文化審議会著作権分科会
法制・基本問題小委員会(第2回)

日時:令和元年9月18日(水)
17:00~19:00
場所:文部科学省3階第2特別会議室


議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)写り込みに係る権利制限規定の拡充について
    2. (2)インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制について
    3. (3)研究目的に係る権利制限規定の創設について
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する論点整理(案)(199KB)
資料2
著作権侵害コンテンツの検索結果表示に関する検討について(関係団体提出資料)(234KB)
資料3
研究目的に係る権利制限規定の創設に当たっての検討について(案)(632KB)
参考資料1
第19期文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第1回)における意見の概要【写り込みに係る権利制限規定の拡充】(127KB)
参考資料2
文化審議会著作権分科会報告書(2019年2月)【インターネット情報検索サービス関係部分抜粋】(3.28MB)※一部音声読み上げソフト非対応のデータです。
参考資料3
インターネット上の海賊版対策について(2019年7月26日 知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会 資料1)【インターネット情報検索サービス関係部分抜粋】(145KB)
参考資料4
著作権侵害に関する Google の取り組み(Google提出資料)(180KB)
出席者一覧(42.7KB)

議事内容

【茶園主査】では時間が参りましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会第2回を開催いたします。

本日は御多忙の中,御出席頂きまして誠にありがとうございます。

議事に入る前に本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと特段非公開とするに及ばないと思いますので,既に傍聴者の方には入場していただいております。この点,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】よろしいでしょうか。それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴していただきたいと思います。

では,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元の議事次第に記載の配付資料一覧を御参照いただければと思います。本日は資料を3点,参考資料を4点,お配りしております。

まず資料1が,写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する論点整理(案)。資料2が,著作権侵害コンテンツの検索結果表示に関する検討について,と題する関係団体からの御提出資料。資料3が,研究目的に係る権利制限規定の創設に当たっての検討について,と題する資料でございます。

また,参考資料1として,写り込みの関係で前回頂いた御意見の概要,参考資料2から4までとして,議事の(2)インターネット情報検索サービスに対応した参考資料をお配りしております。

不足などございましたらお近くの事務局員までお伝えいただきたいと思います。

【茶園主査】よろしいでしょうか。それでは議事に入りますけれども,初めに議事の進め方について確認しておきたいと思います。本日の議事は(1)写り込みに係る権利制限規定の拡充について,(2)インターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制について,(3)研究目的に係る権利制限規定の創設について,(4)その他の4点となります。

では早速議事に入りたいと思います。議題の(1)写り込みに係る権利制限規定の拡充についてでございます。前回の議論を踏まえまして,事務局で論点の整理を行っていただきましたので,まず,その御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,御手元に資料1を御用意いただければと思います。写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する論点整理(案)ということで,前回お示しした資料に前回頂いた御意見を反映させた形で,取りまとめに向けた資料として作成したものでございます。右肩に記載しておりますとおり,下線を引いている部分が本日特に御確認,御議論を頂きたい点となっておりますので,この部分を中心に御紹介をしたいと思います。

まず,1ポツの問題の所在につきましては,前回お示しした資料と基本的に変わっておりませんので,説明は割愛いたします。

次に2ポツ,基本的な考え方の部分につきましては,前回御議論がございましたので,改めて記載をしている部分となります。1段落目は,写り込みに係る権利制限規定が,そもそもどういう根拠・,位置付けで導入されたかということにつきまして,平成23年の報告書を基に記載をしているところでございます。

次の「また」以下の段落が,前回御議論があった部分でございます。平成29年の報告書におきまして,いわゆる柔軟な権利制限規定を創設する際に,権利制限全般について1層から3層までの類型化が行われております。その関係で,今回の写り込みの規定が,この1層から3層のどこに位置付けられるかという議論がございました。

前回の御意見の中では,1層に該当するという御意見のほか,2層に該当するのではないかという御意見もございました。また,2ページ目の1行目から2行目あたりに記載しておりますとおり,両方の層にまたがる,すなわち利用形態によって1層に該当する場合もあれば2層に該当する場合もある,こういった整理もあろうかと思っております。

前回両面から御意見がございましたとおり,具体的な位置付けにつきましては,御意見,見解が分かれ得るところかと思いますが,いずれにしても1層又は2層に該当するということで,相当程度の柔軟性を定めた規定にするということが,平成29年報告書の整理にも合致するものだということについては共通認識になっているかと思いますので,その旨を記載しております。

これを踏まえまして,2ポツの最後の段落のところでは,本規定につきましては,その趣旨・正当化根拠が妥当する範囲で可能な限り柔軟な対応が認められるように要件の緩和などを行うことが適当ということ。また,「ただし」といたしまして,その際,安易に規定を拡充することで,想定外の利用態様にまで適用範囲が拡張されたり,濫用的な利用を招くことがないように注意することも必要という形で,前回頂いた御意見を踏まえて総論的な考え方を記載しております。

3ポツからが論点整理(案)ということで,個々の要件をどうしていくかという部分の記載でございます。

まず,なお書き,2段落目の記載を今回追加しております。前回の小委員会におきましては,30条の2の第1項の要件をどうしていくかということを中心に御議論を頂いておりまして,第2項をどうするかという点については明示的に御議論がなかったかと思っております。事務局としましては,第2項におきましては,既に「いずれの方法によるかを問わず,利用することができる」という包括的な規定になっておりますので,1項の見直しに伴う技術的な修正はあり得るかと思いますが,2項自体の内容について特段見直しの必要はないと考えております。ここではその旨を記載しておりますので,念のため御確認を頂ければと思っております。

続いて,3ページ以降からが実際の要件をどうしていくかという記載になります。まず,3ページから4ページにかけて,対象行為について記載がございます。前回,共通認識になっていたかと思いますので,詳細は割愛いたしますが,現行規定では,写真の撮影・録音・録画に限定をされておりますが,このような限定をする必要はなく,いわゆる生放送・生配信を対象にするとともに,固定を伴うものにつきましても手法を限定せず対象にしていくことが適当,という方向性だったかと理解をしております。

本日,念のため御議論を頂きたいのが,4ページ目の2段落目,なお書きの,下線を引いている部分でございます。写り込みとは若干場面が異なるかもしれませんが,例えば,自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に,同じページに他人の著作物が入り込んでしまうという場合があり得るかと思います。こういった事例につきましても,いわゆる写り込みと同様な状況にあるものとして対象に含めることが適当かどうかということについて,念のため御意見を頂ければと思っております。

それから丸3,条文化に当たっての留意事項,こちらも前回の御意見を踏まえて記載をしております。まず,技術・手法などにかかわらず幅広い行為が対象に含まれるよう包括的な規定をすることが適当であるとしつつ,ただし,それによりまして,いわゆる写り込みが生じ得るということで想定している場合以外,全く関係ないような事例が対象に含まれてしまうことは適切ではございませんので,ここの括弧書きに記載しているような適切な表現をすることで,条文上写り込みの場面だということを特定する必要がある旨を記載しております。

次に(2),著作物創作要件につきましても,前回の御議論の中でこの要件自体を課す必要はないということが共通認識となっていたかと思います。1点御意見が分かれていたのが5ページ目の下線の部分でございます。この「著作物を創作するに当たって」という要件を,単に削除するだけの場合には,映画の盗撮など違法行為に伴う写り組みについても適法となり得ることについてどう考えるかという点でございます。

丸1,丸2と書いておりまして,両面から御意見があったかと承知をしております。丸1は映画の盗撮などの行為自体が既に違法となっておりますので,それで足りるのではないか,つまり,写り込み部分について違法にするために要件を追加していく必要はないという考え方。丸2としましては,主たる行為が著作権法上許容されない,違法なものであるにもかかわらず,写り込みの部分を適法にする必要はないという考え方。この,両面の考え方があり得るものというふうに思っております。

この点,丸2のような考え方を採用する場合には,著作物創作という要件ではなくて,端的に著作権侵害に伴う写り込みは対象外にするという要件を設けることも考えられますが,写り込みの規定の趣旨・,正当化根拠に立ち戻って考えると,そのように一律の要件を定めるということについては,一定の疑義もあるものというふうに思っております。すなわち,今回,写り込みの規定の正当化根拠を改めて確認をしておりますが,権利者に与える不利益が特段ない,又は軽微だというところに本質があるということでございますので,主たる行為が違法だということをもって一律に権利制限の対象外とすることが妥当かどうかというのは,若干の疑義もあろうかと思っております。この点,ただし書きや他の要件の解釈によって,しっかりとした対応ができる可能性もございますので,その点を含め,法整備に当たって適切な整理・措置がなされることが適当という記載にさせていただいております。この点についても御意見を頂ければと思います。

続いて(3)分離困難性・付随性につきましても前回おおむね共通認識ができていたかと思います。分離困難性については,要件として削除しつつ,付随性を中心として再構成しようという流れになっていたかと思います。

御議論があった部分としましては,6ページ目の下の部分,丸2と書いているところでございます。分離困難性という要件を単に削除するだけだと,脱法的な利用も可能になってしまうおそれがあるため,何らかの歯止めを掛ける要件を別途設ける必要があるのではないかという御意見がございました。下線を引いておりますとおり,適用範囲が過度に絞り込まれることのないよう注意をしつつも,例えば,主たる行為を行う上で「正当な範囲内において」などの適切な要件を追加することで,一定の歯止めを掛けることが適当とさせていただいております。この点,前回は,「必要と認められる限度」という要件を例示しておりましたけれども,写り込みについては,必要ではないけれども著作物が利用されてしまう場合がメインで想定されていますので,必要というのは少しニュアンスが異なるという御指摘もございました。このため,「正当な範囲内において」という,著作権法で別途使われている要件にしてはどうかということで記載をしております。

