文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会(第5回)

日時 平成29年2月28日(火)

13:00~15:00

場所 文部科学省 3F1特別会議室

議事次第

1 開会

2 議事

  1. (1)クリエーターへの適切な対価還元について
  2. (2)平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について
  3. (3)その他

3 閉会

配布資料一覧

資料1
「補償すべき範囲」についての考え方(たたき台)(190KB)
資料2
平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(案)(610KB)
机上配布資料
「私的録音録画に関する実態調査」報告書

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でもございますし,全ての委員おそろいでございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の第5回を開催いたします。本日はお忙しい中,御出席を頂きましてまことにありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,この点特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

事務局において人事異動がございましたので,報告をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。1月13日付で文化庁長官官房審議官に永山裕二が着任をしています。

【永山文化庁長官官房審議官】永山です。どうぞよろしくお願いします。

【俵著作物流通推進室長】同じく,1月13日付で著作権課長に水田功が着任をしています。

【水田著作権課長】水田でございます。よろしくお願いします。

【土肥主査】それでは,続きまして,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】ありがとうございます。お手元,議事次第の中に配付資料一覧を記載させていただいております。今回,資料は2つありまして,資料1が「『補償すべき範囲』についての考え方(たたき台)」,これが1つです。資料2「平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(案)」と,これが2点目になります。そのほか,机上配付資料として,私的録音録画に関する実態調査の報告書を置かせていただいています。よろしくお願いします。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,議事の進め方について確認をしておきますけれども,本日の議事は,1.クリエーターへの適切な対価還元について,2.平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について,3.その他と,このようになっております。

早速でございますけれども,議事に入りたいと思います。本日は,今期最後の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会となっております。本小委員会の審議の状況について,審議経過報告という形でまとめるということになっておりまして,この委員会においてまとめていただいた報告を,3月に開かれますところの著作権分科会において,私から報告したいと思っております。どうぞよろしく御協力を頂きたいと思います。

それでは,前回に引き続きまして,補償すべき範囲についての議論を頂きたいと存じます。これまでの議論を踏まえまして,補償すべき範囲についての考え方のたたき台を事務局が作成しておいででございますので,このたたき台について,事務局に説明をお願いいたします。

事務局から,じゃあ説明をお願いいたします。

【俵著作物流通推進室長】今,主査から御説明いただきましたように,今回,今年度最後の小委員会になりますので,今年度に議論いただいた内容を整理した審議経過報告をまとめていただきたいと思います。その案が資料2に当たりますが,その議論の前に,整理いただいた論点の2に当たる,補償すべき範囲の考え方について(たたき台)としてまとめたものが資料1になります。議事としては,それぞれ別々に設定させていただいておりますが,これらについてまとめて事務局の方から説明させていただきたいと思います。

最初に,資料2を御覧いただけますでしょうか。審議経過等についてとありますが,審議経過報告としてまとめていただきたい内容になっています。構成としては,最初に「はじめに」がありまして,次に「審議の状況」,最後に「おわりに」という構成にしています。「審議の状況」の2番目に「検討の状況」としていますが,この(1)が私的録音録画に係るクリエーターへの対価還元についての現状となっています。昨年度から議論いただいていますが,今年度の最初のときにこの現状についてまとめていただいていますので,その内容をそのまま記載させていただいたものになります。

この資料の9ページ目までがこの関係になりますが,10ページ目に「検討の状況」の(2)として,補償すべき範囲としています。これは,今回の小委員会の議論を踏まえて記述をしたいと考えている内容になります。そのほか,11ページ,12ページに開催状況,委員名簿,13ページからは参考資料として最初に主な論点,今回はこの論点2について特に議論を頂きたい内容になりますが,参考資料の2として,補償すべき範囲についての検討ということで,これまで整理していただいた論点と,それに関して出していただいた意見をそのまま記載している形にしております。

今回,この報告書でいう10ページ目の(2)の補償すべき範囲のところについては,たたき台として,これまでの議論を踏まえて整理したものを資料1として用意しています。資料1を御覧いただけますでしょうか。今回は,この資料1のたたき台をベースに議論いただいて,最終的にそのどういった形で報告書の中に反映させるかということを,御議論いただければと考えています。

資料1を説明したいと思います。構成としては,最初に補償についての基本的な考え方が1番としてありまして,2ページ目に2番,音楽コンテンツの私的録音に係る補償すべき範囲について,3番が5ページ目になりますが,動画コンテンツの私的録画に係る補償すべき範囲についてという形で整理しています。

最初の補償についての基本的な考え方として,それぞれいろいろな御意見が出ているので,その意見を整理してここに記載させていただいているとともに,まとめ的な記載も記述していますので,御議論いただければと思います。

最初の1については,読み上げたいと思います。どのような場合に権利者への補償が必要となるのかについては,様々な意見が挙げられた。まず,補償が必要な理由について,私的複製により権利者に不利益が生じていることを理由とするのか,私的複製が権利制限とされていることにより利益を得ているものがいることを理由にするのか,あるいはそもそも権利者が得ている対価に問題があることを理由にするのか,という点を明らかにする必要がある。

この点について,著作権法30条1項の権利制限規定がなければ起こり得ないであろう事柄を全て対象にして,補償の要否を考えるというアプローチは不適切であり,私的複製による直接的な影響を基に補償の必要性を検討すべきであるとの意見が挙げられた。また,補償の要否を判断する上で,産業間の利益再分配をその理由とすることは不適切であるとの意見も挙げられた。これらを踏まえると,補償が必要となるのは権利制限規定によって権利者に不利益が生じている場合であると考えられる。

次に,権利制限規定により権利者にどのような不利益が生じているのかという点について,個々の私的複製が微々たるもので権利者のビジネス上の不利益に直接結び付くものではなくとも,それらの複製が累積することによって,総体的に大量の複製が行われていれば,権利者に不利益が生じていると考えられるとの意見が示された。これに対して,権利制限規定による私的複製の制約を緩和し,消費者の利便性を高めることによって権利者もビジネスを行ってきたのであり,私的複製による不利益は権利者に生じているとは考えられないとの意見が挙げられた。また,購入した音楽を複製して,様々なデバイスで視聴するという時代において,複製が大量に行われることは当然であり,これを不利益と捉えることは納得できないとの意見もあった。

この点について,第30条1項の権利制限規定に基づき社会的に大量の複製が行われている以上,複製権を制限されている権利者に法的な不利益が生じていると言わざるを得ないものと考えられる。仮に,同項の権利制限規定に基づき私的複製が行えることが音楽コンテンツの購買意欲につながり,権利者の利益に資するという側面があったとしても,私的複製に対して権利行使が制限されていることは,権利者にとっての不利益であると法的には評価されることとなる。この不利益が,補償が必要な程度に存在しているか否かという点については,平成4年に私的録音録画補償金制度が導入された際に,個々の利用行為としては零細な私的複製であっても,デジタル技術の発達により社会全体としては大量の録音物・録画物が作成・保存されることとなり,権利制限の範囲内で行われているデジタル録音・録画について経済的補償の必要があると整理されたが,現時点でも社会的に大量の私的複製が行われている状況に鑑みれば,なお補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられる。

2ページ目になります。なお,サブスクリプションサービス等の私的複製を必要としない新たな音楽サービスの提供が増えていることから,私的複製の量は今後減少するのではないかとの指摘があるが,我が国のではいまだ8割以上がCD等のフィジカルの市場となっており,現時点でも大量の私的複製が行われている状況にあるとの意見が示された。

このように,私的複製による不利益が権利者に生じていると評価できる以上は,原則として権利者への補償が必要であると考えられる。私的録音録画に伴う権利者の不利益を補償するために導入された私的録音録画補償金制度が機能していない以上,比較法的に見ても射程の広い法第30条第1項の権利制限規定を維持するためには,権利者への補償制度を導入することが必要であるといえる。補償制度を整備しないという選択をとることにより,権利制限の範囲が狭まることは利用者にとっても望ましくなく,まずは現行の第30条1項の権利制限の範囲を維持することを前提とした上で,補償の在り方を検討することが適当である。

もっとも,私的複製により不利益が生じていることをもって,全ての私的複製について補償が必要であると直ちに断じることは拙速であり,私的複製の趣旨や性質を考慮しながら,最終的にどのような補償制度を導入するかという議論とは別に,どのような私的複製について補償の必要があるのかを検討することが重要であると考えられる。

なお,補償制度を構築する上では,社会的理解を得る必要があるが,総体として大量に私的複製が生じているという側面と,個々の利用者のレベルでは必ずしも大量の私的複製が行われているわけではないという側面とがある状況を踏まえると,そのための十分な議論と説明が必要である。

2番,音楽コンテンツの私的録音に係る補償すべき範囲について。ここでは,議論の対象となる流通形態について,4つの流通形態に整理を頂きました。マル1がパッケージ販売,マル2,ダウンロード型音楽配信,次のページになりますが,マル3,ストリーミング型音楽配信,マル4,パッケージレンタル。これらのうち,パッケージ販売,ダウンロード型の配信,パッケージレンタルについては,私的録音に係る補償の要否を議論する必要があると整理を頂いていますので,その旨を記述しています。

