(平成20年第10回)議事録

1 日時

平成20年12月25日(木) 13:00~15:00

2 場所

虎ノ門パストラルホテル 新館5階 ミモザ

3 出席者

(委員)
青山,大渕,清水,末吉,道垣内,苗村,中山,前田,松田,村上の各委員
(文化庁)
高塩次長,関長官官房審議官,山下著作権課長,ほか関係者

4 議事次第

  • 1 開会
  • 2 議事
    • (1)法制問題小委員会・平成20年度中間まとめに対する意見募集の結果について
    • (2)私的使用目的の複製の見直しについて(私的録音録画小委員会からの報告)
    • (3)法定損害賠償制度について(司法救済ワーキングチームからの報告)
    • (4)その他
  • 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1-1
資料1-2
資料1-3
資料2
資料3
資料4
参考資料

6 議事内容

【中山主査】
それでは,時間でございますので,ただいまから文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会の第10回を開催いたします。
本日は,ご多忙中のところお集まりいただきまして,まことにありがとうございます。
本日の会議の公開につきましては,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開にするには及ばないと考えられますので,既に傍聴者の方々にはご入場をしていただいておりますけれども,そういう措置でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】
ありがとうございます。
それでは,本日の議事は公開ということにいたしまして,傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
それでは,議事に入ります。
まず,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
それでは,お手元の議事次第に配布資料一覧を記載してございますので,そちらと見比べながらご確認をお願いいたします。
本日,資料として4点でございます。資料の1につきましては1-1から1-3まで3つに分かれておりまして,それぞれ(1)から(4)の議題に対応する資料でございます。
それから参考資料を1点。それから机上配付につきましては過去の報告書なりをいろいろ配付してございます。過不足等ございましたらご連絡をお願いいたします。
【中山主査】
よろしいでしょうか。
本日,検討をしていただきたい議事は,議事次第に記載してありますとおり,4点でございます。(1)法制問題小委員会・平成20年度中間まとめに対する意見募集の結果について,(2)私的使用目的の複製の見直しについて,(3)法定損害賠償制度について,(4)その他,の4点でございます。
(1)につきましては,前回の本小委員会においてとりまとめを行いました法制問題小委員会・平成20年度中間まとめについて10月1日に親委員会である著作権分科会において報告をし,さまざまなご意見をちょうだいしております。さらにその後,10月9日から11月10日までの間,広く国民の意見を聞くための意見募集を行い,こちらも多数の意見をちょうだいしておりますので,これらの意見につきまして各項目ごとにまずは事務局からご報告をいただいて,その後議論をちょうだいしたいと思っております。
(2)につきましては,このうち録音録画の取り扱いにつきましては私的録音録画小委員会において検討が進められておりましたけれども,12月16日に同小委員会の報告がとりまとめになりましたので,その内容につきまして事務局よりご報告をちょうだいし,それを踏まえまして私的使用目的の複製全般についての議論をしていただきたいと思います。
(3)につきましては,司法救済ワーキングチームにおいて検討が進められておりますので,本日はその検討経過の報告を受けて議論を行いたいと思います。
(4)につきましては,昨日,知的財産戦略本部会合が開かれましてデジタル・ネット時代における知的財産制度調査会等からの報告がなされておりますので,その内容につきまして議論を行いたいと思います。また同報告の中では権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)の導入が課題として取り上げられておりますが,文化庁においても同課題について検討を行うため,昨日,著作権制度における権利制限規定に関する調査研究が開始されておりますので,そちらの紹介も合わせてお願いしたいと思います。また,報告書のとりまとめの時期が近づいておりますので,昨年の検討課題も含めて報告書に盛り込むべき内容につきまして議論をちょうだいしたいと思います。

