文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第2回)

  • 日時:平成29年6月30日(金)
  • 10:00~12:15
  • 場所:文部科学省旧庁舎6階 第2講堂

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)今期の法制・基本問題小委員会における審議事項について
    2. (2)リーチサイト等への対応について
    3. (3)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
第17期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会における当面の検討課題及び検討の進め方について(案)(224KB)
資料2
ヤフー株式会社提出資料(37.4KB)
資料3
グーグル合同会社提出資料(1.7MB)
資料4
テレコムサービス協会サービス倫理委員会提出資料(763KB)
資料5
日本知的財産協会提出資料(189KB)
資料6
インターネットユーザー協会提出資料(1.1MB)
参考資料1
小委員会の設置について(平成29年4月12日文化審議会著作権分科会決定)(57.3KB)
参考資料2
第17期文化審議会著作権分科会における検討課題について(平成29年4月12日文化審議会著作権分科会決定)(73.3KB)
参考資料3
「知的財産推進計画2017」等で示されている今後の検討課題(1.1MB)
参考資料4
文化審議会著作権分科会(第46回)における意見の概要(150KB)
参考資料5
高等学校の遠隔教育を推進するための著作権制度上の課題への対応の在り方について(224KB)
参考資料6
リーチサイトへの対応に関するヒアリングについて(依頼)(90.7KB)
参考資料7
ヒアリング出席者一覧(24.2KB)
参考資料8
平成28年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(平成29年2月24日文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会)(1.3MB)
机上配布
文化審議会著作権分科会報告書(2.0MB)
出席者名簿(50.1KB)

議事内容

【土肥主査】それでは,定刻でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第2回を開催いたしたいと存じます。本日はお忙しい中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。

議事に入ります前に,本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されております議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

まず,前回御欠席でございましたけれども,今回,井奈波委員,岸委員,小島委員,末吉委員,中村委員に御出席いただいておりますので,御紹介をさせていただきます。

まず,井奈波委員。

【井奈波委員】井奈波でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】岸委員。

【岸委員】よろしくお願いします。

【土肥主査】小島立委員。

【小島委員】小島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【土肥主査】末吉亙委員。

【末吉委員】末吉でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】中村伊知哉委員でございます。

【中村委員】よろしくどうぞお願いいたします。

【土肥主査】どうぞよろしくお願いいたします。

では,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元の議事次第を御覧ください。配布資料1としまして,今期の小委員会の検討課題及び検討の進め方について(案)と題する資料,資料2から6につきましてはリーチサイト関係の関係団体様からの提出資料でございます。参考資料は,議事次第に記載のとおり8点御用意しておりますとともに,机上に著作権分科会報告書を御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお伝えください。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,はじめに議事の進め方について確認をしておきたいと存じます。本日の議事は,(1)今期の法制・基本問題小委員会における審議事項について,(2)リーチサイト等への対応について,(3)その他となっております。

早速,議事に入るわけでございますけれども,今期の本小委員会は,前回,それまで議論をしておりました事項についての報告書の取りまとめを行ったわけでございます。そのため,今回より実質的には新たな期に入っていくということになるわけでございます。そこで,今回より新たな審議を行っていくことになりますので,今期の審議事項について確認しておきたいと思っております。本小委員会における当面の検討課題につき,事務局より説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御説明いたします。

まず,前回御審議いただきました小委員会の報告書につきましては,その後,4月26日に著作権分科会に御報告を頂きまして,内容面としては原案のとおり了承されております。

あと,細かな事実関係の追記などは行っておりますが,1点修正部分を,軽微な修正でございますが,御紹介をしたいと思います。お手元の机上の資料の76ページをお開きいただけますでしょうか。こちらは教育の情報化の推進に関わる部分でございまして,授業の過程において行われる公衆送信や複製など,現行法第35条との関わりのある行為類型につきましての略称につきまして,少し分かりやすくする観点から,現行法第35条2項に関わるものを「同時授業公衆送信」,その他のものを「異時授業公衆送信等」という略称に見直しをしております。それぞれ指し示す範囲につきましては小委員会で御審議いただいた内容と相違はございません。

それでは,こちらの本題の御説明に入りたいと思います。まず参考資料2をお願いいたします。こちらは4月12日の著作権分科会(第1回)におきまして御審議いただいたものでございます。今期の課題としまして,まず知財計画の策定などの状況の変化に応じて適宜見直しを行うとされつつも,審議事項1の方で,法制度や関連施策に関する基本的課題に関することを検討すべきとされておりまして,その例としまして,中間まとめにおける検討課題やリーチサイトへの対応が挙げられてございました。

その後,知的財産推進計画など,政府全体の計画が策定されておりますので,まずそちらを御紹介したいと思います。参考資料3をお願いいたします。まず「知的財産推進計画2017」でございますけれども,こちらは大きく三つの柱で構成されております。1番が第4次産業革命の基盤となる知財システムの構築,後ほど御紹介しますが,2番が知財の潜在力を活用した地方創生とイノベーション,そして3番がコンテンツ力の強化という作りになっております。著作権との関わりのある部分について,かいつまんで御説明申し上げます。

まず1番の第4次産業革命関係でございますが,問題の所在などは飛ばせていただきまして,結論の部分だけ御紹介します。9ページをお願いいたします。まず,AIの作成・利活用促進というテーマの中で,特定当事者間を超えた学習用データを提供・提示する行為につきまして,権利制限規定の中での設計や運用の中で検討を進めるとされております。それから,一つポツを飛ばしまして,著作権法の柔軟性のある権利制限規定につきましては,本年4月の分科会報告書を受けた対応を速やかな法案提出に向けてするというふうになっておりますとともに,ガイドラインの策定,著作権に関する普及・啓発及びライセンシング環境の整備促進などの措置を講ずるとされております。このほかにも,権利者不明等の場合の裁定制度の充実ですとか,円滑なライセンシング体制の整備・構築,そして次のページのクリエイターへの適切な対価還元,教育の情報化の推進といった昨年度来の継続課題が挙げられております。

それから,ここには御紹介しておりませんけれども,関連するものとしまして,一つ目の柱の中で知財システム基盤の整備ということが言われておりまして,そこでは,主に特許を念頭に置かれたものだと承知しておりますけれども,証拠収集手続に係る法改正を視野に入れた検討ですとか損害賠償額の適正化といったことが今年度検討課題として挙げられておりますので,この点も著作権に関連するものとして注視しておく必要があろうかと思います。

それから,二つ目の柱,地方創生とイノベーションという中で,知財教育,知財人材育成の推進が言われております。こちらも14ページのポイントのみ御紹介しますけれども,知財教育関係で,教材等の充実ですとか国民への普及・啓発等々が言われております。

そして三つ目の柱,コンテンツ力の強化でございますが,こちらも22ページの結論部分だけ御紹介します。テーマとしましては,権利処理の円滑化,インターネットを活用した放送コンテンツの提供に関する課題の検討,模倣品・海賊版対策といったものが並んでおりまして,23ページの方では現在御審議いただいておりますリーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応につきましても引き続き挙げられております。また,3番,デジタルアーカイブの構築の方では,今期は24ページの下の方にありますように,分野横断統合ポータルの構築の推進,そして産学官の代表が集まる場の整備といった対応を政府全体としてやっていくというふうになっておりまして,そのうちの著作権に関する部分につきましては,26ページにございますように,従来御審議いただいてきた事項に係る著作権制度の整備や権利情報データベースについてここで定められております。

また,このほか,「未来投資戦略2017」ですとか,29ページ,「規制改革実施計画」,それから「官民データ活用推進基本計画」といったところで,関連するテーマがそれぞれ記載されております。

「規制改革実施計画」につきましては具体的な御説明を申し上げたいと思いますので,少しそちらの方に飛ばせていただきたいと思います。「規制改革実施計画」では,平成27年4月から高等学校で解禁された「同時双方向型の遠隔授業」における著作権制度上の課題について検討を行い,必要な措置を講ずるということが,本年6月9日にまとめられたという状況でございます。

4月26日に分科会報告書をまとめた際,規制改革推進会議の関係で様々な議論がございまして,その簡単な経緯と,著作権分科会としての検討結果をまとめたものが参考資料5でございます。4月21日に法制・基本問題小委員会で報告書の御議論を頂いた後に,25日には規制改革推進会議から別途御意見を頂きまして,その後,分科会に場を移して議論が進められた上で6月9日に規制改革実施計画が閣議決定されまして,その内容を踏まえて著作権分科会としての考え方をおまとめいただいたということでございます。

その議論の過程で述べられていた問題意識としましては,高等学校で解禁された当該授業形態につきましては,報告書の方針上は新たに補償金請求権を対象とするような公衆送信行為に当たるという整理がなされるわけですが,それを補償の対象とすべきかどうかといったことですとか,また,そうした場合に,結果として取扱いの差がある複数の行為間においてディスインセンティブの問題が生ずるのではないかといった議論が規制改革推進会議の方でなされたところでございます。

これを踏まえまして,著作権分科会の方で御議論いただきまして,まとめた結論が参考資料5でございます。本日は結論のみ御紹介しますと,法律上の手当てとしましては,補償金請求権の対象範囲は4月の著作権分科会報告書でおまとめいただいたとおり,新たに権利制限の対象となる公衆送信を全て補償の対象とすることが適当であることを改めて確認いただいた一方,高等学校の遠隔授業の推進という観点から,例えば補償金制度の運用に当たって包括徴収型を採用することですとか,あるいは高等学校の遠隔授業が離島や過疎地での教育格差の是正という意義も有しているといったことも踏まえまして,教育政策上の意義や著作物の利用実態に照らして適切な対応がなされるよう関係者に要請するといった運用面の対応をしっかり行っていくという方向性が提言されております。

それからもう一点,参考資料4では著作権分科会(第1回)における議論を整理しておりますので,こちらもかいつまんで御紹介したいと思います。参考資料4の1ページの一番下のパラグラフのいわゆる直リンク問題について,これは他のサイトの画像や動画を自己のサイトに直接リンクさせて,そこで表示させるというのを,ちょくリンク,ないし,じかリンクと言われているようでございますが,この点につきまして権利者関係団体の委員の方から問題意識が提示されたということでございます。2ページ目の一つ目の丸にございますように,直リンクが多大な不利益を生じているというふうな評価をされておられまして,今年度,実態を調査し,法改正などの検討もすべきであるというような御意見でございました。このほか,私的録音録画補償金制度についてのスピード感を持った対応を求める御意見ですとか,それから著作権教育・普及啓発に関する御意見が非常に多く寄せられたところでございます。

それでは,以上を踏まえまして,今年度御審議いただきたい内容につきまして御説明申し上げたいと思います。資料1をお願いしたいと思います。今期検討課題の柱としましては6点掲げさせていただきました。

とりわけ,1番の方が新たに掲げさせていただいたものでございますので,こちらを重点的に御説明申し上げたいと思います。1番は,法の適切な運用環境の整備でございます。

まず,問題の所在でございますけれども,平成29年4月の報告書におきまして,「柔軟性のある権利制限規定」の整備が提言されたところでございます。我が国にふさわしい適切な柔軟性と明確性のバランスを持った複数の規定により対応するということでございました。その際,抽象度の高い規定を採用する場合,それから個別・具体性の強い規定を採用する場合,いずれの場合におきましてもソフトローの活用によってより運用を円滑化していくということの意義が指摘されたわけでございます。また,こうしたことの前提としまして,そもそも著作権法に関する理解を国民が十分に有しているということも必要性が言われたわけでございまして,同報告書では,まだその普及状況が極めて低い水準であるというような問題意識から,取組の充実が求められたわけでございます。また,法の運用面の課題につきましては,教育の情報化の推進等に関する検討課題においても同様に挙げられてきたわけでございます。これらのことを踏まえまして,平成29年報告書で提言した法改正を契機としまして,ソフトローの活用,著作権に関する普及啓発,ライセンシング環境の整備など,法の適切な運用環境の整備に係る取組を総合的な見地から進めていくということが求められるとしております。

