(平成20年第9回)議事録

1 日時

平成20年9月19日(金) 10:00~12:00

2 場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3 出席者

(委員)
大渕,清水,末吉,道垣内,土肥,中山,苗村,松田,森田,山本の各委員
(文化庁)
関長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者

4 議事次第

  • 1 開会
  • 2 議事
    • (1)平成20年度・中間まとめ(案)について
    • (2)その他
  • 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1
参考資料1

6 議事内容

【中山主査】
それでは,時間でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会の第9回を開催いたします。
本日は,ご多忙中のところご参集いただきましてありがとうございます。
いつものことでございますけれども,本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開にする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方々にはご入場をいただいておりますけれども,こういう措置でよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】
ありがとうございます。
それでは,本日の議事は公開ということにいたしまして,傍聴者の方々にはそのまま傍聴をお願いいたします。
それでは,議事に入ります。
まず,事務局から配付資料の説明をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
本日,お手元の議事次第の下に配布資料一覧を記載してございますけれども,2点の資料をお配りしてございます。
1つは,今回の中心的な課題となります中間まとめの案でございます。
それから,参考資料としまして,昨日,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で配られました中間整理の中から第2章の利用円滑化方策ということで,以前こちらの小委員会でも検討していただいたものに関する部分の抜粋をお配りしてございます。
過不足等よろしゅうございますでしょうか。
【中山主査】
よろしいでしょうか。
本日,検討をしていただきたい議事は,文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成20年度・中間まとめ(案)についてでございます。
複数の論点がございますので,効率的に議事を進めていくために議題を5つに分けまして,第1番目,デジタルコンテンツ流通促進法制,2番目,私的使用目的の複製の見直し,3番目,リバース・エンジニアリングに係る法的問題,4番目,研究開発における情報利用の円滑化,5番目,機器利用時・通信過程における蓄積等の取り扱い及びその他の検討事項の5つに分けまして,事務局より中間まとめ(案)に基づいて説明をちょうだいし,その後,それぞれの論点について自由討議を行っていきたいと思います。
それでは,最初にデジタルコンテンツ流通促進法制につきまして,事務局から説明をお願いいたします。

