平成25年度文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第2回)議事次第

日時:平成25年8月7日(水)
17:00~19:00
場所:東海大学校友会館 阿蘇の間

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)クラウドサービスと著作権について(関係者ヒアリング)
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1-1・1-2
一般社団法人電子情報技術産業協会提出資料(4MB)
資料2
一般社団法人新経済連盟提出資料(364KB)
資料3
ヤフー株式会社提出資料(128KB)
資料4
ニフティ株式会社提出資料(2MB)
資料5
一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム提出資料(1MB)
参考資料1
ヒアリング出席者一覧(84KB)
参考資料2
法制・基本問題小委員会(第1回)における議論(概要)(304KB)
 
出席者名簿(88KB)

【土肥主査】

 それでは,定刻でもございますので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第2回を開催いたします。本日はお忙しい中御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。
 まず,前回の本小委員会以降に事務局で人事異動がございましたので,御報告をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】

 事務局の人事異動を御報告申し上げます。7月1日付で文化庁長官官房著作権課長に着任しております,森孝之でございます。

【森著作権課長】

 森でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】

 それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 それでは,早速議事に入りますけれども,初めに,議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。本日の議事は,(1)クラウドサービスと著作権について(関係者ヒアリング),(2)その他の2点となっております。
 今回は,6月に行われました第1回の本小委員会におきまして,委員の方々より,クラウドサービスと著作権との関係について検討を求める御意見がございました。また,クラウドサービスの実態あるいは関係者が抱えておいでになる問題意識,こういったことをお聞きしてはどうかという御意見もございましたことから,本日はまず関係者の方々から御発表をいただき,その後,まとめて質疑応答,更に自由討議を行っていきたいと思っております。
 まず,事務局から,配付資料の確認とヒアリング出席者の方々の御紹介をお願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】

 それでは,配付資料の確認をさせていただきます。議事次第の下半分をごらんいただければと思います。
 まず,資料1-1から資料5まででございますけれども,それぞれ本日御発表いただきます皆様の発表資料をお配りさせていただいております。電子情報技術産業協会様より御提出いただいております資料につきましては,資料1-1と資料1-2の2種類がございますので,御注意いただければと思います。
 それから,参考資料1といたしましては,本日ヒアリングをお願いいたしております出席者の一覧をお配りしてございます。参考資料2といたしましては,6月17日に開催されました第1回の本小委員会における主な議論の概要をお配りさせていただいております。第1回の本小委員会では今期の本小委員会で審議すべき事項について御議論いただいたところでございますが,その概要となりますので,必要に応じて御参照いただければと思っております。
 配付資料については以上でございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局員までお声掛けいただければと思います。
 続きまして,本日御出席いただいております,御発表いただきます方々の御紹介をさせていただければと思います。参考資料1をごらんいただければと思います。
 まず,一般社団法人電子情報技術産業協会より,榊原美紀様,太佐種一様に御発表いただくこととしております。
 次に,一般社団法人新経済連盟より,関聡司様に御発表いただくこととしております。
 次に,ヤフー株式会社より,今子委員に御発表いただくこととしております。
 次に,ニフティ株式会社より,丸橋透様に御発表いただくこととしております。
 最後に,一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムより,板谷恭史様,長谷川篤様,岸原孝昌様に御発表いただくこととしております。
 ヒアリング出席者の御紹介につきましては以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは早速,関係者の方々のヒアリングに入りたいと思います。御発表に当たりましては,今御紹介のあった参考資料1に記載している順番に御発表いただければと思います。また,御発表の時間でございますけれども,基本的には各団体とも15分程度を目安に御発表いただければと,このように思っております。その後,18時半頃から,まとめて質疑応答と意見の交換を行いたいと思います。
 最初に,一般社団法人電子情報技術産業協会,榊原様,太佐様,どうぞよろしくお願いいたします。

【榊原氏】

 ありがとうございます。一般社団法人電子情報技術産業協会の榊原でございます。本日はこのような機会を頂きまして,ありがとうございます。
 資料が資料1-1と1-2,2点ございますが,資料1-2の方は参考資料ということで,本日の発表においては,資料1-1のパワーポイントの方を使用させていただきます。
 それでは,資料1-1に従って,まずタイトルですけれども,「新しい産業の創出・拡大に資するクラウドサービスやメディア変換等の新規ビジネスの促進に向けて」と題しまして御説明いたします。
 スライドの1ページにアジェンダを記載しております。事例を中心に,日本の事例や米国での裁判事例などを追って御説明いたします。
 最初のスライドになりますが,2ページ目,環境変化のスライドでございます。まず従来は,ストレージが高価であるとか通信効率が悪かったということでそもそもできなかったことが,現在は技術的にできるようになってきたという環境変化がありますということです。
 次のスライドで,スライドの3と4を比較しながらお聞きください。まず,クラウドサービスやメディア変換の現状についてですが,現在は,ユーザーの方が自宅で適法に入手,アクセスしたコンテンツを家の外で楽しむためには,自分でその都度必要なコンテンツを情報端末にコピーをして持ち出して楽しんでおられるということですけれども,自分でできない方,例えば高齢者の方とかメカに弱い方はこういったコンテンツの利用ができないということが現状だと思います。
 その下の4枚目のスライドですけれども,先ほど申し上げたとおり,環境変化が起こりまして,クラウドによってクラウドの中の自分の領域にコンテンツを保存することによって,いつでもどこでも家の外からクラウドにアクセスすることによってコンテンツの利用が可能になってきておりますので,こういったこと,ユーザーの行為を事業者が手伝おうことを認めていただきたいと思います。そうすることによってコンテンツの視聴機会を増やすということになるということで,業界としてお手伝いをしたいと思っております。これがこれからこの後御紹介する事例の大前提となります。
 次のスライド,5枚目ですけれども,「著作権法上の課題」というタイトルのスライドでございます。これは,新しいサービスが,真ん中の縦の列で列挙しておりますけれども,これから御説明する事例なんですけれども,これらの新しいサービスが認められることによって,左端の縦のライン,赤や黄色や青で書かれているところですけれども,私的自由の保障とか,公益性の向上,例えば教育とか,高齢者や身障者の方にとってもコンテンツの利用がしやすくなるとか,それから,先ほどの環境変化によって技術が高度化したことを享受することができるといった,ユーザーに見込まれるメリットがございますということで,最初に整理したスライドになります。
 次からが事例の御紹介になります。まずスライド7の事例1,メディア変換でございます。これはビデオからブルーレイとか,紙の本から電子書籍といったような,メディアを変換,フォーマットを変換するというようなサービスで,これも自分でやれば私的複製ということで認められると思うんですが,高齢者の方とか,自分でできない方については,結局できないということで,コンテンツを見ない,聞かないということになってしまうということですので,事業者がお手伝いするということを認めていただきたいと思います。
 この下の事例が,実際のアメリカのある会社さんの実例になります。このほかにも非常に多くの実例がございますが,例えばこのスライドの8ページの実例では,クラウドにメディア変換をして保存するということもサービスのメニューとして用意されていまして,オリジナルを紛失したようなときにも,災害時などで非常に役に立つというような御説明がされています。
 それから,事例2です。アクセシビリティのスライドです。これもメディア変換の一種ですけれども,例えば細かい字が読めない高齢者の方とか,目を酷使されている方とかが,文字情報を音声化して音で聞くということとか,それから,子供に自動振り仮名機能を付けて自習ができるといった,こういうことも自分でこういったソフトをダウンロードして自宅でやれば30条で認められると思うんですけれども,自分でできない方に対しては事業者がお手伝いをするというようなサービスも認めていただけないかと考えます。
 その実例が,スライド10,その下の「テキスト→スピーチ変換」というものでございます。
 それから,次の事例3でございます。個人向け録画視聴サービス。これは後ほど米国で認められた事例も簡単に御紹介させていただきますが,自宅で録画をする代わりに,クラウド事業者に対して番組を指示して,録画をクラウド上にしておいてもらう。宅外からクラウドにアクセスをして,コンテンツをいつでもどこでも楽しみたいというようなことを事業者が手伝うということを認めていただきたいというものです。
 次が事例4でプリントサービスというものです。これはユーザーが自分の好きな画像を選んで指定をいただいて,持ち込んでいただいたり,クラウドに送信してもらって,事業者の方でプリントをした商品をお作りして,カスタマイズ製品を御用意するというサービスです。
 次のスライド2枚,13枚目と14枚目のスライドで,多くの会社が既にこういったサービスを開始しております。例えばオンリーワンを手に入れようという,パソコンとかデジカメのデザイン,自分の好きなデザインでやってもらうとか,その下の例ではTシャツとか,そういった実例もございます。
 これもクラウドで自分のコンテンツをクラウド上に移してもらうというものと同じように,ユーザーが持っていたコンテンツを事業者に渡して焼き付けてもらうというような私的な目的に限って業者が手伝うということを認めていただけないでしょうかということです。これらの事業者は,第三者に著作権があるものについては持ち込まないようにということで現在は利用規約で対応しているところですけれども,実際に受付の段階で,プロの写真家の方の写真なのか,ユーザーの方が自分で撮った写真であるかということは実際には判別が難しいといったような課題があるかと思いますので,御検討いただければと思います。
 それから,次,事例5です。eラーニングのスライドです。下の方で,政府が既に進めておられる,1人情報端末1台ずつというようなことを御紹介しております。これについても,学校が授業と同時に参考資料等を送信するとか,そういったことは認められているようですけれども,事業者が学校から委託を受けて,授業の前とか後に送信をしたり,オンラインの講座をするといった,あらゆることができるようには現時点ではなっていないのではないかと思いますので,こういった整備も検討いただきたいということです。
 次です。事例6,スナップショット・アーカイブです。これはネット上の情報について,ユーザーの方が保存をしておきたいと思ったものについて,そのページをURLで指定して,事業者に保存をしてアーカイブを作っておいてもらうという事例です。この後のスライド18と19で多くの実例が紹介されているページを引用しております。
 これ,ウエブサービス10選といって,非常に多様なサービスがあるようです。例えば基本的にはユーザーが指定したページが保存された後は,ほかの方も見られるという公開のサービスがほとんどですけれども,有償で非公開にするというプライベートロッカー型のようなサービスも,最初のスタンダードな日本語魚拓サービスでは行われています。
 19ページのスライドを見ていただきますと,右側の上から3つ目,例えばウエブページを1枚の画像でキャプチャできるCapture Full Pageというように,本来のオリジナルのページはスクロールをしなければ見られないものを,1枚の一覧性のある画像にして保存してくれるとか,あとは,PDFに変換するとか,世代が変わってアップデートしたものを追いかけて保存してくれるというような種々のサービスが現実に社会的なニーズに応えて行われているというもので,こういったものも認めていただけないかと思います。
 それから,次です。事例7,論文作成・検証支援サービスです。2つのサービスをここでは例示として御紹介しています。左側,論文執筆支援サービス。これ,学者の方などでも活用できるのではないかと思いますけれども,執筆内容をリアルタイムで分析しまして,関連する文献を表示する。例えば有名な海外の学者さんの書かれた文献や書籍名を表示するとか,法律の条文を表示するとか,そういうことが表示されることによって,その文献の載った論文を購入するとか雑誌を購入するということで,コンテンツの売上げにもつながるのではないかと思います。
 右下の方は,論文盗作検出サービスというものでございます。これは最近,学生さんがウィキペディアとか友人の論文をそのままコピーして提出するというような事件も多発していますので,比較検証して,盗作ではないかチェックという,こういうサービスを行ってはどうかということです。
 この2つとも,いずれも事業者側が必要な情報を事前に収集して保存して,それを検索可能にして,最後,結果を通知するというような行為が必要になりますので,一部は現行の検索エンジンとか情報解析などで趣旨は実現されているとは思いますけれども,カバーし切れていない部分については,統合いただくとか,整理をいただきたいと思います。
 この事例7の応用編として,ほかにも評判分析のようなサービスが考えられます。これもユーザーの方から一定の条件をして,その条件に基づいて分析をして,その結果を通知してもらうというようなことで,事業者側としては,情報収集をして,分類をして,送信をするというような行為が必然的に生じるということで,それらの行為について適法にしていただきたいということでございます。
 事例9でございます。法人向けテレビ番組検索サービス。これは仮に皆様がテレビに映った場合には,そのテレビ番組を録画して後で御覧になりたいのではないかと思うんですけれども,これは法人の場合,法人自身がテレビに映った場合に録画をしておくと,30条には当たりませんので,形式的には一見侵害に当たるのではないかという疑問もあるわけですけれども,こういったニーズが非常にございます。また,自分でやるのではなくて,サービスを利用してほかの事業体に同じことをやってもらうというニーズもございます。
 現実に,次のスライド23,24,25,26の4ページにわたっては,これだけ実例や導入実績があるということでございます。例えば全部は御紹介いたしませんが,漫画になった引用例で分かりやすい例が25ページの例にあります。例えば左側が競合他社のCMを分析する必要があるというようなものですし,右側は,食中毒が起こったときに,株主から「昨日のニュースを説明してくれ」というような問い合わせが来たという事例で,昨日というところがポイントだと思うのですけれども,生放送ではなくて,録画をしておかないと答えられないというようなニーズがあるという御紹介でございます。こういったニーズについても御検討いただけないかということです。
 最後の事例になりますが,事例10,仮想化です。これは事例といいますよりは,今まで御説明したほぼ全ての事例に関わるものです。仮想化という言葉は,ITのリソースを物理的構成によらず柔軟に活用する仕組みという風にここでは定義をしております。簡単に申し上げると,皆様からするとクラウド上に1つコピーを置いたつもりが,実際クラウド側ではそれを複数に分散をして,例えば国境を越えてというような場合もあると思うのですけれども,いろいろなサーバーに保存してあったり,また逆に,複数あると思っていたファイルが1つにまとめられて保存されていたりと,そういったことをIT資源の効率的な活用という観点から現実に行っているということです。
 この実例がスライド28,Windows Azure仮想マシンイメージです。これは自宅のパソコンと全く同じものがクラウド上で実現できるというものです。この28ページのスライドの一番下の「クラウド上のデータは,物理的には複数の場所に保存し,効率的な管理が可能になっている」というのは,今申し上げたことでございます。このような仮想化については,後ほど米国の事例で再度御説明させていただきます。
 ここからが米国の事例になります。米国の事例,スライドの30ページと31ページは,先ほど事例3で御説明した個人向け録画視聴サービスを米国で認めたという事例でございます。こういったものが米国でも認められる以上,日本でも認めていただきたいということでございます。
 32ページのスライドに進みますけれども,MP3Tunes事件。これは今の2つのCablevision,Aereo事件を若干前に進めた事例です。コンテンツは音楽ですけれども,ユーザーが指定をしたコンテンツをアップロードしたり,ネットからサイド・ロードするという事例です。複数のユーザーがたまたま同じ音楽ファイルを保存するという指示をした場合には,この右下の図の物理領域のところですけれども,マスターコピーとしては1つしか作らないということで,先ほど仮想化のときに,複数あるものを1つにしていたりすると申し上げた,この典型例でございます。これについて,IT資源を有効に活用しているんですけれども,サービスとしては適法という判断がなされております。
 次が,HathiTrust事件というものです。全米の大学が書籍を電子化するということをグーグル社に依頼したということです。依頼をして,その電子資料を受け取って貯蔵していますということです。それによって,それらの内容を全文検索ができるとか,文献の保存がなされているわけですけれども,キーワード検索をした際には,例えば掲載されているページ数とかヒット数なども表示されるということで,これについても適法と判断されています。
 それから,スライド34は,論文盗作のサービスについてで,御説明はいたしませんが,これも適法という判断がなされたものでございます。
 最後,35ページ,これは動画等のマッシュアップというスライドです。裁判にはなっておりませんが,音楽や動画の複数のコンテンツをユーザーが組み合わせることで作品を創作するというようなことがアメリカでは既にある程度普及をしているということで,権利者などもそれに対して非常に賞賛をして金銭を払ったりとか,そういったことをして文化の発展に非常に貢献しているということで,アメリカはこういう状況に既に進んでいるという御紹介でございます。
 最後は,求められる世界観ということで,繰り返しになりますが,クラウドにいつでもどこでもコンテンツを利用可能にしていただきたいということです。
 最後のスライドで,著作者の正当な利益を不当に害しないということは当然ですけれども,技術が進歩してできるようになったことを法的にも整備いただくことによって,産業の創出やユーザー利便性の向上を実現いただきたいというお願いでございます。
 長時間になりましたが,御清聴ありがとうございました。以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,一般社団法人新経済連盟,関様,よろしくお願いいたします。