次に,7ページの丸3に参りまして,被写体の中に当該著作物が含まれる場合の取り扱いでございます。1段落目にございますとおり,写り込みの事例としましては,メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合,事例1,のほかに,街の雑踏を撮影する場合のように被写体の中に当該著作物が含まれている場合,事例2というものもあり得るところ,この両方を権利制限の対象に含めることに異論はないと考えておりますけれども,現行規定のような規定ぶりを維持した場合には,事例2が入るのかどうかというのが若干疑義が出てくる面もあろうかと思います。

このため,2段落目にございますとおり,条文化に当たりましては,事例1,事例2,これを両方条文に明記をすることで,対象に含まれるということを明確化していくことが適当としております。ただし,という部分では,前回総論的な御意見として,写り込みではない場面が対象に入ってしまうのは問題だという御意見がございましたので,その点例示を挙げて記載を追加しております。例えば,多数の著作物で構成される集合著作物・結合著作物,こういうものがあった場合に,それ自体をメインで撮ることも可能になってしまいますと,写り込みとして想定している場合とは異なるのではないかという問題意識でございます。

この場合,個々の著作物というのは,当該集合著作物・結合著作物の軽微な構成部分となっていることも想定されますので,個々の著作物の利用に着目して考えると,それぞれ写り込みの規定で適法になり,それが複数積み重ねられることで結果として集合著作物・結合著作物全体の利用が可能になってしまうおそれがある。こうなってしまいますと,写り込みではなくて著作物自体をメインで使おうという場面にも適用し得るものとなってしまいますので,こういうことのないように条文の規定ぶり,考え方などをしっかりと注意して整理していく必要があるのではないかということを追記しております。

続いて(4)軽微性につきましても,前回共通認識になっていたかと思います。既に現行規定におきましても,軽微という概念は,面積だけではなくて,画質,音質,利用時間,作品のテーマとの関係などを総合考慮で判断するということになっておりましたが,条文上それが明記されておりませんので,今回の見直しに当たりまして法47条の5第1項なども参考にしつつ,考慮要素を明記していこうという方向性だったかと理解をしております。

7ページの下の部分に,追記しておりますのは,前回頂いた御意見に対応した記載でございます。この軽微という概念につきましては,あくまで利用行為の態様に応じて客観的に要件該当性が判断される概念であって,当該行為が高い公益性・社会的価値を有するということなどが判断に直接影響するものではない。逆に申し上げますと,公益性の高い行為だからといって著作物を多めに使って良いということにはならない,あくまで客観判断だということについて明記をしておいてはどうかと考えております。

8ページの(5)の対象支分権につきましては,特段御異論がないところかと思います。(1)で対象行為を広げますと当然,対象支分権も広がってまいりますので,今の2項と同じように「いずれの方法によるかを問わず,利用することができる」という包括的な規定とすることが適当であるとしております。

最後に,(6)ただし書きにつきましては,前回御議論のあった点を踏まえて新しく記載を追加しております。1段落目はただし書きの趣旨ですとか,この写り込みのただし書きがどういう理由で設けられたのかということを確認的に記載しております。事務局としては,あくまで最終的な安全面としての役割を果たすということで設けられたものであり,何か具体的な事例が想定されているわけではないと思っております。

こういった位置付けを前提としまして今回,(1)から(5)まで本文の要件を緩和いたしますので,これにより権利制限の対象となる行為・事例というのが増大してくるかと思います。これに伴って,ただし書きの適用場面が拡大するのではないかという御趣旨の意見を前回頂いたかと思っておりますが,必ずしもそうではないという考え方もあるということで記載をしております。つまり,今回の見直しというのは,あくまで本来この規定が想定していた趣旨・正当化根拠が妥当する範囲で柔軟な対応を認めるというものでございまして,依然として権利者に与える不利益が特段ない又は,軽微だという場合に限定されていることは変わりませんので,そう考えると,今回の見直しによってただし書きが適用されるような場面・事例が増えてくるということは想定されないのではないかと考えておりまして,その旨を明記してはどうかと思っております。

いずれにしましても,最後,なお書きで記載をしておりますとおり,こういった考え方が十分に理解されないと,結局ただし書きに該当するのではないかという懸念の下,日常生活における行為が萎縮してしまう可能性もございますので,法整備の際にはその他の要件緩和の内容なども含めまして,明確に周知することが重要という記載をさせていただいております。

事務局からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

それでは,ただいま御説明頂きました内容につきまして,御意見,御質問がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。

【大渕主査代理】誰もいなければ。

【茶園主査】では大渕委員。

【大渕主査代理】御説明ありがとうございました。

先ほどお尋ねであった4ページの下線を引いたところは,両方とも加えられたとおりでよろしいかと思っております。

それから,5ページの丸1と丸2につきましては,私としては,ある意味かなり難しい問題ではないかと思っております。最終的には軽微性というところに掛かってくるのですが,通常の適法の行為に付随する場合の軽微性と,違法なものに付随する場合の軽微性が同じかという問題とも関連しております。この軽微性というのが同床異夢になっていて,ここを明確にする必要があるかということにつながります。違法に付随する場合でも不問に付してよいぐらいだと,本体の盗撮の方は抑えなければいけない,そこに付する軽微な部分というのが違法なものにくっついたとしても無視してよいぐらいの非常に軽微なものだということであれば,違法だとしても余りにも軽微なのだから無視していいよということになります。

ただこれは,はねてくるのは,逆に言うと適法な場合での付随というのも,極めて軽微だと,いわば絶対的軽微性のようなものであれば,もう別に適法だろうが違法だろうが差が出るほどのものでもないくらい,非常に軽微なものだということになってきますので,軽微性というのは非常に重要になってきます。違法なものであっても,もう無視してよいくらいの極めて軽微なものがここでいっている軽微性というのであれば,恐らく丸1の方になってくるかと思います。それから丸2にする場合に,ただし書きや他の要件に委ねるというのはあまりやらない方がいいと思っています。このような,ことをするぐらいならば,丸1に徹するほうがよい。軽微というのを明確化して,違法なものに付随していても,別に無視していいくらいのものだから,大元が違法でも,本当に軽微なのだから,適法,違法を問わず,もう無視してよいということに帰着するのであれば,丸1の方にいくのではないかと思っております。先程言ったように,丸2のただし書きに持っていくぐらいであれば,丸1で,今の軽微のところを明確化すればよいのであろうと思います。

それから6ページの「正当な範囲」というのは,前回,必要というのがあまり人気がなかったので,正当というのはフェアというので価値判断が入って,できれば避けたいと思いつつも,ほかによいものがなければ,かつ前回の必要というのがうまくいかなかったのでやむを得ないのかもしれません。もう少し価値判断の度合いの低いものの方がよいかなとは思っていますが,なければ,これでやむを得ないと思います。

それから,軽微性が重要だと申し上げた関係で,7ページの下に3行アンダーラインが引いてある部分は,前回太田先生が言われた点だと思いますが,極めて重要な点であります。軽微性というのは客観的に判断すべきであって,対抗利益が大きいから,その結果,軽微になるという価値判断を入れ始めると,全体の明確性がなくなって大変なことになります。ここでは先程申し上げたのとは別の意味で,軽微というのは客観的に捉えるということ,をピン留めしてきちんと押さえること,写り込みの中ではこの軽微性というのが中核的な要件なものですから,ここのところをきちんと明確化しておくことが必要だと思います。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。ではまず前田委員。

【前田(健)委員】今の点に関して私から2点ほど申し上げたいと思います。

まず,その1点目が4ページの丸3のあたりについてです。ここでその写り込みが生じるものとして想定している場合以外を含めないように,適切に対処行為を特定する必要があると書かれていて,一般論としては私もそのようにできたらいいだろうとは思います。ただ,この括弧の中で例で挙げられているものというのが,「様々な事物等をそのまま・忠実に固定・再現したり,伝達する場合」ということで,その上にある「なお」というところに挙げられている例等も併せて,少し抽象化して考えてみると,ここで言っているのは,その主たる行為を行う際に著作物の利用を避けることが期待できないとか,若しくは著作物の利用を回避する義務を行為者に課すことは相当ではないとか,そういったような場面が想定されているように思います。

そういうように限定するというのは一つの考え方としてはあると思うのですけれど,ただ,5ページの一番下のところに「子供に意図的にぬいぐるみを抱かせて写真を撮影する」というケース,これもこの条文で対処できるようにするべきだろうという考えが示されていると思います。

それが今ここに,4ページの丸3に書かれているような表現で取り込めるのかと言われると,若干難しいようにも思います。どこまで含めるのかというところの考え方次第によって違うかもしれませんけれども,なるべくニーズがあるものについて広く含めていくということであれば,この表現ぶりについては更に検討する必要があると思います。

私の個人的な意見としては,その付随性の要件というのがあって,さらにその正当な範囲内という要件もあるわけですよね。これらを活用していけば,こういった写り込みとして想定していないような場合が含まれてしまうということはそんなにないような気もしております。そのあたりの検討も,もう少しする必要があると思います。