[1]「デジタルコンテンツ流通促進法制」について

【黒沼著作権調査官】
それでは,まず第1節からご説明をいたしますけれども,その前に「はじめに」についても併せてご説明をさせていただきます。
1ページでございますが,「はじめに」の部分は,これまでの検討経過といいますか,本小委員会で今期何を課題にしたかを書いてある部分です。一番下の部分に,昨年度の19年度中間まとめとの関係について若干記述してございますので,そこだけご紹介させていただきます。
こちらは,19年度の中間まとめを特に更新したというようなものではございませんで,昨期の検討課題の残りの部分について中間まとめを行ったということでございまして,いわば昨年から中間まとめを2回に分けて行ったという性格のものだということをこちらに記載してございます。
それでは,第1節のデジタルコンテンツ流通促進法制について,中間まとめの素案をご説明させていただきます。
2ページの1の(1)のところでございますが,こちらは,昨年度までの検討の経緯を整理したものでございます。
幾度もご紹介している内容ではございますが,昨年以来,デジタルコンテンツ流通促進法制ということで,経済財政諮問会議や知的財産戦略本部の提言に応じて検討を進めてきたわけですけれども,その内容としましては,このページの中ほどの[1],[2],2つの課題があるのではないかということで,背景分析を行っていったわけでございます。
[1]というのは,過去にインターネット以外の流通媒体での利用を想定されて製作されたコンテンツ,特に過去の放送番組などが課題になっておりましたけれども,そういったものをインターネットで二次利用するに当たっての課題で,[2]は,インターネット上で,制作,流通という概念にとらわれずに行われているような活動ですとか,不特定多数の人間がかかわって行われているような形態についての課題でございます。
このうちの[1]番の課題については,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会とも課題が重なるということで,まずはそちらで検討が行われておりまして,[2]番の課題については,昨年度の段階では,実態調査をまず行ってみるという形で整理が行われておりました。
(2)は,その後の動向についてでございますけれども,デジタルコンテンツ流通促進に関係する議論はその後も関係の部局で行われておりまして,例えば知的財産戦略本部でも,「知財計画2008」の中では,コンテンツ流通促進方策に関連しまして,包括的な権利制限規定あるいは違法コンテンツ対策のようなものもさらに検討すべきということが新たに盛り込まれてございます。
それから,その次のページでございますけれども,4ページの中ほどから下の部分ですけれども,昨年の法制問題小委員会では,民間で提案されているデジタルコンテンツの流通促進の法制度を幾つか素材として検討を行っていただきましたけれども,その後も民間の提案が出されておりまして,今年はいわゆるネット法と呼ばれているものでございますが,そういったものもまた新たに提案されているような状況にあるということでございます。
なお,このネット法の構想につきましては,昨年度さまざま提案されていたものとフェアユース規定を設けるという共通点もございますけれども,昨年の特徴の一つであった登録制というものは採用されておりませんで,許諾権を一定の事業者に集中させるというような構想が提案されているそうでございます。以上が昨年以来の状況の整理でございます。
それでは,個別の課題につきましてご説明させていただきます。1つ目はコンテンツの2次利用の円滑化に関する課題ということでございます。
この課題については,主に過去の放送番組などが念頭に置かれているということは先ほどご紹介いたしましたけれども,昨年度までの整理を(1)のところでざっと整理をしてございます。昨年度のものですので,詳細はご紹介いたしませんけれども,現状としましては,権利の集中管理が行われているような場合,あるいは一定のルールが策定されているような場合には,2次利用についてほぼ問題がないということと,そのような観点からしますと,著作権契約に関する課題としては,6ページの上のところに整理してございますけれども,主としては,権利者の所在不明などの場合であるということで昨年度は整理をしておりました。
こういった形で,権利者の所在不明などの問題が中心的な課題になるのであればということで,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の検討状況をこちらの小委員会でも議論したわけですけれども,6ページでは,過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の検討の骨子について簡単にまとめてございます。
簡単にご紹介しますと,(2)の[1]番の多数権利者がかかわる場合の課題としまして,先方の小委員会では放送番組を素材として検討したわけですけれども,実際の二次利用の許諾が得られないということは,実例を検証した結果,必ずしも多くはなく,許諾が得られなかった場合も不当な理由による許諾の拒否とは言い切れないものが多いというような形で分析をしてございます。
二次利用の実務の上では,むしろビジネスモデルが未成熟であること,あるいは不明者の許諾が得られないことの問題のほうが大きいという整理がされておりました。
権利者不明の場合の課題につきましては,さまざま民間で行われているような再度の契約交渉が困難となる場合の予防策,対応策などを紹介しておりまして,それらの取り組みを進めていくことが,将来の問題も視野に入れれば非常に重要だということを整理しております。
その上で,民間の対応で払拭できない法的リスクはまだ残りますので,それに対するセーフティーネットとして制度的な対応が必要という観点から,現行制度の裁定制度の運用改善,あるいは著作隣接権についての裁定制度の創設,それから,それとは異なる新たな制度設計について検討が行われておりました。
本小委員会でも,その過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の検討を受けて,それについて議論を行っていただきましたけれども,そのとき出た意見は,7ページの上のほうでございます。過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会では,裁定制度ではなくて権利制限型,十分な捜索を行えば使ってもいいという制度も検討されておりまして,そういった制度設計につきまして,事後に権利者があらわれたときの場合に無条件で差しとめられるということになっては無意味なので,そういったところの制度について工夫を加えるべきというご指摘はありましたけれども,大体,権利者不明の場合の制度的な対応が必要であるということについては,概ね意見の一致があったと考えてございます。
このような検討状況でございますけれども,この課題につきましては,さきにも述べましたように,デジタルコンテンツ流通促進法制の重要な要素の一つということでございますので,このような権利者不明の場合の制度的措置については,できる限り早期に実施することが適当ということでこちらのまとめをしてございます。
その次の課題は,インターネット等を活用した創作・利用に関する課題として,昨年度はまず実態調査を行うべきだとしていた部分でございます。
こちらは,経済財政諮問会議などの課題にかかわらず,自主的に検討を進めてきた部分でございますけれども,19年度の中間まとめで実態調査が必要と言われていた観点は,(1)の中ほどに2つ「・」がありますが,制作,流通の概念で分けることが困難なような創作形態,あるいはその下で,不特定多数の者がかかわるような場合,あるいは不特定多数者間でやりとりが行われているような場合,こういったものについて調査をすべきだというふうにされてございました。
こちらについて,関係事業者などに,どういうところが課題だと認識しているのかということで,いろいろヒアリングをしながら調査を行ったところ,多くの関係者が問題と感じている点の多くは,著作権分科会の各委員会でも既に検討課題として取り上げている課題が多いということは一つございました。ただ,新たな要素を含む可能性があるものについても幾つか指摘がございまして,8ページの[1]から[3]まで整理をしてございますけれども,[1]は,例えばストレージサービスと呼ばれているものに関するものでございますけれども,これに関しては,著作物の利用主体がサービス事業者なのか,あるいはサービスを利用している個人なのかと,これはどちらに判断されるか,裁判でも分かれているというようなこともございまして,この判断基準について明確にならないと,いろいろな事業に影響を与えるという点が問題視されているという指摘がございました。
[2]は,権利制限のそのものについて見直しが必要だというような問題意識が持たれているようでございまして,例えば包括的な権利制限規定,あるいは現在,事実上黙認されているような形態についても権利制限の検討が必要だという問題意識が持たれているようでございます。
それから,[3]は,不特定多数の人によってお互いに一つの作品をつくりかえていく,どんどん組みかえていくという形態の創作が行われるような場合についてでございます。特に,現在のところは,各事業者の規約などに基づいて実施されていて,その限りにおいては大きな問題が生じているわけではないけれども,今後については,それを二次利用する場合などに,不都合が生じる場合があるのではないかという問題意識が示されてございます。
こういった実態調査がございましたけれども,このような指摘の中でどのような問題点があるのかということを整理しております。この[1],[2]の課題からは例えばですが,ストレージサービスに関しては,私的領域で行っていた行為と同様の行為がネットワークを介して行われているにすぎないという評価なのか,それとも事業者が不特定多数の者に対してネットワークを通じて配信することと同様の状況が生じているのかによって判断が変わってくるということで,これに関しては,間接侵害の問題として幾つか検討されているわけでございますけれども,それ以外にこんな問題点があるのではないかということを,9ページの上のほうで整理してございます。