具体的な取組について(2)で記述していますが,ソフトローにつきましては,既に調査研究などにおいても一定程度整理がなされているわけでございまして,今後の取組としましては,その成果も踏まえつつ,著作権分野の特質も踏まえたソフトロー形成に当たっての考慮すべき点ですとか公的関与の在り方などについて,更に検討を深めていくことが適当であるとしております。また,教育目的の著作物利用については,既に関係団体間での取組,ガイドライン策定に向けた取組の方針が表明されてございますので,これを進めていくということも書かせていただいております。

マル2番,普及啓発につきまして,こちらはまずは課題の整理から始めることが適当であると書かせていただいております。

マル3番,ライセンシング環境の整備につきましては,これは主に教育目的の著作物利用という具体的ニーズを念頭に置いて検討することが有意義であろうと考えておりまして,今般の関係者の取組の状況も踏まえまして,今後,諸外国のライセンシングや補償金の状況なども見ながら検討を進めていくことが望ましいのではないかというふうに考えております。

以上の三つの課題につきまして,検討が円滑に進むように政府としましては関係者の取組状況の把握とともに,並行して情報収集や調査研究などを行うというふうにしております。本小委員会としましても,その状況を踏まえまして,別途,今後議論いただきたいと思っております。

続きまして,2番,教育の情報化の推進でございます。

今後取り組むべき事項のうちマル1,法の運用面の環境整備につきましては先ほど簡単に御紹介申し上げましたので,割愛させていただきます。

次に,5ページのマル2,教員,教育機関間の教育目的での教材等の共有につきまして,これは平成29年報告書におきましても権利制限規定による対応の是非といったことについて一定の検討経過がまとめられているわけでございますが,今後,教育現場における教材等の共有についてのより詳細なニーズの把握を行った上で,当該ニーズを基に検討をお進めいただきたいと思っております。

次に,3番,障害者の情報アクセス機会の充実でございます。

(2)今後取り組むべき事項におきまして,平成29年報告書の状況を改めて記載させていただいております。今後,残された課題でありますところの放送番組へのアクセス機会の充実に関する要望につきまして,文化庁も関わりながら,協議が円滑に進むように取り組んでまいりたいと思っております。小委員会におきましても,協議の進捗を注視しつつ,適切な時期に改めて検討を行っていただきたいと思っております。

それから,4番,権利者不明著作物等の利用円滑化でございます。

今後取り組むべき事項としては,3点掲げております。まず1点目,著作権者不明等の場合の裁定制度につきましては,先般御紹介申し上げたとおり,オーファンワークス実証事業実行委員会における取組が進んでおります。今年度も引き続き当該事業を実施していくということとしてございます。

二つ目,権利情報の集約化に関しましては,本年度,文化庁の予算の新規事業としまして,「コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業」を開始したところでございます。こちらにつきましては,次のページでございますけれども,まず音楽の分野から既存の管理事業者等が有する権利情報を集約し,さらに自己管理されているようなものも含めまして,一括検索できるプラットフォームの構築を目指すというふうになってございますので,これらの取組の着実な実行を求めるというふうにしております。

それから,拡大集中許諾制度につきましては,2年間にわたりまして諸外国及び国内法体系との関係についての調査研究を行ってきたところでございまして,今後この制度の可能性などを含めまして議論をしていただきたいと考えております。

それから,5番,リーチサイトへの対応でございます。

これも既に継続課題として取り組むこととなっておるわけでございまして,本日も早速議論いただきたいと思っているわけでございますけれども,プラットフォーマー等へのヒアリングを行った上で,表現の自由への過度な萎縮効果を生じないよう配慮しつつ,法制面での対応を含め対応方策について検討していくというふうにしております。

最後に,6番,新たな時代のニーズに対応した制度等の整備でございます。

ちょっと話はそれますが,そもそも1から5の全てが新たな時代のニーズに対応した制度等の整備というテーマに合致するのではないかという御指摘も実は頂いたりはしておるのですけれども,これまでの審議会の経緯上,6番は,柔軟な権利制限規定の整備などに関する議論を契機としまして,ニーズ募集に対して寄せられた110程度のニーズの整理の結果を受けて検討していくという,まとまりのある検討対象や方法を「新たな時代のニーズに対応した制度等の整備」という一つの固まりのテーマとしてこれまで検討がなされてきたものと捉えておりまして,やや分かりにくいのでございますが,継続性の観点からこのような表現を引き続き採用させていただいております。

今後取り組むべき事項でございますけれども,残されたニーズにつきましては,2パラ目にありますように,三つの観点から分類整理が既に行われているところでございまして,今後,ニーズの分類や優先度を考慮しつつ,順次検討を行うことが適当であるとしております。また,ニーズ募集に寄せられた権利制限以外の政策手段による対応を求めるというニーズにつきましても,今後必要に応じて検討を行っていくべきであるとしております。

御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま事務局より説明いただきました本小委員会における今期の審議事項につきまして,御質問,御意見等がございましたらお願いをいたします。中村委員,お願いします。

【中村委員】前回の提言,柔軟性のある権利制限規定など非常に重要な提言をしたわけですけれども,それを更に一歩進めるための待ったなしの論点が数多くあると思いますので,早く取り組みたいと考えます。しかし,その前に,現在準備中の法案を実現するということが我々にとっても第一の課題ではないかと考えます。事務局は法制局をはじめとして政府内の対応に汗をかいてくださっていますけれども,先ほど報告がありましたように,規制改革会議などへの対応にも追われているということでございます。当会議としても,制度実現に向けて動いたり,サポートしたりするということがもしできるのであれば,何らかのアクションを起こしてもいいのではないかと考えるところです。

それからもう一つ,1ポツですけれども,ガイドラインの整備については法制度と並んで非常に重要だということを以前申し上げたことがあるのですけれども,それを含むソフトローの活用というのは大事なテーマだと思います。それから,著作権教育の拡充も知財本部でも随分議論をしてきたのですが,こうした法制度以外の様々な手法を使って効果を上げていくというスタンスは,ほかの行政分野では普通に行われているものでございますので,著作権行政もスタイルを広げて成果を上げていくというスタンスがいいのではないかと思います。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。

じゃ,続けて,前田(哲)委員,お願いします。

【前田(哲)委員】今回の進め方(案)の中に出てくるソフトローという概念につきましてちょっと御質問をさせていただきたいと思うのですけれども,このソフトローという概念は平成29年の報告書の中でも使われているかと思います。一般的には,ソフトローとは,法的な強制力がないにも関わらず現実の社会において何らかの拘束力を持って従われている規範というような意味で使われることが多いと思うのですけれども,進め方(案)におけるソフトローとは,著作権法とは別個の規範を作るという意味ではなくて,著作権法自体において,権利者の利益を不当に害さないとか,本来的な利用に該当しないとか,要件が抽象的に定められている場合に,著作権法の解釈の指針を示すことを目的としたものを何らかの形で示すものという理解でよろしいでしょうか。本来ならそれを示すのは司法の領域であり,判例の集積によって明らかにされていくべきものかもしれませんけれども,判例の集積を待っていてはなかなか規範の明確化が期待できないところもあるので,著作権法の解釈指針を何らかの方法で示していこうと。そういった意味でのソフトローというふうに私は思ったのですが,そういう理解でよろしいでしょうか。

【土肥主査】じゃ,事務局,お願いします。

【秋山著作権課長補佐】事務局としてもそういうふうに理解しておりますし,また,審議会での議論の過程でも,現行規定の不明確な部分を補ったり,あるいは過度に文理上,厳格な部分を運用上より使いやすくしていくという観点から議論がなされておったと承知しておりますので,御指摘のとおりかと存じます。

【土肥主査】前田(哲)委員,今のでよろしいですか。

【前田(哲)委員】はい。

【土肥主査】ほかに。じゃ,井上委員,どうぞ。

【井上委員】教育の情報化のところで,法の運用面の環境整備ということが記載されていますが,誰が,どのような場で,どういったプロセスでそのルールを決めていくか,規範を決めていくかというのが非常に重要だろうと思います。この資料の全体として見ますと,4ページでは,関係者による取組状況を随時把握し云々と書かれており,また,法の運用面の環境整備の3行目をみると,権利者団体と利用者の間の2者間の交渉によって決めるのが基本であり,そこに一定程度,公が関与していくというような形で整理されています。

しかし,例えば教育の情報化の補償金制度の問題についてみると,単に権利者と利用者である教育機関の間で合意をすればいいという問題にはとどまらず,教育政策という公益的な問題も関わってきます。また,教育の公費負担なども考えると,公の財源の問題もあります。そうしますと,権利者側と利用者だけをステークホルダーと考えて,その合意を過度に重視するのは妥当ではないような気がいたします。

現在,社会のあらゆるセクターで,ルールを決めるプロセスの問題,ルールを設定する場のガバナンスの問題が論じられており,大きな変革がなされつつあります。これに関して注目されるのは,昨今様々な領域で活用されているマルチステークホルダープロセスという手法です。2者間の交渉では合意形成が難しい,あるいは妥当な結果が導けないタイプの問題について,幅広いステークホルダーが関わって合意を形成していくという考え方です。このようなプロセスを経ることで策定されたルールは,参加したステークホルダーの理解が得られやすく,ルールの実質的な正統性も確保できるといわれています。ガイドラインの策定等による環境整備,教育関係の補償金制度の構築の場面では,ルール策定のプロセス,ガバナンスの在り方を少し考えていただきたいと思います。

【土肥主査】ありがとうございます。

じゃ,大渕委員。

【大渕主査代理】資料1にありますように「柔軟性のある権利制限規定」の整備が必要ということを文化審議会としてはお示ししたわけですが,それを最終的には法律に作り込んでいくというプロセスが一番重要であり,今,著作権課の方でもそこに一番マンパワーが掛かっているかと思いますので,それ以外に審議会の方で著作権課に御負担をお掛けするのはよくないと思われます。まさしく本体の法律は今から作り込みが法制局対応など非常に大変かと思いますが,それの援護射撃的というか,新たな法整備のための検討というよりは環境整備的な話も成果物である法律作りとうまく組み合わせてやっていただければと思います。

その関係で,これもどなたか言われたように,前から2ページにあるソフトローという言葉が,ソフトローというのは本当はローではないので,事後従犯が従犯ではないのと同じで法律家的にはやや引っ掛かるところなのですが,これは御趣旨としては先ほど御質問にお答えいただいたようなものだと理解いたしました。我々が一番ソフトロー的なものと考えるのは,法律がないところにも業界慣行等で法律と類似のものが走っているような状態であり,それは検討の課題としては興味深いのですが,恐らくここで考えているのはそのような話ではないと思います。ソフトローという言葉は世間の通りもいいのですが,ぱっと聞いた人は著作権法がカバーしていないところに事実上働く規範のようなものというイメージで捉えることも多いので注意が必要であって,一番分かりやすい言い換えはガイドラインではないかと思われます。

私は,以前から何度も発言していますが,31条1項2号で,図書館の資料の保存のために必要がある場合というのは,例えば昔は,彫刻の鼻が落ちかかってから資料の保存と思っていたが,本当はもっと早い段階から保存した方がいいということであります。これは公権解釈の変更ということかもしれませんが,そのようなことは本体ではないが重要なことなので,そのあたりはそのようなものであるというところをもう少しクリアに出していただいた上で,これもどなたかおっしゃいましたように,ガイドラインは民民で作って,それを検討する場を政府の方でサポートしていくということになろうかと思います。そのようなところを着実に進めていくことが,教育啓発など,まさしく環境整備ということになるのだと考えております。

今はとにかく柔軟な権利制限を確実に法律化するというところが一番重要なので,まずはそこに集中していただいて,今言ったような環境整備的なところを援護射撃的にやっていくというところがエネルギーバランスとしてよいのではないかと思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。

ほかにございますか。奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】ほかでよろしいのですか。ソフトローでなくても。