補償すべき範囲について,それぞれ4点ほどの論点を整理いただいて,意見を頂きました。ここについても,読み上げたいと思います。補償すべき範囲のマル1,複製目的による補償すべき範囲の切り分けについて。全ての流通形態に共通する論点として,一定の目的の下に行われた私的録音について,複製の性質に鑑み,補償は不要なのではないかという指摘があった。

第1に,自身が購入した音楽コンテンツを複数の機器で視聴するための私的録音については,いわゆるプレイスシフトであり,当該行為によって売上げが減少するわけではなく,権利者に不利益は生じていないため,補償は不要ではないかとの意見が挙げられた。この点について,プレイスシフトを目的とした私的録音は私的録音録画補償金制度の創設時から補償の対象として整理されてきたものであり,この整理を覆す事情の変更が生じているわけではない。また,プレイスシフトを目的とした場合であっても,私的複製が権利制限規定の下で行われている以上は,権利者に法的な不利益が権利者に生じているものと考えられる。

第2に,購入した音楽のバックアップのために行われる私的録音について,視聴のために行われているわけではなく,補償は不要ではないかとの意見が挙げられた。この点については,バックアップのための複製といえども,最終的にはマスターファイルを破損・紛失した場合に視聴することを目的として行われるものであり,非享受利用であるとは言い難いのではないかとの指摘があった。また,目的がバックアップであったとしても,複製を行っている以上は,著作権法上は著作物の利用と位置付けられ,これらの行為について権利が制限されているという点では,権利者に法的な不利益が生じていると言える。

以上を踏まえると,プレイスシフトやバックアップを目的とする私的複製について,権利者に不利益が生じていないとは言い難く,いずれの場合も補償すべき範囲に含まれるものと考えられる。

マル2,DRMの有無による補償すべき範囲の切り分けについて。DRMがかかっていない状況で提供されるコンテンツについては,私的複製が行われることを見込んで対価設定が行われているはずであり,補償の必要はないのではないか,との意見が挙げられた。これは,長年にわたり私的複製が行われており,私的録音録画補償金制度が機能していないことを前提とすれば,私的複製の対価を含めてコンテンツの提供価格を設定することが経済的に合理的な判断であり,権利者が不利益を放置したままコンテンツを提供し続けているとは考えづらいことから,私的複製の対価は既に支払われているのではないか,という意見である。

この指摘に対して,権利者からは,私的複製の対価をコンテンツの提供価格に上乗せすることはないとの反論があった。また,我が国においては,現在は機能していないとしても,私的録音に係る対価は私的録音録画補償金制度によって権利者に還元されるという制度的前提が存在しており,これを踏まえれば,提供価格に私的複製の対価を盛り込んでいるとの評価は妥当しないものと考えられる。

マル3,複製先がインターネットクラウドである場合について。インターネットクラウドへのコンテンツの複製についても,従来のMDやCDといった媒体からクラウドというインターネット上の領域に複製先が拡大したに過ぎず,補償の対象とすべきとの意見が挙げられた。この点について,本小委員会でも,平成26年度にクラウド上の私的な領域に自らのコンテンツを保存する行為については,私的複製に当たると整理しており,これに基づけば,インターネットクラウドへの複製も補償の対象となり得ると考えられる。

マル4,ダウンロード型音楽配信により購入した消費者が行う私的複製について。ダウンロード型音楽配信サービスにより購入した音楽コンテンツについては,多くの場合,マルチデバイス・ダウンロードサービスにより私的複製を行わなくても複数の機器で購入した音楽コンテンツを視聴することが可能であることから,私的複製が行われることはまれではないか,との指摘が挙げられた。

これに対しては,マルチデバイス・ダウンロードサービスが提供されている場合でも,当該サービスの範囲外で私的不正が行われているとの意見があった。もっとも,コンテンツを購入して最初にダウンロードをする部分については,パッケージを購入する行為と同一視でき,音楽コンテンツの購入と一体に行われる複製であることから,補償の必要はないと考えられる。

3番,動画コンテンツの私的録画に係る補償すべき範囲について,になります。これらの流通形態については5つ,パッケージ販売,無料放送,有料放送,動画配信,パッケージレンタルについて整理を頂きました。

6ページ目になりますが,これらのうち,有料放送,無料放送については,当該私的録画に係る補償の要否を議論する必要があるというふうに整理を頂いておりますので,記述をしています。

動画コンテンツについては,まずは録音,音楽コンテンツから先に議論すべきと整理を頂いていますので,それらについて論点を整理した内容と,その各論点について出していただいた意見をそのまま記述しているという形を取っています。

項目としては,放送波を最初に録画する部分について,補償すべき範囲に含めるか否か。権利者がDRMを自由に選択できる場合に,選択されたDRMの範囲内で行われる私的録画について補償すべき範囲に含めるか否か。そして3番目として,コピーネバーの運用が可能となっているペイパービューについて,補償すべき範囲に含めるか否かという形で整理をしています。

今回,これまでの議論を踏まえて,たたき台という形で整理をしていますが,議論のほどをよろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,これから資料1につきまして,順を追って議論を頂きたいと思います。資料の1のたたき台は,1ポツの基本的な考え方,2ポツの音楽コンテンツ,3ポツの動画コンテンツ,こういう構成になっておりますので,最初に1の補償についての基本的な考え方について議論を行いたいと思います。御意見がございましたら,お願いいたします。

小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】インターネットユーザー協会の小寺でございます。1ページ目の真ん中のあたり,真ん中やや下のあたりに,権利者に法的な不利益という言葉が出てきておりますけれども,その我々今経済的な不利益に関して議論をしていて,それに対する補償をどうするかというお話を進めていると思うんですけれども,法的な不利益というこの言葉の位置付けを,この資料の中でどのように位置付けるのかが全体として不明瞭な気がします。どの部分が法的な不利益に関して論じていて,単に不利益と書かれた場合は,それが法的な不利益なのか,経済的な不利益なのかというところが,書き分けとしてちょっと曖昧なような気がしますので,一旦ここでもう一度,法的な不利益の内容,意味付けについてちょっと御説明をいただけると助かります。

【土肥主査】御説明ということでありますので,法的な不利益についての御説明,もし可能であればお願いいたしますが。

【俵著作物流通推進室長】ここで法的な不利益として整理をさせていただいたのは,この委員会で出していただいた意見を踏まえての整理です。権利制限規定があることによる不利益という意味で,1つは法的な不利益が生じているというふうに書かせていただいております。

この資料の1ページ目の最後の段落に,この不利益が,補償が必要な程度に存在しているか否かという点についてということで,これも御意見を頂いた内容を整理したものですが,平成4年にその制度が導入されたときに,個々の利用行為としては零細な私的複製であっても,デジタル技術の発達によって,大量の録音物・録画物が作成・保存されることとなり,権利制限の範囲内で行われているデジタル録音・録画について経済的補償の必要があると整理されたが,現時点でも社会的に大量の私的複製が行われている状況に鑑みれば,なお補償が必要な程度の不利益が,権利者に生じていると考えられるという形で書かせていただいています。大量の録音物・録画物が作成・保存されている状況から経済的補償が必要であるとした平成4年の議論を引用して,補償が必要な程度の不利益が生じているかどうかについて,記述をしています。

【土肥主査】ありがとうございました。いかがでしょうか。

【小寺委員】1ページ目の最終段階のときの,平成4年の私的録音録画補償金制度が導入された際の議論の中においても,量が問題であるということになっています。ということは,やはりここは経済的不利益を指しているものであって,法的な不利益を指しているものではないんじゃないかと思うんですが。この議論の中で,法的な不利益という言葉が議論されたのは事実でありますから,その法的な不利益という言葉が意味する範囲,それがその実際に,これから議論を進めていくであろう補償とどのような関係があるのかというところを,ちょっと一旦整理した方がいいのかなと思います。

【土肥主査】そういうことだと思います。ここで言う法的な不利益,つまり著作権法21条で,著作権者に与えられている複製権というものが30条の私的複製によって制限を受ける,その結果,大量の複製が行われているであろうという合理的な推認は可能でありますし,様々な実証的なデータがそれを示しておりますので,したがってそれを経済的な不利益という言葉で言えば,抽象的な経済的な不利益,法的な不利益というものがあって,それを受けて,その中で,ではどういうものが実際に具体的な不利益になるのか,経済的な不利益として認められるのかというのは,その次のステップというふうに理解をしておりますので,非常に私としてはよく理解ができるところでありますけれども。

小寺委員においては,そうはいかないと,こういうことですか。

【小寺委員】今,主査がおっしゃったような,まず法的不利益というのが大きなくくりであって,その中でどのぐらい経済的な不利益が存在するのかということが,イコールその補償の範囲であるという,そういう御趣旨でよろしいですか。

