文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第3回)

日時 平成28年9月16日(金)

10:30~12:00

場所 文部科学省 15F特別会議室

議事次第

1 開会

2 議事

  1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
  2. (2)その他

3 閉会

配布資料一覧

資料1
「補償すべき範囲」についての検討(105KB)
参考資料1
補償すべき範囲について(204KB)
参考資料2
私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状(407KB)
参考資料3
クリエーターへの適切な対価還元に関する主な論点(69.1KB)
 
出席者名簿(94.3KB)

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席を頂きましてまことにありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開につきまして,予定されております議事内容を参照いたしますと,格別非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

まず,第1回及び第2回は御欠席でございましたけれども,今回より岸委員に御出席いただいておりますので,御紹介させていただきます。

岸博幸委員でございます。

【岸委員】岸です。よろしくお願いします。

【土肥主査】よろしくお願いいたします。

なお,本日は,榊原委員が欠席されておりますけれども,榊原委員の申出に基づきまして,一般社団法人電子情報技術産業協会著作権専門委員会の副委員長であります西田悟様がオブザーバーとして出席されております。西田様,どうぞよろしくお願いいたします。

【西田オブザーバー】お願いします。

【土肥主査】それでは,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【池野著作物流通推進室長補佐】お手元に配付させていただいております議事次第を御覧いただければと思います。本日は4点資料を準備させていただいておりまして,資料1といたしまして,「補償すべき範囲」についての検討。それから,参考資料1から3につきましては,議事次第に記載させていただいております。不備等ございましたら,お近くの事務局までお知らせください。よろしくお願いします。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,議事の進め方でございますけれども,本日の議事は1,クリエーターへの適切な対価還元について。2,その他。このようになっております。早速,1の議事に入りますけれども,この1につきまして,前回の本小委員会では,クリエーターへの対価還元の現状を踏まえ,補償の要否を議論する範囲について御確認を頂いたところでございます。

前回の議論を踏まえまして,補償すべき範囲について具体的な検討を行うに当たり,これまで特に前回の議論を踏まえて事務局に論点を整理していただいております。今回はその各論点について集中的に議論を行っていきたいと思っております。

はじめに,事務局より資料を説明していただき,その後,意見交換を行いたいと思っております。では,事務局から資料の説明をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。資料1を御覧いただけますでしょうか。今回,補償の要否について議論いただくということで,今回,議論をしていただくべき,あるいは議論の対象となる流通形態について整理を頂きました。改めてここで整理をしています。

そもそも補償すべき範囲については,この四角囲みのところですが,「クリエーターへの対価還元が適切に行われておらず対価還元のための制度的担保又は取組が求められる範囲があるか否か,あるのであればそれはどのような範囲であるのか,について検討が必要である」とされました。

具体的には,その流通形態について議論いただいた上で,この範囲について議論すべきだろうということで整理を頂きました。音楽コンテンツについては,ここに掲げている3点。パッケージを購入した場合。ダウンロード型音楽配信により購入した場合。パッケージをレンタルした場合。それぞれについて私的録音されたときに補償が必要かどうかということについて議論が必要だと。

動画コンテンツについては,無料放送番組の私的録画,有料放送番組の私的録画について,補償が必要かどうかということで議論いただく必要があるということで整理を頂きました。

2番,3番,それぞれ音楽コンテンツ,動画コンテンツについて,これまで頂いた意見を踏まえて論点を書かせていただいています。これは飽くまで論点例ということで,このほかにも論点があるかもしれませんが,これまでの議論を踏まえると,こんなところかなということで,整理をしました。

音楽コンテンツについては,まず,全ての流通形態に共通する論点例として,4点挙げています。

1つ目は,自分で購入した音楽コンテンツ,例えばCDを複数のデバイスで視聴,例えば,パソコンだったりスマートフォンだったりということがあるかと思いますが,こういったデバイスで視聴するための私的複製について,補償すべき範囲に含めるのか否か。

これについては,この委員会の場で意見が出されていますので,それについても論点ごとに主な出された意見について整理をしています。

マル1,この論点については,プレイスシフトについては,売上げが減少するわけではなく,権利者に不利益が生じるわけではない。一方,録音行為の目的に関わらず,私的複製は著作物の利用行為である,といった意見が出されているかと思います。

2番目の論点として,購入した音楽のバックアップのために行われる私的録音について,補償すべき範囲に含めるか否か。これについては,バックアップのために行われる私的録音は,視聴のために行われているわけではなく,権利者に不利益が生じるわけではない,という意見があったかと思います。

3番目の論点,DRMがかかっていない状況,コピーフリーな状況でコンテンツを提供する場合には,私的複製が行われることを見込んで,対価設定がなされているのではないか。そういった場合であれば,補償の必要はないと考えるけれども,どうかといったことが論点としては出されているかと思います。

2枚目になりますが,これについては私的複製の対価が,契約上含まれているか否かということではなく,客観的な事実に基づいて評価をすべきだといった意見。

そして,我が国に私的録音録画補償金制度が存在する以上,私的複製に係る対価はこの制度によって徴収されるという前提があるので,価格に盛り込んでいるとの評価はできない,といった意見がありました。

マル4の論点ですが,これはクラウドに私的複製する場合について,補償すべき範囲に含めるのかどうか。これは,複製する媒体がMDやCDという従来の媒体から,クラウドというインターネット上の領域に広がったに過ぎず,私的複製が行われているという意味では同じだといった意見がありました。

音楽コンテンツについてのもう一つの論点として,これはダウンロード型の音楽配信によって購入した消費者が行う私的録音についての論点ですけれども,マルチデバイス・ダウンロードサービスを提供しているダウンロード型音楽配信について,補償すべき範囲に含めるかということ。

これについては,利用者の多くはこのマルチデバイス・ダウンロードサービスを利用している場合が多く,それを超えて私的複製を行っている場合は少ないのではないか,という意見がありました。

一方で,マルチデバイス・ダウンロードサービスが提供されている場合でも,このサービスの範囲を超えて私的複製が行われている例はあるのではないか,といった意見もありました。

ここまでが音楽コンテンツについての論点と,それについての意見を整理したものです。

3番目からは動画コンテンツになります。こちらの全ての流通形態に共通する論点として,こちらに2点挙げています。

1点目は,放送波を最初に録画する部分について,補償すべき範囲に含めるのかということ。

これについては,多くの視聴者は,放送番組を同時視聴するのと同じように,番組をハードディスクに録画して,タイムシフト,時間をずらして視聴している。ハードディスクに録画された番組はあくまでも視聴者が番組を視聴するためのものであって,権利者に不利益は生じないのではないか,といった意見がありました。

2番目の論点,権利者がDRMを自由に選択できる場合には,その選択されたDRMの範囲の中で行われる私的録画について,補償すべき範囲に含めるかどうか。

これについては,権利者がDRMの技術を選択できない現状では,補償金という形で権利者に対価還元が必要となるのではないか。それができないということであれば,権利者が自由にDRMを選択できる環境を作るべきであるといった意見がありました。

2点目として,選択肢の多い少ないはあっても,何らかのDRM技術を選択できる以上は,権利者が私的複製の範囲をコントロールしているのではないかと評価すべきだ,といった意見がありました。

消費者が行う有料放送番組の私的録画についての論点として,1点挙げています。

コピーネバーの運用が可能となっているペイパービューについて,補償すべき範囲に含めるかどうか。

これについては意見として,少なくとも映画についてはコピーネバーを運用しているものについては補償を求めるものではない,といった意見がありました。

以上,これまでの議論を踏まえて,動画コンテンツ,音楽コンテンツについての論点と,それぞれの意見を整理したものです。よろしくお願いします。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,ただいまの説明に基づきまして,これから質疑応答と意見交換を行っていきたいと存じます。

まず,先ほど説明がございました,この資料1に挙げられております論点例について,でございますけれども,この論点例について,更に追加すべき点はないかどうか。この点についての御意見,御質問等をお願いしたいと思っております。この追加的な論点の問題が終わったとき,つまり出そろった段階で,それぞれの論点について具体的な意見交換をお願いしたいと思いますので,まずは追加すべき論点があるかどうか,あれば是非お示しいただきたいと思っておりますが,いかがでしょうか。

華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】動画コンテンツですが,(1)のマル1,主な意見,タイムシフトであれば権利者に不利益が生じないので補償の必要性はないのではないか,という御意見だと思うのですけれども,これはまず質問なのですが,タイムシフトというのは,我々の理解は,視聴したら当該番組が消えると認識しています。現状ではそれを補償することはできませんので,したがいまして,現時点で議論されているタイムシフトのための録画が権利者に不利益を与えないと言い切ることはできないのではないかと思います。

それから,その下あたりで,権利者が自由にDRMを選択できる環境を構築すれば,補償の必要性はなくなるということではなくて,自由選択は必要であると思いますけれども,補償する必要性がなくなるのは,あくまでもコピーネバーを選択したそのときだけであると思います。ですから,ペイパービューについても,補償すべき範囲に含めるか否かということではなくて,コピーネバーの運用になっているペイパービューの番組については,補償の必要性はないのではないかと思います。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますか。

丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】音楽コンテンツの(1)のマル4,クラウドの私的複製ですが,もちろん,このマル1とマル2のタイムシフトとバックアップ目的でクラウドを使う場合が多いと思うので,主な意見という意味で私的複製が行われるという意味では同じであるけれども,タイムシフトとバックアップという意味でも同じだということを整理していただければと思います。

【土肥主査】ほかにいかがでしょうか。

今子委員,どうぞ。

【今子委員】確認をさせていただければと思うのですけれども,音楽コンテンツの(1)のマル4のところでクラウドの話が出ていまして,動画コンテンツの方には書いていないのですが,これは動画コンテンツに関しては,クラウドでの複製は補償対象にならないという理解でよろしいのですよね。

【土肥主査】それは特に事務局の方になかったのは,そういう御意見が特に前回,御記憶だと思いますけれども,動画についてクラウドの中に入れるかどうかについての議論よりも,DRMとかそっちの議論が集中したので出ていないのだろうと思うのですが,華頂委員,何かこの点ございますか。

