文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第7回)

  • 日時:平成30年2月28日(水)
  • 15:30~17:00
  • 場所:文部科学省東館3階3F1特別会議室

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について
    2. (2)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料
平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等について(案)(1.3MB)
※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
参考資料1
法制・基本問題小委員会(第6回)意見概要(224.8KB)
参考資料2
各調査研究仕様書(218.8KB)
出席者名簿(47.2KB)

議事内容

【土肥主査】定刻でございますし,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の第7回を開催いたします。

本日はお忙しい中御出席いただきまして誠にありがとうございます。議事に入ります前に本日の会議の公開についてでございますけれども,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないように思われます。既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】それでは,本日の議事は公開ということで傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

事務局から配布資料の確認をまず,お願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】お手元に議事次第を御用意ください。資料といたしまして,今年度の本小委員会の審議の経過等について(案)と題する資料を御用意しております。それから参考資料といたしまして,前回の小委員会の意見概要,それから文化庁において行っております調査研究にかかる資料を御用意しております。不備等ございましたら,お近くの事務局員までお寄せください。

【土肥主査】ありがとうございました。

では初めに議事の進め方でございますけれども,本日の議事は2点,平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等についてと,その他となっております。

早速でございますけれども,議事に入らせていただきます。

平成29年度法制・基本問題小委員会の審議の経過等についてでございますが,本小委員会では今年度4月に報告書の取りまとめを行った後,当面の検討課題につき審議を行いまして,それらについて検討を行ってまいりました。それらの課題についての経過報告をお諮りしたいと思っております。

では,事務局からこの点についての説明をお願いいたします。

【秋山著作権課長補佐】御説明申し上げます。メイン資料を御用意ください。1番,はじめにとしましたところの最初のパラグラフでは,先ほど主査から御説明ありましたように平成29年の報告書の取りまとめを行った旨を記載しております。2パラ目以降でございますが,その後の小委員会の検討課題につきましては,知財計画等も踏まえつつ今期は優先順位も付けて検討していくということとされておりました。

具体的にはリーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応,それから拡大集中許諾制度に係る議論を中心に権利者不明著作物等の利用円滑化について御議論を頂きました。これ以外にも法の適切な運用環境の整備,教育の情報化推進等,障害者の情報アクセス機会の充実,及び新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備につきましても政府による調査研究や関係者協議等の様々な方法によりまして検討を進めてきたところでございます。

具体的にはリーチサイトに関わる部分から順次御説明を申し上げます。

【小林著作権調査官】2ページ目,1.リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為への対応を御覧ください。

まず,(1)検討の経緯としまして,近年インターネット上の著作権侵害による被害が深刻さを増してきている状況において,いわゆるリーチサイトなどを通じて行われる侵害コンテンツへの誘導行為が正規版を展開する上での大きな問題となっており,検討を行うことが求められているということ,また,本小委員会では平成28年度より検討を行ってきたとしております。

次に,(2)今年度の検討状況を御覧ください。ア.関係者からのヒアリング,(ア)プラットフォーマー等からの意見としまして,プラットフォーマー等から頂いた主な意見を示しております。次に4ページ目,(イ)憲法学者からの意見としまして,憲法学者の木下昌彦氏より頂いた意見の概要を示しております。

次に,6ページ目の中ほどのイ.検討の視点では,本小委員会において,本課題の検討に当たって必要な視点を確認したことを示しております。検討の視点の内容は,前回と前々回にお示したものと同じものとなっておりますので,省略させていただきます。