【関氏】

 新経済連盟で事務局長をやっております関と申します。本日は説明のお時間を頂きまして,ありがとうございます。資料2「クラウドサービスと著作権法」というふうにタイトルを付けた資料に基づきまして,説明をさせていただきます。
 まず,本題に入る前に,比較的新しい経済団体でございますので,ごく簡単に御紹介をさせてください。2スライド目になります。設立は2010年2月で3年半ほど前,eビジネス推進連合会という名前で当時は発足しております。その後,昨年の6月には新経済連盟という形に名称変更しています。その際に目的を拡大しております。もともとeビジネスに特化していたんですが,それ以外の,もっと幅広く新産業というものを捉えて,それの発展を目指して日本の成長に寄与していきたいということで,幅広く新産業について公正で自由な経済活動ができるようにということを目指して,政策提言等を行ってきております。
 現在,会員数は815社であります。この中の内訳としては,ネット専業でeコマースとか,ネットの広告とか,ポータルとか,そういったことやっている会社もございます。それ以外に,ネット専業ではないんですが,例えば銀行さんとか,病院,クリニックさん,それから,ホテルとか,あるいは法律事務所のようなところ,業界が多岐にわたるんですが,こういったところでインターネットとかITを活用されてビジネスを展開しているというところが会員として入っております。
 それで,1枚めくっていただきまして,3スライド目でございます。まず,ユーザー目線で見たときに今の状況がどういう感じかということを簡単に御説明させていただきたいと思います。先ほどの御説明にもありましたけれども,いろいろなデバイスとかいろいろな環境が出てきておりますので,ユーザーサイドとしては,好きなときに好きな場所で好きなデバイスで手軽に視聴したいという要望が強くなってきております。特にこういったスキルのある人にとっては,それができて当然という状況になっているかなと思います。すなわち,媒体に固定されないコンテンツという概念がユーザーの方に浸透しておりますし,それと並行する形でいろいろ利用できるデバイスがどんどん普及していると,そういう状況かと思います。
 次のスライドですけれども,そういう状況下でユーザーから見ますと,物もデータも自分が使用できるコンテンツだということで,それがどういうやり方であってもアクセスできるようにしたい,しかも手軽にしたい,こういうことがユーザーの希望としてあると。事業者から見ますと,そのニーズに対しては的確に応えるということでビジネスをするというのが事業者の務めかなと思います。それに伴って,全く新しい視聴環境をどんどん積極的に提供していきたいということで,これによってイノベーションがどんどん生まれて,日本の経済も成長すると,こういうことかなと考えております。
 次のスライドに行ってください。今申し上げましたように,事業者にとってのニーズは,先ほど申し上げましたような,ユーザーの方のコンテンツへのアクセスの要望,これをかなえるというのが事業者のニーズであり,ビジネスとして通常の考え方だと思います。新たな視聴環境を提供するということなんですが,海外で普通に行われているようなサービス,これを日本でも展開したいというのが通常のビジネス的な考え方かと思います。
 これはいろいろなところで説明されていますけれども,それを日本で実際にやろうとすると法的リスクが存在するということで,日本の事業者は概してコンプライアンスの意識が高いものですから,委縮して,チャレンジ的にやるというところはなかなか出てこないという状態になっていると思います。
 その例として,今日,1つだけ御説明したいと思います。ここで例としているのはスキャン&マッチ型音楽クラウドサービスというものでございます。絵が6スライド目にございますので,これで簡単に御説明します。まず,このクラウドサービスは,アメリカの方では実際に行われているということなんですが,ユーザーがあらかじめ端末内に持っている楽曲,これをあらかじめスキャンをしまして,それが事業者が提供できるような形でライセンスを持っている楽曲と合う場合には,事業者のデータで配信する。ユーザーからユーザーが持っているデータをアップロードすることなく,事業者側の持っている楽曲を配信するという形になります。
 一方,マッチしなかった楽曲につきましては,事業者に配信権限はございませんので,その場合にはユーザーの端末からクラウドにアップロードして配信するという形になります。すなわち,この部分がコンテンツロッカー型のサービスという形になります。現時点で,我々が調べた限りでは,日本では提供されていないと理解しております。
 これの法的なリスク環境をもうちょっと説明しますと,次のスライドになります。7スライド目でございます。これは一昨年の報告書にもありましたコンテンツロッカー型のサービスの部分であります。まずユーザーから見た場合,こういったサービスを提供するサーバーが公衆用設置自動複製機器に該当する可能性があり,このアップロード行為が私的利用の範囲内かどうかという懸念が出てくる。さらには,事業者から見た場合,必要に応じ,ファイル変換とか最適化とかいろいろな処理をするわけですけれども,それが違法な複製に該当する可能性がありますと。最終的には,ユーザーが1人であっても,公衆送信という形に認識される可能性もあるということになります。
 8スライド目はそれを文章でまとめておりますけれども,こういう幾つかの法的リスクが考えられます。日本の場合,裁判でこういう違法性を認定するような判決が幾つか出てきているということで,法的な安定性がないということで,事業者から見れば,安心してビジネスを展開できない,ユーザーから見れば,本来提供されるようなサービスが日本では受けられないと,そういう状況になっているかなと思います。
 最後のスライド,9スライド目でございます。一昨年の報告書の中にも言及がありますように,これはクラウドサービス固有の問題ではないと我々も考えております。ですので,デジタル時代の根本的な問題だという認識で法制度の検討をすべきではないかと思っております。インターネットの利用において,時間,場所,デバイス,こういったものがどんどん変化,シフトしているという状況を踏まえた法制度の検討が必須ではないかと思っています。これによって,新たなビジネスが日本でどんどん出てくるとすれば,これはもちろん事業者のみならず,ユーザーにとっても非常に利便性が高くなりますし,それによって権利者にとっても非常に有益ではないかと考えております。御検討いただければと思います。よろしくお願いします。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,ヤフー株式会社,今子委員,よろしくお願いいたします。