【土肥主査】いや,御自由に。資料1に関してはどうぞ。

【奥邨委員】基本的には,私,この内容で結構かと思います。また,中村委員からありましたように,この前の報告書の内容の立法化に向けて御努力いただきたいということについてもまさしくそのとおりだろうと思います。

あと1点ありますのは,この中で,ライセンシング環境の整備ということが出てまいります。今後,権利制限規定の部分,それから,そうではなくてライセンスでやる部分ということで,いろんな形で,補完し合ってやっていくのだろうなと思うのですけれども,そうなると,ニーズの中で昔から出ていて,B-1なので必ずしも今年やらなきゃいけないということではないのでしょうけれども,元々出ているし,十何年前から声としてはあったということで言えば,特許法におけるライセンスには当然対抗という制度があるわけですけれども,著作権についてはその辺どうなのか。今後,ライセンスがどんどん活発になっていくということになると,何らかのことを考える必要もあるのかもしれないと。例えば,プログラムですと,一つのものに特許権と著作権の両方の権利が存在するわけですけど,特許の方は当然対抗でいいのだけれど,著作権の方はちょっとどうなるか分からないというのは,どんどんライセンスを整備していく中ではもしかしたら不都合があるかもしれない,又はないかもしれないということも含めて,ライセンシング環境の整備という中で少し検討をしていってもいいのかなという気はいたします。

以上です。

【土肥主査】今,奥邨委員がおっしゃったのは,六つの柱があるわけですけれども,この六つの柱の中のどこかでという意味ですか。それとも,新しい柱としてと。

【奥邨委員】すみません。柱ということかどうかちょっとよく分からないのですけれども,ライセンス環境の整備と書いてありましたので,環境の整備に一部になるのかもしれませんし,別かもしれませんし,その辺の整理はそこまでよく分かりませんが。

【土肥主査】ありがとうございました。

松田委員,どうぞ。

【松田委員】私も同じ意見を持っております。23年の方で特許と実用新案と意匠は当然対抗制度ができていて,これはもちろん,特許等の特性の問題からその範囲内になっているわけでありますけれども,もう少し前提で考えるならば,そもそもライセンス契約,それから債権法と物権法の我々が従前考えていた制度といいますか,原理というものが,果たして現段階で当てはまるのだろうか,ないしは修正が必要なのだろうかということを考えますと,著作権法もライセンスというところでやっぱり当然対抗制度を導入すべきかどうかということは議論はしてみて当然ではないかなと思っております。そのことと併せて考えるならば,ライセンスから生じますところの独占的な利用をする権利,これが果たして独占的という状況になっている契約においては差止め請求権をこの地位に与えるべきかどうかという議論も併せて,ライセンスを前提として考察してみる必要があるのではないかと思っております。もちろん,工業所有権等との違いというのは両方の制度を考える場合にも著作権固有の問題があることは承知しておりますけれども,2ページのライセンシング環境の整備というところではこの2点を考えてみる必要があるのではないかというふうには思っております。

【土肥主査】ありがとうございました。

この点に関してですか。どうぞ。

【大渕主査代理】今の2点とも,タイミングの問題は別にすると,私は大賛成です。特許法の当然対抗制度は平成23年改正で,産業構造審議会で私も関与いたしましたが,あれはローマ法以来の一般則に変更を与えるということで大議論がありました。よく考えると,ローマ法というのは有体物についての法しかなかったので,ローマ法以来の一般法というのはローマ法以来の有体物についての一般法だから,実は特許についてはそもそも関係ないという点からして議論が大きくずれていたのを,あそこまで持っていったわけであります。特許の場合にはほとんど利用されていなかったけれども,通常実施権については登録制度があったのに,著作権の方はその点すら問題になっているわけなので,非常に根深い問題で,特許以上にやりにくいところがあるかと思いますが,そのようなものほどどこかの段階で始めるべく,何か頭出しぐらいはしておくことが必要だと考えております。ただ,先ほど申し上げたように,今は柔軟性のある権利制限規定の法案化に大変で,著作権課に御負担を掛けるべきではないのですが,頭出しぐらいしておいて,将来の課題として残しておくということもあり得るのではないか思われます。

それと,もう一つ言われた差止め請求権について,出版権の議論のときに差止めを認めるには出版権のような物権を拡大するしかないという話だったのですが,私は何度も申し上げたとおり,そのようなことはなかろうと考えております。特許ですと独占的通常実施権で,こちらに持ってくると独占的ライセンスないし独占的許諾という話になるかと思うのですが,元々,独占的というのは排他的という意味なので,排他性を実効性あらしめるためには差止めというのはむしろ不可欠なものだと思っております。実は特許法の平成23年改正のための事前検討の際には独占的通常実施権というか,独占的ライセンスに基づく差止めというのはできかかる寸前まで行っていたのですが,御案内のとおり,平成23年改正は,再審制限,冒認から始まって,ライセンスの当然対抗制度まで,余りに盛りだくさんだったので,そのときにはあまりの負担のために仕方がないからというので先送りしたところ,その後ほかが忙しくて進んでいない状態かと思います。

そのような大きなテーマなので,大賛成なのですが,今これをやり出すと,本体の方に影響することが心配ではあります。そのような長期的なテーマもきちんと議論しないと,文化審は何をしているのだと言われてしまいますので,きちんと念頭に置きつつも,今は教育なり柔軟な権利制限の実施の方に集中して,その環境整備に努めるということが適当ではないかと思います。それと同様に教材の共有なども今すぐにはできずに将来の課題になるので,そこのところは将来の課題としてきちんと示しつつ,今,何に集中すべきかということを考えていくのがよいのではないかと思っております。

【土肥主査】どうぞ。末吉委員。

【末吉委員】今,2ページのライセンシング環境の整備等についていろいろ深まった議論を頂いていると思うのですが,ちょっと違った観点から申しますと,このペーパーでは7ページの権利者不明著作物等の利用円滑化の(2)の取り組むべき事項のところに大きく三つ掲げられていると思います。一つがオーファンワークス実証事業でありますし,二つ目がコンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業でございますし,三つ目が拡大集中許諾制度の検討だろうと思います。これはまだプリミティブな段階ではございますが,私の理解では,これは大きく育てて,是非ライセンス環境の整備等につなげていくというのが我々の大きな課題ではないかと思うので,是非これについて,推進方,あるいは御支援をお願いしたいというのが私の意見でございます。

以上でございます。

【土肥主査】ありがとうございました。

当然対抗の問題というのは,私の理解では,特許法よりも前に著作権法の審議会において問題になったわけであります。特許の場合ですと,基本的には事業者間の問題になってきて,もちろん事業者といいましても技術に関する事業者の問題になってくるわけでありますけれども,著作権の場合にはコンピュータープログラム関係のそういう業界の方が,この当然対抗の問題,契約書の存在をもって対抗力を認めるという,そういう御主張をなさったのを記憶しておりますけれども,音楽とか映像とか様々な著作物の領域がございまして,必ずしもそのあたりが一枚岩というか,業界の方々の御理解,そういったものが一致するわけではないということでございまして,恐らくこの問題は非常に重要なのですけれども,少し時間を掛けて関係者あたりに少し当たりを見ていただかないと,なかなか議論をすることが難しいのではないかなと思います。しかし,いずれにしても,いつかはこの問題をやる必要があるのだろうと思います。

それから,ソフトローの問題なのですけれども,当事者間協議,ガイドライン,そういったものも含めてここで捉えているわけでありますけれども,これは今期の本小委における検討課題,審議事項,こういったことの文脈の中で出てきておるわけでございまして,そういう問題についてどの時期にこういったソフトローに関する当事者間協議,あるいは教育の情報化,あるいは障害者の方々の情報アクセスへの改善の問題,こういったようなところに恐らくこういう問題が出てくるのだろうと思いますけれども,そのことに関しては現在いろいろガイドラインとか協議が進んでおろうかと思いますので,事務局におかれましてはそういったものをよく注視していただきながら,時期を捉えて,この審議会において出していただければというふうに思います。本日の検討テーマとしては,リーチサイトの問題が次に出てくるわけでございますので,この問題については今期の重要な検討課題として認識をしておるところでございます。

そういう受け止め方の中で,1から6までの検討課題,あるいは進め方,こういったことについて皆様に御了解いただければ,私としてはといいますか,ありがたいなと思っておりますけれども,基本的にはこの検討課題及び検討の進め方,先ほど来出てくる当然対抗の問題あたりをどういう形でやるかということなのですけれども,恐らくこれは非常に大きな話になってきますので,かなり時間が掛かってくるのではないかなと思います。ですから,リーチサイトの次ぐらいになるのではないかなと思うのですけれども,先ほど出てきました独占的使用権の問題とか,いろんな話もこのあたりに出てくると思いますし,いろいろな考え方が恐らく出るのではないかと思いますので,そういうテーマの重要性については委員の皆様の認識の中で共有していただいて,時期を見るということにさせていただければと思います。

大体そういう形で捉えさせていただいて,よろしゅうございますか。

それでは,そのような形で今期は,資料1でございますけれども,基本的にはこれに沿って進めていきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

それでは,本日の重要なテーマでございます,リーチサイト等への対応に入りたいと思っております。本課題につきましては,昨年度より関係団体からのヒアリングや議論を行ってまいりましたけれども,今回はプラットフォーマー等の方々にお越しいただいております。本日は,参考資料6にございますように,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為に対する取組の現状や,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為について法制面での対応を強化することの是非等についてお話を伺いたいと思っております。

本日の流れといたしましてですけれども,まず5団体の皆様に御発表いただきまして,最後にまとめて皆様から質疑応答の時間を設けさせていただきたいと思っております。時間の関係上,各団体の御発表時間は10分ぐらいと考えておりますけれども,そのあたりは適宜よろしくお願いしたいと思っております。

では,早速,御発表をお願いしたいと思いますけれども,最初にヤフー株式会社の門野様からお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。

【ヤフー株式会社(門野)】ヤフー株式会社の門野と申します。本日はよろしくお願いいたします。

本日は弊社における権利侵害に対する取組及びリーチサイトへの対応についての意見を御説明させていただきたいと思います。お手元の資料2の方を御覧いただければと思います。

まず資料の1ページ目となりますが,弊社の権利侵害に対する取組について御説明させていただきます。弊社においては,CGMサービス,知恵袋やブログなどを運営しておりまして,そのようなCGMサービスにおいてはプロバイダ責任制限法にのっとって,著作権侵害に限らず,広く権利侵害一般を理由とする削除や発信者情報開示の申告に対して対応しております。このような申告を,権利者などから受けた場合においては,社内において権利侵害の有無等を慎重に検討しまして,権利侵害があるというふうな判断ができる場合においては削除等,適切な措置を講じさせていただいております。

なお,削除申告のうち,書面によるものになるのですけれども,著作権侵害を理由とする申告につきましては,数としては年に10件程度ございます。その侵害理由の内容としましては,ほとんど全てが無断転載,複製権侵害などを理由とした削除申告となっております。特にリーチサイトを理由とした削除の申請が来ているということは現状ございませんでして,また,リーチサイトに特化した取組を弊社の中で行っているということも現状はございません。

なお,付言させていただきたいのですが,弊社においては正規配信の拡大やユーザーへの教育というのも,間接的ではございますが,権利侵害の対策としては非常に重要というふうに考えておりまして,そのような取組の方も積極的に実施しております。

次に,2ページの方を説明させていただきたいのですけれども,弊社のリーチサイトへの対応についての意見というのを述べさせていただきたいと思います。こちらに書かせていただいているのですけれども,弊社といたしましても,権利者への正当な利益の還元という観点からも,一定のいわゆる悪質なリーチサイトによる被害の拡大という点については誠に遺憾であるというふうに感じております。もっとも,一方で,インターネットが広く利用されている現代においては,リンクを伴う形で自己の意見を述べたりするような表現行為というものについては,個人を含む広くインターネットユーザーの間で定着している表現行為と言えるというふうに考えておりまして,ほぼ一般的な表現手法になっているというふうに言えると考えております。このようなインターネットにおけるリンクを用いたコミュニケーションの現状を踏まえますと,リーチサイトに対する安易な法制面での規制強化を行うことというのは,国民の表現の自由に対して甚大な萎縮効果を招くおそれがあるという点については懸念しているところでございます。ですので,表現の自由の重要性などを加味しますと,弊社としましては,リーチサイトの法制面での規制に当たっては,国民の表現の自由とのバランスや表現の自由に対する萎縮効果を十分に考慮して慎重に検討を進めていただきたいと考えております。