今の権利制限規定ですと,私的な領域の行為であれば,個人的あるいは零細な利用として権利制限の対象となりますけれども,それをネットワークを介して利用した場合には,権利制限の対象となる場合が少ないという状況になっております。ただ,実態としては,ネットワークを介しても零細な行為であるような場合もありますし,逆に私的領域であっても大規模な著作物利用が行われる場合もあるという,そういう実態がございますので,許容されるべきという事項,許容されるべきでないという事項と,現在の権利制限規定の切り口との乖離が生じているのではないかと,そういった問題点としてとらえられるのではないかということがございます。
もしこのような問題意識だとすれば,デジタルコンテンツ流通促進法制の大きな課題としては,こういった乖離の解消に努めていくということが課題になってくるのではないかというふうに考えられると思われます。実際に,この小委員会あるいは知的財産戦略本部でも,いわゆる権利制限規定の見直し,あるいは包括的な権利制限規定など,検討が行われておりますけれども,それもこういった課題,問題意識と共通する部分があるのではないかという,そういった整理でございます。
それから,[3]の不特定多数の者がかかわる場合の問題点としては,こちらについては,将来的な問題点の可能性ということもございますので,さらに問題点の精査と研究を行うことが必要という形で取りまとめてございます。
また,先ほどはご紹介しませんでしたけれども,先ほどの実態調査の中では,コンテンツ流通のビジネスが余り進展していない原因は,必ずしも法制度だけにあるわけではないということもございましたので,しっかりとしたビジネスモデルができているかどうか,そういったことについても,法制度の検討と並行して留意していくことは当然に必要ということで留意点を書かせていただいてございます。
昨年度来の大きな課題としてはこの2点でございましたけれども,その他最近の動向としましては,「知的財産計画2008」でも違法コンテンツ流通対策が要素として追加されているということもございますし,この点は当分科会に寄せられています著作権改正要望でもその傾向が見られているわけでございます。
こういった点から考えますと,デジタルコンテンツ流通促進法制の中身としましては,権利者が安心してインターネットにコンテンツを提供するための環境整備ということも,その要素の一つとして考えていくことは適当ではないかという整理をしてございます。
このような形で,デジタルコンテンツ流通促進法制の検討結果でございますけれども,これらに関連する問題意識として掲げられている課題には,複数の課題が実は含まれているということでございまして,この小委員会としては,こういった課題を広くとらえる観点から,こういった今まで触れた,例えば権利者不明のものなどございましたけれども,そういったものについて,まず速やかに実現されるべきということ。それとともに,そのほか今後とも知財本部の検討動向なども踏まえて,その幅広い検討課題についても,一気に片づくということではないけれども,今後とも引き続き検討を続けることが適当という形で最後は取りまとめてございます。
解説につきましては以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明を踏まえまして,「デジタルコンテンツ流通促進法制」についての皆様のご意見を伺いたいと思います。何かございましたらお願いいたします。
どうぞ,松田委員。
【松田委員】
当委員会で議論をした検討の方向性のところが,6ページから7ページの上のほうに書いてあります。
ここのところが私どもが検討したところですから重要だと思いますが,一つは「この課題について」という最後の3行でございますが,早急に実施に移すよう検討するというこの内容は「権利者不明の場合の制度的措置について」というふうに書いてあるわけです。
ここの委員会では,確かにこのことについては,おおむね意見が一致したことは間違いないと思いますし,この結論については,私も,賛成です。しかし,もう一つこの上に書いてあるのです。それは何かというと,事後的に権利者があらわれた場合について差止めをどうするかという問題も議論したと思います。これについても,かなり意見は一致したのではないかなというふうに私は思っておりました。たしかここではA案,B案みたいな議論もしたのではなかったかと思っています。
しかし,結論としては,相当の努力をして利用ができるようにした後において,権利者があらわれた場合については,何らかの措置といいますか,その制限規定を置くということについては,ある程度合意ができているというふうに思っておりました。したがいまして,少なくとも,おおむね委員の意見の一致があったというぐらい書いてもいいのではないかなというふうに思っていますが,いかがなものでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
おっしゃるとおりかと思います。先ほど,ご説明を省略してしまいましたが,本日の参考資料1のほうでございますが,こちら過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会で昨日取りまとめいただいた資料ですけれども,こちら5月にご紹介しました過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間総括から,さらに変更点を加えて整理されたものでございまして,32ページをごらんいただければと思います。
こちらは,そのA案,B案について検討されたものに,さらに検討の結果という部分を書き加えたものでございまして,こちらの中にはこの法制問題小委員会でご議論,ご指摘いただいた点についても記述をしてございます。
具体的には,下から8行目ぐらいですけれども,事後的に権利者があらわれた場合に,無条件で差し止められることとするのでは制度の意味がないため,工夫が必要との指摘がなされたということも記述を加えまして,その上で何らかの対応が必要であることについて,おおむね異論はなかったというふうに先方の小委員会でも記述を書き加えてございます。それを踏まえて,今回の法制問題小委員会での記述になっているというような構成でございます。
ですので,そちらの部分は読み込める形になっているというつもりで書いてはおります。
【松田委員】
無条件で差しとめをできないようにすることと,それから権利者不明の措置ということについて,これをこの課題というふうに言っているのでしょうか。
この課題については重要であるからということになっていて,その点以下は権利者不明の措置について,早急に実施を移すというふうになっているので,権利者不明の部分だけ早期の実施というふうに書いてあるというふうに読めるのです。両方とも早期の実施でいいのではないかと私は思っているのですけれども。
【黒沼著作権調査官】
権利者不明の場合の措置のトータルな制度設計という意味でこちらは書かせていただいているつもりでございまして,ご指摘のところも含めたつもりではございます。
【松田委員】
そうですか。
【黒沼著作権調査官】
表現ぶりに不足がございますでしょうか。
【松田委員】
もし検討願えるなら,両方はっきり実施ができるのではないかというふうな方向性を出してもらったほうがいいのではないかというふうに思いますが,表現についてはお任せいたします。
ついでに,その7ページの記載のところの1行目,「事後的に」からですが,「事後的に権利者が現れた場合に無条件で差し止められるなど,制度を設けることが無意味にならないように工夫を」すると,こう書いてあるのですが,この「差し止められるなど」というのは,どうも無意味になることを言っているのだと思いますが,ここではどのような工夫が必要なのかということを書いたほうがいいのではないかと思います。
「無条件で差し止めが行われないようにするなどの工夫」というふうにしたほうがいいのではないかと思いますが,ご検討ください。
【中山主査】
はい,そこはわかりました。
ほかにご意見ございましたら。どうぞ,道垣内委員。
【道垣内委員】
9ページの白い丸が2つありますが,その上のほうの丸の4行目から5行目にかけてですけれども,「条約上の考え方も踏まえながら」というところに注がついておりますけれども,私から見ると表現ぶりが緩やか過ぎるように思われます。国際約束ですので,考え方を踏まえるのではなくて,その義務の枠内でいうことになるのではないかと思います。,この観点から見ますと,不当に権利を侵害しないということは条約上の義務になっているので,この点は遵守義務があるということになるのではないかと思います。
以上です。
【中山主査】
はい,わかりました。
ほかに何かございましたら。どうぞ。
【道垣内委員】
全然,中身にはかかわらないのですが,2ページ目の1の(1)の表題ですけれども,「19年度中間まとめ等の検討の経緯」というタイトルは,すぐ直前の1頁の末尾で書かれていることと対応していないように思われます。すなわち,19年度で検討しなかったことを今回取り上げると書かれているのに,19年度で検討したことを再度書くというという趣旨のタイトルのような印象を受けます。ほかの項目を見ますとこういう表現ぶりではなく,これまでの検討経緯とか,あるいは平成19年度までの検討経緯とか,そういう書き方になっています。
【中山主査】
その点はいかがですか。
【黒沼著作権調査官】
すみません,特に深い意味もなく書いてしまったのですが,「これまでの検討の経緯」でも意味は変わらないかと思います。
【中山主査】
そこら辺の修文はお任せ願えればと思います。
ほかに何かございましたら。よろしいでしょうか。
それでは,次の議題に移りたいと思います。
まず,私的使用目的の複製の範囲の見直しにつきまして,事務局より説明をお願いいたします。