【今子委員】

 ヤフーの今子でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして,どうもありがとうございます。お手元にお配りいただきました資料に基づいて,お話をさせていただきます。
 クラウドサービスの発展は,日本の産業の重要な牽引(けんいん)力となっていくと考えており,競争力の強化の観点から,更なる発展への道筋を立てていくことはとても重要であると思っております。クラウド以前と比較いたしまして,技術が飛躍的に進歩しています。それに伴って,サービス提供できる幅が非常に広がっていて,こうした技術の発展による利便性を世界に後れることなく日本の利用者が享受することができるようにクラウドサービスを発展させていかなければいけないと思っています。
 特に,利用者が自ら所有するコンテンツをサーバーに保管し,時間や場所を問わずに様々な媒体で活用できるようなクラウドストレージは,クラウド時代の技術としては当たり前の機能であり,これをクラウドサービスとして日本の利用者が不便なく活用できるようにすることは当然に実現されるべきだと考えております。
 このようなサービスを自らの努力によって実現することこそが,事業者の果たすべき責務であると考えています。すなわち,現行法下でクラウドサービスを提供できないという状況ではないですし,法の規制内容に明確でない部分があるとしても,適法なサービスの実現を事業者にて模索の上事業を進めることは,クラウドサービスに限らず重要であると考えております。不明確だからサービスを行わないということであれば,日本のクラウドサービスはほかの国から後れてしまうということになってしまいます。また,そもそもクラウドは道具にすぎないと考えておりまして,これを活用した様々なサービスが可能な中で,一律に法的明確性を追求するということは難しいのではないかと思っています。
 ただ,現行著作権法上,著作権法30条1項1号など,デジタル化ネットワーク化時代には適合していないと思われる規定もあり,MYUTA事件判決など,クラウドサービスに関連するような判例が存在していることなどから,一般的に懸念が生じているということも理解できます。
 したがいまして,様々に展開されるクラウドサービスの実態を把握して,それらは現行法上どのように整理されるのか確認すること,また,著作権が時代遅れになってしまっているという部分については手直しをすべきことを指摘すること,さらに,その他検討を要すべき点があればそれを指摘することには,一定の意義があると考えております。
 弊社の提供しておりますYahoo!ボックスというサービスについて御説明をさせていただきます。まず,サービスの沿革です。2001年にYahoo!フォト,それから,Yahoo!ブリーフケースの2つのサービスの提供を開始いたしました。これはまだクラウドという用語がなかった時代ですので,クラウドサービスとしては認識しておりませんでしたが,今から考えれば,同様の性質をもつサービスだったということになります。2011年にYahoo!ボックスというサービス提供の開始をもちまして,フォトとブリーフケースを閉鎖し,そのデータをボックスの方に移行しました。
 Yahoo!ボックスは,利用者が自分が持っているコンテンツを保管し,いつでも,どこでも,どんなクライアントからでもアクセスができるという,汎用(はんよう)的なクラウドストレージサービスです。すなわち,種類や内容を問わずにコンテンツをサーバーに保管することが可能です。サービス側では,誰がどんなコンテンツを保管しているかについては,関知いたしません。コンテンツへは,保管したユーザーのみがアクセス可能です。ただし,自分が撮影した写真をほかの人に見せたい場合などに,コンテンツの共有や公開の機能がございます。また,権利侵害等の理由で,権利者の方等から申告をいただいた際には,サービス側の判断でコンテンツを削除します。
 このようなサービスを実現するための技術と致しましては,大きく,端末仮想化技術,アーカイブ技術,ファイル同期技術といった3つの技術が挙げられます。まず,端末仮想化技術によって,スマートフォンやタブレット等の多数の端末でクラウドサービスを利用することが可能になりました。また,アーカイブ技術によって,動画や音楽,電子書籍など多様なコンテンツを格納することも可能になっております。さらに,ファイル同期技術により,ファイルの同期がすぐになされ,自動的にバックアップすることも可能となっております。
 2001年と2011年のサービス内容は,データをサーバー側にお預かりするというストレージ部分については,何ら変わりございません。技術的に特に進歩した点といたしましては,2点ございます。1つ目は端末仮想化技術です。2001年当時は,現在ほど多くの端末も存在していなかったため,インターネットのウエブページ経由でPCからアクセスするというタイプで,手元のクライアント側にはデータを置かないというサービスだったので,端末仮想化技術は必要がありませんでした。また2つ目は,ファイル同期技術です。端末側とサーバー間での自動同期化といった技術は当時のサービスでは使用されておりませんでした。
 最後に,著作権法上の課題としましては,大きく分けて3点あるかと考えております。 まず1つ目は,利用者によるコンテンツのサーバーへの格納の問題があるかと思います。利用行為主体が一体誰であるかということですが,平成23年の報告書によりますと,「クラウドサービスにおける著作物の利用行為主体がサービス提供者であるとは,直ちに捉えられないと解されよう」,さらに,「まねきTV,ロクラクⅡ 事件及びMYUTA事件について,判決の射程を限定的に捉える見解を支持する意見で概ね一致」とあり,私自身はこれと同意見です。
 少なくとも利用者がコンテンツを自らサーバーのクローズドな領域に格納し,私的使用の範囲でのみ楽しむ場合であって,事業者が格納されたコンテンツの内容について関知していない場合であれば,基本的に利用者による複製と整理できるのではないかと考えております。また,例えばCD音源からMP3への変換やデータの圧縮のように,利用者がクラウドに格納するに当たってデータが自動変換されるとしても,そのような技術的困難性があるは言えない自動変換を提供していることをもって,利用者が行為主体であるということは否定されないのではないかと考えております。
 それから,先ほど申し上げました公衆用設置自動複製機器ですが,利用者が複製主体と評価できたとしても,仮にサーバーが公衆用設置自動複製機器に該当するとしたら,利用者の私的複製が侵害となってしまい,事業者がその幇助(ほうじょ)とも評価されかねません。もしそういうことであれば,この規定はそもそもデジタル化ネットワーク化時代に適合していない規定であるということが言えると思いますので,手直しが必要なのではないかと考えております。
 次に,サービス提供に伴う複製が挙げられます。これは一例を書いているだけですが,様々なことがあるのではないかと思っております。例えばクラウド事業の譲渡や事業者の倒産などの事情が生じたときに,サービス提供上,事業者間等の複製が不可避的に行われる場合があります。また,サービス提供の都合上,事業者の中でいろいろな複製が行われることもありますが,それが著作権法30条の範囲内といえるかよく分からない場合があります。利用者によるコンテンツの活用が阻害されないようにするため,柔軟性のある規定を設けるなどの措置が必要ではないかと考えます。
 そして,3つ目に,今後いろいろな事例があるかもしれないと思っておりますのが,グローバル化の問題です。海外の事業者の提供するサービスを日本の利用者が活用したり,日本のクラウド事業者が海外のデータセンター等を活用したりするなど,クラウドサービスはグローバルに展開されております。国境を越えるデータのやりとりにより生じる課題については,引き続き検討が必要ではないかと思っております。以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは,また続きまして,ニフティ株式会社,丸橋様,よろしくお願いいたします。

