(平成21年第7回)議事録

1 日時

平成22年1月20日(水) 10:00~12:00

2 場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3 出席者

(委員)
青山,大渕,小泉,清水,末吉,多賀谷,茶園,筒井,土肥,中村,中山,前田,松田,村上,山本(りゅうじ),山本(たかし)の各委員
(文化庁)
合田次長,戸渡長官官房審議官,永山著作権課長,ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)ネット上の複数者による創作に係る課題について(契約・利用ワーキングチームからの報告)
    2. (2)「間接侵害」について(司法救済ワーキングチームからの報告)
    3. (3)権利制限の一般規定について(権利制限の一般規定ワーキングチームからの報告)
    4. (4)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1
資料2
資料3-1
資料3-2
参考資料1
参考資料2
参考資料3
参考資料4

6 議事内容

【土肥主査】
それでは,ただいまから文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第7回を開催いたします。
本日は,御多忙の中,御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきまして予定されております議事内容を参照いたしますと特段非公開とすることには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】
それでは,本日の議事は公開ということで傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
それでは,事務局から本日の配布資料の確認をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
それでは,お手元の議事次第の下半分,配布資料一覧を御覧ください。
本日,配布資料といたしまして,1から3,そして参考資料として1から4までそれぞれ配付させていただいております。順に確認させていただきます。
まず,配布資料1でございますが,「ネット上の複数者による創作に係る課題に関する検討経過報告」と題する契約・利用ワーキングチームの審議経過報告になりまして,全部で3ページのものとなります。
続きまして配布資料2でございますが,「「間接侵害」に関する検討経過報告」と題する司法救済ワーキングチームの審議経過報告になります。こちらも全部で3ページのものとなっております。
配布資料3は,権利制限の一般規定ワーキングチームからの報告に関係する資料となります。このうち,配布資料3-1はパワーポイントで作成しております概要版でありまして,ページ番号は8までとなっております。
配布資料3-2,こちらは報告書の本体でございます。両面印刷で121ページまでとなっておりますが,53ページまでの本文部分と54ページ以降,118ページまでの参考資料,そしてチーム員名簿と審議経過が掲載されております。119ページから121ページの附属資料部分とに分けてとじて配付させていただいております。
続きまして参考資料でありますが,参考資料1から参考資料3,こちらは平成21年の法改正に伴う政省令の改正等に関する資料となります。参考資料1が政令関係,参考資料2が省令関係,参考資料3が告示関係となりまして,それぞれ概要をまとめた横書きのものと実際の条文等が載っている縦書きのものとをセットにクリップどめしております。内容につきましては後ほど事務局より簡単な報告をさせていただくことを予定しております。
最後に参考資料4でありますが,本委員会あてに提出されております社団法人日本文藝家協会ほか6団体からの「権利制限の一般規定」に関する意見書でございます。
以上,不足や落丁等ございましたら,お近くの事務局のほうまで御一報ください。よろしいでしょうか。
配布資料の確認につきましては以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは議事に入りますが,初めに議事の段取りについて確認をしておきたいと存じます。
本日の議事は1,ネット上の複数者による創作に係る課題について,それから2が「間接侵害」について,3が権利制限の一般規定について,それから4がその他と,こうなっております。
1と2,これについてはそれぞれ契約・利用ワーキングチーム,司法救済ワーキングチームにおいて検討が進められておりましたので,本日はその検討経過の報告を受けて議論を行いたいと思います。
それから3ですけれども,これについては前回の本小委員会,第6回の小委員会におきまして,専門的な見地から論点を整理するために権利制限の一般規定ワーキングチームを設置し,集中的な専門的な議論を尽くした上で本小委員会にフィードバックすると,これが決定されておりました。本日は権利制限の一般規定ワーキングチームからの報告を受け,同様に議論を行いたいと思っております。
それでは早速ですけれども,1のネット上の複数者による創作に係る課題について,これを契約・利用ワーキングチームの末吉座長より,御報告をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

(1)ネット上の複数者による創作に係る課題について
(契約・利用ワーキングチームからの報告)

【末吉委員】
末吉でございます。
お手元の資料1に基づきまして御報告を申し上げます。
まず1ページでございますが,御紹介ありましたとおり,ネット上の複数者による創作に係る課題につきまして,昨年21年の5月12日の法制問題小委員会におきまして設置されたのがこのワーキングチームでございます。ちなみに,そこに参考1,参考2といたしまして,知財制度専門調査会における検討経過でありますとか,知的財産推進計画2009が引用されてございますが,こういう御議論の流れで議論を進めてまいったところでございます。
なお,チーム員につきましては,資料1の3ページに記載されているところでございます。
具体的な検討の経過でございますが,資料1の2ページを御覧くださいませ。
この間,3回会議を開いてございまして,第1回においては川上チーム員から,これはニコニコ動画の状況につきましてお話を伺いました。あるいは第2回においては別所チーム員から,これはヤフーを中心とした状況,さらには渡辺様からウィキペディアの状況などについてお話を伺い,第3回においては野口チーム員から米国における状況についていろいろお話を伺いました。これらの状況の把握とともに,第2回においてはネット上の複数者による創作の類型について議論を整理し,さらには第3回においてネット上で複数者により創作されるコンテンツの主な特性,どういうところがネット上の問題なのかという特性についての分析につきましてまとめ,議論をしてまいりました。