続きまして,ウ.対応すべき悪質な行為の範囲を御覧ください。(ア)民事では,本小委員会では,リーチサイト等による侵害コンテンツへの誘導行為のうち一定の悪質な行為については,現行法上も損害賠償請求の対象となり得るとの意見が多く出された,他方,差止請求に関しては現行の著作権法の解釈として差止めを認めることは困難であるとの意見が出され,間接侵害一般に係る議論との関係については,緊急に対応する必要の高い行為類型を取り出して検討を行い,それ以外の間接侵害一般に対する差止請求に関する議論については,将来の課題として引き続き解釈に委ねるとの方向で概ね意見の一致が見られたとした上で,このような議論の経過を踏まえ,差止請求の対象として特に対応する必要が高い行為類型はどの範囲かについて,次のiからviの論点に沿って議論を行ったとしております。

そして以下では,論点ごとに示された主な意見をまとめております。

i差止請求の対象として特に対応する必要が高い悪質な行為類型は誰のどの行為かとの論点につきましては,まずサイト型ですが,リンク情報を掲載する行為については,結果発生に対する危険性の程度が高く,実質的には送信可能化と同視でき,少なくとも著作権者の損害につながるとの意味において対象とすべきとの意見等が示されたとしております。他方,サイトを運営する行為については過剰差止めによる表現の自由に対する過度な制約となり得るとの意見や,個々のリンク掲載行為が差止めの対象となる場合は現行法の下でも予防措置としてサイト自体の削除が認められ得るとの意見等が示されたとしております。

次に,アプリ型ですが,情報埋め込み型と外部情報取得型1については,リンク情報の提供行為が悪質であり規制すべきとする根拠はユーザーの侵害コンテンツへの到達を容易にしている点にあるところ,これらの行為は侵害コンテンツへのリンク情報を提供していると評価できるとの意見等が示されたとしております。他方,外部情報取得型2については,侵害コンテンツに容易に到達できる状態を作っているのであれば法的利益状況は同じなので差止めの対象とするべきとの意見等,差止めの対象とすることにつき肯定的な意見も示されている一方で,様々なサイトを横断検索する汎用的な技術を用いた場合を差止めの対象とすると,対象範囲が広すぎ技術に対するハレーションを起こす問題が大きいとの意見等が示されたとしております。

また,なお書きでは,等しきものは等しくとの要請からすれば,アプリ型で汎用性があるものを除く場合には,サイト型での汎用性のあるものは除くこととなるように,両者のバランスをとっていくことが必要であるとの意見が示されたとしております。

次に,サイト型,アプリ型共通の論点ですが,侵害コンテンツへのリンク情報を掲載する行為以外の侵害コンテンツへ誘導する行為,例えば検索機能を用いて侵害コンテンツへのリンク情報の取得を可能とする「ボタン」をサイトに掲載する行為についてどのように考えるかという問題につきましては,法的利益状況は同じなので差止めの対象とすべきとの意見があった一方で,まずは自らがリンクを張るという行為と同視し得るものに規制を止めてそれ以上の行為については,汎用型の検索エンジンのこととも関わるので,更に議論をその後に行うべきとの意見等が示されたとしております。

次に,ii行為者がリンク情報を掲載するサイトの特性により差止請求の対象として特に対応する必要が高い行為類型に該当するか否かを区別すべきかとの論点につきましては,aサイトの特性により対象を区別すべきとの立場からは,リンク情報の提供は幇助に当たる場合に限って違法になるのであって客観的に著作権侵害行為を助長・促進するという効果を持つという要件を満たす必要があるところ,サイトの特性といった客観的要素による限定が必要であるという意見や,「専ら著作権侵害に向けられて運営されているサイト」や「侵害コンテンツを取得させることを目的として作られているサイト」という要件により対象を絞ることができるのではないかとの意見が示されたとしています。

また,サイトの特性により対象を区別すべきではないというbの立場からは,数値的特性により限定すると容易に潜脱がなされてしまうおそれがある一方で,開かれた構成要件とするとかえって不明確となるとの意見や,典型的なリーチサイトに掲載する場合以外でも権利者の利益を害する目的があるならば対象に含めていいのではないかとの意見等が示されたとしております。