【丸橋氏】

 ニフティ株式会社の法務部長の丸橋です。資料4に基づいて御説明します。本日はヒアリングの機会を頂きまして,ありがとうございます。
 スライド番号1ですけれども,ニフティは80年代の終わりからパソコン通信サービスの提供を開始し,もう30年近くになります。事業の変遷としては,その間,ブロードバンド時代に突入して,いわゆるISPとしての接続事業,そして一般消費者向けのウエブサービス事業を展開してきました。この絵の中にありますけれども,ココログというブログサービス,あるいは主婦向けのサービスであるシュフモみたいなウエブサービスで培ったサーバー仮想化技術を発展させて,真ん中にありますパブリッククラウドサービスであるニフティクラウドを提供しております。
 めくっていただきまして,スライド2からは,もう皆様相当御理解されていると思いますけれども,クラウドコンピューティングあるいはクラウドサービスについて,主にパブリッククラウド事業者としての技術,仕組みみたいなものを若干説明しておきたいと思います。
 まず,クラウドコンピューティングというのは,コンピューター処理を,ネットワークを通じてサービスとして提供する,あるいは利用する形態です。ネットワークの集まりもクラウドと表現されることもありますが,物理的には,あらかじめ様々なサーバーあるいはストレージの組合せがインターネットデータセンターに用意されており,それを利用して情報処理するという一番単純な形態や,複数のIDCを使ったコンピューティングを同時並行的に行う形態があり得ます。ユーザーからしてみれば,サーバーやストレージ機器を自社あるいは自宅,又は自社でIDCに確保したエリア,オンプレミスといいますけれども,オンプレミス環境に用意することなく使えるというのがクラウドコンピューティングです。
 営業秘密を取り扱う企業内の事務処理においてはプライベートクラウドサービスという形になりますし,消費者等第三者向けのウエブサービス,ゲーム等のウエブサービスのうち,開発や構築スピードが優先されるものについてはパブリッククラウドを使っていただいているということです。
 この資料中,顧客とかユーザーとか,言葉の整理が足りなくて,場面場面によって,企業あるいは一般消費者,エンドユーザーという意味で使っていたりするもので,その部分については補足しながら御説明します。
 スライド3,顧客から見たクラウドのメリットですが,世の中では3点整理されています。サービスベースの従量課金であること,それから,オンデマンドであること,それから,スケールと柔軟性があるということです。サービスベースの従量課金なので,初期投資が要らなくて,不要になったらやめられるという点,それから,必要なときにすぐに始められる,足りなくなったらすぐに増やせるという特徴についてはユーティリティコンピューティングという表現もされています。水道の蛇口をひねれば使えるというような側面があるということです。それから,小さく始めて大きくできる,誰でもスケールメリットを享受できるというような点があります。
 こういうものを使って,企業としては,自社が直接管理支配するオンプレミスにおけるコンピューティングからクラウドコンピューティングに利用を変更したり,利用を変更しないまでも,BCP,つまり大震災等に備えて,オンプレミスとクラウドを並行運用するというような流れが今できているところです。
 次の4ページ目ですけれども,クラウドのどのレイヤーをどういうふうに呼んでいるかという単純化した一般的な分類が,この4ページの絵です。網掛けしているところとしていないところがありますが,必ずしもこの絵のとおりとはなっていなくて,例えば一番端のIaaSですと,OSまで事業者が用意はするんですけれども,OSのライセンス自体はユーザーに取ってもらうというような形式が一番一般的だったりはしますが,この境というのはそれほど厳密なものではないです。
 それでは,スライド5ですけれども,IaaSとは,Infrastructure as a Serviceです。インターネットを通じて,インフラ環境をオンデマンドに提供するものを一般的にIaaSといっています。IaaSの上にどのようなシステムを構築して,どんなデータを置くのかは完全にユーザーの管理支配下にあるわけです。ニフティクラウドでもメーンのサービスはこのIaaSでして,顧客の用途としては,サービスの自社開発をするのが実際上は多いです。
 このIaaSというのは,インターネットデータセンターにおいてハウジングと呼ばれるサービスに相当します。顧客が,物理的なサーバーやネットワークを持ち込むのがハウジングですけれども,物理的なサーバーやネットワークを持ち込むことを顧客にさせないで,サーバーリソースやネットワークがあらかじめ用意されたメニューから選べるようにして,物理的なサーバーの調達・保守・運用・監視から顧客を開放するというのがこのIaaSです。
 めくっていただきまして,スライド6,PaaSです。Platform as a Serviceということで,ソフトウエアを開発するための土台となるプラットフォームを提供するサービスです。ユーザーは,複雑なサーバーの構築や設定を自分で行う必要がなくて,すぐにアプリケーションの開発を始めることができます。ニフティの場合は,右端に小さく書いてありますけれども,C4SAという,主に開発者向けのプラットフォームを提供しています。PHPとかRuby等のプログラム言語やMySQLのようなデータベース等,アプリケーションサービスを開発,作成するための環境をあらかじめ用意しておいて,ユーザーはそれを選択すると,ボタン1発でCPUやメモリ等のリソースも込みの開発環境が設定されるので,すぐブラウザベースの開発ができるというようなものです。個人の開発者や大学でのウエブサービス開発の実習の授業のようなものでも活用されています。
 それから,この下のスライド7のBaaSですけれども,これはPaaSの一種です。Mobile BaaS,MBaaSという言い方もします。ニフティクラウドでは9月にmobile backendのBaaSを提供する予定になっています。ユーザーは,手間のかかるバックエンド機能の開発を省略して,アプリ開発に集中することができます。例えばアパレル系のプロモーション用コンテンツ配信アプリ開発の場合,開発期間が9週間から6週間に短縮されるだとか,設計からテストまでの費用がスクラッチ開発する場合に比べて41%費用削減できるというようなプロモーションをしているところです。
 モバイル向けサービスの場合,特に現在のスマホに限っていいますと,少なくともAndroid OSとiOSと両方に対応しなければいけませんので,そのための開発を同時に進める必要があります。このMBaaSを使うと,そういう二重開発を吸収することができますし,出来上がったアプリであれば,デバイス,OSを問わず対応できるということになります。
 次のスライド8です。著作権法の関係では,SaaSより更に上のレイヤーが主に問題になると思います。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウエア,主にアプリケーションソフトウエア若しくはその提供形態を指すわけですけれども,クラウド以前ではASPと呼ばれていた分野です。ISPの周辺では,サーバーのホスティング,ウエブサーバーのホスティングとかメールシステムのホスティングが一番代表的なサービスでした。クラウド時代になって,よりユーザーから使いやすいサービス形態や機能仕様となったということです。
 ニフティで自社提供しているSaaSとしては2つ紹介していますけれども,まずビジネスメールのSaaSです。それから,その下,パーソナルクラウドと呼ばれる分野で,先ほどヤフーさんのYahoo!ボックスが紹介されましたけれども,個人向けに提供されるクラウドサービスのうち一番典型的な汎用(はんよう)ストレージサービス,マイキャビというものも提供しています。こちらは多くの説明を要しない,当たり前のサービスですけれども,やはり著作権法との関係でいいますと,マイキャビにも知り合いとの共有機能がありますので,その部分をどう評価するかが課題となります。
 次のスライド10です。ニフティの法務担当者として十数年やってきましたけれども,ホスティングサービス提供事業者の時代からクラウドサービス提供事業者の時代になって,やっぱりこう整理してほしいというのを次以降のスライドで御説明したいと思います。
 まず,クラウドに限っていえば,IaaS,PaaS,SaaSのいずれかであっても,また,法人向けか個人向けかを問わず,クラウドサービス事業者というのは汎用(はんよう)サービスとしてのインフラの提供者にすぎないというのをまず確認したいということです。
 それから,その下,スライドの11ですけれども,まずデータの利用場所を移動して利用する際のメディア変換,あるいはマルチデバイス対応,タイムシフティングとかプレイスシフティングというものについて,エンドユーザーによる視聴等,最終的な著作物の利用形態に注目して,リアルな環境あるいはオンプレミスによる複製利用,これは1対1であったり,1対多で知人に複製物を渡すというようなものはあるとは思うんですけれども,そういうものと等価な評価で考えてほしいということです。
 ですので,時,場所,デバイスを選ばず,エンドユーザーが,自分自身が利用できるようにするクラウドサービスがMYUTA事件のように違法とされるのは,少なくともクラウド事業者としてはとても違和感があり,MYUTA類似のサービスが公衆性があると認定されるような判決が生き残るような著作権法制ではいけないと思います。それから,技術的困難性についてもMYUTA事件で書いてありますけれども,クラウド時代ではそういうものはスピードがとても速いです。あるとき技術的に困難性があると思われたものは,すぐに陳腐化します。MYUTAサービスを今やったら,陳腐な技術であり,技術的困難性はないのだということになると思いますけれども,自動的変換に伴う技術的困難性みたいなものを考慮の要素とすべきではないというのが私の意見です。
 それから,反対側,スライド12ですけれども,エンドユーザーが自らクラウドに置いたデータを家庭内その他これに準ずる限られた範囲内に使用するというもの,リアル社会での家庭内それに準ずる範囲内というのは,クラウドサービス上においても当然あるべきだと思っています。それはそうだということであれば万々歳のわけですけれども,そうとも読めないという御意見があるようでしたら,これは立法で解決すべきかなと思っております。
 スライド13ですけれども,今度は主に1対多,あるいはデータの共有と呼ばれる部分については,TVブレイク事件判決という問題判決について,それを否定するような解釈なのか立法なのか,そういうものをクラウド事業者としては望んでいます。著作権侵害の通報を受けた時点で事後対応すれば足りるという範囲,そこをきちんと見えるようにしていただきたいという意味で,間接侵害等に関する考え方の整理にいう3つの類型を御議論されたと思いますけれども,クラウドサービスがこれらの類型のいずれにも該当しないことです。特に一番心配な不作為類型,第2類型「侵害発生の実質的危険性を有する物品・場を,侵害発生を知り,また知るべきでありながら侵害発生防止のための合理的装置をとることなく当該侵害のために提供するもの」ですが,一般的なクラウドサービスがこれに当たることはないと思うんですけれども,間接侵害とされる境界線がどういう線かというのがやはりずっと気になっております。
 最後に,当社として検討したが挫折(ざせつ)した,あるいは検討だけで終わっているという事例を2つ紹介しておきます。最初の1つがスライド14ですけれども,プリキャッシュサービスというものを考えました。画面上に1,2,3と書いてあります。普通のルートは,URLのリストをクラウド上だけに持って,後で見るというふうに登録した動画を後で視聴するということは,これは今でも全然問題ないのではないかと思うのですけれども,プリキャッシュというのは,2´,3´のところ,後で見るというふうに登録した動画のデータをあらかじめ端末へキャッシュしておいて,移動中とか,時間ができたときに快適に見るということを機能提供したいというものでした。現在では地下鉄の中でさえ相当受信できるので,これはまた既に時代遅れかもしれませんけれども,例えばこういうようなサービスです。
 それから,最後にスライド15ですけれども,自宅でネット接続したレコーダーを利用して,番組をスマホ等を使って録画予約する。これは普通にできるわけですけれども,その録画のストレージの先をクラウド上に持ってくることができるのではないかという検討をしたことがあります。これはクラウドストレージ上に録画番組を持って,時間とか場所を気にせず見ることができるサービスを提供できるのではないかということです。
 さらに,ちょっと小さくて見にくいのですけれども,真ん中の「クラウド上のストレージに録画」という箱の中の一番下のポチ,複数ユーザーが同一番組をクラウド上に録画した場合,先ほどの新経済連盟さんのミュージックのロッカーサービスの事例と似ていると思いますけれども,録画データを一本化してクラウドリソースを節約することも考えられるのではないかということまで視野に入れて議論したんですけれども,やめておいたというような事例です。
 ちょっと長くなりましたが,以上で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 それでは,続きまして,一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム,板谷様,長谷川様,岸原様,よろしくお願いいたします。