今後の方針でございますが,項番,3番のところに書いておるとおりなんでございますけれども,どうもこの論点につきましては状況の変化が激しゅうございまして,議論をしている渦中でも大きな変化が時々刻々起こっているという,この状況の変化,これを把握する必要がまずあるだろうという点と,それをどうもいろいろ議論してまいりますと,かなり論点が多いということでございますので,今後も諸外国の状況の把握を含めまして,さらに広く検討してまいりたいと思っているところでございます。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明につきまして,何か御意見,御質問ございましたらお願いをいたします。
格別よろしゅうございますか。
それでは,今後検討を進めていただいて,しかるべき成果を得ていただきたいと存じます。よろしくお願いをいたします。
それでは,2の「間接侵害」についてでございますけれども,これにつきまして司法救済ワーキングチームの大渕座長より御報告をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

(2)「間接侵害」について(司法救済ワーキングチームからの報告)

【大渕委員】
大渕でございます。
お手元にあります資料2に基づきまして「間接侵害」に関する検討結果報告ということで御報告申し上げます。
まず,1.にございますとおり,問題の所在及び検討経過については,本ワーキングチームは司法救済一般の問題を扱っておりますが,ここにございます間接侵害の課題の検討を中心といたしました。これは御案内のとおりでありまして,特に御説明する必要もないかと思いますが,定義はいろいろあるわけですけれども,ここでは著作権等の利用につき,みずから物理的に利用行為をなす者以外の者がどのような場合に著作権法上の責任を負うのか。言い換えますと差し止めの相手方となるのかという,この重要論点につきまして法律上必ずしも明確でないことから,その範囲をどのようにとらえるべきか,という点につきまして関係事例の司法判断の状況等を踏まえて,立法的対応の必要性等について検討が求められているものでございます。
そして,間接侵害をめぐる状況といたしましては,近年の情報通信技術の発展によりまして,インターネット等を利用した著作物の創作・流通が活発になったことに伴う著作権法上の課題の指摘が数多く見られるようになっておりまして,裁判例におきましても,従来のカラオケスナックの経営者などのように著作物の直接的利用者を物理的に支配下に置く者に対して侵害主体性を認めるケースに加えまして,近年はインターネット等を活用して提供される新たなサービスをめぐってその提供者に対する民事的請求が行われるケースも増大している次第でございます。このような状況に対応いたしまして,著作権者の立場からは,権利行使が可能な範囲を法律上明確化すべきという従来からの要請がございますが,これに加えまして,他方で利用者の側からも著作権法上の責任を負わない範囲を明確化すべきとの要請が強まっているというように,両方の面からの法律上の明確化の要請が強まっている次第でございます。
本ワーキングチームにおきましては,本課題につきまして,これまで国内外の関係法令及び関係裁判例の分析をもとに法的対応の是非について検討を行ってまいりまして,その一例といたしまして,たしか2006年7月にこの問題につきまして,比較法に関する詳細な報告書を出させていただいたのがその一例でございますが,そのような基礎的な研究を踏まえまして,その上で間接侵害をめぐる状況が刻々と変化してきておりますことから,21年1月の分科会報告書では,近年の裁判例の分析等を深める必要に言及されて,望ましい制度設計のあり方について,総合的な検討を行うことが求められておりますし,また知財計画2009におきましても,本課題について検討が求められている次第であります。
以上をバックグラウンドといたしまして,検討経過でございますが,チーム員につきましては3ページのとおりであり,開催状況につきましても4回開催いたしまして,たしかいずれも3時間ほどかけて,非常に集中的に検討を進めてきた次第でございます。
それで1ページに戻っていただきまして,今期のワーキングチームにおきましては,先ほど御説明いたしました状況を踏まえて,当然のことながら従前行いました議論を再確認等するとともに,新たにここに挙げておりますような重要な判決例について,さらに分析を加えた次第でございます。
そして,その上でその「また」以下のパラグラフのところに今回検討した点のエッセンスというか,ポイントが書かれておりまして,これを御覧いただければ,従前の基礎的な研究を踏まえた上でかなり,手前味噌ではございますが,議論が進みつつあるということがうかがわれるのではないかと思っております。まず(b)でございますが,従前の基礎的な検討を踏まえて,2つの中心的な分析軸といたしまして,まずは(a)に書いておりますとおり,差し止めの相手方が直接侵害者に限定されずに,一定の範囲の間接侵害者,これは間接的関与者と言ったほうがいいかもしれませんが,その間接侵害者も差し止めの相手となり得るという直接侵害者非限定説なのか,それとも限定説なのかどうかというのが1つ目の分析軸でございます。そして,2本目の分析軸が(b)にありますとおり,間接侵害成立について直接侵害成立が前提となるという,いわゆる従属説的な立場かどうかという,この2点を中心的な分析軸として検討を進めてまいりました。そして,それを踏まえまして,法制化を行おうとした場合に,いわゆる間接侵害と従前されてきた事例について,これを著作権法上,直接的な侵害者と評価すべきケースと間接的な侵害者と評価すべきケースがあるのではないか,ないしはどのように類型分けしていくのが適切かという点について議論を深めていって,直接侵害者とされるケースについての具体化・明確化について整理を行いました。そして,他方で,間接侵害と分類されるケースにつきましては提供する物及びサービスが著作権侵害の用に供される蓋然性等,これは「専ら」という点も含みますが,そういうような蓋然性のほか,提供する物及びサービスによる権利侵害の発生ないし蓋然性の認識の有無,あるいは侵害発生防止のための合理的措置の有無等といった要素を総合的に考慮対象といたしまして,それらの組み合わせを考えつつ,いろいろな類型分けなどをしながら,それぞれの場合に想定される論点について整理を行いました。