次に,iiiリンク先の侵害コンテンツがどのようなものである場合に,特に対応する必要が高い悪質な行為類型と考えられるかとの論点につきましては,まずa「市販されている著作物等」に限定すべきとの立場からは,市販されている著作物のデッドコピーであれば,権利者に与える不利益が非常に大きいので抑止する必要性は非常に高いとの意見や,著作物の場合は,権利者が誰かが分からないという問題を常に抱えているところ,外形的に権利者が誰であるかの想像がつくものに絞ることには合理性があり,予測可能性を確保することにつながるとの意見等が示されたとしております。

また,b「市販されている著作物等」のみならず,一定の商業目的で提供されている著作物を含めるべきとの立場からは,専ら広告モデルによって提供される著作物であってもリーチサイト等を通じた侵害コンテンツの拡散によって大きな経済的損害を受ける可能性があるため,広告モデルによって商業的に提供されている著作物を含めるべきとの意見や将来ビジネスを保護するため,将来市販されるものも対象に含めるべきであるが,適用範囲が不明確になるので範囲を明確にするため,将来市販の予定があることが明示されているものは対象にすべきとの意見や,発行後一定期間のものは対象とすべきとの意見等が示されたとしております。

また,c著作物等の範囲を限定すべきではないとの立場からは,今回は既に現行法上も違法で刑事罰の対象にもなるような著作権侵害の幇助行為となるべき行為を対象としているので著作物の範囲を限定するべきではないとの意見や,絞りをかければかけるほど予測可能性がなくなり,違法・適法の判断がつかなくなるとの意見などが示されたとしております。

次に,ivどのようなリンク情報が提供される場合に特に対応する必要が高い悪質な行為類型と考えられるかとの論点につきましては,ネットワーク回線を介してハイパーリンクにより提供されるリンク情報に限定すべきとの意見や,ハイパーテキストによる提供に限定されないネットワーク回線を介して提供されるリンク情報とすべきとの意見が示されたとしております。

次に,vどのような主観を有する場合に,特に対応する必要が高い悪質な行為類型と考えられるかとの論点につきましては,「侵害コンテンツであることを知りながら」との主観的要素が必要であるとの意見が多数示されている,このような状況を踏まえ,本小委員会では「侵害コンテンツがあることを知りながら」という要素に加えて別の主観的要素が必要か否か,必要と考える場合はどのような要素が必要かについて議論を行ったとしております。

そして,別の主観的要素が必要であるとの立場からは,幇助は違法行為を助長する目的といった主観的要素を有していなければ違法にならないところ,「侵害コンテンツの拡散を助長する目的」は必須であるとの意見や,著作権者に現に損害を与える行為は「利益を得る目的」や「著作権者等の利益を害する目的」との要件を満たす一方で,個人が日常的に行うリンク行為が捕捉されてしまう危険性を減らすことができるとの意見等が示された。他方,別の主観的要素は必要ではないとの立場からは,リンク情報の提供行為にはおのずとコンテンツを拡散する目的や幇助の目的が組み込まれているとの意見等が示されたとしております。

次に,i~vの他に考慮すべき事項としましては,正当な目的又は理由がある場合は差止めの対象から除外すべきとの意見,送信可能化に適用される権利制限規定は全て適用されるべきとの意見,113条の5項のように著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害することとなる場合のような要件を設けるべきとの意見等が示されたとしております。

続きまして,(イ)刑事を御覧ください。刑事につきましては,現行法上も著作権侵害の幇助として刑事罰の対象になり得るとの意見が多く出された一方で,どういった行為について処罰を下すべきであるかを明確にしたほうが良いのではないかとの意見等が示されているところである。このような議論の経過を踏まえ,次のiとiiの論点に沿って議論を行ったとしております。