もう一つ2点目が,映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みの件です。映画の盗撮行為というのは,映画の著作物の著作権との関係では著作権侵害ということで違法行為になるというのは前提だと思うのですけれども,写り込まれる著作物という観点からすると,その主たる行為の著作権が侵害されているかどうかは,写り込まれている著作物の著作権者にどういう不利益を与えるか,には必ずしも関係してこないのではないかと思います。つまり,盗撮するときに,例えば,会場で偶然流れていた音楽の著作物が入り込んでしまってケースを考えてみると,それが盗撮であろうが正当な複製であろうが,その著作物が一部少しだけ使われているという点については同じであって,著作権者に対してどういう不利益を与えるかについて区別して考える必要性はないように思います。

もちろん様々なケースというのは想定し得て,そこで写り込んでしまった著作権者に対して不利益を与えるだろうと思われるケースもあると思うのですけれども,それはそういう場面にはそもそも軽微ではないとか,あるいは例外的にということかもしれませんが,ただし書きを発動させて対処することで,十分その写り込まれた著作権者の利益が確保できるように思います。

私からは以上です。

【茶園主査】では前田哲男委員。

【前田(哲)委員】5ページの丸1と丸2の点につきましては,私は丸1でいいのではないかと思います。先ほどの大渕委員のご意見は,丸1を採る場合は,主たる撮影対象物の撮影が適法か違法かによって,軽微性の議論に影響が生じるのではないかというご趣旨だったのかも知れませんが,軽微性の要件については,このペーパーにも書いていただいているように,客観的に判断すべきものですから,主たる撮影対象物の撮影が違法か適法かによって軽微性の要件に影響を与えるということはないのではないか,と私は思います。なお,軽微性の要件について客観的に判断すべきと思いますが,客観的に認識される撮影の意図みたいなものは,それは純客観的なものから一歩はみ出るかもしれませんが,そういうものは軽微性の要件に影響を与えることはあり得るだろうと思います。

それから,先ほど前田健委員がおっしゃった,写り込みとして想定されている場合をどう考えるかという点でございますけれども,子供に意図的にぬいぐるみを抱かせて写真を撮影する場合というのは,意図的にぬいぐるみを抱かせたかもしれませんが,ぬいぐるみを抱いた子供という被写体が客観的に実在していて,それをそのまま撮影するのでしたらやはり事物を忠実に固定・再現する場合ということになるのかなと私は思います。

【茶園主査】では井奈波委員。

【井奈波委員】4ページ目の丸3ですが,やはり写り込みであることを何らかの形で表現する必要があると思います。写り込みであって写し込みは除くという趣旨であるとすると,やはり偶発的な場合であることが必要ではないかと思います。1ページ目の基本的な考え方のところで,丸3の不可避的・偶発的に生じるという側面もあることから認められている例外であると考えられますので,そのような要件を考慮する可能性もあるのではないかと考えます。

もう1点,5ページ目の丸1と丸2ですが,「丸2の考え方を採用する場合」とあって,例えば,著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規程の対象外とする旨の要件を設定することが考えられるとありますが,このような要件を設定する場合,このような要件がない条文についての解釈に,影響が及ぶのではないかとの懸念がありますので,1の方が妥当なのではないかと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。鈴木委員。

【鈴木委員】5ページの下線部に関し,私も丸1のような考え方でいいのではないかと思います。映画の盗撮等の違法行為を排除するために「著作物を創作するに当たって」という現行法の文言が入ったという説明がされていますけれども,「著作物を創作するに当たって」という文言の解釈として,一切他人の著作物を侵害していないという,その行為の適法性までこの文言が求めているのかというと,そうも言い切れないように思います。いろいろなケースを考えると,場合によっては他人の著作物を侵害するような行為であっても,「著作物を創作するに当たって」に当たることがあり得るのではないかと思います。そういう意味で,著作物の利用行為の適法性要件を入れるとすると,それは新しい判断,考え方を持ち込むことになるのではないか,と思います。しかし,あえてそのような対応をする必要はないと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。5ページの丸1,丸2については,この文章自身は,丸2を採用する場合にはいろいろと考えなければならないことがあると記載されていますので,このままでもよろしいでしょうか。あるいは,ご発言からすれば,多くの方が丸1の考え方を採用すべきと考えられておられるようですので,そのことを明示的に書いた方がよろしいでしょうか。私は,このままで,丸1を採用した方がよいとかいったことを,あえて書く必要もないと思うのですが,いかがでしょうか。この部分はこのままでよろしいですかね。それでは,ほかに何か御意見等ございますでしょうか。では田村委員。

【田村委員】先ほどの井奈波委員の御意見なのですけれども,今回,分離困難性というところについて手を加えようとしているので,今のままの規定でしたら,確かにこの偶発的・不可避的,特に偶発的のところが非常に強い要素があると分かるのですけれども,むしろ今回の改正は,先ほどから前田健委員も御指摘になったような,子供に意図的にぬいぐるみを抱かせて写真撮影するというのも権利制限対象に含めようと,セーフにしようというようなお考えの話です。ですので,今回の改正は偶発的というのを強調するようなことはしないか,むしろ,今回の改正はそれを強調しない方向だと思いますので,現在のこの1ページの文章等の「生じるという側面もある」というのは,私は構わないと思います。もし,今の井奈波委員の御意見が,この「側面もある」というところをもう少し違った文言にするとか,あるいは5ページの一番下の,子供に意図的にぬいぐるみを抱かせる写真を撮影する行為などを著作権の制限対象の外に置くというような御趣旨であれば,私はそのような考え方は取らないということです。

【茶園主査】ほかに何かございますか。では道垣内委員。

【道垣内委員】これは当たり前のことだから多分記載されていないのだと思いますけれども,ベルヌ条約9条2項のスリーステップテストの枠内での議論だということ,すなわち日本で,自由な議論ができるわけではないということをどこかに記載しておいた方が,これが英語になって外で読まれる際にはいいんのではないかと思います。

【茶園主査】おっしゃるとおりだと思います。ほかに何かございますでしょうか。では龍村委員。

【龍村委員】6ページの下から2行目の「正当な範囲内において」のところですが,前回,「必要と認められる限度で」という要件では狭いということが指摘がありで,「正当」ということになるとフェアユースのようなニュアンスが出るので,またそれも引っ掛かるところもあるかと思います。その中間を取るとすると,「相当な範囲内」でとか,そういう言い方もあるのかなと思った次第です。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では大渕委員。

【大渕主査代理】私も今,龍村先生が言われたのと同じように,「正当な」というのはフェアネス的なところが入ってしまうので,それはやめた方がよいかと思います。よりよいものがあればよいのですが,「正当な」よりは「相当な」のほうが,価値判断的というか比較考量的なところが少なくなるので,よろしいかと思います。

【茶園主査】ほかの点でも結構ですけれども,何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。ではどうもありがとうございました。

いろいろな御意見を頂いて,おおむね,整理案で御了承頂いたと思います。ただ,幾つかの点で,たとえば道垣内委員がおっしゃられたようにベルヌ条約について言及した方がいいのだろうと思いますし,若干の修正をする必要があると思われますが,それらの点につきましては,私に御一任頂きまして,修正した内容については,改めて御連絡させていただくということにさせていただきたいと思っております。それで御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】どうもありがとうございます。

それでは,この本課題につきましては,ほぼ内容が固まったというところから,しかるべきタイミングにおいて中間まとめとして取りまとめ,パブリックコメントなどの手続を行いたい,そういうように進めたいと思います。具体的な時期につきましては,他の課題の議論の状況も踏まえまして考えたいと思っております。どうもありがとうございました。

続きまして議題の(2)に入りたいと思います。これはインターネット情報検索サービスにおける侵害コンテンツの表示抑制についてです。この点につきましては,昨年度の著作権分科会報告書におきまして,権利者団体及びインターネット情報検索サービス事業者におきまして協議の場を設定し,具体的な改善方策の検討に着手することを求めるとともに,協議が一定程度進捗した段階におきまして,その検討状況の報告を求めることとしておりました。

本日は,本課題に関しまして,権利者団体及びインターネット情報検索サービス事業者より,Google様,出版広報センター様,一般社団法人日本書籍出版協会様,一般社団法人日本雑誌協会様,一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構様を代表いたしまして,3名の方にお越しいただいております。そこで御発表をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【後藤氏】CODAの後藤と申します。本日のこの貴重なお時間頂きましてありがとうございます。それでは資料に基づきまして,私の方から,著作権侵害コンテンツの検索結果表示に関する検討についてということで御案内をさせていただきたいと思います。

現状と今後の課題とであります。まず結論から申しますと,Googleさんとの間では運用上の連携は非常にうまくいっているというのが結論です。

お開きいただきまして,1ページ目,2ページ目ということで,これまでの経緯ということでございます。本件につきましては,きょうの参考資料2の分科会の報告書に詳細が書いておりますので割愛はいたしますが,2018年7月,9月,2回目,3回目の法制・基本問題小委員会で検索結果の問題があるんじゃないかという御指摘を頂戴したわけでありまして,それを受けまして昨年の12月4日,ここにいらっしゃるGoogleさん,雑協さん,書協さん,出版広報センターさんとの間で現状の課題,今後の進め方について取りまとめをしたところでございます。2ページ目でございますけれども,第6回,第7回ということで分科会の報告書がまとめられたというところであります。

そして,私どもとしましては本年の7月19日でありますが,「著作権侵害コンテンツの検索結果表示に関する検討会」の開催ということで具体的に今後定期協議をするに当たりまして,この検討会を設置したところでございます。先ほどのメンバープラスオブザーバーとして文化庁さん,知財事務局さん,経産省さんにお入りいただいておりまして,四半期に1回を目標に現状の把握,課題の抽出等々を行っていこうというお話であります。