(1)法制問題小委員会・平成20年度中間まとめに対する意見募集の結果について

【中山主査】それでは,はじめに,法制問題小委員会・平成20年度中間まとめに対する意見募集の結果について,議論を行いたいと思います。

[1]リバース・エンジニアリングに係る法的課題について

【中山主査】まず,「デジタルコンテンツ流通促進法制」についての意見につきまして,事務局より報告をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】
それでは,資料の1-1から1-3までが関係の資料になります。そちらに基づきましてご説明をさせていただきます。資料の1-1は10月1日に行いました分科会における意見の概要でございまして,1-2と1-3は意見募集の結果をまとめたものでございます。なお,全体のものにつきましては大部なもので机上のみの配付とさせていただいておりますので傍聴の方は失礼いたします。
まず,意見募集全体の概要でございますが,1-2をごらんいただきますと,10月9日から11月10日まで1カ月間意見募集を行いまして,寄せられた総数は90通のご意見でございました。
それでは「デジタルコンテンツ流通促進法制」についての意見からご紹介をさせていただきます。
資料1-1,分科会でのご意見でございますが,こちら1点ご意見ございまして,デジタルコンテンツ流通促進法制などに関しまして利用促進の観点と権利保護の側面も合わせて考えて,丁寧な議論を行うべきだというご意見をいただいております。
資料1-2にまいりまして,意見募集の結果でございますが,まず総論としまして,ア[1]「流通を促進させるために積極的な検討が必要という意見」,こちらに幾つか意見が出されてございます。おおむね幅広く検討すべきだというような意見でございまして,例えば2番目でございますと,「権利者不明の場合の制度的措置のみに拘泥することなく」というようなことですとか,3番目でありましたら「フェアユース概念の導入も合わせて」という形で幅広く検討すべきだというような意見が寄せられてございます。
一方で[2]番の方でございますが,こちらはバランスをとって検討を行うべきというような意見が幾つか寄せられておりまして,例えば1つ目の○ですと,過去のコンテンツはいいが,新たなコンテンツについて権利の制限で対処しようとするのは誤りであり,イノベーションと法制度の両面からの検討が必要だというご意見をいただいております。
2ページ目にまいりますと,1つ目は,競争の促進という観点も合わせて検討すべきだということ。2つ目は,ビジネスモデルについても合わせて検討が必要だという形でほかの検討とのバランスを踏まえて検討すべきだというご意見が寄せられてございます。各論に入りますと,イのコンテンツの二次利用に関するご意見でございますが,まず,権利者不明の場合の課題について寄せられたご意見としましては,最初の2点は贊成,あるいは速やかに実施することが必要という方向性を支持するご意見が寄せられてございます。その次の3番目とそれから1つ飛ばしまして5番目のものにつきましては,裁定制度が現在ございますけれども,それをより使いやすい形にすべきだというご意見を寄せていただいております。
それから[2]番の多数権利者の場合でございますけれども,こちらについては全員一致でなくても誰かが許諾すればいいような制度が望まれるというご指摘がきております。
そのほか[3]番としてその他のご意見ですけれども,その1番目は登録されていないものについて不利益を与えるようなことで登録を促すようなことを考えるべきではないかというご指摘。また,2番目は,権利制限などによりまして集中管理をより高めるような選択を迫る働きがあるのではないかという指摘もきてございます。
駆け足となりますが,次の4ページにまいりまして,「インターネット等を活用した創作・利用に関する課題」についても多数ご意見が寄せられてございます。代表的なところでいいますと,[1]の1番目は,「カラオケ法理」の拡大につきまして制度的な方策を早急に実施すべきというご意見がきております。また,[2]番の権利制限の見直しに関しましては,明確かつ具体的な見直しを期待したいという1番目の意見を皮切りに,具体的な点としまして2番目の意見は,私的領域内あるいは非営利無料のものはありのままに認めるべきというご意見,3番目は教育・研究目的,学術著作物の利用に関する権利制限の拡充が必要だというご意見です。4番目,5番目は障害者関係の権利制限規定の拡充についてのご指摘がございました。
それから5ページの[3]「不特定多数の者によるマッシュアップに関する課題について」については,すぐにでも精査・研究を行うべきというご指摘がございました。それからエの「違法に流通するコンテンツへの対策」についても幾つかご意見が寄せられておりまして,流通を促進するためには権利者が安心してインターネットにコンテンツを提供するための環境整備が必要なのだというご指摘。それとその次も同趣旨でございますけれども,簡便かつ迅速に違法流通対策を実施できるような法整備が必要だというようなご指摘でございます。また,その他として人格権の問題について指摘するご意見も寄せられてございます。という状況でございました。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,この項目につきまして何かご意見ございましたらお願いいたします。
よろしいでしょうか,今日は盛りだくさんなものですから,もしご意見ないようでしたら先に進めたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは,次に「私的使用目的の複製の見直し」についてお願いいたします。
[2]「私的使用目的の複製の見直し」について
【黒沼著作権調査官】
53件の意見が寄せられておりまして意見が多いものですので,ポイントのみの紹介で失礼いたします。
まず,1-1で分科会において寄せられたご意見をご紹介させていただきます。分科会におきましてはネットワーク化の進展によりまして,個々人が権利侵害の主体にもなり得る状況になっていることもありまして,情報の送り手だけではなくて,受け手についても法律遵守の意識は浸透させるべきだというようなご指摘,それからプログラムについて被害が大きいということから検討すべきというようなご指摘をいただいております。
引き続きまして1-2の意見募集の結果についてのポイントをご紹介いたします。6ページでございますけれども,プログラムに限らず私的使用目的全体についてのご意見でございますが,慎重なご意見としまして幾つかご指摘が寄せられております。
最初のものはまさにそのままですが,慎重な検討を期待するということ。3番目では,30条の対象から外したところで問題の本質的な解決になるとは思えないというご指摘。それからその3つ下になりますけれども,損害補償をするのであれば補償金を徴収する方が効率的ではないかと,別の対応で考えるべきではないかというご指摘が幾つかきてございます。
その次の7ページにまいりまして,利用者保護に関するご指摘でございます。こちらについては最初のご意見で,複製の時点で悪意である利用者の行為に限って範囲外とするということ,あるいは特に未成年者に関しては適切な保護と指導を行うことについて配慮すべきだというご指摘がきております。
また,(ⅱ)の3番目ですが,どのような著作物の利用形態が違法と言えるのか判断基準を明らかにすることが重要だというご指摘もきております。
それから[2]番は見直しに肯定的なご意見でして,こちらも寄せられてございます。これはおおむね報告書と同じような方向性で寄せられている意見がほとんどでございます。
その次のページでございますが,プログラムの部分についてご紹介をいたします。8ページの[1]の(ⅰ)ですけれども,プログラム著作物の見直しを対象とすることに積極的なご意見でございます。1番目としまして,違法複製物がネットワークを通じて流通している事実は,録音録画と同様であるというようなご指摘。それから2番目はプログラムについてもユーザーによる適法・違法の判断は容易であること等々の理由から,プログラムも範囲に加えるべきだというご指摘がきてございます。それから一つ飛ばしましてその次でございますが,違法複製物から悪影響を受けているのはコンピュータプログラムも事実である。多種の著作物に差異を設けずに見直しをすべきだというご意見でございます。
(ⅱ)は慎重な立場からのご意見でございますが,次のページにまたがっておりますけれども,2番目の○でございますが,権利者と利用者の関係について詳細な実態調査あるいは除外した場合に想定される問題についてさらなる検討を進めるべきというご指摘でございます。なお,中期的には著作物全般について検討することが必要というご指摘も合わせてされております。
また,中間まとめの「経済的被害の状況について」の分析の部分について,幾つかご指摘がございます。中間まとめには一定の被害が見てとれるというまとめにしてございますけれども,それと同様に損失は膨大であるというご意見がきておりますが,3番目はさらなる包括的な調査が必要というようなご指摘,あるいは4番目は,ファイル名から内容を判断していて,流通の実態を正しく把握しているものではないのではないかというご指摘もきてございます。
次の10ページでございます。プログラムについての利用者保護についてのご指摘でございます。プログラムの場合にはダウンロードできる手法が限られているので適法・違法配信の峻別は容易だという一番目のご指摘がございます。また,2番目でございますが,こちらはビジネスソフトの場合ですが,シリアル番号等が発行されないなどから違法・適法配信の識別は極めて容易だというご指摘がきております。一方で,その10ページの下から2番目の〇ですけれども,適法な配信事業というものの環境がまだ確立されていないのではないかというご指摘も一方でされてございます。
その次のウの「見直しを行うとした場合の論点」のところでございますけれども,こちらはプログラムに限らず私的複製全体に関しての問題ですけれども,複製が生じないストリーミングあるいは一時的に行われる疑似ストリーミング,あるいは複製が生じるダウンロードを明確に区別して取り扱いを考えるべきだというご指摘でございます。
また,11ページの3番目の〇ですけれども,啓蒙活動などが必要,あるいは謙抑的な権利行使の工夫などが必要というご指摘もいただいております。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの項目について何かご意見があればお願いいたします。
よろしいでしょうか。
ご意見がないようですので,続きまして「リバース・エンジニアリングに係る法的課題」についての意見につきまして事務局から説明をお願いいたします。
[3]「リバース・エンジニアリングに係る法的課題」について
【黒沼著作権調査官】
それではまた資料1-1,分科会における意見の方からご紹介をいたします。リバース・エンジニアリングにつきましては1ページの一番下のところですけれども,まず「早急に権利制限を法制化する必要がある」という観点からご指摘がございまして,特に2ページ目の上の方では中味に関しましてはライセンス契約の中でリバース・エンジニアリングを禁止する条項がある場合の取り扱いについて強行法規性を認めるかどうかを含めて検討すべきというご指摘がございました。なお,こちらのご意見につきましてはその場で会長から法制問題小委員会の中で検討すべきというご指摘をいただきまして,実際にはこの意見を取り入れた上で中間まとめをパブリックコメントにかけている状況になってございます。
パブリックコメントの結果の方をご紹介いたします。1-2の12ページの方でございますが,総論としましては,範囲を限定的にするように適切な条件をするべきというご指摘がきてございます。それから各論に入りまして権利制限の対象とすべき目的のところでございます。一定の目的に限って権利制限を許容するという意見は,おおむねその方向を指示する意見がきてございます。1つ目の意見としましては,相互運用性の確保あるいは障害や脆弱性の発見,この目的というのは双方とも合理的で支持をするというご意見ございます。また,2番目の相互運用性の確保についての贊成のご意見でございます。3番目はいろいろ目的されていますが,最終的な結論としては下から2行目のECディレクティブ等に規定する範囲を超えるべきではないというご指摘でございます。
一方で13ページの方は,目的を限定せずに権利制限を認めるべきだという意見も寄せられてございます。1つ目,2つ目いずれも目的を限定すべきではないというご意見ですが,特に3つ目としましては,個別に事案に応じて利益衡量を行った上で司法判断がなされるように,一定レベルでの一般規定の導入についても併せて検討を行うべきという形で目的限定の流れにこういった考え方もあるというご意見がきてございます。