そして以下では,論点ごとに示された主な意見をまとめております。

i刑事罰の対象として特に対応する必要が高い悪質な行為類型については,現行制度において対応が可能と言えるか,また,現行制度を踏まえ,新たに制度を設ける必要があるといえるかとの論点につきましては,既に刑事罰の対象となっている行為について個々の要件の立証が難しい場合には新たな犯罪類型を創出することは可能であるが,その必要がないということであれば刑事罰については,従来の一般法としての幇助の範囲で認めるということで足りるとの意見が示された。その一方で,解釈に不明確なところがあるのであれば,立法して明確に刑事罰とすべき行為を定めることはあり得るという意見,また,公衆送信権侵害の幇助犯としての処罰は理論的に不可能ではないとしても,正犯が特定されず起訴もされていない場合には幇助犯について告訴があったとしても起訴されにくく現実には処罰が難しいとの実態があるため,これを立法事実として新たな構成要件を作る必要があるとの意見等が示されたとしております。

次に,ii差止請求の対象として特に対応する必要が高い悪質な行為類型は刑事上可罰的であると考えられるか,仮に可罰的といえる範囲が異なると考えられる場合には,どのような行為類型が可罰的であると考えられるかとの論点につきましては,現行法では差止請求の対象になるもののうち私的使用目的の複製に関するもの等が刑事罰の対象から外されているが,違法コンテンツの公衆への拡散を助長する行為については,私的領域内の行為ではないので差止請求の対象にすべきものは刑事罰の対象にもすべきとの意見が示された。一方で,犯罪構成要件を設ける場合には,差止請求よりも更に厳格な要件が付されるべきであり,リーチサイトという場を設定すること自体を新たな処罰対象として設定していくべきとの意見等が示されたとしております。

また,この他,差止請求の要件がどの程度限定的なものになるかによって,刑事規定の作り方も変わるとの意見が示されたとしております。

続きまして,エ.立法形式を御覧ください。本小委員会では,新たに制度を設ける場合,どのような立法形式によるべきか,その際,当該制度の対象となる行為は著作権法上どのような性格のものとして説明されるかについても議論を行ったとしております。

立法形式としては,aみなし侵害とする方法,b支分権の概念を広げる方法,c独立正犯とする方法との考えが示されたとしております。

そして,aみなし侵害とする方法を採る立場からは,幇助の解釈論上一致が見られないところについては,著作権法上のみなし侵害のように,既存の侵害行為に要件を付加する形で対処していく方法もあるとの意見等が示されたとしております。

c独立正犯とする方法を採る立場からは,現行法でも可能な救済の明確化にすぎないところ,aやbを採用した場合,差止めを否定する部分は適法との誤ったメッセージを送るおそれが生ずるとの意見等が示されたとしております。

また,aとbの方法については,サイトの運営者がプロバイダ責任制限法上の発信者と解されると,プロバイダ責任制限法の免責が受けられてないといった起こり得る副作用を検討する必要があるとの意見が示されているとしております。

最後に,(3)今後検討すべき事項としまして,本課題については,引き続き小委員会の重要課題として,表現の自由への過度な萎縮効果を生じさせないよう配慮しつつ,被害に対する権利保護の実効性を確保するとの観点から,具体的な検討を迅速に行うことが求められるとしております。

【秋山著作権課長補佐】続きまして,権利者不明著作物等の利用円滑化について御説明申し上げます。

今期の小委員会におきまして主に拡大集中許諾制度にかかわる御議論を頂いたところでございます。検討の経緯は省略させていただきまして,今年度は調査研究の御報告をまず申し上げたところでございました。アは拡大集中許諾制度に係る諸外国基礎調査,これは一昨年度文化庁において行ったものでございました。さらに,昨年度は国内における様々な制度的な正当性の問題など法制的な観点からの議論を学者の先生方が中心に行っていただいたところでございます。