【板谷氏】

 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム,部会長の板谷でございます。本日は意見を申し上げる場をいただきまして,ありがとうございます。
 早速ですけれども,著作権に関わる意見,著作権制度で対応を必要とする事柄につきまして,特にクラウドサービス,民法(債権法関係)改正の観点からお話をさせていただきます。パワーポイントの右下にページ数を振っておりますので,そちらの方をお願いします。
 2ページをお願いします。まず,モバイルの業界ですけれども,フィーチャーフォンとスマートフォンの契約台数自体は,グラフにもありますように,2009年から2013年まで約1万件から約1万1,000件へと緩やかに約10%成長しております。しかし,その内訳としては,フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が急速に進んでおりまして,今後もその傾向が続くと予測されております。すなわち,スマートフォンでのビジネスへの変換が急速に進んでいるということでもあります。
 次のページをお願いします。こちらは,スマートフォンのOS別のシェアなんですけれども,AndroidとiOSがほとんどのシェアを持っている状況になっております。
 次のページですけれども,こちら,世界主要国でのスマートフォン市場占有率になります。日本は34%とまだまだ低い数字なんですけれども,世界の主要国では50%以上の市場占有率に至っております。スマートフォンでのビジネスにおいては,我が国の国内のみではなくて,世界に向けてのビジネスの状況になってきております。
 5ページをお願いいたします。ここからは,ビジネストレンドであるクラウドのお話をさせていただきます。ただ,ここではクラウドサービスの全てというものをお話しすることはできませんので,その一例を取り上げたいと思います。図に記載しておりますのは,クラウドサービスの1つであります,ユーザーが自分自身のためのみにクラウドでファイルを出し入れするだけのサービス,いわゆるロッカー型モデルと言われるものでございます。このモデルは,ユーザーが個人的に私的複製した著作物を個人的に使用するためのサービスで,とても便利なサービスであります。このようなモデルについては,基本的な考え方として,私的使用目的の複製の範囲であると取り扱うのが妥当であると我々は考えを持っております。
 次のページをお願いします。こちらもクラウドサービスの一例となりますけれども,クラウドサービス提供事業者によって何らかの付加サービスが提供されるモデルでして,いわゆるアプリケーション提供型と言われているモデルになります。このモデルについては,現行の法解釈では,クラウドサービス提供事業者の関与の方法等によって送信主体等の判断がございまして,いろいろと議論のあるところかと考えます。クラウドサービスの発展,すなわち,我が国での経済発展のためには,このようなクラウドサービスのモデルについても,そのビジネスに合わせて著作権制度での対応が必要であろうとMCFでは意見を持っております。
 7ページをお願いいたします。クラウドについてのMCFの意見まとめでございます。MCFでは,基本的に3つのバランスが必要だと考えております。著作権の独占排他的な権利の保護,利用者の保護,文化の発展及び経済の発展,これらのバランスが重要であると考えております。
 その上で,クラウドにつきましては,ロッカー型モデルは私的複製の範囲であることを前提と,このようにさせていただきまして,将来性のあるアプリケーション提供型のクラウドサービスに適した私的複製の範囲について法解釈を行った上で,制限規定と公衆用設置自動複製機器規定等の検討が必要である,このような意見を持っております。
 あるいは,新たな権利処理スキームの検討についても意見を持っております。私的使用の範囲に沿った利用端末の制限等によって権利者の権利を保護しつつ,利便性を実現することができるのではないかと,このように考えております。また,簡便にワンストップで権利処理できるような権利処理スキームがあれば,サービスレベルの向上が実現できるため,権利者の著作権料収入も拡大し,利用者,事業者,三者にとって有益であると考えます。MCFとしましては,このような取組を検討すべきであるというような意見を持っております。
 8ページをお願いいたします。引き続きまして,クラウドについての参考までなんですが,ビジネストレンドとして,ソーシャルサービス,SNSについて少し触れたいと思います。現在,我が国の経済においてSNSは非常に大きなビジネスとなっています。グラフにもありますように,我が国は今年に至っては利用者数が5,000万人を超えまして,ネット利用人口の50%以上はSNSを利用しているといったデータもございます。それからまた,ここに載せてはおりませんけれども,ニュースなどで御承知かと思うんですが,LINEをはじめとしたSNSのサービスは世界の市場でユーザーを急速に獲得しております。
 次の9ページと10ページにつきまして御説明いたします。スマートフォンの環境になって大きな特徴は,ソーシャル性を持ったコンテンツの急成長であります。現在,ソーシャルゲームはスマートフォンコンテンツの約60%を占めております。市場の成長率も,ほかのコンテンツがシュリンクしている中で,対前年比184%といったことで急拡大しております。現状はゲーム分野で顕著な傾向が明らかになっておりますけれども,今後あらゆるコンテンツ分野に関してもソーシャル連携が大きな要素になっていくと考えられます。
 日本のコンテンツビジネスが負のスパイラルに陥っている現状を変える方が双方にとって有益であるといったことを発言させていただければと思います。11ページをお願いいたします。このように,コンテンツビジネスにおいては,広告モデル,課金モデルにかかわらず,ソーシャル化によって変革しております。現在の売上げの中心はゲーム等でのアイテム課金ですけれども,ソーシャルでの新ビジネスの創出が世界でビジネスをするための鍵という考え方もあるかと思われます。クラウド化の中でできないことをできるようにすることがビジネス発展の鍵になる,このようにも思われるわけです。すなわち,我が国経済発展のためには,新しいビジネスの創出が必要であって,新しいビジネス創出のためには著作権制度での対応が必要であろうと,このようなことでございます。
 次のページをお願いいたします。将来考えられるクラウドの新しいビジネスサービス例をこちらでちょっとお話をさせていただきたいと思います。例えばですけれども,リアルな環境でBGMとして音楽CDを聞きながら友人同士が会話をするというようなことがあるかと思います。そのCDを聞いて,友人が同じCDを買い求める,このような日常がリアルの世界では存在するかと思います。
 ネットの世界では,友人同士がSNSサービスを利用して文書のやりとりとか,チャットなどで会話をするというケースがあるわけですけれども,その際に,一方が持っている音楽ファイルをBGMとして共有して聞けるようにすること,聞いた一方がいいなと思えば,その音楽ファイルと同じものをダウンロード,購入する,このようなことも将来あり得るのかなと。現在では著作権法との関係で,ここに載せております図のようなモデルについては,やっぱり幾つかのハードルがある場合があるんですけれども,新しいビジネスを生んでいける制度を考えるとするのであれば,このようなモデルについても適法にビジネスができるような著作権制度を考えていく必要があろうという,このように考えております。
 最後に,13ページをお願いいたします。今までのところがクラウドだったんですけれども,ここは民法の債権法関係の改正の部分についてお話しさせていただきます。法務省が先般行っておりました民法(債権法関係)改正の中間試案について,御承知のように,第38賃貸借 15賃貸借に類似する契約(2)ライセンス契約の追加の検討というのがございまして,こちら,著作物のライセンスにも大きな関係がございます。
 こちらについては法務省のパブリックコメントにも意見の提出はさせていただいていますけれども,著作権法の観点から,この場でもMCFの意見を申し上げさせていただきたいと,このように思っております。民法の法改正のライセンス契約の追加試案については,基本的に賛成でございます。ただし,法改正を実効性あるものとするためには,ライセンスに関する制度の不備が存在しますので,法改正と並行して関係省庁等において制度拡充を図ることが必要と考えております。
 具体的には,著作権法についても,ほかの知的財産法,例えば特許法などのように,ライセンスの発生のみをもって第三者への対抗力を認めることが必要であろうと。また,著作権等管理事業者との問題を解決するための著作権等管理事業法の見直し,又は文化庁による管理事業者への指導など,著作権制度での対応が必要であろうと,このような意見を持っております。
 手短ではございますけれども,以上,モバイル・コンテンツ・フォーラムからの意見とさせていただきます。ありがとうございました。

【土肥主査】

 どうもありがとうございました。
 それでは,残る時間で質疑応答と意見交換を行いたいと思っております。まず御質問ございましたら,どうぞお出しください。
 後藤委員,どうぞ。

【後藤委員】

 後藤でございます。それでは,JEITAさんにちょっとお尋ねでございます。資料1-1,それの7ページでございます。いわゆるメディア変換の件でございますけれども,撮りためたビデオテープをDVD,BDに変換するということでございますけれども,いわゆるVHSの出力端子とDVD,BDのアナログ入力端子をケーブルでつなげば,これは簡単にできるんじゃないかなと思っております。その辺,いかがでしょうかということです。
 それに関連しまして,BD,DVDの録画機には,アナログ入力端子,アナログの出力端子が付いていると思っております。広く流通している機器には多いと思います。それの機器の流通といいますか,私はほとんど付いているのかなと思っていますけれども,その割合,その辺がお分かりであれば御教示をいただきたいということで,そもそも基本的なことの御質問でございます。以上です。

【土肥主査】

 では,榊原様でよろしいですね。

【後藤委員】

 はい。

【土肥主査】

 では,お願いいたします。

【榊原氏】

 御質問ありがとうございます。実際に今,簡単ではないかとか,機能が付いていてつなげるだけではないかというふうに,そのように感じられる方もいらっしゃると思うんですけれども,皆様の,例えば委員の方の御両親とかが御自身でできるかというと,実際にできない方も多くいらっしゃって,企業に対してやってほしいというニーズが現実にございますということです。こういった機器を販売している事業者としましては,お客様からニーズとして言われると,やっぱりやってあげたいという気持ちもございますので,お願いをしたということでございます。

【土肥主査】

 よろしいですか。
 ほかにございますか。
 どうぞ,松田委員,お願いいたします。

【松田委員】

 では,同じく電子情報技術産業協会さんの資料でお聞きしておきたいんですが,15,eラーニングのところですが,これ,私,もしかしたら聞き間違えたかもしれませんが,恐らくこれは大学のキャンパスで授業をしているところのそのコンテンツ,教育に利用されているコンテンツをストレージして,ほかの校舎にも配信できるようにしよう,それから,校舎じゃなくて,自宅で勉強している人たちにもコンテンツを提供しようというサービスのようであります。これは大学がやるのかもしれませんが,これは著者の先生があらかじめストレージして自分の著作物を使うのであれば何ら問題が起きないのですが,これはそれ以外のコンテンツを使おうということでございましょうか。

【土肥主査】

 榊原様,お願いいたします。

【榊原氏】

 御自身の著作物以外のものを参考として資料として配るとか,今おっしゃったとおり,校舎間ではなくて,校舎の外とか,学生さんに直接送信をするというような行為も含めて,一定限度はできると思うんですけれども,できない部分についても柔軟に行いたいということ,それから,大学自身がやるということであれば,事業者にそれを委託すればいいのかというようなところもよく分かりませんので,確認なり法整備なりいただきたいということでございます。

【松田委員】

 そうすると,この絵にあります,先生が教えていて,先生の作ったコンテンツではなくて,いわゆる一般の図書でも,この先生が教科書として使っていれば,これをストレージして,ほかの校舎ないしは学生にそのまま送受信できるような,他人のコンテンツについても配信できるようにしようという,こういう考えでしょうか。

【榊原氏】

 現在の法律ですと,恐らく紙で配ることは認められているのではないかなと思うんですけれども,それと同じことができた方がいいのではないかという意見でございます。

【松田委員】

 それは紙で配る範囲内というのは,授業で使うときに必要な範囲内ですけれども,教科書は配れないでしょう。教科書までやろうというわけじゃないですね。

【榊原氏】

 現在紙で行われていることと同じことが電子でも行えた方が良いという意見でございます。

【松田委員】

 もう1つお聞きしたいんですが,22ページを見ていただきたいんです。これはあらかじめ放送番組を録画してデータベース化しておくという,こういうサーバーがあるという前提に立っているようであります。そして,あとは,その放送番組のうちから検索した部分について,検索する企業があったら,それに提供していこうというサービスのようでありますね。
 このストレージサービスが,あらかじめ放送局が持っている権利や放送局以外が持っている著作権を処理してストレージしているのであれば,恐らくこれ,かなり成り立つビジネスだろうと思っておりますけれども,そういう許諾がなくてもストレージできるようにしようという,そういう御提案でございますか。