さらに各論でございますが,相互運用性関係についてのご意見では,競合プログラムの扱いについて幾つかご指摘がきてございます。2番目の○ですけれども,これは競合プログラムの扱いについて言及すべきではないという観点からのご意見ですが,3行目で「競合」という概念がどのような状態を念頭におかれているかが不分明であると,そのような概念をつくることに反対というご指摘でございます。一方でその下の○は,競合プログラム開発の目的が含まれる場合にはインテセンティブを害すると,認めるべきではないというご指摘でございます。
その次の14ページにまいりまして[3]番,障害あるいは脆弱性の関係の意見でございます。積極的な立場からの意見ですが,これも脆弱性のものも含めるべきだという意見が3点きてございます。それから慎重な方の意見としましては,脆弱性の発見などのためにソースコードを解析することは非効率で効果がないというご指摘と,あるいは相互運用性と同じような条件をつけるべきだというご指摘でございます。
それから16ページの上の方でいきますと,こちらは中国が設けようとしている「強制認証制度」との関係で,日本企業はこれに懸念を示しているということの手前,「セキュリティ対策」が拡張解釈されるようなことがないように留意すべきということが指摘されております。また,脆弱性に関してはウイルス作成目的などとの区別をどうするのかという論点がございましたが,これは被害を与える意図を持ってやることは認められないことを明記すべきというような意見が1件きてございます。
それから[4]番でございますが,著作権侵害等の発見目的についてはどうかということですが,1つ目の意見は否定的なご意見でございまして,侵害調査を行うためのものというのが口実として使われる可能性があるということのご指摘がきております。その下のご意見は逆でございまして,広く範囲をとらえるべきだというご意見ですが,侵害調査については原告側だけではなくて,防御側から行う調査も含めるべきというようなご指摘でございます。
[5]番はその他のプログラム開発のための解析でございますけれども,1つ目のご意見はその他のプログラム開発については認めるべきではないというご指摘でございます。一つ飛ばしまして3つ目の点は,社会,産業の発展と権利者の保護のバランスを図ることが重要ということで,権利者の利益を不当に害しない合理的な範囲内で考えるべきだというご指摘でございます。
それからちょっと飛ばしまして17ページのエのところにまいります。「権利制限の対象すべき主体」ということですが,こちらについては委託を受けて作業を実施する場合というものもあるということで,これが入ることを明記すべきというご指摘でございます。
その次のオの「必要な情報が権利者によって開示されている場合の取り扱い」については,中間まとめと同じ方向の意見がきているだけでございます。
それからカの「リバース・エンジニアリングにより取得した情報及び作成した複製物の取扱い」ですけれども,おおむねこれの第三者提供の目的外使用を禁ずる規定を整備することについて贊成のご意見がきてございます。
18ページにまいりますと,さらに加えて条件をかけるべきだというご意見がきておりまして,一番上の○でございますが,実質的に類似するソフトウェアの開発,製作,商品化を明確に制限するということも条件とすべきだと言われてございます。それから3番目の○では,脆弱性あるいは障害の発見の関係でございますけれども,修正プログラムを作成して一般提供することについては権利者に不利益を生ずる場合があるというご指摘がきております。
また,キの契約条項はリバース・エンジニアリングを禁止する契約条項との関係についての意見ですが,これは強行法規とすべきという意見と任意規定とすべきという意見が両方きてございます。以上のような状況になっております。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,この項目につきまして何かご意見ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは,先に進みたいと思います。引き続きまして,「研究開発における情報利用の円滑化」についての意見について,事務局より報告をお願いいたします。
[4]「研究開発における情報利用の円滑化」について
【黒沼著作権調査官】
それでは,研究開発につきましてもまた資料1-1の分科会のご意見からご紹介をさせていただきます。2ページの4のところになりますけれども,研究開発の関係では,特定の分野の研究について権利制限を認め,その他の分野については認めないというような取り扱いは妥当なのかというご指摘がきてございます。
それから意見募集の方に寄せられたご意見でございますが,1-2の20ページからでございます。総論としましては権利制限そのものの必要性について疑問を呈する意見がきてございます。必要性及び価値について証明されるまでは,前向きな検討をすべきではないというご指摘でございます。
各論でございますが,イの権利制限を認めるべき研究開発の範囲ということでございまして,[1]番の情報解析分野の研究開発につきまして,まず,肯定的な意見が幾つか[1]のところできてございます。[2]番の最初は否定的な観点がございますけれども,著作物が本来目的とする利用者によって複製される場合は権利制限をすべきではない。より広い範囲で権利制限をするとしてもこういうものは対象外にすべきだというご意見でございます。2番目のご意見は,情報解析分野以外の分野について必要に応じて個別に検討して立法をするということで,検討を続けるとなると時間を要して時機を逸することになるということから,「日本版フェアユース」を受け皿にすることについて引き続き検討すべきだというご指摘でございます。
21ページの一番上の○のご意見は,情報解析あるいは技術開発の際の情報利用だけでなく,広く教育研究活動全般の観点から検討をすべきだというご指摘でございます。その次の次もそうでございます。特に大学などを念頭におきまして,大学,図書館で学術情報をチェックする際に全文コピーできるような規定が望まれるというご指摘でございます。その次の○は,番組の演出効果のための映像処理技術の開発だけではなくて,録画機器の開発などの際に使うものについても,これを区別する合理性がないということで,後者についても権利制限をすべきだというようなご指摘がきております。
飛ばしまして22ページでございます。権利制限を行う場合の要件についてのご指摘でございますが,営利,非営利の論点でございます。非営利目的に限定すべきではないという意見もきてございますが,(ⅱ)のところは研究との関連が単なる口実となるような行為を防止するように条件をするべきだということで,その際には営利目的のためかどうかということも検討すべきというご指摘がございました。
[2]番の対象となる著作物の範囲として研究用の素材が有償で提供されている場合の取り扱いにつきまして,まず研究者に購入してもらうことを想定しているものについては対象外とすべきというご意見がございました。一方で23ページの一番上の○ですが,こちらは有償で提供されているかどうかということにかかわらず,今回の権利制限の目的での著作物の利用は,著作物の表現そのものを利用するものではなく,著作物利用の実質を備えていないという場合に着目するのであれば,有償で提供されている場合であっても権利者の利益を害するとは言えないのではないかというご指摘がきております。
[3]のその他ですが,こちらはインターネットのページを収集して行うような研究の場合に,検索エンジンと同じような条件をかけるべきではないかという記述にしていたことに対するご意見ですけれども,研究開発の場面と検索エンジンを実際に行う場面とを同列に論じることはできないのではないかというご指摘でございます。また,エのところでは,フェアユース規定との関係ということで,一般規定の整備についても引き続き検討を行うべきというご指摘がございます。また,オのその他としまして,コンテンツの利用規約中に権利保護規定がある場合ということで,こちらについても契約との関係について論点となるべきではないかというご指摘がきております。
こちらについては以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの項目につきましてご意見ございましたらちょうだいしたいと思います。
それでは進めてよろしいでしょうか。
引き続きまして,「機器利用時における一時的蓄積の取扱い」についての意見について事務局から報告をお願いいたします。
[5]「機器利用時における一時的蓄積の取扱い」について
【黒沼著作権調査官】
それでは,機器利用時の一時的蓄積でございますが,分科会においては特にご指摘ございませんでしたので,1-2の方でご説明をさせていただきます。
総論につきましては中間まとめの方向性を支持するようなご指摘がきてございます。ただ,手法については権利制限ではなくて複製から除外すべきというご指摘もございました。
イの権利制限の対象範囲,それから要件につきましては,1番目としまして,将来の技術の進展に対応ができるようにある程度柔軟な規定振りとすべきだというご指摘でございます。同じように2番目も要件を追加することはやめるべきだというご意見でございます。それから下から2つ目のご意見ですけれども,こちらは適法な複製物を利用する過程で生ずるものだけに限定をすべきだというご指摘でございます。一番下はコンピュータソフトウェアの場合のサースのような利用形態に鑑みて,権利者の利益を不当に害しない範囲を考慮すべきだというご指摘もいただいております。
26ページでございますが,これも新しい技術が登場した場合についてのご指摘ですけれども,そういったときに対応して「日本版フェアユース」について検討をすべきだというご指摘がきてございます。
こちらについては以上でございます。
【中山主査】
それでは,この項目につきましてのご意見をちょうだいしたいと思います。何かございましたらお願いいたします。
それでは,引き続きまして「通信を巡る蓄積等の行為に関する法制上の論点」についての意見につきまして,事務局から報告をお願いいたします。
[6]「通信を巡る蓄積等の行為に関する法制上の論点」について
【黒沼著作権調査官】
通信関係の蓄積でございますが,こちらも分科会では特にご指摘をいただいておりませんので,1-2に基づきましてご報告をさせていただきます。
総論でございますが,中間まとめの方向性に贊成のご意見が1つきております。ただ,2番目のご指摘はそれとは逆でございまして,要件設定についてまだ不明確な部分が多いのではないかというご指摘。それから,米国著作権法512条のような責任制限で考えるべきではないかというご指摘がございました。
それからイの対象範囲・要件のところでございますが,[1]の総論としまして,権利を及ぼさない対象を列挙する方法ということについては弊害があるのではないかと,将来の技術開発の障害にならないように配慮すべきというご指摘でございます。それから[2]番のところにいきましてP2P型の通信の取り扱いについて幾つかご指摘がきております。1番目はファイル共有ソフトのようなものについては権利を及ぼさない対象から除外すべき,引き続き権利を及ぼすべきというご指摘でございます。一方でその下でございますが,P2P通信技術については,これ自体は中立的な技術であるということからこれのみを検討対象外とすることは妥当性を欠くということでございます。
その次の28ページの○はその間のようなご指摘でございますけれども,商業P2Pのそういうソフトについては管理サーバから問題のある著作物を削除すれば,それ以降の流出を制限できるというような機能もあると。フリーのファイル交換ソフトを想定したようなものと別に考えるべきというご指摘でございます。また,その次の○につきましては,単なるキャッシュに過ぎないデータの中身につきまして,違法かどうかということを知る術がないということから単にP2Pソフトを利用しているというだけで違法とされる可能性があるのではないかというご指摘がきております。
次の[3]番,違法複製物の取り扱いでございますが,違法複製物という事実を知っていた場合ということに限って,または知ることができる場合に限って対応するというような形でプロパイダ責任制限法と整合性を確保するということについて贊成ということですが,ただし,通信の秘密の保護などとの調整を図る必要があるというご指摘でございます。それから2番目は,違法複製物の探査義務が生ずることのないようにすべきというご指摘でございます。その次のご意見は,通信過程における蓄積について違法性を問うような制度にした場合のご意見ですが,29ページの○にもつながっていくのですが,仮にそういうものを違法化するとしても通信課程の蓄積物を回収することは困難なので,有効性のある方策であるかは疑問というご指摘をいただいております。
