【土肥主査】
それでは,今期の本小委員会の審議予定について確認したいと思いますので,本小委員会における当面の検討課題について,事務局から説明をお願いいたします。
【秋山著作権課課長補佐】
それでは,御説明申し上げます。説明に当たりまして,資料の2,それから資料3,参考資料3,この3点を用いまして御説明をいたしますので,お手元に御準備をお願い申し上げます。
まず,今期の著作権分科会の審議事項及び審議の体制につきましては,本年7月に開催された著作権分科会におきまして,参考資料3としてお配りしました,知的財産推進計画2014等の内容などを踏まえまして,御審議いただいたところでございます。なお,参考資料3のうち,今回挙げさせていただいた課題に関するもの以外につきましては,説明は省略させていただきますので,後ほど必要に応じて御参照いただければと存じます。
まず,資料2を御覧いただけますでしょうか。今期の著作権分科会の審議体制としましては,資料2にございますとおり,本小委員会を含む3つの小委員会を設置することが決定されてございます。本小委員会の審議事項につきましては,2のところにございますように,著作権法制度の在り方及び著作権関連施策に係る基本的問題に関することとされております。なお,昨期の本小委員会におきましては,クラウドサービス等と著作権及びクリエーターへの適切な対価還元について御審議いただいたところでございますが,この課題につきましては,(2)にあるとおり,著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会を新たに設けまして,同小委員会において集中的に審議が行われることとされております。
本小委員会における当面の具体の検討課題につきましては,著作権分科会での審議も踏まえまして,資料3において案を御用意しております。資料3をお願いいたします。
当面,本小委員会において御審議いただくことが考えられる課題としましては,ここにありますように3点ございます。まず1つ目は,視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約(仮称)についての対応でございます。同条約は,昨年6月に採択されたものでありまして,各締約国に対し,視覚障害者等のための権利制限規定の整備等を求めるものでございます。同条約の締結に向けた御検討をお願いしたいと考えております。
次に2ポツでございますけれども,著作物等のアーカイブ化の促進でございます。知的財産推進計画2014におきまして,アーカイブの利活用を促進するため,著作権者不明の場合の裁定手続の簡素化など,裁定制度の在り方について早急に検討を進めるとともに,諸外国の動向等も参考としつつ,新たな制度の導入を含め検討を行い,必要な措置を講じるとの方針が示されているところでございます。こうしたことも踏まえまして,アーカイブ化の促進に係る課題について御検討をお願いしたいと考えております。
それから,3ポツ,教育の情報化の推進等についてでございます。これにつきましては,知財計画2014の周辺部分を御覧いただきながら説明させていただきたいと思いますので,参考資料3をお願いできますでしょうか。こちらの2ページの第1段落を御覧ください。教育の情報化に関する方針としまして,まず1つ目のポツでございますけれども,実証研究の成果などを踏まえつつ,教育ICTシステムの標準モデルの確立を進めるとともに,デジタル教科書・教材の位置付け及びこれらに関連する教科書検定制度等の在り方について,本年度中に課題の整備を行い,2016年度までに導入に向けた検討を行い,結論を得て必要な措置を講ずるということとされてございます。
また,この点にも関連しまして,次のポツのところでございますけれども,大規模公開オンライン講座等のインターネットを通じた教育や,上記――デジタル教科書・教材の位置付け及び教科書検定制度等の在り方の検討を指しますが,これらの検討と併せて,デジタル教科書・教材に係る著作権制度上の課題について検討し,必要な措置を講ずるとされているところでございます。こうしたことを踏まえ,本課題を本小委員会の検討課題の1つとして挙げさせていただいております。説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。それでは,ただいま事務局から説明をいただきました本小委員会における当面の検討課題について,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。末吉委員,どうぞ。
【末吉委員】
これは意見なのでありますが,3番目の教育の情報化の推進というのは,とても重要なことであるというふうに私も認識をしております。たまたま昨年度,デジタル教材を検討する場に私はおりまして,そこでいろいろ勉強させていただきましたところ,教育現場の現況でありますとか,あるいはデジタル化の実証実験の実際を見ますと,かなりばらつきがあるので,いろいろな教育現場のニーズというものの拾い上げ,すくい上げがとても重要なのではないかというふうに感じました。この問題を検討するに当たっては,その点につきまして十分論点整理をいただいた上で,この小委員会で検討すべきではないかというふうに考えましたので,一言申し上げました。
【土肥主査】
ありがとうございました。ただいまの末吉委員の御意見について,事務局から何かありましたらお願いします。
【秋山著作権課課長補佐】
御意見を踏まえまして,この問題は,実際にどういうニーズが教育現場にあるのか,それから,著作物の利用実態はどのようになっているのかといったことをよく調査をした上で,この審議会に諮らせていただきたいと存じます。
【土肥主査】
よろしくお願いします。ほかにございますか。よろしゅうございますか。
そういうことでございましたら,本日の小委において,当面の検討課題については,この3つを基本に検討していくということで了解いただいたと思っております。どうもありがとうございました。
続いて,3つ目の議事でございます。著作物等のアーカイブ化の促進に入りたいと思います。本日はまず,国内における著作物等のアーカイブ化をめぐる近時の議論及び国内における著作物等のアーカイブ化の取組について,事務局から説明をいただきます。続いて,著作物等のアーカイブ化に取り組まれている施設より,各施設における取組及びアーカイブ化に当たっての課題等を御発表いただき,その後,意見交換を行いたいと存じます。
それでは,国内における近時の議論及びアーカイブ化の取組について,事務局から説明をお願いいたします。
【田淵著作物流通推進室長】
それではまず,資料4を御覧になっていただければと思います。国内における著作物等のアーカイブ化をめぐる近時の議論についてでございますが,まず本年4月に,著作権法の一部を改正する法律案に対する参議院文教科学委員会における附帯決議において,ナショナルアーカイブに関する著作権制度上の課題についての取組を推進することが記載されております。
また,2ポツでございますが,本年の知的財産推進計画にも記載がございます。こちらについては,資料3で御説明したとおりでございます。
また,3ポツですが,文化審議会の文化政策部会におきましても,第4次文化芸術の振興に関する基本的な方針の策定の参考とするため,2020年及びそれ以降を見据えた文化政策の方向性等について審議を行っておりまして,その審議経過報告が作成されております。その中でも,文化関係資料のアーカイブの構築ということで,施策例といたしまして,2020年を見据え,貴重な各種文化資源を継承するアーカイブの在り方を総合的に検討する中で,工芸,建築,デザイン,メディア芸術など,日本の強みを生かす国際的な拠点作りを推進できないかといった記載がございます。
また,次のページですが4ポツで,文化庁におきまして,文化関係資料のアーカイブに関する有識者会議を設置いたしまして,総合的な推進方策を検討しているところでございます。この8月には,この会議の中間取りまとめが確定いたしました。参考資料4を御参照ください。
こちらで1ページ目の下の方に,今後の文化関係資料のアーカイブの取組の方向性とありますところに,美術館・博物館,大学・研究機関,民間施設等における文化関係資料の収集・保存及び資料のデジタル化等の取組を支援して,個別分野のアーカイブの構築を推進するとともに,様々な分野のアーカイブの横断的な利活用の強化等を推進していくことが必要とあります。
また,この中で3ページ目になりますけれども,様々な分野のアーカイブの横断的な利活用を推進するための方策といたしまして,基本的な考え方として,組織や分野を超えたアーカイブの利活用を推進するため,文化ナショナルアーカイブ(仮称)を整備することが求められるとなっておりまして,この文化ナショナルアーカイブは,様々な分野のアーカイブについて共通のプラットフォームを提供し,分野横断的に検索を可能とするシステムであり,その機能は参加機関から提供されたデジタル資料を長期・安定的に保存するとともに,参加機関の専門家等がこれらを編集・加工して付加価値の高いコンテンツを創造することによって,分野を超えて複合的になった知識・情報を利活用しやすい形で発信するものであるとなっております。
また,4ページ目の,上から3つ目でございますが,この文化ナショナルアーカイブの構築に当たっては,出版物等のデジタル資料に関するアーカイブを整備している国立国会図書館をはじめ,関係機関のアーカイブとの有機的・効率的な連携を図ることが必要であるとなっております。