[2]私的使用目的の複製の見直しについて

【黒沼著作権調査官】
それでは,11ページから,私的使用目的の複製の見直しについて,中間まとめの素案をご用意してございます。
まず,1の(1)は,19年までの検討ということでございます。
何度かご紹介しましたので,逐一ご紹介はしませんけれども,問題意識としては,個人的または家庭内で使用することを目的とする複製,いわゆる私的複製でございますけれども,そちらについて,規定の創設以降,適宜,技術革新を踏まえて範囲の見直しを行ってきたことを紹介しつつ,近年の動向としまして,複製・通信技術の発達によって,特にインターネットを通じた著作物の交換・共有によって,私的領域でも大量,広範な複製が可能となっている状況,あるいは私的領域でも契約あるいは著作権保護技術を通じた利益の確保が可能な場合も生じているという,こういった問題意識で最近の範囲の見直しが検討されてきたということでございます。
これに基づきまして,平成18年度に行われた検討のまとめが19年1月の分科会報告ですけれども,下のA,B,C,契約や保護技術との関係あるいは違法複製物の取り扱いなどなどにつきまして,まず私的録音録画小委員会で検討を進め,その検討を踏まえて必要に応じて私的複製のあり方全般について検討を行うという形で,それまで整理をされてございました。
私的録音録画小委員会でのその後の検討につきましては,こちらでもご紹介しましたけれども,私的録音録画小委員会の中間整理あるいはその後の意見募集で利用者保護に関する懸念が示されたことなどを踏まえまして論点整理が行われておりまして,それが12ページに抜粋を載せたような状況でございます。
一つは,違法複製物,違法配信からの録音録画につきまして,30条の適用対象外とする方向で対応すべきということが言われてございます。その際には,利用者保護といたしまして,法改正内容の周知徹底,あるいは許諾したものについての情報提供,それからそれを識別するための適法マークの推進などについて,こういった利用者保護に取り組むということで関連のセットの条件になっているということでございます。
また,2としまして,適法配信事業から入手した著作物等からの録音録画につきましても,契約で対応できる利用形態は契約に委ねていくと,そういった方向性から30条を縮小するという方向性が示されてございます。
録音録画については,以上のような論点整理がされておりますけれども,こちらの私的複製の見直しにつきましては,理論的には,録音録画の分野のみに限定されるということが必ずしも言えないものがございますので,本小委員会としては,これを踏まえて,その他の分野について検討を行ってきたところでございます。
特に,昨年10月12日の著作権分科会でのご意見あるいは意見募集でのご意見では,ゲームソフトあるいはビジネスソフトについても不利益が顕在化しているというご指摘がございまして,録音録画に限定せずに議論を行うべきではないかとの問題提起がございました。
これで,今年1月の本小委員会でご議論いただきましたけれども,その際には,まず適法配信事業につきましては,私的録音録画補償金との関係でいろいろと議論があったということもございまして,録音録画以外の分野では,背景事情に差があるのではないかということで整理がされてございました。
それから,違法複製物,違法配信からの私的複製の取扱いについては,録音録画以外はどうするのかについては,私的複製の実態を踏まえた上で考える必要があるのではないかということで整理がされてございます。
その上で,プログラムなどの関係の取扱いをどうするのかという議論が,2以降で整理をされてございます。
(1)は,プログラムについて過去どういう議論があったかということで簡単に整理をしてございますけれども,プログラムに限りますと,過去にも30条の見直しが必要なのではないかという議論が行われておりまして,その観点は14ページの上のほうに整理をしてございます。特にわかりやすいものとしては,2番目の「・」でございますが,プログラムについては,自らコンピューターにおいて利用する限度については,必要な複製翻案ができるという権利制限規定が別途ございます。この関係もございまして,それで認められないような私的複製についても,さらに認める必要があるのかというような形で議論が行われておりました。
この問題について,何らかの制度上の対応が必要ではないかということについておおむね意見の一致があったものの,他のデジタル化された著作物等についても結局は同じ問題があるのではないかという観点などが示されまして,最終的には他の共通する問題について留意しながら総合的に検討するということで制度的な措置は行われないままになってございます。
そういった過去の状況も踏まえまして,今回の議論にまた戻って,プログラムなどの被害の状況についての整理が(2)のところでございます。
ご発表いただいたのは,ファイル共有ソフトWinnyを通じた流通についての調査でございますけれども,約2万ファイルのうち,映像関連が19%,音楽ファイルが13%,それに対してプログラムは3%というような状況にあったということが報告をされてございます。それから,特にゲームソフトについての状況をさらに精査をしますと,プログラムは3%だということはございましたけれども,これはゲームソフトについて,国内で販売されているすべての種類がこの3%の中に含まれているのだというご報告がございました。
こういった被害の状況を踏まえて,(3)で,改正の方向性をどうするのかということを整理してございます。
改正の必要性ということでございますが,被害の状況について,まずどのように評価をするかという点でございます。
まずは,ゲームソフトについての報告を受ける前のご意見ではございましたけれども,全体の3%という数字については,数字として少ないのではないかというようなご指摘などもございました。
それに対しまして,16ページでは,関係団体からは先ほどのゲームソフトの例もそうですけれども,プログラムの著作物の全体数そのものが少ないので,3%という数字にはなっていますけれども,プログラムの中では相当数なのだというようなご発表がございました。
こういったご意見を踏まえますと,不利益の存在があるということが推察されることは確かだということはございます。ただ,それが著作物の通常の流通を妨げる利用実態と言えるかどうかについては,いろいろとまだご評価をいただけていないのではないかというように考えてございます。
また,流通形態につきましても,基本的には録音録画の分野では着うたのダウンロードサイトなど,ユーザーがアップロードをして,そこからダウンロードするようなサイトがいろいろあるようでございますけれども,そういったものが国内でも実態があるというような報告がされてございます。一方で,プログラムのほうでは,海外についてそういうサイトがあるというご報告がありますけれども,国内で同様のものがあるかどうかについては,現在のところ必ずしも明確なご報告はいただいておりません。そういった状況でございます。
また,利用者保護の観点,私的録音録画小委員会では,こういった対策を措置すべきということにしておりまして,例えば許諾したコンテンツについての情報提供あるいは識別マークなどでございましたけれども,録音録画ではエルマークという取り組みが行われているのに対しまして,プログラムの著作物では,こういったものについて取り組みが行われているような状況は確認されておりません。
これにつきましては,そもそもネットワーク配信が行われていないような場合には,適法なものと違法なものと識別するようなマークを用意するまでもなく,ネットワーク上にあるものはすべて違法だと確認できるので,識別する必要はないのではないかというご主張もあり得ないことではないわけでございます。だだし,仮に違法複製されたプログラムからの私的複製も30条から外すということになりましたら,これはゲームソフトだけではなくて,ビジネスソフト全体も含めた話になってきますので,そういったものも含めて,その状況を勘案していく必要があるのではないかということで整理をしてございます。
このようにプログラムの利用実態あるいは利用者保護の実態について整理をしますと,検討結果として17ページでございますけれども,こういった状況を踏まえますと,プログラムの状況について要望が強くあって,複製の実態が相当量に上っているという報告はあるということは言えるということでございますが,その他の件については,またいろいろな議論が残っているというような状況かと思います。
また,プログラム以外の分野については,今のところ大きな改正要望が寄せられていないという状況が一つございます。
また,その他の考慮要素として,私的録音録画小委員会では,こちらの私的複製の範囲の見直しは補償金制度と一緒に検討事項として掲げられていたものでございまして,私的録音録画小委員会自体は最終的な取りまとめがまだ行われていないという状況はございます。もちろん,その検討の熟度については差がある部分はございますけれども,両方の検討事項との関係をどう考えていくのか,今後ともセットで議論していくのかについて,私的録音録画小委員会の検討の方向性を踏まえる必要もあるのではないかということで,こちらで書いてございます。
このように録音録画自体の取り扱いがどうかということがありますので,プログラムなどのその他の著作物の取り扱いにつきましては,このような周辺状況を勘案しながら検討していく必要もあるのではないかということでございます。また,場合によっては,どの分野を対象とするかについては,検討の熟度に応じて段階的な判断をしていくということも視野に入れつつ,検討を行っていくということが適当ではないかとしてございます。
この分野については以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明を踏まえまして,私的使用目的の複製の見直しにつきまして,皆様のご意見をちょうだいしたいと思います。何かございましたらお願いいたします。
よろしいでしょうか,特にプログラムについてこういうことになったということですけれども,よろしいでしょうか。
ご意見がもしないようでございましたら,次の議題に移りたいと思いますが,よろしいですか。
それでは,続きまして,リバース・エンジニアリングに係る法的課題につきまして,事務局から説明をお願いいたします。