次の3ページ目に参りまして,法制面でのリーチサイトに対する規制を行うに当たり,弊社として十分に御議論,御検討いただきたいと考えている事項について説明させていただきます。弊社としましては,法制面での対応というのを検討する前提としまして,本委員会で対応の有無について問題となっているリーチサイト若しくはリーチアプリというものを一定程度定義付ける必要があるというふうに考えております。弊社の認識としましては,本委員会で規制の対象とすべきか否か問題となっているリーチサイトというものは,ここに記載させていただきましたとおり,曲やマンガなどを違法にアップしているファイルへのリンクを多数掲載しているサイトであるというふうに認識しております。すなわち,違法ファイルへのリンクばかりを多数掲載し,違法ファイルの拡散を助長しているというふうに言える,又は海賊版の窓口になっていると言える,広告掲載などによりサイト運営者の営利目的などが明らかになっていると言えるなど,一見して極めて悪質なサイトについて規制すべきか否かを御検討していただいているというふうな認識でおります。

一方で,先ほども述べさせていただいたとおり,リンクを伴う表現行為というものは広くインターネット上の表現行為として一般的に用いられるものになっておりまして,例えばSNS,Twitter,ブログなどで自分の好きな曲などに対する感想や評価などを記載したコメントとともにリンクを投稿する行為などというのは,今,インターネットユーザーの中で一般的に行われている行為となっていると考えております。このような行為までもが法規制の対象となるということは,表現の自由の観点からも厳に避けなければならないのではないかというふうには考えております。

このようにリンク掲載行為に関しましては,悪質なリーチサイトと判断されるものから,一方でSNSへの1件の投稿まで,様々な形態の行為があると考えられます。そのような状況の下では,法制面における規制においては,問題となっている悪質なリーチサイトのみが規制の対象となるように法規制を行うことというのは困難な部分ではないかというところを弊社においては若干懸念しているところでございます。

弊社の懸念点について少し詳細に述べさせていただきたいと思います。次の4ページの内容になるのですけれども,仮に法制面で悪質なリーチサイトについて規制を行う場合においては,表現の自由の観点から,国民が自らの行為が適法か否か,その行為をする前に十分に判断できる程度に法文を明確に記載する必要があるというふうに考えております。つまり,自らの行為の適法性が確認できない以上,国民の表現の自由に対する萎縮というのは避けられないものというふうに認識しておりまして,規制対象となる悪質なリーチサイトというのを法律上明確に定義する必要があるというふうに言えるのではないかと考えております。しかし,悪質なリーチサイト,先ほど図に示したようなものをイメージしていただけるとよろしいと思うのですけれども,そのようなリーチサイトを定義付けるとなると,要件設定の部分である程度の困難性が生じてくるというふうに考えております。

具体的には,リンク数等の客観的要素によってのみ線引きすることは不適切であるというふうに考えますし,客観的要素に加えて,情を知って,営利目的等の主観的要素を加味したとしても,悪質なリーチサイトの外縁というものはそれを法律の文言に落とし込む際にどうしても不明確になってしまう可能性が出てくるのではないかと考えております。

そのような状態,すなわち,違法と判断される行為が不明確な法規制となる可能性が若干程度高い状況においては,法制面での規制によると表現の自由への萎縮効果がどうしても生じてしまうのではないかという部分について,弊社においては危惧しているところでございます。

次の5ページに移らせていただきたいのですけれども,加えて,法制面での規制の是非を検討する際には,同時に現行法との関係についても十分に御議論を尽くしていただきたいというふうに考えております。これまで当小委員会においては,現行法下で悪質なリーチサイトの提供は侵害の幇助に当たるとの解釈が可能であり,損害賠償請求や刑事罰の対象になり得るとの議論がなされているところではございますが,仮にこの御議論のような結論になる場合に,現行法上でも対応が可能な悪質なリーチサイトについて,加えて新たな法制度を用いて規制する必要性があるのかという部分については,立法事実と絡めて慎重に検討していただきたいと考えております。

長くなってしまったのですが,最後に,弊社のリーチサイト規制に対する意見を簡単にまとめさせていただきたいと思います。6ページになるのですが,弊社としましては,最初に述べたとおり,一定の悪質なリーチサイトへの対応というのはもちろん講じるべきではないかというふうに考えているところでございますが,殊,法規制における対応については慎重に検討を進めていただきたいというふうに思っております。

具体的には,侵害サイトによる被害実態と現行法に基づく法執行の実態を十分に調査分析していただいた上で,その実態に照らして,真に立法事実があるのかというのを慎重に検討していただきたいと考えております。加えて,先ほど申しましたとおり,現行法でリーチサイトに対する対応が可能である場合には検討を極めて慎重にしていただく必要があるというふうに考えております。また,被害実態や法執行の実態に照らして,リーチサイトの法規制について,仮に立法事実が確認された場合であっても,一方の対立利益である国民の表現の自由とのバランスは十分に図る必要がございますので,国民の自由とのバランスを図るべく,その確認された立法事実に照らして適切な規制内容になっているのかどうか,表現の自由の萎縮にならないかどうかの点などを踏まえて,慎重に御議論を進めていただきたいというふうに考えております。

長くなってしまいましたが,以上で弊社の発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,続きまして,グーグル合同会社の山口様,よろしくお願いいたします。

【グーグル合同会社(山口)】グーグルの山口です。本日はよろしくお願いいたします。

皆様,貴重なお時間を頂きまして,ありがとうございます。お手元に,こちらの弊社でお配りしているレポート,ございますでしょうか。本日,こちらに従って,一部関係部分の抜粋でちょっと駆け足で御説明させていただきたいとは思うのですけれども,たくさん日本の権利者さんの事例を含め,インターネットの特性を生かして著作権をどういうふうに活用してビジネスチャンスにつなげていくかというお話を御紹介させていただいている部分もございますので,お時間がもしあるときに見ていただければありがたいなと思います。

それでは,説明に移らせていただきます。弊社といたしましては,海賊版対策,こちらは非常に重要な問題と捉えておりまして,様々,対応策をとってまいりました。まだチャレンジが残っているのは事実と認識しておりまして,そういったチャレンジについても立ち向かっていきたいというふうに考えております。

私たちがインターネット上の海賊版対策を考えるときに,まずよりどころにする五つの原則がございます。こちらがお手元の16ページを御覧いただきたいのですけれども,より多くの優れた合法的代替手段を創造すること,「FollowtheMoney」アプローチ,効率的かつ効果的で拡張性があること,濫用防止対策,透明性の提供。様々なリソースを割いて海賊版対策をやっておるのですけれども,そのときにこの五つの原則に立ち返りまして,どういった対策が一番効果があるのか,意味があるのかというところを常に考えながら対策をとっております。

リーチサイトのようなものも含めて,効果があると考えている対応策を具体的に申しますと,ノーティス・アンド・テイクダウンというものと降格シグナルというものがございます。こちらは7ページと,それから,ちょっと飛んで37ページに詳細な記載がございますので,よろしければ御参照いただきたいのですけれども,グーグルでは,先ほどの原則にのっとって,権利者の方や管理団体の方から頂いたリムーバル・ノーティスというものを受け取った際に,効果的で拡張性を持って対応できるようなシステムを中で構築しております。弊社では,デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく権利者の方からのリクエストを受け取った際に,私たちがそういった違法コンテンツのURLというもののノーティスを受け取った際に,もちろんそれがきちんとしたリクエストであったらということですが,平均6時間以内に検索結果から見えなくするのみならず,そちらのデータを検索結果のランキングを決定するアルゴリズムに対するシグナルとしても活用しております。そのデータは,グーグルがたくさんのDMCAを受け取っているサイトに対して,そのサイトを検索結果のランキングから降格する仕組みというものが働きます。これが降格シグナルというものになります。つまり,もちろんリクエストを受け取った違法コンテンツにつながるURL自体は検索結果から削除いたしますし,そういったリクエストが多いサイトというものに対しては,ここで議論されているリーチサイトのようなものだと理解しておりますが,多くの場合,この降格シグナルというものが働きますので,検索結果のランキングが下げられるようになっております。これが現状,既にシステム上も構築しております仕組みになっておりまして,これは世界中で同じように動いております。なので,日本の権利者の方から頂いたリクエストもこういったような形で処理させていただいております。

さらに,先ほど6ページで御紹介した五つの原則の一つである「FollowtheMoney」アプローチにのっとって,DMCAによって削除されたコンテンツを含むサイトに対して,グーグルが提供するオンライン広告のシステムからも締め出されます。よって,サイトのオーナーにこれ以上資金が行かないようなシステムになっております。

とはいえ,グーグルは飽くまで検索エンジンなので,悪質なコンテンツを含むサイトを自分たちがホストしているわけではないので,そこに対する手出しというものは私たちにはできない状況ですが,違法なコンテンツやそういったものを,そういう意味では検索結果からの削除というものは検索結果から見えなくなるという状況なだけで,違法なコンテンツそのものはインターネット上に引き続き残り続けてしまうという状況です。私たちがどんなに降格シグナルを働かせたとしても,悪質なサイトの名前を知っていたりとか,それからURLを直接打ち込んでしまうユーザーはそういったコンテンツを見ることができてしまうというような状況になっております。

多くのユーザーの方が,例えば先日問題になったフリーブックスみたいなサイトの名前を簡単に知ることができます。既にそのサイトはもう閉鎖されているというふうに認識しておりますが,閉鎖される前であっても,誰かのブログの記事であったり,SNSの投稿であったり,そういったものを通じて,そういったものがあるのだということを簡単に知って,その名前であるとか,それから,非常に短いURLを使っていたようでしたので,簡単に打ち込んで,そのサイトに直接行ってしまうので,もはや検索エンジンを通さずに直接そういったサイトに行ってしまうというのが現状問題としてあるかと認識しております。

また,御存じのとおり,悪質なサイトのオーナーは,何か一つ禁止されるとすぐに違う手を考えます。ロシアでは,サイトブロッキングという手段を政府の方が導入した後に,もちろん検索からはブロックということで見えなくはなるのですけれども,今度は合法なアプリケーションですとか別のインターネットのサービス,ロシアの場合はメッセージアプリの中にそういった悪質なコンテンツが逃げ込んでしまったという事例があるそうです。彼らがそういった合法なサイトに逃げ込むというものも本当にいとも簡単にできてしまうことです。だからこそ,私たちはこうした悪質な業者のモチベーションになる資金源を絶つということが非常に重要だというふうに考えて,「FollowtheMoney」アプローチに取り組んでおります。

以上,弊社の海賊版対策に関する基本理念と今回の事案に関する具体的な取組を御説明させていただいたのですけれども,続いてリーチサイト対策に対する法的取組を強化することについてどのような意見があるかということで述べさせていただきます。

私たちとしては,非常に悪質なウェブサイトがインターネット上に残念ながら存在していることを認識しておりますし,こうしたサイトに対して何らか対策をとらなければいけないということは私たちも非常に重要なことだというふうに考えております。しかしながら,先ほど御紹介した五つの原則というものは弊社の外の皆様においてももちろん有効に考える指標としては御参考いただけるものなのではないかと思いますので,今後考えられる対策について,こちらの効果的・効率的であるものか,拡張性のあるものなのかなどの指標をもし御参考いただければ非常にありがたいなというふうに思うのが1点です。