そして,今後の方向性でございますが,先ほども示したとおり,今期は,最近の裁判例及び考えられる制度設計の選択について幅広に検討し,論点の整理を行ってまいりましたが,関係裁判例の動向については主要な事件の司法判断が確定していないものも多くその動向は注目する必要がありますが,一方で,本課題については早急な対応が求められているという社会的状況にも十分注意しながら引き続き検討を進めていくことといたしたいと思っています。具体的には今期に引き続きまして,考えられる制度設計について理論的分析を深めるとともに,関係者の意見等を踏まえて,その実態把握を行った上で考えられる制度設計について検討を行うということで,それと並行して,過去の裁判例等における判断の内容がどのように対応することとなるか等々の点も整理して,それから現行の著作権法体系への影響等他の論点についてもということで,総合的に検討を深めていって,これらを通じまして,可及的速やかに一定の結論を得ることを目指して最大限の努力を傾けたいと思っている次第でございます。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明につきまして,何か御意見,御質問がございましたら,お願いをいたします。
詳細かつ具体的に経過について説明いただきましたけれども,特によろしゅうございますか。
特にないようでございましたら,大渕主査には今後も継続して一定の結論を得るべく御尽力をお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,3でございます。権利制限の一般規定につきまして,これにつきましては権利制限の一般規定のワーキングチームがございます。このワーキングチームの座長でございます私から御報告をいたしたいと存じます。

(3)権利制限の一般規定について(権利制限の一般規定ワーキングチームからの報告)

【土肥主査】
御報告申し上げます。
この権利制限の一般規定ワーキングチームは,昨年9月18日の第6回の法制問題小委員会におきまして,「権利制限の一般規定に関する検討事項」としてまとめられた検討事項ごとに,専門的な見地から論点を整理し,今後,本小委員会における議論を円滑に進めていくと,こういうことを目的として設置されたものでございます。
チーム員の選任につきましては検討事項の内容にかんがみまして,本小委員会の委員5名に知的財産権法の研究者,民事・刑事法の研究者・実務家4名を加え,座長のほか合計9名を選任することといたしました。なお,名簿は,皆様のお手元にございます本報告書120ページに記載がございます。昨年の10月以降一月に2回から3回のペースで計8回のワーキングチームを開催いたしました。
検討と報告書の作成に当たりましては,「議論のためのたたき台」を作成すると,こういう本ワーキングチームの任務を踏まえて,課題に関する結論を求めるということではなく,少数意見も含め,出された意見をできるだけ幅広に記述し,意見の集約度に応じまして「意見が一致した」,あるいは「意見が大勢であった」,「意見が多かった」,「意見があった」,こういう記述をしております。
また,検討事項に挙げられた論点ごとに議論を行い,報告書においても各論点についての意見を独立して記述しておりまして,関連する論点間の意見の調整等は基本的には行わないようにしております。
各検討事項の詳細につきましては,後ほど事務局から説明をいただきますけれども,ワーキングチームにおける検討内容としては,お手元の概要の2ページにございますけれども,権利制限の一般規定を導入する必要性については,関係団体からのヒアリング結果によりますと,これは明確に積極意見と消極意見に分かれておりまして,双方の意見を踏まえますと,導入の検討に当たっては法改正を必要とする立法事実をどこに求めるかがまず重要であると考えられること,それから,概要の4から7ページを御参照いただきたいと存じますけれども,法改正を必要とする立法事実を検証するために,ヒアリングにおいて権利制限の一般規定の導入を希望する立場から提示された一般規定によって権利制限を求める100余りの利用行為の具体例を整理し,5つの類型に分類した上で,各類型につきまして仮に権利制限の一般規定を導入するとした場合の権利制限の対象となる利用行為の範囲について検討した,そういうことなどについて報告書にまとめております。
また,関連する課題についても時間をかけて検討を行っております。既存の個別規定の解釈論や個別権利制限の改正等による対応可能性,これにつきましては著作権法の解釈について重要な判断が行われた判例を整理・分析した上で結論を得ております。また,比較法的な観点からの検討につきましては,諸外国・諸地域に対して照会を行いまして,その回答を踏まえて議論を行っております。法社会学的な見地からの検討,それから憲法学的な見地からの検討も求められておりますけれども,これらはそれぞれ外部の専門家である太田勝造教授,長谷部恭男教授から御意見を賜り,これに基づき議論を行いました。これらの結果についても報告書にまとめておるところでございます。
座長といたしましては,チーム員がその能力を最大限活用し,全力を挙げて検討を進めていただいたものでございまして,本小委員会の今後の議論に十二分に資する重要な整理ができたのではないかと考えておるところでございます。チーム員の並々ならぬ御努力・御尽力,こういったものに改めて感謝を申し上げまして私からの最初の説明とさせていただきます。
それでは,これからの詳細の説明につきましては事務局,池村調査官からお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。
【池村著作権調査官】
それでは,続けて事務局のほうより詳細につき説明をさせていただきます。
時間の関係上,一部省略させていただく部分もございますが,御了承ください。
なお,今後の説明におきましては,配布資料の3-1,これを概要版,配付資料の3-2,これを報告書とそれぞれ表現させていただきます。
まず,報告書全体の構成についてでございますが,ワーキングチームではただいま土肥主査より御説明ございましたとおり,第6回の本小委員会でまとめられました検討事項-こちらは参考資料1といたしまして,報告書55ページ以降に添付しております-,こちらに沿って議論を行い,報告書の構成もこれに沿ったものとなっております。
内容に入りまして,報告書3ページからの,「第1章権利制限の一般規定を導入する必要性について」の「第1節権利制限の一般規定を導入していないことによる問題点について」でございます。
ワーキングチームでは,導入に積極的な側からの意見として,報告書3ページに(1)から(3)としてまとめた各意見,導入に慎重な側からの意見として(4),(5)としてまとめた各意見に整理して議論を行いました。その結果,権利者側と利用者側とで意見の隔たりが大きい中で,いずれも評価の問題であるという側面が強いこともあり,現実的にこのような問題点が生じているかについてはワーキングチームとして明確な結論を出すには至りませんでしたが,先ほど土肥主査からも御説明ありましたとおり,立法事実があるのかという点につき,十分に検討する必要があるとの意見で一致しております。