[3]リバース・エンジニアリングに係る法的課題について

【黒沼著作権調査官】
それでは,21ページ以降でございますけれども,リバース・エンジニアリングに係る法的課題でございます。
こちらは,前回まで論点整理を行っておりまして,それの引き続きの検討というような形ですので,問題の所在あるいは今までのところについてはご説明を省略させていただきたいと思います。
24ページからご説明させていただきますと,(3)の「権利制限についての考え方」というところでございます。
前回の小委員会でご議論いただいたときには,リバース・エンジニアリングをどのような範囲で認めていくべきかにつきまして,考え方の違いは権利制限の根拠についての見解の相違から生じているのではないかということで,権利制限の根拠となる考え方を幾つかご紹介したわけでございます。そこの部分[2]でございますが,前回から資料の構成を変えておりまして,まず権利制限をすべき方向の根拠というところで,前回はA-1とA-2のところだけ記載をしてございましたけれども,A-3としまして,障害等の発見,セキュリティ対策,相互運用性の確保などの特定の目的の場合には,ユーザーの立場から考えても必要な行為なのだとの考え方もあるというところで,こちら記述を追加してございます。
一方で,前回ご議論になりましたのは,この権利制限を抑制的にすべきという方向性の根拠についてでございまして,プログラムの場合は,著作物の効用を享受するということは,表現を見ることではなくて,プログラムの機能を享受することであって,表現を見る必要はないということと,それから表現を見ることはその後の模倣などの利用を容易にする可能性があり,ひいては先行的な技術開発のインセンティブを損なうという考え方ですけれども,これにつきまして合理性があるのかどうか前回ご指摘がございました。
どのような指摘があったかと申しますと,まずその後の模倣をどうこうということは,その後の模倣は当然著作権侵害になるのであって,その前段階の調査解析の場面で考えることではないのではないかという点が一つございます。
一方で,このBの考え方をかみ砕いてのご説明ですけれども,これは要するに著作物を世の中に発表するときに,どのような言語形式,表現形式で出していくのかという自由があるはずだという指摘ではないのかということでございます。
またそれに対して,そういう考え方を貫徹すると著作権法がアイデアを保護することになってしまうのではないかというご指摘,仮にそうだとすると,特許権による保護との関係を考える必要もあるし,著作権法全体の体系の問題にもかかわってくるというご指摘もございました。また,こういった上のBのような根拠に合理性があるかどうかについては,公正な競争の確保というような観点からも考えるべきだというご指摘もございました。
こういったところを整理しますと,結局のところ,この権利制限の根拠についてどのように考えていくのかということ,すなわちリバース・エンジニアリングの範囲をどこまで認めていくかという見解の相違は,結局は,理解しにくい形式,オブジェクトコードなどの形で発表されているプログラムを理解できる形に変換することは,本来表現を見ることなので自由に行えるはずだという考え方を優先するか,それとも著作物を世の中に発表するときに,どういう表現形式にするかという選択の自由があるのだという考え方を優先するか,こういった考え方の相違,考え方の調整の問題なのかと整理できるかと思われます。
そして,どちらを優先すべきかを考える上での考慮要素を2つ記載してございます。
1つは,表現形式の選択の自由があるのだということを徹底した場合には,その後著作権によって形式の変換が権利侵害になってしまう可能性がある状況の中では,結果的には表現形式の選択の自由があるという状況を超えて,表現を理解されないようにする権利が与えられるのと同じ状況になってしまい,結局アイデアを保護してしまう結果になってしまいかねないということが1つございます。
一方で,本来表現を見ることは自由なのだというほうの要請につきましても,プログラムの場合は,プログラムの記述そのものを理解できるようにする必要性があるのかどうかということについて,目的によって必要性の強弱が変わる可能性がある。
この2つの要素をどのように考えるかが,結局はリバース・エンジニアリングの範囲を考える上での判断要素になるのではないかということでございます。
なお,検討に当たっては,著作権が結局はアイデアの独占を許して,それによって社会的に不当な状況が生じることのないように,という観点にも留意する必要があるのではないかということも記述させていただいております。
こういった権利制限の根拠についての前提を踏まえまして,権利制限をどのような範囲にすべきかについて,議論の状況を整理してございます。
27ページの上のほうで,3つの場合の観点から整理をしてございます。1つは相互運用性の確保の観点,それから障害の発見などのプログラムの表現の確認,それからその他のプログラム開発のためのアイデアの抽出,この3つに分けて整理をしてございます。
[1]番は,相互運用性の確保のところでございますが,こちらについては,諸外国でも規定が設けられているということもございまして,基本的に認めるべきという意見が大勢であったかと思われます。
なお,競合プログラムの開発を目的とする場合にどうするかという点では,多少ご議論ございましたけれども,いろいろご指摘があった中では,目的の段階で競合プログラムかどうかということを区別する必要はないのではないかというような考え方が示されたのではないかというふうに思ってございます。
また,その他の目的以外の条件でございますけれども,こちらは諸外国の立法を踏まえて,例えばプログラムの複製物の正当な使用権限を有すること,あるいは相互運用性の確保のための必要な情報が入手可能でないようなこと,あるいは目的外使用についての規定を整備するという諸外国の要件がございますけれども,このような要件でどうかということについて,特段異ならせるべきだというご意見はございませんでしたので,これを基本として考えることが適当ではないかと整理をしてございます。
2番目の障害の発見あるいは脆弱性の確認などにつきましては,これは使用するユーザーの立場に立ってこの適正・安全を確保するというのは重要であることから,権利制限を認めることが適当という意見があったということで整理をしてございます。
なお,こういった点につきましては,ウイルス作成あるいはシステム攻撃などの目的で解析する場合も同じ行為があるのではないかというご指摘がございました。このような後者の行為が含まれてしまう懸念につきましては,目的の規定など,詳細な制度設計に当たって留意することが必要ということで整理をしてございます。
その次は28ページでございますけれども,次は権利侵害の調査についてでございます。
こちらの権利侵害の調査については,その解析結果を得て新しいプログラムを開発するというようなものではございませんので,権利者の利益を損なう可能性は低いのではないかという形で整理をしてございます。
[3]番は,そのほかのプログラム開発のための解析でございますけれども,こちらの小委員会で出された意見としては,まずプログラムの研究開発全般を対象とすることについては,範囲が無制限に広がってしまうのではないかというご指摘がございました。
また,ご要望としては,革新的なプログラム開発であれば認めていいのではないかというご指摘もありましたけれども,その革新的なということについては,目的の段階で区別が可能なのかと,結果の違いでしかないのではないかというご指摘もございました。
こういったご指摘を踏まえますと,少なくとも「革新的」という目的に着目して範囲を一律に画することは困難なのではないかという点は一つございます。
ただ,一方で,先行技術の習得あるいは技術の確認そのものが一律に行えないことも社会的な妥当性を欠く場合があるのではないかということでございまして,結局のところ,プログラムの開発の中には多様な用途が含まれていますので,個別の場合ごとにバランスを考えていく必要があるのではないかということでございまして,引き続きその点をさらに詳細に検討していくことが必要ではないかということでございます。
以上,まとめとしましては,相互運用性の確保あるいは障害の発見などの一定の目的のための調査解析については,権利制限を認めるべきことについて,おおむね意見の一致があったということと,その他の調査解析全般については,権利制限を行うことは許容される場合もあるだろうという指摘はありましたが,その目的の定め方など具体的な範囲条件について,引き続き検討を行う必要があるのではないかという形でまとめてございます。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
このリバース・エンジニアリングに関しましては,当小委員会でも,まだ検討,議論の途中であろうかと思いますけれども,ただいまの説明を踏まえまして,ご意見をちょうだいしたいと思います。
どうぞ,松田委員。
【松田委員】
中間の報告として,よくまとまっているなと思っております。
一つ気がつきましたのは,23ページのところですが,IPAが意見書を出しておりました。確かにこれは脆弱性の解析のための意見書を出しておりまして,その後だったと思うのですけれども,相互互換性の視点からも意見を出して,たしかここでも配付されていたと思います。
むしろ論点としてはそのほうが重要だろうと思うわけです。個人的に意見を言わせてもらえば,IPAの後から出した意見に,私,かなり賛成でございまして,大体ヨーロッパの考え方にも一致していると思います。
それから,ここで大体論点が絞られてきたところは,27ページの相互運用性の確保の目的のところで大体線が引けるのではないかという議論まで来ていて,それが競合プログラムをどうするかという論点が残っていると,私はそう思っております。
だから,それを乗り越えればほとんどここでの議論は尽きるのではないかというふうに私は感じているわけです。
そうすると,意見の紹介としてはIPAの脆弱性解析のためだけの意見書だけでなくて,後日出されたものもちょっと加えてあげるべきではないかというふうに思うのが一つです。
それから,先ほどの27ページの論点で,解決が図られるのではないかという意見を考えますと,たしか今年度,20年度中に改正しろということが言われているのですよ。これだけはできるだけ早急に議論をして,論点が絞られてきましたから,立法も踏まえて早急な議論が必要だというくらいの結びにしたほうがいいのではないかというふうに思っております。
【中山主査】
ありがとうございます。
その点,何か事務局からございますか。
【黒沼著作権調査官】
確かに,23ページのところの意見につきましては,こちらヒアリングのときに出された意見しか書いてございませんでしたので,記述を追加したいと思います。
【中山主査】
それから,28ページの[3]の「その他,プログラムの開発のために必要なアイデアの抽出等」,これについてまだ議論が十分なされてはいないと思うのですけれども,何か意見ございましたら。
【松田委員】
これはいいのじゃないかと私は思っております。
【中山主査】
同じ技術的なものでも,特許法でいきますと,競合製品を買ってきて分解して調査して,調査,研究が目的ならそれを侵害品をつくるというところまで認められております。
それに対して著作権法のほうはどうするかということになると思うのですけれども,何かご意見ございましたら。どうぞ,松田委員。
【松田委員】
それと全く同じ法制をこのコンピュータープログラムに持ってきますと,どういうことが起こるかというと,解析してもいい,同じものをつくってもいい,もちろんそれを売り出したらだめですね,ということになります。
そのときに,そこまでいきますと,全く同じものをつくった後に,表現形式を違う形にして,そしてなおかつ全く同じ機能のプログラムを開発するのは,もう短期の間に私できると思っています。
これが,乱用を要する機械等のリバース・エンジニアリングと違う特質だと私は思っています。そうすると,特許法と同じルールを当てはめますと,開発者のインセンティブというのが極めて脆弱になるのではないかと思います。
ただ,著作権法このインセンティブを保護する法律でないことは間違いない。開発の投資を保護するという意味ですけれども。そういう法制ではないことは間違いないわけですけれども,そのまま放置すると,果たしていいプログラムが開発できる環境がなくなってしまうのではないかという危惧がある。その辺に新しい産業政策的な視点が必要なのではないかというふうに私は思っているところです。
【中山主査】
そのとおりですけれども,そうするとどういうことに,どこまで……。
【松田委員】
私の意見は,相互運用性のところで26ページを見ていただきますと,大体皆さん方の意見は,26ページでリバース・エンジニアリングの目的をずっと並べておりますと,上から相互運用性の確保のところまではいいのではないかというふうに意見を集約できるのだと思うのです。
それに加えて,競合プログラムの開発をどうするかというところ,この競合プログラムの開発のためのリバース・エンジニアリングは,認めないというふうにするほうが,すぐれたプログラムの開発を促進する産業政策的な視点が入れられるだろうというふうに私は思っていまして,切るのであれば模倣と競合の間,ここでリバース・エンジニアリングの目的を定めるのがいいのではないかと思っている次第です。
【中山主査】
一つは,もちろんそういうことだと思います。もう一つは,例えば競合プログラムをつくるためではないけれども,研究をしたいという目的の解析があるわけですけれども,それもだめということになるのでしょうか。
【松田委員】
いえ。
【中山主査】
それはいいということですか。
【松田委員】
それは研究目的のほうでやるべきだと思っています。
【中山主査】
あちらのほうでですね。
【松田委員】
はい。
【中山主査】
もう一つ,ここには載っておりませんけれども,フェアユースの規定をどうするかということともかなり関係はしてくるだろうと思いますけれども,ほかに何かございましたら。
先ほどの話に戻りますけれども,調査,研究も非常に難しいので,非営利に限るかどうかとか,いろいろな要素によってもこれとの絡みは変わってくるとは思いますけれども,ほかに何かございましたら。
どうぞ,森田委員。
【森田委員】
取りまとめの確認なのですけれども,そうしますと,この28ページの[3]については,「引き続き詳細に検討していく」ということですが,その際に,27ページの記述でいきますと,「目的の段階で競合プログラムの開発を意図しているかどうかを区別する必要はないと考えられる」と書かれてあります。いま松田委員からそれとは違う考え方が示されたかと思いますが,この点については2つの考え方があるけれども,どのように考えるかについては,この報告書としては,競合プログラムの開発目的かどうかという要件は立てないほうがよいという考え方で立法するという立場が示されているのではないかと思います。そうしますと,[3]については,リバース・エンジニアリングが認められる場合として例外的なものとして個別の場合ごとに認めていくのか,それとも研究開発のフェアユース規定のようなものを設ければ,当然その要件のもとで一般的に許容されることになるので,特にリバース・エンジニアリングに限って特定の措置を講ずる必要はないと整理するか,そのどちらがよいかについて,今後の議論の中でさらに詰めていくと,そういう理解でよろしいでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
まず1点目の競合プログラムのところでございますけれども,競合プログラム全般について考慮する必要はないとしているわけではございませんで,相互運用性の確保の目的でやる場合には,競合プログラムかどうかということを考えなくてもいいのではないかという,ここはそこの相互運用性の確保の目的の大きな枠内でのお話でございます。
その他のプログラム開発全般については,もちろんご指摘のような競合プログラムをどうするのかという点は,引き続き論点として残っているのだろうと思っております。
もう一点のフェアユースとの関係などにつきましてはご指摘のとおりでございます。
【中山主査】
ほかに何かございましたら。
よろしいでしょうか。意見もないようですので,それでは次の議題に移りたいと思います。
次は,研究開発における情報利用の円滑化についてでございまして,まずこの点について事務局から説明をお願いいたします。