【華頂委員】クラウドの環境の中で視聴できる動画コンテンツというのは,今のところコンテンツホルダー,権利者がDRMできちんと管理をしているということが言えますので,ここに書いてございますように,動画コンテンツは放送を録画することに特化して利用しているのだと思います。

【土肥主査】現実の運用の面でいくと,その点を考慮する必要はないと。DRMによってきちんと管理してあるということですか。はい。

ほかにいかがでしょうか。お三方から御意見を頂戴しましたけれども,基本的には前回の議論を少し深掘りするような,確認するような御意見であったかなと承知をしておりますが,今子委員,どうぞ。

【今子委員】今の御意見,ありがとうございます。少し補足をさせていただきますと,動画コンテンツ,例えば,放送コンテンツは,現在のところDRMで管理されていますので,クラウドに保存して視聴することは極めて難しいというか,ほとんどできない状態となっています。仮に保存できたとしても,非常に容量が大きいため,アップロードにもダウンロードにも大変な時間がかかって,ほとんど視聴に耐えませんので,この点補足をさせていただきます。

【土肥主査】はい。ほかにございますか。特に著作物の流通形態のところでの話としては,レンタルのルートについては全く,一般的に全てをカバーするような形では論点としては出ているわけですけれども,レンタルの流通形態の部分については,この資料上,切り出してはいないのですが,そこについて何か。あるいは,一般的な形で全ての流通形態に共通する形での問題として盛り込まれているということでよろしゅうございますか。はい。

そうすると,ここにあるペーパー,それから,本日頂いております補足,補充,深掘りした確認の御意見を踏まえた上で,今後,この論点で議論を進めていきたいと思いますけれども,よろしいですか。よろしいですね。もし御意見があれば,今のところであれば幾らでも追加は可能でございますので,おっしゃっていただきたいと思います。もちろん,絶対に認めないということではございませんので,合理的な事情等,説得力のある論点がありましたら後ほど追加していただいても構いませんが,今の段階ではこれでいくということでよろしいですね。はい。

それでは,この論点に沿って補償すべき範囲についての議論を進めたいと思っております。順番からすると,音楽と映像とあるのですけれども,音楽の方が先にきておりますので,音楽から御意見を頂戴したいと思います。

マル1は,プレイスシフトの問題。このあたり,バックアップについても私的複製を行うときの目的の問題ですけれども,まず,マル1のプレイスシフトについて,補償すべき範囲かどうか。これについての御意見を頂戴したいと思いますけれども,いかがでしょうか。

はい,世古委員。

【世古委員】今,主査からは,マル1ということで限定されていらっしゃいますけれども,音楽著作権の権利者としましては,音楽コンテンツとして補償が必要な対象だというところの上段にあります1,2,3を通しまして,補償が必要だと考えております。

その理由としまして,このマル1,マル2,マル3,後ろの4も共通ですけれども,先ほど丸橋委員がおっしゃったように,マル4のクラウドにつきましてもタイムシフト,プレイスシフトの方法としてクラウドが用いられますので,意味合いとしては同じかなと考えまして,1から4について共通なこととして,プレイスシフトであろうと,バックアップのためであろうと,これは30条1項の該当性の問題であると考えます。つまり,スリーステップテストによって権利者の不当な利益を侵害しないという下に私的複製を認めるということですので,ここで書かれているような不利益が生じるわけではない,というのが30条1項に該当するための要件であって,だから私的複製が認められるのです。それと,補償の問題というのは別の問題と考えております。

つまり,私的録音録画補償金制度が制定されてきたところの趣旨も考えますと,個々の家庭内,それに準ずる内での複製行為については微々たるものだと。つまり,権利者の売上げ等に直接結び付くような不利益は生じさせていないけれども,総体的にそれが累積されることによって全体的に大量の複製が行われることで,総体として権利者の不利益が生じるのだと,これに対しては補償すると考えておりますので,ここで書かれておりますような論点例のそれぞれを総括する形で,これは30条1項に該当するということでの,それをただ個別に言っているのではないかと考えております。

【土肥主査】ありがとうございました。マル1からマル4まで横断的に御意見を頂戴したと思いますけれども,そのような他の項目にまたがっての御意見も踏まえて結構でございますので,是非お願いをいたします。

椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】同じような趣旨になるかと思いますが,まず,この議論の最初のところで補償金の問題をどうするかということを議論したときに,30条の1項自体を見直して,その私的複製の自由をいじるという選択肢も含めて議論が始まったと思います。そこで,権利者の方も30条の1項をどうこうということは考えるのはやめよう,というところからスタートしていると思うのです。権利制限が行われるから補償があるという意味で言うならば,権利者の不利益部分ということよりも,むしろその権利制限がされているというところについて,補償の必要性を議論していくのが本来は筋ではないかと思います。例えば,30条の1項がなければ,プレイスシフトもタイムシフトもできないわけでありますよね。できないということは,タイムシフトやプレイスシフトをする機器も作れないということになります。作れなければ売ることができない。そこで利益を上げることもできない。

それで,前回の松本委員の御発言にも関係しますけれども,30条の1項があることによって利益を上げているところとの調整という観点も必要なのではないか,ということから言うと,こうやって各論に入っていって補償の必要性の有無を議論するのはいいと思うし,筋として正しいと思うのですが,基本的に補償の必要はあるのだという前提の下に見ていかないと話がおかしくなってしまうのではないかと思いました。

それから,マル3の主な意見に,「私的複製の対価が契約上含まれているか否かではなく,客観的事実に基づいて評価すべき」というところがありますが,これはまさにそうだと思っておりまして,例えば,参考資料2の4ページの真ん中辺にマルチデバイス・ダウンロードの許諾のことが書いてあります。マルチデバイス・ダウンロードと一口に言ってもいろいろな形態があったりすると思うのですが,くくってマルチデバイス・ダウンロード,要するに,1つのコンテンツを複数の機器で利用できるようなダウンロード形態ということで言うと,ここにも書いてありますけれども,1課金1ダウンロードを実施していた時期の1曲当たりの価格と,DRMを解除してマルチデバイス・ダウンロードを実施している現在の1曲当たりの価格を比較すると,現在の方が低いということになっている。それは様々な要因で,様々なアミューズメントの中で音楽の占める位置が総体的に下落しているとか何とかという分析があるのかもしれませんが,契約でクリアしているとは言いつつも,ここでは対価の還元について,適切に対価が還元されているかどうかということを見てきたはずなので,そういう観点から言うと,このマルチデバイス・ダウンロードに関して言うと,適切に対価が還元されているかどうかは疑問かもしれない。そういったときに補償の対象として考え得るものではないかと思います。

以上,2点です。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

河村委員,どうぞ。

【河村委員】今の椎名委員の御発言ですけれども,私としてはおっしゃっている趣旨がすんなりとは理解できません。長いことこの議論に参加していますし,椎名委員とも長く会議で御一緒してきました。最初の頃,お金を払って消費者が買ったコンテンツを自分のために,自分が聞くために,あるいは家族が聞くために私的複製をすることで権利者に損害を与えてはいないのではないかということで議論してきたわけですが,その後,そういうことではないのだと。権利制限をされているからだという論点と,複製のための機器を作っている会社が儲(もう)かっているからだということをおっしゃるのと,最後のところが一番納得できないのですが,契約に含まれているかどうかではなく,その価格が低くなったという例を挙げてこられる。かみ砕いて私が理解すると,そもそもの最初の段階で,権利者の方たちが得る対価が低いから,その分の補てんのような形で私的複製をする人は,還元というか,対価を払わないといけないとおっしゃっているように聞こえるのです。私は3つの論点は全部ばらばらなのではないかと思っていまして,その辺りは非常に大切なことで,何のための対価還元か,少なくとも最終的にはどんな形であれ消費者が払うわけですけれども,損害があるからなのか,利益があるからなのか,そもそも権利者が得ている対価に問題があるからなのかというところが混乱しているように感じます。

【土肥主査】ありがとうございました。この点について,回答を頂くのは,むしろアカデミックあたりがいいのではないかと思うのですけれども,お聞きになっていていかがですか。奥邨委員でもいいし,大渕さんでもいいし。

【奥邨委員】すみません,まず,今の御議論を伺って,きょう,私,事務局に質問したいのは検討の進め方ですけれども,今回のこの委員会の検討というのは段階的に進んでいるという理解をしております。きょう配られた資料1の冒頭にある四角の囲みの中で,下線を引いているところがありますけれども,そこがきょうの検討の対象なのでしょうか。そうだとしますと,下線の引いていない,「あるのであればそれはどのような範囲であるのか」という部分は,これはきょうの検討はきょう終わるのかどうかは別としまして,この段階が終わった次の段階として更に議論するという整理になっているのかどうかということでございます。というのは,資料1の2ポツ以下に掲げられている論点につきまして,例えば,ある論点についてきょうの段階で範囲に含めるという,仮に結論というか一応の方向性が出たとして,では次の段階でその論点に係る利用行為の全てについて補償すべき範囲だという議論をするのか。それとも,いやいや,そうではないけれども,その論点に係る利用行為でも,ここまでは補償する必要がないのではないか。ここから先,補償する必要があるのではないかと,更に踏み込んだしきい値の議論をするのかどうか。そういう段階がまたあるのかどうか。

別の言い方をしますと,この資料1に載っているきょうの議論が終われば,次の段階としては参考資料で頂戴したものの3の3ポツにいくのでしょうか。それとも,3ポツにいく前の段階として,2の中の最後の2ポツで線の引いていない,「あるのであれば,どのような範囲か」という議論をする段階があるのか。それによっても少なくとも私の理解としては,補償をする必要があるかどうかということについては,私的複製の権利制限の範囲であるから補償は不要という極端な議論と,もう一つは,その範囲であっても補償は必要という極端な議論の間の,1かゼロかの議論と,その中間の,あるしきい値までは私的複製の範囲であって補償は不要だけれども,私的複製であってもある閾値(しきいち)を超えれば必要という中間の議論もあると思うわけです。そうすると,きょうの議論の段階では2段階で議論するということだと補償の範囲に入るけれども,次の段階ではある利用形態についてはどうだと,更に細かい分けをしていくという議論になるので,その辺はどういう順番でお考えなのかによって私も各論点についてどういうことを申し上げるかというのが変わって参ります。きょうの段階で言った方がいいのか,それとも次の段階で言わないと,議論をぐちゃぐちゃにしてしまうのか,そこを整理した方がいいのかというのを思いましたので,まずそこをお聞かせ願えればと思います。