こちらにつきましては以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの項目につきましてご意見ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
それではご意見もないようですので,次に「その他の検討事項」についての意見につきまして,事務局より説明をお願いいたします。
[7]「その他の検討事項」について
【黒沼著作権調査官】
それではその他の検討項目につきまして寄せられたご意見をご紹介いたします。
まず,1-2の30ページの方からご紹介をさせていただきます。「通信・放送の在り方の変化への対応」というところへのご意見でございますが,1つ目のご意見は,時宜を逃さずに検討をすべきだというようなご指摘でございます。それから2つ目の○につきましては,こちらは放送の同時再送信に限っては報酬請求権を行使するべき団体を指定すべきだと,その団体を通じてのみ権利行使ができるようにすべきだというご指摘がきております。それから3番目のご指摘については,通信・放送の区分につきまして視聴の同時性が重視されて一方的に放映されるものは,もうすべて「放送」という観念でとらえるべきではないかというご指摘でございました。
その次は権利制限の一般条項,いわゆる「日本版フェアユース」についてのご意見でございます。こちらは著作権分科会でもご指摘が寄せられておりますので,1-1の方をごらんいただければと思います。
1-1の2ページでございますが,6のところの一番目のご意見でございます。個別に権利制限規定を設けるかどうかを検討するというのは現状に合わなくなってきているので,広く一般的にフェアユースのような考え方について議論すべき時期にきているのではないかというご指摘がございました。それに対しましてその次の○では,何がフェアであるのかということが日本ではまだ固まってきていないのではないかという問題意識から過去の積み重ねがないところにいきなりフェアユースを導入すると混乱が生じるのではないかといったご指摘がきております。
その次のページになりますが,3ページの一番上の○のところですが,これについては個々のケースに応じて裁判で決めるということで,初めから何がフェアであるのかということをはっきりさせるのは難しい。そういうことをそもそも意図した規定ではないのかというご指摘でございました。また,その次の○では,積み重ねがないということではあるが,アメリカでも最初から判例の積み重ねがあったわけでないというご指摘がきております。
それから下から2番目のご意見をご紹介いたしますと,フェアユース規定を導入するということについては,解決を裁判に委ねるということですので国民の法意識全般に影響を及ぼす可能性があるというご指摘がございます。また,フェアユースを口実にしてアンフェアなビジネスが行われる危険性について注意をしなければいけないというご指摘でございます。それを踏まえまして,フェアユースを導入するに当たっては司法制度,国民意識,それからアンフェアであると判断された場合のペナルティまで含めて考察をしないと機能しないのではないかというご指摘がございました。
次の4ページにまいりまして一番上の○のところですが,フェアかどうかの判断を裁判に委ねるという軌範にはなるけれども,それ以外の権利制限を検討する際に,今回の中間まとめでも5つの権利制限について検討されていますが,そういった個別の権利制限規定について議論をする際には何がフェアなのかというような判断基準をはっきりさせるようにして検討を行っ
ていくべきだというご指摘がきております。
以上が分科会でのご指摘でございました。
続きまして,1-2に戻っていただきまして30ページでございますが,意見募集で寄せられたご意見ですけれども,まず,イの[1]のところでございます。「導入を積極的に検討すべきという意見」でございまして,これが幾つかきてございます。積極的に検討すべきという理由としましては一番上の○のところは,社会の進展や技術革新のスピードに対応する必要があるという観点から積極的にという意見でございます。2番目のご意見は,中央省庁などでの会議では合意形成なしには意思決定ができない構図になっているから検討すべきだというご指摘でございまして,などなどございます。
一方で31ページの[2]のところは「慎重に検討すべき」というご指摘でございまして,そういう意見も幾つか寄せられております。(ⅰ)の最初の○は,「公正な利用」という指標がともすれば利用促進という方向に偏って解釈をされてしまうのではないかというような危惧が示されております。また(ⅱ)のところでは「必要性の検討に当たって留意すべき論点」というところで一番目の○は諸外国の法的,社会的環境との違い,あるいは導入のもたらす効果の実例に即して検証をして,それを踏まえた上で慎重に議論すべきだというご指摘がきております。また,条約との関係についてのご指摘でございますが,スリーステップテストの要件の充足などについて慎重に検討をすべきという指摘でございます。
次に32ページでございますが,上から2番目の○をご紹介いたしますと,フェアユースについて柔軟性という利点もあるが,予見可能性が低くなるという欠点も指摘がされております。判例の積み重ねがない状況で日本に導入すると不確実性が増して,権利者,利用者双方にとってよくないのではないかというご指摘でございました。また,その次のご指摘は,事後的な司法判断に委ねるという制度であるので,そのような制度改革を行う際には懲罰賠償あるいは法定賠償のような損害賠償制度が必要だというご指摘でございます。などなどご指摘がきております。
また,33ページでございますが,仮に導入するとした場合の留意点としまして,ガイドラインの策定など拡大解釈を未然に防ぐ措置を併せて講じるべきだというご指摘がきております。また,33ページの上から3つ目の○については,個別の制限規定との関係性の整理も必要だというようなご指摘でございます。また,[4]番としましてはスリーステップテストの基準やフェアユースの基準に照らして現在の権利制限規定に妥当性を欠く規定があると,著作権法30条や38条が指摘されていますが,その規定の改正もすべきだというご指摘がきております。この項目については以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
ただいまの項目につきましてご意見があればちょうだいしたいと思います。何かございませんでしょうか。かなり予定より早く進行しておりますけれども,何かご意見ございましたら,よろしいでしょうか。
それでは,最後に平成20年度中間まとめではふれられていない項目やあるいは総論的な項目についての意見につきまして,事務局から報告をお願いいたします。
[8]総論的事項,その他
【黒沼著作権調査官】
それでは,その他の事項について寄せられたご意見をご紹介いたします。1-2の34ページをごらんいただければと思います。こちらはまず総論的な部分でございますけれども,権利制限規定の検討について全般的な意見として寄せられたものでございます。
1つ目でございますが,一般規定も含めて十分な検討が必要になることはもちろんであるが,新たに規定を整備することによって違法行為が想定外のものが適法にならないように慎重に範囲を吟味すべきだというようなご指摘でございます。
そのほかは19年度中間まとめに盛り込まれていた内容についてのご指摘でございますが,イの「障害者関係」でございます。こちらは障害者福祉関係につきまして,19年度中間まとめで示された結果につきましては一日も早く法改正をすべきだというご指摘でございます。
それから35ページの方は薬事の件に関する意見でございます。こちらについても速やかな審議,法制化を期待するという意見から,検討再開について要望を示すようなご指摘が幾つかきております。
それからエの「その他」というところでございますが,これは今まで検討していない事項に関するものと思われますが,エの1番目は技術的保護手段のうちアクセスコントロールに関する意見でございまして,アクセスコントロールを回避して行われる私的複製の取り扱いについて検討をすべきだというご指摘でございます。2番目も同様でございまして,視聴制限手段などとして用いられている暗号化技術,これについての著作権法上の位置づけを再考すべきだというご指摘でございます。
また,その他としまして,非親告罪化についてのご指摘,あるいはその次のページにまいりまして,図書館の権利制限の検討再開についてのご指摘。それから36ページの2番目は,間接侵害について意見等を急ぐべきと。そういったご指摘がきてございます。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
ただいまのその他の事項につきまして,ご意見ございましたらお願いいたします。
【清水委員】
フェアユースのところの関係で非常にご意見がたくさん出て,裁判所にどう委ねるかという指摘があるので,立場上おうかがいしておきたいのですが,すぐに裁判所に持ち込まないでADRなどをもっと利用すべきだとか,ワンクッション入れるといいますか,そういうようなご意見はなかったのでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
寄せられた意見の中ではあらかじめ民民でガイドラインのようなものを策定しておくとか,そういった事前の調整をすべきだという趣旨だと思われるご意見は幾つかございましたけれども,ADRとかはっきりそこまで書いてあるものは余りなかったというように思います。
【清水委員】
どうもありがとうございました。
【中山主査】
ほかに何かございましたら・・・どうぞ,松田委員。
【松田委員】
たくさん審議がありましたので,薬事の審議についてどういう結論だったか,どういう段階までいっていたかということについて事務局にお聞きしたいのですが,かなり審議をしましたので,これはもう報告書にしたら立法段階に入るつもりでいたのですけれども,なおかつ,まだ35ページでこういう意見が出るということは文化庁の段取りとしてはどういうふうになるのでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
薬事の件につきましては,机上配付の資料の中に昨年1月の「平成19年度法制問題小委員会審議の結果について」の3ページ付近で薬事関係のことを記載してございます。中間まとめでは一定の条件のもとに権利制限をすることが適当だということにしていたわけでございますけれども,意見募集の中では権利者側あるいは利用者側双方から否定的な意見が寄せられたと記憶をしておりまして,権利者側から指摘された問題点としては権利制限の正当性の有無あるいは大きな論点としては国際条約との関係の整備がまだできていないのではないかというご指摘がございましたし,利用者側の方からも使用料の関係で通常の使用料相当額というような部分について考え直すべきだというようなご指摘が,今年も寄せられておりますけれども,きていたかと思います。そういったこともありまして基本的部分について見解が大きく分かれているという状況が昨年度末の段階ではあったかと思います。ですので,また条約との関係などについて実態との照らし合わせをしまして,ここについては精査を行っていくという状況で昨年度は終わっておりました。
それにつきまして現在は,団体の方とちょこちょこと話し合いを続けておりまして,実態の精査なり今後の段取りなりの調整を事務局の方で行っているような状況でございます。
【松田委員】
何か審議をしてずいぶんたって,この審議会の審議は終わっていてなかなか立法段階に移らないというのは何か工夫が必要ではないかなというふうに思っておりますけれども。
【中山主査】
この交渉はかなり進展しているわけですか。
【黒沼著作権調査官】
1つは権利制限ではない部分の契約交渉の方については,大分進展がみられているという話はうかがっております。権利制限自体については根本的な対立点というものの解消ができている状況にはないとは思っておりますが,徐々に徐々に審議会以外の場ではご相談は受けている状況でございます。また,昨年の意見募集では海外からのご意見も多かったというのも特色のひとつではございましたけれども,そういったところも含めて様子をみているという状況はひとつございます。
【中山主査】
ただ,当事者の話し合いだけではなかなか決着がつかないで,いつまでも膠着状態になるのではないかというのが,松田委員のご懸念ではないかと思うのですけれども,公益上必要なものならば早くやる必要があるし,少なくとも部分的には権利制限すべきだという話で大体審議会はまとまっているはずなので,そこら辺は事務局の方でも鋭意お願いいたします。
ほかに何かございましたら・・・よろしいでしょうか。
それでは,次の議題に移りたいと思います。まずは「私的録音録画小委員会報告書」につきまして,事務局より説明をお願いいたします。