【榊原氏】

 許諾が取れている分については契約で処理をされているところですので特に申し上げるところではありませんけれども,許諾がない部分とか取れない部分もあるのではないかということで,そうしますと,実際にできないのではないかということでございます。

【松田委員】

 ということは,許諾が取れない部分についてはこのサービスは想定していないということでいいですか。どうしてかというと,これ,テレビ局だって,こんなことやろうと思ったらできないんですよね。テレビ局が放送番組の著作権を持っているわけじゃないですから。テレビ局ができないのに,一般企業が許諾なしで放送番組を全部ストレージできたらば,それがデータベース化できて,ほかのサービス,検索の対象にできるようなサービスに提供できるというのは,やっぱり行き過ぎではないかと思いまして質問した次第です。

【土肥主査】

 よろしいですか,それで。
 ほかに。
 では,河村委員,お願いいたします。

【河村委員】

 様々な御発表を聞いて,ユーザー,消費者と致しましては,適法に,あるいは自分でお金を払って入手したものに関しては,今ある技術を駆使して,魅力的な使い方,便利な使い方ができるように,それをルールが縛っているのであるならば,変えていく方が,様々な立場な方にとってもいいのではないかと思います。
 先ほど御質問がありました,後藤委員だったでしょうか,ビデオテープをほかのメディアに変換することは簡単ではないかというようなお話だったんですけれども,簡単か簡単じゃないかということだけではなくて,ごく普通にうちで起こっていることですけれども,ビデオテープから例えばDVDへの移行というのは,家の中でも徐々に起こっていったわけですよね。それで,最終的に家の中でビデオを見なくなる瞬間というのは,ビデオデッキが壊れたときなんです。
 もうDVDもあるし,いろいろ仕組みが変わっていっているからということで,大事にしていたビデオテープは放置されていって,捨ててしまわなくてはいけないようなものになってしまうところを,事業者の方がメディア変換してくれるサービスがあれば,大事にとっておくことができます。例えばうちで大事にしているビデオの中には,自宅を新築したときに,あるテレビ番組で,できたばかりの家の中を映してくれて,それを私的に録画したものなどもあります。
 そういうものは今もうほとんどあきらめて,全部ごみとして出さなければいけないかなとさびいしい思いでいます。そのように,個人が生きてきた過程で大事にしてきたもの,私的な範囲で,あるいは有料で適法に入手したものに関しては,捨てずに大事にできること,あるいはクラウドなんかを使えば,災害があっても大事なものが残るとか,そういうことによってコンテンツをもっと入手しようという動機につながっていくと思います。そのような方向でルールが変わっていくということを望みます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 ほかに御質問,御意見ございますか。
 浅石委員が最初に手を挙げておられましたので。その次に山本委員,お願いします。

【浅石委員】

 ニフティさんと新経済連盟さんにお聞きしたいんですが,ニフティさんの11ページと13ページの,非常に衝撃的な書き方なんですが,MYUTAやTVブレイクの判決を否定するんだというのは,社の方針として,判決は出てもそれは否定して事業を行うという,そういうような考え方を持ってらっしゃるのかどうか,ただ書き方の問題なのかどうか,その辺を。
 それから,新経済連盟さんの6ページのスキャン&マッチ型音楽クラウドサービスが,最後に,現時点で同じサービスは日本で提供されていないと。これ,事実なんですけれども,なぜできていないかというのはお調べになったんでしょうか。少なくともアメリカで行われている事業者さんは著作権者側に権利の許諾を取りに来て,当然,許諾を出しましょうということになっていて,それ以外の何かで提供されていないんですけれども,その辺の御研究というか御確認はされているのかどうか,その2点だけお聞きしたいと思います。

【土肥主査】

 それでは,順番に,丸橋様からお願いします。

【丸橋氏】

 MYUTA事件判決の否定,否定してほしいという趣旨で申し上げたわけですけれども,立法による解決なのか,もっとましな判決が上位裁判所で出るかというのを期待しているという趣旨です。やはりユーザー側から見たら,スマホ時代,事業者から見たらクラウドサービスの時代になって,タイムシフティング,プレイスシフティング的なものは技術的にはどんどんできるようになっていますので,少なくとも,利用者が保有するコンテンツが行って戻ってくる,コピーが増えるわけでもないのに自分が使いやすい形態にする行為ができないという法律体系であるとすれば,それは問題なのではないかという趣旨です。
 TVブレイクの方ですけれども,これは事例判決でしょうがないという見方は,当然たくさんの委員の方が思っていらっしゃるという部分もあるとは思いますが,そうではなくて,やはり不作為構成の1対多型のデータ共有なり配信型のサービスについてもう少し整理してほしいということです。TVブレイク事件については,間接侵害議論の3類型でいうと,第1類型の教唆型の事実認定をしたかったけれども,足りないので第2類型の不作為類型的に,作為義務違反があるから,発信主体であるのだ,のような論理であって,とても整理されていないと私は読んでいます。以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございます。
 では,関様,お願いします。

【関氏】

 御質問ありがとうございます。6ページ目の下の説明文章の中で,1から2にかけての部分につきましては,配信ライセンスについて契約で許諾を得ているという部分になります。3の部分については,これは事業者はライセンスを持っておらず,ユーザー側で一定の許諾といいますか,権利を持っている状態のものなので,事業者側ではその辺りについては関知していないというものです。
 それで,1から2についてだけのサービスであれば,日本でも恐らく可能だと思うんですが,3が入った部分につきましては,次のページにありますような法的リスクがあるということで,日本ではできないと考えております。

【浅石委員】

 すみません,よろしいでしょうか。

【土肥主査】

 どうぞ。

【浅石委員】

 3も含めて既にアメリカで行ってございますよね。その事業を日本でもやろうという考えで事業者さんは日本に来て,それでお話を進めていたということについては御認識いただいているんでしょうか。

【関氏】

 いろいろな方といろいろ話をしまして,こういったことを考えている方もいるというふうには聞いております。

【浅石委員】

 実際に許諾に向かってお話合いがされていたということについても御理解いただいておるんでしょうか。

【関氏】

 ごめんなさい。1から2の部分について?

【浅石委員】

 3までの部分。

【関氏】

 3ですか。

【浅石委員】

 はい。

【関氏】

 3については,すみません,認識しておりませんでした。要は,3については事業者から見て,事業者と権利者との間については許諾のないものという前提で捉えておりましたので,その場合は法的リスクがある。もちろん許諾が取れれば,それは日本でも可能だと思いますが,そもそもユーザーが持っている曲には限りがないため,全ての曲について許諾を取るというのは現実的には難しいのではないかと思います。

【土肥主査】

 それでは,山本委員,お願いします。

【山本委員】

 JEITAさんにお聞きしたいんですが,いろいろな事例を出していただいて,これができるようにというような問題提起をなさった。じゃあ,著作権法上の問題としてどういう対応をすればいいのかな,と考えながらお聞きしていたんですが,必ずしもよく分からないところがあるので,確認をさせていただきたいと思います。
 例えばメディア変換の場合であると,私的複製の行為者としての個人から業者が複製業務を受託していいのか,それでも私的複製の範囲内に入るのかというような問題かなと思います。その理解でいいのかどうか確認させてください。
 それから,事例3の11ページの個人向け録画視聴サービスですが,これは行為主体が誰なのかを決める基準として,例えばアメリカであれば,最後に誰がそのコピーするのかを決めたのかで行為主体を判断しています。日本ではまねきTVとかロクラク2のところでは,最後に意思決定さえすれば,つまり,ボタン1個さえ押せばいいという状態にした者が行為主体だというような判例理論ができていますけれども,その判例理論が問題で,これを変えないといけないという御理解なのか。あるいは,どこに当たるのか分かりませんけれども,MYUTA事件では,ストレージサービスの場合に,ストレージサービスを利用したユーザーが複製の主体ではなく,業者の方が行為主体だと理解する行為主体概念をとりましたが,それが問題だという御理解でしょうか。その辺のところが,問題にされているところが確認させていただきたいと思いました。
 ちなみに,事例7の論文作成・検証支援サービスとか,事例9,先ほど話に出てきましたけれども,法人向けテレビ番組検索サービス,この辺のところは,現行法の47条の7でかなりカバーできるところがあるんじゃないかと思うんですが,更にこれを変更してこういうふうに変える必要があるんだという課題をお持ちでしたら,その辺をお聞かせいただきたいと思います。

【土肥主査】

 それでは,これも榊原様,お願いいたします。

【榊原氏】

 御質問ありがとうございます。事例をたくさんお出ししたんですけれども,それぞれどういった著作権侵害に該当するかということはあえて申し上げておりません。それが主体論の話であるのかとか,例えば最高裁の,ボタンを1個押せばどうのこうのという話なのかとか,結論から申し上げますと,事業をやる方が,こういった判決とかいろいろな裁判例があってできないのではないかということで現在,委縮をしていますので,それが例えば主体として個人を手伝うからいいんだということであれば,そこをはっきりしていただきたいと思いますし,実際いろいろな学者の方がいろいろな意見をおっしゃっている中で,どこをどう解決してくださいということを私どもの方から申し上げるべきではないのではないかと思っております。
 それから,事例7と9につきましては,カバーできる部分があるんだろうなとは思っておりますけれども,実際に条文を読んだ限り,できない部分もあるのではないかなとも考えております。以前,JEITAが間接侵害でヒアリングを受けたときにも,条文の試案のようなものはもちろんお出ししたんですけれども,そのときにも,解決策としては限定をされないということで,ビジネス自体ができるようになれば有り難いということを申し上げておりますので,どこが課題であるかということはできれば学者の先生方で御議論いただきたいと思います。以上です。