では現状どうなっているかということですが,3ページ目を御参照頂きたいと思います。CODAとGoogleとの関係は,2014年シリコンバレーで会議をしまして,ここにありますTCRPという簡易かつ大量に検索結果表示の削除を申し入れるツールというのを業界団体として日本で唯一頂戴している,ところであります。これを活用しまして,今回の場合も個別のURLに対する検索結果の抑止というのを進めております。

ここに2018年3月から2019年5月まで毎月行っている削除要請の結果を示しておりまして,承認,拒否,承認率とあります。CODAでは自動コンテンツ削除センターというもので侵害コンテンツの動画等を把握しておりますので,それについての,削除要請をこのような形で行っているということです。ここの数字につきましては,CODAの削除センターのみの数字であります。出版については個々でおやりなっていますので,CODAが対応する特別なケースを除き,出版はこの結果には入っておりません。このような形で,非常に高い承認率を頂戴しているというところです。拒否されている部分もございますが,これは既に私どもが要請した際にはもう削除されていた場合や,ページにその事実がなかった場合というようなことで,拒否がされているということであります。そして違法アップロードへのリンクが掲載されているサイトということでリーチサイトについても御対応いただいているということです。また,Googleさんがおやりになっているこの降格シグナルというのがありまして,大量に削除要請をすると,その結果検索結果の表示の順位が下がるということも確認をしているところであります。とはいいましても,これも非常に人気がある,例えば昔は漫画村とかに皆さんが大量にアクセスすると,それでまたランクが上がっちゃうという部分はあるように思います。

そこで,Googleとも話し合いをしまして,これも2018年11月にサンフランシスコでGoogleの担当責任者とお話をして取り決めたのがトップページに対する削除要請という形であります。今申したように,非常に人気があるとURLが上がってきてしまうということもありますので,じゃあそのゲートウェイであるトップページをなくしたらどうだという発想に基づきまして話し合いをした結果,我々CODAで削除要請件数ですとか削除率の一定の基準を設けまして,それを満たした悪質なサイトについては,トップページトップページ内にコンテンツが掲載されている場合に削除要請し,Google が対応されています。世界的にも珍しいケースであります。効果的・効率的なトップページの削除ということであります。

では今後の課題ですが,最終ページ行きまして,どういうものがあるのかということですが,ここにありますようにおかげさまでGoogleさんとの間では運用面において対策が進んでいるということであります。

ただ,今日のオンライン環境ごらんいただきますと,やはりスマホが非常に普及しているという点。それによりましてパーソナル化,低年齢化というものがございます。そして何といいましてもSNSが普及しているということであります。

この下に描いてあります絵でありますが,ある悪質な海賊版サイトへのアクセスの状況,どうやってその海賊版サイトにアクセスしたのか,流入したのかというチャンネル別のデータであります。一番左がブックマーク,直接入力。これされちゃうとどうしようもありませんけれども,これが非常に多い。次にメール。そしてリファラルということでリーチサイトやブログ等々。で,四角で囲んでいるところが,SNSと検索で,オーガニックというのが検索ですね。ソーシャルメディアというのがSNS等であります。この数字をごらんいただきましても,今や検索よりもSNSを通じてリーチしてくるというのが多くございます。例えば,Twitterで「海賊版サイトにリンクを張って」ツイートすると,それをクリックして悪質なサイトに飛ぶことができます。そのツイートに例えば「#星のロミ」とか入っていると,それがインターネット上の検索結果の上位に上がってくるという形でありまして,今後の課題といたしましては,SNS事業者の皆様には検討会に参画を頂きまして,この問題について検討を進めてまいりたいというように思っている次第でございます。

私から以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。どうぞ。

【井田氏】Googleの井田でございます。本日は,検索と著作権侵害という議論の場に参加させていただけますこと,また弊社の取組のことをお話しさせていただけますこと感謝いたします。ありがとうございます。

さて,CODAの後藤代表理事からお話ございましたとおり,著作権侵害コンテンツの検索結果表示につきましては,昨年末よりCODAを中心としまして権利者の皆様方といろいろ意見交換をさせていただいてきました。概要は今,後藤代表の方からお話しいただいたとおりでございますが,私の方から少し補足させていただきたいと思います。

本題に入ります前に,席上で配付させていただいております参考資料4に関して簡単に説明させてください。この資料は著作権侵害に関する弊社の取組の概要をまとめたものでございまして,弊社としましては著作権侵害に関しましてここに掲げております5点を中心に取組を進めております。著作権侵害を防止させる効率的なツールを開発する,海賊行為が採算が合わないように広告を停止する,あるいは正規版へのアクセスを誘導するなど海賊版対策に力を入れております。詳細は本日の議論の本題から外れますので申し上げませんが,御参考としていただければ幸いです。

さて,この海賊版サイトトップページの検査結果表示に関する改善に関しましてです。先ほど後藤代表からお話がありましたとおり,トップページに関しましては検索結果からの削除要請を申し立てても削除されないという御指摘が昨年なされました。要因は幾つかあるかとは思いますが,トップページの削除を逃れるため海賊サイトの運営側もいろいろな手段を使っているようでして,トップページに載っておりますコンテンツを頻繁に入れ換える,それも自動で入れ換るというようなことをやっているようでして,削除申請に基づき弊社が確認したときにそのコンテンツが存在せず,入れ換わっているといったこともあって,その侵害を確定的に確認するための情報が足りなかったことが,ございました。

そこに関して,CODAをはじめとする権利者の皆様方と意見交換させていただきまして,どのようにこの侵害コンテンツを確認していくかといったところで,情報確認・交換の仕方を改善させていただきました。その結果としまして,先ほどお話がありましたとおり,トップページに関しましては侵害コンテンツを確認することが,できるようになり,DMCAのプロセスに則って検索結果から削除しています。ちなみに,特にトップページへの対応は,日本の権利者の皆さまに評価いただいているプラクティスですが,グローバルで対応しています。これまでの取組に関しましては,密接な意見交換をしながら一定の効果が出ているのではないかと認識しております。

海賊版対策を進めていくに当たりましては,権利者の皆様方との意見交換が非常に重要でございまして,海賊版サイトの運営側は本日々新しい手段を使ってきますので,どのような海賊サイトが現れているのかなどの,情報も権利者の方から頂きながら,弊社としても引き続き対策を進めていきたいと思っております。

ありがとうございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

【樋口氏】出版広報センターの樋口でございます。このような場に参加させていただきましてありがとうございます。

もう今既に,CODAさん,Googleさんの方から御説明があったとおりでございまして,特に付け加えることもないのでありますが,今回このCODAさんに場を取り持っていただきまして,また,Googleさんの御協力を頂きまして,今回の検索結果表示抑制の仕組みにつきましては,非常に迅速に,かつ目に見える形で効果的に表示抑制が実施されるようになったということで,我々としても非常に感謝をしているところでございます。

この枠組み,今後も継続していただきたいと思っております。さらに,より言えば,これをブラッシュアップしていくといったようなことも望まれるのではないかということで,例えば現在,海賊版サイトのトップページにつきましては,今のように非表示ということになるわけですけれども,その同じサイトの個別の作品のページですとか,ジャンルごとに設定されているようなページというのが表示をされてしまうということはございますので,トップページが非表示になった場合には,その同じドメインのページは表示されないようになるというのが理想ではございますが,これはいろいろまだまだ,解決には問題があろうかと思いますので,この辺につきましてもまたCODAさん,Googleさんと協力しながら進めていければなと思っておる次第でございます。

ありがとうございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。

ただいま,CODA様,Google様,そして出版広報センター様,3名の方から御発表頂きました。ただいまの御発表につきまして御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。大渕委員。

【大渕主査代理】1点だけ。先ほど,トップページ削除について,あまり海外ではされてないが日本は,ということがちらっと出てきたので,少しそのあたりをお伺いできれば参考になるかと思います。

【後藤氏】海外の場合は,はっきり言いましてサイトブロッキングがありますので,そっちを使っているというところです。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では生貝委員。

【生貝委員】貴重なお話と経過の御報告についてありがとうございました。

こういった当事者の間でお話し合い,協力関係というものが築かれて,いわばまさにソフトローという言葉を使うべきなのでしょうか,問題が解決されてきているということには,御関係者の方々の取組に大変敬意を表しますとともに,私自身いわゆるプラットフォームルール形成に関わる様々な検討というものをいろいろとお手伝いさせていただいているところでございますけれど,その中でもやはり,全てではないにしても,できる限りこういったソフトローの形で解決できる部分があるのではないかということが,必ず議論になってくる中で,重要な先例という位置付けというものにも恐らくなり得るところなのかなというふうに思いました次第です。

そういった中で,やはりしっかり海賊版には対策をしていただく。そして他方でやはり,忘れられる権利の文脈で使われた表現を用いれば,正に情報流通のインフラであるところのGoogleさんからいかなる情報が消えるのかということ,これは非常に社会全体にとっても重要なことである。しかし,その点に関しましてもこの検討というところに,文化庁様はじめとして様々政府関係の方も御参加して,進められている,ということでした。制度を作るということは,続いていくということが大変重要でございますので,お話しいただいたとおり新しく,問題が生じてきたときの解決というところも含めて,継続的に枠組みを続けられることが非常に意味があるのかなというふうに思いました。