[4]研究開発における情報利用の円滑化について

【黒沼著作権調査官】
それでは,40ページ以降でございます。
研究開発における情報利用の円滑化ですが,こちらも前回の小委員会から引き続きでございますので,検討の背景などにつきましては省略をさせていただきたいと思います。
43ページの検討結果のところからご紹介をいたしますと,まず検討対象としては,研究開発分野としましては,範囲を限って検討すべきかどうかというようなご議論もありましたが,とりあえずは全体を検討した上で,その中から早急に対応すべき範囲を洗い出していくというような検討手法をとったということを整理してございます。そのページの一番下でございますが,研究開発目的のプログラムのリバース・エンジニアリングについては,前回までは別途の要件で検討する必要があるので別途検討するということで,リバース・エンジニアリングの中で取り扱うということに整理をしていたつもりだったのですが,先ほどの松田委員のご意見を踏まえますと,もしかしたらここは違うご意見があるのかもしれませんが,後ほどご指摘をいただければと思います。
ということで,ここの整理ではプログラムの研究目的のもののリバース・エンジニアリングについては想定していない整理でございますけれども,(2)以下,前回までの意見の整理をしてございます。
まず,対象範囲と権利制限の根拠でございますけれども,前回の小委員会でおおむねこういう方向性でいいのではないかというようなご整理があったかと思っております。それは何かと申しますと,検討の経緯としましては,公益性に着目して考えるべきですとか,表現の利用あるいはアイデアの利用とかと,そういった性質の観点で考えるべきだというようなご議論もございましたけれども,結論としては,法的措置の期限との関係で,早急にコンセンサスを得られる範囲を定めるという観点から,情報解析技術の研究開発に着目して範囲を定めることが適当という意見が多かったかと思われます。
根拠となる考え方としましては,こちらはデジタルネットワーク社会の中では,こういった情報抽出のための技術というのは今後の社会的基盤の一つであるということで,そのための研究開発も社会的な意義を有するのではないかという点が一つと,それから,こういった情報解析分野の場合では,情報・アイデアの抽出を行うにすぎない,その過程で中間的な利用行為があるだけであるので,著作物利用の実態は備えないと,こういった2つが根拠とすべきではないかということでございます。
こういった整理がおおむね方向性としてあったのではないかと思いますけれども,指摘としては,特定の技術開発で区別するのは不適当ではないかというような点ですとか,情報・アイデアの抽出にすぎないという点では,ほかの研究開発分野でも同じようなものがあるのではないかというようなご指摘もございました。その点を付記してございます。
権利制限規定を行う場合の要件でございますけれども,まず営利,非営利をどうするのかというような論点が一つございました。こちらは,同様に情報・知識の抽出について,今後の社会的基盤になるのだというような意義で検討されている検索エンジンの権利制限,昨年度検討いただいたものでございますけれども,そちらについては,特に非営利要件をかけないという方向で検討されておりましたので,それとの整合性を踏まえますと,特に非営利のものに限定する必要はないのではないかという点がございます。
それから,著作権者への利益の影響という点では,契約によって入手可能な研究材料などもございますので,そういったものについて権利制限を認める必要はないというご指摘もございまして,それを踏まえますと,著作物の性質や利用態様に応じて権利者の利益を害すると考えられるような場合には,権利制限の対象外とすることが適当ではないかという点でございます。
また,関連しまして,ウエブ情報を網羅的に収集するような研究開発につきましては,検索エンジンではその網羅的な収集を拒否するような標準的なプロトコル,技術的な手段がかけられている場合には,権利制限の対象外とするということを検討されておりましたので,こちらもそれとの整合性を考えますと,同様の観点が必要ではないかということで整理をしてございます。
また,研究開発の過程で作成された複製物の取扱いですけれども,今回が情報抽出の過程のための中間的な複製にすぎないということを根拠の一つとすることもございますので,そういった観点からは,その複製物を外部に提供することになった場合には,その趣旨に反することになるのではないかということで一つ整理をしてございます。
ただ,ヒアリングの中では,いわゆるコーパスですとか,そういったものについても言及がございまして,その複製物を他の研究者との間で共有する,提供していくという,そういうこと自体に意義がある場合もあるというご指摘がございましたので,そういった場合には認められる範囲があるのではないかということも記述をしてございます。ただ,もともとの権利制限の趣旨に合うのかどうかというのはご議論があるかもしれません。
仮に,そういったものに意義がある場合にはどうするのかということでございますが,現在の著作権法の31条,図書館の規定では,調査研究の用に供するために複製物を提供するということについては,非営利目的の場合に限るという形になっていますので,それとの整合性を図る必要があるのではないかということを整理してございます。
これが早急に結論を得るべき分野,すなわち情報解析技術の研究開発の分野についての整理でございます。
(3)は,そのほかの研究全般を対象とした場合の考え方ですけれども,この小委員会では早急に結論を得るべき範囲のほかに,大学などで日常的に行われている研究活動についても,一定の権利制限が必要な場合があるのではないかとご指摘がございました。
その権利制限の当否につきましては,おおむね研究者が行う著作物利用について,権利制限をしてもいい範囲があるということについては,おおむね社会的なコンセンサスがあるのではないかという指摘がありまして,また大学では,特に教育目的では権利制限規定が対象になる一方で,研究だとならないということだとなかなか境界についての判断が難しいというご指摘もございました。
こういった形で権利制限を認めるべきというご指摘もある一方で,医学出版など,そもそもその分野の研究者が読むことを対象としているような出版物もあるということで,こういった権利制限をすべきでない範囲があることも確かであるという意見もございました。
そういった見解を踏まえまして,ではどの範囲でその対象を絞っていくのかにつきましては,現在のところさまざまな意見が出ているような状況にあろうかと思います。
逐一ご紹介はしませんけれども,非営利というような形で限るべきではないか,あるいは主体を限定するというようなこと,諸々のご意見がございました。
こういった状況を踏まえまして,まとめといたしましては,早急に結論を得るべき研究開発分野として情報解析分野の研究開発目的の著作物利用については,具体的にどういう研究が情報解析分野なのかというところは,制度設計の詳細を検討していく上では,多少難しい点はあるかもしれませんけれども,こういった一定の条件のもとで権利制限を行うことについては,おおむね意見の一致が見られているということでございます。
また,その他の研究開発全般についての権利制限は,権利制限を行うべき範囲があるということについては賛成意見が多かったものの,ではどの範囲で区切るのかということについては,まだ具体的な範囲,条件について意見の一致が見られておらず,引き続き検討を行う必要がある状態ではないかと思っております。
このような状況でございますけれども,関連してこの小委員会の中で出されてきた意見としましては,研究開発の権利制限を考える上では,多様な研究活動がございますので,仮に権利制限規定を設けるとしても,一般条項的な要件にならざるを得ないのではないかというご指摘もございまして,その観点からフェアユースとの関係をどう考えるのかというようなご議論が一部ございました。
それにつきましては,いろいろと書いてございますが,47ページでまとめておりますところでは,仮に個別の権利制限規定を設けるとして,その要件が一般規定と同様の要件になってしまう場合には,個別規定を設けるという意義が変わってくる可能性がございますので,今後知的財産戦略本部で検討されています一般規定,いわゆる日本版フェアユース規定の動向を見つつ,その要件次第によっては,それを踏まえて検討を行う必要が生じてくることに留意すべきという形で整理をしてございます。
こちらにつきましては以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明を踏まえまして,研究開発における情報利用の円滑化について意見をちょうだいしたいと思います。何かご意見ございましたらお願いいたします。
どうぞ,森田委員。
【森田委員】
この45ページのcの「研究開発の過程で作成された複製物の外部提供」についてですが,コーパスのようなデータベースの問題はこの項目で扱っておられるわけですけれども,ある人が研究開発の過程で複製物をつくって,それを第三者に提供するという話と,研究者が調査研究のために利用することを想定として,それに提供する目的でデータベースを構築する話をひと括りにして,「研究開発の過程で作成された複製物の外部提供」として論じることについては何か違和感が私はあります。
このようなデータベースを構築する人はみずから研究開発をするわけではなくて,研究開発を行う人のために構築しているわけでありますので,2つの問題は区別して論じないとやや混乱が生ずるのではないかと思います。