また,現状では,リーチサイト対策のための法整備ということで,はっきりと具体的な案として今示されているというふうには認識していないので,そういう意味ではインターネットユーザーですとかエコシステムに対する具体的な影響というものをこの時点で測定するのは難しいかなというふうには思っているのですけれども,やはり,ヤフーさんもおっしゃっておりましたが,リンクを張るという行為自体はインターネットの基本的な技術ですので,これを規制してしまうということは,現在健全に合法に運営されているインターネットの掲示板ですとかSNSですとかほかのサービスが違法になってしまう可能性というのも十分にはらんでいるのかなというふうに感じておりますので,グーグルとしてはインターネットのエコシステム全体に悪影響を及ばせかねない法的なフレームワークに対しては懸念を表明させていただきます。

さらに,仮にリーチサイトというものを禁止したとしても,リーチサイトの先にある違法なコンテンツというものは引き続き存在し続けるわけなので,URLそのものとか,それからサイトの名前を使って,共有して,賢いユーザーが簡単にそういったサイトにまだたどり着けてしまうという状況は変わらないのではないかなというふうに考えております。ですから,グーグルとしては,違法なコンテンツそのものに対して対策を急ぐべきではないかと考えております。

先ほど御紹介した「FollowtheMoney」アプローチについては,既に高い効果が認められておりまして,イギリスの警察の方で知的財産対策ユニットがございまして,そちらの調べでは,広告収入を絶つことで95%の海賊版サイトを撲滅させることができたというデータを発表されています。現に2016年の3月には,ヨーロッパで最も有名な三つのファイル共有サイトが,広告によって収入を得られなくなったことが理由に既に閉鎖されております。この事案については14ページの方に索引等も載せておりますので,よろしければ御参照いただければと思います。

ほかにも弊社では,便利で内容も充実していて,かつ合法的な代替手段というものをユーザーに届けるということが海賊版と闘う重要な対策の一つというふうに考えております。そういった優良なコンテンツがインターネット上にたくさんあれば,グーグルの検索で検索していただいてもそういったものを出すことができるようになります。

また,多くの方がもう御存じだと思いますが,法執行機関が直接海賊版サイトのようなものを捕まえるということも非常に重要です。グーグルもインターネットが安心して使っていただける場であるために様々な対策というものを引き続き行っていきますけれども,そういった法執行機関の方の直接的なアクションというものも時として非常に有効に機能するというふうに考えております。先日もフランスとスウェーデンの警察が共同して,フランスで最も有名な違法サイト,こちらのオーナーである二人を逮捕したと報道されていたので,こういった国境を越えた捜査というものも他国では非常に重要視されておりまして,日本でも,グーグルとしてももちろん,令状などを頂ければ情報提供など日本の警察と協力しながら悪質なサイトをなくしていければと考えております。

以上で弊社の御説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

それでは,また続きまして,テレコムサービス協会の丸橋様,よろしくお願いします。

【テレコムサービス協会(丸橋)】テレコムサービス協会のサービス倫理委員会の委員長をしております丸橋です。

サービス倫理委員会はプロバイダ責任制限法のガイドラインの事務局もしておりますし,私は著作権関係ガイドラインの主査もしていたりしますので,そういう立場からの発表になります。委員会の会員社,あるいはテレサ協全体の会員社が送信防止措置を求める訴訟,あるいは任意の請求についてまとまった統計資料を持っていればそれを紹介するのが本来であるのですけれども,本日は,そういう情報がありませんので,ニフティの統計,実務などを紹介しながら,委員会としての意見を御紹介したいと思います。

ニフティはISPとして接続サービスもやっていますし,ブログ等のCGMサービスを提供しておりますが,まずめくっていただきまして3ページです。まず,著作権関係ガイドラインにおいてリーチサイトがどういうふうに位置付けられているかということです。プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定しています著作権関係ガイドラインは,リーチサイトを想定していないものです。したがって,リーチサイトにデッドコピーへのリンクが掲載されておって,リンク先でデッドコピーを実際に送信可能化している場合であっても,当該リーチサイト側にはガイドラインに基づく送信防止措置を講じることは困難な状況になっています。もちろん,例えば,出版社の団体が,信頼性確認団体として登録して,プロバイダに対して,デッドコピーのダウンロードサイト側への送信防止措置請求をすれば,現行法のままでもデッドコピーをホスティングしているサイト開設者への照会なしに送信防止措置を講じることが可能な場合はあるかもしれません。著作権関係ガイドラインに基づいてリーチサイトの任意の送信防止措置を実現するためには,著作権関係ガイドラインの改訂以前に,もちろんどのようなリーチサイトの違法性が容易に判断できるかについてのプロバイダと権利者団体のコンセンサスが必要になります。

4ページに行っていただきまして,ここからはニフティの実務ですけれども,まず任意での請求につきましては,検討協議会,ガイドラインの書式を使用した書面での請求を郵送で受け付けています。本人性確認等の形式要件を確認したことをもって受付が完了するわけですけれども,書面での受付のほかに,通報フォームからも受け付けたり,著作権侵害に限らずネット選挙の通報にも対応していたりします。青少年インターネット環境整備法の青少年有害情報の通報を受け付けるためにブログ内に連絡先メールを義務付けているというようなこともやっております。

5ページ目に,どういう通報フォームかというのを貼ってあります。左方,ブログ内に設置している通報フォームへのリンクというのは,必ず全ブログユーザーに強制的に通報フォームへのリンクが設定されておりまして,そこをクリックすると,右側の通報フォームが開いて,本人との関係とか,対象となるサービスとか,侵害された権利だとか,権利侵害情報の特定だとか,ネット上に本人の権利等の証拠がある場合には当該サイトのURLを張っていただくと。デッドコピーで,かつ本当にネット上だけで判断ができるような場合には,この通報フォーム一本で消すということも実際にはあったりはします。

6ページに行っていただきまして,削除依頼の受付後ですけれども,送信防止措置依頼の場合には,ガイドラインにのっとって対応して,送信防止措置が相当と判断した場合にはもちろん当該措置を講じていますけれども,その判断に至らない場合でも,会員規約に基づいて中間的な措置を講ずる場合があります。中間的な措置というのは,一時停止措置のようなものです。会員側が時差をもって反論してきたようなときに復活できるような措置をとることがあります。

めくっていただきまして,今度は数字の面ですけれども,7ページ。2016年度のニフティでの対応件数ですけれども,訴訟とか仮処分が17件あって,任意の請求が書面と通報フォームを合わせて382件,合計約400件あります。そのうち,送信防止措置が350件強ですね。400件のうち,著作権侵害関係が約12%です。

8ページに行っていただきまして,著作権侵害を根拠とする46件の行為態様の内訳ですけれども,先ほどもお話がありましたとおり,無断転載だというものが一番多くて,あと,信頼性確認団体からの請求が16件,違法なファイル共有に関するもの,これが発信情報開示請求になりますけれども,こちらが5件。それで,リーチサイトそのものではないのですけれども,リーチサイトに関係すると言えるものが1件だけありました。この辺は会員事業者とか大手のブログ事業者とも会話してみたのですけれども,ボリューム感としては1年に1桁を超えることはないというふうに聞いております。

それで,9ページから10ページに掛けて,リーチサイト関連と思われる事例を載せております。海賊版アニメサイトから『君の名は。』のダウンロード方法を紹介するブログ記事について削除請求があったものです。製作委員会の一社から,通報フォームを通じて,『君の名は。』のダウンロード方法を紹介するブログ記事があるから削除してくれという請求を受けたものです。ただし,この記事の内容はiPhoneでダウンロードするための技術的な手順を解説するのみで,アニメサイトにおける『君の名は。』に対する直接のリンクはなかったのですけれども,先ほど言いました中間的措置ですね。ブログ開設者に対して請求内容を伝えて,7日以内に見直しを行うように要求したところ,何の対応も行わなかったために,送信防止措置,実際一時停止なのですけれども,一時停止措置を行っているというところです。このサイトの性質としては,ダウンローダーアプリのアフィリエイトとしてこういう記事を書いたというふうに理解しています。

10ページ目です。この画面では,ダウンロードする方法お届けという記事を書いて,動画ダウンロードをするツールのダウンロードができるようなサイトに誘導するという記事です。以上が事例の紹介になります。

11ページ目から,主にニフティの意見を中心としたものを御紹介しますけれども,リーチサイトへの対応は基本的には現行法で十分可能なのではないかと。実務の紹介で述べたとおり,リーチサイトに相当するブログ記事等への対応依頼はまずボリューム的にないにも等しいものです。仮にそういうリーチサイトに相当するブログ記事だとかダウンロード関連ツールへの誘導記事の対応依頼を受けた場合は,会員規約にのっとって見直しを請求するなどして,結果的に送信防止措置を講じられることがほとんどではないかと思っています。したがって,現時点でリーチサイトについて現行法での対応以外に追加的な対応を行う必要性は少ないと考えております。仮にそういう追加的な対応を行って,リーチサイトに相当するような記事を迅速に削除できるようにしたとしても,ブログ等のサービスは無料で簡単に立ち上げられるために,結局は削除のイタチごっこになるだけで,海賊版被害対策の実効性は低いのではないかと考えています。先ほどから同様の意見が出ていますけれども,リンクを含む記事が著作権侵害になり得るとなると,ユーザーには少なからず萎縮効果が生じて,表現の自由が損なわれるおそれがあるという点については,ニフティとしてもそう思っています。

12ページですけれども,リーチサイトだけ取り上げて,パッチワーク的対応をするのがいいのかどうかというところについても考えた方がいいのではないかというふうに思います。ブログとかSNSとか,CGMサービスその他ウェブサービスを提供する事業者としては,パッチワーク的にリーチサイトに対応するよりも,間接侵害一般についての議論を深めていただくということを希望しています。ユーザーが直接的な著作権侵害を行った場合に,どのような要件でサービス提供事業者に差止めが認められるのかが明確になれば,事業者はユーザー参加型のウェブサービスのリスクを予見できますし,当該リスクを考慮して設計・開発・提供できるようになりますし,あるいはそういう送信防止措置についてもきちんと簡単に対応できるような設計自体が作れるということになると思うのです。その結果,イノベーションが加速すると考えます。

最後のページですけれども,当然ですけれども,悪質な違法アップロードサイトを直接取り締まるべきだと思います。実効性ある海賊版被害対策としては,悪質な違法アップロードサイト自体にダメージを与える方策を考えるべきでしょうと思います。民事上,刑事上の手段を駆使して,悪質な違法アップロードサイトも直接取り締まればいい,まずはそれが最初だと思います。海外にあるサーバーに対して何もできないという話はないと思うのですね。捜査共助,司法共助の枠組み,あるいは一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が運営するような監視・削除センターを活用していただくというようなことがいいのではないかと思います。それから,グーグルさんから出ていたように,違法アップロードサイトの収入減である広告収益を絶つ方法も有効なのではないかと思います。

テレコムサービス協会からは以上になります。

【土肥主査】ありがとうございました。

それでは,続きまして,日本知的財産協会の河野様,よろしくお願いいたします。

【日本知的財産協会(河野)】日本知的財産協会(JIPA)の河野と申します。本日は意見表明の機会を頂き,ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

JIPAについて簡単に御説明をさせていただきたいと思います。JIPAは,プラットフォーマーの団体ではございませんで,1,283社が参加している世界で最大のIP出願人・所有者の団体です。著作権に関するテーマについて議論しているプロジェクトや委員会がございますが,そちらには,お手元の資料にございますように,権利者側,利用者側,様々な業界の企業が参加しています。

リーチサイトへの対応について,JIPAでは実はまだ議論を始めたところという段階でございまして,今回ここで御発表させていただく意見は現段階でJIPAにある意見を御紹介するというものになっておりますので,御承知おきいただければと思います。

リーチサイトへの対応についてのJIPAの意見です。まず,リンクはインターネットにおける極めて重要な機能ということについては,議論に参加している会社の中で異論はございません。

次に,リーチサイトの中には,権利者の利益を不当に害する悪質なものが存在していると。これを一応ここの場では,侵害型リーチサイトというふうに呼ばせていただきます。侵害型リーチサイトによって,著作権侵害コンテンツへのアクセスが拡散されることで,著作権侵害が助長されて,多大な被害を受けているという声が,委員会,プロジェクトの中にあります。また,侵害型リーチサイトは,実質的には著作権侵害コンテンツの提供サイトと同様の機能を提供しているにも関わらず,リンクであるということでその違法性が問えずに野放しとなっていて,このような状況が更に進まないためにも法制面の対応強化が必要であるという考え方がございます。