最後に,5ページの一番後のところに,引き続き議論が必要な事項といたしまして,(2)中長期的な取組の中の2つ目に,アーカイブの構築における著作権の取扱等とございます。さらにこの関連で,文化庁におけるアーカイブ関連事業,予算事業について,参考資料5にまとめて御紹介させていただいております。
まず,文化関係資料のアーカイブの構築に関する調査研究というものを平成13年度からやっております。モデル分野といたしまして,脚本・台本,音楽,楽譜,それから写真フィルムにおける調査研究を実施してまいりましたが,来年度はこれにアーカイブ中核拠点形成モデル事業を新規に要求しているところでございます。
また,メディア芸術デジタルアーカイブ事業というものも,平成22年度から行っておりまして,こちらにつきましては,マンガ,アニメ,ゲーム,メディアアートの分野で,書誌情報等々を含めた総合データベースの構築というものを目指して事業を実施しているところでございまして,こちらにつきましても,来年度新たな事業の中で同様の取組を続けるための予算要求をしているところでございます。
さらに文化遺産オンライン構想の推進というものもございまして,こちらの方も平成20年に正式公開されているものでございまして,概要といたしましては,全国の博物館・美術館等の所蔵品,国指定文化財について,概要・画像・動画・所在地図等の情報を国内外に広く発信することを目的に整備されているポータルサイトでございますが,真ん中の現状と課題というところの2行目以降にございますとおり,博物館等の人員と画像デジタル化経費の不足から,所蔵品の撮影や画像著作権許諾等が進まない状況にあるという課題も認識されておりまして,こちらを受けまして,来年度につきましては,デジタル化,著作権処理,英訳等を業務委託するための予算を新たに要求しているところでございます。
次に,資料5を御覧いただければと思います。こちらの資料につきましては,本日御発表の館や,資料提出いただいた館以外の国内における著作物等のアーカイブ化の取組について,幾つか御紹介させていただくために作成した資料でございます。
まず,独立行政法人国立文化財機構につきましては,e国宝というものを実施しております。こちらにつきましては,東京国立博物館等々4つの博物館が所蔵する国宝・重要文化財を高精細画像としてデジタル化し,インターネット上で多言語による解説とともに公開しているものでございます。2ページ目の,画像の公開というところですが,こちらにつきましては著作権保護期間中の作品は含まれておらず,特段の権利処理は行っておりません。また,画像の提供ということで,各館が保有するデジタル画像の有償提供を行っているところでございます。
次に3ページですが,2つ目の取組の御紹介といたしまして,独立行政法人日本芸術文化振興会の取組がございます。こちらにつきましては,振興会の各施設(国立劇場,国立演芸場)等で行われた自主公演の映像及び写真並びに所蔵している歴史資料をデジタル化,又はコンテンツに収蔵し,公開しているところでございます。4ページ目のアーカイブの利活用に関する取組というところですが,文化デジタルライブラリーで公演記録のデータや歴史資料をインターネット上で公開しております。歴史資料については,著作権保護期間中のものは含まれておらず,特段の権利処理は行っておりませんが,自主公演の公演記録映像等につきましては,館内の閲覧を行っておりまして,また著作権処理が行われた資料については,資料の複製や貸出しにも対応しているところだということでございます。
次に,5ページの公益財団法人新国立劇場運営財団ですが,こちらは新国立劇場で行われた主催公演の全ての公演記録・映像・写真をデジタル化し,その一部を公開しております。6ページ目,アーカイブの利活用に関する取組といたしましては,公演記録映像等を無料で館内公開しているということがあります。また,映像の館内上映については,出演契約の中で許諾を得ているということでございます。ただ,権利者の意向を踏まえ,一部の作品については館内でも視聴しない取扱いをしているとのことでございます。
最後に,東京藝術大学,7ページ目でございますが,東京藝術大学では学生や教職員による公演や講義等の記録映像・音源・大学が有する所蔵資料,大学美術館の所蔵する美術作品をデジタル化し,公開しております。8ページ目でございますが,利活用に関する取組といたしましては,東京藝術大学総合芸術アーカイブセンターで,公演記録のデータ,所蔵資料,講義の記録映像等の一部をインターネットで公開しています。所蔵資料や美術作品は,その多くが著作権保護期間が満了しているか,あるいは藝大が著作権を有しており,個別の権利表記やクリエイティブ・コモンズ・ライセンス等の表記をしているとのことでございます。記録映像・音源の一部は,学内LAN限定で公開しているとのことでございます。また,平成24年度より,藝大音楽学部に所属する全ての教職員・学生の有する著作隣接権等について,演奏者本人がその権利を保有しつつも,藝大がデジタルアーカイブのための一定の利用を行うことができること等を定めた学内規則を施行しているとのことでございます。
最後に資料6ですが,著作権者不明等の場合の裁定制度の見直しにつきましても,アーカイブと関連するということで御紹介させていただきたいと思います。
御存じのとおり,裁定制度は,「相当な努力」を払って権利者を捜索しても,権利者が誰か分からない,どこにいるか分からない等の理由で許諾を得ることができない場合に,権利者の許諾を得る代わりに文化庁長官の裁定を受け,著作物等の通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより,適法にその著作物等を利用することができる制度でございます。
その「相当な努力」の内容につきましては,右側の吹き出しの中に書いてあります,見直し前の「相当な努力」,このア,イ,ウ,エ,オ,カの全てを行うということが政令・告示等で定められておりました。この課題といたしましては,「相当な努力」のうち,実効性が低くなっている項目がある,また,一度裁定を受けても,再度裁定を受けなくてはならない場合があるが,再び「相当な努力」を行っても新たな情報が得られることがほとんど期待できない,事務的・経済的負担が大きいことなどが指摘されておりました。こちらを受けまして,8月1日付けで告示を改正いたしまして,「相当な努力」の内容を見直しました。
内容といたしましては,この吹き出しの中に書いてありますア,イ,ウ,エ,オ,カのうち,ア(名簿・名鑑等の閲覧)かイ(ネット検索)のうち適切なものを選択して行うこととすること。また,エの同種の著作物等の販売等を行う者への照会は不要とすること。さらにCRICのウェブサイトでの広告期間を,30日から7日以上に短縮したということがございます。また,併せて運用の改善をいたしまして,例えば追加的な利用,書籍の増刷ですとか,販売後の電子書籍化,インターネット配信期間の延長のように,同一の著作物等について追加的な利用を予定する場合は,追加的利用分も含めて申請し,一括して裁定を受けることを可能とすることで,再度の申請が必要でなくなるというようなことを明示,明確化いたしました。CRICのウェブサイトへの広告掲載料につきましても,減額ということで御協力いただいたところでございます。これらを通じて,手続簡素化による事務的負担の軽減・期間の短縮,再裁定の手続が不要となること,裁定に係る費用が軽減することなどを期待しております。
以上,私からの説明とさせていただきます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは続いて,著作物等のアーカイブ化に取り組まれている施設からの御発表に移ります。本日は,国立国会図書館及び東京国立近代美術館フィルムセンターに御発表をいただきます。また,独立行政法人国立美術館については,本日は御予定が合わず,資料9の書面をいただいております。
御発表のお時間は,お一人15分程度でお願いできればと思っております。それでは,国立国会図書館,大場様,どうぞよろしくお願いいたします。
【大場様】
ただいま御紹介いただきました,国立国会図書館の大場と申します。今日はよろしくお願いいたします。それでは,着席して失礼いたします。
本日は,国立国会図書館における資料デジタル化事業の現状と課題ということで,15分ほどお時間をいただきまして御報告をさせていただきます。
国立国会図書館につきまして,ここでいろいろ御説明する必要はないかと思いますけれども,国会,すなわち立法府に属する図書館でありまして,国会における審議をサポートするという役割があると同時に,国立図書館として国内唯一の納本図書館,つまり法制度に基づきまして,出版物を必ず納入しなければならないという,そういった制度を持つ図書館でございます。我々がどのようなことをデジタル化に関して行っているかを,簡単に御紹介したいと思います。
それでは,資料の各スライドの番号で申しますと,3枚目のスライドを御覧ください。こちらは,資料デジタル化の経緯ということで簡単にまとめさせていただいております。最初に我々がデジタル化に着手いたしましたのは,平成12年度からということになります。最初は著作権処理をした上でデジタル化をするということで始めたのですけれども,著作権法を改正いただきまして,第31条第2項を新設していただいたところから,事前に著作権処理を行わずにデジタル化をするということが可能となりました。さらに後ほども簡単に御説明いたしますが,大規模な予算がついたということがありまして,大規模なデジタル化を平成21,22年度にかけて行っております。
