文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第7回)

日時:平成30年12月7日(金)
10:00~13:00
場所:東館3階3F1特別会議室


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)著作物の教育利用に関する関係者フォーラムについて(報告)
    2. (2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)について
    3. (3)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについて
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」に関する資料(165.2KB)
資料2
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)(4.8MB)
資料3
ダウンロード違法化の対象範囲の見直しに関する論点整理(案)(389.3KB)
参考資料1
第5回及び第6回の法制・基本問題小委員会における主な意見概要(ダウンロード違法化)(133KB)
参考資料2
TPP11協定の発効に関する資料(153.8KB)
出席者名簿(44.2KB)

議事内容

【茶園主査】では,時間が参りましたので,ただいまから,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第7回)を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。

議事に入る前に,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところですけれども,この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】はい,それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。

なお,本日のカメラ撮りにつきましては,冒頭5分程度とさせていただきますので,御了承願います。

では,まず,事務局より配布資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,議事次第の配布資料一覧を御覧いただきたいと思います。

まず,資料1,著作物の教育利用に関する関係者フォーラムに関する資料となっております。

資料2がこの小委員会における中間まとめ(案)。

資料3がダウンロード違法化の対象範囲の見直しに関する論点整理案でございます。

また,参考資料1といたしまして,ダウンロード違法化に関して,前回,前々回頂いた主な意見をまとめております。

また,参考資料2として,TPP11協定の発効に関する資料をお付けしております。

不足などございましたら,事務局までお伝えいただければと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

では初めに,議事の進め方について確認しておきたいと思います。

本日の議事は,(1)著作物の教育利用に関する関係者フォーラムについて,これは報告です。(2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)について,(3)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについて,(4)その他ということになります。

では,早速議事に入ります。1番目の議題,(1)著作物の教育利用に関する関係者フォーラムについてです。

先般の著作権法改正におきましては,教育の情報化を推進するための権利制限規定等の整備が行われ,非営利教育機関における授業目的での著作物の公衆送信に対しまして,新たに補償金制度が導入されることになりました。

教育現場における著作物利用をめぐる諸課題につきましては,昨年4月に取りまとめられました文化審議会著作権分科会の報告書におきまして,この補償金に関する事項も含めて,教育関係団体と権利者団体との間で継続的な検討を要請するとともに,今後適宜その進捗状況の把握に努めることとされておりました。

本件に関しまして,先月末に,両当事者によりまして著作物の教育利用に関する関係者フォーラムが設置され,初回の会合が開催されたということですので,本日はその報告をお願いしたいと思います。

それでは,著作物の教育利用に関する関係者フォーラムの総合フォーラムの共同座長であります瀬尾様に来ていただいていますので,よろしくお願いいたします。

【瀬尾氏】今御紹介にあずかりました,著作物の教育に関するフォーラム共同座長を仰せつかっております日本写真著作権協会常務理事の瀬尾でございます。失礼して座って御説明させていただきます。

お手元の資料1を御覧いただければと思います。まず,今御紹介にあずかりましたとおり,本年度の著作権法の改正を受けて,制度構築のために教育関係者の皆様ときちんと意見交換をして,よい制度を作りつつ,ICT教育の推進を図るという目的から,今回,意見交換の場としてフォーラムというものを設置させていただくことといたしました。ただ,今回いろいろ教育関係者の皆様ともお話をさせていただきましたが,基本的には権利者側にとっては権利制限でございます。補償金がとかく大きく取り上げられますけれども,基本的には権利制限を我々は受容して,そして,それでも日本のICT教育の推進に協力をしていこうということで協力をさせていただいたということがございます。そういった趣旨を教育関係者の皆さんも非常によく,今現在御説明のところ,お酌み取りいただいて,協調関係を作った上でフォーラムを設置しているということです。

このフォーラムに関しましては,権利者側が設置するとか教育関係者側が設置するというものではなく,共同で教育関係者,権利者双方がともに設置をすると。ただし,事務局に関しましては,現在この教育に関する権利者側の協議会の事務局が引き受けるという形で設置をさせていただいております。よく最初に,これは権利者が設置して教育関係者をお呼びするのかとか,どういうふうな形で設置されているのかというふうなお尋ねを頂くこともございますので,まずその設置の目的と形態については最初に申し上げているところでございます。

資料の最初にございますとおり,今後日本が直面するであろうAIを基盤とした新しい経済構造の社会に対応するため,現在,多方面にわたる変革が進められている。その中で最も重要な対応を必要とする分野の一つが教育分野におけるICTの活用である。2018年5月に公布された著作権法の改正は,このための重要なステップであり,改正法に基づく制度の運用のための環境整備が早期に求められている。また,法改正を契機として改正法がカバーできる範囲にとどまらず,教育活動における著作物の利用をより円滑に行うことができるようにするための様々な環境の整備を併せて行っていくことが望まれる。ここで権利者団体と教育関係者が共同してフォーラムを設置し,文化庁,文部科学省,有識者等より助言を得つつ,改正法に基づく制度の構築をはじめとする環境整備に取り組むこととした。このフォーラムは,改正された著作権法の趣旨に基づき,教育において,より円滑に著作物を利用できる環境を速やかに実現するための議論を行うことを目的とするということをうたっております。

扱うテーマにつきましては,昨年の文化審議会からの要請に基づいて,1,2,3,4,と,簡単に申し上げますと1番目が補償金の支払い等,2番目が教育に関する研修や普及啓発,3番目が著作権法の解釈に関するガイドライン,4番目が補償金制度を補完するライセンス環境,この4つについて少し掘り下げていくということです。

構造としましては2つ,1つは総合フォーラムと申しまして,いわゆる審議会の親会に相当するようなイメージで設置されております。ここにおきましては,総合フォーラムは,権利者団体及び学校種ごとに各教育機関の設置者を代表する団体の関係者で,各団体の意見を集約したり,代表したりしていただくことのできる方を構成員とし,専門フォーラムからの意見を適宜検討して議論の取りまとめを順次行うという総合フォーラムと,それから各4つのテーマについての専門フォーラムを設置いたしました。これは,昨月末に行われた総合フォーラムにおきまして,専門フォーラムの設置を決定させていただいたところでございます。

次のページをめくりまして,フォーラムのスケジュールがございます。非常に立て込んだスケジュールになっておりますが,非常に精力的かつ集中して議論を行おうということから,各フォーラム3回,総合フォーラムを含めて5フォーラム,合計15回のフォーラムを3月までに行うということで計画をしております。この内容につきましても,現在細かな内容を検討して企画をしております。現在,総合フォーラムの1回目が終わりましたが,来週の12日,13日に専門フォーラムの補償金について,それからガイドライン,ライセンスについてのフォーラムが随時,適宜開かれていきます。これにつきましては,その中で,よりよい意見交換を行っていくといった目的を達成するために行っていくということで,この後,このフォーラムの意見参考を基にしつつ,意見聴取を指定された団体が行うというたてつけになりますが,団体の指定につきましてはまだ未定でございますけれども,この権利者側の協議会といたしましては,指定を受けるべく法人を設置し,でき得る限りその法人が指定を受けられるよう努めていくというような形で進めていくつもりでございます。そうしたことから,今年度いっぱいでこのフォーラムを終了して,意見聴取を行って,補償金の認可申請にまで行くというような予定で進めていく予定でございます。

それから,3ページ目が先ほど申し上げましたスケジュールになります。場所等もございますが,かなり実は,傍聴の方,オブザーバーの方,関係者に一応お願いをしているのですけれども,それぞれがかなり大規模になります。80人から100人規模の会議になりますので,15回,大変でございますけれども,でき得る限り公正な場を提供して,いい議論をしていきたいと思っております。

その次からが,設置に当たって要綱を設けました。余り長くお時間をとらせていただくこともないあれなのですけれども,このフォーラムの中で先ほど申し上げました構成員等を,これは後で御参照いただければよろしいかなと思います。この中で,陪席・オブザーバー,定足,座長その他の取り決めを行って,これを教育関係者の皆さんと共有しつつ決めました。一応こういうことにつきましては規定ぶりも非常に重要かと思いますので,文化庁さんからも御助言を頂きつつ,決定をしていったということでございます。

概況,最後に申し上げますと,現在の状況の中で教育関係者,特に設置者の団体の皆さんとは非常によく御説明と御意見を伺うことを繰り返した中で,このフォーラムの設置に至っております。教育関係者の皆様につきましても,今回,補償金制度という大きな変化がある制度を迎えておりますけれども,やはりその教育のICT化の重要性ということは初等中等教育段階,それから高等教育段階双方におきましても,非常に御認識をお持ちだという実感を持っております。これを機に,このフォーラムが意見交換の一時的な場ではなくて,継続的に教育関係者と権利者が今後協力していくためのベースとなるような,そういう話し合いになればいいなと,私は,一応座長としてはそういうふうなことを希望しております。また今後,非常に大きな変化があるやもしれませんので,そういうことにつきましてもこういうチャンネルがあることは重要かなと思います。

最後に,総合フォーラムそれぞれの座長につきまして,資料別添2の7ページを御説明させていただきます。総合フォーラムといたしましては,国立大学協会から竹内比呂也先生,そして,権利者団体からは私が出させていただいております。そしてまたフォーラム1,補償金の支払等に関する専門フォーラムにつきましては,総合フォーラムと同様とさせていただきまして,竹内先生と私の共同座長ということにさせていただいております。それから専門フォーラムの2番目,これは研修・普及啓発に関するものですけれども,これは山口大学知財センターの久保田裕先生にお願いをしております。それから3番目の専門フォーラムはガイドラインに関する専門フォーラムですが,これは一橋大学の井上由里子先生に座長をお願いいたしました。そしてまた専門フォーラム4,教育利用に係るライセンスに関わる専門フォーラムですが,これは早稲田の上野達弘先生にお願いしているということでございます。

このような形でよい議論を進めて,またかつ,改正された著作権法,それから審議会の御趣旨に沿ったよい結果を出せるように,鋭意頑張っていく所存でございます。また適宜必要があれば,お招きいただければ御説明をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

一応,報告は以上でございます。ありがとうございました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。それでは,ただいま御説明いただきました内容につきまして,御質問等がございましたら,お願いいたします。では,松田委員。

【松田委員】共同座長の任,大変重たい責任があります。御苦労さまでございます。これは35条の補償金の関係から許可申請まで持っていくという作業が,とりあえずは約1年間ですか,そうでもないか,半年間ぐらいでやっていこうということになる。ここに期待したいところは,実は,直接35条の補償金の問題ではなくて,その周辺に教育関係では著作物の多様な利用についてのライセンス市場というのがすごくたくさんあると私は思っているのです。そのことが補完するライセンス制度まで検討していただいて,そして両団体で調整をしていくという作業が必要になりますよね。これにすごく私は期待しています。

というのは,著作権法の中で,やはり調整をしなきゃならない場面っていっぱいありまして,ところが,おおよそのところは権利者団体がある程度の指針を出して,それがだんだん固まっていくという状況は多く認められるのですが,利用者と権利者団体がフォーラムを作ってそこで話し合って,新しいガイドライン,それからソフトローというようなものを作っていくという作業は,実はなかなかうまくいっていないんだなというふうに思っておりまして,これが理想だと思っております。この35条関係から生じました教育分野ではありますけれども,こういうことの経験が著作権法全体に影響する可能性が私はあると思っております。高く期待しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【瀬尾氏】ありがとうございます。まさに今,松田先生おっしゃるとおり,これは単純に35条の問題を解決するだけではなくて,今後,著作権と教育の関わりというのは,私は個人的に多分深まっていくだろうというふうに思います。そしてまた,今のようなライセンスのようなバッティングする部分も明らかに出てくるとなったときに,先ほど申し上げましたように,このような解決方法,単なる法の執行若しくは単なる契約だけではなく,それがマッチングしたような,ソフトロー的な部分を含めた解決方法ということが非常に重要だという自覚も持っておりますので,微力ですけれども,そういった制度と取組については引き続き頑張っていくつもりでございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。特によろしいでしょうか。

では,どうもありがとうございました。大変御苦労なことが多いと思いますが,どうぞよろしくお願いします。本小委員会といたしましては,本フォーラムの進捗状況に応じてまた御報告をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【瀬尾氏】ありがとうございました。

【茶園主査】それでは続きまして,議題の2つ目,(2)文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会中間まとめ(案)についてです。

本小委員会では,昨年度からの継続課題であったリーチサイト等を通じた侵害コンテンツ等への誘導行為への対応のほかに,この後に御審議いただきますダウンロード違法化の対象範囲の見直しをはじめとする著作権等の適切な保護を図るための措置や,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入をはじめといたします著作物等の利用の円滑化を図るための措置等の新規課題についても御議論いただきました。

前回までの議論を踏まえまして,各課題に関する本小委員会の議論を一旦取りまとめるために,事務局におかれまして中間まとめの案を作成いただきました。本日はそれらについて御審議いただきたいと思います。各課題については,既に本小委員会でおおむね議論ができているものもございますので,まずは事務局において全体を通して追加事項等を御説明いただきまして,その後に各課題ごとに御議論いただきたいと思っております。

それではまず,事務局から説明をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の資料2を御準備いただければと思います。本小委員会の中間まとめ(案)につきまして概略を御紹介したいと思います。

まず,目次にございますとおり,今期の小委員会におきましては,リーチサイトの問題をはじめとして多岐にわたる課題について御議論いただいておりました。その結果を事務局で集約・整理したものということでございます。先ほど主査からもございましたとおり,それぞれの課題につきましては既に議論いただいておりますので,その後事務局で追記した部分を中心に御紹介をしていきたいと思っております。

なお,第2章,ダウンロード違法化というものがございますが,こちらは後ほど論点整理に基づいて議論いただきますので,現時点でこの中間まとめ(案)には含めておりません。

まず1枚お開きいただきまして1ページ,「はじめに」にという部分を御覧いただければと思います。これまでの検討の経緯,今後の予定について記載をしている部分でございます。1段落目にございますとおり,我が国におきましては知的財産立国,文化芸術立国の実現に向けて様々な施策を進めておりまして,この著作権分科会におきましても著作権に関する様々な課題について検討を行っていただいております。その中で,第13期以降につきましては,法制・基本問題小委員会,この小委員会を設置いただき,著作権法制に関する様々な事項について検討が進められてきております。昨年度,第17期におきましては,新たな時代のニーズに対応した権利制限規定の在り方を含めまして,大きく4つの課題について議論いただき報告書がまとまっております。これを受けて,政府として改正法を立案し,それが先日成立し,来年の1月から原則として施行される予定になっているということは御案内のとおりかと思います。