そして一つ,やはり私自身として気になりましたのは,こちらの5社の連名で出していただいた資料の最後の5ページでございます。やはりプラットフォームというものは情報流通のインフラでございます。そういったようなときに,SNSですとか様々な仕組みというものの上で,海賊版に関する情報というものが列挙されている現状というのが少なからずあるということをこういったふうにお示していただいているところ,特に例えばSNSですと,リーチサイトの立法が例えば行われた場合,SNS自体の法的ステータスというところに関わる部分でもあろうと思いますが,その上でも,やはり,自主的な仕組みとしてどういう対応していくのかというものは少なからず考えていかなければならないところがあるだろうと思います。現状ですと,どういったような状況になっているのか,あるいは技術的,仕組み的にどのようなことができるのかといったようなところも,まだ恐らく関係者の間でもしっかり把握されていないところもあるかというふうに思いますので,この枠組みと同じなのかどうかということはまた別にしても,正にこういったできる限りの当事者,ソフトローの話し合いということでやれる可能性を継続的に模索していくことというのは,もちろんこういった小委の場でも引き続き議論していくことが望ましいのではないかと思います。

以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。ではどうもありがとうございました。本課題につきましては,関係団体から積極的に取り組んでいただいている状況が確認できたというように思いますけれども,この最後のページにありますように,SNS対策というような新たな課題も明らかになってきております。現在の枠組みを有効に活用しつつ,当事者間においてさらなる取組を進めていただき,その状況をフォローしながら必要に応じて本小委員会としても改めて検討を行うことにしたいというように思っております。

どうもわざわざ,本日はありがとうございました。

続きまして議事の(3)に入りたいと思います。研究目的に係る権利制限規定の創設についてでございます。この点,事務局において検討の進め方と検討の視点を整理していただいておりますので,まず,その御紹介をお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】それでは,お手元に資料3を御用意いただければと思います。研究目的に係る権利制限規定の創設に当たっての検討について(案)ということで,議論の参考として事務局で整理した資料でございます。この課題に関しては,非常に多岐にわたる論点について検討が必要でございまして,じっくりと検討を進めていく必要があると思っております。

まず,後ほど御紹介しますが,本日と次回と2回の自由討議を通じて,検討に当たっての視点,論点の洗い出しなどを行っていただく必要があるかと思っており,この資料では,まずは本日の議論用に基礎的なデータを整理しております。

順に簡単に御紹介をいたします。まず1ポツがこれまでの経緯でございます。御案内の方が,多いかと思いますが,まず,丸1にございますとおり,平成21年の著作権分科会報告書におきまして,研究分野の権利制限につきまして幅広く検討した結果が記載されております。下線にございますとおり,当時は,早急に結論を得るべき研究開発分野として,情報解析の分野というのが設定をしつつも,その他研究分野を限らない権利制限の考え方についても検討がされております。

結果としては,2つ目のポツにございますとおり,情報解析の部分につきましては,おおむね意見の一致が見られた一方で,その他の研究全般に関する権利制限規定においては,様々な御意見があり,具体的な範囲・条件について結論が得られず,引き続きの検討課題とされていたところでございます。

これを踏まえて,平成21年に,著作権法改正がされておりますが,その際も情報解析に特化した権利制限規定が設けられたという経緯でございます。

次に,丸2,平成23年の報告書における位置付けでございます。当時は権利制限の一般規定を導入しようということで幅広く検討が行われておりまして,その中でいわゆるC類型に該当する利用の一つとして技術開発・検証のための素材としての利用などが挙げられてございました。

これを踏まえて平成24年に,著作権法改正が行われまして,C類型自体の立法化はされませんでしたけれども,技術の開発,実用化のための試験の用に供するための利用という,この部分にフォーカスした規定が創設されたということでございます。ここまでは,ある意味,情報解析,技術開発という形で応用的な分野の権利制限が先行して進んできたという経緯かと承知をしております。

次に2ページに参りまして,丸3が平成29年の報告書,平成30年改正についてでございます。このあたりからは先生方よく御案内のとおり,柔軟な権利制限規定について審議会で集中的に御議論を頂きまして平成30年改正に結び付いているところでございます。

3つ目のポツに記載しているとおり,平成30年改正におきましては,既存の権利制限規定を整理・統合しつつ,最終的には3つの柔軟な規定を設けるという形になっております。これによりまして,例えば30条の4,享受を目的としない利用という範疇で基礎研究における著作物の利用,AI開発のためのディープラーニングでの利用,こういったものも新たに対象になるなど,研究目的で可能な行為の範囲というものも拡大してきているものと承知をしております。

次に,丸4が昨年度の検討でございまして,こちらも御案内のとおりですので詳細は割愛いたしますが,昨年度,侵害コンテンツのダウンロード違法化の議論を行う中で,それとは直接関連はしないものの,研究目的での権利制限について検討する必要があるのではないかという御指摘を改めて頂いたところでございまして,報告書においても今後検討するという旨が盛り込まれ,また3ページの上の部分にございますとおり,知的財産推進計画2019におきましても,この研究目的の権利制限の創設について検討する旨が明記されたという経緯になってございます。

2ポツ,現行法上の取り扱いにつきましても御案内のとおりかと思いますが,例えば,個人の方が職業以外の私的使用目的で行うということであれば30条が適用されますし,情報解析,技術開発など享受を目的としない利用に該当すれば,30条の4でカバーがされます。また,図書館での文献複写や,論文等への引用など,研究目的で利用が可能な範囲というのも一定程度あるのは事実かと思います。ただ,研究者などが業務として書籍,論文などを複製する行為などを一般的に許容している権利制限規定というものはございませんので,現状の実態としては,許諾を得て利用していたり,若しくはいわゆる黙示の許諾などを想定して利用されている場合が多いのではないかというふうに考えております。

以上が基礎的な部分の整理でございまして,4ページの3ポツの部分から本日御議論を頂きたい部分となっております。まず,(1)検討の進め方についてでございます。1段落目にございますとおり,本課題の検討に当たりましては,非常に広範かつ多様な形で行われている研究のうち,権利制限の対象とすべきものを特定するという作業が必要になります。また,その上で具体的な要件についてさらに検討を深めていく必要があろうかと思います。これ,非常に難しい作業でございますが,必ずしもこれまで十分に検討が行われたわけではございませんので,いきなり制度設計の議論を行うのも難しく,順を追って検討を進めていく必要があるかと思っております。

まず,丸1とございますとおり,本日と次回の2回ぐらいを想定しておりますが,まず委員の先生方に自由討議を行っていただきまして,この課題を議論するに当たっての視点,論点のようなものについて幅広く御意見を頂きたいというふうに思っております。

その上で5ページの丸2にございますとおり,そこで頂いた御意見,視点を十分に踏まえながら,文化庁として調査研究を実施することを考えております。その中では,ローマ数字の1,2,3と書いておりますが,諸外国の法制度・運用の詳細であるとか,国内における研究活動に係る著作物利用の実態・ニーズ,若しくは関係する権利者団体の御意向など,こういった基礎的なデータを十分に調査していきたいというふうに考えております。この点,注釈の7番としまして,平成23年度に文化庁で行った関連の調査研究などもございますので,これをベースとしつつも,より最新の情報や具体的な制度設計を視野に入れたような形で,更なる深掘りをしていきたいというふうに思っております。

本文の丸3の部分に戻っていただきまして,まず,丸2の調査研究,これをしっかりと実施をした上で,来年度以降,権利制限規定の制度設計について検討を行っていただきたいと考えております。当然この内容につきましては,調査研究の結果次第ではあるわけでございますが,非常に検討対象が広範になりますので,必要十分な形で全ていきなり迅速に措置するというのは難しい面もあろうかと思います。そのため,例えばニーズが高い部分,正当化根拠が明らかな部分,権利者の利益への影響が比較的少ない部分など,法制化になじみやすい部分を切り出して先行的に措置を行う,その他の部分については追って措置するという段階的な対応も考え得るかと思いますので,こういった検討にも資するような形で論点を整理し,調査研究を実施していきたいと考えております。

(2)が検討に当たっての視点ということで,権利制限の議論をする際に中身として注意をしないといけないところを事務局として書き出しております。丸1から丸9まで書いておりますけれども,足りない視点があるかどうか,若しくはそれぞれの視点について注意する事項があるかということについて御議論頂きたいと思っております。

まず,丸1が契約等による対応可能性でございます。既にライセンス契約が機能している部分ですとか,注釈の8に記載しておりますように,研究者同士で自由に使い合えるような仕組みができている部分につきましては特段問題がありませんが,それがワークしてない部分もあろうかと思いますので,その部分を特定し,権利制限が必要な部分をしっかりと見極めていくというのがまず,必要になってくるかと思っております。

その上で丸2として,権利制限の対象とする研究の範囲をどのような形で切り取っていくかというのが最も難しい論点としてあろうかと思います。ここではローマ数字の1から6まで,主体,分野,研究段階,営利・非営利の別,行政による補助・委託等による公的な位置付け(一定の審査・チェックを経たものへの限定の可否を含む),最後が研究成果の公表や社会への還元ということで,大きく6つぐらいの切り口を記載しております。当然,著作権法の権利制限を創設するに当たってなじまないような切り口というのもあるでしょうし,それぞれの切り口を議論するに当たっての留意事項というのも多数あろうかと思いますので,本日はその点について自由に御意見を頂きたいと思っております。

最後,6ページにまいりまして,丸3が研究と著作物利用との関連性の部分でございます。これは研究に当たって著作物を利用するという場面におきましても研究に不可欠だという場合から,ごくごく参考に資料として持っておきたいという場合まで,非常に濃淡があると思っております。この点,著作物利用の必要性の強弱などにつきましても考慮すべき要素になり得るかと思っております。