続きまして,報告書4ページ以降の「第2節仮に問題が生じているとした場合,既存の個別権利制限規定の解釈論や個別権利制限規定の改正等による解決の可能性と限界について」でございます。
まず,既存の個別規定の解釈論による解決の可能性についてでございますが,ワーキングチームでは主な裁判例-裁判例につきましては85ページ以降に参考資料3としてまとめてございます-,こちらの分析を行い,これに基づく議論を行った結果,裁判実務では個別規定の解釈上の工夫や民法の一般規定の活用等により,事案に応じた妥当な解決が図られていること,そして,これまで類推解釈が行われた裁判例が存在せず,個別規定が厳格解釈されているという指摘については,そもそも類推解釈が争点となった事例自体が少なく,また類推解釈という手法それ自体が否定されているものではないことから,裁判所が常に個別規定を厳格解釈していると評価することはできないこと,こちらで意見が一致しております。
次に,個別規定の改正による解決可能性についてですが,ワーキングチームでは個別規定の改正等に要する審議等の期間だけを問題とするのではなく,訴訟という手段で解決する場合に要する期間との比較という視点が重要であるとの共通認識に基づき,平成15年以降に立法措置が講じられた個別規定に関する改正に要した期間-こちらは参考資料4として105ページ以降にまとめてございます-,こちらと平成以降に第一審の受理がなされ,最高裁の判決にまで至った著作権関係民事訴訟における審理期間-こちらは参考資料5として112ページにまとめてございます-,こちらを比較し,検討を行っております。
その結果,特段両者に目立った差は認められず,少なくとも個別規定の改正による解決に限界があるとの問題点を持って一般規定の必要性を導くことはできないとの意見で一致をしております。
続きまして,報告書7ページ以降の「第3節導入の必要性を考える場合に検討すべき事項」の「1.権利者へ与える不利益について」でございます。まず,導入により,居直り侵害者が蔓延するのではないかとの指摘につきましては,一般規定の適用が争点となるであろう事案は事件全体の割合から見ればそれほど多くはならないだろうとの意見や,米国においてもフェアユースの抗弁が主張される事例はとりわけ多いわけではないとの意見,あるいは一般規定の趣旨や要件を明確にすることにより,こういった懸念は弱まるのではないかとの意見等がございました。また,法社会学的見地から東京大学の太田勝造教授から御意見をお伺いしたところ,一般規定を口実にした権利侵害行為が多少は生じることが予測できるとしても,それが蔓延すると言えるか検証することなどは非常に難しいとのことでございました。
なお,今の部分,報告書の7ページから8ページにかけてでございますが,大変申しわけございません。重複記載がございますので,後ほど訂正版と差し替えさせていただきたいと思います。
以上を踏まえまして,居直り侵害者の蔓延との指摘については明確な結論を出すには至りませんでしたが,仮に権利制限の一般規定を導入する場合,かかる指摘を念頭に規定ぶり等を十分検討する必要があるとの意見で一致しております。
続きまして,報告書9ページの「2.権利制限の一般規定の導入による経済的効果について」でございます。ワーキングチームでは,米国のいわゆるCCIA報告書,こちらの分析を行いました。同報告書ではフェアユース規定という用語を他の個別規定等をすべて含む広い概念として使用しており,フェアユースの恩恵を受けている産業とされているものも,米国法107条のみの恩恵を受けている産業の経済規模を算定しているものではないことなどを確認し,このCCIA報告書の結果のみをもって一般規定の導入により,大きな経済的効果が生まれるか否かを確認することはできないとの意見で一致しております。こちらの詳細につきましては,報告書のほか,参考資料6といたしまして,報告書113ページ以降にまとめてございます。
続きまして,11ページ以降の「比較法的観点からの検討」でございます。ワーキングチームでは,第2回の本委員会で御議論いただきました上野委員を座長として作成されました報告書の内容,こちらを踏まえた検討に加えまして,諸外国地域に対して照会を行い,これに対する回答に基づき,検討,議論を行いました。照会事項及び回答につきましては,報告書12ページから22ページにまとめてございまして,詳細については省略いたしますが,米国型のフェアユース規定を導入していない国で,現在政府レベルで導入を検討している国はございませんでした。
次に,報告書23ページの「4.法社会学的見地からの検討」,こちらにつきましては東京大学の太田勝造教授から日本人が訴訟を好まないとの指摘は現在ではこれを支持しない見解も多いこと。仮に一般規定の導入が適当であるのであれば,導入当初のコストとして判例の蓄積がないことによるある程度の混乱,こういったものは受け入れるべきである等の御意見を伺い,ワーキングチームではこれら御意見を踏まえた検討の結果,このような懸念があることを十分に念頭に置き,要件を明確にする等の必要があるとの意見で一致しております。
続きまして,報告書25ページの「5.憲法学的見地からの検討」につきましては,東京大学の長谷部恭男教授から御意見を聞き,これに基づき議論を実施いたしました。長谷部先生の御意見につきましては,報告書25ページから26ページにまとめてございますが,ワーキングチームといたしましては,一般規定と表現の自由との関係については,一般規定を導入することによるプラス面のみならず,マイナス面である法的安定性や予測可能性の低下,あるいは表現活動に与える萎縮効果,こういったものに留意しつつ,具体的な内容の検討を進める必要があるとの意見で一致をしております。
続きまして,報告書28ページを御覧ください。
「第2章仮に権利制限の一般規定を導入するとした場合の検討課題について」でございます。先ほど御説明申し上げましたとおり,導入の必要性につきましてはワーキングチームとして明確な結論を出すには至っていないわけでございますが,各検討事項ごとに考え方を整理するという観点から,この第2章についても独立して議論を行ったという位置づけとして御理解いただければと思います。
まず,一般規定の趣旨でございますが,検討事項ではいわゆる形式的権利侵害行為の事例につき,適法の根拠規定を与えるため,予想できない技術の進歩に迅速に対応するため,新たなビジネスに挑戦しやすい法的環境を整えるため等の観点が考えられるとされておりましたが,ワーキングチームでは,これら各目的を考慮しつつ,権利の保護と利用の円滑化のバランスに十分留意しながら配慮を行った結果,この後に御説明申し上げます検討結果は,いずれの目的にも一定程度資するものではないかとの意見で一致をしております。
続きまして,報告書30ページ,「権利制限される利用行為の内容」の部分を御覧ください。
概要版ですと4ページになります。