【土肥主査】

 よろしゅうございますか。

【山本委員】

 はい。

【土肥主査】

 ほかにございますか。
 では,奥邨委員,お願いします。

【奥邨委員】

 電子情報技術産業協会さんに教えていただきたいと思います。まず,いろいろな事例を出していただいて,イメージがつかみやすく,これからの議論のベースになると思います。ありがとうございました。
 質問ですが,どなたか聞かれるのかなと思ったんですけれども,なかったので,私の方から質問します。アメリカの事例を幾つか挙げておられるところについてです。最近,アメリカの判決の最新状況を追いかけられていないので,御教示願います。
 まずスライド31のAereo事件です。これについては,確定ということでよろしいんでしょうか。ちょっと,あやふやな記憶なんですが,Aereoバスターだったか,Aereoキラーだったかという,名前の似たようなサービスについて,第2巡回区とは別の巡回区では異なる判断が出たというニュースを読んだような気がしたものですから,Aereo的なサービス,まだいろいろと議論のあるところなのかなと思ったのですが・・・。それとも,私,その記事を大分前に読みましたので,それから更に状況が進んで,今では,このAereo事件の考えがかなり有力になっているということなのでしょうか。その辺教えていただきたいなというのが1点です。
 同じように,スライド32のMP3Tunes事件の方につきましても,2点教えてください。まず1つは,MP3Tunes事件について,スライドで挙げておられる判決については,DMCAの問題としてある程度解決された,日本風にいえば,プロ責法の問題として解決されたのかなと理解しております。DMCAとプロ責法は全く同じではないので極論するといけないのかもしれませんが,今日の御発言は,著作権法に限らず,プロ責法の見直しみたいなものも含めて少し何か手当が必要ですよという御趣旨でしょうか。先ほどお話があったように,個別の手当の方法等は余り問わないということでしたので,確認させていただきました。
 あともう1つ,MP3Tunes事件については,5月に判決の一部見直しがあったという理解をしております。ただ,アメリカのことですから,その後またいろいろ動きますので,そういう動きがあって,スライドで御指摘のようなことになっているのかどうか,という点です。最近の動きを余り追いかけられていませんもので,Aereo事件とMP3Tunes事件について,この辺の状況を教えていただければ有り難いかなと思いましてお尋ねした次第でございます。

【土肥主査】

 それでは,もしお持ちであればお願いいたします。

【榊原氏】

 御質問ありがとうございます。Aereo事件については,現在も継続中であると理解しておりまして,確定はしていないんではないかと思います。最高裁に行く行かないというようなことが報道されていたかと思います。この事件はCablevisionと併せて御説明させていただいたんですけれども,Aereo事件の中では,Cablevisionと同じであるというようなことがさんざん判決文に出てきますので,そういったところで,Cablevisionの判決が出たときに多くの事業者がそれをゴーサインと認めてこういったサービスを始めたという経緯がアメリカではありましたので,日本もそういった検討を頂けないかという趣旨です。
 それから,MP3Tunesは,判決の見直しがあったということは認識しているんですけれども,今日御説明した部分については変わっていないと理解をしております。あとは,実際アメリカの事例ではDMCAでノーティス・アンド・テイクダウンで解決をされているようですけれども,心配をしていましたのは,事例10の仮想化のところです。日本でも選撮見録事件のようなマンションなんかの共有の事例があったと思うんですけれども,私的複製であっても,全く複数のユーザーが同じファイルをコピーしたときに,それぞれの領域に別途コピーをしなければいけないというような考え方があるように聞いております。MP3Tunesではそれを1つに統合するというようなことを特に著作権侵害というふうにはなっていませんので,こういった点を認めていただきたいという趣旨でございます。

【土肥主査】

 よろしいですか。

【奥邨委員】

 ありがとうございました。今の情報も踏まえまして,私の方でもこの関係更に勉強しておきます。ありがとうございました。

【土肥主査】

 それでは,ありますか。お願いします。

【龍村委員】

 ニフティさんにお尋ねさせていただきます。レジュメの13ページですが,ここでいわゆる間接侵害法制について言及されておられまして,「間接侵害等に関する考え方の整理」で示された3つの類型の内の第2類型を取り上げられて,そのような類型についてプロバイダ責任制限法による損害賠償制限と類似の立法手法を導入してみたらどうかという御提案なのかと理解いたしました。
 確かに,第2類型的なものに対する立法的なアプローチとしては1つの考え方とは思うのですが,なぜクラウドサービス事業者さんだけがこういった損害賠償責任の軽減というメリットを享受できるのか,そのような利益とトレードオフされているところのカウンターパートは何なのかという点について,クラウド事業者さんとしてどういうイメージをお持ちなのか,その辺りをお伺いしたいのが1点でございます。

【龍村委員】

 2点目は,JEITAさん,新経済連盟さん,ニフティさん,皆様に共通の質問ですが,著作権法30条1項1号の公衆用設置自動複製機器該当性の問題をおっしゃっておられるわけですけれども,先ほど来,特にJEITAさんの様々なビジネスモデルを拝見していますと,かなり法人向けサービスをこれからの有力なビジネスモデルと想定されておられるようにお見受けしますが,このようなビジネスモデルを今後考えていくに当たって,その中心テーマは個人,家庭内利用を想定した私的利用の枠組みの変更の問題とお考えなのか,あるいは私的利用の問題を超えた抜本的なパラダイムの変更が不可欠とお考えなのか,これは皆様それぞれ御意見をお伺いできたらと思います。

【土肥主査】

 それでは,丸橋さん,お願いいたします。

【丸橋氏】

 御質問の趣旨を若干分かりかねる部分があったんですけれども,損害賠償責任についてのプロバイダ責任制限法3条ですね,これはEUの電子商取引指令を参考にして,民事責任,分野横断的なものとして線を引いたものというふうに理解しておりますので,クラウドサービス事業者に限らず,中間的なサービス事業者の責任としては妥当な線ではないかと私は思っています。その線がなぜか,私の評価としては,TVブレイク事件はまさに不作為による不法行為であって,作為義務違反を問われたはずだと思うんですけれども,無理無理,損害賠償責任の方も曲げたというふうに読めるというところに危機感を持っているということですけれども,質問の答えになっていましょうか。

【龍村委員】

 御質問は個別事案についてでなく,個別事案を離れて,特定の事業者につき責任制限,民事上の責任を減免するというメリットを立法上与える場合に,その事業者だけがそういった利益を享受する根拠といいましょうか,もちろん社会的な必要性とか様々なものがあるとは思いますが,特にクラウド事業についてそのような必要性といいましょうか,その論拠が必要になってくると思います。その辺りのお考えという抽象的な御質問なんです。

【丸橋氏】

 プロバイダ責任制限法3条1項は,不作為責任が生じない範囲について確認した法律なんですよね。これを超えたら損害賠償責任は負う可能性からは免れない線というのを立法化したものなのです。だから,その先に,ここからは少なくとも作為義務違反として不法行為責任を負うだろうという線を考えその線で差止請求について考えてもどうして駄目なのかと,駄目な理由が見付からないというのが私の理解です。
 今の点,よろしいですかね。

【龍村委員】

 余り議論がかみ合っていないようですが。

【土肥主査】

 2つ目の龍村委員の御質問なんですけれども,公衆用設置自動複製機器については全員にお尋ねになっておいでですね?

【龍村委員】

 そうですね。

【土肥主査】

 この点は5団体の方々のペーパーにかなり共通して出てくる部分ですので,それでは,全ての団体の方にお尋ねさせていただきますか。じゃ,順番に,榊原様からどうぞ。

【榊原氏】

 御質問ありがとうございます。先ほど全ての事例がクラウドを使った事例で,公衆性ということが関連するという点も,30条だけで解決できないという御指摘はそのとおりです。30条について,主体論で解決するとか,あとは手伝うということ自体を別途許容いただくというか,解決方法は幾つかあると思うんですけれども,法人が検索をするために情報を収集するということで複製を自らやって,検索可能にするために分類などもしますので,改変行為も恐らく行います。結果を通知するというところで当然送信行為も行いますということですので,そもそも個人から頼まれたとしても,複製以上の行為,送信行為なども入るので,個人からの依頼でも30条では多分対応できないですし,法人からの依頼もありますので,それ以外の対応,制度が必要になると考えております。

【関氏】

 少なくとも本日の私の方からの説明につきましては,公衆用設置自動複製機器に関わるものについては,私的利用に関するものというふうに御理解いただければと思います。

【丸橋氏】

 ニフティとしては,主にエンドユーザーによる個人的利用についてしか検討しておりません。法人でのタイムシフティング,プレイスシフティング的なものについては,ニフティ自身としてもあんまりビジネスとして考えたことはありませんし,IaaS,PaaS,SaaS提供事業者としては,法人ユーザーが考えてくれればいいかなというのが正直なところです。以上です。

【今子委員】

 私の方は,利用者向けの個人ユーザー向けのサービスについて述べさせていただいております。ただ,今のサーバーが公衆用設置自動複製機器にも当たるということですとやはり困ってしまいますが,そういった解釈ではないのだということが言えればそれで良いですし,もし違うのであれば,やはり手直しが必要かと思っております。

【土肥主査】

 ありがとうございます。
 お願いします。

【岸原氏】

 そもそもこの法律ができたときの立法目的とか,その環境からすると大分変わっているんだと思います。当時は個人が大量複製するという機器がない中で,もともと許諾したものを別の利用するのをある程度防止しようという目的からすると,もう環境が完全に変わってしまっていると。そういう点では,私的複製の範囲の解釈で済む話ではないかなと思っています。基本的にはそちらでカバーすべき話で,それがそもそもクラウド利用を想定した規定ではないと理解しておりますから,そことは切り離して考えるべきではないかなと思っています。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 順番で,上野委員から。

