽市場に占めるデジタル音楽の比率は17%にとどまっており,71%の米国や45%の英国などと比べると大きく遅れていると語ったという報道が9月4日にありました。
 確かにアメリカと我が国のデジタル音楽の比率,ここでいいますと,パッケージと有料音楽配信の売上げの比率は71対17とまるで作ったかのような数字になっておりますが,全世界の売上げの74.2%を占めるベスト5では,御覧のとおり,パッケージの売上げが,2位の日本が78,3位のドイツが70,4位のイギリスは41,5位のフランスでは57となっておりまして,我が国は決してデジタル音楽の遅れた国ではなく,ベスト5においてはアメリカの方が異質な国であるということも言えるかと思います。ベスト5の中で補償金がある国は,1位のアメリカ,2位の日本,3位のドイツ,4位のイギリスは無償で私的複製を認めようとして認められなかった国であり,5位のフランスにも制度はございます。
 この中で,パッケージ売上げが50%を超えている国を網掛けで表示してあります。次の7ページでございます。パッケージ売上げ50%以上の国の特徴として,全て補償金制度がある国だということであります。さて、各国の状況というものは,エンドユーザーの方々が何を望んでいるかにより,その国のパッケージとデジタルのベストミックスが決まっているのではないかと思います。このように,我が国だけではなく,各国の状況を見てまいりますと,デジタル時代の著作権とか,デジタル化ネットワーク時代の著作権とか言われておりますが,実態として,CDもデジタルと言えばデジタルでございますけれども,配信が全体の9.78%という現実,そして,8割がパッケージだという我が国の現実を認識した上で今後の検討をお願いをしたいと思っております。
 さて,結論でございます。下のページ,8ページでございます。配信全盛の時代であるかのように言われておりますが,我が国の音楽市場の主流はCD等のパッケージでございます。この現実を直視すれば,依然としてユーザーの私的複製は続くものであると申し上げまして,私の発言を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,続きまして,荒川様より御説明をお願いいたします。