【土肥主査】『大きな』というのが,30条による権利制限規定によって行われている私的な複製で,それはいわゆる経済的な不利益をもたらしているであろう,そういう抽象的な射程というものが画されてくる,そういう不利益の範囲。その不利益の範囲の中で,果たして一体どういうものが補償の対象になってくるのかというのは,これから議論がされていくことになるんだろうと思うんですけれども,その前提として考察の対象を切り取る上で,ここでいう法的な不利益というふうに画していると承知しておりますが。

世古委員,どうぞ。

【世古委員】JASRACの世古でございます。私の理解では,ここの部分について,今主査の方がおっしゃいましたように,法的な不利益というのは,著作権者として著作権法21条の布石がそもそもあって,それを社会的な理由で制限しましょうという部分で,法的な不利益は既に存在していると。じゃあ,存在しているという中には,著作権法である権利が制限されるということは,著作権者が持っている許諾権も奪われるということなんですが,そこでは,そこについては一歩引いて,じゃあ経済的な補償がされていない部分があるのであれば,それを経済的な部分で補償してもらおうということであって,それはお金に置き換えていきましょうということで,じゃあその範囲はどうしていくのかというのは,これからの議論になるんだというふうに理解しております。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。

榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】ありがとうございます。同じ箇所について,私も疑問があるといいますか,これまで違う意見を消費者の方もそうですけれども,経済界としても申し上げていたので,両論併記にしていただきたいということで。まあ理由としては,もちろんこの場で,法的な不利益が権利制限があって複製されるとあるんだと,だから補償すべきなんだという,一飛びに議論が進んでいるように思うんですけれども。

じゃあ,著作権分野の学者の方たちが一般的にどう言っているのかというのを調べますと,例えば中山先生なんかは,権利制限規定というのは,権利者から権利を奪うための規定ではなく,権利の本来あるべき姿を導くためと,だから制約されたところが本来あるべき姿で,満月のような完全無欠の権利ではないということで,権利者の犠牲だというふうな,今の世古委員がおっしゃったような意見は誤りだとはっきり書かれていますし。高林先生も,ちょっと時間の関係で読みませんけれども,同じ趣旨のことを。それから,元文化庁の方だと思いますが,作花文雄先生も同じ,上野先生も同じ。

ほかの学者さんに何人か聞いても,ほぼ同じようなことをおっしゃいますし,法的な不利益じゃなくて経済的な不利益だというのが,学会では通説的な見解だと聞いているので,ここで,この場だけなぜそういう特異な見解だけが採用されているのか。しかも,消費者や経済界もそれとは違うのではないかと,何度も再三申し上げているのに,まとめ方として非常に中立性を欠くのではないかなと思いますので,少なくともそこは両論併記にしていただきたいと思います。

【土肥主査】ちょっとマイクの関係で,ハウリングしてよく聞こえなかった部分があったんですけれども。どなたか,はい,大渕委員,お願いします。

【大渕委員】前回お話ししたところのやや繰り返しになりますが,法的不利益というのは,法的な権利をどう考えるのかというところに関係してきます。先ほど21条と30条と言われましたが,30条というのは,もとは2項がなく1項だけで,今のような1号,2号,3号という例外はなく,私的使用目的,使用主体と複製主体一致の原則という2つの要件だけで権利制限を肯定していました。

21条の著作者が持つ法的な権利は変わっておりませんが,それに関する制限が30条,30条1項1号,2号,3号というように,時代に応じて次第に変わってきております。もしかすると最初の45年法だけを見れば,要するに21条があって30条で制限というのが本来の姿だとすれば先ほどの学説に結び付くのかもしれないし,その後,1号,2号,3号ができたのは,本来の姿からずれてきているということになるのかもしれません。

しかし,私はそのようには理解していなくて,それぞれの時代における社会状況に応じて,当初は21条プラス現在で言う30条の1項の1号,2号,3号なしというもので,法的な権利を書いていたのが,その後,次第に1号,2号,3号というように例外が増え,反面では30条2項でクリエーターに不利益の対価を還元することによって,トータルバランスを図っているという構成だと理解しています。今,申し上げたように,現行法というのは,飽くまで2項も組み合わさってトータルバランスが組まれているものであります。余り哲学的に何が正しいかということを言い出したら,もしかすると45年法の当初の法しか正しい法というのはありえなくて,その後の法は誤った法ということになるのかもしれませんが,著作権法の目的が,その時代時代に応じて著作者の権利と利用者の利便性とのバランスを図っていくということにあるのならば,そのバランスの図り方というのは,45年法の当初のものだけに限られるわけではないと考えられます。現在機能しているかどうかは別として,現行法は2項も組み込んだ形でトータルバランスを図っておりますので,そのようなものとして法的権利というのは考えていくことは当然だと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。正におっしゃるとおりでありまして,2項も含めてのバランスというものが,現行著作権法の中で図られているおるわけであります。ところが,その2項が機能しなくなっているという状況があるわけですよね。本来は,その2項が機能して初めて,権利者と一般消費者,あるいは事業者,そういう関係者間の利益調整が図られているはずなんですけれども,それが残念ながら機能していないという状況があるわけでありますから,正に先ほど御紹介のあった高名な研究者の方々の考え方と,我々が目指しているところがずれているという認識は持っておりません。

ほかにいかがでございましょうか。

はい,龍村委員,どうぞ。

【龍村委員】全般的な感想ですけれども,今回のクリエーターへの適切な対価還元というテーマ,これは非常に大きなテーマだと思います。問題意識としては,当初はかなりの広さがあり,産業間の利益再配分ということも先ほど出てまいりましたけれども,そういうところまで本来視野に入っていたかもしれません。ただ,実際の対価還元の方法や切り口として,現在の制度を見渡した場合に,世界的に安定した制度として,一定程度普及しているところの私的録音録画補償金制度,これに乗っかろうというのが,今回の私的録音録画を中心に据えた適切な対価還元のアプローチだったのだろうと思います。

ただ,今回の整理の特色としては,プライスインというような考えからの示唆もあったところもあったのかもしれませんが,契約により処理されているかどうかという切り口で整理していったというところに,特色があったと思います。その結果が,2ページから3ページにあるマル1からマル4の整理,マル1,マル2,マル4が,契約に含まれていないとして,処理がされていないので,補償の要否の対象に残った。逆に,ストリーミング型のマル3ですか,これは全て契約において処理されているという理由から落ちてしまったと。

確かに,法形式上といいますか,形式的なプライスインということで切っていくと,そういうことになるのかもしれませんけれども,実質的に本当にプライスインされているのかというのは,本当はまだ積み残された問題なのかもしれません。そのようなな意味で,補償が必要な理由が冒頭に3つほど挙げありますが,その中に,権利者の不利益というものがある。その意味では,権利者が得ている対価に問題がある場合,換言すれば実質的なプライスインが実現されているかということも視野に入るような気もいたします。今回は私的録音録画制度の問題として位置づけられましたが,それが真に実質的にクリエーターに対価還元されているのかということは,もう一つ,別問題で実は残っているという気がいたします。

我が国においては,ストリーミング型のビジネスモデルが余り成功していると言えないという現状があって,CD等のフィジカル市場がなお中心だという実情はあるので,今回の整理が,比較的対価還元の方法として現実味を帯びているということで整理されたのだと思いますが,別の問題もあるということになります。

法的不利益ということについてですが,権利義務の有無という意味での法的不利益ということもありますが,もっと広く社会経済法的な観点から,労働法制や消費者法制のような政策的な弱者保護の対象となる利害も一種の法的不利益に数えられるということもあるのかもしれません。その意味で,法的不利益というものも膨らみを持ったものともいえると思います。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかにございますか。

はい,小寺委員,どうぞ。

【小寺委員】2ページ目の頭の方に,今少し話題になりましたけれども,これ楠本委員がおっしゃったことで,我が国でまだ8割以上はCD等のフィジカル市場となっておりというところなんですけれども,確かにこの御意見が示されたということ自体,事実であります。

これ,そのときに気付けばよかったんですけれども,資料の今お手元にある資料の2に,2ページの下の方に,音楽コンテンツの市場規模ということで表組みがございます。この楠本委員がおっしゃった8割という意味は,実は金額ベースのお話でありました。私の,楠本委員の8割以上のという反論の前に発言しているのはこの私の発言で,私的複製の量は今後減少するのではないかといったのは私の発言で,これ量を問題にしているんですね。ですので,それで金額ベースの数字で8割以上がというふうなお答えというのは,ちょっとかみ合っていないなというところがございます。

数量で言いますと,この表組みの方の上の方が数量ということになりますので,CD合計というところと,それからデジタル配信合計というところの比で見ないといけないということであります。このあたりは,議論がかみ合っていないままで記載されていますので,それをこのままでいいのか,それとも楠本委員が訂正なさるなら,していただければと思います。