こういった経緯を踏まえまして,今期,第18期におきましては,第16期からの継続検討課題であるリーチサイトの問題に加えまして,ダウンロード違法化,それからいわゆるライセンシーの保護の課題を含めまして,新しい課題についても検討を進めてきております。今回は,下の丸1から丸6までの課題につきましておおむねの法改正の方向性がまとまったということで,中間的な取りまとめを行うものでございます。なお,下の部分に記載しておりますとおり,この中間のまとめを取りまとめいただきましたら,今後,事務局においてパブリックコメントを実施する予定でございます。そこで広く国民一般の御意見も把握した上で,最終的な報告書の取りまとめに向けて更なる検討を行っていただきたいというふうに思っております。

続きまして,第1章,リーチサイトの部分から追記した箇所の御紹介をしていきたいと思います。リーチサイトにつきましては,9月の第3回の小委員会において方向性を取りまとめていただいております。その際に頂いた御意見について,当時の資料には反映できておりませんでしたので,追記したということでございます。

まず資料が飛びますけれども,21ページをお開きいただきたいと思います。21ページの注釈の19番というものを追記しております。これは,リーチサイトの問題を検討するに当たって全般的に注意をしておくべき検討の視点ということで御意見を頂いたものというふうに承知をしております。把握されている被害実態を踏まえますと,リーチサイトによる出版権,著作隣接権に係る侵害コンテンツの誘導行為の被害も存在しているということで,著作権に係るものと同様の対応を行う必要があるという御意見でございました。この中間まとめ(案)を含めまして,典型事例である著作権侵害の場合を想定した記述になっておりますが,実際,対応を行う際には,著作権のみならず出版権,隣接権の部分についても同様に措置を行うべきだという御意見でございます。

続いて22ページ,第3節の1番,今般の対応の趣旨についてという部分を追記しております。これは審議の中でも複数の委員から御意見を頂いたところでございまして,前提として確認する必要があるということで追記を行っております。1段落目にございますとおり,本小委員会における今般の検討は,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為を取り出して検討してきたものでございます。このため,2段落目にございますとおり,制度整備につきましては,リンク情報の提供全般についての適法・違法の解釈に影響を与えること,ましてや間接侵害一般に係る解釈に影響を与えるものではないということでございます。したがいまして,今般の提言に基づいて規定が整備される場合には,それ以外の部分につきまして反対解釈がなされることはあってはならないということを書いております。実際,政府におきまして規定の整備をするに当たりましても,このような趣旨を明らかにしつつ対応がなされることが必要だということで記載をしております。

続きまして,また資料が飛びますけれども,29ページをお開きいただければと思います。こちらは対象著作物の範囲を限定すべきかどうか,とりわけデッドコピーなどに限定すべきかどうかということを検討した部分でございます。2か所追記を行っております。

上の部分につきましては,限定の仕方についての御提案だと受け止めております。従来,原作のまま,デッドコピーという御意見がありましたが,それに加えまして,著作権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限りという形で,抽象的に規定する方法もあるのではないかという御意見がございましたので,追記をしております。

それから次の段落につきましては,こういった様々な御意見を踏まえた対応を記載した部分ですが,対応に当たっての考慮要素について御指摘を頂いておりました。対象範囲を限定しますと潜脱のおそれがあるということ,また,対象範囲の限定の仕方が明確でない場合には萎縮効果を生じるおそれがある,こういう点にも留意しつつ検討を行うことが適当というふうに記載をしております。

続いて30ページの,その他の要素(正当な目的を有する場合の取り扱い)という部分でございます。こちらはリンク情報の提供などを規制するに際して,正当な目的を有する場合には対象から除外すべきかどうかということを検討した部分でございます。マーカーを引いておりますとおり,この点につきましては,みなし侵害にした場合には,引用などの権利制限規定の適用を受けられない可能性がございます。その点,リーチサイトと呼ばれる場におきましても,適法引用に当たる形でリンクを提供することを許容するべきだということであれば,安全弁があった方がいいのではないか,こういう御意見でございました。

また,その安全弁の規定の仕方につきましても,注釈の28番のところで記載をしております。いわゆるTPP11整備法におきまして,113条の3項ということでアクセスコントロールの回避規定が設けられております。そこにおきましては,「著作権者の利益を不当に害しない場合を除き」という規定がございますので,こういうものも参考になるだろうという御意見でございました。

さらに,29番の注釈も追記をしております。この正当な目的を有する場合を除外するべきかどうかというのは,場の要件の設定ともリンクするだろうという御指摘でございます。場などの要件の設定が厳格であれば,例外規定は不要という方向になりますけれども,場などの要件の設定が抽象的であれば,例外規定は必要という形で,両者は相関関係にあるだろうという御指摘でございます。規定の整備当初,仮に場が厳格に限定された結果,例外規定は不要ということであっても,将来,場の要件が緩和されますと,改めて例外規定の要否の検討が必要だろう,こういう御意見でございます。

続きまして,また資料が飛びますけれども,33ページを御覧いただきたいと思います。ローマ数字の2番,リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為に係る罰則について記載した部分でございます。とりわけリーチサイトと比べましてもより悪質な行為である海賊盤蔵置サイトにつきましても措置を行うべきだということを記載しておりましたところを追記をしております。この点につきましては,個人の私的利用に供されるクラウドロッカーなどが対象とならないよう,悪質な行為を適切に取り出す必要があるという御意見でございます。

また,右のページについても追記をしております。こちらは実際の法定刑,具体的な刑罰の取り扱いについて記載をした部分でございます。「また,」とございますとおり,従来,著作権法では罰則は懲役と罰金のみでございます。この点,インターネット上の犯罪についてどのような刑事罰が望ましいのかという観点から,将来的には制裁金,課徴金,サービスの提供停止など,こういった手段も検討されることが望ましいという御意見でございます。

続きまして,またページが飛びますけれども,41ページをお開きいただきたいと思います。こちらはインターネット情報検索サービスに関する対応の方向性を記載した部分でございました。まず,注釈の35番でございます。インターネット情報検索サービスにつきましては,まず当事者間の協議が重要という御指摘を頂いておりましたが,その協議の場の設定についての御意見でございます。協議を行う当事者以外の第三者の利益や表現の自由への適切な配慮という観点から,政府関係者,独立した第三者が適切に関与することが望ましい,このような御意見を追記しております。

また本文に戻っていただきまして,イの当事者間の取組の状況について,こちらは進捗状況がございましたので,事務局の方で追記をいたしました。まず1段落目にございますとおり,第3回の小委員会におきましては,こういった方向性が確認されておりました。すなわち,本小委員会としましては,権利者団体,インターネット情報検索サービス事業者に対しまして,速やかに検討の場を設定し,具体的な改善方策の検討に着手することを求める。また,しかるべき時期にその報告を求める,このようにしておりました。そして,2つ目のポツにございますとおり,本小委員会としては,その段階におきまして,当事者間の取組によって解決を図ることができるという見通しが得られるかを見極めた上で,立法的対応の要否を判断する,このような取り扱いが第3回で決められておりました。

その後,取組の進捗状況がありましたので,下の部分で追記をしております。一番下の段落でございますけれども,先日,文化庁も交えまして,グーグル合同会社,コンテンツ海外促進流通促進機構,出版広報センター,この3者の間で今後の取組の進め方について協議が行われております。その中で,次のページにございますとおり,丸1から丸4まで4つの事項につきまして関係者間で合意がなされたところでございます。

まず丸1は,本課題の早期解決に向けて,事業者と権利者団体の間において定期的・継続的に協議を行う場を設けるということでございます。また,この協議の場にはグーグル以外の事業者の参画,文化庁の参画を得る方向で調整し,また,第三者,有識者の知見が必要となる場合には,その協力を得るということでございます。

次に丸2につきましては,現時点で具体的な取組,トライアル段階ということで,中身は明らかにできないということではございましたけれども,この協議の場では,グーグル様の方からトップページの表示の改善につきまして具体的な御提案,御報告がございました。これにつきましては,コンテンツ海外流通促進機構,それから出版広報センターの方からも,非常に有力な取組だということで評価,期待が示されたところでございます。

それから丸3につきましては,この具体的な報告のあった取組のほかにも,侵害コンテンツへのアクセス助長防止の観点から,必要となる実効的な防止方策につきまして,権利者団体の意向,また事業者の実行可能性に留意しつつ,継続的に検討・協議を進めるということでございます。

また,丸4といたしましては,協議が一定程度進捗した段階,具体的には,平成31年度,来年度当初を目途にこの小委員会にも進捗を報告するということで,この4点が合意されたわけでございます。

これを踏まえまして,ウで,本課題に関する今後の対応の方向性について記載をしております。今御紹介したような合意がなされておりますので,1段落目の下から2行目あたりから書いておりますが,現時点におきましては当事者間の取組によって課題の解決を適切に図ることができる可能性は十分にあるものと考えられるということでございます。そのため,本小委員会としましては,現時点で直ちに立法的対応の検討を進めることはせずに,まずは当事者間の取組の状況を見守るということで,協議が一定程度進捗しましたら,また報告を受け,必要に応じて対応を検討していくことが適当と記載をさせていただいております。

続きまして,下のページ,第3節,アクセスコントロールの関係について御説明をいたします。こちらは前回の小委員会におきまして議論いただいたものでございます。その際頂いた御質問,御意見を踏まえまして,一部追記を行っております。

まず,47ページをお開きいただきたいと思います。この部分は,アクセスコントロールの定義につきまして,最新の技術の状況などに対応して見直す必要があるということを記載した部分でございます。前回の議論におきましては,専らソフトウエアのアクティベーション方式と言われるものを念頭に議論をされておりましたが,こちらにございますとおり,こういった技術につきましては,ソフトウエア以外の著作物に関して利用される場合もございます。ここでは例えばと書いておりますが,映画について,一定期間は誰でも視聴できるけれども,一定期間経過後に視聴するためには,正規に購入したシリアルコードの認証が必要,こういう場合もあり得ると思っておりますので,法制的に定義規定を明確化する際には,ソフトウエアだけではなくて著作物全般が対象になるような形で行うことが適当というふうに記載しております。

また,その次の段落は,定義規定を見直すことによる効果について委員の方から御質問がございましたので,それを追記しております。これによりまして,アクティベーション方式の回避行為や,アクティベーション方式を回避するための装置,プログラムの公衆譲渡などが規制対象に含まれることが明確になり,ひいてはソフトウエア等に係る著作権者の利益がより確実に保護されることになるということで,効果の面についても補足的に記載をしております。

続きまして,49ページをお開きいただければと思います。こちらは,不正なシリアルコードの提供等を新たに規制対象とすることが適当だというふうに記載した部分の補足事項でございます。前回の議論では,ソフトウエアのアクティベーション方式を念頭に置いておりましたので,その際はシリアルコードとクラックプログラムというものがセットで機能するような事例が念頭に置かれておりました。ただ,ここに記載をしておりますとおり,ソフトウエアのアクティベーション方式以外につきましては,不正なシリアルコードの提供,それが単独として回避に用いられるという事例も想定され得るところでございますので,実際に法制化をする際には,回避プログラムの提供などとは独立した行為として規制対象に追加することが適当だということを記載させていただいているところでございます。

続きまして,56ページの第4章の部分を御覧いただければと思います。著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化,こちらも前回の小委員会で議論いただいたものでございます。こちらにつきましては,前回提出した資料から特段の追加の御意見は頂いておりませんので,記載は全く変更しておりません。

続きまして,またページが飛びますけれども,61ページをお開きいただきたいと思います。第5章,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入という部分でございます。こちらは,10月に開催されました第4回の本小委員会で,ワーキングチームから御報告を受けて審議いただいたものでございます。この点につきましても,ワーキングチームからの報告について特段の御意見はなかったかなというふうに思っておりますので,今回も特段の追記は行っておりません。

またかなりページが飛びますけれども,110ページをお開きいただきたいと思います。第6章,行政手続に係る権利制限規定の見直しでございます。地理的表示法・種苗法の関係ということで記載をしております。こちらは,11月に開催されました第5回の小委員会で御議論いただいたものでございます。こちらにつきましては,地理的表示法と種苗法を権利制限の対象に含めるということについては特段御意見がなかったかと思いますが,その他の行政手続の部分について御意見がございました。

118ページをお開きいただきたいと思います。マーカーを引いている段落の5行目あたりから御覧いただければと思いますが,今後,新たに同種の行政手続が現れた場合に,柔軟に対応できるような規定の見直しの在り方につきましても,複数の委員から御意見を頂いたところでございます。具体的には,法律において包括的に規定をするという方法ですとか,政令に委任して個別に定める方法などが挙げられたところでございます。政令委任につきましては,新法47条の5第1項3号で例があるということ,また,一定の利害状況がある場合には権利制限をするということを法律で定めておけば,個別の手続は政令で規定することは許容され得るのではないかという御意見がございました。一方で,このような意見に対しましては,原則として法律によるべきという御意見ですとか,無償の権利制限でいいのかといった点も含めて慎重な検討が必要だという御意見もございました。

これを踏まえまして,今般の規定の見直しに当たりましては,地理的表示・種苗法の手続を対象に含めるほか,このような意見も踏まえながら,権利者に与える影響にも適切に配慮しつつ,柔軟に対応できるような規定の見直しについても適切な検討が行われることが望ましいと記載をしております。

また,注釈の124についても追記を行っております。審議の中では,行政手続だけではなくて,裁判手続の部分につきましても検討が必要ではないかという御意見を頂いております。具体的には,ADRなど裁判手続に準ずるものということで,どこまで含まれるかというのが解釈の余地がございますので,同じような紛争解決手続でも準ずると言えるかどうか疑義のあるものにつきましては,規定の見直しを含めて検討が望ましいのではないかという御意見を頂きましたので,その旨を記載しているところでございます。

次に,119ページ,第7章,その他という部分でございます。改正著作権法47条の5第1項3号の規定に基づく政令のニーズについてでございます。こちらは,第4回,第5回の小委員会で検討いただいたところでございまして,その際の検討の資料,それから前回の小委員会で配布した資料を基に記載しているところでございます。

124ページをお開きいただければと思います。こちらも内容につきましては,第4回,第5回の審議の中で明らかになっている部分でございますが,改めて今後の対応ということで記載をしております。今回の検討の結果,提出されたニーズを基に政令の制定は行わないということでございます。一方で,一部のニーズにつきましては,現行法の規定で適用ができるのではないかということ,また,現行規定の改正を含めた立法的対応に関する御意見もございましたので,その点は,今後事務局で整理をした上で,順次検討を行うということが記載しております。

また,今回の審議の中で,新法47条の5第1項の規定の趣旨,要件の解釈などが十分に事業者,団体の方に伝わっていないということも明らかになったところでございます。例えば検索サービスにつきましては,キーワードを入力しないような,いわゆるプッシュ型と言われるものも幅広く含むものとして立法しているわけでございますが,必ずしもそれが伝わっていなかったということもございます。また,情報解析につきましても様々なサービスに対応し得る幅広い概念だという御指摘もございました。これを踏まえまして,今回把握された事例も参考にしまして,事務局でQ&Aを作成し,丁寧な周知に努めることが必要だと思っております。またその上で,この政令のニーズ募集につきましても,一定の期間を置いて改めて実施し,その結果に基づいて,また,政令の制定の要否については更なる検討を行うことが適当だということで記載をしてございます。