まず,このワーキングチームで採用した検討の手法でございますが,先ほど土肥主査より御説明ございましたとおり,立法事実の有無を十分に検討すべきとの共通認識に基づき,本委員会でのヒアリング等で一般規定による権利制限の対象とすべきであるとして意見が出された利用行為-こちらは報告書71ページ以降にまとめてございます-,を権利者へ不当に利益を及ぼさないこと,権利の保護と利用の円滑化とのバランス,そして関連条約との整合性や諸外国地域の法制度との調和,あるいは既存の個別規定の趣旨等に十分配慮しながら,仮に権利制限の一般規定を導入する場合,これによる権利制限の対象とすべきか否かという観点から整理をし,利用目的や利用態様等に着目して,共通する要素を抽出するなどの分析を行いました。
その結果,一般規定による権利制限の対象とすることが方向性として考えられる利用には,報告書30ページにまとめてございます[1]から[4]の利用に分類できるとの意見が大勢でありましたことから,この分類に基づき,一般規定により権利制限される利用行為の内容及びそれを決める考慮要素等について,報告書31ページ以降に整理しております。
まず,報告書31ページ,概要版ですと5ページになります。
[1]の「いわゆる形式的権利侵害行為への対応について」,こちらについてでございますが,ワーキングチームではいわゆる形式的権利侵害行為につき,いかなる利用を形式的権利侵害行為と評価するかは論者によりさまざまな見解があり得るものの,ここでAとして表現しました利用,つまり「その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり,その利用が質的,または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」,こちらにつきましては実質的違法性がないと評価されるものと考えられ,仮に一般規定を導入する必要があればとの留保つきではありますが,一定要件のもと,一般規定による権利制限の対象とすることが考えられるとの意見が大勢でございました。
なお,報告書31ページにも記載しておりますが,ワーキングチームの中ではこのAの類型についても慎重な意見がございました。このAの類型の典型的なものとしては,いわゆる写り込みと言われているものということになろうかと思います。
続きまして,報告書32ページの[2]要件等,でございますが,仮にAの類型を対象とするとしても,その態様等によっては,著作権者の利益を不当に害する可能性も否定できないことから,「著作物の種類,用途,利用の態様等に照らし,社会通念上,著作権者の利益を不当に害しない利用であること」という要件を加えるべきとの意見がワーキングチーム内で大勢でございました。
そのほか,黙示的許諾の取り扱い,営利非営利の取り扱い,権利制限の対象とする支分権,著作物の種類については,時間の関係上説明を省略させていただきます。
報告書33ページにまとめてございますので,こちらを後ほど御覧ください。
続きまして,報告書34ページ,こちらでは仮にAの類型を一般規定による権利制限の対象とする場合の著作者人格権との関係についてまとめてございます。
結論といたしまして,氏名表示権と同一性保持権につきましては,特にあわせて権利制限する必要はない現行法のもとで対応できるとの意見で一致をしておりますが,公表権につきましては未公表著作物が写り込むという可能性もございますので,取り扱いにつき検討する必要があると考えられるという形でまとめられております。
続きまして,報告書35ページ,概要版ですと6ページになりますが,「[2]いわゆる形式的権利侵害行為と評価するか否かはともかく,その態様等に照らし,著作権者に特段の不利益を及ぼさないと考えられる利用への対応について」でございます。こちらはさらに,B,Cという2類型に整理しておりますが,このワーキングチームではこれらを形式的権利侵害行為と評価するか否かはともかく-なお,これらを形式的権利侵害と評価するかどうかという点につきましては,ワーキングチームのチーム員によっても考え方が割れておりましたので,このような表現になっております-,一定要件のもと,一般規定による権利制限の対象とすることが考えられるとの意見が多かったという形で整理しております。これらの類型につきましても,それぞれ一般規定による権利制限の対象とすべきでない,あるいは個別規定で対応すべき等の意見がございました。
まず,(2)の1つ目の類型といたしまして,「B適法な著作物の利用を達成する過程において不可避的に生ずる当該著作物の利用であり,その利用が質的,または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」でございます。ここでいう適法な著作物の利用につきましては,権利者から許諾を得た利用,それと権利制限規定の適用を受ける利用,こちらに整理できるとしております。
もう一つの類型,報告書では36ページでございますが,「C著作物の表現を知覚するための利用とは評価されない利用であり,当該著作物としての本来の利用とは評価されないもの」でございます。御承知のとおり,著作権法では著作物を見る,聞く,あるいは読むといった行為について直接権利を及ぼすのではなく,そのいわば前段階の行為であります複製等の行為に着目して権利を及ぼしているわけでございますが,著作物の利用の中には物理的には何らかの形で複製等が伴うものの,この複製等は著作物を見る,聞く,あるいは読む等といった著作物の表現的側面を知覚する目的には何ら向けられていないというものが一定程度存在する可能性があり,特に研究開発といった分野やネットワーク産業の分野等に特徴的なものと考えられます。ワーキングチームでは,このCの類型に属する利用についても,権利者に不利益を及ぼすものではないと考えられることから,一定要件のもとで一般規定による権利制限の対象として位置づけることが考えられるとの意見が多く,これにより各種新技術の開発や新たなサービスの開発,提供等の萎縮防止にも徹底程度資するものと考えられる,こういった形でまとめてございます。
続きまして,報告書37ページ以降の要件等でございますが,先ほどのAの類型と同様に,「著作物の種類,用途,利用の態様等に照らし,社会通念上,著作権者の利益を不当に害しない利用であること」という要件を加えるべきとの意見が大勢でございました。なお,オの「権利制限の対象とする著作物の種類」につきましては,特定の種類の著作物に限定する必要はないとの意見が多かった一方,特にCの類型につきましては,プログラム著作物につき慎重に検討すべきとの意見があり,関連しまして,いわゆるリバース・エンジニアリングにつきましては,昨年1月の分科会報告書に従い,個別権利制限規定を創設することにより対応するのが適当との意見が大勢でありました。
その他,黙示的許諾の取り扱い等につきましては説明を省略させていただきますが,37ページにまとめてございます。