【JRC(荒川氏)】改めまして荒川と申します。よろしくお願いいたします。クリエーターへの適切な対価還元についてということでお声がけいただきまして,私ども,著作権管理事業者として,JASRACさんと同様な事業というものをこれまで展開してきております。ただ,ちょっと耳なじみのない方もまだいらっしゃるかもしれませんし,この後御説明させていただきますが,私どもの環境が大きく変化しますので,それについてまず冒頭御説明させていただきたいと思います。
 最初のページですけれども,ジャパン・ライツ・クリアランス,設立が2000年になります。2001年に施行されました著作権等管理事業法に基づきまして,民間の登録事業者としてこれまで事業を運営してまいりました。
 下に図示されておりますのが,録音権,放送・有線放送,インタラクティブ配信,ここがハイライトされておりますが,一口に音楽著作権と言いましても,様々な利用形態,支分権という言い方もしますが,そういったところで管理の仕方が分かれているというところで,今,我々はこのハイライトされているところに関する管理を行っております。違う言い方をいたしますと,この白抜きになっている部分というのは,同じ作品であっても,ほとんどの場合,JASRACさんに管理が信託されているというような形で音楽著作権の管理というものがこの十数年行われてきているということになります。
 私どもが管理させていただいている作品というのは,作品名というよりもアーティスト名で申し上げた方がクリエーターという観点からもいいかもしれませんので,例えば坂本龍一さんであったり,ラルク・アン・シエルというロックバンド,それから浜田省吾さん,スピッツというような,多くの場合,自分で曲,詞をつくり,自分で演奏するというようなタイプ。違う言い方をしますと,音楽の制作プロダクションであったり先ほど挙げたアーティストのマネジメントオフィス等が中心になって作られた会社が私どもジャパン・ライツ・クリアランスでございます。
 次のページですが,もう一方,株式会社イーライセンスという名前が出てきております。これも実は設立は2000年,全く同じ時期から民間の事業者として管理事業を行っております。先ほどジャパン・ライツ・クリアランス,私どもの会社はプロダクションが中心にというふうに申し上げましたが,株主に関しても,当初,音楽プロダクションが中心になって出資をして作った会社でした。そこに対して株式会社イーライセンスというのは,広告代理店であったりとか,商社であったりとか,そういうどちらかというと音楽コンテンツ産業とは違うところからのお金というものも積極的に導入をしながら,新しい管理事業者像を切り開こうという形でやってきております。
 下にハイライトされているところは,先ほどのJRC,ジャパン・ライツ・クリアランスとはまた違うことにはなっておりますが,それでも中心的にはこの2番の録音権,それからインタラクティブ配信という,ここの管理が主となっております。それ以外でも管理の体裁としては整ってはいるものの,まだ管理の実績というのはこれから作っていくんだというような,そういうアーリーステージにある支分権,利用形態というものもここには図示されております。
 先ほどアーティスト名ということで申し上げましたが,イーライセンスの方で管理されているものとしては,例えばアーティストとしては,SEKAI NO OWARIであったりとか,ゴールデンボンバーというバンドですね。それから,それ以外に非常に特徴的なのは,ゲーム音楽とか,例えば妖怪ウオッチの一連の音楽とか,そういうものも,録音,それからインタラクティブ配信というところで使われた場合はイーライセンスが管理をするというような形で,民間の事業者としては大きくこの2社が今まで十数年事業を進めてまいりました。
 次のページですが,実は2016年2月1日ということで,気づいてみれば来週の月曜日なんですけれども,この2社が合併し,事業統合をし,新しく株式会社NexToneという会社を設立して,新生スタートを切るということになっております。これは年末から幾つか報道していただいたりしているので,お聞き及びの方もいらっしゃるかもしれません。ということで,実は本日は,ジャパン・ライツ・クリアランスの代表者としてここにお招きいただいたわけなんですけれども,ジャパン・ライツ・クリアランスという名前は,実際は本日でほぼ最後という,激動のこの時期に貴重な場面にお呼びいただいたというようなことでございます。
 NexToneというのは,新たな株主構成,それから新たな役員構成をもってして,この音楽著作権管理を継続していくということを考えております。
 実際私は代表取締役,COOということで,実際のオペレーションの現場についての責任者という形で,もう1人,阿南雅浩というCEOがおりますが,エイベックス・ミュージック・パブリッシングという,今回のNexToneの最大株主のいわゆるエイベックスグループの中における音楽出版事業をやっている会社の代表者でもある阿南がこのNexToneのCEOを務めるというような形になっております。以後,お見知りおきをということで是非よろしくお願いいたします。
 最後に,この2社が統合をして,2月1日からどういうふうに事業を運営されていくのかということで次のページになるわけなんですけれども,原則としましては,管理事業者としては一法人の中に一つの使用料規程,一つの約款ということが本来的なものだと思います。ただし,イーライセンス,JRCとも十数年にわたって事業を展開してきたということもありまして,文化庁さんの方にも御相談を差し上げながら,当面の間,具体的には2017年の3月いっぱいまでということになりますが,従来のイーライセンスの事業,それから,従来のJRCの事業というものを,2事業本部制という形を立てて,同時並行で,一法人の中ではありますが,もちろん会計も全部分けた上で運営をしていくと。その上で,使用料規程,約款等々の一本化を図って,2017年4月に完全統合を図るという形で進めていきたいと考えております。
 本日の主題にようやく入るわけなんですけれども,著作権課の皆様から今回お声がけいただいたときに,幾つかディスカッションさせていただいた中で,例えばJRCが持っているダウンロードの使用料規程の中において,著作権使用料率が利用のされ方によって若干高い,低い・・・著作物の転送が自由にできたり複製が自由にできるものについては,著作権使用料の対価も高い一方,そこにある一定の制限をかけているものについては,その状況よりも安い使用料率が設定というのが生じているという点について,これはいわゆるプライシングインされているのではないかという御質問が一部出ているというふうなこともお聞きしました。
 これに関しましては,私的複製の補償などを念頭に置いて設定されたものではありません。むしろ位置づけ,考え方としては,逆かもしれません。DRMをかける,要は,何らかの転送もしくは複製に対して制限をかけるというのは,配信事業者にとっては何らかの付加的な措置が必要ということがあります。当然,そういう措置をしないで配信する方がコスト的には,配信事業者という単体の目から見れば楽だし,コストもかからないはずであるにもかかわらず,ある一定の制限をかけるというようなことをやってくださっているところに対してのある種の控除的な意味合いということで,安くなってきているということで,自由度が高いものに対してプライシングインしているという考え方ではないということはここで御説明差し上げたいと思います。
 そして,最後のページになりますけれども,今後の私的複製に関する考え方というところでいきますと,原理原則といたしまして,もちろん今後も対価還元について,確実な対応,措置が必要であろうと考えております。
 一方で,残念ながら現行の制度については形骸化してしまっているということは否めないというふうにも認識しており,それに代わる何らかの対応策,もしくはそれを強化するのか,全く別の視点で語るのかというところは,私はそこまで深く語る者ではないというふうな認識をしておるわけなんですが,皆様に是非対応策を考えていただきたいと思っておるわけです。
 音楽聴取方法は,所有から利用へと変化しつつあります。そういう流れが今後も加速していくということは間違いないだろうと思われます。先ほど浅石委員の方から御説明がありましたとおり,とはいえ,日本においてはまだまだパッケージ市場というのは非常に大きいことも事実です。そのような現状にありながらも,パッケージ市場が大きくても小さくても,何らか対価の還元に対する措置というものが必要だろうということは言うに及ばないというふうにも思っております。
 今後どのようなサービスや音楽聴取方法の変化が起こるかというものも,正直,予測することが難しい。そのぐらいスピード感がある変貌を遂げてきているというところで,こういう仮定を立てるのはふさわしくないかもしれませんが,再び何らかの形で私的複製が主流になるような,そういうサービスが出てきて市場を席巻するという可能性ですらぬぐい切れないというところに立った上で,時代に即した制度設計に向けた前向きな議論というものを期待させていただきたい。ということで,私からの発表に代えさせていただきます。どうもありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,これから質疑応答と意見交換に入りたいと思っております。非常に良い機会でございますので,是非様々な観点からの御質問,御意見をちょうだいしたいと思っております。どうぞ御自由にお願いいたします。小寺委員,お願いします。

【小寺委員】レコチョクのサービスについてお伺いしたいんですが,レコチョクというサービスは,もともとはそもそもはレコード会社さんが共同出資されて作られた会社なので,ほかの配信事業者さんとは若干カラーが違うのかなと思うんですけれども,御説明いただいた資料の中での契約形態というのは,レコチョクさん以外のところも変わらないということでよろしいでしょうか。

【レコチョク(山﨑氏)】どこまで変わらないかですけれども,この業務委託契約と原盤使用許諾契約がそれぞれあるという認識でおります。

【土肥主査】よろしいですか。ほかにございませんか。榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】発表ありがとうございました。非常に分かりやすかったです。全員の方に可能であれば答えていただきたいんですけれども,プライスインをしていない,私的複製の部分の対価分は取っていないというようなコメントをなさった方が多いと。CDレンタルの方以外はたしかおっしゃったように思うんですけれども,主観的にそのように思われているということは分かるんですけれども,じゃあ,客観的に対価を含めることはできないんですかというのがまず質問1点目です。
 もしできないということであれば,その理由は何ですかというのが二つ目。補償金制度があるからという理由以外で何か理由がありませんかということが二つ目の質問の意図になります。
 2点お願いいたします。