資料の125ページ以降につきましては,附属資料として小委員会の委員の名簿,それから今年度の審議経過を記載しておりますので,御参照いただきたいと思います。

少し長くなりましたが,事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。それでは,まずは1ページ目から42ページ目まで,すなわち,最初の「はじめに」と,第1章,リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応までにつきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。では,奥邨委員。

【奥邨委員】すいません,細かなところになるんですが,22ページの黄色で追加されたところの2段落目の2行目のあたりですか,リンク情報の提供行為全般についての適法・違法の解釈に影響を与えるものというところなんですが,これは私の語感の問題かもしれないんですけれども,全体があって,そこから特別な対応が必要なところを取り出すということになっているわけなので,全般と言っちゃうと,取り出したところも含めてみたいになるので,少し何か,次の一般のところは,間接侵害一般はいいんですけれども,その部分の一部については今回特に取り出して,こういう場合は特に違法になるとか,刑事罰になるというようなことを言ったわけですから,ちょっと全般と言ってしまうと,その辺があやふやになるような気がいたしました。別にこういう文言にこだわるつもりじゃないんですが,例えばなんですが,リンク情報の提供行為全般を対象とするものではなく,ましてや,あとはそのままとかいう形で,今回の対象は全般ではないんだよ,取り出したところだけが対象なんだよというようなことにしておいたら誤解はないのかなと。で,後ろのところも,その下の段落のところにも,リンク情報の提供行為全般について違法・適法の解釈という,ここも違法・適法と言わずに全般の解釈に影響を与えないというようなことでもいいのかなと思いました。余りこだわるところではないんですが,ちょっと取り出したところと残ったところの関係が分かりづらいかなと思ったので,そういうことを申し上げました。

以上です。

【大野著作権課長補佐】後ほど主査とも御相談して適切な文言に修正したいと思います。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。では,龍村委員。

【龍村委員】34ページの黄色い箇所ですけれども,その他の刑事罰の対応の列挙で,制裁金,課徴金,サービスの提供停止等,主としてアメリカなどで行われているドメイン名の没収とか,そういうものもやや念頭に置くというようなニュアンスかと思いますので,付加刑としての没収とか,そういうものを追記してはどうかというふうに思いました。

【大野著作権課長補佐】そちらも主査と御相談して追記をしたいと思います。

【龍村委員】すいません,没収といっても刑事没収,民事没収があるようですけれども,民事没収がターゲットかなと思います。

【茶園主査】表現ぶりについてはお任せいただけるでしょうか。

【龍村委員】もうお任せします。

【茶園主査】はい。ほかに何かございますでしょうか。では,深町委員。

【深町委員】同じく今の34ページ目の追加部分ですが,こちらの方の新たな手段というのは,今回のリーチサイトに関する刑事罰のみを対象とする,要するにそこでの新たな手段も検討されることが望ましいとかとあって,決して著作権法上における刑罰一般,罰則一般に広げる趣旨ではないということなのか,その点についてちょっとお伺いしたいんですが。

【大野著作権課長補佐】事務局としましては,これまでの審議をお伺いしていますと,リーチサイトが契機としてこのような御提案だったのかなと思っておりますが,検討する際には,必ずしもリーチサイトに限られるわけではなくて,ほかのものについても議論を行う必要があるのであれば,併せて検討が必要な事項だというふうには思っております。

【茶園主査】よろしいでしょうか。

【深町委員】はい,構いません,ありがとうございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では,生貝委員。

【生貝委員】ありがとうございます。41ページ,42ページの部分に関してでございます。検索サービスに関わるこういった海賊版への対策につきまして,こういった当事者間での協議,一定の公の関わりを伴うソフトローでの対応の協議が進められているということは非常に望ましいことだというふうに存じました。

そしてこの中で,特に注の35のところで,やはり第三者の利益ですとか,表現の自由への適切な配慮ということについても追記いただいているところでございますけれども,このことは,やはり非常に情報流通のインフラとして機能している検索サービスの在り方というものに対して,ある一定の変化を及ぼそうといったようなところ,非常にやはり広く社会に与える影響というところも多いところとは存じますので,特に強くこだわるところではないのですが,やはりこういったプライベートなルールの在り方に対して,一定の透明性の在り方という観点から評価や理解をしていくということも重要なのかというふうに考えているところです。もちろん,商業的,技術的な観点からこういった協議の全てについて透明というものを求めるということは,これは逆に適切ではない部分もあるかというふうに存じますが,もし例えば35のところの,協議を行う当事者以外の第三者の利益の反映や透明性の確保,表現の自由への適切な配慮の観点からといったような形で,どういったような観点からこういった取組を見ていくのかということで,一言追加するということが例えばあり得るかと考えた次第です。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。おっしゃるとおりかと思いますので,また文言の追記をさせていただきたいと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】22ページの検討結果の最初の「今般の対応の趣旨について」というところについて,先ほど奥邨委員が指摘されたところにもかなり密接に関連しているかと思いますが,今回の問題のスコープを非常にクリアに出していただいて,大変よろしいのではないかと思っております。以前から申し上げていますとおり,このリーチサイトの問題も含めて,間接侵害とみなし侵害という,この2つをうまくどう組み合わせていくかというところが鍵になるのではないかと思っております。間接侵害は現行法で読めるかどうか,ないしは立法するかどうかという点について争いがあるところは間違いないのですが,現行法の解釈論の話である間接侵害と,今度みなし侵害として立法しようというものをうまく組み合わせていく際に,話が混乱しないように,非常に配慮された文章になっていると思います。要するに,ここでやるのは,みなし侵害をきちんと立法上定めていくということであって,その際には間接侵害を肯定するにせよ,否定するにせよ,その解釈には影響を与えないというところを非常に注意深く書いていただいていております。この2つを混ぜ出すと,議論がむちゃくちゃになってどうしようもなくなると思いますので,ここはきちんと分けるということが最初にクリアに出ていることが肝要であります。

間接侵害に関しましては,最近いろいろなシンポジウムに出ておりますが,重要な点は,日本だと間接侵害というのは幇助者に対する差止めができるかとかいうことが中心的論点で,できるという説とできないという説があるのに対し,ドイツでは,幇助者に対する差止めが当然できると考えた上で,妨害者,Störerと呼ばれていますが,別にGehilfe,幇助者でなくても妨害者に当たるような人に対しても差止めができるという,幅広い議論になっていることであります。間接侵害の方もそもそも幇助者の対象という今までの議論だけではなくて,妨害者までするかどうかというところも含めて,幅広い議論が必要になってくる難しい論点なのですが,幇助者なのか妨害者までなのかは別として,幇助者というのは正犯よりも従的な弱い扱いなのですが,恐らくここでやっているのはみなし侵害という独立正犯的な,人を幇助しているというよりはもっと悪い,正犯に準ずるような,ものを新たに侵害とするのであって,それが法113条のみなし侵害の実質だと思っております。幇助犯等なのか,独立正犯なのかというのを混ぜると議論がごちゃごちゃになってしまいますので,そこを非常にクリアに出していただいているのは,大変よいことではないかと思っております。

次に,気になりますのは, 29ページ,対象範囲をどうするのかというところで注記されていまして,真ん中あたりに,「原作のまま」とか,あるいは「著作権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り」という,ことで絞ろうというのがあります。私としては,後の論点にも関わってきますが,原作のままというと,何が原作のままかというのが非常に曖昧になってしまいますし,それから不当に害されることとなる場合というのも非常に曖昧な概念でありますので,絞るのであれば,一番最初のリーチサイトの定義のところで,きちんと悪いものに絞り込んでいくということをやればよいと思います。どこかで絞らなければいけないのですが,その絞るべき場所は,原作のままなど後ろの方でなくて,最初のところであるということであります。絞り方はもう既に議論がなされていますが,真に規制を加えるべきリーチサイトと呼ばれているものをきちんと定義して,そこのところできちんと絞り込んでいけば,後のところでは特に絞り込む必要はない。不明確な形で後ろの方で絞ると,かえって権利者,利用者両方にとって予見可能性がなくなって,両方にとって不幸なことになるので,きちんと最初のところで絞るということが重要ではないかと思っております。

それとの関係で,次に,30ページ,引用などのものをどうするのかという,黄色の部分でありますが,ここも同じで,本当に悪質なリーチサイトというものに絞り込んだら,それについて引用が問題になるということも余り考えにくいのではないかということであります。悪質なものを絞り込んでみなしてしまえば,それはみなし侵害なのだから,普通であれば支分権と権利制限とを併せて侵害が決まるのですが,みなし侵害というのはもう最初から侵害が決め打ちに出来ているという,規定構造になっておりますので,その中にこの引用を入れると,現行の113条全体の構造が崩れてきてしまうように思います。113条はそのようなものは想定していない,つまり,一旦支分権で入れて権利制限で抜くという形ではなくて,最初から侵害と見なしてしまってよいようなものを決め打ちにしているという条文構造になっていますので,ここで引用などを入れ出すというのは規定全体の構造に合わないと思われます。

とりあえず以上でございます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。では,どうもありがとうございました。

では続きまして,第2章は一旦飛ばしまして,次は44ページから55ページ,すなわち第3章,アクセスコントロール等に関する保護の強化につきまして,御質問,御意見等がございましたらお願いいたします。第3章について何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,何かありましたらまた後ほどお願いすることとして,次は56ページから60ページ,すなわち第4章,著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化につきまして,御質問,御意見がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。

では続いては,61ページから今度は109ページ,すなわち第5章,著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入につきまして,御質問,御意見ございましたらお願いいたします。第5章もよろしいでしょうか。はい,ありがとうございました。

では続きましては,111ページ以降です。すなわち第6章,行政手続に係る権利制限規定の見直し(種苗法・地理的表示法関係)から,本中間まとめの最後までにつきまして,御質問,御意見ございましたらお願いいたします。この第6章はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】118ページの,規定方法について黄色が幅広く打ってあるところですが,種苗法やGI法について権利制限を認めること自体についてはもうほとんど異論もなくて,むしろ規定方法の方に集中しております。私としては,前にも申し上げたとおり,方法論は別として,国民にとっては当該種苗法なりGI法が権利制限の対象になるかどうかというのが明確に理解できるような,法律にせよ政令にせよそのような形になっているということが最も重要な点ではないかと思っております。

その関係でいいますと,特許法や薬事法というか,今は薬機法になっているかと思いますが,それと同じように,最終的には今回の分は単発の法律として書くという形になるのではないかと思います。著作権の方からだけ御覧になるのではなくて,種苗法の立場から見ますと,種苗法の関係者にとっては,自分が使っている種苗法について権利制限がされるというのが誰にも分かるような,一番明確な形で書いていただくのが一番いいのではないかと思います。

その関係で,前回申し上げましたとおり,もともとが法律なのだから原則は法律,特許法等と同程度にはきちんと法律で書いた方がよいと思います。もっと細かいものについては,明確な形であれば迅速性の観点から政令というのもあるかもしれません。そちらの方は技術論で,多少はやはり法律か政令かで違うかと思いますけど,重要なのは法律か政令かというよりは,抽象的な形で,何々の行政手続というようにしてしまうと,行政手続もまさしくここに書かれているとおりではないかと思いまして,全てについて必ず権利制限ができるかどうかも分からない。また,現在のところ,私は行政手続が結果的には,補償金の対象になっていないと思いますが,前回もどなたか言われているとおり,補償金付きのものにするかどうかということの考慮も必要になってくるとしたら,やはり一個一個やっていかなくてはいけないということにもなりますので,利用者からいうと,抽象的に何々の行政手続と書いていただくよりは,きちんと書いた方が関係者にとっては明確であります。例えば,今般出来ました法47条の5も,1号,2号と書いてあって,その他3号となっています。やはり,重要な所在検索や情報検索解析という大きなところはきちんと法律で書いて,その他3号というようになっていますので,それと同じように大きいところはきちんと書いて,その他は迅速化を図るというように,うまくめり張りを付けることが必要です。全体を緩いものにしてしまうと明確性がなくなってしまいますので,そこのところは,今回の種苗法とGI法については特許法等や薬機法と同じようにやっていただくのがよいのではないかと思っております。

【茶園主査】はい,どうも。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

では,本日の議論を伺いましたところ,特にこの中間まとめ(案)を内容的に修正すべきという御意見はないようです。ただ,表現ぶりを変えることや,表現のバージョンアップという点についていろいろ御意見を頂きました。その部分につきましては必要な修正をさせていただきたいと思いますけども,その修正につきましては,私に御一任していただくということでお願いしたいと思いますけれども,それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。では,そのように取り扱させていただければと思います。

では続きまして,議題の3番目,(3)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しにつきまして御議論をお願いしたいと思います。前回までの小委員会の議論を踏まえまして,事務局において論点整理(案)を作成していただきましたので,まずはその御説明をお願いしたいと思います。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元に資料3を御準備いただければと思います。ダウンロード違法化の対象範囲の見直しに関する論点整理(案)ということで,これまでの議論を踏まえて事務局で整理をさせていただきました。順に御説明をいたします。

まず1番,問題の所在,(1)検討の経緯についてでございます。御案内のとおり,近年,インターネット上の著作権侵害による被害が深刻さを増しておりまして,従来から被害が顕著であった音楽・映像に加えまして,漫画などに関しましても権利者の利益が著しく損なわれる事態となっております。こういった状況を受けまして,政府の知的財産戦略本部におきましてもタスクフォースが設置されまして,総合的な対策をまとめるべく,様々な手法について検討が行われてきております。その中で,出版社などから,著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化について,早急な法整備を求める意見・要望がございました。また,10月15日のタスクフォースに提示された中間まとめ案の中でも,この課題について直ちに検討を行うべきということが記載されておりました。さらには,10月30日に知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野を取り扱う会合というものが開催されまして,タスクフォース座長による報告が行われております。その中でも,かぎ括弧で記載をしたように,このダウンロード違法化につきましても,直ちに取り掛かることについて共通認識が得られたという説明がされているところでございます。

文化審議会の著作権分科会におきましては,平成21年1月の報告書の中でこの課題について記載がございました。その際は,被害が特に顕在化・深刻化している音楽・映像に限ってダウンロードを違法化することとしつつ,その他の分野につきましても,複製の実態や利用者への影響を踏まえて,引き続き検討を行うということにされていたところでございます。

今般の状況の変化を踏まえまして,この適用範囲の見直しを検討することが必要というふうに判断し,検討を進めてきたという経緯かと思っております。

次に,2ページ以降でございますけれども,(2)として現行規定の趣旨・概要,これまでの法改正の経緯について記載しております。これはこれまで参考資料としてお配りしていたものでございますし,皆様方御案内のとおりかと思いますので,説明は省略させていただきます。