【土肥主査】わかりました。そこの部分については,また構成について考えさせていただきたいと思います。

ほかにいかがでございますか。河村委員,どうぞ。

【河村委員】ありがとうございます。法的不利益というところが曖昧な使われ方をしているのではないかと感じています。理屈としてこういうことであり得るということであっても,補償の必要があるのかどうかということが,議論の俎上(そじょう)に上がっている。10年ぐらい前に同じ議論をしているような気がするんですが,結論を出すことができず,その後補償金制度が機能しないまま来てきた理由というがあるはざうです。このような制度は将来にわたってずっとあるような制度ではないんじゃないかというくくりで書かれている委員会の報告書もあったかと思います。

私が申し上げたいのは,個々の消費者がやっていることは微々たるものであっても,社会的に大量という表現の繰り返しも,少しこう何かトリッキーな感じがいたしま。デジタル録音録画に対する補償金が入った頃には,デジタル複製というものがMDとかCDのお皿とか,何かそういう個別の記録媒体にコピーをしてそれを持っておくというような消費者の行動がすごく盛り上がった時期でもあります。10年近く前にこれを見直そうと言っていたとき既に,将来はダウンロード型であるとか,ストリーミングという言葉はなかったかもしれませんけれども,そういう形で契約でやっていく範囲が広くなっていくのだからこういう制度は続ける必要性がないのではないかと指摘されてきました。

で,先ほど小寺委員が言った数量的な見方とか,CDのような媒体に移して持っている人がどれほどいるのかとか,ハードディスクというのは,記録媒体として中のデータを長く維持できるものではないということは御存知(ごぞんじ)かと思います。だから,社会的にすごい大量な複製になっていくという理論も,余り正確ではないと申し上げたい。

あともう一つは,私がずっとこれまで申し上げたかったことですが,何か3段階に分けてやると,補償の範囲と取り方と何とかとって,何か3つに分けるとおっしゃったものですから,私は取り方とかの問題について言うと,まるで補償が必要だというところに賛成したみたいな発言になりかねないと思い,言わないできましたが,ここまで一方的な書かれ方をするなら,なぜ10年,ずっと議論されてきたかということも含めて申し上げたいと思います。著作権法の中に,先生方お詳しいかと思いますけれども,補償金制度というのは幾つかあると思うんですね,教科書ですとか障害者向けのものであるとか。

で,私の分かっている範囲,間違っていたら指摘してください,分かっている範囲で補償金という制度が著作権に入っているもので,何のコンテンツに対してかけられているのかわからないという,何を消費者が録音したのか,録画したのか分からないという補償金は私的録音録画補償金だけなのではないかと思います。教科書などの場合,どのコンテンツがここにあるということがわかる,どのコンテンツがここにないかもわかるわけですよね。その分配の仕方にはいろいろとルールがあるかもしれませんけれども,私的録音録画補償金に対するこれまであったたくさんの反対論の中でも,大きな一つになっていたのは,消費者が何を複製しているかわからないじゃないかと。対価の還元って,錦の御旗のようにおっしゃいますけれども,自分がお金を出して買ったコンテンツを複製したとして,そのクリエイターに正当に補償金が払われているのかがわからないと。

音楽をCDとして買った人とダウンロードした人,いろんな人がいる中で,例えばCDを買った人の中でそんなに若くない人は,車に付いているCDプレーヤーに入れて聞いているとか,家にあるCDプレーヤーで聞いているとか,余り複製していないかもしません。片やそんなにメジャーじゃないかもしれなくても,マニアックな音楽ファンがダウンロードした音楽を複製しているかもしれないと。でも,そういうことは捕捉できませんから,複製が行われたクリエイターにきちんと対価の還元が行くというシステムになっているとは思えません。その不透明さが,消費者には非常に受け入れられないものということが反対論の中にありました。ですからこんなシステムはもう駄目だよね,これはもっと違う方法を考えなきゃいけないというようなことが,もう8年,9年前に言われていたんじゃないでしょうか。

ですから,そういうようなシステムを,またここまでいろんな機能しないまま来た背景がある中で,もう一回何か仕切り直しをして,そんなちゃんとクリエーターに対価の還元が行くかどうかわからない,CDの売上げだって握手券が欲しくてたくさん買っている人の枚数とかも入っているんですから,そういう何か不透明な,薄く広く消費者からお金を集めてどこかの団体に入って,そもそも消費者がそのコンテンツをリスペクトして,愛しているクリエーターに行くかどうかわからない仕組みを,ここでもう一回息を吹き返らせて機能させようというのには反対です。

【土肥主査】それじゃあ,すいません,時間の制約もありますので,御意見は簡潔にお願いします。

椎名委員,どうぞ。

【椎名委員】不透明ということをおっしゃいました。河村さん御自身が,制度がどのようになっているか詳しく御存知(ごぞんじ)ないということであるならばいいんですが,不透明なことを団体はやっておりません。こういう公的な場で不透明である,権利者に届いていないとおっしゃるんだったら,そのデータを出していただけますか,そのエビデンスを出していただけますか。それなくして,そういうことを公的な場で発言されるというのは,これ名誉を毀損しているということになると思います。最後まで聞いてください。

それから,小寺さんの御発言,榊原さんの御発言,河村さんもそうですけれども,制度がどういうふうになっているか,歴史的な背景を含めて解明をしてきた,分析をしてきた,その中で現状がどうなっているかということについては,少なくとも実態調査のデータを基に,これこれの不利益が広がっているということについて,全てエビデンスベースでこの報告書のたたき台はできているわけですね。それに引き換えて,榊原さんも小寺さんも河村さんも,そうじゃないと思う,そうじゃないと思うということばかりおっしゃっていて,それを裏付ける証拠って何も今まで示してくださっていないんですよ。権利者に不利益が発生しないんだったら,発生しないことの証拠,データなりを示してくださいということを何度も言ってきているけれども,情緒的にそうは思わないという話をただ繰り返されてきたという経緯があると思います。

権利者に不利益が発生していないということをおっしゃるのはいいんですけれども,飽くまでも実証的なデータを基に議論はしていきたいと思うし,そうしてきてくださらなかったことで,この報告書があると思います。以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。ちょっと事業者,利用者,そして権利者の間で議論が対立していると思うんですけれども,いわゆるアカデミックといいますか,そういう立場の方の御意見をいただけると,ちょっと議論がスムーズに行くのかなと思います。大渕委員,お願いします。

【大渕委員】事務局が議論を3段階ぐらいに分けているのは,まず現状はどうかというところから始めて,最後は何がベストの解かを導くのに,最初からやると単なる言い合いになってしまうので,1つずつ基礎的に詰めていくということだと思いますが,今は3段階の1段階目あたりにいるのではないかと思います。

その観点から申し上げますと,また繰り返しになってしまいますが,現行の30条の1項,2項というのは,万古不易のものでもない一方,トータルバランスとしてバランスがとれていることは間違いがないと思います。問題は何かというと,それが現在余り機能していないという点であり,これについてはほぼ共通認識があるのではないかと思います。この2項については先ほどあったように,恐らく法的不利益というのはあるし,それが非常に少なければ別ですけれども,一定程度の規模があることは間違いないと思います。それから経済的不利益の点は,先ほど主査がまとめられたとおりだと思います。細かいことを言い出したら別ですが,法律家が普通に予想できる範囲では,経済的不利益は抽象的レベルではあるだろうというところです。

それを前提にしたときに,第2段階の議論の内容は,今までは2項の補償金で不利益を賄ってきたが,それが機能しなくなってきたら,どうするのかという話になります。恐らく方向性は2つしかないと思います。一つの方向性は,2項が機能しないのだから,1項の方を場合によってはなくす,あるいは大幅に縮小する,ないしは現在3号まで例外がありますけれども,例えば,4号,5号と増やすというものです。もう一つの方向性は,2項を機能するように改善するというものであります。繰り返しになりますが,ほとんどの方が現在の30条1項はよい法律であって,私人が安んじて私的活動として複製ができるという点は,よいルールだと思っているので,今まではそれを維持するための後支えとして2項があったのですが,機能しない現在ではどうするのかという話になっているわけであります。第2段階,第3段階では,今までは2項で後支えをしてきたのだけれども,それが機能しなくなり一定程度の法的不利益ないし抽象的経済的な不利益があるのだから,それをどう賄っていったらいいのかという方法論の話になってくるのだと思います。

法的不利益ないし経済的不利益をどのように賄っていくのかという方法論のところにある程度入らないと,結局は単なる言い合いが続くだけではないかと,はたで聞いていて思いました。

【土肥主査】奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】先ほどの議論との関係も含めて申し上げたいんですけれども,権利制限規定を権利と権利制限規定の関係をどう位置付けるかということについては,私自身も制限という言葉を,権利を権利が広がり過ぎないように制限するのか,狭く制限するのかって,2つあり得ると思います。それは両方どちらもあると思います。むしろ,私は権利が広がり過ぎないように制限しているというケースもあるんだろうというふうに,特にこの私的複製の場合にはそう思っています。