【土肥主査】その点については,事務局がお答えになるよりも,別に事務局がやっているわけではないので私からお話をいたします。

大きな柱としては,どの流通形態について,補償すべき範囲はどうか,そして,その手段はどうかという,この3つの大きな柱がございます。奥邨委員が今いみじくもおっしゃった点というのは,つまり2と3の間に1回,何か絞り込むような作業がいるのかどうかということで,私のイメージでは,流通形態は絞りましたけれども,結局,次に補償すべき範囲を一番大枠で絞り込んで,そして,その補償すべき範囲から更にどういう補償するスキームが考えられるのかという,ここで言うと手段の問題ですが,その手段という問題と補償すべき範囲というのは,非常に難しい問題がつながっております。つまり,大きな範囲としては,補償すべき範囲として検討する必要があるのだけれども,これはそういう先の話を私がここでしていいのかどうか分かりませんが,一部の権利者側の御意見からすると,そこは是非ということになるかもしれないし,いやいやということになるかもしれないのです。いずれにしましても,きょう補償すべき範囲が出てきたときに,それを全てカバーするような手段というか,スキームを考えていくことは難しいのではないかと思っております。ですから,そういう意味からすると,先ほどからおっしゃっておられる30条1項,要件該当性の問題としてどういうものを入れていくのかということが直ちに,その辺をこの段階で言いにくいところはございますけれども,もう一回あるのかなと思っております。

【奥邨委員】分かりました。そうしますと,あるのであればどのような範囲かというのは,きょうの議論の中でも入るし,それから,3ポツの議論の中でもまた議論される。ある程度重複してというか,一応段階的な整理の加減としては分けてはいるけれども,必ずしもスパッときょうで終わってしまうとか,次でやらなければいけないということではなくて,事柄の性質についても両方に関わってくる問題だということで理解したということでよろしいでしょうか。そう私は理解いたしました。

【土肥主査】そうなのですけれども,いろいろな目的との関係で,今,河村委員がおっしゃっておられるのだけれども,補償すべき範囲を限定するときに,絞るときに,いろいろ考慮すべきことを考えておく必要があるのかどうか。そういうことですよね。そういう御発言があったのだけれども,それについて,奥邨委員に格別御意見があればと思ってお尋ねしたところですが,いかがですか。

【奥邨委員】そこは整理させてください。

【土肥主査】では,椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】河村さんとは本当に長い間この議論をさせていただいておりまして,文化庁もさることながら総務省でもダビング10の議論とか,大変長いこと議論をさせていただいております。先ほどの御発言の中で,混乱されているのでは,ということがあったので,1つだけ申し上げておきますが,産業間利益の調整の観点というのは,最初から申し上げている話で,この話が背景に流れているものだと理解をしています。この論点の3段階目に入ったところでもその話が出てくるものという理解の下に,この2段階目のところでもずっと主張してきたことです。一方で河村さんは権利者の不利益の立証ができるのかということをずっと主張されていたということで,何も混乱したわけではなく,以前から申し上げていることを申し上げたに過ぎません。そこだけ申し上げておきます。

それと,対価の還元がなされているのか,ということについて,この「適切に」ということがついていることをどう見るのかということについて,それが適切なのだろうかということも見るべき対象に含まれるのではないですか,という意見でございます。どう評価するかについては,いろいろ御議論があると思いますが,その「適切」ということをどう考えるのかということで申し上げたつもりでございます。

以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございます。ほかに御意見ございませんか。

岸委員,どうぞ。

【岸委員】先ほど奥邨委員が発言されたことの関連になるのかと思いますけれども,補償すべき範囲を考える場合のことになるのですが,そもそも補償,対価還元は何で必要かというと,これは当然不利益が生じているからそれで補うためですよね。不利益はいろいろな種類があるわけで,不利益で本来補償する必要があるものは何なのかというのをもう少し明確にしておいた方がいいのかなと思います。個人的には,それは権利制限ゆえに不利益が生じている場合,あとは市場の失敗が生じている場合は,当然,対象になり得るわけで,それ以外のものは本来入らないと思います。きょう整理いただいたこの資料1のペーパーを見ますと,基本的に整理は違和感ある部分は全然ないのですけれども,どういう基準からこう判断したのかというのが見えるようにしないと,アドホックにone by oneで考えましたという感じも見られかねませんので,しっかりと補償というのは本来不利益があるから補償する,不利益のうち本来補償しなければいけない不利益は何に基づく不利益なのかというところを,総論的な感じになるのかもしれませんが,個人的には権利制限の部分であるとか,市場の失敗が生じている部分が一番大事なキーワードになると思いますので,そういったものを見えるようにした方が,よりクリアになるのかなと思いました。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】ただいま,全体的な,包括的な御意見がある中で,細かいところに入っていくのがいいのかどうか,少し躊躇(ちゅうちょ)して発言を遠慮しておったのですけれども,少し細かい話をさせていただきたいと思っています。

音楽のコンテンツのマル2ですけれども,購入した音楽のバックアップの話です。例えば,コンピュータープログラムであるとか,あるいはOS,基本ソフトのようなものは,もちろん,契約の中で無断でコピーすることはできませんけれども,何かトラブルがあったときのためにOSも含めて全部バックアップするということは権利制限の中に入っている条項でございます。こういう視点からすると,音楽は確かにコンテンツではございますけれども,デジタルデータであるが故に物理物と違いまして,いろいろなものといっしょくたに失う可能性がどうしても現段階ではあるわけで,そこがユーザーの利便性から考えると,何らかの形でバックアップをするという,そこのところはさすがに権利者様に不利益を生じているとは言えないのではないかと思いました。

それから,資料1の2ページ目の一番上のところに「客観的に基づいて評価する」として,「私的複製の対価が契約上含まれているか否か」という文言がございますけれども,こちらの文言はレンタルに関してのことを考えますと,レンタルという業務からすれば,例えば,音楽のCDをレンタルするという業務上,そういう業務が成立し得るという背景の中には,DRMがかかっていない音楽CDから何らかの私的複製を行うというところも含みおき商売をしているのではないかという意味かなと私は感じるのですけれども,これはそうではなくて,全てのことに該当する話であるということなのでしょうか。これは質問です。

【土肥主査】2つ目の質問の点で,客観的事実というのは,私は複製という客観的事実かなと思ったのだけれども,そうではない,今の小寺委員の読み方なのです。これは,その方にお聞きすればいいかなと思うのですけれども,もともとはどなたの御発言だったのですか。

【俵著作物流通推進室長】すみません,ここで書いたのは,プライスインされているかどうかということについてです。契約上はプラスインはされていないのだということがヒアリングをして発表いただいた方々の中からは明確にされました。参考資料の「対価還元の現状」の中にも明記されているかと思います。それに対して契約上どうかということではなくて,客観的事実が何をもって客観的と言えるかというのは少し分からないところではあるのですけれども,単に契約上どうかということではなくて,経済的な影響などについても評価すべきではないかという意見があったかと思います。榊原委員だったかもしれませんが,確かそういう意見だったと思います。そういう意味では,レンタルに限ったものではなくて,全般的な流通形態に関しての御意見だったかなと思います。

【土肥主査】小寺委員の御質問に対するお答えはそういうことです。

それから,前半の方ですけれども,バックアップ目的ですよね。これについては,補償すべき範囲から外すべきではないかという,これは前にもおっしゃったと思います。確かに主張するわけではないということになると思うのですけれども,こういうことも含めて御意見を頂ければ有り難く思います。いかがでしょうか。

【楠本委員】今のバックアップのところを,少しだけ意見を言いたいと思います。バックアップと言うと,言葉ですと何となくパソコンのソフトウェアでいうバックアップのイメージがあるのかもしれませんが,ここで音楽が例に挙げられておりますとおり,バックアップと音楽ライブラリ,ずっと蓄積していくものがなかなか区別しづらい。もっと踏み込んで言えば,それをライブラリ化した後に「あれもいいな,これもいいな」と,どんどんライブラリ化していって,それがまた家族間やお友達の間で共有というか複製でまたもう一個,ライブラリができてしまう。そういったところまで話がいく可能性を踏まえていますので,単純に片仮名のバックアップという言葉だけを取って対象から外すことについては,なかなか議論があるところではないかと,私は受け入れることはできないかなと感じています。

【土肥主査】最初のところのその区別ができないということだったわけですが,できれば可能なのですか。

【楠本委員】完全にパーソナルな中で出ていかないということであれば,バックアップも先ほど来出ている,音楽ですとiPodですとか,自分のものから出ていかないということであれば,バックアップもコピーもまさに私的複製だと思うのですが,それが2つ目になる,3つ目になる,あるいは2人目になる,3人目になるということは,もはやバックアップと呼ばないのではないのかなと考えています。

【土肥主査】ありがとうございます。

松田委員,どうぞ。

【松田委員】今のバックアップの関係で私自身が分からないので少し議論をしていただきたいのですけれども,まさにここにあるバックアップはなぜ許されるかというと,それは30条1項以外にないわけですよね。これはどこの条文を探したって,適法にバックアップできるのは30条1項だと私は思います。先ほど意見がありましたように,30条1項に対して,録音録画をどういうふうに還元するかということの議論であれば,30条第1項の適用があるかないかで考えればいいのではないですかという議論は,私は十分成り立つところだろうと考えております。