(2)私的使用目的の複製の見直しについて

【川瀬著作物流通推進室長】
それでは,お手元の資料2をごらんいただけますでしょうか。私的録音録画小委員会は,ここにもございますように今期は12月26日に報告書をとりまとめております。なお,分科会のご了承はまだ得られておりませんので,この資料は「案」という形になっております。あらかじめご了解ください。
まず,1ページをめくっていただきまして,「はじめに」でございますけれども,私的録音録画問題につきましては,18年1月の文化審議会著作権分科会報告書におきまして抜本的な見直しが提言され,同年4月から私的録音録画小委員会で審議を行い,19年10月に中間整理をまとめたわけでございます。その後,意見募集も経まして,さらに審議を重ねて関係者の合意の形成を目指したわけですが,2ページを開いていただけますでしょうか。その一番上のところですけれども,12月16日までの議論におきまして補償金制度の見直しにつきましては一定の方向性を得ることができなかったということで,小委員会の中心課題でありました補償金制度につきましては,これまでの検討の経過を明らかにして今後の更なる検討の一助とするということになったわけでございます。
ただ,著作権法30条の適用範囲の見直しにつきましては中間整理におきましては「違法録音録画物,違法配信からの私的録音録画」及び「適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画」につきましては制度改正の方向性が大勢ということで示されたわけでございますけれども,意見募集の結果も考慮しつつ,引き続き検討を行いました。その結果,30条の適用の範囲については一定の方向性が得られたということでございまして,この結果を法制問題小委員会において参照されると考えているところでございます。
そこで第1章は「私的録音録画補償金制度の見直し」でございまして,実はいろいろと書いておりますけれども,これは中間整理以降,中間整理の内容を踏まえまして事務局が関係者の合意を目指すために事務局の提案1,事務局の提案2,事務局の提案3というものを提示しながら合意形成を目指したわけでございますけれども,結果としては関係者の意見の隔たりが大きくてまとまらなかったという経緯を実はずっと書いているわけでございます。
29ページを開いていただけますでしょうか,30条の見直しの問題でございます。違法録音録画物,違法配信からの私的録音録画の問題につきましては,これは中間整理においてもその制度改正の方向が大勢であったわけでございます。ただ,意見募集で多数の意見が寄せられ,そのうちの約7割が本件に関する意見であったということでございます。その多くは利用者保護の点に関する不安とか懸念であったわけでございまして,それを踏まえて再度集中的に検討をした,その経緯がこの第1節に書いているわけでございます。制度改正の必要性につきましては,参考資料1にもございますように関係団体からの調査結果,これに基づいて委員会の方で試算した結果等から違法配信から私的録音録画は通常の著作物の流通市場に匹敵する,また上回る規模に達しているということが読み取れるわけでございます。
また,ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画につきましては,違法にアップロードしている人や送信をしている人を特定することが困難な場合があるということで,ダウンロードについても一定の対応の必要があるというようなことから,その実態が通常の利用を妨げている,またベルヌ条約等のスリーステップテストの趣旨,それから先進諸国の法改正や判例の動向から中間整理で示された条件を前提にしまして,30条の適用を除外する方向で対応することが必要であるという意見が再度の集中討議の結果の大勢でございました。
1枚めくっていただきまして30ページでございますけれども,先ほど言いましたように特に意見募集で寄せられました利用者の利用者保護に対する不安・懸念についての記述が2でございまして,これにつきましては政府とか権利者による法改正内容等の周知徹底,それから権利者による許諾された正規コンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供や警告・執行方法の手順に関する周知,相談窓口の設置などです。それから権利者による「識別マーク」の推進等をさらに追加的に求めているということでございます。
31ページを見ていただきますと,第2節として「適法配信事業者から入手した著作物等の録音録画物からの私的録音録画」でございまして,これにつきましは30条の中間報告でも制度改正の方向性というのが大勢であったわけですけれども,これを否定する意見はございませんでした。ただし,私的録音録画の将来像や補償金制度の見直しに関する合意がないままに本件のみを先行するのには問題があるという意見がございました。
32ページを開いていただけますでしょうか,これが本小委員会の今後の進め方ですが,先ほど言いましたように補償金制度の見直しにつきましては残念ながら関係者の合意が得られなかったわけでございます。ただ,この委員会の議論の中で論点等についてはある程度整理され,またその意見の隔たりがある部分についても明らかになってきたわけでございます。したがいまして,真ん中辺の「先述したように」以下ですけれども,3年にわたります小委員会の議論を通じまして,ある程度意見が整理されたわけでございまして,小委員会としての議論は今期で終了することが適当であるということでございます。ただ,課題の緊急性というのは,なお存在しているわけでございますけれども,著作権分科会における検討は重要であることは言うまでもございませんけれども,同分科会の枠組みを離れまして,例えば権利者,メーカー,消費者などの関係者が忌憚のない意見交換ができる場を文化庁が設けるなど,関係者の合意形成を目指すことが必要というふうに結論をつけております。
「一方」以下が30条の範囲の見直しでございまして,これにつきましては先ほどご説明しましたように,意見募集を踏まえた集中審議の中で違法録音録画物,違法配信からの録音録画につきましては,利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに贊成する意見が大勢であったところから,文化庁は所要の措置を講じる必要があるというふうに結論づけております。なお,その他の録音録画につきましては,これは補償金制度との関連もございますので,補償金制度に関する見直しの議論の今後の動向を踏まえた上で,さらに検討するべき課題ということで,文化庁として所要の処置を講じるという結論になったのは違法録音録画物,違法配信からの録音録画ということでございます。
以上でございます。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの川瀬室長の説明を踏まえまして私的使用目的の複製の見直しについて,ご質問あるいはご意見があればちょうだいしたいと思います。何かございますでしょうか。
【松田委員】
この問題はかなり長い間議論いたしました。そして昨年最終報告になる意見がまとまりました。多分これはもう主査のすごいご尽力があって,この審議会外でいろんなご相談ごとがあったのではないかなというふうに思いました。さらにそのあと,役所といいますか大臣間でも話があったというようなこともあり,一定の方向性が出たなというふうに一委員としては見ていたところ,再度委員会が開かれる状況になって全くほとんど最初の議論,振り出しに戻ってまた議論をしなければならない状況がありました。
それはどういうことかというと,一方の当事者が途中まで形成されてきたものを合意できないということで戻ったわけであります。もちろん,審議会が多数決で事を決めていいというふうに私は必ずしも思いませんけれども,意思形成が完全にできるまでは立法の段階の意見も出せないというのでは,なかなか事が進まない。特に著作権というのはそういう性質のものですから,これについては一委員としては大変残念に思いますし,何らかの形で委員としてはそういう状況のときに一定の方向性を示唆するような報告書に最終的にまとめて出すということも必要なのではないかというふうに思っているところであります。
【中山主査】
ありがとうございます。ほかに何かございましたら・・・村上委員どうぞ。
【村上委員】
今後の進め方について,基本的に違法録音録画物,違法配信からの録音録画については30条の見直しを行って,そこからはずしていくということが書いてあると思います。これは著作権分科会で了解が出ればもうそれで決まりという話なのか,ここで議題になっているということは法制小委員会でもう一度これについて同意し,それから立法化作業に移るというのか,どんな感じになるのでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
繰り返しになりますけれども,私的録音録画小委員会は録音録画,具体的にいいますと音楽や映像のいわゆる複製についての取り扱いについて検討したところでございまして,この法制問題小委員会については一般的に私的録音録画複製の見直しということでございます。したがいまして私的録音録画小委員会は,その録音録画という部分について検討し,録音録画に関しては所要の措置を講じるべきだという結論をちょうだいしたわけでございまして,特にこの法制問題小委員会ではコンピュータのプログラムの取り扱い等についてたしかまだ結論が出ていないと思っておりますけれども,そういう音楽や映像以外の著作物についての取り扱いをどうするのかということについて,ご審議をたまわればと思っております。
【中山主査】
他の小委員会のお話ですから一応ここで紹介をして,ご意見をうかがうということで,そちらの小委員会は小委員会で分科会の方に出すということになると思いますので・・・ほかに何かございましたらどうぞ。
【苗村委員】
今のお二人のご発言とちょっと関連しますが,32ページの「今後の進め方」の中の下から第二段落,第30条の範囲の見直しについて書いてありますが,その中で「違法録音録画物,違法配信からの録音録画について,利用者保護に配慮した上で著作権法改正を行うことに贊成する意見が大勢であった」と書いてあります。これは確かにこの小委員会の議論として事実であったと思いますし,報告書としては正しいと思うのですが,一方で今日ご説明のあった資料1-2の11ページですが,個人からの意見ではあるのですが,この私的録音録画小委員会の中間整理に対する意見募集,これは多分前の中間整理だと思いますが,非常に多くの違法化に反対する意見が出ているにもかかわらず云々という表現があります。この2つを単に公開されて一般の方が読んだときに何か非常に矛盾するように理解されると思いますので,私としては例えばこういう理解をしておきたいと思うのですが,それで正しいかどうかをちょっとお答えいただければと思います。
1つは,この32ページの「利用者保護に配慮した上で」という表現は非常に重い意味であって,その利用者保護に配慮する具体的な政策なり産業界としての対策なりが打たれなければこのあとの法改正も多分行われないであろうと。だからこの「上で」というのは常にどうにも解釈できる言葉ですから,委員会の中で配慮しました,結論はこうですと言っているわけではなくて,今後具体的に対処する必要があると,そのことが中間整理の中では明確でなかったので多数の反対意見があったというのが私のひとつの理解です。
それからもう1つは,多分この私的録音録画小委員会でもまたこの小委員会でも全く議論をしていなかったことかと思いますが,もともと私的録音録画小委員会は補償金制度をどうするかが主たる目的で議論をしたわけで,そのときに多分暗黙の了解として録音も録画もデジタルであるということを意識して議論したのだと思うのです。そこで仮にアナログの違法な録音物,録画物があったとして,それをアナログのテープなどに録音なり録画すること。それで私的に楽しむことまで違法としようとする意図があったかどうか,多分議論の中では意図がなかったのだろうと思うのですが,これは法制化されるときはそこも含めてご検討いただく方がいいと思いますし,私自身はアナログの録音録画物についてそれを積極的に今違法にするというメリットは余りないし,権利者もそれで大きな経済的損害を受けるとは思わないという意味で,これはデジタルの録音録画物に限った議論だったのだろうと,そうすると少なくともこの利用者サイドからの非常に厳しいご意見に対して幾らか対応できるのかなという感じがいたしました。
【中山主査】
ありがとうございました。何か事務局からありますか。
【川瀬著作物流通推進室長】
委員のご指摘の点の第1番目でございますけれども,描写方法といいますのは,まさしくおっしゃるとおりでございまして,私どもは出てきた意見について十分分析をさせていただきました。意見の数は多いのですけれども,ネット上のそういったテンプレートなどを利用した意見がございまして,そう意見のバリエーションといいますか多様な意見が出てきているわけではございません。そこでそういう意見を総合しますと結局,例えばいきなり法的措置を加えられるのではないかとか,利用者サイドの方,特にヘビーユーザーだと思いますけれども,そういった方が法律改正によって自分が不安定な地位に置かれるのではないかと,そういうご不安,ご懸念といいますか,そういうものがやはり大きかったのだろうということでございます。
それで中間整理の段階で十分その点は配慮しまして,例えば罰則の適用はしないとか,そういう事情を知っていた場合に限るとかということは十分広報していったつもりでございますけれども,そういうようなことも踏まえまして中間整理の利用者保護プラス広報活動の徹底や権利者側によってそういう権利執行の手順などを明示するとか,安心して利用できるサイトを広報するとかそういうものも加えまして,そういった不安定な地位に陥るのではないかということに対するお答えとしたわけでございます。
後者の点につきましては,仮に法律改正ということでございましたときには,十分配慮をさせていただきたいと思います。
【中山主査】
ほかに何かございますか。
この録音録画小委員会の主査の私が聞くのもおかしいのですけれども,委員会では確かに結論を得ることはできなかったわけですけれども,28ページにあるとおり文科省と経産省でブルーレイは政令指定するということになっていますけれども,これはもう政令指定はしたのですか。
【川瀬著作物流通推進室長】
まことに申しわけございませんけれども,まだ協議中でございまして,論点は絞られてきているのですけれども,なお最終合意には達していないということでございます。
【中山主査】
私もこの了承合意というのは新聞でしか知らないので具体的内容は見たことないのですけれども,かなり合意が難しい内容なのでしょうか,それとももうすぐ合意に達しそうな合意なのでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
私どもとしましては文化庁の立場で申し上げますと,合意できるというふうに思って作業を進めておりまして,そういうことでやっているつもりでございます。
【中山主査】
合意したということですが,まだ本格的な合意はしていないということですか。28ページに合意したと書いてありますが。
【川瀬著作物流通推進室長】
内輪話で申しわけないのですけれども,普通大臣間で合意するということは事務的に論点を積み上げまして,そこで調整を経た上で大臣合意というものができます。ただ,この件はダビングテンの実施を早急に実施しなければならないという,まず目標がございまして,とりあえず大臣間で合意をしてその後事務的に調整をしているということになっていますので,少しいわゆる内容の詰めがもともと甘かったわけでして,そこを今詰めていると,こういう段階でございます。
【中山主査】
ほかに何かございませんでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは,次の議題に移りたいと思います。次は「法定損害賠償制度」について,司法救済ワーキングチーム,大渕座長よりご報告をお願いいたします。