次に5ページを御覧いただきたいと思います。(3)で諸外国における取り扱いについて記載しております。これもこれまで基礎資料として配布していたものをそのまま記載している部分でございます。ドイツ,フランスをはじめとして多くの国でダウンロードの違法化がされておりまして,その際,著作物の種類などの限定がないということがございます。また,アメリカにつきましても,こういった私的使用の権利制限はありませんけれども,フェアユースに該当しないという判決も出ているということは御承知のとおりかと思います。説明は省略させていただきたいと思います。

ページが飛びますけれども,14ページから論点の整理ということで,中身の記載をしておりますので,ここから詳しく御説明したいと思います。

まず,(1)被害実態及び措置の必要性という部分でございます。本小委員会におきましては,コンテンツ海外流通促進機構,また出版社の方々からヒアリングを行いました。その際,ヒアリングで明らかになった部分を記載しているということでございます。様々御報告いただきましたが,著作権者,出版社にとって看過できない規模の被害が生じているということが明らかになったと思っております。また,日本書籍出版協会,日本雑誌協会からは,漫画以外にも雑誌,写真集,文芸書,専門書を含めて幅広く被害が生じているという御報告もございました。また,次の段落にございますとおり,関係団体からプログラムに関しましてもダウンロード被害が継続的に生じているという報告もございました。また,委員の先生からは,論文版の海賊版サイトというものも存在しているという御報告もございまして,これらを踏まえますと,幅広い分野の著作物について被害が一定程度生じているということが確認されたものと思っております。これを前提としまして,次の段落にございますとおり,出版社の方々からは,海賊版サイトについて,当然アップロード者・サイト運営者に対応しているけれども,なかなか限界があるという御指摘もあったかと思います。

また,次の15ページに参りますと,悪質な海賊版サイト以外について見てまいりますと,静止画・テキストなどは音楽・映像と比べても気軽にアップロードできるという御指摘がこの審議会でもございました。そうしますと,ブログ,SNSを含め多様な場所に大量の違法ファイルが掲載されている可能性がございますので,これらについて権利者側が逐一対応するということは現実的に困難ということも言えるかと思っております。この点,国民生活への影響につきましては,当然慎重な考慮が必要になりますけれども,違法にアップロードされた著作物から便益を享受しようとするユーザーの行為,これは広く一般的に許容されるべき正当性はないものと思っておりますので,その点考慮しますと,ダウンロード違法化の対象範囲を見直しまして,ユーザー側の行為に対する規律を強化する必要性は認められるだろうということで記載をしております。

次に,(2)がダウンロード違法化の対象範囲についてでございます。ここは様々御議論があった部分かと思います。まず,丸1,基本的な考え方といたしまして,先ほど御紹介したような幅広い分野の被害実態や諸外国の扱い,また,未然防止の必要性なども踏まえまして,著作物の種類,分野による限定を行うことなく,広く違法化の範囲に含めていくべき,この基本的な方向性につきましてはおおむね共通認識が得られたものと受け止めております。

一方で,具体的な対象範囲をどのように設定していくかにつきましては,大きく2つの方向性の御意見があったかと思います。まず,ア,著作物間での措置の整合性等の観点から,録音・録画と同様の要件の下で著作物全般を対象にすべきという御意見。また,イといたしまして,音楽・映像以外の著作物の特性などを踏まえて,録音・録画とは別の新たな要件を追加することで慎重に対象を限定すべき,この大きく2つの方向性の御意見があったかと思います。

下の部分では,アの方向性の意見,イの方向性の意見のうち主なものを幾つかピックアップして整理させていただいております。説明は省略いたします。

16ページの下の部分でございます。こういった大きな方向性につきまして意見の相違があったわけでございますが,この背景には,著作権に関する基本的な考え方の違いというものがあるのかなというふうには思っております。先ほどのアの方向の意見の背景には,違法にアップロードされたものからユーザーが便益を享受するというのは基本的に不適切だと,そのような行為は認めるべきではないという考え方が前提にあるものというふうに思っております。また,イの方向の意見につきましては,違法にアップロードされたものであっても,ユーザーには一定程度自由が存在するということで,それを尊重する必要がある,このようなことが背景にあるのかなというふうに思っております。

いずれの立場に立ったとしましても,次のページから記載をしておりますとおり,事務局としては,現行の規定の趣旨,内容をよく踏まえた上で,それと整合性のある議論をしていく必要性があるのかなというふうには思っております。具体的には,著作権法30条1項におきましては,閉鎖的な私的領域における零細な複製につきましては,通常,権利者の利益を害さない,こういう理由で権利制限が認められております。その中で,少なくとも録音・録画の部分につきましては,一般的な形で既に違法化がされているという状況がございます。逆に言うと,録音・録画についてユーザーの自由を認めようという考え方は採用されていないということでございます。こういったことを踏まえますと,違法にアップロードされた著作物から私的使用目的で便益を享受しようとするユーザーの行為には,個別には許容され得るものはあるかもしれないけれども,広く一般的に許容されるべき正当性はない,こういった考え方がまず現行法を踏まえると前提になるものというふうに思っております。

これを前提にしまして,具体的な対象範囲,限定方法を検討することになりますけれども,それに際しましては,ユーザーに一般的に萎縮効果が及び得るといった抽象的な懸念のみに基づくのではなくて,音楽・映像以外の著作物の特性,個別の利用行為等の状況を基にしまして,ユーザーの行為を可能な限り具体的に想定しまして,それを基に精緻な検討を行うことが重要だと思っております。

次の段落につきましては,これを反映するための手順,プロセスのようなものをローマ数字の1から5で記載しております。まず1として,音楽・映像以外の著作物の特性などを把握するということ。それから2として,その特性を踏まえつつ,違法にアップロードされたという事実を確定的に知りながらダウンロードを行うユーザーの保護が必要な事例があるかどうかを可能な限り具体的に明らかにする。また,3番としては,そのような場合におけるユーザーの保護を著作権者の利益保護よりも優先する正当性があるかどうか。4番としては,仮に正当性のある行為があったとして,それを必要十分な形で保護する,違法化の対象から除外するためにどのような限定方法があるのか。5番としましては,そういった限定方法につきまして,音楽・映像との差異などを合理的に説明できるか。また,その限定をすることで悪影響が生じないか。こういった点について順次検討を行う必要があると思っております。これまでの審議もこういった流れで御議論いただいてきたものと思っております。

まず,丸2としましては,音楽・映像以外の著作物の特性について確認をしております。前回お示しした資料から追加になっている部分を3点御紹介したいと思います。まず(イ)でございます。特に静止画・テキストにつきましては,ダウンロードした著作物の一部分に違法利用されたものが含まれているという場合が想定されるということでございます。例えば学術論文の一部に著作権法32条の要件を充足しない違法な引用が含まれている,こういうこともテキスト分野については生じやすいだろうという御指摘でございます。また,(ウ)でございます。これも前回御指摘を頂きました。ユーザーによるダウンロードの目的が多様であり,ウェブクリッピングなどとして後でじっくり読むために,その時点では内容を吟味せずにひとまず記録・保存を行う,このような行為は一般的に行われているのは事実だろうというふうに思います。

また,次のページに参りまして,(カ)につきましても前回御指摘を頂いたと思います。今回対象範囲を広げますと,関係する権利者がいわゆる組織化をされていない方も含めて多数に及ぶことになります。その結果,録音・録画につきましては,現在,抑制的な権利行使がなされておりますが,それと異なるような状況が生じる可能性がある,こういう御指摘でございます。

丸3は,こういった特性を踏まえてユーザーの保護の必要性・正当性があるかどうかということについて記載をした部分でございます。まず(ア)の部分で前提として2つの点を確認しております。

ローマ数字の1は,視聴・閲覧の取り扱いでございます。ダウンロードは違法化されるとしましても,それはあくまで意図的・積極的なダウンロード,複製行為でございまして,単なる視聴・閲覧行為につきましては,当然違法とはなりません。また,視聴・閲覧に伴いキャッシュ,プログレッシブ・ダウンロードなどが行われますけれども,これにつきましても現行法では47条の8,改正後では47条の4第1項の規定により適法になるということでございます。このため,下に書いておりますとおり,単なる視聴・閲覧にとどまり,意図的・積極的にダウンロード(複製)を行わないということであれば,そもそもユーザーの責任が問われることはございません。

また,ローマ数字の2は,主観要件の設定でございます。これも極めて重要だという御指摘をこれまでもるる頂きました。どのように範囲を設定するにしても,現行と同様,事実を知りながらという要件は維持しますし,また,その要件が厳格に解釈されるということが極めて重要でございます。これを前提にしますと,ダウンロードが違法化されますのは,ユーザーが違法にアップロードされたものだと確定的に知っている場合のみでございまして,違法だと当然に知っているべきだったですとか,適法か違法か判断がつかなかった,こういった場合につきましては違法にならないということでございます。このため,一般ユーザーが十分に確認をせずに,いわば気軽にダウンロードを行ってしまった場合につきましては,そもそも違法の対象にならないということでございます。こういった2点でユーザーの保護については相当程度図られているというのがまず前提として確認をする必要があるということで記載しております。

次に,(イ)は,この前提を踏まえまして,更なるユーザー保護の必要性・正当性があるかどうかというのを記載した部分でございます。先ほどの閲覧・視聴の扱いと主観要件の設定を前提にしますところ,このような整理になるのではないかというふうに思っております。

まず,ローマ数字の1としましては,ユーザーが違法にアップロードされた著作物だと確定的に知っており,単なる視聴・閲覧にとどまらず私的使用目的で意図的・積極的にダウンロードを行う場合,これが違法になるわけでございますが,こういう場合になおユーザーの保護が必要な事例があるかどうか。

また,ローマ数字2としては,そういう事例があるとして,そのような場合におけるユーザーの行為を著作権者の利益保護よりも優先する正当性があるか,こういった点について検討が必要だということになりますので,本小委員会におきましては,ユーザー側の団体に対するヒアリング,また文書での追加の照会なども行いつつ,検討を行ってきたところでございます。次の段落にございますとおり,ユーザー側の団体の方々からは,具体的な事例という意味では明確に示していただいていないのかなというふうには思っておりますけれども,委員の先生方からは,例えばということで,先ほども御紹介しました著作物の一部分に違法なものが含まれている,それが実質的に権利者の利益を害しない,このような場合には,ダウンロード違法化の対象にする必要があるのかどうかということは御検討していただいたものでございます。

この点につきまして,次の段落に少し長く書いておりまして,当然こういう事例は一定の範囲では必要なものだとは思います。ただ,ローマ数字の1で書いておりますとおり,事実を知りながらという要件で除外される場合が大半だと思います。また,2に記載しておりますとおり,逆に事実を知りながらに該当する場合は,著作物を構成する一部分,この部分が確定的に違法だと分かっている事例になります。その際に,なおダウンロードを認める必要性・正当性があるかということはしっかり精査をする必要があると思っております。

また,限定を行うとして,ローマ数字の3に記載しておりますとおり,仮に一部分だったとしても,相応の経済価値を有する著作物というのはあり得るところでございまして,実質的に権利者の利益を害しないというのはどのような場合なのか。また,4番に記載しておりますとおり,そういう場合は除外をしつつ,権利者の利益を害しない場合は除外しない,このようなうまい立法措置の方法があるかという点についても精査が必要だというふうには思っております。

なお,次の段落につきましては,先ほど御紹介したウェブクリッピングの事例について記載しております。こういった事例につきましては,気軽に内容を確認せずにダウンロードするということですので,およそ事実を知りながらという要件には当てはまらないということで,こういった事例を基に追加措置を行う必要性はないのではないかということを記載しております。

次に,20ページを御覧いただきたいと思います。この事実を知りながらという要件につきましては,当然これまでの裁判例などございませんので,裁判所による厳格な解釈がされる保障がないというのが事実かと思います。この点を踏まえまして,ほかの要件でしっかり歯止めを掛けておくという御意見もあり得るのかなというふうには思っておりますけれども,主観要件の解釈・運用が不安だということであれば,その点を解消する措置を行うというのが本筋だと思っておりまして,立案者の想定と異なる形で主観要件が解釈・運用されるのではないか,こういった懸念を前提にして別の措置で対応しようということは,必ずしも適切とは言えないのではないかというふうに考えております。

次に丸4番,更なるユーザー保護を行うとした場合の対応の選択肢ということで,こちらについては具体的な限定の方法について,複数,委員の先生方から御指摘を頂いたところでございます。この点につきましては,柱書きの2段落目に記載をしております。こういった提案につきまして,趣旨は理解するものの,複数の委員の先生方からは,録音・録画と差を設ける必要性・正当性が認められないのではないかという全般的な御意見もございました。また,それぞれの措置の内容を見てまいりますと一定の課題があるというのも事実かと思っております。

例えば,まず(ア)民事においても有償で提供・提示される著作物に限定するという御提案を頂きました。これは,現行で刑事におきまして有償に限定がされておりますので,広げるに際しては,民事から有償に限定してはどうかという御提案だと思います。これは立法事実という観点で,現に被害が深刻化しているのは有償の部分だろうということを踏まえた御提案だというふうに思っております。課題の部分に記載をしておりますが,例えば漫画につきましても,専用のアプリで無償配信をし,後ほど単行本として販売されるようなビジネスモデルなども存在しております。仮に提供・提示自体が有償のものに限定しますと,典型的に保護しないといけない商業ベースの著作物が対象から除外される場合も出てくるのではないかということがございます。また,こういったビジネスモデルの違いで保護水準に差が出ていいかどうかということも検討が必要だと思います。

また,2点目は,音楽・映像との差異でございまして,例えば放送番組のように,既に違法化されているものの中にも無償で提供されているものは当然存在しております。それとの違いについて,法的に正当化できる程度とは評価できないのではないかということがございます。

また,3つ目は少し角度が異なりますけれども,今回,ユーザー保護の観点から限定をすべきという趣旨かと思っておりますが,ユーザーの方が気軽にダウンロードする著作物というのは,恐らく有償のコンテンツが多いのではないかというふうに思っております。ですので,有償に限定したとしても,ユーザーの行為はかなり幅広く入ってきてしまうのではないかというふうに思っておりまして,どういうユーザーのどのような行為を保護するのか,この点を明らかにした上で限定方法も考えていく必要があるのかなというふうに思っております。