ところが,今,議論していますと,30条1項で適法に複製した後,それよりほかに流れるではないかという議論がときどき出てくるわけです。これは実質的被害としてすごく大きいということは,私自身は分かりますよ。ただ,著作権法上の切り口だけで考えるとすれば,30条1項で複製してしまったものを,例えば,家庭内でなくてほかに譲渡してしまおうということになりますと,これは何条だったか,明確にありますよね。

【土肥主査】47条の10です。

【松田委員】49条の1項1号ではないですか。みなしの侵害もあって,譲渡のときに複製があったものとみなされるわけですから。著作権法上は,これは30条1項の枠を超えてしまって違法なものとして,条文上は対処しているわけです。これを果たして30条の範囲内で私的録音録画の問題としてとらえるかどうかということは,すみ分けとして,しておくべきだろうと思っているわけです。むしろ私は,それで加えさせていただきますと,そういう状態になったものについての補償というのは,これはしないでいいのではないでしょうか。私はそう思っています。それは被害が大きいのになぜ補償しないのでいいのだという反論は十分あり得ると思っています。実質はそこのところを押さえてほしいのだけれども,実質はそのところをリカバリーしてほしいのだよということも分かると思います。

しかしながら,片方においては,これは違法な行為だよとされている行為については,30条1項の補償の問題ではないのだと割り切らないといけないのではないでしょうか。そのかわり,30条1項で複製する場合には,たとえバックアップだって,これは補償の範囲だよとすべきではないかなと思っているのですが,もし議論が可能であれば,していただきたいと思っています。私の意見は今のところです。

【土肥主査】ありがとうございました。この点に関して有り難いのですけれども,なければほかでも。

では,小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】違法の行為に関して,ですよね。違法の行為に関しては,今回,今,議論している補償というのは射程に入らないということは,確か第1回の議論のときに私が御質問させていただいて確認が取れているはずでございますので,松田委員のおっしゃるとおりかと思います。

【椎名委員】よろしいですか。

【土肥主査】椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】楠本委員の御発言は,例えば,バックアップが1個ここにありますと。そのほかに幾つかコピーがありますというときに,バックアップから端を発して,松田先生もおっしゃる違法な世界ににじみ出るものもあれば,例えば,クラウドの著作権の取扱について議論をしたときに,共有であるとか,複製の概念を超える様々なコンテンツに対する接し方の状況などもいろいろ出てきたと思うのですが,違法なもの,合法なものの辺縁が,少し紛(まぎ)れがあるような状態が混然一体としてあるという意味での御指摘だったと思うのです。何も違法なものを補償してほしいということは権利者も考えておりませんで,そこは小寺委員がおっしゃったように,最初に確認できていることだと思うので。

【土肥主査】ありがとうございました。この点,今,小寺委員,松田委員,椎名委員の御発言がある点についてはよろしいですね。あくまでも30条1項で認められている私的複製についての話ですよね。その範囲で許されない目的外使用等々については,当然対象ではないということでございます。ほかにございますか。今現在,音楽の方に集中して議論していただいているのかなと思いますけれども,もし音楽の方がなければ,映像に入りたいと思います。音楽についてお聞きになっておられると思いますけれども,西田さんは何か今までのところであれば,御発言いただいた方がいいのかなと思いますが,よろしいですか。

【西田オブザーバー】では,オブザーバーだったのでコメントを控えさせていただいておりましたけれども,お話の中でいろいろな流通路があったとしても,DRMをかけられるものも,その程度についてもいろいろある中でそこを選択しているのだから,それはある程度コントロールができているのだろうというのは,こちらの団体の意見になろうかと思いますので,そこら辺は今後いろいろな形で議論を進めていっていただきたいなという話になろうかと思います。

あと,こちらの業界がレコーダーなどで儲(もう)けているからという形で産業間の利益の再分配という話も出てきているかと思いますけれども,その辺も機器があることによってコンテンツが見られているというところもありますし,コンテンツがあるから機器が売れているという両方の側面がありますので,再分配する必要があるのかというのは疑問かなというのも,こちらの中で意見が出るところではあります。

【土肥主査】DRMについては,恐らくこれからの話で,映像で議論になってくるのだろうと思います。

それから,2つ目,メーカーの利益の問題については,恐らくスキームのところではかなり問題になろうかと思いますけれども,補償する範囲,今の段階では特に出てこないのかなと思います。

それでは,音楽の方がなければ,映像について御意見いただければと思います。いかがでしょうか。

【岸委員】すみません,映像に入る前に1つだけ。余計なことで申し訳ないのですけれども,先ほど西田委員が発言された内容の関係で,私は個人的にはこの議論では,産業間の利益の再分配という発想は絶対してはいけないと思っています。本来は,市場で解決できる問題,解決できていない部分をどうするのかということが本旨ですので,それが終わった後に,産業間の利益の再分配というのは,政府の側(がわ),公的な側(がわ)が必要あるとみなした場合にやるべきものなので,本来的にまず,この産業間の利益の再分配なのだという意識からこの問題に取り組むと間違えますので,そういう発想は絶対この場ではしてはいけないのではないかと思っています。

【土肥主査】映像に入る前に何か御意見が伺いますが,奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】若干,私もさっき宿題になっていたような感じなので一言だけ申し上げます。ここで議論するとき,総論の問題として30条なかりせば,起こり得ないことは全て補償の対象に含めるべきというところまでの議論になっていないかなと心配するところであります。30条がなければ私的複製は生じない,機器メーカーは機器を作れない。権利者が契約上受ける利益は減らないというのは,どれも言えることではあると思うのですけれども,その間のつながりの濃淡はあるわけであって,結び付きが強い順番で言えば,30条がなければ私的複製は生じないということですし,権利者の契約上の利益は減らないということだと思います。ただ,機器が作れないというのは更に遠い話になっていくのだろうと思います。ですから,今の岸委員の御意見とも近いのですけれども,最後の3つ目というのは,私的複製の直接の影響なのかなということについては,ある程度総論的には筋を,枠組みとしてはマークを付けておかないと,私的複製がなければ生じない全てのことを対象にして補償を考えていくというのは,少なくとも著作権法,複製との関係でということであれば遠いのではないかなというのが,個人的な意見であります。もちろん,さっき座長がおっしゃったように,具体的なスキームを作っていく中でいろいろ取り込んでいくでしょうから,最初から全てを排除するとは申しませんけれども,事柄の性質としてかなり間接的ではないかなと思うところはあります。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございます。

椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】岸先生,奥邨先生の御発言がありましたが,はなから産業間調整ということで,その調整が目的であるならば,細かいことを微に入り細をうがって※検討する必要はないわけで,そこをやってくださいと申し上げているつもりは全くありませんが,この制度ができた背景,例えば,支払義務の話ですとか,協力義務の話ですとか,そういうものの背景には,そういう配慮があるだろう。欧米等では支払義務者はメーカー等ということになっているということで,3の議論に入ったときに大体そういう話は出てくるのだろうな,という前提で申し上げているつもりです。ただ産業間利益の調整ということだけだと,こういう議論こまかな議論はしなくていいわけですよね。幾ら儲(もう)かって幾ら損したという話をすればいいのですが,そういうつもりで申し上げているわけではありません。

【土肥主査】ありがとうございました。この点についてはよろしいですか。

それでは,映像の問題に入りたいと思います。映像は,先ほど西田オブザーバーからもございましたけれども,特にDRMの問題が絡んでこようかなと思っております。是非御意見を頂戴できればと思いますが,いかがでしょうか。

華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】前回も小寺委員からペイパービューのコピーネバーの話が出たのですけれども,衛星放送協会のホームページをその後見たり,BSの有料チャンネルはWOWOWなので,WOWOWのホームページを確認したりして,有料放送がどういう現状かということを簡単にまとめてみました。

まず,CSの有料チャンネルは,コピーワンスの運用が基本になっている。小寺委員が前回意見としておっしゃったように,ペイパービューの一部の番組は確かに権利保護の関係上,コピーネバーを運用している。それから,アダルト番組はコピーネバーのようです。CSの有料チャンネル,放送事業者としては,基本的に私的録画の対象となる放送番組は,制作はしていない。全ての番組について,その著作権者から番組供給を受けているような事業形態であると認識しています。その状況を見ると,CSの有料チャンネルについては,私的録画の対象となる放送番組を供給している著作権者が,放送実績に基づいて補償の対価を受領(じゅりょう)するべきではないかなと。かつて私的録画補償金が運用されていた時代も,まさにこのとおりやっていたように記憶しています。

一方,コピーネバーを運用している一部の番組,この著作権者,アダルトも含めますけれども,これに対しては補償の必要性はないのではないか。これは今,SARVH(サーブ)が解散していますのですぐに調べられないのですけれども,かつてのコピーネバーの運用をしていれば補償の分配はなかったのではないかなと思います。

それから,BSの有料チャンネル,WOWOWですけれども,これはWOWOWの録画のQ&Aに明確に書かれております。ハリウッドメジャースタジオ系の映画会社,これは私もかつてから言い続けておりますけれども,ここをはじめとする権利元との契約上コピーワンスを運用している,と明確にホームページに書かれています。WOWOWはCSの放送事業者と違うのは,私的録画の対象となる放送番組を自ら制作しているということです。ですから,BS有料チャンネルWOWOWの場合は,自社で制作した私的録画の対象となる放送番組については,自ら補償の対価を受領(じゅりょう)するべきである。

他方,外部から供給された番組もやっているわけですから,CSと同様に,その番組を供給した著作権者が放送実績に基づいて補償の対価を受領(じゅりょう)するべきである。これはかつての私的録画補償金が運用されていたときと同じです。

私的録画補償金が運用されていたときは,分配のネットワークにCSの放送事業者は入っていませんでした。先ほど申し上げたように,有料放送事業者としては受領(じゅりょう)するようなことはないので,番組の供給者が受領(じゅりょう)するのでネットワークから外れていた。