ただ,その立場を取ったということが,自動的に,経済的利益か不利益か,法的不利益かという議論につながるというのが,私は理解ができなくて。それは,単なる権利の見方の問題だろうと思っていますので,結局それはそうであっても,全体のバランスということは同じなので,それが法的,経済的という言葉に直結するというのは,ちょっとよくわからないなと思っています。

ただ,私もここでの議論については,基本的にはずっといろいろ聞かせていただいてきたんですが,自分なりにはどう整理するのかなって,かなり難しい問題だなと思いながら聞いてきたんですが,前回松田委員の方から,そもそも平成3年の整理があるじゃないかという御指摘がありました。今から25年前の整理があるわけですね。そのときに,今大渕委員もおっしゃったように,私的録音録画は,従来どおり許諾を必要とすることなく自由としつつも,一定の補償を権利者に得さしめることによって,調整を図ろうということにする云々(うんぬん)というような整理をしてきたわけなんです。

その1点だけに立ち返って考えた場合に,それを180度不要だとするところまでここでの議論が行ったのかなというところについては,そこまで行ったんだろうかという疑問はあるわけですね。今までの積み重ねとして,そこまで行っていない以上は,まず第一段階としては,まあ私は研究者ですから,基本的にはその過去の認識と今の議論とのつながりの中において,ここでの議論の積み重ねというのは,そこまでひっくり返ったんだろうかということについては,やはり疑問があるとは思います。

ただ一方で,これ私,2ページ目のところの2のポツの上のところにも,「なお」で入っているのとも同じなのですけれども,先ほどから御議論に出ているのと同じように,私たちは飽くまでも総体の議論をしているんですが,ただこれは前回も申し上げたように,国民皆さんが納得してくれないと,今のこの議論の前提は全て覆るわけであります。そういう意味においては,仮に,総体として平成3年の整理が100%覆らなかったとしても, 180度ゼロになったということではないとしても,だからといって全てが第2段階,第3段階の議論か知りませんけれども,元に復すということでは全くないんだろうと思うんですね。それは現状において,国民各位の納得の得られるところでバランスを考えるということなのだろうと思っております。以上です。

【土肥主査】ありがとうございます。ほかに。

松田委員,いかがですか。

【松田委員】今,私の名前が出ましたので,見解も示しておきたいと思います。

平成4年の改正は,昭和62年に第10小委員会が設けられ,その報告書は平成3年に出来上がっておりました。第10小委員会が設けられた段階の状況と今の状況がどのように変化したかということは,顕著でありましょう。資料2の報告書にも書かれているところです。その平成3年にできた報告書,これがどういう状況であったか示したいと思います。平成3年報告書ができる前ころ,デジタルメディアとしてCDが生まれました。そして,これはレコードからCDに変わっていったのです。平成3年までの間に,そのCDにおけるデータがデジタルオーディオテープ(DAT)レコーダーというものが発売されまして,私的なデジタルデータの複製が可能になったのです。これが発売されたのが平成2年の6月です。いよいよ,私的にもデジタルデータが,特に音楽音源をそのまま利用できるような方法が生まれたということで,そこで何らかの対応を取らなきゃいけないということになり,異論なく,報告書が平成3年にできて,平成4年に法律が改正されたのです。勿論(もちろん)諸先進国の立法例を参酌しました。

考えてみてください,CDが生まれた,DATでデジタルデータとしての複製が私的に可能になったときの議論において,報告書ができているのです。このときと今とでは,私的複数の実態は全く異なることが分かるでしょう。この変化は多数調査の報告書に出ているとおりであります。現況を直視するならば,PC,スマホ,自動車オーディオ機器,PCだってデジタルメディアとなっているのです。加えてインターネットクラウドを介したデータの蓄積領域も,個人的に使用される場合30条1項適用のデジタルメディアになっているのです。これが30条の対象になるという文化審議会の判断まで出ている。この現在の社会状況において,果たしてかつての法律を作るときのDATしかなかった段階の状況が縮小したなどということができるのでありましょうか。到底考えられない。1部の委員が,状況の変化があるというところまでは,なかなか言えないのではないかという意見を出されていますが,私は変化の状況は顕著で,DATからスマホ,クラウドの変化は,制度の拡大こそ,求められるところと確信しています。

【土肥主査】ありがとうございました。

末吉委員,次にどうぞ。

【末吉副主査】私も今の松田委員の考え方に賛成でございます。これだけ議論をしてきて,何かしら補償しなければならないという点は,恐らく間違いないのではないかと。あとは,大渕委員が言われたとおり,どのようにこれを補償していくかという方法論を詰めていく段階が来ているのではないかと思います。以上です。

【土肥主査】先ほど来,丸橋委員,御意見ございますか。

【丸橋委員】松田先生がおっしゃった,平成3年当時の激変ですか,録音,消費行動の激変という話がありましたけれども,私は全く逆のように見ていて,もう現在録音録画という消費行動というのは,どんどん縮小に向かっているのではないかと。ストリーミングが増え,サブスクリプションサービスが増え,どんどん減っていって,そういうCDとかの媒体の販売量も減っている中で,その補償金制度を逆に縮小するという議論はあり得ても,拡大するという議論はちょっとないのではないかと思います。

そういう意味で言うと,冒頭榊原さんが言われたように,この言い合いという話がありましたけれども,結局全然意見の一致を見なかったというのが,この会合の本質であって,この2ページ目の「もっとも」とか,「なお」とかっていうパラグラフは,完全に当然に付け足しのように意見として残すものではなくて,並列した議論としてきちんと書くべきだと思います。以上です。

【土肥主査】簡単にお願いします。

【河村委員】アカデミックな世界の方の御発言が議事録に残ると,何かすごく重みが出てしまうので発言したいと思います。松田委員のおっしゃったことは,私はそれは本当に違うと思っております。この補償金制度が,デジタル録音録画に入ったときの状況と今とは全然違って,録音するためのCDのお皿なんて全然売れていませんし,スマホの中に音楽データがあるじゃないかというのも,すごくこれはもう詭弁(きべん)です。

それは買ってダウンロードしてデバイスの中にデータで持つ時代になったわけであって,データ量がそこに幾らあるから,それは全部複製したものでしょうという。それは,もうデータの形で音楽を持つ世界になって,マルチデバイスで契約で処理されたものをお金を払って持っているものも含まれていて,ほら,こんなに入っているじゃないか,数が増えたじゃないかと。いえいえ,ものとして録音するという行動は,本当に減ったと思いますし,それは調査をちゃんと読んでも,この2014年ってもう少し古いですけれども,それは見えている,出ているのではないかと考えております。

ですから,やっぱりそういう社会情勢の見方というのは,きちんと捉えていくべきですし,消費者の言う意見だから,何か感情的であるとか,何か証拠がないとかおっしゃいますが,逆に証拠が逆の立場の方からも出されたわけではないので,そういうふうに申し上げたいと思います。

【土肥主査】CDの販売量とか,そういう問題は確かにあるのかもしれませんけれども,それは次のお話でありまして,今,本日御議論いただきたいのは,1の総論的な考え方ですね,総論的な考え方について,更にそれを受けて2ポツの補償すべき範囲として,いわゆる法的な範囲,法的な不利益という認定といいますか,一応のピン止めが行われているわけでありますけれども,始まって1時間ぐらい議論させていただいたわけでありますけれども,1の補償についての基本的な考え方,複製の総量について,サブスクリプションとかいろいろあって,平成4年の当時と比べると,問題とすべき複製というものの総量は減っているのか,もっと深刻なのかというのは,これは次の段階で議論させていただきたいと思っています。

今は,議論のスコープとしてどういう範囲を想定するのかという,その想定の仕方のアプローチとして,こういう基本的な考え方が出てきておるわけでありまして,それは十分合理的な考え方ではないかと思いますし,特に様々な御批判があるのは,2の音楽コンテンツの私的録音に係る補償すべき範囲について,ここの具体的な取扱いについていろいろおっしゃっておられる委員がおいでになるわけでありますので,次の議論は,2のこの音楽コンテンツの補償すべき範囲として,こういうパッケージ,ダウンロード,ストリーミング,パッケージレンタル,この4つの領域について,こういう法的な不利益を想定して,考えてみてはどうかということについての御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

榊原委員,どうぞ。

【榊原委員】すいません,1を議論は終わって,2に移りましょうというふうに聞こえたんですけれども,今主査が量の話,複製の量が平成4年当時から増えたとか減ったとかというところで,意見がそもそも割れている話は2のところで議論するんだと。ということであれば,大量だから不利益があって補償すべきだという記述が1に書かれているから,反対している人はここを直してほしいというふうになるわけで,そこをはっきり書かないで,そこがまだ意見が一致を見ていないということにしていただければ,2に行けるわけです。