続いて21ページの(イ)海賊版サイトからのダウンロードに限定してはどうかという御提案でございます。こちらも立法事実という観点で被害が顕在化・深刻化しているのは,そういった海賊版サイトからのダウンロードだろうということで,リーチサイトのときには悪質な行為を切り出しましたので,同じように対象を限定してはどうかという御提案だと受け止めております。これにつきましては,リーチサイトの議論と同様の前提があるのかどうかということについて慎重な検討が必要だというふうに思いますし,また,2つ目のポツにありますとおり,汎用的なストレージサービスですとか,あとはP2Pによるファイル交換のようなものが対象から漏れてしまうということが課題として大きなものというふうに受け止めております。

次に,(ウ)につきましては,前回の小委員会で御提案を頂いたものでございます。原作のままダウンロードを行う場合や,デッドコピーの場合に限定してはどうかということでございます。趣旨としましては,先ほどから御紹介しておりますとおり,著作物の一部分に違法に利用されているものが含まれているにすぎないという場合もございます。こういう場合まで違法化する必要はないだろうということで,作品をそのまま,いわば一まとまりとしてダウンロードする場合に限定するためにこういう形でどうかという御提案だと受け止めております。この点につきましては,先ほどリーチサイトの議論の中でも言及がございましたが,原作のままというのは,解釈の幅があり得る概念だと理解をしておりまして,こういった概念を導入しますと,かえってユーザーの側での判断が困難となり,萎縮が生じてしまう可能性もあるだろうということがございます。デッドコピーにつきましても,現行著作権法で特段の規定はありませんので,新しい概念を作ると同じ問題が生じると思います。

さらには,下のポツにありますとおり,デッドコピーに限定しますと,アップロードとしては権利者の利益を不当に害するという行為であっても,ダウンロード側は適法ということになりまして,アンバランスではないかという御指摘もあり得ると思っております。

また,次の22ページに記載をしておりますが,前回の審議の中でも,このダウンロード違法化というのはユーザーに対するメッセージ効果が重要だという御指摘がございました。この点,原作のままデッドコピーという限定を行うことで誤ったメッセージになるのではないかということがございます。例としては,デッドコピーじゃなければ侵害コンテンツであっても自由にダウンロードしてもいい,作品の一部であれば自由にダウンロードしてもいい,こういった誤ったメッセージになると非常にまずいのではないかということでございます。

それから,下のポツは,録音・録画との整合性でございまして,こちらも当然,一部分のダウンロードにとどまる事例はございますが,特段限定をしておりませんので,それと法的取り扱いに差を設けるだけの事情があるかどうかということでございます。

(エ),こちらも前回御提案を頂いたものというふうに受け止めております。著作権者の利益を不当に害しない場合を違法化の対象から除外するということで,抽象的なバスケットクローズのようなものを設けるという事例でございます。想定している事例は先ほどと同じものでございまして,著作物の一部分に違法なものが含まれている場合,ここまで対象にする必要はないだろうということで,実質的に権利者の利益を害しない場合が除外されるようにするという趣旨でございます。

課題にございますとおり,当然この利益を害しないというのも解釈に幅のある概念でございますので,こういった要件によってユーザーの判別が困難となり,萎縮効果が生じる可能性があるというのは先ほどと同じでございます。

また,2点目が一番大きいところだと思っておりまして,こういった限定を行いますと,ユーザーの側としては,この程度であれば権利者の利益を害しないからダウンロードしてもいいだろうというふうに解釈しまして,いわば居直りのようなところでダウンロードが行われる可能性もあると思います。そうしますと,せっかくのダウンロード違法化の行為が極めて限定的になってしまうおそれが強いのではないかというふうに思っております。

3つ目のポツは,録音・録画との比較でございますが,こちらについても,権利者の利益を害する程度が低い態様のダウンロードの事例は当然ございます。その中で特段限定をしておりませんので,それと法的な取り扱いに差を設けるような合理性があるかどうかという点でございます。

次に23ページに移りまして,これまでの検討,記載を踏まえまして,丸5として検討結果について記載をしております。1段落目にございますとおり,幅広い分野の著作物の被害実態,諸外国の扱い,未然防止の必要性,また,著作物の間での措置の整合性などの観点を踏まえますと,録音・録画との同様の要件の下で対象範囲を著作物全般に拡大していくことについて,相当程度の合理性が認められるものと思っております。一方で,音楽・映像以外につきましては様々特性がございますので,それを踏まえて録音・録画とは別の新しい要件を設定することで慎重に対象を限定すべきという考え方についても重要な視点を含むものと思います。ユーザーが既に広く一般的に行っている行為でございますので,その影響を緩和して,過度な萎縮効果を防止するという重要な視点を含むものというふうに思っております。ただし,これまで検討,記載をしてきましたとおり,対象範囲を録音・録画と異なる形で限定することに関しましては課題が大きいのではないかと思っております。ローマ数字の1にございますとおり,ユーザーが違法にアップロードされた著作物だと確定的に知っている場合において,ユーザー保護の必要性,正当性があるのかどうか,この点につきまして,必ずしも説得的な事例が示されているとは言い難い状況にあると思います。また,2番としまして,先ほど確認したような限定方法はいずれも課題がございまして,悪影響も懸念されるということで,少なくてもそのままの形で,この(ア)から(エ)のような形で限定を行うことが適当かというと,そういう状況にはないのではないかということがございます。こういった状況を勘案しますと,具体的な対象範囲としましては,録音・録画と同様の要件の下で対象を著作物全般に拡大していくことが基本になるのではないかということでございます。

一方で,全ての事例を検証し尽くしているかというと,当然そういうことはございませんので,並行してパブリックコメントを通じて,事務局におきまして,ユーザー保護が必要な事例の有無について更なる検証を進めることが適当だというふうに記載をしております。仮にその検証の中でユーザー保護の必要性・正当性が明らかな事例などが確認されましたら,それに即して限定方法を検討し,立法措置に反映させることが適当だということで,検討結果として記載をしております。

その上で,(3)は,制度整備を行う際の留意点を幾つか記載をしております。まず丸1,主観要件の取り扱いが重要な部分でございます。対象範囲を具体的にどのように設定するにしても,事実を知りながらという主観要件が厳格に解釈・運用されることが重要でございます。一方で,この点につきましては,先ほども申し上げましたとおり,判例が存在しているわけではございませんので,どう解釈されるか,ユーザーの側にとっても一定程度不安があるというのは事実かと思います。このため,下に記載をしておりますような形で主観要件の規定の仕方を見直すということも一つの選択肢になると思いますので,こういうことも含めまして,厳格な解釈・運用,ユーザーの不安解消のための措置を検討すべきであるというふうに記載をしております。

また,その下にございますとおり,静止画・テキストなどにつきましては,著作物の一部分に違法なものが含まれている場合が相当程度あるということがございます。このような場合にどのような評価になるかと申し上げますと,次のページに記載しておりますとおり,そのまさに一部分,学術論文の違法引用の事例で言うと,その引用された部分が違法なものだというふうに明確に認識している場合にのみダウンロードが違法化されますので,この点につきましても,誤解のないように解釈の明確化を図っていく必要があるのではないかということを記載しております。

次に,丸2につきましては,附属的な論点ですが,海外からの配信の扱いでございます。現行法におきましても,海外の配信も対象に含めるという形で記載しているところでございます。当然,インターネットは世界規模のものでございますし,海外のサーバーからの配信を対象にしないと実効性を確保できないと考えられますので,現行と同様に対象に含めていく必要があるというふうに記載しております。

次に,(4)刑事罰の取り扱いにつきましては,前回も多く御議論いただいた部分でございます。まず,丸1の基本的な考え方といたしましては,録音・録画につきましては,まず違法化(民事措置)が行われましたが,それでは十分な効果が上がらないということを理由に,有償のものに限って刑事罰化が行われております。それによって一定の抑止効果が見られたというのは以前に御紹介したとおりでございます。これを踏まえますと,対象範囲の拡大に当たりましても,抑止効果を確保する観点から,同様に刑事罰を科していくことが必要だと考えております。

この点につきまして,録音・録画に関しても実際の研究例がなく,専ら抑止効果として機能しているのはどのように評価するかということも御議論がございました。事務局としましては,こういった現状を,法が本来の目的に沿って実効的に機能しておらず不適切という形で捉えるべきものではないというふうに思っております。

次に記載をしておりますとおり,刑事罰の運用につきましては,捜査権の乱用ですとか,インターネットの萎縮が生じないように,慎重な配慮が求められるものでございまして,録音・録画の刑事罰の際にも,軽微な事案についてまで積極的に摘発することは意図されていなかったものというふうに承知をしております。現状は,このような立法者の意思に沿った形で慎重な配慮,対応が行われているものというふうに受け止めるべきでございまして,今回,対象範囲を拡大するに当たりましても,刑事罰については同様に慎重な検討,配慮,対応が望まれるということを記載しております。

また,丸2の法定刑の水準につきましても,前回御議論いただきました。その中で,法益侵害の最も大きい事例を想定して検討すべきであるという考え方とともに,音楽・映像以外の中にはソフトウエアなど高額で販売されるものも存在しておりますので,法益侵害の上限ということで評価をしますと,録音・録画の場合と同様だろうということで,同じように2年以下の懲役,200万円以下の罰金又はその併科とすることが適当であるというふうに記載をしております。

丸3親告罪につきましては,確認的な記載でございます。いわゆるTPP11整備法によりまして,著作権等侵害罪の一部非親告罪化が行われます。その際,音楽・映像のダウンロード違法化の部分につきましては,引き続き親告罪のままというふうにする取り扱いになっておりますので,今回,対象を拡大するに当たりましても,ダウンロード違法化の刑事罰は全て親告罪のまま維持すべきだということを記載しております。

(5),これは制度に伴って必要な対応ということで,普及啓発などについて記載をしている部分でございます。先ほどからるる確認しておりますとおり,本来,音楽・映像以外の著作物につきましては,海賊版サイトのみならず,個人のブログ,SNSなどにおきましても違法にアップロードされたものが掲載されている可能性がございまして,ユーザーが気軽にダウンロードする可能性が当然ございます。この点は,主観要件の限定によりまして,ダウンロードが違法化されるのは違法にアップロードされたという事実を確定的に知っている場合に限られますので,気付かずにダウンロードしてしまったという場合に法的な責任が問われることはございません。ただ,そういった規定の趣旨,内容を含めて,国民に十分に伝わらないということもあり得ますし,また,国民の方が適法なものを使おうとしても,その環境が整っていないということであれば,インターネット上の著作物利用を過度に控えるということにもなりかねませんし,ひいては,インターネット利用全体が萎縮してしまう可能性も排除できない。これはユーザー側の団体の方が主張されていたとおりかと思います。

このため,その段落にございますとおり,ダウンロード違法化の対象範囲を拡大するという法制化を行う際には,文化庁,関係団体などが一丸となって制度内容の周知徹底に努めることが必要だと思います。また,利用者の方が適法サイト,違法サイトを明確に識別できるような取組も関係団体において求められるものと考えております。

既に出版社の方々からは,このヒアリングの場でも,正規配信サイトに対するABJマークの導入について御説明がございましたし,実際に既に導入がされているところでございます。また,海賊版対策キャンペーンを行っておられますが,法改正がされれば,その周知も積極的に行うという表明もされているところでございます。この点につきましては,どのような対応が必要か,消費者団体の方々,また,国民からの声も丁寧に伺いながら,必要な対応を行っていくことを期待するということで記載をしております。

最後に,(6)はその他の論点でございますが,研究目的での利用に係る権利制限について言及がございました。大学教授などの研究者が,著作権侵害とされた著作物を研究目的でダウンロードすることを適法とする根拠規定が現状では存在しないということでございます。そういった新しい権利制限についても検討が必要ではないかという御意見を頂きました。

この点につきましては,最後,記載をしておりますとおり,私的使用目的とは少し文脈が異なるものとは思いますけれども,一定の社会的意義・公益性が認められる利用だと思いますので,今後,権利者の利益保護にも留意をしつつ,検討を行っていくこととすると記載をさせていただいているところでございます。

少し長くなりましたが,事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,今説明いただきました論点整理(案)につきまして,御質問,御意見がございましたら,お願いいたします。

では,奥邨委員。

【奥邨委員】まず,1点目は確認なんですけれども,もともとあった静止画というのが前面に出なくなって,分かりやすくなってよかったかなと思っております。それとの関係で,当たり前ではあるんですけれども,ダウンロードという言葉も少し確認をしておいた方がいいのかなということなんですが,デジタル方式の記録媒体への記録を意味しているという理解でおればいいのかなという,ちょっとその辺もあれなんですが,非常に一般的な言葉を使ってしまっていますと,何が対象になるかというところがありますので,一応,そこは確認として,ダウンロードという言葉で意味しているのはデジタル方式の,今の著作権の使い方で言えば記録媒体への記録若しくはデジタル方式の記録というようなことでいいのかなということが1点,後で確認させていただきたいというのがございます。

それから,基本的には今回は,最初にお話もありましたように,パブリックコメントを求めるということも踏まえてなんですけれども,少し構成的なところで,まず,14ページのところで,これも今までもずっと気にはなっておったんですけれども,もっと中身の方が重要かということで余りコメントしなかったんですが,出版社の被害額というのが出ているんです。脚注の8のところでいろいろと注意が必要だということは書いていただいているんですけれども,出版社の被害額自体は著作権と必ずしも関係ない金額が入っているわけですね。出版社の利益とか,そういうものも入っている。どちらかといえば,ここでいう被害額の計算方法というのは,書店とかコンビニとかで万引きされたときの売り上げ掛ける何%みたいな計算の仕方になっているんですけれども,ここの場はあくまでも著作権の審議会でありますので,極端に言うと,著作権に関する被害額であるべきかと。ですから,著作者の得べかしり利益であるとか,出版社が出版権をお持ちだとか,著作権をお持ちの場合,それについての得べかしり利益であればある程度分かるんですけれども。知財本部であれば,より大きな視点からお考えということで,これでもいいのかなと思うんですが,この審議会としては,余り著作権と関係のないところの被害額は,直接的には本来関係しないのかなという気がしております。下のところで,注の8,丸2で,全てが出版社の被害となるわけではないと。被害となったとしても,著作権法で認識すべき被害かどうかというのはあるような気もしまして,少し気にはなっております。

それから,15ページのところ,全体的な構成で同じようなことを幾つか申し上げますが,15ページの頭出しのところで,2のダウンロードの違法化の対象の前のところで,広く一般的に許容されるべき正当性がないと言い切っている,それから,その次の段階で,利益保護に万全を期すと言い切っているところなんですけれども,実はそういうことについて,その後で検討していって結論が出てくるところなので,ここで正当性がないと言い切ってしまったりとか,今回は後でも出てきますけれども,基本的には抑止効果しかないところがほとんどだということだとすると,万全を期すというのもかなり踏み込んだ形になっていて,どうなのかなという気がしますので,この辺はもう少しニュートラルに,許容されるべきか疑問があるとか,著作権者の利益保護を期す,利益保護を配慮する観点とか,少しローキーで始まって,それから徐々に検討を進めていってということでないと,例えばパブリックコメントをされる皆さんにしても,最初から結論が出ているじゃないかみたいな感想になってしまわないかなという心配を持ちます。