それから,WOWOWの方は,かつての私的録画補償金のときには,ネットワークにきちんと,自社で私的録画の対象となる放送番組を制作しているので,WOWOWにも分配があったということでございます。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。今,華頂委員に御説明いただきましたけれども,ここでの議論というのは,DRMを自由に選択できる場合に,選択された範囲内で行われる私的録画について,補償すべき範囲に含めるかどうか。これは結構大きな問題としてあるのだろうと思うのですが,たとえそういう場合であっても,音楽でもそうだし,映像でもそうなのだと思うのですけれども,ダビング10にしても,コピーワンスにしても,そういう条件の下で補償金の対象とすることはできないのでしょうか。つまり,私的録音録画補償金かDRMかという二者択一なのか,それとも私的録音録画補償金と,それから,別にDRM,第三に両方を折衷するようなタイプ。この折衷するようなタイプは考えられないのでしょうか。

【末吉副主査】今の主査の問題提起にぴったりはまるかどうか分からないのですが,今,お話を聞いていまして,まず,2ページ目の動画コンテンツを例に考えますと,3の(1)の2)のところに「自由に」と書いてあるのですけれども,私は自由ではないと思うのです。いろいろ制度的制約の中で,例えば,コピー10になっているところがあるので,コピーネバーという選択肢があったではないかということは,現実問題とすると現実的ではない。そこに権利者に対して何らかの補償範囲に入れるモメントが,私はあるのではないかと思います。

ここのペーパーにまとめられているところを全体的に見ると,例えば,バックアップだけに使えますとか,プレイスシフトだけに使えますという領域というのは,確かに補償金を支払うことについては,どちらかというと消極的に働く要因だと思うのです。今,主査が言われているようなことに引き付けて申しますと,いろいろなファクターを総合考慮するときに,例えば,コピー10が一番典型的だと思うのですけれども,こんなにコピーされてしまったら気の毒だという配慮が働く余地が一番大きい領域ではないかと思います。その次が,もしかするとコピーワンスかもしれませんし,あとはそれ以外のところは,私的に使っているとは言うけれども,本当にそうなのかという,もちろん,松田先生が問題提起されているところは十分考慮に入れながら,補償金で補償するべき範囲を狭めたり,広めたり,総合考慮するように使うことが私は許されるのではないかと思います。

以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。

では,大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】補償制度についてはほかの場でも申し上げて,余り補償金の制度は細かい議論をし出すと,全く動かなくなってどっちにも役に立たないものになってくるので,これは恐らく1つのキーワードはトータルとして被害ができているかという話なので,この進み方にも若干気になるところはあったのですけれども,いちいち言い出すと,さっきのバックアップだけのものはどうしてくれるのだということがあるのですが,これは制度として組む場合には,こま切れにしていくと制度として動かないから,総体としてそういうものが一部あることを認めた上で全体としてどうなのですかという議論をしていかなければいけない。ただ,そうは言っても,最後に総合するためには,今みたいな細かいことを積み上げていく必要はあるので,そういう意味では,私は今やっているプロセスについて何ら反対はなくて,細かいこういうことも念頭に置いた上だけれども,最後に考えるのは,それを1個1個やり出したら,制度としてはバックアップ用の補償金だ,何だというごちゃごちゃになってしまいますので,それを踏まえた上で,最後はトータルとしてクリエーターにきちんと適切なリターンがきているかどうかという話になってきます。そこに今,末吉委員が言われたところに近いかと思うのですが,いろいろなところを分析はしていくけれども,最後は組み合わせてトータルして見ていく視点も持たないと,この制度は全く働かなくなっていくのではないかと思っております。ただ,その作業のためには一つ一つ,ややもするとどんどん細かくなってわけが分からなくなってきますので,今,細かい分析をしていますけれども,最後はそれをトータルして,総体としてクリエーターにきちんとリターンがいっているのかどうかという判断をする必要が出てくるのではないかと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。末吉委員,それから,大渕委員,御意見いただいたところでございますけれども,結局,補償すべき範囲の問題がそのままスキームの中に反映できれば,それは非常に簡単な話でありますが,なかなかスキームとの関係で言うと難しいところがあるのですね。きちんとリターンを行えるようにするためにスキームを作っていかないといけないと思いますし,末吉委員が言われたように量的な問題もその中には組み込まれていくのだろうと思います。

したがって,きょうの補償すべき範囲の問題として,DRMがついているから一切補償金の対象にならないとはならないと私は思っておるのですけれども,そういう意見について,松田委員,どうぞ。

【松田委員】今,主査が言われたところと,ダビング10につきましては結論的に同じになると思います。どうしてかと言いますと,ダビング10の合意をしたのは,そういうシステムを作るところの当事者でございまして,それに視聴者が加わって,私的複製の許諾を権利者からもらっているわけではありません。私的複製の許諾は成り立つかどうかというのも,もちろん1つの論点ですけれども,もし許諾が許されるとしても,法的に可能だとしても,視聴者は権利者からいちいち許諾をもらっている状況には私はないと思います。ということは,なぜそれでは私的複製がダビング10の上で視聴者ができるかといったら,30条の1項しかないと思っています。ですから,これは補償の範囲に含まれるべき30条第1項そのままではないかなと私は思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。この点,ほかに御意見はございますか。

河村委員,どうぞ。

【河村委員】主査がおっしゃる,DRMがかかっていると全然補償の範囲に含めることができないのかという問いかけですが,できるか,できないかつまりそういう制度が成り立たないかといえば,成り立つのかもしれませんが,するべきかどうかということだと思っております。最初に理由ですよね。不利益なのか,調整なのか,そもそも対価が足りないからなのかということを申し上げた後に,そうではなくて不利益があるからという基本的なところからいくべきと整理されてきたように思うのですけれども,消費者として申し上げると,いかに放送にダビング10という機能を持たせるために,録画を全くしない人も含めて消費者は不利益を被っているか。権利者の不利益というのであれば,消費者の不利益も考慮されるべきです。地上波のテレビ番組は無料広告放送ですが,もっともNHKには払っていますが,機器にお金を払っていますし,有料コンテンツにはお金を払っています。そのとき,それがどんなふうにスムーズに使いやすく使えるかというのは重要なことで,それに係った対価に対しての得るべき利益がそこで損なわれているわけですよね。その話は関係ないといつもこの席で言われるのですが,DRMをかけることによって,録画を制限されるということ以外に消費者に大きな不利益をもたらしています。ダビング10はその場でも何度も申し上げたのですけれども,10枚したいとか,30枚したいという話ではなくて,それを実現するためにたくさんのばかみたいな技術をかけなくてはいけない。例えばスクランブルをかけて放送しなくてはいけなくて,3.11のときにはB-CASカードが飛び出したり破損したりしたためにテレビが見られなくなってしまって,被災地で大切な情報を流す番組も見られなくなったということがありました。

最初のところに戻りますと,権利者に不当な不利益が本当にあるのかどうか。違法なところに踏み込まないというのであれば,ここで書かれているような様々な細かいことも含めて,消費者がそういうことをしていることによって本当に不利益があるのか。椎名さんは何回も私がこう言うのを聞いたかもしれませんけれども,椎名さんはそもそも30条がなければ私的複製はないのだからその場合は権利者に不利益はないという言い方をされますが,現実的な,客観的な社会を見たときにはそんなことはないと私は考えています。コピーできなかったら1枚目を買わないかもしれないのです。便利に使えないのだったら,CDを買ってきてCDプレイヤーでしか聞けませんといったら,そのCDは買わなくなります。デバイスで聞けるから,いろいろな便利な使い方ができるから買うのであって,テレビ番組も,プレイスシフトもタイムシフトもできないというのであれば,もはや見ません。見られません。華頂委員とはやりあいたくないからずっと黙っていたのですが,コピーネバーとおっしゃいますが,劇場の映画のことは私はノータッチですけれども,テレビでの映画放映もビジネスだと思います。コピーネバーではなくても流すのは,例えば新しいドラえもんの映画が上映されるから,間もなくロードショーだから,古いドラえもんの映画をテレビでやると,もうその番組は1つ,丸ごとコマーシャルみたいになっています。子供たちが,ドラえもんグッズが欲しくなるように,間もなく劇場でやるところに行って,何かのおまけがもらえるようにとか,すごく作り込まれていて,とてもとてもダビング10だから不利益とかいう問題とは思えません。それがコピーフリーであったとしても,かつて映画もテレビでコピーフリーで放送していたのですから,不利益があるとは思えないのです。ですから私は不利益があるかどうかで判断するのであれば,私的複製の対価還元は必要がないというのが結論だと消費者から見たら思っております。ただし,そうではない理由があるのだったら,それはまた別の観点で意見を述べなくてはいけないと考えています。だから最初に一体何のためなのですかと問いかけました。明確に不利益が生じていることを補償するのだということであれば,不利益は生じていないと私は考えています。

【土肥主査】では,華頂さんからどうぞ。

【華頂委員】今,河村委員の御意見も何度も何度も聞いた御意見だと思うのですが,参考資料2の6ページに私がかつて発表させていただいた「動画コンテンツの流通」という図があります。映画というのは,今,この時代,もう随分前から,ワンソース・マルチユース,ビジネスモデルが基本になっていまして,一次的な映画館での上映から二次的な利用が非常に肝になっているということがあります。ですから,一番右を御覧いただくと分かるとおり,二次的な利用を全て,視聴だけをお届けして複製を全部禁止している。繰り返しになりますけれども,スクリーンからの私的録画も法律で禁止したということがあります。唯一,テレビ番組だけは我々が制御できないところでコピーされているというところで,これを御覧いただいただけで我々も不利益なのです。コピー,複製物がその後飛び回ってしまうということは,二次的な利用で全て我々が制御して,その映画の生涯利益を最大にするためにビジネスをしているわけです。けれども,テレビの録画だけは制御できない。我々がここをきちんと,視聴だけできてコピーができないということになれば,それはそれでこのグレーゾーンは消えると思うのですけれども,ほかの二次利用と同じようなことになる場合。だけれども,それが今の技術をもってしてもできませんので,ですから,繰り返しになりますが,このようになっているということです。