一方で,きょうも御意見が出ておりますけれども,リンクの提供行為が表現行為の一部を構成する場合もあるということから,リンクを張る行為が部分的であれ規制されるということは,結果として,表現の自由,個人の発言の萎縮につながるという強い懸念が示されておりまして,慎重な検討が望まれているところです。

侵害型リーチサイトの態様・運営状況や被害状況等について,現時点で権利者側,利用者側で認識が異なっていて,引き続き実態の把握と認識の共有を進める必要があるのではないかというふうに思っております。また,侵害型リーチサイトのリンク先である,サイバーロッカーとこちらでは呼ばれているようですけれども,著作権侵害コンテンツが蔵置されているサイトへの現行法制度下での取締りや侵害対策だけでは足りずに,加えて侵害型リーチサイトへの法制面での対応が必要という主張があるという点についても認識の共有が必要ではないかと思います。

認識が共有され,御議論があった結果,仮に侵害型リーチサイトについて法制面での対応を行うということになる場合には,過剰規制への強い懸念があるという点を十分御考慮いただいて,極めて悪質なものに限って規制対象となるように要件を工夫すべきであるというのが現時点でのJIPAの意見となっております。

JIPAで議論を始めまして,また,その議論の過程でこちらの審議会での検討について勉強させていただいていて,分かったことがございます。それは,対応を求める側と求められる側,同じ求める側であっても立場によって,何を規制してほしいかというイメージに随分と隔たりがあるということです。最後に付けました図を見ていただければと思うのですけれども,例えば昨年度の本審議会でのヒアリング結果の概要のようなものを資料で拝見いたしますと,この図で言います一番左側にあるようなものだけを規制の対象として想定している方もおられれば,一番右側にあるようなものについても規制の射程に入れて議論をするべきとお考えになっている方もいるように思われました。そのような状況であるということをJIPA内の議論でも認識をいたしまして,本日意見で述べさせていただいている4番であるような現状認識について,まずは関係者あるいは一般の皆様も含めて共有していくことが大事なのではないかというふうに考えた次第です。

繰り返し申し上げていますけれども,本件,JIPAでは議論を始めたばかりなので,現時点では,極めて悪質なものというのをどのように限定していくのがよいかというような個別・具体論についての意見を申し述べられる段階にございません。しかしながら,本審議会で御検討が進み,一定の方向性が示されるような段階になりましたら,JIPAの中でも引き続き議論は進めてまいりますので,適宜また意見を申し述べさせていただく機会を頂戴できればと考えております。ありがとうございます。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

それでは,お待たせしました。インターネットユーザー協会の香月様,よろしくお願いいたします。

【インターネットユーザー協会(香月)】インターネットユーザー協会事務局長の香月でございます。

本日は意見を申し述べさせていただく機会を作っていただきまして,ありがとうございます。これまでプラットフォーマーの方からいろいろ意見を述べていただきまして,私どもの団体と似ている意見もかなりありますので,その点については簡単に御紹介をしつつ,特に今回私どもの中で,今までの説明の中で触れられていない部分について御説明を差し上げられればと思っております。

まず,先ほどから何度もプラットフォーマーの方が言われておりますけれども,インターネットにおいて,ハイパーリンクというのは基幹技術でして,インターネットの利便性はハイパーリンクによってもたらされております。このリンク行為を規制するということは,情報通信技術の発展全体に影響を及ぼします。少々大げさに言えば,ウェブサイトというものは,ウェブサイトそのものに著作物性を持ったものがあります。それらについて明確にライセンスをされていない場合,それらにリンクを張るということが違法になる,規制の対象になるということは,これは表現の自由,それからインターネットの技術そのものを脅かす,非常に大きな影響を与えるものになると思います。つきましては,当会はリーチサイト規制には反対の立場をとっております。いたずらにリンク行為への規制を拡張するのではなくて,違法アップローダー,それから違法アップロードされたコンテンツの削除について,こちらで対処すべきであろうというふうに考えております。

特に,このリーチサイトの議論におきましては2011年度の電気通信大学の研究報告が引かれますけれども,こちらは2011年度の調査ということになっておりまして,現在のようなサブスクリプションサービスが充実していない段階の調査であります。それから社会は大きく変わってきております。米国の専門調査機関の調査によれば,YouTubeを用いて音楽を聴く聴取数を,サブスクリプションサービス,例えばAppleMusicとかSpotifyとかそのようなサービスを使って聞かれる楽曲の数の方が多くなっているという結果が出ております。現在の状況,それから現在のデータに基づいた議論を進めるべきではないかというふうに思っております。

今申し上げましたけれども,サブスクリプションサービスはたくさん現在立ち上がってきております。音楽と映像についてはかなり便利なサービスが立ち上がってきております。また,雑誌,マンガ,そして書籍の分野についてもだんだんと成功モデルが出てき始めているのが現状だというふうに思っています。正に今は過渡期だというふうに考えておりますので,この過渡期に対応するためだけの対応策を法制度として整備することは,将来に影響を与える可能性が非常に大きいと考えております。

また,先ほどから何度もプラットフォーム,それから各社・団体の代表者の方がおっしゃっていますけれども,リーチサイト規制には表現の自由などへの影響が非常に大きいです。また,その上で,リーチサイトの定義というものをどうするかというところについてはたくさんの議論があります。

次のページ,2ページ目を御覧いただきまして,そちらに幾つか,現状で思い付いておりまして,現状この委員会では議論されていないのではないかというような論点を挙げさせていただいております。

一つ,Twitter,Facebook,Yahoo!知恵袋といった,ユーザーの書き込みが主導するサービスをリーチサイトとするのか。リーチサイトとする単位は一体何なのか,サービス全体なのか,アカウント単位なのか,それとも個別の書き込みなのか。ここに挙げていますTwitter,Facebook,Yahoo!。これはそれぞれ大きな会社が運営をしていますので,それは何らかの会社としての対応がとられるかと思いますが,最近は非集中型,分散型のソーシャルネットワーク,Mastodonというものが広がってきております。これは自由なソフトウェアライセンスで公開されておりまして,運営しているのは法人だけではなく個人のものもあります。そのようなものに対してどのように対応していくのか。

それから,報道や評論,公益通報などを目的としたサイトへのリンクはどうなるのか。例えば,先日話題になりましたけれども,Wikileaksがリークした,Vault7というCIAの内部情報がリークされましたけれども,その中にはソフトウェアのバイナリファイルそのものなどが含まれております。これは公益性のある通報でして,報道に値するものだと思いますが,このようなものにリンクを張る。これについて,これも規制の対象にするのか。

あるいは,短縮URLを使った場合,ユーザーは外形的にそのURLでどこに飛ぶかということを判断できません。そのようなものをどうするのか。

また,先ほどからリンクという行為で言われていますけれども,じゃ,リンクしなければよいのか。技術的に言えば,aタグで囲まなければよいのか。

それから,URLを最近は画像で共有するようなサービスも出てきております。URLが画像で回った場合,それはリーチサイトになるのか。

また,ここに書いておりませんけれども,先ほどグーグルの山口さんのお話がありましたけれども,違法なサイトは地下に潜る傾向があるというような話がありますが,では,今のインターネットの枠組みに入らないTorであったり,ダークウェブ,そのようなものについては対象にするのか。それからまた,米国でフェアユースとされているものに対してリンクを張った場合,これはどうなるのか。例えば,米国のインターネット・アーカイブでは過去のゲームのソフトウェアのROMがたくさん上がっておりまして,それは現在アクセスができないという形で,インターネット・アーカイブはフェアユースの範疇であるということで公開して,ウェブサイト上で遊べるようになっています。そのようなものは日本においては著作権が存続していて,フェアユースの対象外。そのようなものに対してリンクを張った場合はどうするのか。

このような論点がたくさん考えられます。また,これは利用者として無視はできない論点ですので,是非,御議論いただければと思います。

また,現状の議論で挙がっているリーチサイトの要件に,営利目的というものが検討されていますが,ウェブサイトの運営上,営利目的というものについては様々な議論があります。例えば,無料のブログサービスを使っていて,無料で使える代わりに広告が表示されて,その広告収入がプラットフォーマーに入る。そのようなブログ等々を営利目的とするのか。これについては,欧州のGSメディアをめぐる裁判においても議論されておりますが,EU司法裁判所の判決にはいろいろ議論があるところは無視をしてはいけないだろうと思っております。

また,リーチサイト規制に代わる違法アップロードへの対策として間接侵害の導入というものも検討はできるだろうと考えておりますが,ただ,間接侵害を議論する場合はいわゆるカラオケ法理等々によって過度に拡張された直接侵害の範囲を縮小,そして整理して,その上で間接侵害を議論すること,それから,公正な利用を著作権侵害としないこと,それから,間接侵害の要件を明確,そして具体的に規定することが必要になるというふうに考えております。

最後,3ページ目です。リーチサイトの議論に限らず,違法なコンテンツの流通への対応策というものを議論する場合,ステークホルダーの中で,どのような流通経路を止めたいのかということを,明確,そして限定的に共有して,範囲を明確にして議論すべきだと思います。正に先ほど知財協の河野様がお示しになった,最後の,リーチサイト対応イメージの隔たりというところが正にこれに当たるかと思います。そして,リーチサイト規制のようなインターネットの運用全般に関わる議論というのは,インターネットガバナンスそのものにも関わってまいります。インターネットガバナンスに係る議論と同様に,本議論も,先ほど井上委員からの御発言にもありましたように,マルチステークホルダープロセスをとって,ユーザー,実務者,特に今回リーチサイトを規制するということをもし決めた場合,一番対応を求められるのはインターネットサービスプロバイダの人たち,エンジニアです。実際にどのような対応が求められているのか,そういうふうなものについて,そういう人たちからもきちんと意見を聞くことが必要であろうというふうに思っています。

著作権に限らず,知的財産権について様々な話題が最近メディアで大きく報道されるようになりまして,その中でそういうふうな環境の変化があって,一般ユーザーの著作権意識というものは総じて上がってきているというふうに考えています。先ほど今年度の本小委員会の議論の中に教育の観点というものが入っておりましたけれども,私どもインターネットユーザー協会は,このような場に出て意見を述べるだけではなくて,ユーザーのリテラシーを向上することも一つのミッションとしております。学校や自治体からの求めに応じて,無償での講義等々を私どもはやっております。そのようなリテラシーの向上を高めるような事業や取組を応援するような観点も是非この会議の中で取り上げていただければと思っております。

以上です。ありがとうございました。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

五つの団体の方に様々な御意見を頂戴したところでございます。これらの御説明,その内容について御質問がございましたら,何なりとお願いいたします。松田委員,どうぞ。

【松田委員】皆様方の御意見を聞かせていただきまして,共通する点があります。極めて悪質なものについては規制をしてもいいが,表現の自由との関係においてかなり影響が出る可能性があるという御意見です。そして,リンクはインターネット技術における極めて重要な基幹技術であるから,それを尊重しないということでは困るから,規制は最小限にすべきであるという御意見です。この点はほとんど共通していると思います。

そこで,悪質と,悪質でないものをどうやって区別していくかということになります。まず一番先にヤフーさんにお聞きしたいです。御提出の資料のP2で書いてあるところですが,「リンクの掲載を伴う形で行われる表現行為」,これは表現の自由に該当するのだという考え方のようです。次に,P3を見まして,単純に違法ファイル等にアクセスしてしまうような羅列型のものについては,これは悪質の部類に属するのだという御意見ではないかと聞いておりました。そこで,「リンクの掲載を伴う形で行われる表現行為」というのを,具体的に何があるのだろうかと考えますと,御意見ではP3の下のところに書いてある「感想や評価などを記載したコメントとともにリンクを投稿する行為」,これが例として挙がっています。