イメージ的にいうと,研究開発する人がその研究開発の過程で複製物を蓄積して利用するというのは個人として行うわけですが,そのような研究者が共同で研究を行うということで,そのために利用するデータベースを共同で構築することも考えられます。例えば,研究者が組合をつくってその中で相互利用するということもありえますし,そこからさらに進んで,組合が別個の法主体として独立してきますと,別個の法主体が非営利の事業としてデータベースを構築し,それを研究者に提供するということもありえます。そこのあたりは,イメージ的には相互移行的に多様な形態を観念することができそうです。要するに,研究開発の目的というのは,だれについて要求されることなのかということですが,このデータベースを構築する場合には,みずから研究開発を行うかではなくて,むしろ研究開発の目的を持った者にのみ提供するとか,何かそちらのほうの要件で縛りをどうするか,という形で問題がとらえられるのではないかと思います。この点は,前のヒアリングのときにもそのような感触を得ておりました。
そういう観点から,このcの取りまとめは,ややそのあたりが2つの問題が混ざっているような感じがありますので,そこを整理して記述したほうがよいのではないかと思います。
【中山主査】
その点に関してはいかがですか。
【黒沼著作権調査官】
ご指摘のとおりかと思います。ちょっと記述が不足だったかもしれませんが,こちらで想定しているような外部提供というものは,想定していたのは国立国語研究所のご発表でしたけれども,その複製者自身も研究をするためにコーパスを作成されていて,さらにほかの研究者にも提供されるという形でございますので,もともと自らが研究する目的で作成したデータベースであることは間違いない事例でございます。
ですので,むしろ今のご指摘の中で言えば,同じ研究者仲間での,同じ研究目的の間での共有というようなお話なのかもしれません。もし必要であれば,そういったことがわかりやすいように記述を多少工夫させていただければと思いますが。
【中山主査】
森田委員,よろしいですか。
【森田委員】
そうしますと,みずからは研究をしないけれども,専ら研究者の研究の用に供するためにデータベースを構築する行為は認められないという整理だということでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
はい,こちらではそれは特に想定はしてございません。
【森田委員】
そうしますと,図書館とのアナロジーというのは効いてきませんね。つまり,図書館というのは,みずからが本を読むために集めているわけではなくて,本を読む人のために集めているのであって,それとは違ってくるという整理になるかと思いますけれども,私はむしろ,アーカイブ化というのは,利用者のために情報を蓄積するということが一つの法主体として独立すると,それが観念的な意味での「図書館」になってくる,インターネットの世界における情報図書館に相当するようなデータベースがあるとすれば,それはどういう要件のもとで認められるかという問題を考えておられるかと思ったのですが,それとはちょっと違ってきますね。
【黒沼著作権調査官】
いま手元に図書館法の条文がないのですけれども,図書館そのものの目的の中に,たしか調査研究のために資するためにという目的が入っていたと思われますが,確認いたします。
【中山主査】
どうぞ,大渕委員。
【大渕委員】
私も,今の関係で,このcのところが非常に明確化されてよかったのではないかと思います。
私は,漠然と,自分がせっかくこういう形で情報解析でできたものだから,研究者同士で共有したいという,そういうものを主に考えておりましたけれども,別にそれ以外に先ほどのように自分自身は研究しないけれども,提供したいというものもあるのであれば,そのあたりは何かもう少し分けながら前広に,中間的利用云々自体にとどまるか,それとも外に出すかというところが大きいわけですけれども,外に成果を出すものにも幾つかパターンがあり得ますので,それを踏まえたような形で前広に整理していただければよろしいのではないかと思います。
【中山主査】
恐らく意見聴取の段階で,他人の研究のためにこういうものをつくるという事業というか,あるいは組合,非営利でもいいのですけれども,そういうものがなかったので,こういう文章になったと思うのですけれども,そういうものがもしあり得るとすれば,それについてもちょっと書いておかなければいけないと思います。
ご指摘はよくわかりましたが,実態としてそういうものが本当にあり得るか,そこら辺もよくわかりませんのでその辺はペンディングにさせてもらえればと思います。
どうぞ,松田委員。
【松田委員】
その点について意見を言わせてもらえば,教育目的の場合には,35条ですが,教育を受ける者,ないしは教師それ自体がというような条項があって,じゃその人たちのために必要なドリルをつくるのはどうなのというのがあって,もうこれは既に判決もあるようですけれども,やはりそこまで広げてしまうと業者を拡大するのではないかなと思います。
私は,研究目的のためにも,研究者が複製することに,研究目的を持っている者が複製することに限定すべきではないかなというふうに今は思っております。
【中山主査】
おっしゃることはよくわかる。例えば特許でも,大学の先生が研究するためだけの器具をつくるとか,そういう場合どうかと。それはそういう業者がいるわけです。そういう業者は,特許権侵害にならないのかとかなるわけですけれども,そういう問題が出てくるわけで,今そういう状態が通常はなかったので,多分こういう文章になったと思うのですけれども,先ほど言いましたように実態をもう少し調べて,皆様のご趣旨になるべく沿うようにしたいと思いますけれども,それでよろしいですか。
今のところ,そういう事業を考えていなかったものですから,はい。
ほかに何か,どうぞ,道垣内委員。
【道垣内委員】
46ページから47ページにかけてのフェアユース規定との関係ですけれども,ここに書いてあることは別に不自然なことではないのですが,ただここだけに出てくるのでやや違和感を感じます。フェアユースの問題は,今までのところにも関係しそうなことなので,横並びに見ていただいて,あるいはどこかまとめるとか,ほかにも書くといったことが必要なのではないかと思います。
【中山主査】
おっしゃるとおりで,フェアユースは,すべての制限規定とは言いませんけれども,多くの制限規定に関係してくるわけです。
実は,フェアユースの規定も,本当はこの中間まとめに入ればよかったのですけれども,これからの議題なものですから,フェアユース自体を特別に扱っていないので,そこでは恐らく今のような議論は他の制限規定との関係というのは当然出てくると思いますので,あるいは場合によってはちょっと違うところも修文するかもしれませんけれども,これだけがフェアユースに関係しているというわけではないということだと思います。
ほかに何かございましたら。
特に一般的な研究,調査のための複製については,今,道垣内委員のおっしゃったフェアユースと大きな関係を持ってくるので,これからフェアユースの規定を議論していただくときにまた考えてもらえればと思います。
何かございましたら。
【松田委員】
リバースとの関係は一言,言っておきましょうかね。
先ほどご指摘がありましたので,リバースの関係は主な議論はどういう目的でリバース・エンジニアリングをするかと,複製の制限規定を設けるかと,こういう議論であって,これはもう当然営利だっていいという前提に立ってやっているはずであります。
研究目的は,営利か非営利かの議論がありますが,その差はもうはっきりしておりまして,リバース・エンジニアリングは,コンピューターの特性からどうしても産業政策的にどこかで線を引かざるを得ないというところに来てしまっているわけです。
その視点で解決を図れば,議論をすべきだろうと思っていますが,研究目的というのは,産業政策を入れるべきでは私はないと思っています。かなり現行法上の教育目的に近いものと意識して,場合によっては主体の制限が必要かもしれません。
もうちょっと包括的に設けるのであれば,研究目的ということで,非営利という前提に立つべきだろうというふうに思っています。当然,目的外の使用は禁止されますし,それから実質的に著作権の財産的な侵害が起こるような場合,これについては認められないというような規定を設けざるを得ないのではないか,ある意味では包括的というか抽象的といいますか,そういう規定にならざるを得ないのではないかなというふうに思っているところです。そういうすみ分けを私自身はしているところです。
【中山主査】
前回までの議論ですと,今,大渕委員のおっしゃった,前半は非営利に限らないという点では恐らく大方の意見が一致していてて,今問題になっているのは後者のほうで,後者のほうでも例えば非営利としても医学出版などはどうかと,医学者あての出版物しかつくっていないような本屋は,学者が非営利であったらもう成り立たないと,そういう議論もいろいろあったものですから,そこら辺の要件をどうするかという,趣旨としては,大渕委員のおっしゃった後半の話かと思います。
【大渕委員】
今,非営利と主査のほうで言われたのは,この44ページのここの[2]のaの話,これ両方にかかわってくるわけですが,この情報解析のほうと研究一般とありまして,この情報解析のほうはたしか前回も割とこれを非営利に限定してしまったら,企業がこういうものを行うのは外になってしまうのでということで,むしろ特に非営利要件を求めない方向で検討されていると,別のところで縛りましょうという,研究一般のほうとまたそのあたり若干違うのではないかと思いますけれども,そういう意味では,この先行してやる情報解析技術の部分は,ここにありますとおり,非営利に限定せずにほかで絞っていくという形に,研究一般のほうでまたむしろそこは,要するにどこで縛っていくかということなんで,なかなか前回研究のほうは,何かしら縛らないとこれは広くなり過ぎるのではないかということだったので,その一つの縛り方として非営利というのはあろうかと思います。そういう意味ではこの先行するほうと若干議論状況が違っていて,何かしら絞らなければいけないのであれば,一つ研究一般のほうに考えるものは非営利というのがありますので,そういう話ではないかと思っております。