【土肥主査】椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】河村さんのおっしゃっていることに反論するつもりはございませんが,1点だけ。消費者はコピーできなければコンテンツなどは買わないのですよとおっしゃったこと。これはコンテンツに対する大変な侮辱だと思いました。河村さんの価値観はそうだということは分かりますけれども,クリエーターはコピーしてもらうためにコンテンツを作るわけではありませんし,ユーザーもコピーを目的でコンテンツを買うわけではないと思います。その言い方を公的な場所でするのは極めて侮辱的であると思います。撤回してください。

【河村委員】以前も椎名委員に怒られたことを思い出しますけれども,その言葉が傷つけたのであれば謝罪いたします。私の言い方はときどき人をムカッとさせるところがあるようですけれども,私が言いたかったのは,複製をしたいからではなくて,もはや今の時代,それこそがコンテンツを楽しむ手段のために必要だからです。ポータブルCDプレイヤーを持って歩く人などもういません。ですから,複製したいからという意味ではなくて,コンテンツを今の時代に合った形で楽しむためには,著作権法上で言う複製がいや応なくついてくるという意味であって,今の時代に合った楽しみ方で音楽コンテンツを聞くということ自体ができないなら買いませんと申し上げているだけで,コピーしたいということではございません。もし言葉が傷つけたのであれば,心から謝罪いたします。

【椎名委員】だから権利者も30条の1項を廃止しようとは言わず,この議論をしているのです。そこを分かってほしいのです。撤回をしていただきましたので,その点はありがとうございます。

【土肥主査】私などは法令集を必ず持って歩くわけでありますけれども,家で使うものと学校で使うものは2つ買うわけですよね。デジタル技術のすばらしいところは,複製ができるということで,1つ買えば,複製できれば,どこでもそれが使える。この技術は非常にすばらしいものですから,そのメリット,いい点は大切に,大事にする必要が当然あると思うのですけれども,そのために,もしハードペーパーであれば,2冊売れるところが1つしか売れない。こういうわけですよね。だから,著作権法30条1項,2項の立てつけを見ると,データ類については,もう一回繰り返して補償金を払うという仕組みに基本的になっているわけです。ですから,一般消費者の方のデジタル技術の便益を最大限活用していただきたいと思うのですけれども,併せてクリエーターの方の利益もバランスを取ってやっていければ一番いいのではないかと思っております。この点についてはこのぐらいにしたいのですけれども,更に質問があります。

音楽のところだけに限らないのですけれども,ここでは音楽のマル4でクラウドの問題ですが,クラウドに私的複製する場合について,補償すべき範囲に含めるかどうか。この問題であります。これは御意見の方ではよく分かるわけでありますけれども,クラウドだけに限定する話なのか,あるいはもっと広げていける話ですよね。これはパソコンとか,そういったものも想定されておられるということになりますか。

【椎名委員】この分析は複製のソース,どこを出発点として複製が起こるかということを主に分類しているものだと思うのです。パッケージ,配信,レンタル,無料放送番組,有料放送番組。そこのたどる経路の中にこのクラウドの話が出てくるのだと思っていて,例えば,一部契約でクリアされているものがクラウドを通過して私的複製されていくこともあり得るということで,だからこそ左側の分類ではなく,右側の青い網の掛かった中にクラウド,雲が入ってくるというところでの理解をしていたのですが,当然,御質問にお答えするとすれば,パソコンも入る。

【土肥主査】入るということで,お答えになっているわけですよね。補償すべき範囲としての最大限と言いますか,外縁という意味ではそういうことなのだろうと思いますけれども,スキームや手段を考えていくときには,大きな問題になってくるのだろうとは思います。1つそこの点を確認させていただきました。

河村委員,どうぞ。

【河村委員】先ほど椎名委員に怒られて私が謝罪いたしましたので,意見そのものが全部撤回させられてしまったかのようになってしまうと困ると思って一言申し上げます。その後の主査の御発言を聞いていますと,何のために補償をするのかというところが,私には時々によって違う,不利益だからなのか,それとも30条,つまり,私的複製を許されているから,それに対して何か敬意というか感謝をお金の形で払えと言われているような感じもします。つまり,私は不利益だというお話になるのであれば,不利益はないのではないか。しかもビジネス的な,客観的なことを考えても,そういうことは十分コンテンツが売れることとリンクしているのではないかということを申し上げました。権利者さんはだから我々も30条を受け入れているのではないですかとおっしゃり,それは本当にすばらしいことだと思いますけれども,何で消費者は補償するお金を払わなければいけないかというときに,そこをはっきりした方がいいと思うのです。不利益があるからなのか,何なのか。許されていることイコール不利益があってもなくてもそうなのかとか。そうでないと,意見が大変言いづらいと言いますか,この先も不利益はこの際関係ないのだとだれもおっしゃっていないとは思うのですが……。

【土肥主査】大渕委員,お願いします。

【大渕委員】これは補償金の本質に関わる重要な点で,こういうのはきちんと議論しておいた方がいいと思うのです。30条はこの面が分かりにくいのですけれども,分かりやすいものとして言えば,教育の情報について,現行法だと複製と同時送信について補償金がついていないわけですが,異時送信については恐らく補償金をつけてという方向になってくる。これはその都度強調していますとおり,権利制限の幅と補償金というのは関連していまして,これは30条1項で全員が納得していて,ここのところは余り動く感じではないですけれども,1号,2号,3号とどんどん例外が広がっていますが,これは非常に比較法的に見ても1号,2号,3号の例外を除くと,現行の30条1項というのは非常に私的複製にやさしいというか,要するに,要件はほとんどなくて2つしかありません。「私的使用の目的」というのは私的使用複製だから当然の目的ですが,それ以外には部数とか量とか手段とか,1号,2号,3号は別にすれば一切制限せずに,また同じことを何回も言っていますが,主体の一致しか要求しておりませんで,目的以外は「その使用するものが複製することはできる」だから,第三者を関与させてはいけませんけれども,自分自身でできる範囲では部数も何も一切制限せずに自由に私的複製ができますという,非常に私的複製にやさしい。ただ,これを維持できているためには,当初は1号,2号,3号はなかったのですが,段々と削れてきているし,もう一つの支えとしては,この権利制限というのは,許諾を得ずに複製ができるわけですけれども,それが1円も払わずにかどうかというのはまた別の問題であります。現行制度としてはそこをうまく組み合わせて,幅広い30条1項の私的複製の権利制限を認めている反面,それで生ずべき権利者の不利益については,補償金で賄うということになっておりますので,補償金の方を下げていくとこれは簡単な理屈ですけれども,不利益が生じてくるので,もっと30条1項の範囲は狭まってくるというのは,恐らく我々も含めて余りハッピーではない状態になってきます。そこのところは制度の組み方なので,最後は利用者と権利者とのバランスということになってくるので,支払義務者とかもっと別の話に絡んできて,ここはそこも範囲に入れないとなかなか議論しにくい点ではあります。トータルとしてどういうふうにバランスを取っていくのがいいのかというのは,現行法では比較的広い範囲で私的複製は認めているかわりに,生ずべき不利益は補償金で賄うということなので,補償金をなしにすると範囲の方が狭まってくるということがあるので,全員にとってWin-Winな状態というのは,余り補償金の方を下げていくと結局は入り口のところが狭くなって自由に複製できなくなってしまうので,そこのところはトータルに考えていく必要があるのではないかと思っています。

【土肥主査】ありがとうございました。

奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】関連して私も申し上げさせていただきますと,不利益があるかどうかということであれば,私的複製がある以上,不利益があるという言い方はあり得ると思います。ただ,一方で,不利益があれば,その全てを補償しなければいけないのかどうかで,これは先ほどから,申し上げておりますけれども,グラデーションがある話であって,しきい値という議論はあるのだろうと私は思っております。例えば,引用規定にしましても,引用されれば不利益は権利者にあるはずです。しかし,それでも引用について補償金という議論はあり得ません。それは,引用規定というものの性質を考えれば,そういうものだということになるはずであります。したがって,私的複製の意味,趣旨との関係において,この程度までは補償は必要ではないものの,ここから先は必要があるという議論は,スキーム上できる,できない,の問題とはまた別の次元で,根っこにはあるのだと私は思っております。

その上でさらに,今の,大渕委員の御発言の関連で一点だけ申し上げると,例えば,私的複製についても数の議論はありますけれども,個人が使用する限りであれば,1万個のコピーしたところで構わないと言えば構わないし,それは個人の使用の範囲であれば権利者にとっても何らの不利益にもならないような気がします。この数の議論というのは,数が多いことがストレートに問題ではなくて,実は,数が多いと私的使用にとどまらず,そこから先の目的外使用の可能性を高めるところにつながっていくところがあるので,問題なわけです。その辺も切り分けながら議論する必要はあるように思います。いずれにしましても,私としては,不利益の全てを補償すべきかどうかと言われれば,それは形態によって違ってくるのだろうということは整理しておくべきかな,と思っております。

【土肥主査】では,小寺委員からお願いしましょう。

【小寺委員】ただいま大渕先生と奥邨先生のお話を受けて,せっかくの話ですので,具体的なところへ落とし込みたいなと思っているのです。私が以前から主張していますように,テレビ放送を最初に録画する瞬間というのは,録画行為は既に国民の中に当たり前のように深く根付いておりまして,それに関して被害があるとすれば,だれが支払うのかという問題もまた別にあるのですけれども,それが例えば,利用者であると仮定すれば,もう既に日常としてなじんでいる行為に対して今更権利者に被害があるので国民,利用者に支払をしなさいというスキームを作るのは,末吉先生もおっしゃったように,気の毒論ということからすると,それはさすがに国民に対して気の毒ではないのかなと思います。不利益があるということに関しては否定はできませんけれども,さすがにそこの第一歩のところだけは,どうか権利者の皆さん,そこは泣いていただけないでしょうかというのが,私の提案でございます。