【土肥主査】それでは,きょうお出でいただいた3方全員にということでよろしいですか。それじゃ,順番にお願いいたします。山﨑様からどうぞお願いいたします。

【レコチョク(山﨑氏)】私どもの方でやらさせていただいているアラカルトダウンロードにつきましては,過去からの経緯でお話ししますと,1課金につき1ダウンロードという時代があり,その後,DRMを外して,それでマルチデバイスというふうに,時代を追うごとにどんどんお客様への利便性を広げるというか,そのような形で進めてきたんですが,過去1課金につき1ダウンロードという時代から現在に至るまでの価格変移を申し上げますと,過去の方は1曲300円,350円という時代があり,今や200円から250円になっています。サービスの利便性が上がりながら楽曲の対価は下がっていくというような形になっておりまして,私的複製も含めたものがこの価格に含まれていますよということであると,本来であれば値段が多少その分上乗せされているとかいう考え方があるのかなと思いますが,私どもの方ではそういう考え方がなく,むしろ,提供価格が下がった中でいろいろな使い方になっているので,プライスインという考え方はないですというのが私どもの理解になっております。
 それに,じゃあ,プライスインという考え方を持ち込んで今後やることはできるのか否かということになりますと,もちろんできなくはないと思いますが,物理的にというか,考え方としてそういう考え方であるということになれば,価格設定の見直しということはできなくはないと思いますけれども,まずもってアラカルトダウンロード,私どもの方でいうレコード会社さんとの契約の中においての主流の契約形態である業務委託契約においては,レコード会社さん側がどのような考え方で小売価格を決めていくのかというところに大きく左右される部分がありまして,必ずしも事業者側の考え方で一義的に決められるものものではないのが実態であるというふうにお伝えをしたいと思います。
 もちろん先ほど御質問ありましたとおり,全ての事業者さんが,レコード会社さんである権利者さんが小売価格を決めてダウンロードしているわけでもありません。中にはいわゆるライセンス契約,ここでいう原盤使用許諾契約のもと配信をされている事業者さんがいらっしゃると思いますので,そういった方々は御自身で価格を決めることができるのかもしれませんが,やはり実態としては,権利者さんとのいろいろな取組の中であるべき適正価格というのを多分見られていると思いますので,いずれの場合にしても,すぐさまプライスの中に私的複製の対価分を乗せましょうというようなお話になるかどうかは何とも言えないと思います。よろしいでしょうか。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,続いて若松様,お願いします。

【CDVJ(若松氏)】CDレンタルといいますのは,CDを借りていった人がコピーして楽しむということを前提にビジネスが成り立っていると言っても過言ではございませんので,CDレンタルは正に私的録音の問題と非常に直結する,非常にデリケートな問題だと認識しております。
 プライスインしているかといえば,しておりません。1980年に貸しレコードが始まってかれこれ35年,この私的録音という問題は常につきまとって,常に議論されてきておりますが,先ほど説明いたしましたように,私どもは,貸与権というものが創設されまして,それに伴う使用料というものをこれまで払ってまいりました。その使用料を幾らにするかという議論が1984年,5年辺りにあったわけですけれども,そのときに一つの参考として,私どもが,レンタルが,例えばJASRACさんにお支払いする使用料をどう設定するかという議論がございました。このときに,確かにレコードを借りていった人が録音するということが念頭にございましたので,当時の例えばレコード会社がJASRACに支払う録音使用料というものを参考にいたしまして,それで1回の貸出しの都度,お支払いする金額を決めたという,そういう経緯はございます。
 そういう意味では,私的録音と非常に関わりは持ちますが,私どもはあくまで貸与権というものに基づいて,許諾の対価として使用料をお支払いしてきた。そのことと借りていったお客様が正に私的複製の範囲で利用されるということについては,30条の問題だということで,この問題,私どもは,したがって,この議論から逃れるつもりは全くございませんけれども,そういう意味では常に議論していくことだろうと。
 ただ,最近思いますのは,何ていいましょうか,今,私どももいろいろ調査をしているんですけれども,恐らくCDレンタルを除きますと,私的録音というのはどんどん減っているという実感が非常に強うございまして,先ほどのストリーミングサービスといいますのも,どちらかというと,聞き流すという,録音をせずに聞くというスタイルがどんどん増えているように思いますし,それから,私ども,今,ちょうど調査中なんですけれども,CDラジカセが下手するとどんどんなくなっていくのではないかと思っておりまして,実はユーザーのCDラジカセの所持率とか,そういうものも,ちょっと間に合わなくて,この1週間ぐらいで結果が出てくるので,本当は間に合えばよかったんですけれども,要するに,CDラジカセが本当にどんどん減っていっているということを見ますと,CDを借りていった人を除きますと,私的録音する機会というのが本当に減っているのかもしれないなと。そうすると,ますます私的録音の問題がレンタルに集中しそうな気がしてしょうがないんですけれども,ただ,何度も繰り返しますけれども,私的録音問題というのは,やはりレンタルと非常に密接な関係がございますので,この問題については,私どもも議論から逃れるつもりはございませんし,引き続き議論はしていきたいというふうに,すいません,余りめり張りがないんですけれども,今はそういった考えであります。