次に,BとCの類型に関し,著作者人格権との関係につきましては,報告書38ページにまとめてあり,結論としましてはAとほぼ同様となっております。
続きまして,報告書39ページ,概要版ですと7ページの[3]になりますが,「[3]既存の個別権利制限規定の解釈による解決可能性がある利用への対応について」であります。
まず,ワーキングチームでは,条文上,個別規定の直接適用は受けないものの,立法趣旨や立法後の環境変化等の諸事情に照らし,社会通念上,当該個別規定の拡大解釈や類推解釈等により権利が制限されると解される利用行為が一定程度存在する可能性があるとの意見で一致を見ております。そして,これらの利用につき,一般規定による権利制限の対象とすべきか否かという点につきましては,実際の裁判実務では事案に応じた柔軟な解決が図られていることから,一般規定の対象とはせずに個別規定の解釈にゆだねるべきであるとの意見が大勢でございました。
一方で,チーム員からは既存の個別規定をより緩和,抽象化する方向で,例えばイギリス等のいわゆるフェアディーリング型の導入も視野に入れつつ,既存の個別規定の見直しをすべきとの意見もございました。
次に,同じく報告書39ページ,概要版では7ページの[4]になりますが,「[4]特定の利用目的を持つ利用への対応について」でございます。
こちらにつきましては,[1]として,「公益目的にかんがみ権利制限が求められていると考えられる事案」,[2]として「パロディとしての利用」に整理し議論を行っております。
まず前者でありますが,一般規定による権利制限が求められている利用には障害者福祉,教育といった目的の公益性に着目したものが存在すると考えられるところ,ワーキングチームでは既に公益性にかんがみ整備されている既存の個別規定との関係に照らし,要件を慎重に考慮する必要があることから,一般規定による権利制限の対象とすべきではなく,権利制限の必要性につき合意が得られ次第,個別規定の改正等による対応すべきとの意見が大勢でありました。
一方で,この類型の利用につきましても,既存の個別規定の要件を緩和する方向での見直しをすべきとの意見もございました。
続いて,後者,パロディとしての利用でございますが,ワーキングチームではそもそも何をもってパロディと考えるか,あるいは表現の自由や同一性保持権との関係など検討すべき重要な論点が多いことから,これを一般規定による権利制限の対象と位置づけるのではなく,権利制限の必要性につき,慎重に検討した上で,必要に応じて個別規定の改正や創設による対応を検討すべきとの意見が大勢でありました。
最後に報告書40ページ[5],概要版7ページ[5]の「その他」についてでございます。
ヒアリング等で一般規定による権利制限の対象とすべきとされたものの中には,これまで御説明申し上げました[1)]から[4]のいずれにも該当しないものも存在するものと考えられますが,ワーキングチームといたしましては,これらにつきましては,もちろん民法上の一般規定の活用や黙示的許諾論等により侵害を否定できる場合もあり得るところでありますが,少なくとも一般規定による権利制限の対象とは位置づけるべきではなく,必要に応じて個別規定による対応等を検討すべきとの意見が大勢でございました。
関連しまして,ヒアリングでは特に意見が得なかったことから,報告書には明記しておりませんが,ワーキングチームでは上野委員に座長としておまとめいただいた報告書に記載されております43条の非営利演奏における編曲や要約引用等といった問題についても個別規定の改正を早急に検討すべきであるとの意見が出されておりました。
さらに,例えばヒアリングでは,公衆への配信を前提としない録画転送サービスのように,他人の著作物利用行為に対して,何らかの形で関与する行為,こういったものが出されておりましたが,これらにつきましてはいずれも間接侵害の問題として議論されるべきであり,権利制限の一般規定により解決が図られる性質のものではないとの意見で一致をしております。
続きまして,報告書42ページの「規定のタイプ」でございます。ワーキングチームでは具体的な条文の表現や位置等につき,具体的な結論を得るには至っておりませんが,報告書にまとめた各整理,あるいは明確性の原則等に十分留意する必要があるとの意見で一致しております。ワーキングチームでは規定のタイプから検討に入るのではなく,どのような類型の行為を対象とすべきかというアプローチで検討を行ったことから,仮にAからCの類型を対象とする場合,検討事項に掲げられているタイプとは異なる独自のタイプも含めて検討する必要があるだろうとの意見が多くございました。
なお,関連しまして,米国型のフェアユース規定につきましては,仮にこれをそのまま導入しても,米国での裁判例に照らすと,パロディ利用等が権利制限の対象となり得る程度の違いしか認められず,むしろグレーゾーンが広がることによるデメリットが大きいとの意見や刑罰との関係で明確性の原則に照らして問題が大きいとの意見がございました。
続きまして,同じく42ページ,「既存の個別規定との関係」についてでございますが,既存の個別規定により制限される利用行為と一般規定により制限される利用行為との関係につきましては,一般規定の導入に伴う個別規定の改正,見直しの必要性も含めて検討する必要があるとの意見,一般規定を導入する場合でも,導入後も必要に応じて個別規定の追加を行うことが適当であるとの意見,そして一般規定の制度設計に応じて48条の出所明示義務,49条の目的外使用の禁止,あるいは翻訳,翻案による利用に関する43条との関係等につき適切に考慮する必要があるとの意見でそれぞれ一致しております。
続きまして,報告書44ページ,概要版ですと8ページの(2)になりますが,「関連条約との整合性」でございます。
ワーキングチームでは米国法107条を例に検討を実施し,一般規定を導入する場合には,その規定のタイプにかかわらず,スリーステップテストに係る判断基準に留意する必要があるとの意見で一致しております。詳細につきましては報告書を御確認いただければと思います。
続きまして,報告書47ページ,概要版ですと8ページの(3)になりますが,「強行法規性」でございます。ワーキングチームでは,平成18年1月の契約・利用ワーキングチームの報告書,こちらをもとに議論を行い,仮に一般規定を設ける場合であっても,個別規定と同様の考え方が妥当し,オーバーライド契約の有効性については一般規定の趣旨等を総合的に勘案して対応することが必要であるとの意見で一致しております。
次に,報告書48ページ,概要版ですと8ページの(4)になりますが,「刑事罰との関係」でございます。