さらに,こうして蓄積したデジタル化の資料を,平成24年の著作権法の改正で,第31条第3項の新設ということを受けまして,絶版等市場に流通していないものに関して,全国の図書館等で利用するというような枠組みを作っていただきました。これに応じまして,平成26年1月から,実際に図書館等への配信をスタートしております。
次に,4枚目のスライドを御覧ください。こちらがデジタル化の予算の推移になります。見ていただければ一目瞭然かと思いますけれども,平成21年補正,22年補正合わせまして約137億円つけていただきまして,それまでの合計の大体10倍の予算を短期間に投入していただいたということになります。これによりまして一気にデジタル化を進めたのですが,真ん中の表の形になっているところを見ていただければお分かりになりますとおり,23年度,24年度は一旦予算はゼロになりまして,その後25年度,26年度に若干予算を取り戻したというような状況になっております。
続きまして,5枚目のスライドを御覧ください。このような形でデジタル化を進めた結果,今,どのくらいの点数を提供しているかをまとめた表になります。全体といたしましては246.5万点,大体250万点弱のデジタル化が済んでおります。そのうち,著作権処理,あるいは保護期間満了を確認してインターネットで提供しておりますのが48万点。先ほど申し上げました図書館への送信ということで行っていますのが,131万点になるという状況です。
次に6枚目のスライドですけれども,こちらの方で,デジタル化資料の提供状況ということで,今お話しした内容を簡単に図の形で示しております。国会図書館に来ていただきましたら,全点約250万点全てが御覧になれるわけですけれども,そうでなくても大学図書館,公共図書館等では131万点プラスインターネットで公開している約50万点弱を御覧になることができます。御自宅でも,インターネットを公開している50万点弱が御覧になれるというところまできたというところでございます。
続きまして,7枚目のスライドですけれども,こちらはある意味,利活用に関してということになるかと思います。もともと,インターネットで公開している画像につきましては,一旦フォームで申し込んでいただければ,著作権法上問題がないという場合には使っていただいて構わないという形で手続をとっていたのですけれども,更に一歩進めまして,今年の5月から,著作権保護期間が満了した資料に関して,画面上で確認ができる場合には,転載手続等の一切の手続は不要ですという形にいたしました。当然ながら,著作権者の人格権等といったものは,使われる方の方で配慮して使っていただくということが前提になっております。
また,さらに国会図書館の中,あるいは図書館送信で提供している,まだ保護期間が満了していないものについても,著作権を処理していただければ,デジタルデータを提供するという試行提供を始めております。こちらは復刻・翻刻等目的として限定させていただいておりますけれども,そういった試みも始めているというところでございます。
続いて8枚目ですけれども,こういったデジタル化,あるいはデジタル化したものを提供していくためにどうするかというところにつきまして,特に利用提供に関する部分に関しては,権利者,出版社等の関係者の皆様と協議を続けて,その結果に基づいて進めているところでございます。特に図書館への送信に関しましては,どのような形でやるかというのをかなり突っ込んだ議論を行いまして,合意事項をまとめております。これに基づいて提供を行っているということになります。また,新たに録音資料のデジタル化とその提供ということを進めるため,この利用に関わる協議ということで,新たな協議会を立ち上げて,議論を進めさせていただいているところでございます。
ここまで概況についてお話ししましたけれども,次に簡単に,図書館向けのデジタル化資料送信サービスの概要について御説明をいたします。10枚目のスライドを御覧ください。こちらの方は,まず絶版等と我々呼んでいますけれども,一般に入手することが困難であるというのをどうやって確認しているかを簡単にまとめております。この手続は,先ほど申し上げた関係者との協議の中で決めてきたということになります。事前に国会図書館の方で入手可能かどうかを,データベースを突合することでチェックするとか,あるいはリストを公開して確認していただくというような形で手続を行っております。また,関係者との協議の中で,商業出版されている雑誌等の送信は留保する,というようなことも決めているところです。
11枚目のスライドは,実際に各図書館でどのように利用しているのかということを手続に関してまとめております。例えば,端末は職員の目の届くところに置いてほしいとか,閲覧申込みの都度,各図書館の職員がログインをしますといったような段取りを決めております。こちらも先ほど申し上げた関係者との協議会での合意事項に基づいて決めているところでございます。
12枚目のスライドは,現在のところの送信サービスの利用統計をまとめているものです。毎月毎月利用できる図書館が増えておりますので,今,どんどん利用が伸びている状況でございますけれども,現状こういった状況であるということでまとめさせていただきました。参考に御覧になっていただければと思います。
最後に,デジタルアーカイブに関してまとめておりますけれども,まず14枚目のスライドを御覧ください。先ほどの文化庁事務局の皆様からの御報告の中にもありました,ナショナルアーカイブというキーワードについて簡単に御説明をいたしたいと思います。こちらは,平成26年の著作権法改正のときの参議院の附帯決議の中で書かれている文言ですけれども,ナショナルアーカイブが,図書を始めとする我が国の貴重な文化関係資料を次世代に継承しうんぬんということで,国立国会図書館を始めとする関係機関と連携・協力しつつ,取組を推進することという附帯決議がなされております。こちらのナショナルアーカイブと申し上げますのは,国会の中で先生方の間で御議論が進められているものでございまして,特に書籍を中心にデジタル化,あるいはデジタル化したものの再活用を含めて,全体的な枠組みを作っていこうということで提唱がされているものです。
こちらに関しまして,簡単に我々の方で捉えているイメージ図を15ページ目にまとめております。ナショナルアーカイブというような大きな枠組みを考えたときに,例えば,収集する機能が必要である,そもそもコンテンツを作っていく機能が必要であるということですとか,あるいは,長期間保存する機能も必要であろう,権利情報の管理も必要であろうし,配信・流通の機能も必要であろう,ということで整理させていただきました。その中で,例えば長期的な保存に関しては,国会図書館で担えるのではないか,あるいは,商業的に流通していないものについて,図書館向けの送信というのは既に取り組んでおりますので,そういったところでサポートできるのではないか,というようなところをまとめております。国立国会図書館としては,こういったことで,全体的な枠組みを作っていく中で貢献できるのではないかということを考えているところでございます。
最後に,デジタルアーカイブ促進に向けた課題ということで,16枚目のスライドにまとめさせていただいております。こちらが今日の中では一番,我々としてはお話をしたいと思っていたところですので,ちょっと長めにお話しさせていただければと思っております。
最初に,国立国会図書館のデジタル化資料の利活用ということで,出版社等による復刻版の作成であるとか,電子書籍を我々のデジタル化データを使って作りたいというような二次利用の促進について,こういったことが考えられないかということを書かせていただいております。先ほどの御報告の中にもありました裁定制度の見直しによりまして,事務的負担に関しましては,我々自身も軽減されておりますし,民間でも恐らく軽減は進むのではないかと考えております。さらなる取組として,当館を含む公的機関が裁定を受けた結果について,第三者が活用できるような仕組みというものができないかということを書かせていただいております。また,特に著作物・著作者単位での裁定結果の共有というものも必要ではないかと考えております。これにつきましては,我々自身がどういうふうに情報提供ができるのかというところも課題かなと考えているところです。また,これまでもいろいろなところで議論がなされているところですけれども,権利情報管理組織の充実等も,やはり課題としてはあろうかと思います。
また,既にスタートしております絶版等資料の図書館向けの送信サービスですけれども,特に最近は海外の日本研究を支えている図書館から,強い要望をいただいております。こちらは今のところ国内の図書館等に対しての送信のみを行っているわけですが,海外の大学図書館ですね,特に日本研究を盛んに行われている大学の図書館等から,我々も是非使いたいというような御要望をいただいております。こういったことがもし実現しましたら,日本文化の発信力強化にもつながるということで,どのような形で実現できるかということについて,御一緒に考えていければと思っているところでございます。
また,これもずっと繰り返し話題になっているところですけれども,テキスト化データの作成とその利用ということがございます。今のところ我々のデジタル化は,全て画像によるデジタル化でございまして,テキストは作っておりません。目次だけはテキストを作っておりますけれども。本文についての検索,あるいは検索結果の表示のためのテキスト化データの利用を進めていくことについて,課題かなと考えているところでございます。