【土肥主査】ありがとうございます。それでは,荒川様,お願いします。

【JRC(荒川氏)】まず先に,現状,私どもの管理している録音権に係る私的録音の補償に関する分配がなされているのかということについて,簡単に御説明させていただきます。
 皆さん,もう既に御存じのとおり,いわゆる私的録音の補償金に関しましては,JASRACが指定団体という形になっておりますので,私どもは,JASRACさんの「締めの時期」に合わせまして,半期ごとにJASRACさんの方から御連絡をちょうだいし,この期間における私どものJRCが管理している録音権に関連して私的複製の補償金の対象になる実態についてJASRACさんにレポートをしております。その上で,JASRACの方でそれを精査していただいて,結果,JASRACから私どもにその補償金をちょうだいし,それを我々の権利者に対して分配をするというようなことをやっております。これは厳密に言いますと,JASRACがやる分配業務に関して,JRCへの権利委任者に対してのその分配業務を委任されるというような契約でもって運用されているということを最初に御説明させていただきます。
 その上で,先ほどの榊原委員からの御質問に対してですが,プライシングインが制度として,又は徴収の方法としてできるのか,できないのかということに関してですが,システム的にはもちろんできます。ただし,まず第1点として,私どもの著作権管理事業者というのは,例えばレコードであれば,レコード会社さんが定めた価格で販売されるものに対して,6%という使用料率を乗じて,それを著作権の使用料という形で徴収をさせていただいております。この6%,もしくはダウンロードだったら何%と,それぞれの利用形態において条件があるわけなんですが,それについて定めるのは,私どもが一方的に決めるわけではなくて,例えばレコードであれば,レコード協会さんなどのような利用者代表団体と話し合いをした上でその数字を決めていくわけですね。そうすると,まずそういうふうになっているところで,料率を勝手に上乗せするということはまずできないよねということは一つあります。
 それからもう一つ,先ほど山﨑さんからのお話にもありましたけれども,仮に,じゃあ,レコチョクとして何%分を乗せるために価格を10円上げましたというふうになると,例えば現行,仮に1曲200円で配信されているものについて,210円で配信されると。そこに対しての我々の料率というものを,そこにさらにプライシングインするということに関しての是非というか,それについては慎重に考える必要は一方であるのかなと思います。
 そして最後に,システムとしてはできますよというふうに申し上げましたけれども,これは,利用者と権利者の双方が理解をした一定のルールがあって,全体のコンセンサスがあるもとに成立した制度で,こういう形で上乗せしましょうということであればできるということを条件的に付加させていただければと思っている次第です。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。畑委員,それから浅石委員,榊原委員の御質問に関して,プライシングインの質問に関しまして,何かこの時点でおっしゃることがあれば,おっしゃっていただければと思います。じゃあ,畑委員,もしあればどうぞお願いします。

【畑委員】榊原委員の御質問,2点あったかと思います。プライシングインしていないということは分かったけれども,客観的に見てどうなんだろうということ。これはなかなか客観的に見てどうかというのは我々側から見えにくいことでございますので,そこについては回答は差し控えたいと思いますが,では,今後,プライスインということで私的複製の対価を上乗せして音楽を販売することは可能かどうかということにつきましては,これはレコード会社,レコード協会としてそこを検討したことは今まで全くありませんので,団体としてどうかという意見は申し上げられないわけでございますけれども,私の私見ということで申し上げさせていただきますと,形として可能であってもなかなか運用が難しかろうと思うんですね。例えばCDを買って,そのCDを必ずあまねく皆さん全員が複製するわけではない。当然複製しないでそのままCDは聞くだけという使い方も多くの場合はあるわけです。複製するとしても,では,一体何個複製するんですかということも人によって違うということを考えた場合,リテールポイントでどうやって対価を上乗せするかということについては,形としては可能なように見えますけれども,実際の運用としては非常に難しくなるのではないかなと思います。
 例えば私的録音の対価の乗っているCD,乗っていないCDみたいなものを販売分けするとしますと,非常にセールスが複雑になりますし,また,それを運用するコストもかかってきますので,それが果たして適切かどうか。また,一律で複製の対価を乗せるとしますと,複製をしない人には不公平感が出るのではないかとか,そういったことを個人的には考えます。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。浅石委員,ございますか。

【浅石委員】法律上の問題を除いてというお話でありますが,仮に料率を乗せるということであれば,私どもは指定管理事業者として利用者の大多数を占める方々とお話をして決めなければならないという部分がございます。そのときに,一般ユーザーの方たちとどういうふうにお話をするのかというようなところも,これも著作権等管理事業法という法律の問題ですけれども,出てくるのかなと。
 それから,直接課金のような形がよろしいのか,それとも補償金のように,ある意味アバウトな形で頂いた方がいいのかというような,そういう検討というようなものがされた上で,どうしましょうかという議論になっていくのではないかなというふうに思っております。そういう面から,JASRACは,プライスインをしてもいませんし,そういうものをするような方向性で考えているということもございません。
 以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかに。じゃあ,小寺委員,お願いします。

【小寺委員】プライシングインという用語に関して確認をしたいんですけれども,前回の委員会で,奥邨先生でしたっけね。プライシングインというのは,事業者が私的複製に対しての対価が含まれているかどうかということの有無ではなく,経済原理として客観的に含まれていると見なされるということがプライシングインであるという御説明があったような気がするんですが,ちょっとその辺りをもう一度解説をいただければと思うんですが。