【土肥主査】杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】私はどちらの主義主張があるわけではないので,感想みたいな話になってしまうのですが,私的複製の言葉の理解であったり,それを法的にどういうふうに解釈するかということに関しては,ここは本当に有識者がそろっているので,その言葉の意味するところとか,どの状態をもって私的複製としようということに関しては,ここで継続して議論していった方がいいと思うのですけれども,不利益問題に関しては,正直に言ってここのだれもそれに対しての正確なデータを持っていないと思うのです。そのデータは,私は市場にあると思っていて,そういった意味では,これからということになると結構大変な話になるかもしれないのですけれども,継続的に私的複製が何者かに対して不利益ないし利益を出しているということが恒久的に続くのであれば,ある一定期間,この不利益が出ているかどうかということを解明するという目的を持って,きちんと市場調査をした方がいいのではないかと思うのです。要するに,モニターをきちんとつくる。今,ここで議論されている,例えば2016年現在で,私的複製とされているラインナップと流通経路はあると思うのです。それに対してのモニタリングをきちんと一定期間やった上で,それの結果として,例えば,ダビングが幾つかされている,あるいはダビング行為がされている,あるいはコピーがされている,録画がされているということの状態は確認できると思いますし,それが実際どういうふうに利用されているのか。では,録音はしたけれども,録画はしたけれども,実際に聞かれているのか。何回聞かれているのか。そういう回数の利用というのは非常に大事だと思っていて,行為そのものが権利者のマインド的にどういうふうに既存していくかという話ではなくて,市場に対してどういうインパクトを与えるかといったところが,私は不利益というところで解釈をしているので,そのデータをもった上で,こういった有識者の方々に集まっていただいて,これだけのものがこういった形で私的複製がされたものというのが,こういうふうに利用されている実態を全て見た上で,これが権利者に対して不利益を生み出しているものなのか。あるいは,私的複製をした人に対して,不当に利益を得ている行為なのかといったところに関しては,もう少し客観的に見ていった方がいいのではないかと思うのです。そうでないと,それぞれの立場側にいる人にとっては,思いで話をしてしまうので,多分,全然らちが明かないというか,永久に話がつかない話かなと思うのです。ですから,もう少し客観データを基に,客観的に話し合う状態を作っていかないと,幾ら話しても終わらないのではないですか。

一点だけ済みません。主査が先ほどおっしゃった,法律書を2冊もともと手持ちで持っていたところを,デジタルになって1冊になって便利だねという話と,これがただ,紙のものだったら2冊売れたかもしれないというのは,違うと思うのです。1冊で流用するということもできますし,そこで2冊売れたものがデジタルになってしまうので,1冊しか売れる機会がなくなってしまったというのは,これは議論としては少し違うと思うのです。もし,そういった複数の場所で使うことを目的とするということがそもそもあるのであれば,それは私的複製の範囲でおさめるというよりは,そういった利用回数に応じて料金体系が変わっていくものに変わっていけばいいだけの話なので,これはビジネスモデルが追いついていないだけの話なのですね。

【土肥主査】私がさっき申し上げたのは,私の経験で申し上げたわけで。

【杉本委員】ですから,それは誤解を生むと思うのです。

【土肥主査】それと私的複製の実態に関しては,あれはどこがやりましたか。実態調査の報告書は出てきましたよね。

【椎名委員】録音,録画はやりました。

【杉本委員】いや,全てのジャーナルに基づいてやっていないでしょう。

【土肥主査】白表紙のかなり厚いものを頂いたことがあるのですけれども,紹介いただけますか。

【俵著作物流通推進室長】2014年7月だったかと思うのですけれども,今,椎名委員が言われたように,私的録音録画に関する実態調査は行われています。

【土肥主査】野村総研ですか。

【俵著作物流通推進室長】私的録画補償金管理協会の事業として委託を受けているのは,著作権情報センター附属著作権研究所。野村総合研究所が協力する形をとっていたかと思います。私的録音録画についての実態調査として,活用できる1つのデータにはなるのかと思います。

【杉本委員】それであれば,そのデータに基づいて話しませんか。

【土肥主査】今の杉本委員の御提案に関しては,少し考えさせていただくということでよろしいですか。今,この場で結論が出しにくい話になりますので,つまり,期の中で再度出すのか,あるいはどういう形になるのか,少し考えてみたいと思います。

【杉本委員】そこは別に私はそれをやってくれという話をしているわけではないので,あくまでも提案です。せっかくその調査データがあるにも関わらず,そこから外れた議論になっている感じが私はしたので,それであればもう一回差し戻って,データがあるのであれば,データにオリエンテッドの状態で話をしていった方が,むしろより客観的ではないかということを述べたいだけです。

それと,私的複製という言葉に対しての行為の解釈は,また別の話だと思っているので,私はあくまでも不利益が出る,出ない,といったところに関して,市場的にどうなのだといったところは,データが一番分かりやすいのではないかと思ったわけです。

【土肥主査】データに関して,おっしゃるとおりだと思いますけれども,一応我々はそれを踏まえた上でここに出席していることになっているのですね。ですから,その辺のところは御理解いただきたいと思います。

華頂委員,先ほど手を挙げられましたけれども。

【華頂委員】小寺委員の御意見ですけれども,きっとタイムシフトのことをおっしゃっていると思うのです。私も冒頭に申し上げて繰り返しになりますが,タイムシフト視聴が,同時視聴するのと同じ対応で,少しずれた時間に見るのだということであれば,百歩譲って小寺委員の言うとおりかなと思うのですけれども,冒頭でも申し上げましたように,タイムシフトするために複製された番組コンテンツが,同時視聴と同じように消えていくという保証もないので,そこのところでずっと私は申し上げたいわけです。ですから,この冒頭に申し上げたとおり,動画コンテンツ(1)のマル1,「主な意見」うんぬんかんぬんがあって「権利者に不利益が生じない」とタイムシフトのことをおっしゃっていますけれども,これはそういうふうに言い切れるものではないと思います。

【土肥主査】よろしいですか,小寺委員。

【小寺委員】華頂委員に質問ですけれども,録画したものが消えないということの意味は,繰り返し見る可能性があるからということでよろしいのですか。

【華頂委員】そうですね。先ほど楠本委員もおっしゃいましたけれども,ハードディスクに固定されていたとして,それを繰り返し見ますし,それを例えば,ホームパーティーか何かをやってしまって,「いい番組があったんだよ。みんなで見ようよ」と余興で見るとか,そういうことも全て起こり得るわけですよね。そういうことです。だから,それが固定された,複製されたものがその後も利用される。タイムシフトのために録画したのだけれども,それをそのまま固定していたがために,それがどんどん流用されていくということも起こるわけですから,だから,先ほども申し上げたように,私たち映画は特に二次的な利用を非常に重要視しているので,コピーを禁止しているわけです。そのコピーを禁止したからと言って,ではスクリーンで,ビデオカメラで撮るのは駄目だよという法律を作ったから映画館にだれも行かなくなるかといったら,行くのですよ。「君の名は」は17日間で62億入っているのです。リピーターも多いと聞きます。そういう状況でその映画の収益を最大化するために二次的な利用を全てコントロールしていいますけれども,テレビ放送だけはそれができないという状況だから,繰り返しになりますが,タイムシフトといえども,権利者に不利益を生じないという言い切りはできないと思います。

【土肥主査】私も小寺委員のお考えのところがよく分からないのですが,タイムシフトの場合であれば,それは私的複製には入るのだけれども,そこは少し我慢してくれと,そういうことで言われておりますよね。

【小寺委員】そうですね。確かに華頂委員のおっしゃるように,いったん録画して固定化されたものを何度も利用するという意味では,不利益があるかもしれません。そこは認めるところではありますけれども,ただ,それは次のステップとしては量の問題というか,やる人の多さの問題に次の段階があるのかなと考えます。例えば,どのくらいの番組が日本中で録画されていて,そのうち2回以上見るのは何%なのかといったところも勘案すべき部分はあるのだろうなと思います。2回以上見ないのであれば,当然1回見ただけで自動的に上書きされるなり,自分で消すなりして運用しているはずですので,そちらの実態もまた今後の議論として考える部分は恐らくあるだろうと思っております。

【土肥主査】杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】事務局にお伺いしたいのですけれども,今のことこそデータの話だと思うのです。それは利用実態からひも解けないのでしょうか。それはデータを見るに明らかではないですか。あるいは,調べていないのであれば,私は済みません,数字を押さえていないので申し訳ないのですが,それこそが今の調査書の中にまさに回答が載っているのではないでしょうか。それが規模の問題として既存しているのか,規模の問題として既存レベルではないのか。そもそも行為そのものが不利益を出しているのかというところの3つの議論に生きると思うのです。

【俵著作物流通推進室長】その調査の中では,私的録音あるいは録画を1コンテンツで何回ぐらいやっているかというデータは恐らくあると思います。今,ごめんなさい,私も覚えていません。

【杉本委員】ですので,要するに言いたいのは,それが調査報告書で出ていて,全員がそれを理解しているのであれば,その質問と議論はそもそも出なくていい話ではないですかということです。あるいは載っていないのであれば,調査が足りない。どちらかです。

【俵著作物流通推進室長】そのデータを活用することはできると思います。どのデータが存在し,どのデータが存在していないかについて,現時点で正確に覚えていない状況です。

【杉本委員】それであれば事務局から,こういうデータがありましたねという話で示唆をしてほしいのです。一番頭に入っているのは事務局だと思うし,当然,私だってこの調査報告書をきちんと全て読んでいるわけではないので頭に入っているわけではないですし,こういったところでそれぞれの有識者の方々の得意分野からいろいろと発言が出たときに,ただ,それは既に調査がされているという話があるのであれば,それは指摘していただいた方が,むしろ議論が活発化するというか,次の議論にいけるのではないか。そうでないと,もしデータがそろっていたのであれば,今の数分間は時間の無駄になってしまうではないですか。

【土肥主査】今,杉本委員がおっしゃっているような話というのは,スキームでは出てくるのだろうと思うのですけれども,つまり,量的な問題とか,そういうことは必ず出てくるとは思うのですが,現在やっているのは,補償すべき範囲として入るかどうかという話ですよね。ですから,今,杉本委員のおっしゃっていただいたところについては,事務局で,野村でやった実態調査でどういうふうになっているかというのは,次回までに調べてみたいと思います。