でも,そこが大量にコピーはされていて不利益があって,補償すべきだというふうに1から2ページにはっきり書かれていますよね,不利益が権利者に生じていると評価できる以上,権利者への補償が必要であると考えられると。結論にしか読めないわけです。で,次に個別のものを議論しましょうと言われても,その部分が反対なので,主査の先生と意見を言い合うのもどうなのかと思うので,私の意見に反論いただきたくないと思うんですけれども,ほかの委員の方に向けてとか,事務局へのお願いになるんですけれども,1をこれで次に行きましょうというのは,ちょっとここについて不満があるのに,ここは変えないで2に行きますよと言われても,誰も納得はやっぱりいかないと思います。

【土肥主査】その部分は,榊原委員としては,1ページの最後のその部分ですけれども,補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられるというふうにまとめていただいておりますけれども,この部分のどこがその問題という御意見でしょうか。

【榊原委員】1ページから続くと思うんですけれども,先ほど河村委員がどこかで引かれた,個々の利用行為としては微細でも,総体として大量なんだと。で,個々のものが不利益がないなら,大量になっても不利益じゃないと思いますし,データを示していないというお話でしたけれども,実態調査報告書,これ非常に古いものですけれども,これを前提にしても複製が減っているんじゃないかというふうに,データを見ても思うわけです。そうすると,大量だから,不利益があって,補償が必要だと言っているこの3つぐらいの論理,全てにおいて異論があるということです。

【土肥主査】だから,榊原委員も,複製がなくなっていると,私的複製がなくなっているとおっしゃるわけではないですよね。

【榊原委員】なくなっているとは申し上げませんけれども,複製されているから不利益があると,それが大量だから補償が必要だということが,意見が違うので,その逆の側(がわ)の立場だけが書かれているのがおかしいのではないかと申し上げています。

【土肥主査】だから,そこがですね,先ほどから多くの委員がおっしゃっておられるところでもあるわけでありますけれども,複製権なる権利の帰属は著作権者に当然あって,それが30条によって制限され,そしてそれによる私的複製が大量に行われているのではないかと,そういうデータがあり,合理的に考えても,これだけたくさんの複製機器が登場する以上は,私的複製は深刻な状況のほどに行われているというふうに推認されるわけです。

それをもって,法的な不利益というふうに考えているわけですけれども,そこから先の具体的な経済的な不利益としてどう切り取るかというのは,これは次の話ですよ,ここは。で,その次の話として,どう考えていくかというそもそもの前提として,2ページの音楽コンテンツの補償すべき範囲についての御意見を頂きたいと,こういうことであります。

丸橋委員,どうぞ。

【丸橋委員】この1ページ目の最後の2行ですよね,なお補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられるという委員の方はいますけれども,そこについて反対なので,ここに納得ができないと前に進めない,進むべきではないというふうに,私も榊原さんに賛成します。

【土肥主査】松田委員,どうぞ。

【松田委員】私に対する反論がありましたので,それをまず再反論を加えます。それから主査の進め方について意見を言いたいと思っております,2点です。

先ほど,お二人の方から私が言ったこと,今の状況を考えるとマルチデバイスによって使用する社会状況があるのだから,それは私的録音補償金制度の対象外の状況があるとして考えるべきだというのは,これは反対いたします。河村委員は詭弁(きべん)といわれましたが,それこそであります。正に,マルチデバイスに使われるということが私的使用の拡大状況になっているということです。前述のDATからクラウドまでの変化は,私的複製が増えている証左にはなったとしても,減っている証左にはなりません。

もちろん,マルチデバイス利用を取引の前提にして利用者がコンテンツを取得した場合には,これは補償金の対象外でいいですよ。これは,次の2,対象の範囲の問題でそう書いてあるのです。マルチデバイスの利用が可能になったという社会状況と,この利用条件を前提とした取引とを混同して議論することは,基本的な誤りです。

第2点ですけれども,この委員会全体の中で,不利益が権利者に生じていると考えるという結論は,委員の大方の意見であります。それが具体的にそこまで行っていないのではないか,と社会状況が変わって,私的複製が減じたという意見は,具体的には3名の委員だけです。報告書は,このままの記載方法にしておいて,3名の反対意見があったことを書かれたらいかがでしょうか。

【土肥主査】ありがとうございます。その辺のところは,内心実は考えておりまして,そういう一字一句変えたくないということは毛頭申し上げておりません。本日頂いた意見を基に,これは本小委における皆様の御意見,御賛成を得られての上での話でありますけれども,本日頂いた意見を基に私の方でこの文章を,例えば先ほどからあるような,補償が必要な程度の不利益が権利者に生じていると考えられていると,考えられるというような文章に関しては,皆さんの御意見を参考に検討させていただきます。

それが,1つは脚注をどう考えるかということもございますし,本文のところを考えるということもあろうかと思いますけれども,いずれにしても例えば20人とかそういう委員会において,やっぱりこう成果を出していくのが我々の仕事でありまして,とにかくそのいろんな御意見で前に進まないというのは非常に残念なことであります。従いまして,河村委員とか榊原委員がおっしゃるような御意見を十分受けて,この1の部分ですね,1の部分については最大限努力をして,御理解がいただけるような形にまとめたいと思っております。

岸委員,どうぞ。

【岸委員】すいません,一言だけ。私この1ポツの部分では,実はそこまでもめる内容じゃないよなと思っていまして。これ,ちゃんと事務局も,書き方をすごく工夫しているよなと思いまして。要は,平成4年から24年たって,世の中大分変わったよねと。まだ複製は大量に,それなりにあるよねと。複製は,まだそれなりに存在するということは明確に言っていて。ただ,これ,この補償,不利益ですよね,不利益に関しましては,不利益がでかいとは明確に書いていないわけです。で,そういう意味で言えば,当然これは委員の立場によって不利益の程度の大きさが違うと考えるのが当然ですけれども,少なくとも不利益はゼロだというふうに断言できることはないと思いますので,そういう意味では,この書き方は非常によくそういうのを注意して書いていると思いますので,私は特段大きな修正はなくてもいいと思っています。

【土肥主査】ありがとうございます。

華頂委員,どうぞ。

【華頂委員】この1なんですけれども,これは録画もかかっているわけですよね。先ほどから議論を聞いていますと,音楽のことばかり言われているようで,録画がほっておかれているので,そこのところを考えれば,この1,この文章のままでいいんじゃないかなと思いますけれども。

【土肥主査】ありがとうございました。ほかに,大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】資料1には補償についての考え方がまさしくトータルバランスで全部入っていて,2ページのところに拙速であることに対する懸念もきちんと入っています。要するに,小委員会としてのトータルとしての意見がきちんと反映されていると思います。よって結論的には先ほど末吉委員が言われたのと同じように,早く方法論に入らないと前進がないので,早くここの段階を終わらせるべきと思います。

ここの1ページで言っていますのは,補償が必要な程度の不利益のレベルは,平成4年以降も変わっていない,ないしは上がっていて,これが微々たるものであれば,わざわざこういう議論をする必要もないのですが,補償の必要性を考えなければいけない程度のものはあるということであります。状況の変化が生じて法的な不利益すらないのであれば,議論をする必要はないわけでありますが,しかし,そうではなくて法的な不利益があり,それに伴い抽象的な経済的不利益があるので,これから検討するということになっているわけであります。そして,哲学論の部分も重要ですが,本日で言えば,2ポツであるような,1個1個各論のところを詰めていくという話になっているのではないかと思います。

それと,修正されるにしても,私も先ほどの岸委員と同じ意見で,これら全部がトータルバランスで,この1ポツの短いセンテンス1文だけでも崩し出すと全体のバランスが崩れて,結局第1段階の終わりでゼロ段階に戻ってしまいますので,ここの骨子はやはり無視できないものがあると言えます。状況の変化はないから,対策,方法論をこれから考えていこうという,先ほど言われた,末吉委員のような方向で,ほぼ全員が納得しているのではないかと思いますので,その基本線は崩さないようにお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございます。おっしゃるように,1ページと2ページ両方にかかっているわけでありまして,1ページの一番下は,正に岸委員がおっしゃったような理解の仕方をしていただくといいと思います。

むしろ大事なのは,2ページの,何を言っているかというと,まずは現行の30条以降の権利制限規定の範囲を維持することを前提に,補償の在り方を検討していきましょうと。で,そのときに,私的複製によって不利益が生じていることをもって,全て私的複製についての補償が必要であると直ちに断じることは拙速であると,十分私的複製の趣旨や性質を考慮しながら最終的にどんな制度設計をしていくかという,そういうことの方が重要であるというふうに書いてあるわけでありまして。非常に全体的に読んでいただけると,納得していただけるのではないかということであります。むしろ大事なのは,2の補償すべき範囲として,どういうところを一応検討の対象に今後していくかという,まあピン止めの範囲についての御意見の方が重要なのではないかと思うんです。