【上野委員】

 ありがとうございます。本日はいろいろと具体的なお話をいただきましたので,そうしたサービスの中には,結論として許容されるべきかどうか,必ずしもコンセンサスが得られないものもあるかもしれません。
 ちなみに,先ほどの番組視聴サービスに関しましてJEITAさんからはアメリカの事例を御紹介いただきましたけれども,先ほど奥邨先生からも御指摘がありましたように,アメリカでも最近,西海岸では同様のサービスを違法とする判決も出ているようでありまして,訴訟の行方は最高裁待ちではないかと私は感じております。また,ヨーロッパでも最近風向きが変わっているようでありまして,ドイツでも今年の4月11日にSave.TVに関するBGH判決が出ましたし,イギリスのTV Catchupに関しましても,今年の3月7日に,これを違法とするような欧州司法裁判所(CJEU)判決が出ております。その意味では,こうしたサービスが結論として許容されるべきというコンセンサスが我が国でも得られるかどうかについては,何ともいえないところではないかと思います。
 ただ,先ほどから今日の議論を伺っておりまして,特に30条に関していえば,2点についてはそれなりにコンセンサスが得られるのではないかと感じております。
 1つは,クラウドサーバーが30条1項1号の「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」に当たってしまいかねないという懸念,それからもう1つは,30条1項柱書きに「その使用する者が」という文言がありますために,複製代行サービスや変換サービスが常に30条1項の適用を受けず,一律に違法になってしまいかねないという危惧(きぐ),これらの点は認識として共有されているように思います。
 もちろん学説によりましては,いずれの点につきましても,一定の場合には現行法でも適法と解釈できるという見解もないわけではないのですけれども,そういう見解に立ったと致しましても,もしそうしたサービスが一定の場合には結論として許容されるべきだというコンセンサスが得られるのであれば,これを立法によって明確にするということに異論はないのではないかと思います。
 また,JEITAさんの資料でも紹介されておりましたように,確かに諸外国では,こういったサービスが一定の範囲で許容されている例が見られるところであります。
 例えばドイツ法では,一定の条件の下で,複製作業を他人に行わせる,すなわち委託コピーを適法とする明文の規定があります。これについては,私も以前少し書いたことがあるのですけれども,例えば自己の学術目的であれば他人に複製を委託することが許容されるとか,あるいは私的使用目的につきましても,紙のコピーであれば他人に複製を委託できるけれども,電子化を委託するという場合は,有償では駄目で,無償でなければいけないとか,非常に詳細なルールが定められておりまして,なかなか興味深いところであります。
 そこで,こうした外国法も参考にしながら,今後,我が国におきましても,コンセンサスが得られるのであれば,一定の条件の下では,そうしたサービスを許容するために権利制限の対象に含めることを検討してみてもよいのではないかと私も思うところであります。
 ただ,だからといって,権利制限を拡大することによって一定のサービスを完全に自由にするだけで,権利者への経済的な還元もなくていいというふうに言い切ってしまっていいかというところはちょっと気になるところであります。
 と申しますのも,ドイツ法におきましては,確かにコピー代行が許容されているわけなのですけれども,しかし,ドイツではそもそも私的複製が完全に自由というわけではなく,広く報酬請求権の対象となっております。つまり,コピーとかスキャナーといった複製機器それ自体に補償金が課されておりますし,メーカーが支払い義務を負っているということになっております。さらに,メーカーだけではなくて,コピーショップとか代行業者などコピー機器の操作者も報酬支払義務を負っております。ドイツでは,こうしたことによって保護と利用のバランスを取っているのだろうと思っております。
 もちろんヨーロッパの補償金制度それ自体につきましては,いろいろ御議論や御意見があるところかと思いますけれども,もし今後,日本法の30条1項を見直すとか,1項柱書きを見直すといった検討をすることになるのであれば,その際には,権利制限によって完全に自由としてしまうのか,それとも,一定の場合には権利制限と併せて報酬請求権を付与してバランスを取るのか,そうしたことが検討されてしかるべきではないかと私は思います。
 もちろんそれが現行法30条2項の補償金制度の見直しにつながるとは限りませんで,何か別の形になる可能性もあろうかと思いますので,形式については今後検討されるべきだと思いますし,また,もし本当に報酬請求権化するとしたら,分配の問題ですとかいろいろ課題が生じるのは確かなのですけれども,こうした問題については,そうした複眼的な視点で検討を進めた方が,これは私の思い違いかもしれませんけれども,保護と利用のバランスが取れて,かつ,関係の方々のコンセンサスが得やすくなるのではないかと考える次第であります。以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございます。ちょうど椎名委員がその点についてお話になるんじゃないかと思いますけれども,お願いいたします。

【椎名委員】

 今日お話を伺っていて,総じておっしゃっていたことというのは,私的複製の範囲に入るんだ,これも私的複製の範囲だ,場合によってはこれも私的複製の範囲だということで,私的複製の範囲を広げていきたいというようなお話であるとの印象を持ってお話を伺いました。
 今,上野先生もおっしゃったとおり,かつて,例えば利便性に供するためにある程度権利者の権利を制限するんだけれど,何らかの補償措置が必要だということで30条2項があり,例えばCDで買った音楽を持ち出したり,あるいは保存用にコピーを取っておくとかいうような趣旨でMDにコピーしたり,CD-Rにコピーをしたりということについては,デジタル方式のコピーではオリジナルと同じものができるから,補償金という制度を設けましょうということになっていたわけですね。
 それに代替するものとしてクラウドがあり,クラウドからいろいろな端末にメディアシフトなんかを介して非常に便利になるということであるならば,まさに補償の必要性は拡大していくんじゃないかなと思ってお話を聞いていたんですが,補償金制度に一貫して否定的な立場をとられていたJEITAさんが一生懸命,私的利用の範囲だとおっしゃっているのは非常に面白いなと思って,感慨深く聞いておりました。
 私的な範囲と私的な範囲でないものというのは,かつての制度においても明確に切り分けはできなかったわけですけれども,クラウドということになりますと,それが伝播(でんぱ)していく領域の広さということでは比べものにならないぐらい影響力が大きいわけですね。
 Yahoo!ボックスについてちょっと伺いたいんですが,サービス側はどんなコンテンツを保管しているか関知しないと。ところが,関知していないながら,個人の写真とかそういうものについては共有,公開を許すんだと。これは,関知していないのに,個人のものだけを抽出することができるんでしょうか。あるいは,関知していないのに,サービス側の判断でコンテンツを削除する場合があると。これ,どういうことなんでしょうか。

【今子委員】

 どういうコンテンツを保管しているか関知しておらず,ユーザーがどういうコンテンツを共有し,また公開するかは自由というサービスですので,公開されたコンテンツが仮に自分で撮った写真とかではなくて,第三者が権利を有しているコンテンツであって,申告をいただいた場合には,サービス側の判断で,削除などの対応をすることになります。

【椎名委員】

 そうすると,そのことを見付けるまで,あるいは第三者から文句が来るというまでは違法状態が放置されるということですよね。

【今子委員】

 これはプロバイダ責任制限法に従った判断に基づいてやっているということです。

【椎名委員】

 ここからが意見ですけれども,それはYahoo!ボックスさんに限らず,例えば中身を関知しないファイルストレージサービスというのは今,山ほどあるわけですね。firestorageとか,まあ,個別の名前を出してはあれかもしれないんですが,音楽や映像のファイルをアップしておいて,そのURLでお友達に送る,あるいはフェイスブックに書くということであれば,幾らでもこれを共有できてしまう。
 例えばMDやCD-Rの時代に,コピーしたお皿を「これ,あげるよ」といって人にあげるのと比べものにならないぐらい伝播(でんぱ)力があるわけですよね。今日はクラウドの話ですから,補償金の話はすまいとは思っていたんですが,この部分はやっぱり今後の補償金制度を考えていくときに非常に重要なファクターになるんではないかと思いました。以上でございます。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 予定されている時間が来ておるんですけれども,最後に,それでは,畑委員,お願いします。

【畑委員】

 では,手短に質問と意見でございます。まず,JEITAさんの資料1-2の方で,外国の法制では一定範囲で権利制限,無許諾でできるとする制度があるということが示されていますが,無許諾とする条件について何か規定があるのかどうかということを聞こうと思っていましたが,上野先生に御説明いただきましたので,そこは解決いたしました。
 1つ,意見ですけれども,先ほど椎名さんのおっしゃった,どんどん私的使用の領域が広がっていく,ひいては,共有という機能によりこれまでの私的使用にとどまらない範囲にも広がっていくということですけれども,そこと補償金との関係を椎名さんは示唆されました。私は,まさにその共有の機能が,今これだけネット上の権利侵害,違法が蔓延(まんえん)している1つの大きな要素になっていると思っております。そこについては,いわゆるプロ責法の要件,つまり事後的な削除要請への対応ということだけでいいかどうか,今後十分議論が必要ではないかと考えております。以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございます。
 今子委員の御意見でしょうか。それとも……,じゃあ。

【今子委員】

 すみません,よろしいですか。こういう通常の汎用(はんよう)ストレージサービスにおける共有や公開機能とは,例えばお友達とか家族とか,そういう方に例えば自分の持っている写真とか何か作ったデータとかを共有するための機能ですが,そういう機能があるから駄目だということではなくて,実態で判断しないといけないと思うんですね。例えばYahoo!ボックスの場合,今まで著作権侵害の申告がどれだけあったか,件数を申し上げることはできないですが,極めて少ないですし,恐らく汎用(はんよう)ストレージサービスはそういったものが多いのではないかと思われます。ですので,クラウドだからといって一律に御判断されるのはちょっと違うのかなと思います。

【土肥主査】

 井村委員,挙手なさっておられたと思いますので,お願いいたします。

【井村委員】

 ありがとうございます。書籍出版協会の井村です。実は私,クラウドサービスというのはほとんど真剣に考えたことがなくて,今日初めて皆さんの意見を伺って,なるほどすばらしいサービスだなと思った次第です。
 ただ,その中で,我々,書籍や電子書籍も含まれてくるということでしたので,一言意見というか,受けた印象を申し上げたいのですが,我々出版社というのは,著作者の方がほんとに長年苦労されて書かれたものを本にして,読者の方に提供しているわけですけれども,だからこそ著作物というのは著作権法でしっかり守られていると。我々,本を作る際に,著作権法をほんとに意識して作っているつもりでおります。
 そういった中で皆さんの御意見を伺っておりますと,残念ながら,大変失礼な言い方かもしれませんけれども,著作物というものを扱っている意識が余りに低いので,今日,実はびっくりしてしまった次第です。皆さんおっしゃっていたのは,コンテンツが適法に入手されているかどうか分からないとか,コンテンツの中身を関知しない,インフラの提供者だから我々は分からない,クラウドは道具であって場と環境を提供しているだけだと皆さんおっしゃっていて,最後の発表者の方がおっしゃっていたのは,だけども,経済の発展には必要だとおっしゃっていると。
 ニーズとウォンツとかそういうものがあるというのは,私もほんとによく存じておりますし,先ほど申し上げたように,今日伺っていて,ほんとにすばらしいサービスだなとは思いつつも,それだけにもう少し著作物を扱っているという認識を持っていただきたいなと思いますし,ここに座っていらっしゃる専門家の先生方には,その辺のところを十分お考えいただいて,法改正が必要であればしていただければいいと思いますし,やはりちょっと今は時期が早いのではないかという御判断であれば,そうしていただければと思っております。以上です。

【土肥主査】

 ありがとうございました。
 今子委員の御発言について,畑委員,椎名委員は恐らくもっとおっしゃりたいことがあるんだろうと思うんですけれども,幸いにも皆さん三方とも委員ですので,またこの先,この問題については御発言いただく機会もあろうと思います。
 今日はお忙しい中,5つ,実際には4つの団体ということになりましょうか,おいでいただきまして,貴重な御意見をお聞かせいただきまして,ありがとうございました。そしてまた,我々の委員の対する質問に率直にお答えいただいて,本当に感謝を申し上げたいと思います。
 最後の辺りで上野委員もおっしゃっておられましたように,今日御発言いただいたところでコアになる部分については,委員において大体共有が図れたというふうに私も思っておりますので,また本小委員会において,皆様方の御意見を参考に議論を進めてまいりたいと思っております。本日はどうもありがとうございました。
 事務局から何か連絡事項がありましたら,お願いいたします。

【菊地著作権課課長補佐】

 本日はありがとうございました。次回の法制・基本問題小委員会につきましては,改めて日程を調整させていただきました上で,確定次第,また委員の皆様方に御連絡をさせていただければと思っております。以上でございます。

【土肥主査】

 それでは,本日はこれで第2回の法制・基本問題小委員会を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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