それから丸4が,対象とする著作物の種類ということで,これは著作権者への影響を考えるに当たりましても,また,研究における著作物利用のニーズを把握していく上でも重要な事項かと思っております。とりわけ絶版となっているものをどう扱っていくかという点について,既存の権利制限との関係も含めて議論があるところかと思います。

次に,丸5番が情報源の適法性でございます。括弧書きで書いておりますとおり,違法にアップロード・複製等がされた著作物を対象にするかどうかという事項がございます。この点,30条の議論におきましては,違法にアップロードされたものを除いていくという方向で議論がされたわけでございますけれども,研究に当たっては著作権を侵害しているものをあえて研究目的で集める必要があるという場合もあるでしょうし,規定の趣旨も異なると思いますので,こういった点についてどう考えるかということも論点になろうかと思います。

また,丸6,著作物の利用態様と書いておりますが,どのような形で利用するのか,どのぐらいの分量を使うのか,他者への提供をするのかどうか。こういったことによりましても,権利者への影響も変わってくるかと思いますので,ここも重要なファクターかと思います。

丸7,これまで御説明したこととも重なりますけれども,権利者への利益保護にどう配慮していくのかというのも,この分野の検討に当たっては非常に重要だと思っております。ローマ数字の1にございますとおり,既存の著作物の流通・利用市場に悪影響を与えることは避けないといけないと思いますし,それをどのように制度設計に反映させていくかというのが論点になろうかと思います。とりわけ,専門書・論文・データベースなど,研究分野での活用を主として想定されているような著作物につきましては,特別に配慮が必要かと思っております。また,適切な範囲に絞り込んだ形で権利制限をするという前提だとしても,補償金が必要なのかどうか,補償金が必要となるのはどのような利用範囲なのかというのをしっかり特定していくということも論点になろうかと思います。

また,丸8は実際に条文を作っていく際の留意事項ですけれども,この規定についても明確性・柔軟性のバランスを考えないといけないということが注意事項としてあろうかと思います。

最後の丸9は,その他関連する課題と書いておりますが,今回の権利制限の議論というのは,大きな目的でいいますと研究活動をより活性化させるために著作権制度とは何か対応はできないかという問題意識でございますので,直接的な権利制限規定を設けるという以外にも様々な措置が必要になってくるかもしれません。ここでは,前回御意見を頂きましたものを例示として記載しておりますが,これに限らず,既存の権利制限規定の見直しも含めて研究活動をよりサポートできるような仕組みにつきましても,視点を広げた形で御議論いただくということもあり得るかと思っております。

本文については以上でございまして,この資料の7ページ以降に参考として平成21年報告書の関係部分を抜粋したものを付けておりますので,また御関心に応じて御参照頂きたいと思います。なお,13ページ以降に諸外国の立法例というものを当時の資料そのままに付けておりますけれども,当時から法改正などございまして,情報が古くなっている部分も多々ございます。この点を含めまして,先ほど御紹介した調査研究の中で,最新の状況ですとか,実際の権利制限規定の改正に当たっての意図,運用の状況なども含めて丁寧に把握をし,委員の先生方に制度設計の御議論をいただく際に活かしていただけるような整理を目指していきたいと思っております。

事務局からは以上でございます。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。では小島委員。

【小島委員】ありがとうございます。研究といいましても,先ほどその範囲が非常に広いと御指摘がありまして,研究目的の権利制限規定を創設するというときには,どういう主体のどういう行為を念頭に置いているのかということを明確にした上でルール形成する必要があるということは,当然のことかと思います。

本日の資料3のこの内容の7ページ以下のところの内容を見ますと,主にイノベーションの創出のためのそういう研究開発などがなされる過程で,著作物利用がなされる,こういう類型というのが主に念頭に置かれているのかなというふうにも思うのですけれども,しかしながら,対象とする研究の範囲というものを見ますと,本当にいろいろなものが含まれていますし,主体につきましては,何らかの形でいわゆる制度化された形で研究に関わる主体というのが念頭に置かれているようにも見えるのですが,個人という文字も見えますし,また,分野を見ると趣味等という記述も見えるわけです。

そういう中で私が関心を持っているのが,いわゆる「在野」の研究活動です。法律学などでは比較的少ないかと思うのですけれども,学際的なシンポジウムなどに行きますと,私もヨーロッパから複数のインディペンデントリサーチャーが参加していたものに参加したことなどもありました。最近,日本でも在野研究について注目すべき書籍が複数出ていまして,こういった本を読みますと,非常にその思いに圧倒されるとともに,私のような,大学のようなところに属する者としては非常に襟を正される思いがするのですけれども,およそ私は学問研究というのは制度化されたアカデミズムに閉じられてないというふうに思っていまして,そうであればそういった組織に属してない形で学びたいと考える人たちを排除しないような,包摂するようなルール形成をすることが望ましいというふうに思います。

この点で,在野研究との関係でいきますと,分野として向き・不向きがあるだろうという気がします。やはりその最先端の実験器具を用いて自然科学系の研究をするというのは難しいと思うのですけれど,文献調査などの方法を採用する研究というのはより向いているだろうというふうに思うわけです。そうだとしますと,丸3の「研究と著作物利用との関連性」というところにも関係すると思いますが,在野の方が著作物にアクセスする必要が非常に高いだろうと思います。

そうであるとすれば,こういった権利制限規定を整備するとともに,丸9のその他関連する課題にも関係すると思いますが,図書館とかアーカイブなどでの著作物利用の円滑化ということも併せて取り組まれるべきなのではないかという気がいたします。

またさらに,その研究成果の公表とか社会への還元ということを考慮事由に掲げるべきかということについてなのですが,これについて私は少し疑問も持っています。こういったことは,近似の大学がとりわけそうなわけですけれども,制度化されたアカデミズムでは非常に重要視されておりますし,これが一定程度受容されることは,私は当然だと考えます。

しかしながら,情報収集しても成果に結び付かないということもあるわけですし,またそれには公表には時間が掛かるということは,私も経験しております。またさらには,私たちは公表すべき媒体というものを比較的容易に見付けやすい立場にあるかと思いますが,そういったものを見付けにくい立場にある方が研究をしたいと思っておられることもあるはずで,そういったことも考える必要があるだろうというふうに思います。

現代社会では,副業が解禁されたり,あるいは人生が二毛作だ,三毛作だ,だから生涯学習していくのだと,言われているように,職業の在り方というものも変わってきているわけですし,それと密接に関わる学びについても,私は多様化していると思います。そういったその学びについて再検討が進められている中で,著作権法もそういった動きに対応していくことが必要ではないかというふうに思っております。

私からは以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。では前田委員。

【前田(健)委員】今,小島委員の御指摘にありましたように,非常に多岐にわたる問題含むということで,まずは論点を洗い出して,それから調査研究を行うという,慎重に検討を行うということがよろしいかと思います。論点の洗い出しということで,ちょっと大きめのところで幾つか指摘させていただきたいと思います。

まず,その研究目的の著作物利用といったときに,どういう形で著作物を利用するのかについて,大きく分けて二つの利用対応があるように思うのです。一つはその著作物が研究の対象になっていて,その著作物を分析するとか,そういったタイプの著作の利用の仕方です。もう一つは,その著作物を文字どおり利用して研究する場合です。

最初に言った例というのは,例えばある文書が著作物であるときに,中に登場する言葉の頻度を解析して何かをするとかいったようなものがあると思います。後者の例としては,あるテーマについて研究するときに参考文献としてその著作物である論文を読むとかいうケースがあると思います。

今までの議論の経緯というのを見てみますと,そこで想定されていたのは前者のようなタイプの研究目的というのが多いように思います。情報解析の話もそうですし,先だっての柔軟な権利制限規定もそういったものだと思います。ここで更に,研究目的について権利制限規定を作ろうという話とは,文字どおりその著作物を読むとか享受するということを,研究目的であれば一定程度許していいという方向の議論なのかということが,一つ気になるところです。もし,そういったところについて著作物利用がうまくできていないというニーズがあるのであれば,それに対して何らかの法制度等による対処をするというのは当然あってしかるべきだとは思うのですけれども,そこについてどう考えていくのかというのは今後,調査研究におけるニーズ調査などでも調べなければいけないと思います。

それと関連してなのですけれども,2点目として,新しく権利制限規定を作るとして,既存の権利制限規定との関係をどう考えるのかというのは重要になってくると思います。先ほど申し上げました,その著作物を対象として行う研究ということでいえば,その柔軟な権利制限規定の30条の4というのがあって,享受目的利用であれば大幅に利用できるようになっています。なので,その著作物を対象として研究とか解析をするといったものは,ほとんどの場合30条の4によって適法になるのではないかと思います。

そうすると新しく権利制限規定が必要なのはやっぱり,著作物を享受してそれを研究に役立てていくということなのではないかと思います。これについても資料の3ページぐらいに挙がっておりますが,現行法上で,限定的ですが対応する規定はあるわけです。30条,31条,32条などが挙がっていると思います。もしそういった意味でのニーズが何か挙がってきたときに,この既存の権利制限規定でどの範囲まで対応できて,どこから先は対応できないのかということについても,十分に詰めておく必要があると思います。その過程で既存の権利制限規定の射程がどこまでなのかということについても議論がされることになるだろうと思います。