【杉本委員】それは承知しました。私は,だから,不利益の部分の定量的な把握をしたいだけなのです。

【土肥主査】もちろん,定量的な話というのは,どうしてもこの話というのはどんぶり勘定近くになるのですけれども……。

【杉本委員】だから,それではいけないのではないですかというところを提案したいのです。

【土肥主査】いや,私的複製の場合は,どうしてもその問題がついて回る。

【杉本委員】本当にそうですか。

【土肥主査】以前からの議論を思い出してください。

【杉本委員】ですから,私的複製の解釈の話というのは,私は定性的にと思っているのですけれども,それが不利益を出すか出さないかということに関しては,定量的な把握が必要ではないのかなということを提案しただけです。

【土肥主査】そもそも30条で入っているのは,正当な利益を不当に害さないから30条が置かれているわけですね。その正当な理由を不当には害していないけれども,個々の権利者の利益に私的複製が行われることによって影響があるかというと,それは当然あるのだろうと思います。私は細かい数字を定量的に正確に理解していませんけれども,大変な私的複製の総量があるということはこれまでも何度か出てきたところでございますので,正確なところは次回まで少し宿題にさせていただければと思います。

【杉本委員】はい。

【土肥主査】この定量的な話というのは一応置いておくとして,権利者の利益を害しないのかというところで,「害しない」というお立場の委員の先生,おいでになりますか。河村委員はどういう御意見がよく承知しておりますけれども,ほかに。30条の対象,範囲に入れなくてもいい,そういう意味での権利者の利益には関係がない,利益を害さないという御意見の方がほかにおいでになるのかなということでございます。範囲の問題としては,それは当然あるのだろうと私は思うのですけれども,そう考えてはいけませんか。御意見いただければと思いますが,小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】そういう意味では,何度も申し上げてしつこいですけれども,バックアップに関しては利益を害していないと私は思っています。バックアップというものの考え方に多少誤解があるのかなと思うのですけれども,バックアップというのは,そもそもそのデータ自体から再生したりすることがない,動かさないデータであるということなのです。何かトラブルがあって,もともと運用しているデータが失われたときに,そこから戻してくるだけであるということなので,もともと運用しているデータがあって,そこからもう一回コピーがある。それがバックアップですね。その運用しているデータの次に備えてあるものに関しては,運用はしていないので,不利益は生じていないのではないかというのが,私の意見でございます。

【土肥主査】していないかどうかは,まさに実態的な,そういう定量的な判断にも関わるのだろうと思います。つまり,確かにビデオなどでも録画だけしておいて全く見ない。そして,消してしまうというのは実態的には等々あるのかもしれませんけれども,30条という規定の性格からスタートすると,それはバックアップのためであろうと,私的複製をしていると言わざるを得ないのだろうと思うのです。スキームのところでどう切り取っていくことになるのかというのは,またそれは次の話だと思いますけれども,範囲の問題としては入ってくると言わざるを得ないし,これはほかの委員の方もおっしゃっておられたと思います。

時間的にもだんだん少なくなっておりますので,この補償すべき範囲の点で,この論点のところで言い足りないとか,ここは言うべきだというところがございましたら,是非お願いをいたします。

河村委員,どうぞ。

【河村委員】DRMのことです。DRMがかかっているかいないかで,1かゼロかではないだろうということが何回か投げかけられているわけですが,それに対して意見があります。DRMをどのようにかけるかということを技術の中で自由に設定できます。テレビ番組,特に無料放送の場合は,変えるには手続がいるかもしれませんけれども,大概の場合事業者さんの都合で決めることができる。つまり,消費者の側(がわ)には全くそれの自由がないわけですよね。与えられた物で受け取るだけなのに,DRMがかかっていても対価還元のルールは可能というのは,不公平なのではないかと思います。

あと不利益論ですけれども,不利益がないと思っている方が私以外には一人もいらっしゃらないようですが,私的複製というところで想定されているものというのは,適法に個人,消費者が手に入れた何らかのコンテンツをプライベートな空間で,そのコンテンツを自分の耳とか目で楽しむわけで,デジタルデータだから数が増えることもあるかもしれないし,どこかにたまっていることもあるかもしれないし,でも,逆に言うとデジタルだから消えていくもの,ハードディスクには寿命があってデータが消えてしまうこともあるわけです。

クラウドのときも申し上げましたけれども,私がどこかで聞く以上,私は二人いないわけだから,同時に何人も私が聞くわけではないわけで,どんなにいろいろなバラエティ豊かな使い方をしたとしても,私が適法に入手したものや,適法にあるものを楽しむことについて,不利益を与えているという考え方は理解できません。それが違法なところにつながっていくということをもって,不利益なのだという点は私もそうかもしれないとは思いますが,そこは切り分けるべきだということが前提としてあるわけですから,そういう点から言うと,個人が適法に手に入れたものをプライベートな中で時を変え,場所を変え,デバイスを変えて今の時代に合った楽しみ方をするということこそが,その作品を作った人への愛情であり,敬意であると思っています。

お話を聞いていると,聞かれない方が,見られない方が,著作権者の方の利益であるかのように聞こえてくるのですが,作品を愛して,私的に何回も楽しむ,そういうことこそがコンテンツへの敬意だと思いますので,私はこの理屈の範囲内で言われている使い方である限り,不利益はないのではないかと思います。産業間の何とかということであれば,話は全く別になってきまして,それはそれでもしやるべきことであるならば,別の場所で別の根拠で議論するのであれば,私は必ずしも反対するものではないです。いつも消費者が不利益を与えているというところから話が組み立てられていき,「あなたの言うこともわかるけれど,やはり不利益だから」となっていくのですが,うやむやな状態でもう10年以上これをやっているわけです。何でこれまで決まらなかったかということを思い起こせば,私がここで黙ると皆さんが助かるのかもしれませんが,これまで頑張ってきた消費者代表の方もいらっしゃるわけなので,おかしいものはおかしいと言い続けたいと思います。

【土肥主査】はい。不公平というのは,どういう場面のことをお考えになっているのですか。つまり,DRMがかかっているという場合に,そういう中でダビング10ならダビング10がかかっている中で一般の視聴者が複製をするということに関して不公平ということが分からないですが,どうして消費者が不公平になるのですか。

【河村委員】補償金をどういうふうにかけることになるのか分かりませんが,いずれにしても私は反対しますけれども,これからもし仮にとられるときに,かつてのようにこの機器にとか,この録画機能のあるものにとやるのであれば,DRMの程度が固定されていないとしたら,料率がそれでフレキシブルに変わるわけではないだろうと思うので,DRMによって消費者の自由度がフレキシブルに変わるのに,「この機材は幾らです」というようになるのは,消費者にとっては不公平なのではないかということです。テレビも含めて,DRMの中身は変わっていく可能性があるわけですし,全てがコピーネバーにならない限り,複製できているのだから払うべきと言われることになるということからすると,不公平だということを申し上げました。

【土肥主査】そのお話は著作権のスキームの中で議論するとなると……,華頂委員が手を挙げられていますので,華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】今,河村委員の御意見に何だというわけではないのですけれども,私は最後に一言申し上げたかったのは,西田さんがメーカーとコンテンツの権利者との経済的な利益のことについて先ほどお話になったので,それについて一言申し上げたいと思います。

録画で言えば,メーカーさんが作っている機器というのは,再生録画ができる機器をほとんど作っているわけです。再生機能と録画機能に着目をした方がいいと思うのです。再生機能の方は,特に映画はVHSの時代からDVD,Blu-ray discと,これはWin-Winの状況ですね。そういう再生機器ができて,新しいパッケージができて,それを発売して,その都度利益を上げている。お互いにということで,今でもよろしくやっていますし,これから先もよろしくやっていくというような関係ですね。

ところが,録画機能に着目すると,私的録画補償金があった時代は,その私的録画補償金を我々が受領(じゅりょう)している。そして,メーカーさんは録画機能を売り広げているということで,これもWin-Winの状況でずっとやってきた。ところが,今,録画補償金が途絶して,我々の作ったコンテンツがその録画機能をメーカーさんが売り広げるためのツールとして使われているだけになってしまっているという状況ですよね。ですから,そこのところをきちんと元に戻していければなということでございます。

【土肥主査】御希望ということですね。ほかに。

世古委員,どうぞ。

【世古委員】最後に一言言わせていただきます。河村委員がおっしゃいました,個々の個人的な領域の中での微々たる複製について,ではそれで権利者に対して不利益があるのかといった側面でとらえれば,私も冒頭で申し上げましたように,そこは30条の趣旨からいって,それは微々たるものであるし,大きな問題ではないのだろう。ただ,それが国民の中で広く私的複製が行われるという累積を元に,総体として大きな複製が行われるということで補償の必要性がそこであるのではないかということを考えております。

以上です。

【土肥主査】ほかにいかがでしょうか。時計ですとちょうど12時を指していると思いますので,せっかくの機会でもございますので,是非御意見があればお出しいただければと思います。その他も含めてよろしいですか。

本日はどうもありがとうございました。本日は各論点について全般的に自由に意見を交換していただいたと思います。本日の意見交換に基づいて,各論点をまた事務局には整理していただいて,次回,一歩前にまた進めていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。いろいろ委員の方々のお立場もあろうと思いますけれども,皆様方の知識とか高見,そういったことを期待しておりますので,日本のコンテンツ全体の利益,消費者の利益,そういう全体の利益を考えて,ひとつ今後とも議論を進めていただければと思います。

次回については,整理を頂くわけですけれども,補償すべき範囲という点は,本日かなり議論していただきましたので,範囲の中のどの補償と言いますか,どの範囲が必要なのかという具体的な議論を,音楽コンテンツの分野から始めていきたいと思っておりますので,是非御協力をお願いしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【池野著作物流通推進室長補佐】本日は,ありがとうございました。次回の小委員会の日程につきましては,また日程調整させていただきまして,確定次第,御連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。

いずれにしても,議論が今非常に盛り上がっておりますので,余り時間を空けないで是非集中的な議論をして,とにかく機のありますときには何らかの成果を上げていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

それでは,これで著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第3回を終わります。本日は,どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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