この調査研究の報告の中身としましては,制度の対象としまして一般ECLとするのか,個別的な目的を限定したECLとするのかといったことですとか,次のページでございますが,ECL団体の在り方ですとか,オプトアウトの有無など,様々なバリエーションがあるわけでございまして,こうした制度上の位置付けによって,法的な正当化可能かどうかということですとか,さらなる課題の存在についても異なるものであるという報告がされたわけでございます。

また,法的な正当化の可否につきましては,黙示の許諾,労働協約,民法上の事務管理等に関して,それぞれ課題が残るというような御指摘がありました。さらに,マル1からマル7にありますような,ECL団体の在り方ですとか,徴収・分配の手続,非構成員の保護の在り方,オプトアウトの仕組み等々につきまして,それぞれ課題の検討が必要であるということが調査研究によって明らかになったことを御報告させていただいたところでございます。

その上で小委員会において御議論いただいたわけでございますが,その検討の状況がウ.に記述しているものでございます。調査研究を踏まえますと,具体的な拡大集中許諾に関する制度設計を離れて一義的に正当化事情を特定するということは困難であるという御意見がございまして,具体的な制度内容の検討を併せて行いながらその可否について検討を進めるべきだと。このためには権利者不明著作物を含む集中管理のなされていない著作物の利用に係るニーズを把握した上で検討を行うべきであるということとなりました。

また,制度設計につきましても権利者不明著作物やアウトサイダーの著作物の利用円滑化を図るという本政策目的の達成にかかわる制度としましては補償金請求権を伴う権利制限規定,報酬請求権化,裁定制度,ライセンス優先型権利制限など,様々な制度の選択肢が存在するわけでありますので,こうした選択肢も含めまして適切な政策手段を選択する必要があるということの確認もなされたわけでございます。

こうした小委員会での御指摘を踏まえまして,事務局の文化庁において,これまで寄せられておりましたニーズ等も踏まえまして関係者にニーズのヒアリングを行ってきてございます。来年度は,その結果の御報告をさせていただきまして,更に必要な御議論を頂きたいと考えております。

(2)でございます。こちらも著作権者不明等の場合の裁定制度の見直しにかかわる部分でございます。こちらの文化庁における取組の状況を報告させていただきます。

特に新しい部分としましては,3パラ部分でございまして,裁定制度の申請手数料につきまして,現行著作権法施行令11条におきまして,1件1万3,000円となってございますが,こちらの見直しをさせていただくということをしました。とりわけ少額の利用などの場合は,利用のための補償金の額よりも申請手数料の方が高くなるといった御指摘もあったわけですが,今回,平成30年4月1日以降の申請からにつきましては,1件につき6,900円に減額するという政令の見直しを行ったところでございます。

権利者不明著作物に関しては以上でございます。

最後に16ページ3ポツをお願いします。その他,審議会では直接議論の対象として取り扱っていただくには至らなかった課題について4件ほど記載をさせていただいております。

まず法の適切な運用環境の整備に関しましては,特に今回改正法案では柔軟な権利制限規定の整備などを盛り込ませていただいているところですが,こうしたことを受けて,ソフトロー整備ということが重視されているところでございます。このため,文化庁では,著作権分野におけるソフトローに関する調査研究を実施しております。同研究におきましては,情報法,情報政策分野における実践例や,著作権法について現在存在するソフトローと言えるようなものについての分析を行いまして,例えば形成主体,形成目的,形成過程,それから形成に当たっての公的機関の関与の程度や内容等々といったことを分析いたしまして,著作権分野におけるソフトローの形成に当たっての在り方について検討を行っていただいているところでございます。

2点目,教育の情報化の推進等につきましても,制度改正の御提言は既に29年4月の報告書で頂いているわけでございますが,その後の運用面での課題につきましては引き続き課題として残っているわけでございます。このため,文化庁におきましては諸外国の補償金制度,及びライセンシー環境等に関する調査研究,これを更に深掘りしていくということを今年度やっております。