それから,大きな2番目といたしまして,当館以外の図書館等におけるデジタル化の促進というものも大きな課題と考えております。これまでのところ,国会図書館につきましては,我々が所蔵している資料の原本保存目的のデジタル化につきまして,権利処理なしにできるという法制度を整備していただきましたけれども,各図書館等におきましては,国会図書館が所蔵していない資料を,いろいろお持ちになっています。そういったもののデジタル化であるとか,デジタル化したものを,我々の方で長期保存,あるいは提供なども含めてできるようにならないかということがあります。提供する仕組みを作るのも,やはりコストがかかりますので,そういったところも含めて考えられないかというところを書かせていただきました。
また,各図書館がデジタル化した絶版等資料についても,同じように図書館等に配信するというようなことができないか,というところも書かせていただいております。最後の方になってくると,アイデアレベルというところもございますけれども,そういったことができると,非常にデジタルアーカイブが進むのではないかというふうに書かせていただいているところでございます。
本日は,デジタル化ということに絞りましたので,資料の方には書いておりませんけれども,国立国会図書館では,東日本大震災アーカイブというものにも取り組んでおります。こちらの方は古いものをデジタル化するということではなく,現在新たに生成されるデジタルのものをいかに集めて保存していくかというところも課題と考えているところなのですけれども,最近は,デジカメとかスマホとかで個人がプライベートに作ったものというのが,結果的に貴重な記録になるということがかなり発生しております。プライベートなものをどのようにパブリックなものにしていくのかというところも,法制度の問題も含めまして大きな課題があるのではないかと感じているところでございます。こちらの方は資料にございませんけれども,一言付け加えさせていただきました。
簡単ではございますけれども,国立国会図書館からの報告は,以上でございます。
【土肥主査】
大場様,ありがとうございました。
それでは続いて,東京国立近代美術館フィルムセンター,栩木様より御説明をお願いいたします。
【栩木様】
ただいま紹介にあずかりました東京国立近代美術館フィルムセンターで主任研究員をしております,またフィルムセンターの所蔵品として,映画フィルムの担当部署であります映画室の責任者をしておりますとちぎあきらと申します。よろしくお願いいたします。着席して説明させていただきます。
まず本日は,フィルム・アーカイブ,つまり映画フィルムを中心としたアーカイブ活動というのがそもそもどういうものなのか。それと映画著作権というものとの関わり,これについて焦点を絞りながら説明をさせていただきたいと思っております。資料8の方で,スライドのコピーがございますので,それを見ていただきながらお聞きいただければと思います。
まず,フィルム・アーカイブとして,フィルムセンターの活動とはいかなるものかということでありますが,フィルム・アーカイブ活動というのは,それぞれ幾つかの事業というものを連続した一種プロセスとして,その対象となる収蔵品を取り扱っていくという流れを持っているというふうに思います。これが資料に赤で記しました,収集という入り口からアクセス対応という出口まで関わる一連の業務のプロセスということになります。このプロセスを,一方でいわゆる学芸系の研究員が行い,もう一方でいわゆる事務系側が運営をしていく,こういう形でこの事業全体を進めることを,フィルム・アーカイブ活動及びこのような活動をしている組織をフィルム・アーカイブと呼んでいると定義できると思います。
各事業について,簡単に説明をさせていただきたいと思います。スライド3番目,まず収集。これは動画像・音声記録媒体,これをフィルムというふうに総称してよかろうと思いますが,またこれに関連する様々な資料を,原則として網羅的に集めるということを目標に掲げながら,しかし現実的には,優先順位を設けて集めていくということが求められているということになります。
フィルムセンターの場合,これは日本の国の事情ということになりますけれども,国会図書館法の中で,映画技術によって製作した著作物は,納入義務の対象になってはいるのですが,附則によって納入というものが,館長の定めるところによって免じられているという,そういう附則条項があることにおいて,現実には法定納付という制度が,映画フィルムに対しては機能していない状況があります。
一方で,参考資料6の方には,著作権施行令の文面がありますが,ここの中で,記録保存所として定義されている,これが独立行政法人国立美術館の中で,映画に関する作品その他の資料を収集・保管する場所として定義されており,そこがまた保存のために適当な措置を講ずる義務を負うというようなことも書かれている。それに基づきながら,フィルムセンターでは,映画フィルムを持っている所有者との個別の契約に基づいて,直接複製物を購入,あるいは現物を受贈するという形で,映画フィルムの収集を行っていることになります。いわゆる対価を払って物を取得する購入に関しては,現物を持っている方から複製物を販売していただいて,購入するという形。ないしは現物を持っている方から,これは無償により譲渡を受ける形で受贈する。大きく言えば,このいずれかによってフィルムの収集活動を行っていることになります。
現時点でフィルムセンターでは,収集メディアとしては,映画のフィルムに限定しています。ただし,デジタル技術を介した映画フィルムを修復・復元する作業が,この10年余盛んに行われるようになりました。こうした復元の成果物としてのデジタルデータ及び利活用を目的としてフィルムから複製されるデジタル複製物,こういったものも併せて保管をしているのが現状でございます。
2点目の,安全保護・長期保管という考え方ですが,これはフィルムを散逸や劣化,損傷や滅失というところから守るために適切な環境で保護し,廃棄の危険性を回避しながら,長期にわたってこれを保管して,そのフィルムに記録されたコンテンツの延命を図るという形で定義できるのではないかと思っております。
こうして保護されたものが,美術館の所蔵品として当方で管理されるわけですが,平成25年度末現在で,所蔵のフィルム本数が7万2,290本になります。我が国の唯一の映画専門機関として,国の文化遺産として映画を守るということが,先ほどのいわゆる優先順位の中では最も高いものだというふうに考えまして,当方では日本映画の収集に主軸を置いており,現在,全体の所蔵本数の中で88%が日本映画,12%が外国映画という比率になっています。ちなみに昨年度の収集本数は5,003本。独立行政法人という形に国立美術館がなってから,昨年度いっぱいで13年たったわけですが,この間の年間平均収集本数は3,472本という数字になっております。
スライド5枚目の保存・復元ということですが,これはもしかしたらフィルムという世界と,いわゆる美術品ないしは建築物といったもののいわゆる保存・復元(復原)とは若干異なるところがあると思います。すなわち,映画フィルムのようないわゆる複製可能な表現に関しては,この複製をすることによって,コンテンツをきちんと保存する,ないしは復元することが重要な鍵になると思います。保存は,既に劣化や損傷が見られるもの,ないしはその危険性があるもの。また,例えば唯一これしかないというものを長期的に安全で安定した媒体に複製することによって,コンテンツを長期にわたって再現可能な状態にしておくこと。そして,復元は保存の一側面として,オリジナルに近い状態,これをアーカイブの世界では真正な状態,オーセンティックな状態と言うことが多いんですが,この状態を再現すること,これが復元というものの定義と考えています。
昨年度,保存や復元したフィルムの数は297本に及びます。現在でも,いわゆる従来の写真化学的な技術工程を用いた,フィルムからフィルムへの複製というものを私どもは続けていますが,これが261本。プラスいわゆるデジタル復元という,デジタル技術を用いた修復をした上で,もう一度フィルムという媒体に置き直して保存・復元する活動として,36本のフィルムを保存・復元しております。
登録・目録化は,こうして収集したフィルムを検査して,データ採取をして,それを文字や,記号や,数値というものに直して,データベース化する。そして,データベースを基に文書にしたり,出版したりすることというふうに定義をしています。
上映・展示は,こうして収集した映画フィルムないしは資料を,現時点で入手可能な素材,技術等を用いて,できる限りその作品が求めていた真正な状態で再現,公開することというふうに,アーカイブとしては定義をしています。
7枚目が,アーカイブ活動の出口となります,アクセスへの対応ということになります。これは所蔵品に対して,外部からの御利用があったときに,美術館の規則に準じて対処するという活動でございまして,現在フィルムセンターでは,映画のフィルム,そして先ほど言いましたデジタル複製物に対するアクセス対応として,以下3つを規則化しています。
1つ目は,これは館内での利用になるのですが,研究・調査等を目的とした試写に応じるということ。2点目は,複製物をとって,何らかの形で利用したい。例えば,テレビ番組に使いたい,美術館や博物館で展示上映をしたい,ないしは教育機関が授業で利用したい,このような目的に応じた複製利用への対応になります。そして最後は,現物そのものの貸出し。借りる側(がわ)から言えば借用になりますが,公共上映などの目的でそのフィルムを貸し出すということ。2点目,3点目は,館外での利用ということになりますが,いずれも提供素材を安全に保護してもらうこと。そして,著作権の処理というものが前提で,このようなアクセス申請に対して対応しているということになります。