同じようなことは17ページのところでも,違法にアップロードされた著作物の便益を享受しようとするユーザーの行為には,かぎ括弧が付いているんですが,このかぎ括弧は要らないと思いますし,その後の丸括弧も,これは別にこの時点では残しておいていいのではないかなと。個別には許されるかもしれないけれども,正当性はないことを前提にと。その次の段落でも,それが正当性を有するか否かを吟味することなくというのも括弧に入れる必要はなくて,徐々に1つずつ検討していくということでこの委員会でも審議してきましたので,あらかじめ,ここでこれは弱い内容ですよということを括弧で明示する必要はないのではないかと思います。

それから,済みません,よろしいですか。あと2点ぐらいですけれども,もう1点は,20ページの課題のところで出てくるんですけれども,漫画について,一旦無償で配信した後に有償で販売する場合に,この対象にならないというのは,これは条文の決め方の問題で,1回でも過去,無償で配布したものは,有償で配布してからも今回の違法化の対象にならないという条文に定めてしまえばそうかもしれないんですが,過去,無償で配布していても,あるときから有償で配布し始めれば,そのとき以降,今回の規制の対象になるという定め方もあるわけなので,ここに書いてあるこの事象だけを前提に除外されるかどうかというのはちょっとよく分からないですし,そもそも無償で配布しているときは,基本的にはもう無償で配布しているんですからダウンロードが問題なのかどうか,また,何らかのアクセス制限手段を掛けているとなれば,そっちを外すことは別段問題になるわけなので,これだけで課題になっているかというと,実際にあるというよりは,机上の例のような気がいたします。

それから,もう一点だけ申し上げますと,22ページのメッセージ効果のところです。上の「ダウンロード違法化は」のところと,エの中の「このような限定を行うことで」の中,同じメッセージ効果について書いているところだと思うんですが,居直りが可能になるというのはよく分かるんですが,限定的になってしまうおそれが強いかどうかはよく分からない,かなり断定的過ぎるような気がいたします。これはそうなるのかどうかも規定の決め方等々にもよってまいりますので,おそれがあることはそうかなと思うんですけれども,それ以上言うのは,少しどうだろうと。例えば権利者の利益を不当に害しない場合というのにありましても,立証責任はこの効果を主張する方にあるんだということを極めて明確にすれば,実際問題,居直るといったって,なかなか居直れないですし,メッセージ効果としては,いや,不当に害しないなんて自分は証明できないんだから,そういう場合まで大丈夫だというふうなメッセージには伝わらないと。そういう工夫の仕方もあると思いますので,強いと言い切ってしまうのも,そっちの方が強過ぎるかなというような気もいたします。

済みません,長々と申し訳ございません。

【茶園主査】ありがとうございました。いろいろミスリーディングな部分とか,不十分なところがあって,表現を検討しなければいけないという御意見だと思います。

ほかに何かございませんでしょうか。森田委員。

【森田委員】20ページの最初からの6行では,いずれにせよ,対象を拡大する場合には主観的要件が重要であって,その明確化についてどのような検討をすべきかということが述べられていますが,ここでの記述として必ずしも適切でないと思われる点を申し上げたいと思います。それは,4行目で,「それによらず,立案者の想定と異なる形で主観要件の解釈・運用がなされ得ることを前提に,別途の措置を行うという対応は必ずしも適切なものとは言い難い」と書かれていますが,「立案者の想定」というのは,事務局が想定する解釈ということですので,それ以外の解釈が採られる可能性があることを前提に議論することは適切ではないということは,事務局の想定どおりの解釈をされることを前提に議論しなくてはいけないということになりますので,それは,この小委員会の場での議論の在り方として適切ではないのではないか。特に1行目では「裁判所により厳格に解釈される保証がない」と言っているわけでありますから,これを前提に考えるのならば,主観的要件の解釈・運用の不安があるのであれば,その点を解消するための検討をするのが本筋であって,それが可能である場合にはそれによるべきであるけれども,それが難しい場合には,「別途の措置を行うという対応」をするという選択肢は可能性として残るのではないかと思いますので,ここはそこの部分が書き過ぎているのではないかと思います。少なくとも,事務局の想定と異なる形で解釈・運用がなされるという前提をとって議論してはいけないというのは,この場での議論の在り方として適当ではないと思いますので,その部分は是非とも削除していただきたいと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますか。では,深町委員。

【深町委員】今の森田委員の御懸念は私も全く同じものを共有しておりまして,裁判所により厳格に解釈される保証がないということを認めないのであれば,もしここの点から認めないのであれば構いませんが,一応,この場では裁判所に厳格に解釈される保証が今のところはない,要するに,裁判例が存在しないということは,一応,前回の議論でもその点についてはそうだろうということになった以上は,それについて,ある程度の措置を講ずる余地は残す書き方にしておかれた方が私もよろしかろうと思うのが1点目です。

それとの関係で,では,どういう形での限定があり得るのかということの議論の中で,既に刑事においては有償の著作物に限定されているときに,刑事ではそうなっているということは,有償著作物で生じる課題についても,刑事の場合には生じることを前提に,しかしながら,それはそれで何とかやりましょうということで作っていると。こう考えますと,有償著作物にすることで20ページで生じている課題というところの幾つかについては,刑事では既に生じ得る問題であると考えますと,本当にここの問題で,民事で有償著作物に限定することを拒むような強い理由になり得るのかどうかというのがやや分からないなと思います。

要するに,事実を知りながらという要件についての解釈が,なおそこまで明確にはなり得ないんじゃないかという現状の認識からすると,他の余地を残しておくという書き方もあるのかなと思った次第です。

以上です。

【茶園主査】前田委員。

【前田(健)委員】私から何点かありますが,まず,最初に奥邨委員が御示唆されたダウンロードの定義という問題です。私が今,理解しているところでは,先ほど奥邨委員がデジタル方式の記録という言葉を使われましたけれども,ダウンロードしてハードディスクとかそういったところに記録をするというのが行為の対象として想定されているのだと思います。ですから,例えば違法にアップロードされたテキストをプリントアウトするとか,そういう行為は恐らく含まれないということになるという前提で議論しているのかなと思いました。そこのあたりの解釈がどうなるのかというところについては,もう少し議論を詰めるか,あるいは立法のときに配慮する必要があるのかなと思います。さらに,この点について言っておくと,例えばプリントアウトした後,もう一回スキャンしたらどうなるのか,そのあたりについては議論しておく必要があるのかなと思います。

もう一つが,ダウンロード違法化の対象範囲についてですけれども,今,このまとめで書いてあるところ,の対象の範囲をどう区切るかについての議論は,恐らく民事を主に念頭に置いて書かれていると思いました。刑事のことも考えているのかもしれませんけれども,そのあたりは若干不明確と思いました。

民事と刑事では,現行法でも刑事では対象著作物を有償に限るということが行われていると思うので,そういった区別を維持するとすると,仮に民事の方では対象を限定しないとしても,刑事の方では対象を限定するわけですよね。なので,民事,刑事それぞれについて対象をどういうふうに区切るかということの正当性を議論しなければいけないと思います。民事の方については,刑事に比べたときは,ユーザーの方に対する制約の程度とか,あるいは萎縮効果の点というのは若干弱いものがあると思いますので,対象を区切らないということが正当化されたとしても,刑事の方では,刑事罰の補充性という観点から,特に被害の実態が深刻で,抑止の必要性が高いものに限定するというのは考え方としてあり得ると思います。現行法でも,恐らくそういう考え方に基づいて有償に限定されているということなのかと思います。

その上で,民事の方は差し当たり,刑事の方でどういう限定をするのかということですけれども,今,例えば24ページあたりの刑事罰の取り扱いについてというところを見ますと,現行法では有償に限っているということは説明されていると思いますが,これを維持するのかどうかというところについては曖昧になっていると思います。

ちょっと戻りますけれども,20ページのところで,民事において有償で提供・提示される著作物に限定するということについての難点がいろいろ示されていますが,そこで,有償と有償ではないものとの間に法的な取り扱いの違いを正当化するものがないのではないかというような記載があって,こういった考え方を前提にしてしまうと,刑事の方で有償に限定するというのはどういう理由で正当化されているのかというのが問題になってしまうのではないのかと思います。ですから,刑事について,どういった要件で限定するのが適切かというのはちゃんと議論しなければいけないと思います。

私は,有償という限定が刑事罰に対する限定として必ずしも悪いとは思いませんが,ここに書かれたような課題もあるというのは事実と思います。前回,提案があった中で,原作のままというのがあったと思いますけれども,これも確かに課題はいろいろあ,りますが民事の限定としてはちょっと難しい部分があったとしても,刑事の限定として検討するということはあってもいいと思っております。

さらに,済みません,ちょっと長くなって恐縮ですが,21ページの原作のままのところで,かえってユーザーによる判断が困難となり,萎縮が生じてしまうという懸念がされています。しかし,もし仮に限定がなかったとすれば,その全てについてやってはいけないということになるので,ユーザーはそれをやらないようにしようとするわけで,そういう意味での萎縮が,違法なことではありますが,生じるわけですね。それより限定しているわけですから,確かに判断が不明確で困るということはありますが,少なくとも限定しない場合より,ユーザーの行為が萎縮することはないという気がいたします。

私からのコメントは以上です。

【茶園主査】刑事の部分はよろしいですかね。

【大野著作権課長補佐】済みません。まず,ダウンロードの定義の話,奥邨委員と前田委員から御指摘を頂きました。我々としては,現行の録音・録画の規定をそのまま想定しているものでございまして,デジタル方式の記録媒体への記録という意味で使っているものでございます。その点,この資料につきましても明確に記載をしたいと思っております。

また,前田委員から,テキストのプリントアウトの事例ですとか,プリントアウトしたものをさらにスキャンしたらどうなるかという御質問も頂いております。これも当然対象に含まれませんので,その点,初めからアップロードされたものを記録媒体にダウンロードしてくる,この行為だけが対象になるものだと理解しておりますので,その趣旨もこの報告書のどこかで明記をしたいと思います。

【茶園主査】では,奥邨委員。

【奥邨委員】済みません。私自身も紛らわしい言い方をしてしまったんですが,今のところは,前提として現行法と同じ,自動公衆送信されたものを受信して行うデジタル方式のという枕詞が付いているという前提でよろしいですか。

【大野著作権課長補佐】そうです。全て現行法どおりの想定でございます。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】今までやっていた議論の仕方がやや分かりにくいというか,ずれてきている感じがするのですが,私の理解では,録音・録画について,ゼロベースで始めるというよりは,ここでやろうとしている作業というのは,ワンセットになっているかと思います。最初は民事で,その後,刑事も加わって,現行法としてあるのは,録音・録画についてはダウンロードの違法化と犯罪化というのがあるわけですけれども,その対象を録音・録画に限定すべきなのか,それともそれ以外のものも含めて一般化するかというように考えると,先ほどの細かい議論を一々やる必要があるのだろうかという気がいたします。

先ほど言われた制限の点は,現行法としては,民事では有償で限定せずに,刑事は限定しているという形でできています。そこをもう一回やり直すという作業をやるのはもちろんよいのですが,現行としてあるものの録音・録画だけに限定するのか,それ以外にも及ぼすのかということになると,ゼロベースでやるというよりも,録音・録画とそれ以外で有意な差があるのかというように考えていくと,私としては,今まで出てきた範囲でも,細かい点を言い出したらいろいろあっても,特性があるといっても,録音・録画とそれ以外で区別するだけの有意な特殊性があるのなら,エビデンスというか事例を出すというところに来ているかと思います。また,パブリックコメントで何か出てくるのかもしれませんが,今までこれだけヒアリングしても,録音・録画は現行なのだが,録音・録画以外のものについては認めてはいかんという有意な差異を示すようなものは出てこなかったので,むしろそちらの方からアプローチすれば,もっとすっきりできると,思います。

それ以外の点でも,先ほど言われた無償の漫画というのは,前段階としては無償で漫画を提供して,後に有償で紙媒体でも提供するというビジネスモデルの後ろの方というよりは前の方を言っておられるのではないかと思います。まずは一旦,無償で漫画を提供するという部分が,有償に限定したらこの対象から外れるという,後半部分を気にしているというよりは,前半部分を気にしておられるのではないかと思います。そこのところは,このようなビジネスモデルとして,前半の無償の提供というのが非常に重要な部分をなしているわけで,そこの部分が外れるというのは合理性があるのかという観点で見ていく必要があります。その他の部分も,原作のままかどうか云々というのは,現行法というのは録音・録画についてはそのようにしていない,海賊版には限定していないし,原作のままという要件も掛けていません。刑事で入っていますけれども,刑事として考えて有償に絞るべきだというのですが,ここで主に議論しているのは民事の話です。

ここでも録音・録画以外の議論をしているだけであって,録音・録画自体も原作に絞れとか,何か不当な影響に害しない場合に絞れとか,あるいは有償に絞れとか,海賊版に絞れとか,そのような,議論はされていません。現行法は現行法として合理性があるものとして前提にする限りにおいては,そこで合理性があるのに,録音・録画以外にだけ原作のままとか,有償とか,海賊版サイトに限定するというのは,そこは先ほど言ったエビデンスというか,何かそれを示すだけのものが出てこない限りは,議論としては難しいのではないかと思います。

【茶園主査】では,田村委員。

【田村委員】私は,前回は欠席していますので,もしかすると,もう既に御議論済みのことかもしれませんが,前々回,私の方で有償に限ってはいかがかという提案をしたときに,2つの方向性について申し上げました。そのうちの1つの方向性は今回,入っているのですが,もう一つがあまり入っていないような気がしましたので,また,今,大渕先生の問題意識も伺いましたので,改めてお話をしたいことがあります。

そのときに私が申し上げたのは,1つは,今回もいろいろなところに書いてありますけれども,録音・録画の場合,あるいは音楽と動画と違いまして,写真,テキスト,絵も入ってくる,特にテキストが入ってくるとなりますと,気軽にダウンロードできるという問題がある。そのため,一部混入の例も増えてくるので,ユーザーの保護が大事だ,というものでした。そして,この観点からの指摘に関しては,今回,様々なところで触れられて,それに対する価値判断はともかくとして,十分に検討されているように思われ,ます。もう一つ,私が申し上げたものが,権利者の方が多様になるということです。つまり,技術的に,動画,音楽の作成に比べて,特に音楽かもしれませんけれども,非常に気軽に作れるということで,権利者の方も質的に多様な方がいて,また,類型的に投資額が低くなる関係もあって,比較的,保護を欲している権利者の割合が質的にかなり小さいのではないかと思われるという面も指摘いたしました。その観点から対象を絞った方がよいのではないかと申し上げわけです。