時間ももう14時20分でありますので,是非審議に御協力いただければと思うんですが。

今子委員,どうぞ。

【今子委員】2ページの一番上のサブスクリプションサービスのところですが,私が以前の回で述べた話がこの報告書に反映されているのかが,よく分からないので発言させていただきます。そのときに述べたのは,サブスクリプションに限らず,ストリーミング型の配信がこれからの主流になり,平成4年の制度導入時とは,技術的にも社会的にも全く異なるような状況に,今後更になっていくということです。権利者の方々が直接利用者にコンテンツを提供して,その対価を直接確保できるというようなすばらしい時代がやってくると,やってくるというか,そういう時代になっているということで,制度もそれをサポートできるような制度であった方がよいし,ビジネスモデルもそういう社会的,技術的な変化に合わせて,変わっていく必要があるのではないかと思っています。

そういう話が,これからの回で議論できるのか,あるいはこの報告書にしっかり反映していただけるのか,ちょっとよくわからないんですけれども,以前そういうことを述べましたということで,もう一度繰り返させていただきます。

【土肥主査】ありがとうございました。サブスクリプションの問題,今後こういう制度を入れる際に,仮に入れるような際には,柔軟な権利制限規定のように,ある程度時代の変遷に対応するような,そういうスキームというものが多分求められているのではないかなと思いますけれども,それはずっと先の話でございますので,そういう局面に来たらまた議論をしたいと思います。

2の音楽コンテンツの補償すべき範囲として,この4つの流通形態に関して検討の対象をこういうふうにまとめておりますけれども,これについて御異論がある方はおられますか。

異論がありますか?

【椎名委員】異論ではないです。

【土肥主査】じゃあ,異論はなくてもどうぞ。

【椎名委員】異論じゃないんですけれども,この間もちょっと後出しだと言われたんですが,厳密な意味で言うと,放送からの複製が入るのかなということを前回申し上げました。この報告書では,それは入っていないんですが,一応そのことだけ一言申し上げたいと。

【土肥主査】確かにその発言については記憶しておりますけれども。

【俵著作物流通推進室長】前回の委員会で,その意見があったのは分かっていますが,あえてそれを入れる,入れないの判断をせずに,特に記述をしないという形をとりました。最初にこの議論をしたときにその話が出ていなかったので,議論が複雑にならないように今回はそれを対象にせずに記述をしています。

【土肥主査】椎名委員,そういうことでございますけれども。

【椎名委員】はい,わかりました。

【土肥主査】ほかにこういうスコープに関していかがでしょうか。

どうぞ,じゃあ。

【小寺委員】異論ではなくて確認させてください。丸1でパッケージ販売と書いてあって,丸4でパッケージレンタルと書いてありますけれども,このパッケージという意味合いは,音楽コンテンツであっても,DVDやブルーレイのような映像込みの音楽コンテンツは含まないということでよろしいでしょうか。具体的には,レンタルと言えば,今CDか,販売だとまだアナログLPがあるようですけれども,まあほぼその2つという意味で,パッケージという理解でよろしいでしょうか。

【土肥主査】映像が入っている場合は,華頂委員がお詳しいんですけれども,それはもうDRMが,完全にコピーコントロールが掛っているという理解ですよね。

ほかに御意見ございませんか。ほかに御意見がなければ,2の仮止めはこういう形でまとめさせていただきます。

次に3でありますけれども,動画コンテンツに係る補償すべき範囲,これは余り御意見いただく部分が少ないんですけれども,こういう形でその審議経過報告の中にまとめざるを得ない,そういう状況は主査の責任かなと思いますけれども,現状整理すると,こういう形でまとめさせていただいております。よろしゅうございますか。

はい,どうぞ,松本委員。

【松本委員】質問ですが,6ページの(2)のマル1,放送波を最初に録画する部分について,補償云々(うんぬん)というところがありますけれども,この2つのポツのところで,タイムシフトという言葉がありますが,いわゆる放送波でタイムシフトが可能になるものはないんですよね,有料放送ですとか配信ではできますけれども,タイムシフトというんですかね,その下のタイムシフトとはという言葉がありますけれども,我々の業界ではダウンロードレンタルという呼び方をしています。例えば1週間後にはそのデータが消えるとかいったものは,放送波ではその仕組みはできていないんですけれども,その辺の分類はどうでしょうか。

【土肥主査】今のところは6ページの話ですよね。

【松本委員】はい。

【土肥主査】6ページの何行目になりますかね。

【松本委員】マル1の2つ目の黒いポツのところですね。

【土肥主査】最初の黒丸?

【松本委員】2つ目ですね,1つ目がどこを指しているのかというのもありますけれども,タイムシフトとはというのがありますよね,これは番組の視聴後に当該番組が消えるものという,これは放送波では消える仕組みはないんですよね。

【奥邨委員】すいません,私もちょっと読み流していました。これ,一般的なタイムシフトの意味と違いますよね。ソニーベータマックス判決以来のタイムシフトというのは,別に消えるということが,自動的に技術的になっているということではないと思うんですね。ですから,タイムシフトの中に消えるということまで書いてしまうと,これまでの定義としては違うと。消えるか,消えないかは別に,時間をずらして見るということで,そこから先,消すとか消えるとかいうことと,消えずに残るということによっては,権利者に与える差はありますよということで,多分いいのかなと思ったんですが。自動的に消えるものというのは,今タイムシフトどころか,何もないんではないかなと思います。そこまでは,ちょっと行き過ぎかなと思うんですが。

【華頂委員】よろしいですか。要するに,ここの2つ目のポツはですね,権利者が考えるタイムシフトの概念ですね,ですからリアルタイムで見れば,それは見た瞬間から後戻りできないわけですから,それと同じように,時間を変えて見るのであれば,リアルタイムに見ているのと同じような状況じゃなければおかしいんじゃないかと,権利者に不利益が生じないとは言い切れないということを申し上げているんですけれども。

【奥邨委員】いえ,すいません。長らく使われているタイムシフトと違う概念をここに入れるのは,ちょっと問題だと思いますが。華頂委員の今おっしゃっている,与える影響がどうというのはよくわかるんですけれども,ここに実際に存在しないタイムシフトというのを入れるのは,ちょっと問題だろうと思います。

【俵著作物流通推進室長】わかりました。誤解を生じないように趣旨に添った形で書き換えます。

【土肥主査】ほかにいかがでしょうか。

松本委員,どうぞ。

【松本委員】見方,観点がちょっと違うのかもわかりませんけれども,コンテンツの海外流通促進機構CODAというところでデータをまとめた,いわゆる海賊版の話があるんですけれども,我々アニメーション,あるいは濃いユーザーのためのコンテンツと言っていいんですかね,といったものは,いわゆるテレビ放送したときにはダビング10とか,コピーワンスとかいったところの中で制限されていますが,それを利用して,悪用してといいますか,する人たちがいて,それを勝手に録画したものをアップロードし,それを不正で海賊版として配信してしまう,まあ全世界でそれをやっているというその数字が,CODAからの出ている数字でいきますと,14年度にその被害額が2,888億円あると言われています。

その中で,アニメーションは約458億円と推計するんですけれども,それが年間で違法でアップロードしたために,我々コンテンツ制作者,クリエーターが損害を被っているという数字になります。コピーネバーとかいろんな制度あるいは法的な整備はしなければいけないんですけれども,現実的に有料,通常の視聴者,あるいは通常の録画,録音する人たちがやる行為以外での悪影響がこれだけ出ているという現実を,このたたき台の中に1行でも入れていただければ有り難いと思います。悪用する背景ができてしまっていると。

我々,私が子供の頃は,例えばテレビ放送でも,近所の子供がテレビ画面の前に近所の10人,20人が正座をして,みんなで一緒に見て,それで終わっちゃうんですよね。だから,その時間に見ないと見られなかったという時代から,今はデジタルを含めて,いろんな機器を含めて,今この現状である中でかなり便利になっています。今は法的なものだとか補償するんだとか,クリエーターに対する還元というものが,この違法に使われているところの数字を,どこか横に置かれて議論をしているような気がするんですよね。

我々,血と汗を流し,例えばテレビ番組30分作るのに1年以上かかるわけですよ。それを30分という放送の中で勝手に録画され,不正にそれを使用,悪用されるという環境を,是非この文言の中に入れていただければ有り難いと思います。

【土肥主査】はい。先ほどから申し上げておりますように,このたたき台というのは,本日の小委の意見を受けて必要なものを反映していくということを考えておりますので,その点についてはお任せいただければと思います。

はい。

【榊原委員】4ページの,もしかしたら先に進んでしまっていたのか,ちょっとあれですけれども,4ページの上から5行目で,ここ以外にも同じような記述がもしかしたらあれば,同じ意見なんですけれども,プレイスシフトやバックアップを目的とする私的複製について,権利者に不利益が生じていないとは言い難く,いずれの場合も補償すべき範囲に含まれると。これも何か1の議論と一緒で,補償すべきと。で,1のところでも,補償すべきだという御意見の方とかは,これ全体で見るんだから変えなくていいんだという御意見をおっしゃったんですけれども,やっぱり日本語として補償すべきと書かれると,やっぱり結論に聞こえるわけですね。