次に,映画フィルムを収集するに当たって,映画著作権というものとどういう関わりを持って,その取扱いをしているのかということをまとめてみました。フィルムセンターは現在,国際フィルム・アーカイブ連盟,FIAFと呼ばれる組織の加盟機関として活動しているわけですが,このFIAFという組織の原則として,これを国際的に共有している様々なプロトコルのようなものがございます。この中で,著作権関連でいいますと,1つは,これは当然のことと言えますが,映画著作権など知的財産に関する国内外の法律を遵守する。そして同時に,公的な機関として,所蔵品及びこれに関連する情報を,それぞれの国民に対してより多く,より広範にアクセス可能な状態にするための努力を行うということが触れられると思います。
これを踏まえまして,収集されるフィルム,そしてその複製物,この両方において,映画著作権との関連でいいますと,上映等で使用する権利及びこれを複製する権利に関わる取扱いが必要になるのではないかと考えております。
9枚目,実はそれぞれの収集に当たって,先ほど購入,寄贈というお話を出させていただいていますが,そのような経緯,事由というものの違いがございます。この事由に従って,著作権とどのように関わりを持った取扱いをしているかということをまとめてみました。
購入の場合は,原則として購入先と契約を結ぶことによって,館内での上映利用。これは一般のお客様に公開する上映,それから,先ほど述べました申請を受けて試写をするというような上映。それから,職員によって,クオリティコントロールの目的で行う検査のための試写,こういう館内での上映については,購入の段階で,権利料相当の対価をあらかじめ支払うことによって,許可を得ているというのが原則でございます。ただし,館外で利用する場合,つまり上映ないしは複製については,購入先による許諾が前提となった対応をしています。
一方寄贈は,原則としては購入による所蔵フィルムと同じような権利上の扱いをするのですが,近年,寄贈者との事前交渉において,フィルムやデジタルへの複製をする権利,館内や館外でフィルムで上映をする権利及び館内でのデジタル利用については,当館における最大限の裁量を認めてもらいたいという形での交渉を,常に行っています。
これは一義的には,先ほど申しました,国民からのアクセスの機会をより多く確保,保障するためということが当然ながらあるわけですが,現実的な問題としては,現在映画フィルムの寄贈を申出される様々な相手,すなわち寄贈者になりますが,例えば映画会社等の場合解散をしてしまう,ないしは廃業してしまう。又はその会社や団体の担当者が高齢化してしまう。こういうような事情が大変多くあり,実際に寄贈したフィルムを受け取った後に,著作権上の処理を行うことが非常に困難になるということが予想されています。これに対する1つの防御策として,寄贈時にある程度の話合いのもとで,寄贈者との了解のもとに,当館での裁量というものを求めているのが現状でございます。
3番目,不燃化・複製化という言葉なのですが,これは既に所蔵しているフィルムの中で,1950年代までに使われていた可燃性と言われるフィルムを安全性のものに切りかえる,ないしは不燃性のフィルムを複製する。こういう形で収集を行うことがあります。これらの取扱いについては,購入や寄贈と基本的には同様なのですが,現在,パブリック・ドメインとして保護期間を過ぎていると認められている作品については,当館の裁量によって,上映や複製を行っています。
また,所蔵品ではないのですが,寄託という制度に基づいて,大手の劇映画製作会社の原版フィルムに限り,現在寄託品として保管をさせていただいております。この原版からの複製物の取扱いに関しては,購入と同じように,契約に基づいた利用というのをさせていただいております。
そして,デジタル複製物。先ほど申しました復元作業による成果物として,LTOと呼ばれる磁気テープ,ハードディスクドライブ,ないしはこれも同じく磁気テープですが,HDCAM-SR,こういったメディアでの保管を現在行っています。一方で,利活用を目的とした複製物に関しては,パブリック・ドメインと考える作品ないしは著作権者との同意に基づいて複製を行っているのですが,マスターに当たるもの,これはデジタルベータカムとか,HDCAM-SRというテープでの保管を行い,映写などで運用するためのものとしては,DVDやBlu-rayというものが考えられるんですが,これらデジタル複製物の取扱いというものも,購入,寄贈,不燃化・複製化における映画フィルムの取扱いに準じた扱いをしています。
最後に,フィルム・アーカイブ活動をこれから継続していく上での課題と,その課題の中で,映画著作権との関わりというものに焦点を当てて,3点まとめてみました。
1点目は,いまだ大量に映画フィルムが存在をしている。それが散逸や劣化という危機にあることは確かでして,これを安全に保護する,そして保存・復元を行うということが挙げられます。
これまで日本で映画がどのぐらい作られたかという元になる資料というのは,実ははっきりとした資料がないのですが,当方による様々な調査の中で,少なくとも劇場で公開された映画については,この100年余の映画の歴史の中で,大体の数が見えてはいます。その母集団,劇映画全体の中で,フィルムセンターが現在何らかの形で保管しているものというのは,その約20%にすぎません。残りの80%が,全て現存しているかどうかというのは疑問ですし,残りのもの全てが散逸や廃棄の危機にあるとは言えませんが,ただ,極めて多くのものが,まだ散逸及び劣化というものの危機にあることは確かです。
これらの映画フィルムに対して,これまで同様,個別契約をもとに著作権処理をしていくということは,やはり実数として膨大になっておりますし,同時にデジタル複製物の利活用といったものが非常に多様な回路というものを生み出しておりますから,この多様化に伴う契約が複雑化しているというのが現状です。
2点目は,デジタル複製物を長期的に保管をするということに即した問題です。損傷や紛失の危険性は,デジタルデータにとって宿命とも言えますし,定期的にフォーマットを変換すること。これはデジタルデータが置かれている,例えばテープやディスクといった媒体もそうですが,データ記録の書式となるファイルフォーマットといったものも,当然ながら変換が必要ですし,それを再生し,読み出しをする機器も短期的に陳腐化をしてしまうという現状があります。こうしたデジタルメディアのもの特徴を前提にしながら,どのように著作権を処理していくかということに,今課題として直面しているところではないかと思います。
そして,その上でこういったデジタルに対するアクセスをどうやって促進するか。この場合,データそのもの,つまり画像や音声そのものというよりも,メタデータ,すなわち権利情報やコンテンツ,作品に関する情報。そしてもう一つは,先ほど言いました変換作業などに極めて大切なテクニカルなデータ。こういったデータをどれだけ充実させ,それをきちんと保存をしていくかという課題があります。
そして最後に,こういった多様なメディアへの複製や,多様な利活用というものを包括した形で,著作権処理というものが求められるのではないかということは,先ほどの1の大量に存在するフィルムへの対応ということと同様ですが,共通の課題としてあるのではないかと考えます。
以上,簡単ではございますが,フィルムセンターにおける映画フィルムのアーカイブへの試みを説明させていただきました。ありがとうございました。
【土肥主査】
栩木様,誠にありがとうございました。
なお,独立行政法人国立美術館からの御発表につきましては,先ほど申し上げましたとおり書面で頂戴しておりますので,配付資料9を各自御確認ください。
それでは,質疑応答と意見交換に移りたいと存じます。御意見,御質問ございましたら,御遠慮なくお願いいたします。山本委員。
【山本委員】
国会図書館の方からの御説明について,1点質問したい点があります。といいますのは,この利用の仕方について,著作権保護期間が満了した資料かどうかというのが一つの分岐点になっているようなんですが,なかなか著作権の保護期間が切れているかどうかというのは,判断が難しいんじゃないのかなと。先日も私,インターネットで1901年発行の本を探しておりまして,古本を探すつもりだったのですが,国会図書館のデータが出てきました。なかなか便利だなとは思ったのですが,著者の人も有名な人ばかりとは限らないと思いますので,著作権の保護期間が満了したかどうかの判断は難しいだろうと。
ということで,どのように満了しているかどうかを調査されているのかというのが1点と,もう一つは,そこでいろいろな御苦労がおありだと思いますが,こういう点が改善されればもっと調べやすくなるとか,この要件を外してもらうとどうこうだとかいう,改良についての御希望とかがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
【土肥主査】
大場様,お願いいたします。
【大場様】