今回の資料に関しては,卒然と読んだだけなので,もしかしたらどこかに書いてあるのかもしれませんが,16ページの(イ)の方向性に関する主な意見の丸のところで,静止画という立て方をされた上で,音楽・映像と質的に相違するものが含まれることに留意が必要と書かれた上に,次に,これが静止画を受けているかどうか分かりませんが,音楽・映像と比べて関係する者(ユーザーと権利者の双方)が質・量ともに大きく異なると書いていただいたのはありがたいのですが,検討の痕跡はここに限られているように見受けられます,ません。どのような態様で質・量が大きく異なり,それがどのような含意を有するのかということに関する意見が文章化されていないのではないかと思います。

同じことは17ページの丸2の音楽・映像以外の著作物の特性というところで,(ア)で,先ほど申し上げたユーザーの観点については,気軽にダウンロードできる環境にあるということは書かれてはいるのですけれども,権利者側のことがまだあまり書かれていないような気がいたします。

こうした二つの観点があることを踏まえて,20ページから挙げられている対応の選択肢を検討してみますと,そこでとはが並列的に紹介されているのですけれども,それを分類すると,2つの方向性があることに気付きます。1つは,ユーザーの方が気軽に行えるということに着目して,ユーザーの行為の方を限定しようというタイプの提案でして,それが(ウ)だろうと思います。他方で,権利者が,録音・録画に比較してもかなり多様であって,質的に異なるので,要保護性のある場合が少ないということに対応して,保護対象というか,保護される権利者の方を限定しようという提案が,(ア)であったり,(エ)であったりするのだと思っております。

そのような観点から,(ア)のところについても,一般的に権利者の方が多様で,全く保護していない,どうでもいいと思っているようなものについて,あえて保護する立法事実があるのかということに対する観点というのが(ア)を支持する理由なのはずなのですけれども,それがユーザーサイドのことを強調する理由と同じような観点からでしか検討がなされていないような気がするのが,少なくとも文章を見る限りは,検討が不十分なように読めると思います。

もちろん,私の考え方は2回前に申し上げたとおりで,(ア)を支持するものでありますし,また,途中で奥邨先生,あるいは深町先生,前田先生にも御指摘頂きましたように,有償の要件の課題と書いてあるところも,私は――先生方のご意見の繰り返しになりますので,あまり詳しくは申しあげませんが――余り説得的なものではないと思います。

一例だけあげると,最初,無償であったものが有償に変わった場合に問題となるのではないかという点については,奥邨先生がおっしゃったとおりだと思います。有償要件が入ったとしても,有償になった段階では,現行法の刑事罰もそうだと思いますが,その段階で保護されることは確実なのですが,事務局ももちろんそれは分かっておられるのでしょうが,それが分かりにくい文章になっています。要するに,無償の段階で,まだこれから有償にするのだけれども,今,無償で提供している段階での保護が落ちるという趣旨だと思うのです。その点に関しては奥邨先生がおっしゃったとおりで,その段階で無償で配っているわけだから,それほどの要保護性があるとは私は思わない。それが嫌ならば,無償の期間を短くすればいいだけの話になりますので,もう少しいろいろと書き足していただいた方が,より精緻な文章になるように思います。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。奥邨委員。

【奥邨委員】今,田村委員からもお話がありましたところで関係して言いますと,そういう意味では,22ページの,今,田村委員からお話があったような形で,権利者の範囲を狭めるという意味でということであれば,(エ)の課題の3つ目のところで,法的扱いに差を設けるだけの事情が認められるとは言い難いとはなっているんですが,逆に言うと,そこまで保護する必要のない権利者を落としていくという意味においては,録音・録画の場合と,テキストであるとか,その他のものとでは,そういう点で要保護性の違いが権利者毎に,差はあるということも言えるわけではないかなというふうに1点,思いました。

もう一点は,先ほど御意見の中でありましたけれども,録音・録画があるんだということを前提にというお話ではあったんですが,実態としてはそうではあるんですが,ただ,これは以前,私も御指摘させていただいた点ですが,――録音・録画の検討時は,私はそのとき委員では入っておらず,あくまで後で,審議会の議事録とか報告書を読んだだけなので,実際にはもう少し違う議論があったのかもしれないんですが,ただ,理解しておるところでは,録音・録画の民事での違法化という議論が出たのは,あくまでも当時の私的録音録画補償金委員会の中で,補償金の対象となるものは,あくまで適法な,30条で許されるものだけを補償の対象にするのであって,違法なもの,30条が本来カバーしないものについては,そもそも補償金の対象ではないんだということをきっちりと線引きするための切り出しとして議論されてきたという出発点があるはずです。

その後の刑事罰のことは,これはまた後日,議論されたことであるんですけれども,最初に民事規制が入れられたときは,まず私的録音録画との関係で議論されましたので,逆に言うと,より一般的な形での議論としては,今こういう形でもう一回おさらいをするというか,全て議論を細かくしていくということは,私は録音・録画の補償金との関係ということが頭にありながらの議論とは全く違う形で今回議論するということは非常に意味があることかなと思っております。

以上です。

【茶園主査】では,大渕委員。

【大渕主査代理】先ほどの有償の点ですけれども,私としては,ビジネスモデルとして無償で配っているのも重要な部分だし,それから,特に2つ目の広告収入だから地上波の放送番組というのは,それ自体,無償と言えば無償なのですが,ビジネス的には,当該放送の提供自体は無償であっても,事業者には広告料が入ってきます。現在のビジネスモデルは非常に多様化していて,昔と違って,無償でやっているものでもバナー広告でまかなったりなど経済的にも重要なものもあるし,無償と有償を組み合わせながらうまくやっているというのもあるので,カテゴリカルに有償だけ入れて,無償を外すというのは,昔以上に実体に合わない度合いが高まってきているのではないかと思います。先ほど事務局の方でも御説明を省かれましたが,諸外国では,現にこの法制をやって,相当の期間の風雪に耐えて,特に問題もなく,これらの国で問題があるから改正されたという話も耳にしません。有償,無償とか,原作でなどかいうところでは切らずに,一般的に,知りながらというよりは,先ほどの方が重要だと思うのですが,確定的に知りながら,それをただ単にストリーミングするだけではなくて,ダウンロードして,保存までするというようなものは違法ということで,各国はずっと来ていて,特にこれで問題があるという話も聞かない中で,日本だけ無償だから外すというのは,私は特に現在のビジネスモデルから考えると,合理性がない話ではないかと思います。

【茶園主査】では,小島委員。

【小島委員】今,いろんな先生方からのお話を伺っていて,立法形式として,ユーザーの要保護性が高いということはあるとはいえ,なかなか例外的な規定を設けることが難しいということが,この中間まとめに書かれているというふうに私としては理解しました。

23ページのところを見ますと,2段落目の最後のところで,ここで検討されている4の(ア)から(エ)のような形で新たな限定を行うことが適当と言える状況にはないと書かれているんですけれども,これは私としては,条文の形で限定的な例外規定を設けることが難しいということでしかなくて,限定を行うべき状況があるということについては否定すべきではないのではないかと考えています。

そうだとしますと,例えばこれは非常に影響が大きいということであれば,そのガイドラインであるとか,手引きとか,Q&Aとかいろんな形が考えられるかと思いますけれども,やはりきちんと説明をしていくということが大事ではないかと思っていまして,こういう限定を行うべき場合の具体例がもし分かっているのであれば,それについては例えば書いておくということは必要なのではないかと。

それ以外にも,当然限定すべき場合というのはあるかもしれないけれども,そこについては奥邨先生がおっしゃるように,その立証責任は利用者側,にあるんだということをきちんと明記しておくとか,いろんなやり方があるのではないかと思いました。

更に文言との関係で言いますと,今回もし新たな限定を条文として行わないということになるのであれば,この「事実を知りながら」という要件に係る比重が非常に大きくなってくるということではないかと思います。そうなってきますと,この文言は既に著作権法の中で録音・録画のところでも入っているわけでありまして,もし静止画・テキストについて,それとは異なる考慮要素が必要なのであるということであれば,それをきちんと指摘する必要も出てくるであろうと思います。

さらには,田村先生も含めていろんな方がおっしゃっておられるのがユーザーとの関係ということなのだと思いますが,そうなってくると,やはり普及啓発というところが非常に大事になってくるはずで,録音・録画の場合には,文化庁は子供向けのQ&Aまで作っておられるというふうに理解しておりまして,そういった非常に多様な,ユーザーに対するメッセージをきちんと発するということも求められるかと思いますし,さらには,その際には,既に先行している録音・録画も含めて齟齬がないような説明というものをなさっていただいて,遺漏のないようにしていただくことが必要なのではないかと,議論を聞きながら感じました。

私からは以上です。

【茶園主査】太田委員。

【太田委員】幾つかあるんですけれども,1つは15ページと16ページで,(ア)の方向,(イ)の方向というのが併記されているんですが,17ページ以降は(イ)の建前を前提としたかのような書きぶりになっているのが少し気になりまして。

というのも,前回,可罰的違法性とか起訴裁量とか親告罪ということで区別する合理的立法事実が十分にはないのではないかという感じの意見の方が多かったように――そうではなかったのかもしれませんけど――感じていたものですから,それが逆転しているなというのが全体としての私の意見です。

2つ目が,大渕先生のおっしゃることと全く同じで,一番違和感があったのは,先ほどの無償の例として放送というのが挙げられておりまして,法と経済学とかミクロ経済学をやっている人から言ったら,だから法律家は何も分かっていないということになるわけでして,自分でただで漫画書いてアップして勝手に使ってくれというのとは違って,物すごい額が使われているわけですし,しかも,それは結局,転化されて,消費財の代価に入っているわけで,結局,無償のつもりになっているのは単なる錯覚であって,みんな物を買ったときの代価として払っているわけですよね。それを無償というのは,こういう音楽の映像でもそうなっているので,それを全部ひっくり返せというつもりはないんですけれども,これはもう法と経済学的に言うと,構成要件が間違っているとしか言いようがないものですので,是非少し御検討,ないしは少なくとも念頭に置いて議論していただかないと,ちょっと立法事実,出発点が誤解に基づいていると言われかねないというのが私の大渕先生に対する援護射撃です。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。では,松田委員。

【松田委員】私も映像等々,今回のもう少し広げた著作物についての立法事実に差違がないというふうに基本的に意見を述べてまいりました。ですから,現行法に加えて,書籍等も保護されるという状況にして,民事,刑事もパラレルに同じだったらいいなと思っておりました。

今の有償性につきましては,もし変えるなら,立法事実は変わらないのですから,有償を変えて,38条にある営利性という言葉に変えて全体を変えてみたらどうかと思いました。

【茶園主査】ほかに何かございませんか。では,今村委員。

【今村委員】先ほど田村委員の方から,権利者の方の多様性とか,そういう意味での質の変化もあるという話がありまし,た。そういう観点からしますと,今回,このダウンロードの違法化の範囲を拡大するという議論をする際に,余り権利行使されないんだということを前提として,権利行使をされる範囲を限定するというか,そういうことで議論してきたと思うんですが,他方で,権利行使をしてくる場合というのも当然出てくると思います。

そういうときに,もちろん正当な権利行使する場合もあると思うんですけれども,何か詐欺的な手段としてこの規定が使われる――要するに,カジュアルにできる行為ですから,そういうことをネタに,インターネットのユーザーに対して,本来するべきでない権利行使をするといった事例が生じる懸念――それが増える懸念ですかね――も少し感じたんですけれども,実際に音楽,映像の著作物の場合に,そういうダウンロードするユーザーに対して,それを詐欺的な手段で権利行使しようとしたようなことが過去にあったのでしょうか。そういったことが余りなければ,ユーザーの側に対する普及啓発として詐欺的な権利行使の部分は余り気にしなくてよいかもしれないのですが,―,他方で,権利者が多様になるということからは,多少そういう可能性が高まるということもあるのではないかと思いました。そこは何か分かる範囲で今までの事例などがありましたら御紹介頂ければと思うんですけれども。

【大野著作権課長補佐】ありがとうございます。音楽,映像につきましては,閲覧段階におきましては,そういった本来的な権利行使じゃない詐欺的な行為が広く行われるんじゃないかという懸念がユーザー側の団体から示されていたのは事実でございます。

ただ,実際に法制化した後にそのような事例が起きたかということにつきましては,少なくとも文化庁としては把握をしておりませんし,その点についても前々回,それから前回,追加の照会をしましたが,ユーザー側の団体からも何も示されなかったというのが事実としてあろうかと思います。

あとは,その対象が広がることに伴いまして,そういった不当な権利行使の可能性が広がるんじゃないかということがございましたけれども,そもそもユーザーがダウンロードしているかどうかというのが,そういったトロール的な行使をする人に分かるのかということがありますので,そういう行為をするのであれば,普通は見える形でアップロードなどをしている方にやるんだろうなと思いますし,また,先ほど権利者が多様になるというふうにおっしゃっていただきまして,保護の必要性の低い方が入るということでございましたので,そういう保護の必要性が低い方,ビジネスしようという意識がない方が入るという御指摘でございますので,そういう方が増えることで,そういったトロール的なものが増えるというのも少し想定はされづらいのかなというふうに事務局としては感じておりました。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では,生貝委員。

【生貝委員】少し今までの議論とは別の観点から2点ほどコメントをさせていただきます。

1つ目は,14ページのところで被害実態及び措置の必要性の2段落目のところにおきまして,多数の学術論文の全文をダウンロードできる論文海賊版サイトということで,注11のところで,これは特にここ最近の様々な調査によって,2017年に127万件の,実際に国内からだけでも研究者がダウンロードしていたという事実等,明らかにされ報じられていたところだと思いますが,これは非常に難しいところではあるのですけど,私自身,大学図書館等でこういった学術情報に関わっていた,流通に関わっていたという観点から,あくまでコメントというところなんですけれども,やはりこの学術論文,特に科学技術の分野でございますね。こういったサイトが出てくる背景には,やはり学術論文のグローバルプラットフォームというのが大変少数に寡占化されている中で,非常にその購読料というものが高騰していると。特に日本国内の,かなり体力のある大きな大学等でも,研究者が必要とする論文のパッケージをちゃんと包括契約すること自体が非常に難しくなってきている状況があるというふうに言ったようなときに,こういったニーズというのが――これはこういったサイトへのアクセスというのが国際的に広がってきているところなのだろうなと思います。