(3)「法定損害賠償制度」について

【大渕委員】
それではお手元にあります資料3に基づいて,この法定損害賠償に関する検討経過についてご報告いたします。
資料の「1.問題の所在」は省略いたしまして,3ページの「2.現行の司法救済制度及び裁判例の状況」もここに,「(1)制度」について,「(2)裁判例」について書かれているとおりでございますので,お読みいただくことにいたしまして,「3.検討結果」,6ページでございますが,「(1)立法措置の必要性」につきましてもここに書いてありますとおり,立法措置の必要性について検討をいたしました。時間の関係もありますのでお読みいただくことにいたしまして,なお,参考といたしまして,(2)で「仮に法定損害賠償制度を設けることとした場合の論点」についても[1],[2],[3]のように,前広に検討を加えました。
そういうことで以上を踏まえました上で8ページの(3)にあります「まとめ」でございますが,先ほどちょっと説明を省略いたしましたけれども,3.の(1)にありますとおり,「特にインターネット上での侵害については,損害の立証に一定の困難性が存在し,何らかの形で権利の救済が図られることが適当であることは考えられるものの」ということでありまして,現行法によってこれは先ほどご説明を省略いたしましたが,現行制度及びそのもとでの裁判例でございますが,現行法によってもなお対応が困難であるとするまでの実態が認められるには至らなかったということでございます。それを踏まえましていろいろ提案されております法定損害賠償制度における対応の必要性につきましては,法114条の5などの現行規定による対応の可能性と,それからもちろん民法その他の知的財産法との関係について今後の実態の推移,これもいろいろ可変的な要素がございますが,それを踏まえつつ検討を行うべきものと考えられるということでございます。
【中山主査】
ありがとうございました。ただいまのご説明につきましてご質問,あるいはご意見ございましたらお願いいたします。
とりあえず立法はしなくていいと,こういう結論ですね。
【大渕委員】
そうでございます。
【中山主査】
何かご意見ございましたら・・・村上委員どうぞ。
【村上委員】
結論はこのとおりで結構だと思いますが,基本的な意味で法定損害賠償というのは,日本の場合は一般的な民事の損害賠償金額を頭において,事前に規定しておくとかいうその発想のもとで制度設計を行ったという感じであって,それ以上のものは,アメリカの懲罰的な損害賠償みたいなものは日本の法制上は入らないということを前提にしてこれからも先も議論していくべき考え方であるという,そういう理解でよろしいですか。
【大渕委員】
この法定損害賠償ですが,幾つかご提案がありまして,その出発点になっておりますのは資料で申しますと,9ページ以下にございますアメリカの法定損害賠償制度のようなものが念頭におかれてご提案なされたのではないかと思いますけれども,この法定損害賠償制度自体をどういうふうにとらえていくかは,先ほど村上委員がご指摘の問題を含めて多様な論点がございますが,それを踏まえた上で結論的には「まとめ」で述べたとおりでありまして,対応の必要性について現行法を超えてどこまでやるかという点については,現状のもとでは立法に至るまでの必要性というのは認められないということですので,また今後そのあたりはいろいろ状況の変化の可能性がありますので,それを踏まえてはまた今後の検討課題ということでございます。その際には先ほど言われましたような,民法のもとにおける損害賠償制度との整合性等は当然踏まえなければいけないというのは,先ほどご説明したとおりであります。
【中山主査】
ワーキングチームでは懲罰対象等は議論しなかったわけですね。
【大渕委員】
このワーキングチームの中では懲罰賠償自体については対象にしておりません。この法定賠償自体の性格について懲罰賠償的なものであるのか,そうでないのかというところでいろいろと議論もあり得るところ,仮に前者のように解するとすれば間接的に関係してくるということになるのかもしれませんが,今回の検討は,あくまで法定賠償自体についてのものであります。
【村上委員】
結構だと思いますが,私はもう少しインプリケーションというか先々のことを考えて,日本ではそういう懲罰的損害賠償とか損害賠償とかかけ離れたものを入れるのはなかなか難しいというそこまで含みに持っている結論だったのか,そこまでは持っていないという話なのか,そこだけちょっと確認をさせてもらえたかったのでそのような質問になったわけです。
【大渕委員】
お答えが難しいのですけれども,我々が検討しておりますのはもちろん著作権法における法定損害賠償です。インプリケーションとして著作権法以外にも及び得るところかというお尋ねだと思いますが,この点に関しましては,さきほどご説明したとおり,今回の検討結果としては,今の著作権の現状としては現行法によってもなお対応が困難であるとするまでの実態が認められるには至らなかったということに尽きますので,そのようなものとしてご理解いただければと思います。
【中山主査】
ほかに何か・・・清水委員どうぞ。
【清水委員】
全くの感想になるのですが,114条を実際に使って損害を算定してみますと非常に判断がしにくいものです。何もわからないところで一挙に損害額は判断できないのである程度は書くのですが,ある程度書いてきちんと書ききれば本来その方法で算定するわけで,まず前提としてきちんと算定はできないということを述べて,そのあとで,じゃあ,わからないからといって一発で結論の額だけを出すわけにもいきませんので,ああだこうだと考えるわけですね。ですから条文としてはいいのですが,実際にこれに基づく損害額を算定しようとすると,実は合理的に見えないわかりにくい判決を示さなければならない場合が多いというのが感想ですけれども,一言お伝えしておきます。
【中山主査】
知的財産にもそういう問題はよくあります。職務発明の使用者の寄与度などは,エイヤッと何の理由もなく書いておりますね,9割とか8割とか,7割,3割とか,あれに比べればこちらの方がまだ楽なのではないかという気はするのですけれども,やはり難しいでしょうか。これはエイヤッとやるところに意味がある条文ではないかと思うのですけれども。
【清水委員】
財産的損害はもう少しきちんと算定できるというのが通常の判決の考え方です。これが慰謝料であれば私どもエイヤッとやりやすいのですが,財産的損害というのはもう少しきちんとやるものだという長年の伝統的な考えがあります。職務発明については確かに大分思い切ってやっているじゃないかと,これはご指摘のとおりではあるのですが,その辺は事例の積み重ねなく急に法律が脚光を浴びた場合のことであり,前例の積み重ねや個別規定等を設けずに裁判所にすべての判断が丸投げされた場合というのは,その後そこから一歩一歩少しずつ考え方をつくっていくしかありません。職務発明の判決についてはそのような印象を持っています。それを参考にしてフェアユースの規定の設置の方法も考えていただくとありがたいなと思っています。
【中山主査】
ありがとうございます。ほかに何かございましたら・・・よろしいでしょうか。
それでは,次の議題に移りたいと思います。昨日,知的財産戦略本部におきまして,デジタル・ネット時代における知的財産制度専門調査会報告書が報告されております。実は私が報告したのですけれども,その内容と合わせて文化庁における検討状況についてご説明をお願いしたいと思います。
本日は,知財戦略本部事務局の大路参事官にお越しをいただいておりますので,まず,大路参事官から,その後事務局から説明をお願いいたします。