例えば,優れた音楽コンテンツを論評しようと思って,そしてこのリンクを伴う投稿をしたといたしますね。私も音楽コンテンツのコメントは表現の自由で完全に守られるべきだと思います。それは恐らく異論ないところであると思います。しかし,音楽コンテンツをコメントで出すというような場面は,必ずしもウェブ上の問題だけではありません。最も分かりやすい例で言えば,我々の世界で言えば法学の論文を書くときに他の優れた論文や対抗する論文を引用するということがありますが,この引用をするときに脚注で違法サイトの引用をするということは……。これ自体が違法になると言っているわけじゃないですが,そういうことは取りあえず避けるわけです。それはどうしてかというと,その後の問題が起こるから,それはできるだけしない方がいいだろうと。違法サイトの方が全文手に入るわけですから論文としても役に立つけれどもそうはしないのです。原典をきちんと書くようにしているわけです。こういう文献の幾つもにリンクを張らせて論文を読ませたら,それはすごいいい勉強になりますよ。いい論文になるかもしれません。しかし,それはしていないわけです。

なのにも関わらず,御意見では,音楽コンテンツのコメントを上げる場合にはリンクを伴ってもいいのではないか。これはもちろん違法サイトリンクですよ。伴ってもいいのではないかという御意見になるわけです。どうしてここのところを,論評だったら,適法サイトにリンクしないのでしょうか。ないしは,適法サイトにリンクがなかった場合については,それはこういうところで音楽が聞けますよというような情報にしておかないのでしょうか。いきなり論評が違法サイトにリンクされることが表現の自由だとは到底思えないのですが,いかがでしょうか。

【ヤフー株式会社(門野)】貴重な御意見,ありがとうございます。お尋ねの点について,明確なお答えになっているのかは少し分からないのですが,お答えさせていただきますと,3ページに記載させていただいた「SNSやブログで曲に対する感想や評価などを記載したコメントとともにリンクを投稿する行為」というのは,松田委員もおっしゃいましたとおり,適法なもの,違法なものを区別していない表記にはなってございます。当然,弊社としましては,リンク先は適法なものであるべきというのは当たり前の認識として持っているところではございますけれども,国民の表現の自由との観点で,国民全体がその認識を今ちゃんと共有できているのかというところを少し念頭に置いているところではございます。

あるべき論としましては,適法なサイトへのリンクが張られるべきというところはそうなのですけれども,それが可能になる前提としましては,そもそも正規流通のものについて,例えば音楽のものですと,インターネット上に国民が見られる形で置かれている必要があるというのと,あと,先ほど何社かから意見が出ていると思うのですけれども,国民の著作権に関するリテラシーの向上というところも併用して対策を行うべきというふうには弊社としましては考えております。ですので,その部分について議論を置いておいて,一方的に国民の行為について規制するような法規制の議論のみを進めるべきではないというふうな観点から,このような記載にさせていただいているところではございます。

【松田委員】すみません。引き続き。

【土肥主査】続けてですね。どうぞ。

【松田委員】国民が音楽やコンテンツに対するコメントを聞きたい,それを発表したい,これは表現の自由ですよ。間違いないと思います。それが違法リンクとつながること,違法ファイルとつながることも表現の自由として守らなきゃいけないということなのでしょうか。というのは,ニフティさんが資料で出されていて,なおかつ,9,10ページを見てもらいたい。これは,いいか悪いかは別論として,悪質が強いか弱いかは別論として,ダウンロードするための技術的な手段を解説すると。これについては表現の自由ではないかというふうに私も思っておるのです。こういう技術的説明をすること自体は表現の自由だろうと思っているわけです。ところが,コンテンツの論評をすることについて,適法コンテンツだって,違法コンテンツだって,コンテンツは同じですからね。それなのに,コンテンツの論評のために違法のコンテンツを引き合いに出さなければならない必然性ってないじゃないですか。

そうすると,違法コンテンツを引き合いに出さなければならない表現の自由の極限的なケースって何かというふうに考えてみたいと思います。多分こういうことだと思います。違法コンテンツを引用することは,リンク技術,インターネット技術のために極めて重要なことである。だから私は実践しているのですと。そういう表現の自由の実践として私は違法コンテンツをここに掲載します,こういう言論が出てきたら,これはどうするかという問題は私はあると思います。これは違法コンテンツを引き合いに出さなきゃならないわけですから。ところが,大半の御説明は,適法コンテンツを引用すればいいのに,違法コンテンツを引用したところに表現の自由があるというのは,いささか表現の自由としては大き過ぎやしないでしょうか。そこのところです,どなたでも結構です。

【ヤフー株式会社(門野)】今,松田委員から御質問があった部分についてなのですが,弊社としましてはもちろん,自己の表現とともにリンクを引用する際にはそのリンク先も適法なものであるべきというのは,それは当たり前というふうに思っているのですけれども,現状,国民の皆さんの認識としまして,リンクを張る行為が違法かどうかというところの認識が十分になされているのかという点で,規制と同時にそのような部分についても,こういった行為はやってはいけない行為である,こういった行為は違法なコンテンツの促進行為につながる行為であるという点についても国民にどんどん警鐘を鳴らしていくべきというふうに考えておりまして,必ずしも,先ほどおっしゃったように,ここに掲載されている短文で,「感想や評価などを記載したコメントとともにリンクを投稿する行為」が全て表現の自由の範囲内として保護されるべき行為であるのかというところは,それは一概には言えないというふうに思っております。でも,そこをどのように判断するのかというと,それは一つの表現行為ごとに異なってくる部分ではあると思います。

弊社として,P3で言いたいこととしましては,個別の表現行為ごとに厳密な判断が求められる部分であると思いますので,それが前後の表現を問わずに一律に違法となってしまうような規制というふうになってしまうと,それは本来適法であるべき行為をしようとしている国民に対して萎縮効果を生じさせるのではないかというふうに考えているところでございます。

【松田委員】もう一回だけ話させてもらえますか。

【土肥主査】どうぞ。もしかしたらほかの団体の方がいいのかもしれないですよね。どういうふうにお考えなのか。

【松田委員】どなたでも結構です。私に限らず恐らく委員全員だと思いますし,そこの,リーチサイトの何らかの規制を要求しているところが,一律に規制をしてということは考えていないと思います。そうすると,一律でないということになりますと,先ほどの例を想起していただいて,違法サイトにリンクを張ることが表現の自由から正当性が認められるような場合については,これは適法として,その必要性がない,適法サイトに引用してもいいような場合については違法としたら駄目でしょうか。

【ヤフー株式会社(門野)】重ねての御意見,ありがとうございます。そこの切り分けは,もちろんできればそれが一番いいとは思っておりまして,ここで意見を述べさせていただいているのは,それを法規制によって厳密に行うことができるのかというところについて明確に反対というふうに考えているわけではございませんで,そのような線引きができるような内容の法規制であるならば,国民の表現の自由の萎縮効果などを加味しましても,それはそれよりも勝るべき悪質なリーチサイトへの対応としては得策かとは思いますが,そもそもそのような線引きが条文によって,条文を見たときに国民が明確にできるような内容の法規制ができるのかという部分について,懸念として意見を示させていただいているところでございます。

【土肥主査】前田(哲)委員,それに関連して何か。別ですか。

【前田(哲)委員】はい。

【土肥主査】関連して。じゃ,大渕委員,どうぞ。

【大渕主査代理】今の点は非常に重要で,恐らく一見対立しているけど,最終的には両方が折り合える一点というのはあるのだと思います。恐らくおっしゃっている方も無制限に表現の自由が許容されるのではなくて,法律関係は全てそうですが,一方には著作者の権利の保護というのがあって,その対抗利益としての表現の自由なので,そこのバランスの上で,片一方だけ考えるというようなことをせずに,きちんと両方考えていけば,私はおのずから落ち着く一線があるのではないかと思っております。

松田委員が言われたのは私も全く分かりますし,反対の方も分かりますし,みんなが言いたかったことをよく出していただいたと思いましたが,適法リンクでもよいのにわざわざ違法リンクを張るのかという疑問は残ります。リンク自体は非常に有効なツールであることは間違いないのですが,それをあえて違法に張るのかという,そこのところに問題を集中しないと,この問題点は解決しないと思います。

何をもって違法とするかというところなのですが,先ほどの難しい問題というのは,公正な慣行に合致して正当な範囲の引用かどうかというところに尽きてくるので,私はこの件については32条が有用だと思っております。学術論文でも,あえてそのような海賊版を引用するのがいいのかどうかとかという細かい問題は出てきますが,現行法は手当てしていないかと言われると,もう決着がここで付いています。私は実は32条というのはいわば日本版フェアリーディングともいえるものではないかと思っていますが,かなり一般性の高い規定ですが,ここをきちんと押さえていけばおのずから一線に落ち着いてくるのではないかと考えております。

結局は両者のバランスというところにおのずから落ち着いてくるので,先ほど言われた非常に悪質なというところをもう少し具体化することが必要になります。非常に悪質なものは,何をもって非常に悪質かというのが,大体出始めているかと思うのですが,そこをもう少しお聞きできれば解は見えてくるのではないかと思います。

【土肥主査】非常に悪質なところをプラットフォーマー等の五つの団体の方がどうお考えになるかということももちろん大事なのですけれども,それはここで考えるというか,我々法制・基本問題小委の中で議論させていただくわけですけれども,その一つの論点として,松田委員のような,そういう御質問があったというふうに御理解いただければと思います。

深町委員,お願いします。じゃ,深町委員の次に前田(哲)委員で。

【深町委員】今の点に関連したことなのですけれども,私は刑法の研究者でして,リンクに関する問題として,著作権に関係した研究のみならず,例えば児童ポルノ・わいせつ表現とか名誉毀損表現についても研究をしております。そこでお尋ねしたいのですが,今の皆さん方の御報告というのは,表現の自由がそもそもリンクを貼る行為を一律に処罰することによって害されるという御趣旨でしょうか。例えば,児童ポルノサイトに対するリンクというのもあるわけですね。こういった場合については既に判例において,リンクについても(正確に言うとリンクのみならず単なる改変URLの掲載行為についても,)処罰するとされている状況でございますし,わいせつ画像に対するリンクについても処罰するといったような裁判例があるところでございます。

このように,リンクといっても,その先にある情報内容によっては既存の判例実務においても処罰対象とされているものがございます。このような状況と比較して,著作権に関するリンク行為のみ,すなわち,著作権についてのみリンクサイトあるいはリンクを貼る行為について特に表現の自由を保障すべきである,あるいは表現の自由に対する配慮が必要であるというふうに皆さん方はお考えなのか。それとも,そうではなくて,リンク一般についてそのような表現の自由に対する配慮が必要と考えていらっしゃるのか。その点についてお伺いしたいのですが,いかがでしょうか。

【土肥主査】これはそれぞれの団体にお尋ねになりますか。じゃ,門野様はちょっとお休みいただいて,山口様から順に一つお願いします。

【グーグル合同会社(山口)】弊社としては,リンク単体であったとしても,それが著作権を侵害しているものであれば削除しております。それは基本的に違法なものであって,権利者の方から申請に基づいて削除できるので,それはもちろん議論を別にする必要もないかなと思っているのですけれども,今回,表現の自由に当たるかどうかというところは,弊社は飽くまで検索エンジンなので,余りそれを議論する立場にないというふうには理解しているのですけれども,恐らくリーチサイトとしてサイト全体にリンクがたくさんある状態でそのサイト全体をどうするかという議論については表現の自由との関係が発生するというふうに考える方が多いのではないかなと思います。