【奥邨委員】私が答えるということですよね。

【土肥主査】そういう御質問ですから,お願いします。

【奥邨委員】私としては,そう断言したわけではなくて,そういう考え方なのかどうか,経済学的な方から聞いた方がいいのではないかということを申し上げたと思います。ヨーロッパの方では経済学の分析としてプライスインという言葉が使われているので,単に主観的な問題として議論するだけでいいのかどうかは整理しないといけないですねと。ここでは主観的な問題として当時議論されていたと思いますので。という御指摘を私はさせていただいたつもりで,私自身は経済学的なことは分かりませんので,どちらが正しいかとか,どの程度考慮すべきかということまではちょっとコメントできないなと思って,当日は発言しました。

【土肥主査】ということなんですけれども,よろしいですか。

【小寺委員】ということは,プライシングインという定義に関しては,やはり何らかの形で経済学の方に御解説をいただく機会があった方が混乱がないんじゃないでしょうか。

【土肥主査】その点については,前回においても意見ございましたので,しかるべき時期が来たときに事務局と相談しながら決めさせていただければなと思っております。その辺り,お任せいただければと思います。
 ほかにございますか。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】レコチョクの山﨑様にお尋ねしたいと思います。前の方の質問の理解が違っていますと,後ろの方で言っていることが全然間違ったことになるので,順番にお尋ねさせていただきたいと思うんですけれどもよろしいですか。まず資料の中にありましたマルチデバイスダウンロードなんですけれども,これ,現実,ユーザーさんはかなり利用されているという御認識なんでしょうか。言い換えますと,複数の端末をお持ちのユーザーさんというのは,さっきおっしゃったようにメモリーカードでコピーするとか,線をつないでコピーするとかいうことではなしに,マルチデバイスダウンロードを使っておられるといような御理解でしょうか。その辺は,サービス提供されている方としてはどう思われているんでしょうか。

【レコチョク(山﨑氏)】きちんと利用実態を事細かに把握をしてはおりませんが,概略としてというところで見ている中では,多くの方は,端末の買い換えというときに,マルチデバイスでの再ダウンロードというのを御利用いただく機会が一番多いと思います。先ほどどなたでしたっけ,スマートフォンなどの端末の保有が2.何台というお話があったように,もちろん現在でも複数使いをしている方がダウンロードするということはあるんですけれども,やはり端末の買い換えによって台数が増えていくということが,一番お客様にとってはわかりやすく,この利用をしていただけていることがあるなと思います。
 また,もう1個,スマートフォンとパソコンですね,ということもあると思いますので,せいぜい同時期には2から3台ぐらいが一番で,主流はもちろん1ダウンロードという方がほとんどなんですけれども,今のような範囲での使われ方をされている方がいらっしゃいます。
 また,今もう既に10台でおなかいっぱいですというような方はほとんどいないというような現実なので,正に先ほど御説明したことの繰り返しになりますが,CDは1回買えば,ずっと一生,プレーヤーさえあればそのCDで聞いていけるのに,ダウンロードという商品は,せっかく自分のものとして,先ほど利用と所有とありましたけれども,所有物となったはずなのに,使い勝手が悪いというか,その先何もできないんじゃ,こんなに対価を払う必要,何であるのというようなことを言われがちだったので,将来も多少余裕を持ってということで,10台という設定をさせていただいております。

【奥邨委員】ありがとうございます。私は余り音楽は聞かないので・・・音楽ビジネスの方を前に言うのは申し訳ないですが・・・,電子書籍なんかはたくさん使っております。電子書籍の場合,正に同じような形で,マルチデバイス,ノートパソコンと家のパソコンとタブレットとスマホと,4,5台で同じ電子書籍読んで,そういう使い方をしておるものですから,音楽が同じなのかどうかということでお伺いしたんですけれども,基本的には同じなのかなと。

【レコチョク(山﨑氏)】同じです。

【奥邨委員】そういう意味では,重要なサービスの一環ということになっているのかなと,御社のサービスのメニューの中では。

【レコチョク(山﨑氏)】はい。

【奥邨委員】そうだとしますと,御社が販売価格を設定される際に,そういう仕組みを利用するということは基本的には織り込み済みということで,250円ですとか300円という値段は設定されているということで,理解としてはよろしいんでしょうか。

【レコチョク(山﨑氏)】そうですね。

【奥邨委員】分かりました。それに関係して,浅石委員の方に今度はお伺いしたいんですけれども,先ほど資料の何番ですかね,スライドの3ページ目のところで,今の関係なんですが,正にレコチョクさんのような音楽配信事業者さんに利用許諾する部分ですけれども,許諾の範囲は,事業者に係る複製権,公衆送信権で,エンドユーザーの端末に係る複製権とされているわけですけれども,このエンドユーザーの端末に係る複製権の部分は,先ほど御紹介のあったマルチデバイスダウンロードも入っての設定ということで考えてよろしいんでしょうか。

【浅石委員】はい。

【奥邨委員】そうしますと,議論としては,端末間の部分は価格には入っていないけれども,事業者さんからユーザーの端末に降ってくる部分の私的な複製の部分は現状は価格に入っていると,そういう理解でよろしいんでしょうか。

【レコチョク(山﨑氏)】価格に入っているという言い方をするかどうかなんですけれども,それは,サービス,1課金という流れの中で許されている利用方法ですね。

【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。以上です。

【土肥主査】じゃあ,小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】今のやりとりの中で気になったところがあって,事業者さんからユーザーさんの端末へダウンロードする,そこの部分は私的複製じゃないんですよね。

【レコチョク(山﨑氏)】そうなんですかね。ちょっとすいません,僕,法律的にというか,細かいところが正しく理解できていないかもしれませんけれども,購入をするということに付随するサービスの範囲ですね。