ワーキングチームでは著作権侵害には刑罰が適用されますことから,その内容には法文上の明確性が要請され,権利制限規定のような構成要件該当性阻却事由や違法性阻却事由を定める規定につきましても,構成要件と相まって犯罪の成立範囲を画するものであるため,同様に明確性の原則が妥当するとの共通認識のもとで,刑事罰との関係につき検討を実施いたしました。この点,例えば正当行為による違法性阻却事由を定める刑法第35条のように,一見抽象的と思われる文言が使用されている規定もあり,権利制限の一般規定においても明確性の原則には余りこだわる必要がないとの意見も予想されることから,これも踏まえた議論を行いましたが,報告書49ページでまとめておりますとおり,特別刑法である著作権法の場合,多くが自然法である刑法とは異なり,法政策性の強い法定犯であるため,刑法における違法性阻却事由と同列に論ずべきではなく,権利制限の一般規定を導入するに際しても,可能な限り,法令上で明確に要件を定める必要があるとの意見が大勢でございました。
その他の検討結果につきましては,後ほど報告書を御確認いただければと思いますが,ワーキングチームでは一般規定の導入の必要性,そして仮に導入する場合の具体的な内容等を検討するに当たっては明確性の原則につき,十分留意する必要があるとの意見で一致しております。
続いて,最後の検討事項でございますが,報告書50ページ,概要版ですと8ページの(5)になります。「実効性・公平性担保のための環境整備」についてでございます。
この問題につきましては,まず,懲罰的損害賠償等の新たな制度の導入については慎重に検討すべきであるとの意見で一致しております。また,外国で導入されている法制度を導入する場合,必ずしもその制度に関連する法制度すべてをあわせて導入することが必要とはいえないとの意見が大勢でございました。
さらに,仮に懲罰的損害賠償制度を導入したとしても,その対象となるのは,権利制限の対象とならないことを十分に認識しながら,あるいは容易に認識できたにもかかわらず,利用を行うようなレアケースに限られ,新規ビジネスにおける利用等は通常懲罰的賠償の対象とはならないとの意見や,単に米国に懲罰的損害賠償制度があるからフェアユースが争点となる訴訟数が抑えられている結論にはならないとの意見がございました。
また,Google Book Search訴訟で利用されましたクラスアクション制度につきましては,米国においてクラスアクション制度の存在により,バランスが図られているという関係には必ずしもないとの認識で一致しております。
最後にガイドラインの整備の必要性でございますが,特にこれを法律上義務づける必要はないと考えられるが,一般規定の内容,利用分野,関係権利者団体,または利用者団体の有無等に応じて適切に考慮する必要があるとの意見で一致しております。
長くなりましたが,報告書の説明については以上でございます。
チーム員の皆様におかれましては,非常にタイトなスケジュールの中,毎回長時間にわたり精力的な御議論をいただきまして,まことにありがとうございました。
それでは,御審議のほどどうぞよろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,ただいまの説明につきまして,同様に何か御意見,御質問がございましたら,お願いをいたします。
なお,法制問題小委員会としての報告書については今後ワーキングチームの報告をもとに,さらに議論を進めた上で来期の法制問題小委員会においてまとめることを予定しておりますので,その点つけ加えさせていただきます。
どうぞ,御質問,御意見ございましたら,お願いをいたします。
どうぞ御遠慮なく。
松田委員。
【松田委員】
松田ですが,このワーキンググループの報告書の中で,従前委員会の中では議論が少し出ていたけれども,このワーキンググループの中で整理がされていなかった点がもしあるとすれば,こういう点ではないかなと思うのであります。
特に,フェアユース,一般的規定を導入するか否かの議論が行われている分野と言えば,コンテンツのインターネットにおける利用とそのビジネスモデルの新規ビジネスモデルの適法性の問題が多いのだという議論があると思います。それはそうなのかもしれません。それについては,著作権法の視点では整理がされているわけですが,著作権法を超えて新たな法制をつくるような場合においては,やはり著作権法上の制限規定がかかわってくる問題になることがあるわけですけれども,そのことについてワーキンググループでは議論がなされたということはありませんでしょうか。
著作権法の改正という視点でこれが書かれている。しかし,著作権法以外の法制でデジタルコンテンツ流通を促進するために,著作権法の制限規定をどうすべきかということを導入することの可否について議論されたことがありますかという点でございます。
【土肥主査】
私から申し上げましょうかね。本ワーキングチームにおける検討は,基本的には前回の法制問題小委において検討を進めるべしという枠組みが与えられております。したがいまして,その枠組みに基づいて検討を進めたわけでございます。問題となります点は,ヒアリング等で関係業界,関係団体からさまざまな一般的な権利制限規定を導入する上で必要となる事実と申しましょうか,それが100程度あったわけでございます。その100の中には今委員がおっしゃるようなことに関連するものも含まれておるわけでございますけれども,あくまでもワーキングチームの検討は一般的な権利制限規定との関係の議論であって,それを超えるものではないということでございます。 よろしゅうございますか。
【松田委員】
結構です。
【土肥主査】
ほかにいかがでございましょうか。
中山委員,どうぞ。
【中山委員】
御存じのとおり,アメリカではトランスフォーマティブということが非常に問題になっています。つまり,著作物をそのままの形で使のではなく改変を加えて世の中に提供すれば,世の中はそれだけ情報が豊かになるという,そのことをフェアユースとしてはどう考えるかという点については議論はあったんでしょうか。
【土肥主査】
これも私になりましょうかね。委員おっしゃる点の重要性,トランスフォーマティブな重要性というのは,個別の議論の過程で端々に各ワーキング委員の頭に当然あったと思います。例えば,憲法上の表現の自由の議論の過程においてもそういうことは当然頭に置いて発言されておったと思いますけれども,トランスフォーマティブなそういう創作行為については,一般的権利制限規定との関係で織り込んで議論を進めていくべきであるというようなメインのそういう書きぶりはこのワーキングチームの報告書にはしておりません。しておりませんけれども,その点の重要性は各委員すべて頭の中にあったのではないか,私はそういうふうに想像しておりますけれども,私の認識とここにおいでになる5名ほどの各ワーキングチーム委員の方もおいでになりますので,その方にも御発言いただければと思いますけれども,山本隆司委員,お願いいたします。
【山本(たかし)委員】