ですから,先ほど何か脚注かどこかで意見を反映いただけると,ちょっと脚注では心もとないのでちゃんと本文で反映いただきたいと思うんですけれども,こういうふうに結論に読めるところ,1の部分でも先ほど同じような補償が必要であると言い切ってしまっていたり,補償が必要な程度の不利益があると考えていたりするとか,全くどこも同じなんですけれども,そういうところの両論については,やはり書いていただけないと,ちょっと一任ということはできないなと。

先ほど,委員で反対なのは3人か4人かだけじゃないかというような,ここは多数決の場ではもちろんないと思うんですけれども,私の場合は1とカウントされたとしても,電機業界の意見ですし,消費者の方というのはその後ろに何千人の消費者の意見なので,重みが違うんじゃないかと思うんです,申し訳ないんですけれども。平成4年とか,その後のもっと後にも私的録音録画小委員会で決裂したときも,結局3人ぐらいの委員が最後まで反対したから決裂しているわけで,残りの十何人の委員はたしか賛成をしていたわけです。

ですから,何か人数が少ないから,これでまとめてもいいよねみたいなちょっと強引な進め方をされると,何のために来ているのかということにもなるので,そこは御配慮いただいて,文章については一任しろと言われても,やはりちゃんと見せていただかないと,このようなままで結論が,1のところも2のところもそういった部分があるんですけれども,補償が必要だとか補償すべきだとかという書き方をされているところは,やっぱり両論があるところはちゃんと両論を書いていただきたいと思います。

【土肥主査】わかりました。その部分は,要するに補償すべき範囲という部分は3ページあたりの丸1のところでは括弧書き,括弧が付いているんですね,前。要するに,補償すべき範囲で結論を出すつもりは毛頭ないんだと思うんですが,ここが結論に至るためにどこを検討するかという意味での補償すべき範囲という,そういう意味になっていますので,例えば丸2のところも括弧が付いていますよね,そういう次のステップでまた平場からというわけではなくて,そういう議論を積み重ねていく必要があるという意味で,このいずれの場合も,括弧書きの補償すべき範囲というものの中に入ってきますよという。

だから,先ほどから言っておりますように,問題はこの次ですよね,この次のステージ,それは大事だと思います。思いますけれども,やっぱり議論というのは積み重ねていかないといけないので,そこはひとつ御理解いただければと思います。もう40分近いので,ですよね,延々するというわけにもいかないものですから,そのあたりは皆さんに御了解いただければと思います。

これまでの1時間40分の時間の中で,たたき台という資料1についての議論をさせていただいてきたわけであります。このたたき台全体について,特に補償すべき範囲というこの部分についての,この記述につきましては,私の責任において記述をまとめるということで御了解いただきたいと思いますけれども,この点御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】ありがとうございます。それでは,そのように取り扱うことにし,本日様々頂いた御意見を十分,私の責任においてまとめたいと思いますので,御了解いただければと思います。

それでは,次に著作権等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過について,事務局から資料1と資料2についてまとめて説明ございましたけれども,資料2の平成28年度著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について,先ほどございましたけれども,この中に今日のたたき台を私の責任において取りまとめて,それをこの何ページでしたっけ,10ページの上の部分に追記するということでございますけれども,こういう取りまとめについて,御異議ございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】ありがとうございます。それでは,そのようなことで進めさせていただき,3月の分科会において,私から報告をすることにいたしたいと思います。

この大事なことは,今日のところよりもこの次でありまして,今後この補償すべき範囲についての仮止めの範囲について,これからこの上に議論を積み重ねていきたいと思っております。従いまして,皆様におかれましては,この次のステージについての議論について,御支援,御協力を賜りたいと思っております。

その他,その他という点があるわけ,つまり第3の審議事項,その他というのがございますけれども,この点,いい機会でございますので,何かございましたら御発言いただければと思います。

よろしゅうございますか。はい,どうぞ。

【椎名委員】細かいことなんですが,ここの音響が聞き取りにくい。どうもですね,発言される方にもよるとは思うんですが,何か音がワンワンしてしまって,微細な御発言の内容が聞き取れないところがあって残念なんですね。何らか改善ができるようであれば,是非改善をしていただけたらと思います。

【土肥主査】私はその点,痛切に希望しておりまして。ちょうど中間なものですから,どっちかが近ければ片方のマイクが拾えるんですけれども,それでなくてももう年でありますので,耳の方は衰えてきておりますので,今おっしゃっていただいたように,音響環境については是非よろしくお願いしたいと思います。

本日は,今期最後の……。

【杉本委員】主査。

【土肥主査】はい,どうぞ,杉本委員,どうぞ。

【杉本委員】事務局に質問というかお願いなんですけれども,今後主査がお話しされたように,具体的な補償制度の範囲の検討であったりとか,試算の検討に入ると思うんですけれども,そのためにも実態調査報告書はアップデートした方がいいと思うんですけれども。既に2年から3年前,報告が2年前なので,多分3年前か4年前の調査になっていると思うんですね。そうすると,市場の状況は大分変わっていると思っています,そういう意見がすごく出ているので,そうやってみたら,最新の情報にアップデートした上で議論していかないと,結構間違った結論が出がちだと思うんですけれども。いかがでしょうか,よろしくお願いします。

【俵著作物流通推進室長】その点について,今の御意見を踏まえて検討させていただきたいと思います。

【土肥主査】ほかにございますか。よろしゅうございますか。

それでは,今期最後の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会でございますので,事務局より永山審議官から御挨拶を一言頂戴したいと存じます。

【永山文化庁長官官房審議官】本日も熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございます。

私,平成21年から24年まで3年間著作権課長をしておりまして,当時大きく3つの検討課題があったかと思います。1つは,日本版フェアユースの問題,また間接侵害の問題,また私的録音録画補償金制度の問題ということで,先ほど河村委員から10年来同じような議論というふうに言っていますが,正に日本版フェアユースが今柔軟性のある権利制限規定として,間接侵害はその一部としてリース債との問題として議論が行われています。また,私的録音録画補償金制度そのものではありませんが,それに続く保護と利用との適切な在り方というものを御検討いただいております。非常に難しいけれども,重要な問題というものが残っているんだろうなと思っております。

補償金の関係では,ちょうど私がいた21年から24年当時は,審議会での検討ということではなくて,ちょうど裁判でデジタル放送,アナログからデジタルに放送が変わる際に,裁判でいろんな議論が行われたということで,その結果だけではなくて,利用形態の変化ということもなって,現状の制度がありながら機能していないという状況になっているかと思っております。私としては,現状に対する責任の一端を担っていると考えております。

そういう意味でも,この問題につきましては,私としても今後先生方の御意見も踏まえながら,聞きながら,御指導いただきながら解決といいますか,結論に向けて何らかの結論に向けて,私としても力を尽くしていきたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

今日は今期の最後ということですが,この問題については今日が最終結論ということではありませんで,これからも先生方に御議論いただきたいと思っておりますので,今期のお礼と今後へのまた議論への参画をお願いいたしまして,私からの挨拶とさせていただきます。今期はどうもありがとうございました。

【土肥主査】ありがとうございました。

それで,私からも今期最後だということでございますので,一言御挨拶を申し上げたいと思います。私,この年になるまで,例えば産構審において営業秘密とか商標の制度設計とか,いろいろこう関わってきたわけであります。その場合,やはりそこにおける議論というのは,新しい制度を作っても,そこにおける権利者というのは,明日は被告になったりするんですね。

つまり,産業財産権は業要件のないようなこともあったりして,要するに地位のそのポジションの相互性といいますか,両面性といいますか,そういうものがあるので,議論をしても割合落ち着くべきところに落ち着いたりするんですけれども,著作権の,特にこの委員会の場合はトリポールな利益状態の固定性というふうに言っているんですけれども,業要件もないし,事業者,権利者,一般消費者つまり一般ユーザー,この3者はいつもそうなんですね,権利者であり,いつも事業者であり,いつも一般消費者といいますか一般利用者という,そこの地位がない,変わらないものですから,なかなか相手の立場に一歩踏み込んで議論が進んでいかない。

法制小委で,ある委員が,大岡政談の三方一両損の例を出されて,全然別の文脈の中でありますけれども,やっぱりこういうトリポールの利益状態の中においては,やっぱり三方一両損というか,それは結果として1両得になるんですけれども,当事者においては1両得になるんですが,そういうような形で議論を進め,結論を得たいと思っております。

先ほど申し上げたように,今回の取りまとめに関しては,私の責任においてまとめて御報告いたしますけれども,それだけの責任を持ってやらせていただく覚悟だということでございます。

来年,この席に座っているかどうかは,それは結果次第でございますけれども,いずれにしても今期は皆様に多大な御支援,御協力を頂いて,中間的な形ではあるけれども,こういう形で一応一つまとめていただいたということについて,感謝申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,今期の著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会を終わります。本日はまことにありがとうございました。

―― 了 ――

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