(4)その他

[1]知的財産戦略本部における検討状況及び「著作権制度における権利制限規定に関する調査研究」について
【大路参事官】
ご紹介いただきました知的財産戦略推進事務局参事官の大路でございます。先ほど中山主査の方からお話がございましたとおり,昨日,知的財産戦略本部におきましてデジタル・ネット時代における知的財産制度専門調査会の報告につきまして,中山主査の方から報告をいただいたということでございます。その報告の概要について私の方から説明をさせていただきたいと思います。資料でございますけれども,参考資料と書きました横長の資料,これは概要版でございますけれども,こちらに基づきましてご説明させていただきたいと思います。併せまして机上の配付といたしまして報告書本体,11月27日にいうふうに書いた資料でございますけれども,変更して書いておりますので併せて参照いただければと思います。
この専門調査会でございますけれども,実は6月19日に開催されました第4回の小委員会におきまして私から報告をさせていただいたところでございますけれども,デジタル・ネット社会における知財制度に関する課題について検討するということで,本年3月の知的財産本部会合におきまして決定をされたものでございます。4月に第1回の会合を開催いたしまして,5月に末に早急に対応すべき課題ということで検索サービスの適法化という4つの課題についての提言を検討経過報告という形で中間的にとりまとめをいただきまして,これを知的財産推進計画2008に反映させたということでございます。
今回の報告でございますけれども,その検討結果報告をとりまとめた際に今後検討すべき課題として提示をされておりまして3つの課題について,検討を引き続き行っていただいた上で結論をとりまとめていただいたというものでございます。資料の1ページですが,まず,検討に当たっての問題意識でございます。情報通信技術の発展によりまして双方向型の大量の情報流通と劣化しない複製を可能とし,誰もが容易に情報にアクセスできる環境が生み出されているわけでございます。これらの中で現行の著作権法がデジタル・ネット社会の特性を踏まえたものになっているかどうかというふうな観点から検討事項としてお示しをした3つの事項について検討を行ったわけでございます。
2ページをお開きいただきたいと思います。まず,第1点,コンテンツの流通促進に関する方策でございます。デジタル化,ネットワーク化の進展によりましてコンテンツの流通形態には従来にないような新しいものが登場してきているわけでございます。音楽など一部のものについてはネット上の流通が進んでおりますが,特に放送,映画等の動画コンテンツの流通というものは必ずしも十分進んでいないといわれております。調査会におきましては流通が進まない原因のひとつとして指摘をされております権利処理コストの低減方策について検討をいただいたところでございます。ここに書いてありますとおり各分野の状況を見ますと,音楽・映画については権利の集約化が図られているということでございますけれども,放送番組については製作の段階で放送の契約しか行われていないというような状況があって,PC利用の際に改めて許諾を得るというふうなことが日常になっているという現状でございます。
ページをめくっていただきまして3ページでございます。こうした現状を踏まえた検討結果でございますけれども,報告におきましては2点の提言をいただいております。まず,第一点でございますけれども,契約により権利処理が円滑に進むような取り組みを促進するということでございます。具体的には権利の集中管理,それから契約ルールの策定,それからその他の利用を含めた契約の促進,こうした取り組み通じまして権利処理を円滑に行えるような体制を整備していく必要があるという考え方であります。もう1つは,契約促進による権利処理の進捗状況等を踏まえ,多角的な観点から適宜法的対応の検討をすることが必要ということでございます。どのような法的対応かということについては規定はいたしておりませんけれども,この枠外でヒアリングで出された法的対応案として書かれておりますとおり,そうした法的対応について列挙しているところでございます。
続きまして4ページ,2点目の検討事項でございますけれども,権利制限の一般規定についてでございます。近年のデジタル技術や情報通信技術の発展を背景に,従来想定されなかったコンテンツの利用形態が出現するわけでございます。一方,現行著作権法においては個別具体の事例に沿って権利制限の規定を定めているということになってございます。したがって,新しい技術やビジネスモデルに必ずしも柔軟に対応できていないのではないかというふうな指摘がございます。
5ページをめくっていただきまして,こうした状況を踏まえてこうした問題への対応を図るという観点から報告におきましては権利制限の一般規定,いわゆる日本版フェアユース規定を導入することが必要であるとされたところでございます。ただし,その導入に当りましてはそこに書いてございますとおり,訴訟コストを含めた権利者の負担などが懸念される事項について十分配慮した規定ぶりとすることが必要であるということ。さらには個別規定と一般規定の関係と書いてございますとおり,一般規定が定められた後も必要に応じて個別規定を加えていくことが必要であるというふうに指摘をされたところでございます。
6ページでございますが,3つ目の点でございますけれども,ネット上に流通する違法コンテンツへの対策の強化ということでございます。この問題に関しましては6つの点についてご検討をいただいたところであります。まず,その1点目の技術的な制限手段の回避に対する規制でございます。いわゆるアクセスコントロールの問題でございます。昨今,例えばゲームソフトに関しまして違法ソフトというものはそもそもゲーム機本体でできないようにアクセスコントロールがされているわけでございますけれども,それを回避する回避装置をつけると機動ができてしまうというようなことで,ゲーム機本体が売れてもソフトの売上が伸びないといったような実態があるというふうにも聞いております。このような状況を踏まえまして現行制度の実効性の検証を行った上で,規制のあり方を見直し,何らかの方策を講じることが必要というふうに提言をいただきました。
続きまして,7ページでございます。インターネット・サービス・プロバイダの責任のあり方に関する問題でございます。これにつきましては平成13年に成立いたしましたいわゆるプロバイダ責任制限法において規定されているわけでございますけれども,その法律制定後の動きとしましても動画投稿サイト,さらには携帯電話の「着うた」違法サイトなど新しいタイプの著作権侵害の問題が発生をしております。そうした状況を踏まえまして実効性のある侵害対策やプロバイダの責任のあり方について検討が行われたところです。我が国のネット上の違法対策につきましては事業者,権利者の自主的な取り組みにより成功している事例もあるわけでございます。したがいまして,そうした自主的な取り組みと合わせまして,自主的な取り組みに参加していない事業者もあるといったような実態も踏まえ,制度的な対応についても検討することが必要であると提言をいただいたわけでございます。
最後に8ページでございます。著作権法における「間接侵害」への対応です。文化審議会においても検討していただいている点でございますけれども,間接侵害の明確化に関する検討を早急に進めるべきということの提案です。それから国際的な制度調和等につきましては検討結果がございますけれども,国際裁判管轄,さらには準拠法を含めた国際的な制度調和を図っていくことが必要である。さらには模倣品・海賊版拡散防止条約の早期実現に向けた取り組み,さらには外国政府等に対します官民連携した働きかけが必要であるといったようなご報告をいただいたところでございます。
【中山主査】
続いて川瀬室長の方からお願いします。
【川瀬著作物流通推進室長】
今,大路参事官からご説明がありましたけれども知財戦略本部における検討については多岐に及んでございます。そのうち例えば集中管理の推進や違法流通対策につきましては必要に応じ民間に対する支援や,それから制度問題については制度上の検討に着手をしているところでございます。ただ,ご指摘の中でいわゆる権利制限に関する一般条項,ここでは日本版フェアユースの規定の導入につきましては,まだ文化審議会でも未着手でございまして,本日はいわゆる一般規定の問題につきまして,今後の段取りも含めて現状について少し説明をしておきたいと思います。
日本版フェアユース規定の導入につきましては,知財本部の方で検討結果をおまとめになったわけでございますけれども,その詳細につきましては著作権法の改正事項を含みますので,文化庁の方で今後検討するということになると思います。ただ,皆さんご承知のとおり,今期の文化審議会の任期は来年の1月末で切れるわけでございまして,検討をするとすれば来期の文化審議会で検討をするということになると思います。私どもとしましては,いわゆる日本版フェアユース規定というものは著作権法の権利制限の体系といいますか,そういうものにかかわる大きな検討事項だというふうに承知しておりまして,その検討が円滑に進むようにできるだけ準備を進めたいと考えております。
そういうことで私どもとしましては,シンクタンクに委託をしまして,来年の3月までにいわゆる権利制限の一般条項に関する基礎的な調査,研究を行いたいということで,実は12月24日に第1回の検討会を開催させていただきます。そこではもちろん,この課題について結論を得るということではございませんで,基礎的な研究でございますから現行規定の解釈について判例等である程度柔軟に解釈するような傾向にもあるということでございますので,そういう研究,また現行法の解釈の限界について整理をしていただく。さらにコアな部分としまして,やはり米国,英国,それからフランスやドイツの大陸法系の国における権利制限に関する実態や判例,それから学説の動向に関してできるだけ詳しい調査をしていただくということ。
それから第3点として,仮に我が国に導入した場合のいわゆる課題ですね,論点を少し整理をしてもらえばということでお願いをしているわけでございまして,来期の文化審議会の検討に当たってはそういった基礎的研究も活用しながら円滑に検討ができるように十分準備をしておきたいと考えております。
【中山主査】
ありがとうございました。
それでは,今の2つの説明を踏まえましてご質問,ご意見ございましたらお願いいたします。
【松田委員】
デジタル・ネット時代の流通の件について参事官にお聞きしたいのですが,よろしいでしょうか。
この資料の1ページに新たなネットビジネスの発展や技術開発を促すためにデジタルコンテンツがインターネット上に流通した方がいいというのは,これはほとんど反対する人はいないのだろうと思うのです。私も個人的には同じ意見を持っています。さらに2ページを見ますと,音楽については既に流れるようになっている,それから映画についても著作権法上の対処があって権利がほぼ集約化されているのでおおむね問題はない。だから流そうと思えば流れないわけではないと,こういうことなのだろうと思うのです。
問題は放送コンテンツでありまして,改めて許諾が必要だから流れにくくなっていると,この点の認識も私は全く同じなのです。この点の認識はほとんど実は私の認識というより社会的認識ではないかなというふうに思っているわけです。なのに流そうとするというかコンテンツ化,権利を整理して流れるようにしようということがなかなか進まない。実はこれはかなり長い間議論をしていることでありまして,その理由の大きな1つとして私が考えるには,本当に流れてビジネスが活性化してコンテンツホルダーが収益が上がるのであれば,それはほっといてもするだろうと,言ってみれば処理コストよりも収益の方が上がるんだということがわかれば,それはもうほっといてもするのだろうと私は思うのですが,そうはいかない。ということは,その収益は現実には見えないけれども,とりあえず日本としては世界に後れることなくデジタルコンテンツの流通を促進するために放送コンテンツをできるだけ流れるようにあらかじめつくっておこうと,こういうことになるのではないかと思いますが,専門調査会の方のご意見はそういうことで認識しておいてよろしいでしょうか。それとも具体的な何か収益があり得て,これは日本経済上すぐ活性化するんだと,こういうご意見も含めてあったのでしょうか。
【大路参事官】
今ご指摘いただいた点でございますけれども,まず,課題認識が同じという点に関しては,私も全く同じでございまして,恐らく議論されている方々としてもおっしゃったような点が課題であるという認識については,ほぼ異論はなかったかなというふうに思っております。ビジネスが成り立つならばほっといてもなるだろうというご指摘でございますが,その点ももちろんそんなに相違がないというふうに思っているわけでございますけれども,そもそもビジネスが成り立つか成り立たないかというふうなところの中で,その権利処理コストとそれを流すことによって得られる利益のコスト,そのバランスをどうとっていくかということの中で,やっぱりその権利処理のコストがかかってしまっているという現状をどうするかというところが,まさに課題だったのかなというふうに思っております。