御質問ありがとうございます。保護期間満了の確認ですけれども,国立国会図書館では,まず全ページを確認いたしまして,どのような著作物が1冊の本に含まれているかというリストを作成いたします。その上で,様々な辞書・辞典類であるとか,時によってはインターネット等も使いまして,それぞれがいつ亡くなられた,あるいは,今連絡先がどこであるというものを調査いたしまして,それで全ての著作者について,これは保護期間満了であるということが様々な文献で確認できるという場合に,インターネットで公開をしています。画面をお見せできれば一番簡単なのですけれども,メタデータというふうに我々呼んでいますが,タイトルとか著者とかの表示をしている部分の一部分に,この資料は著作権保護期間満了でインターネット公開していますという表示を出させていただいております。
利用される方は,そこを見ていただければ,これは保護期間満了だと国会図書館が判断したんだなということがすぐに分かりますので,そこを見ていただいて,自由に使っていただいて構わないというような形でやっているところでございます。
もう一つ,保護期間満了に関しましては,お互いにいろいろなところで確認をしていると思いますので,そういった情報を共有していくということが重要だろうと考えています。特に我々,国立国会図書館が確認した情報というのは,皆さんに使っていただくというところが,1つ今後のポイントになっていくかなと考えております。それ以外に,やはりインターネットで公開するということに関しましては,文化庁長官の裁定をいただくという制度に関しまして,今回いろいろ見直しをいただきましたけれども,より使いやすいようになっていくためには,著作権情報について集約したデータベースのようなものが管理されるような形になっていくということが,より望ましいと考えている次第です。
【土肥主査】
よろしゅうございますか。
ほかにいかがでしょうか。茶園委員,どうぞ。
【茶園委員】
東京国立近代美術館フィルムセンターの方からの御報告について,2点お尋ねしたいことがございます。1点目は,スライド5ページの保存・復元というところで,ちょっとイメージがつかないので教えていただきたいのですが,フィルムからフィルムへとか,フィルムからデジタル修復,フィルムへということは,著作権法における複製に当たるのではないかと思います。そうだとしますと,複製をするに当たって,権利処理をどのようにされているのでしょうか。後で著作権のことをお話しされたのですけれども,そこでは上映に関してお話しされましたので,複製に関する権利はどのようにされているのかをお教えください。
この複製に関して,もう1点,フィルムからフィルムへというのは,私は素人で分からないのですけれども,長期保存するにはデジタルで保存する方が安定しているのではないかと思うのですけれども,映画フィルムについては,フィルムからフィルムへという方がよろしいということなのでしょうか。
2点目の質問は,今度は上映に関してで,スライドの9ページのところです。フィルムセンターさんにおいて複製物を作られるとするとちょっと難しいかなと思うのですけれども,そうではなくて,例えばフィルムを購入して,それを上映するだけでしたら,著作権法38条によって,一定の要件を満たせば自由にできるということになると思うのですが,そのようなことは余り考えておられないのでしょうか。
上映に関してもう1点,フィルムセンターさんでは館内とか,あるいは外部で上映を行われているようですけれども,これに関しましては,国立国会図書館さんが送信されるのは絶版等資料で,一般的に民間と余り抵触しないことを考慮されたものに限られていますが,フィルムセンターさんでは,上映に当たって,フィルムが市場に出回っているかどうかというような点を考慮されておられるかについてお聞きしたいと思います。お願いいたします。
【土肥主査】
では,栩木様,お願いいたします。
【栩木様】
先生の御指摘いただいた問題は,2点大きくあると思います。まず1点目の保存や復元というものが,いわゆる複製行為を通して行われることだということを前提にして,いわゆる複製権というものを著作権者との間でどのように処理しているのかと。当方で,既に所蔵しているフィルムを,保存や復元という目的で複製をとる場合に,それが著作権の保護期間である場合は,著作権者との協議による了解を前提としてその作業をさせていただくということにはなります。もちろん保存・復元自体が,著作権者との間の共同事業として,ないしはこちらが著作権者に対して,保存や復元を目的とした複製作業を委託する場合は,その著作権者が作成した複製物を,我々は一定の条件で買い取るというような形になります。以上のようなやり方を通して,保存・復元というのを進めているということになるわけでございます。
フィルムからフィルムへの複製,それからフィルムからデジタルへの複製などについての問題なんですが,これは先ほど少しデジタル複製物のところでコメントをさせていただきましたが,現在映画・映像のアーカイブ活動に従事している世界の諸団体や,それに関わる関係者たちの共通理解というふうに考えていただきたいんですが,デジタルデータに直して,そのデータ自体をある特定のメディアに保管をしておく,これがいわゆるデジタルメディア保存となるわけですが,その保存されたメディア,媒体自体の長期保存性というものが,残念ながら今のところそれほど長い期間の保存性が認められない。と同時に,その保存された内容を再生して読み出して,表示するという行為が当然必要なわけですが,そのために必要な様々なソフトウェアやハードウェアといったものが長期にわたって有効かということも,残念ながらその保証もないという認識を持っています。
一方,映画フィルムに映像や音声が記録された場合の保存性というのは,例えば白黒フィルムの場合は銀という粒子がそこにあるんですが,銀粒子の保存性というのは,現在ISOの規格では500年というふうに言われています。それから,この銀粒子を支えているベースと呼ばれる層は,ペットボトルのペットという材料を使っているんですが,これは摂氏20度,湿度50%の常温環境で約1,000年というふうに言われています。
もちろん現在,データ保存をより長く安定させるための研究は様々なところで行われていると思いますが,現時点で映画・映像のデータを長期にわたって保存し,かつ読み出し可能な状態にしておくため方法として,ビジネスモデルとしても有効であると思われるのは,映画フィルムにおいてほかはないというのが,現時点での映画・映像アーカイブ関係者の共通の認識でございます。
そのため,我々が映画・映像の長期保管を考える場合には,まずフィルムに保存しておくということがベストだろうという立場から,様々な作業を試みているということになります。ただし,もちろんフィルムを上映するのは大変ですし,低温・低湿で保管すること自体も非常に難しいことなので,いわゆる利活用という面を考えた場合に,デジタルデータ化をして,より広範な普及を図るということも,同時にやらなくてはいけないことだというのが,我々の同時の認識であるというふうに考えていただければ有り難いと思います。
上映についてですが,これを館内で上映することに関しては,先ほど言いましたように収集時の契約に基づいて,館外に関しては,原則としてはそのたびに著作権者の許可をもらって利用していくわけですが,少なくとも当方が自主的に館外上映を行う,ないしは館外の団体と共同で何か上映を行う場合に,いわゆる一般の映画館や,我々と同種の美術館や博物館の中で行われている上映活動といったものと余り抵触しない形で,ないしはそこで行われたものではないものを,きちんと保存することを前提としながら上映の機会を作るということで,やはり多くの国民の方に,より多くの作品に接する機会を作ってもらいたいというようなことを試みているわけです。
ただし,現在でも日本の映画産業は,毎年400本ぐらいの新作が劇場公開されている大変大きな産業で,大量の作品が生み出されている状況が続いていますので,その意味でいいますと,遡及的に,いわゆる旧作,クラシックと言われている日本映画の名作,代表作から,監督や様々な映画関係者の業績を顕彰できるような作品に我々は力点を置いて,館内での上映に努めていますし,ないしは館外でもそのような試みをされるところに,より積極的に協力をさせてもらっているのが現状でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。龍村委員,どうぞ。
【龍村委員】
国立国会図書館さんにお尋ねしますけれども,これは初歩的な御質問かもしれませんけれども,例えば様々な美術品,工芸品等の展示会等が国内様々開催されていると思いますが,多くの場合,そのカタログ等が販売されることが多いと思うのですが,それらのカタログというものは,それぞれ恐らくは大変立派なもので,過去に膨大な点数が出ていると思うのですね。これらは国立国会図書館の方には納本されているものなのでしょうか。
【大場様】
御質問ありがとうございます。基本的には納本の対象になっておりまして,我々としてもできるだけ収集しようと努力しているところでございます。ただ,やはり地方の博物館や美術館で,特に民間というのでしょうか,私立というのでしょうか,財団等で運営されているところに関しましては,なかなかカバーしきれない部分もやはり残っているという事実はございます。そういったところにつきましても,我々といたしましては,できるだけ網羅的に集めるよう,今後とも努力していきたいと考えております。
【龍村委員】
それらカタログは,いわゆる絶版等資料とは見なされているのでしょうか。それらは絶版等資料に含まれるというお考えになりますでしょうか。
【大場様】