【テレコムサービス協会(丸橋)】児童ポルノの最高裁URL判決とかももちろん存じていますし,そういう個々のリンク行為についての処罰可能性とか,そういうものは当然どんどん議論を深めていく必要があると思っていますし,著作権を侵害するコンテンツへのリンク行為が例外というふうには考えてはいないです。我々が気にしているのは,サイトの運営側,プラットフォーマー側にどういう責任が及ぶのかというのが一番の関心事ですので,直接の侵害行為,あるいは犯罪に対する幇助,教唆,あるいは間接侵害と言われる位置付けについて,そこまではよくまだ分かっていないと思うので,そういう点について,もちろん横断的な議論が先に来るのがベストだと思うのですけれども,著作権侵害については目の前にそういう問題があると。目の前にあるリンク行為が一番問題だとしても,その波及効果というのは,やっぱり著作権侵害の全類型への波及効果もそうですし,ほかの不法行為,犯罪への波及効果もきっとあると思うので,慎重な議論をしてもらった方がいいかなと思います。

【日本知的財産協会(河野)】先ほどの発表時にも申し上げさせていただきましたが,JIPAでは議論が詰まっておりませんので,本日ここで意見を申し述べることは控えさせていただければと思います。

【インターネットユーザー協会(香月)】もちろん,今回,リーチサイト規制について,表現の自由という点については非常に大きく考えておりますけれども,それと同じぐらい,インターネットのエコシステムというか,技術としてインターネットが存在し得る上で,リンクの技術ということを規制するということはインターネットそのものに大きな影響を与えるであろうという点で懸念をいたしております。

【土肥主査】ありがとうございました。

門野様にはもう十分活躍いただいたので,ほかに御質問ございますでしょうか。前田(哲)委員,お願いします。

【前田(哲)委員】テレコムサービス協会様に御質問させていただきたいと存じます。先ほど御発表いただきました資料の9ページに「会員規約違反として」という表現がございまして,また,11ページにも「会員規約に則り」というふうに書いていただいております。ここの御趣旨なのですけれども,リーチサイトにおけるデッドコピーへのリンク情報は,プロバイダ責任制限法3条に言う権利侵害情報に該当するという前提なのでしょうか,それとも,それには該当しないのだけれども,会員規約にのっとって対処しているという御趣旨なのでしょうか。後者のようにも思えますので,どちらかをお尋ねさせていただきたいと思います。仮にプロバイダ責任制限法3条の権利侵害情報に当たるとお考えの場合には,同法4条の権利侵害情報にも当たると考えておられるかどうかについても教えていただければと思います。

【テレコムサービス協会(丸橋)】リンク情報自体が公衆送信されている状態を,ニフティ,あるいはサービス倫理委員会,あるいはガイドライン等検討協議会の事務局としてどう見ているかという御質問だと思いますが,事例の積み重ね,あるいはこの場の議論の積み重ねで,リンク情報自体が権利侵害情報とされることはあり得るとは思っています。ただ,そこまでの熟成度はまだ全然足りないのではないかというふうに思っています。ニフティ個社での実務としては,もちろん会員規約上,権利侵害情報へのリンクを張る行為も違反にはなってはいるのですね。ですので,会員の方からの反論を聞く機会を会員規約上の行為として与えて,反論がなければ一時停止というような措置をとっているというのが先ほどの正確な説明になります。

4条との関係では,更に難しいですね。権利侵害情報の定義自体が変わるということはないので,P2Pの情報発信は今までいろいろな裁判例が出ていますけれども,じゃ,P2Pの中継ノードだけを動かしている会員がいたときに,その会員はプロバイダ責任制限法による権利侵害情報の送信者になるのかどうかという問題については,今まで余り具体例も出てきていないですが,今後ひょっとしたら出てくるのかもしれないと思っています。

以上です。

【土肥主査】ありがとうございました。

ほかにございますか。上野委員,どうぞ。

【上野委員】2点質問させていただきます。1点目はグーグルの山口さんに,2点目はヤフーの門野さんにお聞きしたいと思います。

1点目に,先ほどグーグルさんからは,検索結果の削除依頼にどう対応しているかという点について御説明を頂きました。6時間以内に対応しているというお話でしたけれども,これはリーチサイトへの検索結果の削除ではなくて,侵害サイトへの検索結果の削除のことだという理解でよろしいでしょうか。すなわち,侵害サイトと,侵害サイトへリンクを張っているリーチサイトを区別した上で,検索結果の中にリーチサイトへのリンクが出てくる場合でも,その削除には応じていないというような状況なのでしょうか。

また,そのような運用は日本だけなのか,それともヨーロッパなどでも同じようになさっているのかということもお聞きできればと思います。といいますのも,最近の欧州司法裁判所の判例によりますと,侵害サイトだと知りながらリンクを張るという行為が,それ自体,著作権侵害に当たると理解されつつあるようですので,もしかしたらヨーロッパでは別の運用をなさっているかもしれないと考えたからです。

続きまして,今度はヤフーの門野さんに対してお聞きしたいのですけれども,先ほどのお話では検索結果というよりもホスティングサービスにおける削除依頼への対応についての御説明を頂いたかと思います。御説明では,著作権侵害を理由とする削除依頼というのは年に10件くらいしかなく,またリーチサイトへの削除依頼というのはほとんどない,というお話でありました。ただ,その数字のところには「(書面によるもの)」と書かれております。ここにいう「書面」がどのようなものを意味するのか分かりませんが,先ほどの丸橋さんのお話と同様に,書面を郵送することのみを意味するといたしますと,それ以外の方法による削除依頼というのはどうなのでしょうか。例えば,メールとか電話とかもあるかと思いますし,また,私の知る限り,少なくともYahoo!知恵袋のサイト中には「違反報告」というボタンがあり,簡便にクレームできるようです。この「違反報告」の中に,ある書き込みが著作権侵害に当たることを理由とする,あるいはリーチサイトであることを理由とするクレームというのはないのでしょうか。もしお分かりになるようでしたらお聞きしたいと思います。

また,もう一点,先ほどの御説明はホスティングに関するものでしたけれども,先ほどのグーグルさんと同じように,検索結果からの削除というのは,侵害サイトあるいはリーチサイトに関して行っていらっしゃらないのかどうか,ということについてもお聞きできればと思います。

以上です。

【グーグル合同会社(山口)】御質問ありがとうございます。弊社では,リーチサイトというものと侵害サイトというものに特に区別は設けておりませんので,権利者の方からここで話されているリーチサイトみたいなものに載っているコンテンツに対する削除要請が来たときに,それが権利者の方からの正規の申立てだということの確認がとれれば削除はできます。なので,例えば,フリーブックスはリーチサイトのいい例ではないかもしれないのですけれども,そういったURLで,弊社は透明性レポートというものを出しておりまして,どんなURLに対してどんなリクエストが来ているか,どういうふうにグーグルが対応しているかというのは全て公開しておりますので,もし気になるサイトがございましたら,「透明性レポート」と検索していただいて,そこに著作権侵害の報告がどういうふうになっているのかということを全部公開しておりますので,そちらでお調べいただければいいと思いますが,グローバルに同じ対応をさせていただいております。

【ヤフー株式会社(門野)】御質問,ありがとうございます。御質問いただいた点について,まず1点目なのですけれども,説明の資料の方に書面における申告というふうに書かせていただきましたのは,御指摘のとおり,弊社のCGMサービスにおきましては,違反申告ボタンなど,ネット上から申告ができるような仕組みが備わっております。こちらについても著作権侵害を理由とする申告があるというのは事実でございます。件数としましては,厳密な数字をここで申し上げることは差し控えさせていただければと思うのですけれども,年間に200件から250件程度。これは月によって結構ばらつきが出てくるところではございますので,全ての申告を厳密に把握することは難しく,正確な数字ではないというところを御承知おきいただければと思います。その違反申告の内容にリーチサイトに関するものがあるかという点についてですが,こちらは書面と同様に,ほとんどないというのが現状です。といいますのも,弊社のサービスといいますと,ブログや知恵袋についてなのですけれども,そのような投稿につきまして一般ユーザーから,これはリーチサイトではないかとか,違法なリンクを張っているのではないかというような申告は現状ほとんど見られておりません。

2点目なのですけれども,そもそもリーチサイトの定義があやふやな部分があるのかなというふうな認識がございましたので,検索結果については述べさせていただいておりませんでしたところがございまして,検索結果についても著作権侵害を理由とした削除の申告がないということはございません。件数としましては非常に少なくなっておりまして,あったとして年間10件は超えない程度というふうになっております。理由としましては,基本的にはタイトルやスニペットの部分について著作権侵害がある部分が表示されているなどの申告が多くなっておりまして,リーチサイトであるから消してくれ,侵害サイトであるから消してくれというような申告内容はほとんど見られないというのが現状になっております。

【土肥主査】ありがとうございました。

ほかにございますか。井奈波委員,どうぞ。

【井奈波委員】グーグルの山口様への質問なのですけれども,先ほど広告の資金源を絶つアプローチを強化されているというお話がありましたけれども,広告収入を絶つというためにはやはり明確な基準が必要なのではないかと思いますが,どのような基準で広告収入を絶つというアプローチをとっていらっしゃるのかということと,それをリーチサイトに対して行う可能性もあるのかどうかということが一点。

あと,もう一点なのですけれども,先ほどの御紹介にもありましたように,欧州ではリンクを張る行為についても,営利目的があるような場合で,権利侵害コンテンツを知っているとか,合意的に知り得たときというような場合には,公衆伝達権を侵害していると判断された判決が出ていまして,それに対して欧州ではどういう対応をしているのかという点がお分かりになりましたら教えていただきたいと思います。また,この判決が出たことによって対応を変える予定があるのかどうかということも教えていただけたらと思います。

【グーグル合同会社(山口)】ありがとうございます。まず1点目の広告のポリシーなのですけれども,基本的には様々な広告自体のポリシーというものを設けておりまして,例えば,偽造品に対する広告はしてはいけませんとか,危険な商品やサービスに対しては広告をしてはいけませんとか,不正行為を可能にする商品やサービスは駄目ですとか,そういった禁止コンテンツみたいなものとか,どういった行為がよくないかということがきちんとポリシーとして,もちろん日本語でも事前に広告主の方はそれに同意をした上でグーグルの広告のサービスをお使いいただいているということになりますので,それの違反が認められた場合には,この場合では著作権違反というものになると思いますけれども,広告の私たちのネットワークからは遮断されてしまうというのはそのとおりです。そういったものが,リーチサイトみたいなものにたくさん広告が付いていたとして,そこに例えばDMCAのリクエストが来て,それが認められるべき正しいリクエストであれば,その広告というのもなくなることになります。なので,これは別にどんなサイトであろうと,広告が悪質なものに付いていてはいけないとかというところがありますので,サイトの形態を特に定義しなくても資金源を絶つことができるという意味で非常に有効に機能しているというふうに私たちは認識しております。あと,業界団体の方とかも意見交換などをさせていただく中で,弊社の,もちろん弊社以外にも広告というのを提供している会社さんはいらっしゃいますので,そういった方々との連携なども,これは日本のみならずグローバルに進めさせていただいております。

欧州の判決につきましては,私が日本法人の者になりますので,ちょっとお答えできないので,また別途,書面などで私の方から欧州のチームに確認をして,御連絡させていただければと思います。

【土肥主査】ほかにございますか。よろしいですか。

それでは,時間がそろそろ参りましたので,リーチサイトの問題はこのくらいにさせていただければと思います。

最後に事務局から連絡事項をお願いしたいと思いますけれども,先ほど当然対抗について過去のお話をさせていただいたことがあるのですけれども,あのときは当然対抗と,それから登録型のライセンス投資に対する保護をどうやって図るかというときに,当然対抗と,それから登記・登録型の制度か,もう一つは先使用型の制度かという議論の中で,そのときは登記・登録型の議論が先行しましたので,当然対抗の案は余り議論しなかったと言えばしなかったのかもしれません。ですから,この時点で議論をすればかなりまた状況としては変わってくるのだろうと思います。いずれにしましても,そういうことでございますので,当然対抗の問題等も含めて今後議論していただければと思っております。

事務局から連絡事項をお願いできますか。

【秋山著作権課長補佐】次回小委員会でございますが,改めて日程調整をしまして,追って御連絡したいと思います。どうもありがとうございました。

【土肥主査】どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第2回を終了させていただきます。本日は,五つの団体の方々,どうもありがとうございました。

――了――

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