それに加えまして,下の後段の部分ですけれども,補償金の徴収・分配のための体制の整備やそれからライセンシー環境の整備に向けまして,権利者団体が構成する教育利用に関する著作権等管理協議会において引き続き議論が進められているという状況でございます。

3点目,障害者の情報アクセス機会の充実につきましては,こちらは今般の著作権法改正案とマラケシュ条約が関連しますけれども,これらの施行に向けまして国内においてアクセシブルな図書の流通をより円滑に行うための図書館関係者,障害者関係者における協議を進めていただいているところでございます。

最後に新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備につきましては,今年度の小委員会におきまして,利用許諾に係る著作物を利用する権利の対抗制度の導入ですとか,独占的ライセンシーへの差止請求権の付与等に関する検討を行うべきという御意見もございましたことを踏まえまして,今年度文化庁におきまして著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究を実施しております。同調査研究におきましては,著作物等の利用に関するライセンス契約の実態,対抗制度が存在しないことによって問題が生じた事例の有無,独占的ライセンスの対象となっている著作件等侵害の現在の対応状況,制度導入による著作物等の利用環境等への影響等に関する調査ですとか,諸外国の調査を行っておりまして,それらを踏まえました他の関係法令との整合性などの論点についても併せて整理を行っているところでございます。

今期の議論等の状況につきましては以上でございます。

次のページでございますが,おわりに,のところで,来期はまずは継続検討課題になってございますリーチサイト対応について取りまとめに向けて更に議論を深めることが求められる。その他の課題についてもそれぞれ検討状況に応じて,優先順位を付けつつ取り扱っていくというふうなまとめ方をさせていただいております。

御説明は以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。

【土肥主査】ありがとうございました。それでは,ただいまから説明を頂きました審議経過報告案につきまして,御意見,御質問があればお願いいたします。

いかがでございますでしょうか。

何分,審議経過報告案ということでありまして,審議の経過を淡々と特別に評価とか価値判断を加えないで作成していただいておりますので,自分の意見が入っていないとかそういうことがあれば,またおっしゃっていただければいいと思いますし,あるいは次期の検討の方向性とか何かについても御意見があれば入れていただいても結構ですけれども,特段なければ,このまま御了解いただければと思いますけれども,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

もし,このままでいいということでいいということでございました場合には,この内容で著作権分科会に私の方から報告をさせていただくという,そういう段取りになっておりますけれども,よろしいですか。

それでは,そういう形で,これは私の方から来月にございます著作権分科会に今年度の法制・基本問題小委員会における審議経過として報告をするということにさせていただきます。

今期はいろいろ御協力を頂きましてどうもありがとうございました。

最後でございますので,よろしければ中岡文化庁次長から一言御挨拶を頂戴できればと思います。

【中岡文化庁次長】中岡でございます。今期の著作権分科会法制・基本問題小委員会を結ぶに当たりまして一言御礼を申し上げたいと思います。

今期の法制・基本問題小委員会におきましては,昨年4月の第1回の会におきまして著作権の課題でございます柔軟性のある権利制限規定,二つ目には教育の情報化の推進,三つ目には障害者の情報アクセス機会の充実,また,著作物等のアーカイブの利活用の促進等につきまして制度改正の方向性につきまして重要な御提言を頂戴いたしました。これを受けまして同じ月に文化審議会著作権分科会の報告書を取りまとめることができたわけでございます。

そして先週23日の金曜日でございますけれども,この報告書の提言内容を踏まえました著作権法の一部を改正する法律案を政府として今国会に提出することができました。特に柔軟性のある権利制限規定や教育の情報化の推進につきましては,審議会の過去の検討経緯をさかのぼれば10年来の課題であったと言えるわけでございます。隣の永山審議官も著作権課長のときにc類型のチャレンジをしたわけでございますけども,今回捲土重来でやっと閣議決定,国会提出ということになったわけでございます。本当にありがとうございました。