【小寺委員】購入して利用するところまでが価格に入っているとしたら,事業者さんから端末にダウンロードするところも,事業者さんとの契約の中に入っているのでは。

【レコチョク(山﨑氏)】我々事業者としてのサービスの範囲。

【小寺委員】契約に入っているので,そこは私的複製じゃないんですよね。

【レコチョク(山﨑氏)】じゃないんじゃないかなと思います。ごめんなさい,法の理解が。私的複製って,本当に御自身が自由にする範囲だと考えると,個人,そこから先はどうぞ御自由にというのは,ダウンロードした後のデータは我々関与するところではないんですが,我々のサーバーから10台までの端末にダウンロードするという行為については,私どものサービスなり,私どもがある種責任を持ってお金を支払っていただければそこまでやりますよというような責任区分なので,それを私的という解釈にするかどうかは,ちょっと違うんじゃないかなという気がします。

【小寺委員】ありがとうございました。

【土肥主査】じゃあ,畑委員,どうぞ。

【畑委員】その件に関してちょっと補足させていただきます。レコード会社も非常に配信事業者さんとは密接な関係にありますので。先ほど山﨑さんの方から御説明された,事業者のサーバーからレコチョクさんの場合ですと10台までのデバイスにダウンロードできると。それはサービスの範囲内であって,これはJASRACさん等含め,レコード会社もそこは織り込み済みで許諾の範囲内ということです。そこは私的複製ではないと。ダウンロードした端末から別のデバイスに例えば有線,無線で複製,横で複製する,あるいはメディアに複製するというところからが私的複製に当たると,そういう理解でございます。

【土肥主査】よろしいですね。じゃあ,河村委員,どうぞ。

【河村委員】今のやりとりで納得できましたが,確認のために質問させてください。畑委員の資料1のスライド番号の1のところですが,パッケージについてはCDの絵が付いているんですが,2番目のダウンロード型というところには音符の絵が付いていて,この音符の絵は何を意味しているのかなというのが明確でないなと感じました。何か音楽という抽象的なものみたいで,その後,機器に複製されていくような図になっているんですが,先ほどのお答えをもう一度確認させていただくと,ダウンロード型の場合は,マルチデバイスであれば,そういうサービスであるということが分かって契約なさっているわけですから,この音符のところにマルチデバイスの個数分のデバイスがあって,そこから先に更に機器に複製する場合だけ,横の青い枠内に行き私的複製であるということでよろしいんですよね。

【畑委員】はい,そのとおりです。この音符の絵はダウンロードしてユーザーのデバイスに残る音楽ファイルを意味して書いているんですけれども,先ほどのマルチデバイスということで言えば,書くとすれば,これが10個まで縦に並ぶことができると。そこから先のブルーのベース(下地)が入っているところが私的複製になるということです。

【河村委員】ありがとうございます。

【土肥主査】ほかにはいかがでしょうか。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】浅石委員に教えていただきたいんですが,4ページ目の資料の中で,下の方に「広告料モデルの台頭」というふうな赤字があるんですけれども,ここでおっしゃっておられる広告料モデルというのは,結局,事業者はユーザーからは利用料をもらわない代わりに広告主から広告料をもらうというパターンかと思いますが,その場合,それは適法な事業者さんということか,何ていうんですかね,ちょっと言葉が良くないかもしれませんが,違法な事業者さん,無断でやっている方と,その辺,両方込み込みでということでここはお書きなんですか。

【浅石委員】いえ,ここは全部適法というふうに御覧いただければと思います。ですから,違法かどうかの議論はありますけれども,こういうものを使えばストリーミングでも録音できますよというところについては,全部外して今お話をしていると御理解いただければと思っております。

【奥邨委員】そうしますと,広告料モデルの適法な事業者さんに対して,JASRACさんをはじめ,権利者さんは,そういう広告料モデルで流すということで許諾を与えているということになろうかと思うんですが,そうすると,広告料モデルの事業者さんというのは,結局,音楽を配信する対価をユーザーさんからではなくて広告主からもらっているということになるわけですから,その広告料モデルの事業者さんの売上げというのも,広い意味でいうと有料音楽配信の売上げに入るべきではないかなと。ただで音楽配っているわけではないわけですから,ビジネスですので。浅石委員の資料の,2013年の数字とか,それから例えば4ページのグラフですとか,それから,6ページの有料音楽配信売上金額とかのところに入っていないんじゃないかなと思うんですけれども,どうでしょうか。広い意味ではそういう人たちもそれでビジネスをして,それが更に権利者さんにも還元されているわけですので,それってどれぐらいの規模があるんですかね,現状の中で。

【浅石委員】売上げとしてはこれだけです。ここに書いてあるパーセンテージ。要するに,実際に音として売買した価格としてということですね。

【奥邨委員】それはユーザーさんからお金をもらうという意味の売上げですよね。

【浅石委員】そうです。

【奥邨委員】でも,広告主からお金をもらうのも広い意味では売上げですね。

【浅石委員】そうですね。

【奥邨委員】それも入っているんですか。

【浅石委員】はい。

【奥邨委員】入っているんですか。分かりました。

【土肥主査】畑委員,どうぞ。

【畑委員】広告収入モデルの売上げが入っているかというのは,資料1の後ろの2ページ目のところで,デジタル配信の金額を載せておりますけれども,この金額の中に,特にストリーミングについては,広告収入型モデルもございますので,ここの部分に広告収入型モデルの売上げは入っているというふうに見ていただければと思います。