我々といたしましては,カタログの中でも,民間出版物の形で,いわゆる書店で普通に販売されているものもありますので,そういったものは絶版等資料には入りません。今売っているものは入りませんけれども,いわゆる公共団体等,あるいは博物館,美術館等で出されているものに関しましては,今流通しているという申出がなければ,基本的には絶版等資料という形で判断をしております。
【龍村委員】
そうしますと,かなりの我が国を代表するような工芸品,美術品は,そのようなカタログを通じて,国立国会図書館においてデジタル化が結構進んでいるというような理解をしてもよろしいのでしょうか。
【大場様】
ただ,我々デジタル化をしておりますのは,実は1960年代ぐらいまでという状況でございまして,まだ現在のように非常に印刷技術が高度になっている手前の段階かと思いますので,デジタル化はしているのですけれども,それで十分かと言われますと,やはりまだまだではないかなというふうに考えております。
【龍村委員】
ただ,その種のジャンルのもののアーカイブ化については,1つの近道といいましょうか,様々なカタログを通じてのデジタル化が,国立国会図書館において可能なルートもあるというようなことも言えるのでしょうかね。
【大場様】
そうですね,はい。我々の方でのデジタル化を進めるというのも,1つの選択肢ではあるかと思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。それでは,井上委員,どうぞ。
【井上委員】
御説明ありがとうございました。まずフィルムセンターの方にお伺いしたいのですが,収集の仕方としては,所有者から個別契約で譲り受けるということでした。そして,著作権の処理に関して,「購入先」との契約でと御説明がありました。ここで前提になっているのは,フィルムの所有者というのが,映画の著作権者なんだという前提なんだと思いますけれども,これは例えば,映画会社なり映画製作者なりがその権利を譲渡していたり,分からなくなっていたりというようなことは,余り想定されないんでしょうか。先ほど寄贈のところの説明でちょっとそういうお話がありましたけれども,その点を確認させていただきたいと思います。
それからもう1点,これは国立国会図書館の方にお伺いしたいと思います。今日のお話では,デジタル化された資料について,著作権が切れているものについてはインターネットで広くアクセスできるよう提供しているという御説明がありました。昨今いろいろ話題になっておりましたが,著作権が切れている,例えば歴史的な古典籍のようなもので,民間が投下資本の回収を市場で行うことを目的として,何らかの編集・加工等を行って,そして販売なり何なりしているというような場合についてはどのようにお考えでしょうか。公のアーカイブが「市場」と接合する場面で,「市場」との関係をどう整理していくかということは非常に大きな問題になってくると思うんですけれども,この点について少しお聞かせいただければと思います。
【栩木様】
御質問いただきありがとうございます。このあたりは複雑なことがたくさんありますので,今回のスライドでは,あくまでも原則として,最も基本的な形での購入や寄贈の経緯というもので説明をさせていただきました。実際にはフィルムをお持ちの方というのは実に様々でして,例えば権利者の場合もあれば,全くの個人がコレクションをしているような場合というのも当然ございます。それから,ちょっと複雑なのは,映画の場合は,特にこれは記録映画とかニュース映画というジャンルで比較的多い話なのですが,映画を実製作をした会社と,そこに対して発注をしたクライアントが分かれていて,そのクライアントに著作権があったり,ないしは実製作者にあったり,ないしは両方が共有していたり,いろいろな場合が想定されます。実際に物を持っているのがどちらかというと,どちらの場合もあり得るのですね。
その場合に,我々としても著作権が保護期間内であれば,著作権者の了解をもとに,購入や受贈という形で収集を進めていくことが,その後の上映や複製に対する利用にとってベターであろうとは思います。ただし,例えばコレクターのような方が持っている場合は,当然著作権者が別にいたり,ないしは著作権者が分からなかったり,それから,権利者から私たちが何か物を取得する場合も,その権利そのものがもはや切れているというようなことも当然あります。
そのような場合に,その方々との間で話合いをして,上映や複製に関する利用について,ある種個別の契約で条件を付けるために,いろいろな話合いをしているというのが現状でありますし,またコレクターのように著作権者でない場合に関しては,まずそのフィルム自体をきちんと保護するために,寄贈を受けることとし,その後の利用については,保護機関であると判断すれば,できるだけ著作権者を探して,上映と複製に対する担保をとっていくというような試みをしているということで,様々なバリエーションがあるというふうに考えていただければ有り難いと思います。
【大場様】
国立国会図書館にいただいた御質問は,非常にお答えするのが難しい質問でございますけれども,先日来話題になった件に関しましては,戦前から同じものがずっと販売され続けていると。しかもそれなりに売れ続けていて,その会社の非常に大きな収入源になっているというような状況がございました。そういったことを考えますと,国立国会図書館がインターネットで出すということの影響というものが非常に大きいというふうに一般にも言われておりますし,その会社からも申出があったということを踏まえまして,一定の配慮が必要ではないかということで検討したというところでございます。
結論といたしましては,やはりそうはいっても比較的最近まで一定の投資が継続的になされているのでなければ,権利上切れているものについて,何でもかんでも我々が配慮しなければならないというものではないのではないかという結論ではあります。けれども,ただ一方で,それなりの投資をして,それがまだ回収がされていないという状況であれば,それなりに我々の方も考えなければならないというような結論になったというところでございます。これにつきましては,まだ試行錯誤といいましょうか,まだ暗中模索の状況ですので,これからまた事例などを積み重ねながら,民間と我々との分担というのでしょうか,適切なバランスというものを探っていきたいと考えております。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにございますか。奥邨委員,どうぞ。
【奥邨委員】
東京国立近代美術館フィルムセンター様に,確認に近いのですけれども,2つ教えてください。
まずデジタルのものに関しては,現状,物として保管されているという理解でよろしいでしょうか。デジタルのテープであるとか,デジタルのディスクという形で,物として保管されているのか。さらに,現状は物として保管されているとしまして,将来的な必要性としては,利活用を考えたり,またデータの安全性ということを考えたりしても,例えばデータセンターのようなところにデータだけを保管する必要性が出てくるのかという点,それが1つ。ちょっと2つになってしまっていますが。
もう一つは,先ほどお話ありましたように,私も理解しておりますが,デジタルデータというのは逆に非常に脆弱(ぜいじゃく)な部分がありますので,フィルムの方が安全であるということなんですが,一方で,最近の映画は多くのものがデジタルマスターとして作られているのではないかと思います。また,映画館の方も,大きいところは,デジタルで映写しているという状況が多いかと思います。ただ,全国がそうなっているわけではないので,現状は何とかまだフィルムが残っているので,フィルム保管の対応可能ということなのでしょうか。もし,デジタル化の傾向がこのまま続く場合は,先ほどのお話でいけば,デジタルマスターを購入されて,それを一旦フィルムに落とすということをされなければいけないとか,何らかのそういうことが要るのでしょうか。デジタルとの関係でどういうふうになっているのかなというあたりを教えていただければなと思いました。
【栩木様】
御質問いただきありがとうございます。2点,少し絡んでいることがございますので,別々にお答えしにくいところがございますが,まず1点目としては,当方は,いわゆるデジタルでの複製物,これはデジタル復元の中間成果物であったり,利活用目的の複製物であったりするわけですが,基本はテープないしはディスク,このような何らかのメディアに落として保管をしているのが現状でございます。
2点目の,今後デジタルデータを,どのようなメディアなどで使って,利活用の促進に役立たせるのかということと,それから,デジタルマスターのようなものしか存在しないものについてどうするかということ,これが絡んでいる問題なんですが,まずこれは極めて理想論ですが,もちろん我々の現状の認識から言えば,やはりマスターからフィルムにレコーディングして,フィルムで保存をしていくことの優位性というものが確実ではないかと思います。現在,アメリカ・ハリウッドの多くの作品,それからメジャー以外の作品も若干はそうですが,デジタルで撮影し,編集し,かつマスターを作って,劇場ではデジタルで公開をしているのですが,保存メディアとしてはそこからフィルムに落として長期保管をするということが,スタンダードとして定着しつつある現状がございます。