これらの重要課題につきまして委員の皆様方に非常に精力的に御審議いただきました結果,私どもといたしましては,我が国にふさわしい保護と利用のバランスの取れた制度設計を御提言いただきましたことを厚く御礼を申し上げたいと思います。

文化庁といたしましては,今後,国会審議は4月以降になってくると思いますけども,国会において法案がお認めいただけますよう全力を注いでまいりたいと考えております。

また,今期の本小委員会におきましては,リーチサイト等を通じました侵害コンテンツへの誘導行為への対応を中心として御議論を頂戴いたしました。皆様,御承知のとおり国境を越えた海賊版の流通がますます深刻化している現在,その対策は急務であると考えております。今国会におきましても早速海賊版サイトの関係の国会質問等が出てまいったところでございます。早期の取りまとめに向けまして引き続き御議論をお願いいたしたいと思います。

また,今期の委員の先生の中には前期,前々期から引き続き御審議賜っている先生方が多いと思いますけれども,TPPの法案作成に向けまして御提言を頂戴し,法律自体は成立したわけでございますが,御案内のとおりアメリカ大統領の交代等もございまして,様々変遷を抱えておりますけども,それ以降も日EUの枠組み,あるいはTPP11という形で新たな枠組みがいろいろ議論されているという状況でございます。様々新聞報道等でも議論の状況が出ていると存じますけれども,これもまた,先生方に御議論いただいたことを踏まえて,しっかりと我々としても引き続き対応したいと思っておりますので,御報告を申し上げたいと思います。

最後に各委員の皆様方におかれましては今期の小委員会の充実した審議のために多大な御尽力を賜りましたことを改めて感謝申し上げまして,私どもからの挨拶とさせていただきます。本日は本当にありがとうございました。

【土肥主査】中岡次長,どうもありがとうございました。

最後に当たりまして時間もあることでありますので,私から一言だけコメントをさせていただいて,今期の本小委員会を閉じたいと思います。

今まさに中岡次長からございましたように,柔軟な権利制限規定というのは言ってみますと永山課長のときから議論ございました。大変ないろいろな事情があって今日まで至ったわけでありますけれども,今回御紹介ございましたように閣議決定ということでまとまってきそうになっております。やはりこういうものは内と外というんですか,啐啄とした呼吸が合わないと,なかなか委員会で,ある一定の方向性を示したとしても,まだ外の状況が熟してなければうまくいなかったりすることもあるだろうと思います。今期,扱いました問題というのは,リーチサイトによります侵害コンテンツの誘導ということでありますけれども,これも非常に大きな問題で,表現の自由そういった憲法上の問題とも非常に密接に関わってまいりますので,確かにかれこれ3年ぐらいかかっていると思いますけれども,こういう慎重な議論をしていただいてこの問題についての方向性を決定していただくというのは非常に結構なことではないかと承知をいたしております。

今回,リーチサイトの問題についての論点というのは大体出したのではないかいうふうに思っておりますので,私としては一安心をしておるところであります。昨年は,言ってみますと,単位の足らない学生といいますかね,要するに留年です。留年をいたしまして,1年間たちましたところ,やっぱりさほど成果を挙げていないんですけれども,一般にどの大学でも,学部の4年生までと5年生以上の成績評価というのは教官によっては多分少し違うんじゃないかなというふうに思っております。

そういうことで私は5年生以上というそういうところの評価で卒業させていただけるというふうに認識をしておりますので,あとは皆様の次年度の審議の経過を十分注視させていただきたいと思っております。長いことどうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,今期の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会を終了するわけでございますけれども,3月5日に著作権分科会が14時から開催されることになっておりますので,ここについて先ほど私申し上げたようなことで報告をさせていただくんですけれども,事務局から何かこの点についてございますか。

【秋山著作権課長補佐】特にございません。

【土肥主査】よろしいですか。では著作権分科会委員の皆様におかれましては,ひとつよろしくお願いいたします。

以上をもちまして,今期の分科審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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