【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。

【土肥主査】ほかにはいかがでございましょうか。小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】ちょっと感想のようなことを言わせていただきたいんですけれども,皆さんが御提出された資料って,今の時点ではどうしても2013年までとか2014年までということになってしまいます。2015年の統計資料というのは,今,2016年1月末の段階ではまずまだまとまらないであろうということで非常に残念に思っています。
 その理由は,2015年にストリーミングサービスが日本で五つも始まっているわけですね。ですから,2015年以降から何か変わる可能性というのがあるわけです。今現状ある資料では,まだそこが読み取れていなくて,若松様がおっしゃっているように,今いろいろ調査をされていて,それがどのように音楽の利用に社会的な現象として影響が出てくるのかというのは,もう少し実は見ないと分からないのかなという気がいたします。
 それで,JASRACさんの資料で大変興味深いものがあって,6ページの表なんですけれども,ここで逆に配信が強いところというところに注目をして見ると,人口が多いアメリカであるとか,中国,インドなどがあります。それから,どうしても日本は文化的にアメリカのライフスタイルの影響を非常に受けやすいので,アメリカ型へ今後シフトする可能性というのはあり得るのかなと。
 それともう一つは,北欧圏で配信ストリーミングサービスが強いのは,やはりSpotifyという強力なサービサーが出てきたからというところはあり,要するに,強い配信事業者が出てきたら,そちらへ傾く可能性というのはどうしてもぬぐえないのかなと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。浅石委員。

【浅石委員】物事,みんな感想でお話しになっております。あるデータはこれしかございません。それをどう読み解くかということだと思います。ですから,どうなるかという部分についても,これは,この人はこう思う,この人はこう思うということだとは思いますけれども,実態として,アメリカと日本,ドイツ,フランスというような,そういう国との現状の売上シェアというものは全く違う状況にある。ですから,アメリカの事業者が音楽のデジタルについて日本は非常に遅れているという言い方をしたということを申しましたけれども,それはアメリカで考えればそうでしょうが,日本,ドイツ,フランスで考えれば,そういうことではない。それはエンドユーザー,消費者の方たちの消費行動によるので,ここでこうだ,ああだというような部分というものについての将来見通しという部分については,はっきり言って言ってもしょうがないんじゃないのかと。現状どうなのかというようなところは,やはり数字としてあるので,そこをしっかり押さえていただく必要があるのではないかなと思います。

【土肥主査】現状を踏まえながら,可能な範囲で将来的な動向についても頭に置きたいと思っております。時間もだんだん迫ってきたんですけれども,せっかくの機会でございますので,きょうお出でいただいた山﨑様,若松様,荒川様,お三方にもし御意見があれば,お聞かせいただきたいんですけれども,補償金制度が機能不全を起こしているということは,本日何度も御発言があったとは思います。この制度を踏まえながら,今後検討を進めていくのがいいのか,あるいは,この制度をどう見直した方がいいのか,あるいは,全く別のアプローチで考えた方がいいのか,あるいは,先ほどから出てきておりましたプライシングインですかね,そういうものを客観的に実際に上乗せするのがいいのか,そういうクリエーターに対する適切な対価還元についてもし御意見がございましたら,お三方から御意見を聞かせていただければありがたいんですけれども,いかがでございましょうか。山﨑様からいかがですか。

【レコチョク(山﨑氏)】そういう質問が出るとは思わなかったので,全く考えておりませんでしたが,私見として,この制度がいいとか悪いとかというところまで,私,言及するほどの,まだ勉強不足なところもありますので,今後の音楽という意味で考えますと,何しろCDのみならず,音楽配信というのは,この時代の流れに伴って,音楽の新しい届け方が出てきて,音楽配信であっても,ダウンロードだとか,ストリーミングだとか,いろいろな形態でお客様に届けられるようになってきた。とはいえ,音楽全体のいわゆる売上高というか,業界全体のパイがまだ下落傾向というのがなかなか止められていない状況においては,いかに音楽を楽しんでもらえるか。しかも正当な対価を発生させられるような,お客様ができればという言い方が正しいかどうか分からないですけれども,お客様がきちんとした対価をお支払いいただきながら,一部無料とかあってもいいと思うんですけれども,無料でどんどん音楽が聞けるという世界が正しい姿というふうに私は余り考えておりませんで,そうやって音楽をいろいろ聞いて知っていくチャンスというのがなければ発展はしていかないと思いますけれども,自分の好きな音楽を聞いていく。その聞く過程において,権利者さんにちゃんとした対価が支払われていく。結果としてはマーケット全体が広がっていくというようなこと見定めていく中で,お客様が音楽をもっと楽しみたいといったときに,権利者さんへの対価の支払い方,それから発生のさせ方というのを,どうあるべきかというふうな順番感で議論をしていかないといけないかなと思っております。
 我々も,お客様が自由にコピーしてしまって,もう全然音楽なんて買わなくていいですよというふうになってしまえば,我々事業者としても打撃がありますし,ちゃんとアーティストの方への還元ができなければ,新しい音楽も生まれてこないと思うので,いかに広げて,たくさんのお客様に,これならば音楽に対して対価を払って楽しんでやってもいいかなと思ってもらえるようなサービスをどれだけ多様に作っていくかによって,1人でも多くの,しかも聞くスタイルが多種多様になっているところに対しても届けられるような方策を考えていかなきゃいけない責務を持っていると思っております。
 なので,そこで僕らにとっても,私的複製というのは,ある一定の範囲内で認められていなければならないと思いますが,大幅にそれを,例えば対価を払っているので,じゃあ,どんどんやっていいんでしょうというような範囲で語れるものかどうかもよく分かりませんし,そこはお客様が何に対してサービスを受けたり,音楽というものを楽しめているのかというのを常に分かっていただきながら進めていかないと議論ができないのかなと思っております。いいとか,悪いとか,結論を出すような意見でなくて申しわけないんですけれども,今,私の考えとしてはそのようなことでございます。