日本の場合は,残念ながらやはりマーケットが大きくないので,そういった試みをすることがなかなか定着しておりません。私どもではこの間,もともとフィルムであったものをデータに変換して修復をした後に,もう1回フィルムにして残すというような作業をやっていますが,これは旧作ということになりますね。ただし昨年,スタジオジブリが公開しました2本のアニメーション映画は,フィルムに落として保管をするというようなことをやられています。日本の大手映画製作会社でも,1社,2社ほどは,ようやく最近になって,やはりフィルムで残しておくという形で,データからネガフィルムに落して保管をするというような試みを始められたところであるとも聞いております。
ただし,先ほど申し上げましたように,年間400本,500本と公開される映画について,全てそれをやるというのは,到底不可能なスキームだというふうに思います。では,どのようにしていけばいいかということですが,残念ながら,ベストプラクティスのようなソリューションがなかなか見つかっていないのが現状ではないかと思います。今考えられるものとして,例えばテープ,ディスクなどのメディアに残す,クラウドのようなところに残す,サーバーとして保管をする,幾つか現実的なソリューションとして,それをサービスとして提供されているところもありますが,実際にそれぞれがどのぐらいのコストを要するのか,保管に伴うリスクはどうなのか,ないしはどのぐらい頻繁に変換作業を行っていかなきゃならないのか,こういうことの実証というものがなかなかできていないのが現状かと思います。
フィルムセンターでは幸いにして,今年度,文化庁さんから補助金という形で,デジタル映画の保存とその活用についての調査研究を行う予算をいただいて,この秋から本格的な着手することができるようになりました。これ自体,どのような結論が出せるか,まだ本当に五里霧中な状態ではあるのですが,その調査研究活動を通して,先ほど申しました幾つかの現実的なソリューションを実証研究していくとともに,海外の事例などに当たって,このようなデジタルデータを保存・保管をしていくに当たっての法や契約の問題や技術論など網羅的な調査を行うことで,一種の方向性を示せるような,今後の映画・映像の保存と活用にとって土台になるようなものをまとめていければというふうに考えております。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。前田委員,どうぞ。
【前田(哲)委員】
国会図書館様にお伺いしたいと思います。資料の16枚目のところで,今回の裁定制度の見直しによって事務的負担が軽減されたと。さらなる取組としては,裁定結果の第三者による利用等がこの資料に挙げられているのですけれども,権利者を捜索する入念な調査を経た上で,文化庁長官の裁定という制度を経ないで,いわゆる拡大集中処理であるとか,あるいは権利制限規定によって利用可能にする,そういった方策もあり得るところかと思うのですが,そういった裁定を経ないで利用可能になるような仕組みの必要性については,どのようにお考えになっておられるでしょうか。
【大場様】
御質問ありがとうございます。特に拡大集中処理制度につきましては,我々も非常に強い関心を抱いているところです。ただ,国内でそのような役割を果たす団体が,現在のところうまく動いていけるのかどうかというところも含めて,なかなかまだ課題が大きいかなというところで,まずは当面,今我々も使っておりますし,使える制度として,文化庁長官裁定についての改善ということで,今回は書かせていただいたところです。ただ,やはり中長期的には様々な方策で使えるような制度というものができてくれば,我々としても大変有り難いところだと考えております。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。今村委員,お願いします。
【今村委員】
済みません,国立国会図書館さんの方に3つほど御質問させていただきたいと思います。1点目は,現在の制度では,納本後,直ちにデジタル化することが可能な状況になっていますけれども,アナログの資料とデジタルの資料,双方が出版されているような場合に,両方とも,アナログの方もデジタル化するのでしょうか。これが1点目です。2点目は,複製についてですが,絶版図書について,必要と認められる限度で複製ができるということになっていますけれども,複製の個数についてはどうでしょうか。個数というのは,デジタル化するわけですけれども,データとしてどのような形で保存しているのか。1個ということはないと思うんですけれども。
それが2点目です。3つ目は,絶版書籍に関しては,絶版その他これに準ずる事由により,一般に入手することが困難な図書館資料ということで扱っているということでしたが,中古の書籍などで,絶版だけれども,中古市場で入手することが容易であるというような図書館資料については,これは絶版だということで一律に扱っているのかどうか。この点についてお伺いさせていただければと思います。
【大場様】
御質問ありがとうございます。最初の御質問ですけれども,アナログとデジタルが両方ある場合,最近のように電子書籍などでも出ているというようなケースかと思われますけれども,我々の方は,電子書籍の納本制度につきましては,まだ整備が途中段階というところになっております。無償で,かつDRM等の保護手段がないものについては収集を始めておりますけれども,特に民間で出されているような,有償でかつ保護手段がつけられているものは,まだこれから制度を整備していこうという段階でございまして,今のところはほとんどのものがアナログのもので入ってくるという状況でございます。というわけですので,まだ今のところはその選択が迫られていないというところが実態ということになろうかと思います。入ってきた段階でどうするかというところは,やはり迷いどころではありますけれども,ただ紙の出版物の保存ということを考えると,できれば,両方保存した方がいいだろうとは思います。あとはコストの兼ね合いでどこまでやるかというところを,今後選択していくことになるだろうと考えております。
次に,デジタル化したものの保存でございますけれども,こちらの方は,まず1つは一番圧縮率の低い画像に関しましては,Blu-rayディスク,あるいはDVD等の記録媒体に保存しております。国会図書館の書庫の中で保存しているという状況です。提供している画像につきましては,当然バックアップ等をとっておりますけれども,その範囲でサーバー上に置いてあるということになることになります。定期的にバックアップをとって,かつ東京と関西でテープに出力したものを置き合うといったような形で,いわゆる災害時でも耐えられるような対策をとっております。ただ,先ほどから栩木様の方からいろいろ御指摘があったとおり,この媒体を長期的に残していくというのは非常に難しいということは,我々も認識しているところです。
最後に,絶版だけれども,入手が容易なものについて,例えば,古書市場などで大量に流通しているものというのは確かにございまして,実は古書業界さんともお話合いをさせていただきました。やはり一定部数,多数のものが古書業界で流通しているものに関しましては,入手が容易であるということで申出があれば,こちらの送信からは引っ込めるというようなことで,古書業界様とはお話をさせていただいております。実際にどの程度あるのかは,ちょっと済みません,申し訳ないのですが把握はしておりませんけれども,一応そのようなことで進めておる次第でございます。
【土肥主査】
それでは,龍村委員,どうぞ。
【龍村委員】
1点だけですけれども,国立国会図書館にお尋ねさせていただきますが,今回の裁定制度見直しが8月1日からスタートしましたが,その評価といいましょうか,使い勝手といいましょうか,あるいはコストの問題等,どのような御印象を受けておられますでしょうか。
【大場様】
資料の方にもつけさせていただきましたけれども,やはり事務的負担の軽減という意味では非常に効果が大きいと考えております。その点では,非常に有り難い対応をしていただけたというふうに考えております。あとは実際の事務手続上で,供託金の問題であるとか,その辺はまだ事務方と調整中の段階でございまして,そういったところでまだ課題はゼロではないと思っていますけれども,運用で対応いただけるものは,またお話合いをさせていただきながら,改善できていければと思っております。
ただ,こちらの資料の方にも書かせていただいたとおり,やはりここからは民間で更に利用できるような仕組みというものをもうちょっと進めていっていただきたいと考えています。国立国会図書館は,それなりに予算を投入してやっているので,今までここまでこられたというところはあるのですが,やはり民間の出版社の方にお伺いすると,まだまだ裁定制度は敷居が高いというふうに受け取られているようですので,そういったところをいかに下げていくのかについては,我々がやってきた成果も含めて活用していく仕組みというのが必要ではないかなと考えております。
【土肥主査】
ありがとうございました。そのほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。ほかにはよろしゅうございますか。
予定している時間も大体きてはおりますので,ほかに特段ございませんようでしたら,本日はこれぐらいにしたいと存じます。
それでは,事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。
【秋山著作権課課長補佐】
次回会議の日程につきましては,調整の上,改めて御連絡したいと思います。
【土肥主査】
それでは,本日はこれで第1回の法制・基本問題小委員会を終わらせていただきます。誠にありがとうございました。
―― 了 ――