【中山主査】
前回までの議論ですと,今,大渕委員のおっしゃった,前半は非営利に限らないというのは恐らく大方の意見で,もちろん今問題になっているのは後者のほうで,後者のほうでも例えば非営利としても医学出版などはどうかと,医学者あての出版物しかつくっていないような本屋は,学者が非営利であったらもう成り立たないと,そういう議論もいろいろあったものですから,そこら辺の要件をどうするかという,趣旨としては,大渕委員のおっしゃった後半の話かと思います。
【大渕委員】
その関係で,先ほどの医学出版云々というのは,今後の検討なので,今後の話ではあるのですけれども,45ページの下のほうにある,特定の研究者が読むことを想定して出版が行われている状況にある云々というのは,これも前もお話ししたとおり何かしらの,そういうものは権利を著しく害するとかいう形で対処していけば,そういうものがあるからといって,一般の研究目的の権利制限はできないという必要はないのであり,そのあたりは,契約で容易に集中管理ができるようになったらどうかというあたりとも同じように,ただし書きとかそういう形で対応可能であって,合理的なところに線は引けるのではないかと思っております。
【中山主査】
意見聴取のときの書協の金原委員も,全部だめとはおっしゃらずに,常識的な範囲とか,極めて抽象的なことでやってもいいですよというものでした。恐らく世間一般も学者はおよそ研究目的でコピーしてはいかんとは思っていないので,おっしゃるとおりどこかで線を引くか,あるいは権利者の害さない限りという条文を入れるか,あるいはフェアユースのところで任せるか等々,いろいろな考え方はあろうかと思いますけれども。
ほかに何か意見ございましたら。よろしいでしょうか。
それでは,次の議題でありますその他の検討事項につきまして,事務局より説明をお願いいたします。
なお,機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いに関しましては,前回の本委員会で,デジタル対応ワーキングチームより説明をちょうだいしたものから変更はございませんので,説明は省略させていただきたいと思います。
【黒沼著作権調査官】
それでは,第5節のところは,今ございましたように,以前のワーキングチーム報告をそのまま貼りつけただけでございますので,第6節,63ページにつきましてご説明をさせていただきます。
その他の検討事項ということでございます。
昨年度以来の法制問題小委員会の検討課題としまして,昨年度の19年度中間まとめとして取りまとめた課題,それから今回の中間まとめ案で第1節から第5節まで書いたものいろいろございましたけれども,そちらに入っていない課題がまだ幾つかございます。
1つは,通信放送の在り方の変化への対応ということでございます。
こちらは,検討課題として載せてはおりますけれども,本件につきまして,現在総務省の情報通信審議会のほうでさらに検討が進められている最中でございまして,現在のところまだ著作権法上の取扱いをどうするのか十分検討できる状況にはないのではないかと思っておりまして,今後ともその検討状況の進捗状況を踏まえながら必要な時期に検討を行っていってはどうかという形の記載にしてございます。
また,これはこの小委員会自体で昨年の段階で検討課題として設定していたものではございませんけれども,現在「知的財産推進計画2008」に基づきまして,いわゆる日本版フェアユース規定というものが知的財産戦略本部を中心に検討がされております。
また,この小委員会の中でも,先ほど道垣内委員からご指摘もございましたけれども,研究開発の中でも研究がございましたし,リバース・エンジニアリングのところでも言及もございましたし,デジタルコンテンツ流通促進法制の中でも言及がございました。こういったこともございますので,今後これらの課題につきましては,知的財産戦略本部の議論の動向を見守りつつ,より詳細な制度設計について検討が必要になるような場合には検討を行うことという方針でその他の検討課題のところを記述してございます。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,説明は省きましたけれども,機器利用時・通信過程における蓄積等の取扱いとただいま説明ございました63ページのその他の検討事項,これについてご意見があれば承りたいと思います。何かございませんでしょうか。
どうぞ,清水委員。
【清水委員】
その他の検討事項のところの最後に出てきています「より詳細の制度設計について検討を要する場合などに」ついては,この「要する場合」というのは,戦略本部のほうが中心となって規定をつくったほうがいいだろうというご下問的なものがあって当委員会が考えると,そういう立場なのでしょうか。
【中山主査】
事務局のほうお願いします。
【黒沼著作権調査官】
こちらについては,正直,知的財産戦略本部のまとめがどういう形になるのかがわかりませんで,それを見てという,そういうニュアンス以上のものではございません。向こうで全部やるべきだとか,こちらで全部やるべきだとか,そういった判断を示しているわけでは特にありません。
【清水委員】
今までの個別の問題についての中で,一般規定の必要性が高いのではないかというのは,この委員会の中でも,意見の一致を見たとまで申しませんが,必要性はかなり感じられると各委員がおっしゃっていたと思うのですが,その辺は捨象して,戦略本部のほうからの意向にかなり左右されるというようなニュアンスで書かれているかと思いますが,そういう理解でよろしいのでしょうか。
【中山主査】
それでは,課長のほうからお願いします。
【山下著作権課長】
今,知的財産推進戦略本部に,今年度新たにデジタルネット時代の著作権法制の在り方に関する調査会が設けられておりまして,実は中山先生がそこの会長をしておられます。
この法制問題小委員会の先生方も,そのメンバーにお入りになっている方が幾人かいらっしゃるという状況でございまして,ここの場でアジェンダとして明確にこの日本版フェアユースの検討というのが挙がっているという状況でございますので,まずはそちらのほうでの検討結果,これは最終的には今年中に結論を得るというスケジュールになっておりますので,その後,文化審議会のほうで,ほかの課題もそうでございますけれども,方向性をそちらでいただいた後に具体的にどうするかというようなことを検討するという,ちょっと後先の関係がございますので,基本的にはその動向を見守って,必要があればこちらで検討しましょうという表現をとらせていただいているということでございます。
【中山主査】
ちょっと私はいろいろ申し上げにくい立場にもあるのですけれども,清水委員のおっしゃるのはごもっともでして,これいろいろな文章からして本来ならばフェアユース抜きで書くというのは難しいというのは本当にそのとおりだと思います。戦略本部のほうも従来の予定よりもちょっと遅れているようでして,私個人の見解をもし申し述べることが許されるならば,本来ならこちらのほうでも並行してやってもいいのではないかと思っておりますけれども,ただ,ご存じのとおり著作権課のマンパワーもございます。理屈としてはもう清水委員のおっしゃるとおりだと思いますけれども,そこら辺はもう少し検討させてもらえればと思います。
何かほかにございましたら。特に,その他の検討事項について,これさらりと書いてありますけれども,実は重要なことでこう書いてあるわけですけれども,特に放送と通信の問題,これなんか非常に重要なのですけれども,なかなか著作権法の都合だけで決めてしまうというわけにもいかない問題もありますし,フェアユースは今言いましたような状況にありますし,しかし,何かご意見ございましたらぜひちょうだいしたいと思いますけれども。
よろしいでしょうか。それでは,時間が余りましたので,全体を通じてまた何かご意見がもしあればちょうだいしたいと思いますけれども,よろしゅうございましょうか。
それでは,ご意見も尽きたようでございますので,議論はこのくらいにしたいと思います。今日のこの中間まとめ(案)につきましては,各委員から若干のご意見も出ましたので,それらのご意見を考慮いたしまして,私と事務局のほうで修正案をつくりたいと思いますけれども,その点ご一任いただけますでしょうか。根本的な点については余りご異論なかったと思いますので,それでは私と事務局のほうで相談をして必要な修正を加えて,各委員にまたお送りをしたいと思います。そこでお目通しを願えればと思います。
なお,そのようにして取りまとめました文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成20年度・中間まとめにつきましては,10月1日開催予定の著作権分科会において私から報告をいたしまして,分科会においてご審議をちょうだいした上で意見募集を行うということが予定をされております。この点について何か質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,今日はちょっと時間が余っておりますけれども,本日の議論はこのくらいにしたいと思います。事務局より何かご連絡事項ございましたらお願いをいたします。
【黒沼著作権調査官】
本日はどうもありがとうございました。
【黒沼著作権調査官】
本日はどうもありがとうございました。
次回の日程でございますけれども,また分科会の状況などを踏まえまして,再度日程調整をいたしまして,決まり次第ご連絡させていただきたいと思います。
【中山主査】
それでは,第9回法制問題小委員会をこれで終了させていただきます。次回についてはまたご連絡を申し上げます。本日はありがとうございました。
Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動