もちろん,例えば我が国の科学技術研究というのがこういったサイトによって成り立っている部分というのが部分的にもあるとしたら,それ自体,望ましくないことではあるのですけれども,今回,何らの制限というものも課さずに,今回の立法というものを行った場合,もちろんこういったサイトというのも非常に積極的な抑止の対象には入ってくるということには,当然前提として,この書きぶりとしてもなっているところではございますけれども,そのような場合にも,1つは,ちょっと書きぶりとして,やはり何といいますか,比較的,今回主に対象とされているような娯楽的,あるいは漫画ですとか,放送ですとか,そういったようなタイプの著作物のダウンロードというところと,こういった科学技術研究というところにどうしても深く非常に関わってくるような物の取扱いというの,やはりちょっと並列に並べるというのは少し難しい部分があるのではないか。あるいは少しそういったような背景というふうにいったようなものも,ある程度汲んだ書きぶりをする必要があるのではないか。ないしは,どうしても科学技術イノベーション政策全体にすくなからずの影響を与えるところではございますので,そういったところとの関係者との意見交換ですとか状況の調査ということを含めて,今後よく注視をしていく部分があるところなのではないかと考えているというのがまず1つ目でございます。

そして,次に5ページ目以降で,こちらはこれまで御記載頂きました比較法的な観点から,諸外国においてもこういった制限を付さないような,ダウンロードの違法化というものが行われているということを今回の1つの大きな論拠,背景にもなっていると思いますけれども,今回,議論の中で,条文上,このように実際にここ数年,特に導入されてきているという議論はなされたところではありますが,ただ,今回,比較的肝心なのは,実際にどうやってその法が社会で生きているのか,権利行使はどうなのか,あるいは萎縮効果ですとか副作用はどのようなものがあるのかというところが比較的重要性が高い議論かなと思いましたときに,今回,特に時間的な余裕というところも含めて,そこまでの法比較制度的な検討というのはなされていないのかなというふうに見ましたときに,例えば各国におきまして,現状把握されている限りでそういった状況はどうなのか,もしそういった問題が起こっていないということが把握されているのであれば,そう書くべきであろうし,あるいはそういったところまで踏み込んだ上で外国法を紹介しているわけではないということであれば,そのことについて明記する必要はありましょうし,また,あるいは仮に,法規制,法制度が実際に導入を何かしらの形でされた後も,そういった副作用を抑止するために各国としてどのようなどのような努力をしているのかということを知るためにも,そういった調査や研究ということは引き続き力を入れていく必要がある分野だと考えております。

以上でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに何かございますでしょうか。では,大渕委員。

【大渕主査代理】これは重要な点だと思いますが,25ページから26ページにかけての,関連論点として,これは先ほど出たように,研究目的での利用に係る権利制限であります。以前から気になっていたのですが,何ゆえ文化国家である日本で研究の権利制限がないのかという大変根本的な問題がありまして,私はもう自分を納得させて,これは30条の勿論解釈でやれるといろんなところで言っております。研究のための複製をやってはいけないと思っている人は誰もいなくて,相互に黙示の許諾等々で処理されているかと思います。私は今,30条の勿論解釈と申し上げましたが,30条だけではなくて,先ほど言われたように,研究には公益的な目的もあるので,だから勿論解釈なのですが,30条と同じレベルでもできなくはないし,プラス公益もあるからということであり,かつ,誰をこの主体にするかという,自称研究者でもいいのか等々について立法的明示の価値はあると思います。これを同時にできるかどうかは別として,イギリスなどではたしか研究及び私的学習というように,30条のようなものを組み合わせたりして,それが私の言った勿論解釈に近いようなものかもしれませんが,今後はきちんとこの点も手当てするのがよいと思います。研究者は別として,一般の30条的なものをやる上では,録音・録画と同じようにするというように持っていくと,いろな御懸念の点も排除できるし,かつ,もともと気になっていたものも実現できるということで大変よいのではないか。

下手にこれが潰れると,研究のための複製ができなくなって,反対解釈されると困るからここの場では言ってこなかったのですが,そこのところは前向きに考えてよい話ではないかと思っております。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では,松田委員。

【松田委員】研究目的のところの権利制限については,私も同感のところはありますけれども,違法ダウンロード,知ってそれをすることについての違法性の民事,刑事の対処をとることについて,その部分について研究者だから許されるというものを入れるべきではないと思う。研究目的で何か資料をコピーするということであれば,それはもうちょっと違う条文で,そして,研究目的がまさに研究室の範囲内で使われる限りにおいては適法だというような,ダウンロードとは離れた条文を作るべきだと私は思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では,前田委員。

【前田(健)委員】研究目的での利用に係る権利制限の話が出ていますので,私からも一言だけ。

今,松田委員が御指摘になりましたように,例えば違法アップロードサイトから論文をダウンロードすることは研究者だったらいいというような,そういう権限規定というのはないと思います。

この話題が出たときにどういうものが想定されていたかというと,例えば2つの著作物をダウンロードして,両者の間で著作権侵害があるかどうかを比較するとかそういうのが想定されていたと思います。そういったものについては,例えば新しい30条4の非享受目的利用というところで,その著作物の中を見ない,若しくは実質的に見ない形で,あくまで各要素を比較する目的というような場合には,場合によっては適用できるときもあるのではないかという気がいたします。そういった形で,著作物自体を何か見ることが目的ではなくて,あくまでそれを素材にして研究しているという場合であれば,こういう権利制限規定の適用というのはあり得ると思います。

そういった点は,今回は多分そんなに深く検討する趣旨ではないと思いますが,将来の課題としてあるのかなと思っております。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。

ちなみに,刑事罰に関しては,必ずしも明確にここには記載されていませんけれども,例えば録音・録画と一緒にするとしますと,民事については,有償とかの要件はなくて,刑事については有償という要件を定めるという形になるのでしょうね。

【大野著作権課長補佐】現行を引き写すならそうなります。ちょっと結論がはっきり書かれていなかったので,御指摘頂いたとおりですので,分かりやすいように記載は直したいと思いますし,また,そのほかにも多々,御意見,修文の御指摘を頂きましたので,そこもまた御相談したいと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。生貝委員。

【生貝委員】1つだけ。念のため補足になります。

さっき申し上げた海賊版の論文サイトというところに関して,僕自身の個人的な意見としては,それは例えば研究目的の例外等で救うですとか,そういうことをもちろん考えているわけでは,他の先生と同様ございませんで,この問題というのは,どちらかというと,まさしく正規版の利用というものをいかに容易にしていくかといったような方法ですとか,ただ,それを実現するに当たっても,ちょっとこの学術論文マーケットというのは非常に複雑な状況があり,慎重な時間を掛けた検討が必要だろうという趣旨でございます。念のためという次第でございます。

【茶園主査】ありがとうございました。

ほかに御意見,御質問等ございますでしょうか。よろしいですかね。

いろいろと活発な御議論をありがとうございました。では,本日の御議論,あるいは頂きました御意見を踏まえまして,論点整理案を修正させていただきたいと思いますけれども,時間もありますので,修正につきましては,私に一任していただきたいと思っております。その上で,その内容を,この中間まとめ案にも反映させていただきたいと思っておりますが,御了承頂けますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】どうもありがとうございます。それでは,そのように取り扱わせていただければと思います。

では,事務局におかれましては,この中間まとめにつきましては,今後,広く国民の皆様からの意見を募集していただきまして,その結果も踏まえて,次回の小委員会におきまして,さらに議論を深めていきたいと思っております。

では,続きまして,議題(4)その他といたしまして,このたび,今年の通常国会で整備法が成立いたしましたTPP11協定につきまして,事務局より報告があるということですので,その御説明をお願いしたいと思います。

【浦田国際著作権室専門官】事務局よりTPP11協定の状況につきまして御報告をさせていただきます。参考資料2としてお配りをさせていただいている資料を御覧頂けますでしょうか。

TPPに関しましては,米国以外の11か国によるTPP11協定が本年3月に署名をされたことを受けまして,本年の通常国会において,TPP11整備法が成立するとともに,TPP11協定の締結につきましても国会で承認をされたところでございます。

これによりまして,参考資料2の2枚目と3枚目でお配りをしておりますとおり,TPP12の整備法において予定されておりました著作物等の保護期間の延長やアクセスコントロール回避に関する措置等の著作権法の改正につきましては,TPP11協定が日本国について効力を生ずる日から施行されるということとなりました。

我が国につきましては,本年の7月にTPP11協定の国内手続きの完了について,寄託者に通報を行ったところでございますが,TPP11協定は,同協定の署名国のうち,少なくとも6か国が国内法上の手続きを完了したことを寄託者に通報してから60日後に発効するということとされておりますところ,本年10月31日に6か国目となりますオーストラリアが国内手続きを完了した旨の通報を行ったことから,本年12月30日にTPP11協定が発効するということとなりました。

これによりまして,参考資料2の2枚目と3枚目でお配りをしております著作権法の改正は,本年12月30日から施行されるということとなっております。

事務局からの報告は以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

この点について,何かございますでしょうか。よろしいですか。では,前田委員。

【前田(哲)委員】保護期間の延長に関しまして,いわゆる戦時加算の問題について,外国政府と日本政府との間で文書の取り交わしがあったということが報道されておりますけれども,その内容は,どうも民間の取組を促進するというものにとどまっているようでありまして,そうだとしますと,当分の間は,法的にはこの70年プラス戦時加算の権利行使があり得るという前提で考えなければいけないということになるのでしょうか。

【浦田国際著作権室専門官】御質問ありがとうございます。

御指摘のとおり,戦時加算の問題に関しましては,サンフランシスコ平和条約を基礎として義務となっている事項でございまして,そのことからすると,法的には70年プラス戦時加算ということにはなるんですけれども,今,御指摘頂いたとおり,戦時加算の実質的な解消のために,政府同士で書簡を交わしておりまして,実際には70年で,もともと50年プラス戦時加算で包含していた内容が,よりも長い期間保護することになることから,そこはそれ以上に行使をしないということで,民間の取組を奨励していくということと併せまして,政府間においても,必要に応じて,その対話を行っていくということとなってございます。

この点に関しまして,例えばCISACという国際著作権の団体においては,決議におきましても,日本が70年に延長する際には,それ以上,権利行使をしないということを加盟団体に働き掛けるという決議をされているという民間団体の取組もございますので,こういったことも踏まえまして,引き続き政府においても,必要な取組を行ってまいりたいと思っております。

【茶園主査】よろしいでしょうか。では,どうもありがとうございました。

では,他に何かございますか,。

【松田委員】済みません。

【茶園主査】では,松田委員。

【松田委員】きょうのメーンの中間取りまとめにつきまして,もう座長の一任が取りつけられております。それについていささかも異論はありません。しかし,1点だけ議事録に残しておきたい点があるので,発言させていただきます。

第7の47条の5の1項3号に基づく政令指定の件でございます。

これは,結論的には一定期間を置いて,改めてニーズの募集をして,そして政令指定の要件が整うものがあるかどうかを検討するということになっております。それでいいのだろうと思っています,この点につきましても。

この3号適用の議論のところで出てきましたのは,付随性についての事務局の見解と審議会のこの場でいささか違う意見が出たということがありまして,その意見を述べた者の1人でありますので,議事録に加えたいと考えたわけであります。

事務局は,47条の5の各結果の提供と付随的な著作物の利用については,同心円状にはない別の円として図示されていることがありました。これを外側説と言うのであれば,この審議会で出た議論は,いや,それは結果の提供の中に含まれて付随的著作物が――もちろん軽微でありますが――利用されてもいいのではないかという意見が出たわけであります。これは内側説と一応言っておきましょう。

この外側説と内側説は,実際上,3号の適用におきましては,かなり柔軟性を異にすることになる可能性があると思っております。

従いまして,将来のニーズの募集に当たっての検討につきましては,必ずしも外側説だけではなく,内側説もあることを踏まえて検討していただきたいと思うわけであります。

内側説が排除されるべきものでない点については,私は3つの理由があると思っております。

1つは,事務局が考えている外側説は,果たして外側説をとらなければ立法ができないかという点においては,そのような要請は私はないと思っています。著作権法上の背理になったり,他の法制上の,特に憲法上の問題で財産権の侵害になるというようなことまではいかいなと思っています。

従いまして,立法の要請としても,外側説のみであるというわけには必ずしもならないと思っています。これが1点目です。

2点目は,常に同一の「付随的」という言葉を使った30条の2の解釈において,付随対象著作物は撮影等対象著作物の中に含まれるもの,それは峻別できないものというふうに解釈されるに至っております。これは確かに立法後にそういう解釈が生まれていることではありますけれども,これも参考になるのではないかというのが2点目であります。

3点目は,3号の前の1号,2号のそれぞれの結果,すなわち結果の提供と,それから付随との関係でありますが,1号に言う検索結果の提供とスニペット等の付随的著作物として利用されるものが果たして内側か外側かということであれば,十分に内側として利用されている状況が考えられると思います。情報解析をした結果において,その情報解析の結果の中に付随的に著作物を利用して説明をするということも十分に考えられることであって,こう考えますと,1号,2号等も必ずしも外側説で固まっているというわけではなくて,解釈次第では十分に内側説もあり得るのではないかということであります。これが第3点です。この点を議事録に残したいと思いました。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

恐らく今のお話は,この中間まとめでは,必ずしも明確には示されていないことですが。

【松田委員】だから,議事録に残してくれればいいです。

【茶園主査】分かりました。どうもありがとうございます。

【大渕主査代理】一言だけ。

【茶園主査】大渕委員。

【大渕主査代理】内側,外側というとイメージとしては分かるのですが,結局,同床異夢になりやすい概念で,重要なのは,スニペットでいわれているようなもので,創作的表現を享受するためのものではなくて,要するに,自分が探しているものかどうかを判断するための道しるべとして,中身が大体こういうものだと分かるというところなので,私としてはやはり内側か外側かというよりは,享受性のあるものかということがむしろ重要であると考えます。1層,2層,3層の中では,享受性があると3層に来ますが,2層までは享受性がないということになっているというのと,同じことを別の面からおっしゃっているのかもしれませんが,内側,外側というのはかえって議論を混乱させかねないような気がいたします。24年改正のときの経緯,あるいは30年改正のときにも私は委員の1人として,そのような理解でおりましたので,享受性の有無の方が分かりやすいのではないかと思っております。

【茶園主査】この中間まとめ案の124ページにも書いてありますように,今後,ニーズが出てきて,それの審議においては,そもそも付随性というのは一体どういう意味なのか。そのニーズが付随性という要件を満たすかどうかという点については,恐らく御議論頂くことになると思います。ありがとうございました。よろしいでしょうか。

では,どうもありがとうございました。本日はこれくらいにしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は,長時間にわたりありがとうございました。

本年のこの小委員会におきましては,今回が最後ということになります。本年はかなり急ピッチで様々な課題について検討頂きまして,まことにありがとうございました。主査からもございましたとおり,今後,中間まとめ,パブコメを掛けまして,来年1月以降,改めて議論をお願いしたいと思っております。

次回につきましては,既に御案内しておりますが,1月25日金曜日の10時から2時間程度を予定しております。引き続きよろしくお願いいたします。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,以上をもちまして,文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第7回)を終了とさせていただきます。本日は長時間どうもありがとうございました。

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