それを解決する方法についていろいろな提案がありまして,まずは契約でやるべきだという提案,それからやはり何らかの法的措置が必要ではないかという提案があって,その当り私どもとしてはいろいろな考え方があるという中で,やはり出された提案を踏まえて,まずは契約でできることをやっていこうというようなことでございます。これもご指摘のとおり,かなり経緯があって取り組んできた話でございまして,その結果いろいろ成果も上がってきているわけでございます。具体的にNHKでもオンデマンドが始まっておりますし,一昔前に比べればかなり状況は進展してきたのだろうというふうに思います。しかしながら,やはりNHKが始めるに当たって,またさらに新しい問題というのが明らかになってきた面もあって,さらにやはり契約の取り組みを進めていかなければならないだろうと思っておりますし,仮にその契約だけですべての問題は解決できないというふうな問題があるのであれば,そこはやはり何らかの法的対応も視野に入れて,それを排除しないで検討をする必要があるのではないか,そういうふうに私どもとしては理解をしております。
【中山主査】
よろしいでしょうか・・・どうぞ。
【松田委員】
今のお話ですと流通しやすくすると具体的にコンテンツがどんどん流れて,コストに見合う乃至はコスト以上の収益が上がるということまで具体的には議論がされていないというふうに考えてよろしいですね。
【大路参事官】
具体的なビジネスモデルを想定して流す環境をつくれば,それに見合ったようなビジネスが起こるかどうかというそこまでは議論しておりませんで,中山先生の専門調査会でも主として法的対応も含めた制度論についてご議論をいただくというところが主眼でございましたので,仮にそういう法制度なり何なりが阻害要因になっているのであればそれを取り除くというところが主眼であって,それ以上のビジネスをさらに後押しするような法制度として何が望ましいかというところまでは,議論されていないのではないかというふうに解釈をしております。
【松田委員】
そうなりますと,今でも実は収益が上がるコンテンツについてはわずかにネットでも,それからDVD化などで権利処理を事後にやって流すということは民放テレビでもやっていないわけではない。しかしこのボリュームは全体から比べるとかなり小さいだろうということも認めざるを得ない。そうするとかなりのものを将来ネット上流れやすくするということになると,今の状況とは違う産業ができるということでもないとなかなかコストをかけても権利処理をしろよというのを説得しにくいんですよね,これをどうするかなんです。
結局この問題は,権利を処理して流れやすくすればビジネスが後日生まれるか。いや,具体的なビジネスがあるならば権利処理はしますよという,言ってみればどっちが先かというような議論になっておりまして,ここでもし政府がきちんと打ち出していただけるのであれば,将来の社会はあらかじめデジタルコンテンツは流通できるようにしておけば大きな産業界の利益になる,それから文化の点でも向上する,国際的競争力もつくということをビジョンとしてまとめていただけると,特に民放各局のコンテンツを権利処理とかそれから集中管理とかをしなければならないよという説得材料になると思うのですが,なかなかそれが出てこない。その点むしろ主査はどういうご意見をお持ちでしょうか。
【中山主査】
調査を進めますと流れない理由はいろいろなことがありまして,それはビジネスモデルから始まってファイナンス,その他,インターネットは儲けないとかあるいは放送局の意識が高くないとか,その他もろもろいろんなことをいろんな人が言いますから,実態はわからないのですけれども,少なくとも著作権法で要求している権利処理,そのコストが高すぎることが一因であるということは間違いないわけで,そこは著作権法としては取り除いた方がいいだろうと思います。あとは政府のコンテンツビジネス政策全体の問題だろうと思っておりますし,また現に日本はブロードバンドという非常に大きい土管を持っていながらその中をろくに流れていないという状況になるわけです。
また,コンテンツビジネスの成長率を見ても世界の平均からはるから低い,日本の世界におけるコンテンツビジネスのシェアはどんどん低下しているという状況にあるわけです。どっかおかしいわけですが,ここでの議論は少なくとも法的な障害は取り除くというそこだけの話です。ですから政府の総合的なコンテンツビジネス振興策は当然必要ですけれども,その中のこれは著作権法の話というふうにとらえてもらえばと思います。
よろしいでしょうか。
【松田委員】
大体そこぐらいまでは私もその方がいいんじゃないかなというふうに思っています。ある程度著作権法上の対応もし,それから権利者側の方の努力もしてもらって,ネット上流れやすいような権利処理をする。言ってみればショーウィンドーに並べた商品にきちんとしてくださいよというところまで持っていくことをした方が,私もいいのではないかなと思っているのです。ところがその整備をした段階のものがそのあとスムーズに流れるかどうかというのは流す側の方が契約を結びたい,ライセンスを結びたいというときに応諾義務で流すことが適当なのか,それとも権利者の判断で流さなければいけないという今の現行法のままでいくべきかということは,これはかなりの議論が必要なところではないかなというふうに思っているわけです。
いわゆるネット法というのは権利が流れるようにした段階ではネット権者に契約許諾義務を負わせるということを言っているわけですから,今までの発想と全く違うことが生まれるわけです。ということは,コストはかかるけれども応諾義務があるわけですから対外については権利者がなかなか決めにくいという状況をつくってしまう。そうするとかなりの権利の実質的な損害が生じる。そこまでいくのは行き過ぎなのではないかなというふうに思っているところでありますが,最後は個人的意見です。
【中山主査】
この提言でネット法を提案しているわけではないわけで,それはまた今後の話です。ネット法については特に推進するということは戦略本部では決めてはおりません。
【松田委員】
はい,そのとおりですが,この前のたしか10月の段階の調査会の中間の意見では,ネット法の考え方が一つ紹介をされておりました。
【中山主査】
それは参考人として呼んだ人の意見です。ですからいろんな意見が出ているはずです。
【松田委員】
そうすると,ネット法以外にどういう考え方があるかというのは,調査会ではほかにどういう発言があったのでしょうか。
【中山主査】
それは今後の議論ですね。
【松田委員】
ここでやってよろしいわけですね。
【中山主査】
もちろんそうです。ただ,最終的には著作権法の問題になってくればこの審議会でやることになります。
【村上委員】
私は松田委員の言われた利益論ではあると思うのです。放送番組をつくった段階でそれがどのぐらい世の中にうまく受け入れられて,二次流通して利益が上がるようになるかというのは事前にはだれもわからないので,そのわからない段階でコストをかけさせることがどのくらい可能かというのは,これは大きな障害になっている問題であると思うのです。
ただ,それとは別に法律問題で3ページに,「放送事業者に対しては,製作段階においてその後の利用を含めた契約を行うよう努力を促す」と書いてあるわけですが,放送会社が自主製作している番組だとわりと権利を事前に得るように手当てするのは可能であるのですが,実際問題としては,日本でつくっている番組というのは製作会社に製作を委託して,制作会社がいわゆる企画を出してつくっている形なので,そうすると権利集約する先としては放送会社もありますし,それから現実につくっている製作会社もあるので,その関係をどうするかというのは難しい法律問題なので,法律だけで割り切るのならそれは放送会社の方にすべて一元管理する権利と義務を課すようなことまで決めれば非常に法律的には明確になると思うのですが,その辺の議論というのは行われているのか,どんな感じでしょうか。
【中山主査】
巷ではいろいろ議論行われているようですね。今おっしゃった会社以外にも実演家も原作者も音楽家の権利もあれば,あるいは肖像権等もあればいろんな権利があるのでそれは非常に難しいことになります。ですから,今のところはそれをどうしたらいいかというのはなかなか難しく,しっかりしなさいという程度しかないわけですね。それをどうするかと,しっかりしなさいといってうまくいくか,あるいはいかなかった場合にどうするか,それは今後の課題と,こういうことになっているわけです。
【村上委員】
もう一つその手前の話でお聞きしたかったのは,その手当てをする,権利の集約化を図る義務を放送事業者,放送会社に持たせるべきなのか,番組をつくる製作会社に持たせるべきなのか,その間の関係をどうするかというそこの法律問題になりますが。
【中山主査】
それはこれから先の話でして,そもそも一元化するかどうかも決まっていませんし,それはもう今後の話ですね。
【中山主査】
ほかに何か・・・よろしいでしょうか。例年のことでございますけれども,報告書のとりまとめの時期が近づいてまいりましたので,次回の本小委員会におきましては先からの継続検討課題及び今期からの新規検討課題についてとりまとめを行いたいと思いますけれども,昨年の検討課題を含めてざっと全体像を確認しておきたいと思います。まずは事務局から分科会への報告書として盛り込むべき内容について説明をお願いいたします。
[2]著作権分科会報告書として盛り込むべき内容について
【黒沼著作権調査官】
資料4をごらんいただければと思います。1枚紙でございますけれども,報告書として盛り込むべき内容としまして中身としては19年度中間まとめに盛り込まれたものと,20年度中間まとめに盛り込まれた項目だけを列挙した資料をご用意しております。今日ご確認いただきたいこととしましては,19年度中間まとめと20年度中間まとめの2つを合わせて分科会報告書としていってはどうかということでございます。例年につきましては各小委員会の報告書をそのままとか,まとまるごとにそのまま合わせて分科会報告書がつくられておりますけれども,今回の場合,例えば19年度まとめにも20年まとめにも権利制限の中身があったりしますので,多少順番の並べ替えなどが必要にはなろうかと思いますけれども,このような中身をそのままくっつけてご報告にしていってはどうかと考えてございます。
なお,中間まとめの中で十分に社会で評価をいただけなかった項目などがある場合には昨年1月の審議経過報告のようなくくりになる項目もあるかもしれませんけれども,そういった形で組み合わせていければと思っています。
特に最終まとめにするにあたって留意すべき項目などがございましたらご指摘をいただければと思います。また,本日特にパブコメにこれを取り入れたらというようなご指摘が,今日はいただけておりませんけれども,また報告書案の段階などでご意見をいただければという感じで考えております。何かご指摘等ございましたらよろしくお願いします。
【中山主査】
ただいまの説明についてご意見,ご質問ございましたら,お願いいたします。
【苗村委員】
質問なのですが,この3の4つ目の○で「私的使用目的の複製の範囲の見直し」というのがあります。それから4の関連事項で私的録音録画小委員会関係でまた同じ言葉が出ていますね,当然資料4というのはこの小委員会の報告書という趣旨で書いておられると思うので,関連事項であえてこの私的録音録画小委員会だけを別に書かれる意図がちょっとわからなかったのですが,これも単に3のところと合わせて書かれた方が少なくとも理解しやすいような気がするので,別途私的録音録画小委員会の報告があるのであればと思いましたが,何か目的があるのでしょうか。
【黒沼著作権調査官】
今のようなご指摘もあるかなと思ってあえて書いておいたわけでございますけれども,私的録音録画小委員会は補償金を中心にまたそれはそれで一つのかたまりになっていますので,どういうかたまりが一番適切かというのはまた改めてご提案をさせていただければと思っております。
【中山主査】
ほかに何かございましたら・・・よろしいでしょうか。
時間も若干過ぎましたので,本日はこのくらいにしたいと思います。著作権分科会への報告書につきましては本日議論で定まった方針に基づいて事務局に報告書(案)を作成していただきまして,次回の本小委員会で議論を行いたいと思います。最後に事務局から連絡がございましたらお願いいたします。
【黒沼著作権調査官】
次回の日程でございますけれども,1月16日,(金),10:00から,場所は三田共用会議所を予定してございます。よろしくお願いいたします。
【中山主査】
次回は三田共用会議所ですので,お間違いのないようにお願いいたします。
それでは,本日はこれをもちまして文化審議会著作権分科会第10回法制問題小委員会を終了させていただきます。本日はありがとうございました。
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