【土肥主査】ありがとうございました。若松様,いかがでしょうか。

【CDVJ(若松氏)】これまで,これまでと言いますのは,つまり,20世紀まで日本の音楽産業といいますのは,いわゆるレコード産業が中心だったと思うんですね。先ほど申し上げましたように,例えば貸しレコードのいろんな許諾条件といいますのは,1980年に貸しレコードが誕生したときに,これではレコードが売れなくなるというのがありました。それで,実際,レコードの売上げが一時期前年比で1割削減したことがございまして,それを補填するために貸しレコードにどれだけの負荷を与えるかと,そういう議論があって,いろんな許諾条件が決まったという経緯があります。それが30年前でした。
 翻って21世紀に入りまして,CDは,御案内のように,十何年連続で売上げを減らしてきております。パッケージ産業が非常に厳しいというふうに言われておりますが,一方で,JASRACさんの著作権収入を見ますと,非常に堅調に推移している。それはやはりJASRACさんの丹念な戦略といいますか,非常にきめ細かな著作権の徴収業務の賜物だとは思うんですけれども,つまり,そのギャップが今の日本の音楽産業ではないかなと思います。確かにCDを買う人も大分減って,レンタルの我々もかなり厳しい局面ではあるんですけれども,一方で小寺委員がおっしゃったように,昨年からストリーミングサービスがどんどん変わった。今の若者は,必ずしも音楽を聞くのに十分なお金を払わない。払わないというか,払わなくても済むストリーミングだとか,無料アプリというものもございますし,一方で,アーティストのライブが非常に活況を呈しているということでいきますと,決して音楽全体はそんなに落ち込んでいるわけではない。音楽産業と見たときに,レコード会社を中心とするパッケージがかなり落ちているといった,その辺のギャップを今後どう見据えていくのかというところが,一方でクリエーターへの対価といったときに,何がしか参考になるのではないかなと。ちょっと雑感で恐縮ですが,そう思いました。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,荒川様,お願いします。

【JRC(荒川氏)】まず私的録音に関する補償金の観点から申し上げますと,現行をきっちりと見直しながら,一方で国際的な動向をも見きわめながら,速やかに新たな制度設計を望みたいという,極めて大きなくくりのコメントしかしようがないというのが正直なところです。1点,先ほど小寺委員の御指摘の中で,先ほどの浅石委員の資料の6ページの中で,北欧が非常に高いのはSpotifyという事業者の影響力じゃないかという御指摘がありました。Spotifyというのは2008年にスウェーデン,イギリスをはじめとしてスタートしたビジネスなんですが,その背景としてあったのが,スウェーデンを中心にした北欧各国においてオンラインにおける海賊行為が極めて深刻な形で蔓延していたということがあったというふうに聞いております。Spotifyは,この曲を聞きたいと一生懸命探して,だけど実は違う音楽が流れたりとか,結果ウイルスに感染してしまうとか,そんなようなリスクもありながらもパイレシー行為が非常に蔓延していたところに対して,そんな面倒なことをやらなくても極めて正しい形で音楽をもっと自由に使えるような環境があれば,音楽産業というものは海賊行為から抜け出せるんじゃないかというところからスタートしたと聞いております。
 その結果として,2011年,ちょっと手元に資料がなくてうろ覚えなんですが,2011年か12年には,スウェーデンではそれまでほとんど実態がなかったと言ってもいいぐらいの状況であったパッケージ産業がぐーんと復活をしてきていて,この数年,スウェーデン,それからノルウェーといった北欧では軒並み右肩上がりで音楽マーケットが伸びてきているというような状況もあります。これは今の補償金制度云々というところとの議論とは全く別物ではありますけれども,そういったところまで視野を広げた上で,音楽業界,コンテンツ産業全体が国際競争力を保ちながら,産業としても,それから文化としても発展していく一助になるような,そんな制度設計とそういう方針をお示しいただけるということを是非期待したいと思います。以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。時間も迫ってきておりますので,もしございましたら,最後にしたいと思いますけれども,椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】CDVJさんの資料の4ページ目にある,90年から始まって,98年をピークにCDの生産金額,配信売上げの推移ということで,このカーブについては,我々も何度か出させていただいてきたところでありますけれども,一方で,一番ピークだった98年を境に,もちろんその前から始まっているわけですけれども,PCでのコピー,あるいは,スマホ,タブレット,そういったものが出てくる,その前,携帯ですね。そういうデジタルプロダクツ関連の産業がどういうふうなタイミングの中で,どういうふうに推移していったかという,産業統計的なものも是非見てみたい。そういうことを繰り返し申し上げてきたと思いますが,ここで改めてそのことを申し上げておきたいと思います。

【土肥主査】ありがとうございます。クリエーターに対する適切な対価還元の問題,非常に難しい問題ございます。補償金制度がこのようになっておりますので,その見直しとしてどういう方向に今後検討を進めていくのか,なかなか難しいわけですけれども,頑張っていきたいと思っております。
 本日は,お忙しい中,お三方には時間を割いていただきまして,御出席を賜り,誠にありがとうございます。また,今後どこかの段階で御協力いただくことがあろうかと思いますけれども,その際よろしくお願いいたします。
 それでは,次回は引き続きまして録画に関するヒアリングを行いたいと思っております。最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いをいたします。

【秋山著作権課課長補佐】次回本小委員会の会合は,2月22日,月曜日,午前10時より文部科学省の旧庁舎6階第2講堂にて開催いたします。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第4回を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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