最後に3点目として申し上げたいのが,ここでどうしてその研究目的の権利制限規定を取り上げるのかというところです。研究というのは公益的な要素がある行為で,奨励すべき重要性があるというのはそうだと,私も研究者ですから,思いますが,一方で例えば研究の段階には至らない調査とか,あるいは取材といったような行為というのもあって,それも著作権法の目的とする文化の発展というのに資する行為だと思います。それらの中でその研究という行為がどうしてここで取り上げられるのかというところです。もちろん,その研究にはほかにはない重要性があるということなのだろうと思っていますが,それは何なのかというところも調査研究の過程で明らかにされるべきなのではないかと思っております。

以上です。

【茶園主査】どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。では前田委員。

【前田(哲)委員】研究目的での複製権の制限を考えるのか,さらにその公衆への提示・提供まで権利制限の対象にするのかによってかなりイメージが違うのかなという気がいたします。

今,前田健委員からお話がありました,著作物を享受して研究に役立てるための類型を想定するとしますと,主に想定される行為類型は複数と,もともと支分権の対象ではない特定少数の者に対するものに対する配布とか送信とかとなり,複製権の制限で足りるということになるのかなと思います。そして,公衆への提示・提供については,引用の規定などの従前の規定で対応することとして,とりあえずは複製権を制限するというふうに問題を限定すると,かなり議論がやりやすくなるのではないかなと思います。

それに対して,公衆への提示・提供まで含めて自由にすると,これは研究に名をかりた違法頒布,違法送信みたいなものが生じてくる可能性がありますので,仮に公衆への提示・提供まで含めるとするならば,かなり慎重な検討が必要になるように思います。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。では大渕委員。

【大渕主査代理】今回,研究目的の権利制限規定の創設を検討するということで,私も研究目的の権利制限規定がないのは恥だなどと言ったこともありますが,そうは言いつつも,今までこれが文化審で出てこなかったことについては,それなりに理由があったのだと思います。3ページの真ん中に書いてあるとおり,今までは黙示の許諾などで処理されてきたためと思われますが,ざっとデータベース等で見ても,研究について侵害が問題になる裁判例もあまり見たことがありません。何か事件になったりして問題が起きると,立法事実があるということで,ここにたくさんあるような立法がされているわけですが,研究については,このような意味での立法事実的な問題がなく今日まで来ている,明示の許諾なのか黙示の許諾なのか,何かしらの理由で今まで来ているという状態であります。今までやったものにはニーズがあったので,先ほど言われたような情報解析等についての権利制限規定が設けられましたが,今回の研究についてはそのような明示的な,わざわざ条文を作らなければいけないとするような立法事実的なものが,むしろあまりない。研究者としては研究的コピーがより安定的に可能となるという点は,大変結構なことなのですが,権利制限規定ができた結果,今までの方が黙示の許諾等で自由にできたのに,これのためにかえって使いにくくなるということにもなりかねないので,真のニーズがどこにあるのかという点を,慎重に調査・研究していく必要があると思います。リアルに現実的具体的なニーズのあるものであれば,そのニーズに応じて立法しなければいけないという意味があるのですが,今回は,そのようなものは必ずしもないがやろうということなので,どこに拾うべきニーズがあるのかという点につき,非常に丁寧に拾っていかなければならないと思います。また,逆に,研究というのは,ある意味非常に漠然としているので,何でも入るといえば入るというところがあります。本当の意味での研究というと怒られますが,あえてあまり研究とも呼べないようなもの,先ほど言われたように研究の名をかりたようなものまで入れてしまったりすると,結局本丸の研究がおろそかになりかねません。このあたりはニーズを丁寧に拾った上で,最初から全部広げてしまうともう動かなくなるので,結果的にはここに言われるように,本丸のようなところから段階的にやらざるを得ないのだろうと思います。

それから,私としては,6ページの⑤と書いてある情報源の適法性を挙げていただいたのは大きいと思います。ドイツでもフランスでも,知的使用に関しては情報源の適法性を当然要求していますが,研究については,フランスは要求しているが,ドイツは最新の立法では要求してないようであります。このように,立法政策も大きく変わり得る大変微妙な問題でもあります。補償金を付けて,もっと幅広く使えるようにした方がよいのではないかという点も含めて,ありとあらゆる論点が入り込みうるような非常に難しいテーマでもあります。今までたくさんの権利制限規定がありますが,研究の権利制限規定を一つ作るというのは,図書館や知的使用等と同じくらいの次元の1個の大きなジャンルを作るという大きな話ですので,できるだけ幅広く論点とニーズ等を洗い出して,きちんとした基礎研究をしないと前進できない問題だと思います。

【茶園主査】ほかに何かございますか。では太田委員。

【太田委員】こういう考え方もあり得るのかどうかについて二点ほどお聞きしたいと思います。というのも,第一点として,この委員会のメンバーは割と人文社会科学系の先生方が多くて,とりわけ法律関係者が多くて,自然科学の先生が余りいないものですから。現在の自然科学,社会科学の一部では,共同研究,場合によっては数百人,数千人の共同研究さえ行われております。ところが,この事務局原案の研究の定義の主体のところを見ますと,どうも個人による研究ということを念頭の中心に考えていらっしゃる気がします。その点では,研究の主体が,グループとか組織とかの場合,あるいは国際共同研究などの場合どのように考えるかが一つ問題になるのかなと思います。この点はどのように考えるべきでしょうか?

もう一つは,権利制限の対象としての研究であるか否かの認定に関して,ソフトロー的な規制とか手続的な規制とかは考えられるのか否かについての質問です。現在では,例えば医学とか自然科学ですと,ヒューマン・サブジェクト,人間を被験者とする研究では,倫理審査委員会が各研究機関とか大学にあって,倫理審査を受けて初めて研究できますし,研究成果を学術雑誌に投稿できます(審査をパスしていれば欧米の学術雑誌等では,投稿をレフリーに回し,パスしていなければ受理を拒否します)。このような進展は国家法による強制ではなく,ソフトロー的に発展してきていると思っています。このようにプロセス的ないし手続的に一定の要件を満たしたものは「研究」として,権利者の権利行使を制限する対象として認定するというような考え方もありうるかと思います。原案に書かれているのは,割とメタ・レベルではなくオブジェクト・レベルの客観的な規定を設けて研究か否かを認定しようとする方針に見えます。それに対してソフトロー的ないし手続的に一定の組織の審査プロセスをソフトロー的に経ていれば,原則として研究として認めるとかの考え方もありうるでしょうか。僕の属している科研費の研究でも多くの場合,倫理審査を大学で受けています。倫理審査の項目には被験者の個人情報保護とかプライヴァシー保護とかの配慮とかが設定されたりします(なお,科研費の申請書の項目にも個人情報保護などはあります)。そういう種類の,何らかの研究機関にちゃんとした委員会,外部の学者も入れたような委員会でちゃんとした研究として,オーソライズすれば,権利制限をめぐって訴訟になった場合に,証明責任とか,主張責任が移転するような手続的制禦もありうる気がします。文系の研究ではまだ倫理審査は普及していませんが,将来的に考えると,そういう規制の考え方もあり得るのかどうかをちょっとお聞きしたいと思いました。

【茶園主査】私が思うのは,先ほどもありましたけれど,著作物利用のやり方としては,恐らく文系の場合には,比較的個人とか少数の者がやることが多いと思いますが,そのような場合には基本的には複製行為が中心になると思いますけれども,これに対して,多くの人が関わってやる場合は,インターネットで多くの人に情報を送ってやらなければいけない,情報を共有しなければいけないということが生じて,そのような場合には公衆送信が問題となることがあるように思います。ですから,さっきおっしゃったように,研究の対象や研究分野なりでいろいろな違いが生じるように思います。

先ほどのソフトローについては私はよく知らないですが,例えば研究が人の権利やプライバシーを侵害するかどうかといったことが,審査されるということは想像できるのですが,研究段階で著作権の問題があるかどうかということも審査されることがあるのですか。

【太田委員】たぶん,まだ,余りないと思います(もちろん,無断引用や剽窃,データの改竄・捏造をしないとか,著作権や知財に関連する法遵守は当然の前提ですが)。そういうのも入れれば権利制限における「研究」としてオーソライズされるという構想もあり得るかなと思った次第です。

【茶園主査】なるほどそうですか。ただ,現実には審査することはなかなか難しいことかとは思うのですけれど,この点について何か御存じの方おられましたら。

【太田委員】大学の医学部とか心理学とか脳科学の研究では,人間,ヒューマン・サブジェクトの研究では一般化しています。だんだん社会科学でも,とりわけ文理融合の学際的研究では,倫理審査を受けることはもうルーティンと言っていいと思います。倫理委員会は既に大抵のしっかりした大学や研究所にはあると思います。場合によって,その外部の委員も入れたりするというようになっているので,そういうソフトロー的ないし手続的なディベロップメントを応用できないかなということをお聞きしたので。

【茶園主査】場合によっては可能かもしれませんけれど,後から外部の人間とか第三者が判断するとしても,著作権侵害が生じたかどうかはなかなか難しい問題ではないかというように思います。

では生貝委員。

【生貝委員】よろしゅうございますか。ありがとうございます。一つは今,太田先生のお話からも出てまいりましたソフトロー的な方向というところについては,例えば私自身,もともと図書館の分野でも研究をしながら働いていましたけれども,図書館の分野の団体と,それから複写権センターさんですとか,いわゆる集中権利管理を含めて団体さんがある程度しっかり存在している,その団体の間で様々な話し合いを経て,こういった形で運用していこうといったようなことは,これは過去にも行われている例がございますし,国際的にも様々な分野でそういったアプローチは取られているところであり,まさしくそういった集合的なコレクティブなネゴシエーションあるいはその協力による解決というものが,構造上どのくらいできる可能性があるのか,そういった観点からも対象とする分野の調査をしていくとよろしいのではないかというのがまず1点でございます。

先の発言はプラットフォーム政策研究者としての発言だったのですけれども,デジタルアーカイブや図書館関連の研究者として少し細かいところですけれど,本題に関して2点ございます。

まず,事務局資料の6ページでお示しいただいた,特に丸4の正にこれ絶版となった著作物の取り扱いを含むというところは結構重要かというふうに思っておりまして,権利者に不当な不利益を与えないことが前提であり,しかし,その上でより研究での活用が可能であればそういうことを進めていくことが必要であろう中で,絶版という概念,出版業界的に絶版という表現は大変難しいところなので,アウトオブコマースや絶版等の表現が良いかと思いますけれど,そのことについて特別に権利上取り扱おうということは国際的にも様々な形で進められてきている。

その理由というのは,特に日本でも今般行われました著作権保護期間の延長の中で,商業的に利用されていないけれど権利だけが残っているという著作物がやはり世界中でここしばらく大分増えてきました。そういう中で,全てを一括に死後70年まで保護しようというものではなくて,しかるべき形でどこかでグラデーション的であっても線を引いていこうと。このことは正に研究分野でも重要ですし,その他の権利制限規定に関しても重要なところかなと思います。

実際に事務局様から,ドイツ等の権利制限を13ページ以降で引いていただきまして,事務局から御言及ありましたとおり,これは特にドイツ法は,2017年の改正で52b条などは大分後ろの方に文言も変わって移っているところかと認識しておりますけれども,その中でも研究目的で利用できる著作物について,一つは著作物の種類,商業的なものを研究室などでコピーする理由は強くございませんので,それは専門的なジャーナルかどうかといったところでしっかり,ある程度区分をしていますし,加えてアウトオブコマースか否かというのも,ここでしっかりと全く違った取り扱いをこの研究目的制限というところでもしているというふうに認識しております。この分野についてはしっかりと様々調査されるとよいのではないのかというのが1点でございます。

2点目につきまして,また6ページに戻るのですけれども,その他関連する課題というところで,前回申し上げた資料へのアクセスの容易化というところに関連するところで,この研究というところを含めた制度の在り方を検討するというのは,やはりデジタルネットワーク環境に対応した形で,どうしかるべき形で著作権制度を考え直していくかということの作業の一環なのだろう,一環であるべきだというふうに認識しています。

そういったときに,これもドイツ法では改正の前からですが,例えば欧州各国の中で図書館の資料というものを一定の範囲で,ファクス,メール等で送信できるようにする仕組みというものが,相当程度存在する国が多いと認識しているところです。

それに対して我が国の法では,基本的に31条の対象というのが複製のみでございますので,法律上許諾を取らなければいけないところ,JCOPYさんですとか学著協さんですとか,頑張ってくださってはいるのですけれど,そもそも著作権管理団体の加盟率が高い分野ではございませんので,なかなかコレクティブライセンスというのも機能しづらいところです。ここまで視野に入れると,欧州の方ではドイツ法でも補償金を前提にした運用だというふうに認識しておりますけれども,デジタルネットワーク環境にこの研究というものを著作権法上位置付けるという意味で,非常に意味のある検討になるのかなと思いました。

長くなりまして申し訳ございません。以上です。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何か,では田村委員。

【田村委員】先ほど太田委員からソフトローのお話がございましたので,考えたことを申し上げます。おそらく,前田哲男委員のお話も関係するのですけれど,どのような行為を権利制限の対象として念頭に置くかでいろいろと枠組みが変わってくるかと思います。今,比較的皆さんが念頭に置いているのが,割と研究のための収集とか,そのアクセスのときの話です。みなさんがお考えになっているのは,太田委員がお話しされたような,この倫理の審査を受けるという,むしろ研究が少なくとも中間段階に進んでいるような段階ではないと思うのです。ですから,そうやって中間段階の最終的な成果,あるいは中間の成果をピアレビューするためにどうするかとか,そういったときの話でしたら,もしかしたらどこかで審査を受けるというのもあり得ると思うのですけれども,まずはそこに持っていくまでのアクセスのために,あるいはアクセスをより容易にするために,研究目的の複製をどうするかという問題のときには,おそらく,太田委員がさきほど提示されたような意味ではソフトローではなく,別類型の話ではないかなと思いました。

【茶園主査】ほかに何か,では太田委員。

【太田委員】倫理審査は,リサーチデザインを構築して研究費を取った段階で,あるいは取るための申請段階でやる審査です。実験等の実施前の手続です。いわば研究実施の「要件」で,審査を受けてないことの「効果」が,学術雑誌による投稿リジェクト,ということです。

【田村委員】その事前よりも更に前の段階の話も大事ではないかなと思いました。

【太田委員】なるほど。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。5ページから6ページに,検討に当たっての視点(案)として1番から9番までありますが,これらについてでも結構ですし,あるいは場合によってはこれら以外でも検討しなければならないものがあるというようなことがあればそれでも結構ですし,何かございますでしょうか。

【大渕主査代理】少し気になったのは,研究が円滑にできるようにということであれば,先ほど少し出ていましたが,図書館をもう少し改善するなどのこともありうるということであります。研究は,今度新設するから重要ではあるのですが,意外とニーズがやや弱いというような感じもするので,先ほどの文献コピーを円滑にしたいなど,いろいろなところを考えると,むしろ既存の権利制限における改善と組み合わせていったほうが効果が出るのではないかと思います。先ほどのトータルにやるということで,新設の部分は重要ですが,既存の権利制限の関連部分をもう少し改善していくというのと組み合わせていったほうが,結局この目的のためには近道ではないかという気がいたします。

【茶園主査】では龍村委員。

【龍村委員】この問題は非常に難しい問題だなというように拝聴しておりました。

それで5ページから6ページにいろいろな要素が載っておりますけれども,その中で最もこの問題に切り口を与えるとしたら,一番有効な切り口はやはり権利者の利益にどのくらい影響を与えるのかという,この点だろうと思います。したがいまして,権利者の利益保護への配慮を維持しながらどうするのかということから逆に考えていくということになるのではないかと。研究という言葉自体が余りにも漠として捉えどころがないので,その研究一般について論議すると,恐らく難しいことになって行くのではないかと想像いたします。

確かに一方で法の下の平等とでも言いましょうか,アカデミズムに所属されている方と一般の在野の研究者,その間で差別があっていいのかとか,そういう問題ありますけれども,結局そのアカデミズムといいますか,そういう研究機関の方で権利処理をしていれば,それはそれでいいじゃないかということもありましょうし,補償金という要素も指摘が出ていますので,こういうものを交えながら考えるということもあるのでしょうし,現在,大学等の研究機関で何らかの権利処理がされているのであれば,この仕組みを改善していくといいますか,もう少しブラッシュアップしていくといいますか,そういうアプローチが今の既存の制度とのかみ合わせでは一番取り組みやすいところなのかなというような感じを受けます。

【茶園主査】ほかに何かございますでしょうか。では生貝委員。

【生貝委員】少しこの本題とは,検討のスコープとは必ずしもというところではあるのですけれど,先ほどの小島委員からございました,在野研究者,様々な立場で研究されている方々というのは,これからオープンサイエンスと呼ばれる文脈の中でも大変重要になってこようと思います。

ただ,今そういった在野の研究者さんとの関わりでいうと,研究,ジャーナルの特に外国の大手学術出版社のアクセス購読料というものが極めて高額であり,本当に大手の代表的な大学でさえも研究に必要なジャーナルを契約続けることということ自体が大変難しくなってきており,大学に所属していても,体力のない大学はなかなか必要な論文を読むこともできない。この問題をどう考えるかということに加えて,特に外野の研究者様たちは,そもそもアクセスができませんので,そのアクセスをどう可能としていくのかということ。

このことというのは,著作権制度の改正の取組だけでもって解決できることではないのでありますけれども,やはり今は特にオープンサイエンスとの関わりでも出てくるオープンアクセス,これは正に著作権法とも深く関わるところでございますので,少し検討範囲を広げ過ぎかなという気もするのですけれど,正にそういった取組との関わりという中でも,もし可能であれば御検討の視野に入れるとよいのかなというふうに思いました。

【茶園主査】ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。もうよろしいでしょうか。

ではどうも,いろいろな御意見を頂戴いたしましてありがとうございました。

では,今後のこの検討の進め方についてなのですけれども,本日は活発に議論していただき,どうもありがとうございました。その御議論を踏まえますと,事務局提案のとおりに進めることはよろしいのではないかというように思います。それで御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【茶園主査】ありがとうございます。それでは,事務局提案のとおり,この議題について進めさせていただきたいというように思います。また,本課題の検討に当たっての視点につきましては,本日様々な御意見を頂きましたので,事務局において整理していただきまして,次回の本小委員会で更に議論を進めていきたいというように思っております。

他に特段ございませんでしたら,本日はこれくらいにしたいと思いますけれども,最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いいたします。

【大野著作権課長補佐】本日は,また夜の時間の開催になりましたが,活発に御議論頂きましてありがとうございました。次回の小委員会につきましては改めて日程の調整をし,御連絡をさせていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

【茶園主査】ありがとうございました。

それでは,以上をもちまして文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会第2回を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。

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