トランスフォーマティブユースの点についても私が御紹介するとともに議論したというふうに覚えております。トランスフォーマティブユースについてのまず理解として,著作物を単に改変する利用がトランスフォーマティブユースではなしに,著作物をそのまま使う場合であっても,トランスフォーマティブユースになりますが,その著作物が持っている鑑賞価値,与えられている鑑賞価値を利用しない利用方法の場合にトランスフォーマティブユースとして認められると。ですから,改変する場合だけじゃなしに,同じ著作物,そのまま使っていても,他の用途,本来的な用途でなければ例えば小説というのは娯楽目的でありますけれども,それを裁判用途に使うというのもトランスフォーマティブユースになるというようなものとして御紹介しております。そういう観点から一つお話ししました。この報告書36ページのCの類型です。私が申し上げましたトランスフォーマティブユースの観点からワーキングチームの中での議論の結果,このCの形に発展しておりますけれども,もとになりましたのは,トランスフォーマティブユースです。著作物本来持っている鑑賞価値を利用しない利用方法をもとにしてでき上がった案がCです。こういう形で,米国著作権法に言うフェアユースの中のトランスフォーマティブユースは,ワーキングチームの中で議論されております。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございます。
ほかに何か。
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
前の方が言われた点について私は繰り返しませんが,要するにトランスフォーマティブユースも議論になってそれがCにあらわれたり,いろいろなところに出ているわけであります。このトランスフォーマティブというのはいろいろな意味があるかと思いますが,変形する場合としては一つ典型的なのがパロディですが,それは逆に40ページにありますとおり,議論した上で,検討すべき重要な論点が多いことから,別個に扱うべしという,また別な形であらわれておりまして,いろいろなトランスフォーマティブがあるかと思いますが,いろいろな形で議論されて,各所に出ているということかと思っております。
【土肥主査】
ありがとうございます。ほかにございますか。
それで中山委員,いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
ほかに御質問,御意見ございますか。時間もまだ十分予定しておりますので。
どうぞ。
【松田委員】
全体をきのう1日読ませてもらって,これの考え方は一定の範囲内での一般的規定を導入しても,導入段階では若干の社会的コストが必要かもしれないけれども,それほどの混乱は起きないだろうというふうな考え方がどうも強いように思われます。ただ,それはどうなるかわからないという記載,方向になっていますね。
それからもう一つ,導入したとしても,大きな経済的効果,新しい市場をつくるというようなところまでは至らないのではないかという考え方にも立っているかとも思います。
このため,両方についてはなかなか難しいところがあって,やってみなきゃわからないというところが実はあるんだろうと思います。
報告書としてはやむを得ないし,さらにその点についていろいろな方からの情報を集めるということも委員会としては必要かと思います。
あともう一つは,今言ったパロディの問題は別問題として考えましょう。場合によっては個別の規定で考えることになるのかもしれないと。私はこれは賛成でございます。まさに書いてある理由でそのとおりだろうと思いますし,もう一つ,リバース・エンジニアリングにつきましてもこれに含ませて考えるのではなくて,もう既に一定の議論をしていますから,これも将来的には,できれば近い将来的には個別的規定で解決を図るべきではないかなと,こういうふうに思っております。
全体を見た感想はそんなところでございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。委員おっしゃるパロディ,リバース・エンジニアリングについての考え方は私どももそういう考え方をしております。
それから,社会的な混乱がないかどうか,それにつきましては十二分に議論があったところでございまして,その社会的な混乱,導入における社会的な混乱といいますか,導入のコストはできるだけ少なくするようにということを例えば一つからいいますと,規定の要件の絞り方,そういうものを通じてできるだけスムーズに入れるようにということは考えております。
それから,経済的な効果につきましても,これは私経済的な分析はできませんし,わかりませんけれども,決して従来ヒアリング等で関係団体の皆様の要望を考慮いたしますと,決して少なくないのではないかというふうに私自身は思っておるところでございます。
ほかにございますか。
村上委員。
【村上委員】
私も感想だけになりますが,ワーキンググループが取り組む場合にこれまでやってきた法制小委員会での議論を踏まえてというのはある程度前提になると思います。そういう意味でそれを踏まえた整理として非常によくできている案という印象を持っています。
それで,ただせっかくなので,これから先へさらに議論するということで1点だけ質問があります。先ほど,今松田委員も言われたように,Cの利用類型というのは著作物の表現の知覚を目的とする利用というふうに書いてあって,それと表現と機能の複合性質を持つプログラムとは違うのだという感じで書いてあるわけなのですが,これから議論する場合に,そういう意味で今言われたリバース・エンジニアとかのプログラムの問題は,基本的にCの利用形態の中に入れて議論するということで議論していくのか,それとも例えば研究開発目的の権利制限をつくるということで議論していくのか,それともその辺はまだはっきりしないでこれからの問題だと言われることのような感じで受け取ればよろしいでしょうか。
【土肥主査】
これについても,仮に私からお答えするとしますとおっしゃるとおりだと思います。つまり,特定目的,ワーキングチームの検討課題が一般的な権利制限,つまり特定の目的を絞らない権利制限の規定を考えるべしという検討の中で進めてきたわけでありますけれども,あるものについては我が国の著作権法上の体系といいますか,構成上従前から特定目的の中で規定が進められているものも当然あるわけでありますし,前回,本小委員会にお
いて御注文いただいた,御要望いただいた意見の中には我が国の著作権法上の構成,そういった仕組みを十分前提の議論を進めるべしということが御指摘いただいたというふうに思っておりますので,委員の中にもこの検討課題,100ほどの要望の中で,あるものについては従来的な特定目的の中で,これは仕分けしたらいいのではないかというものも当然ございまして,その中にこのCというようなものについてはそちらで議論してもいいのではないかという意見は複数ございましたと私は理解をしております。
すみません,大渕委員から補足があるのではないかと思いますので,お願いします。
【大渕委員】
ちょっと質問の御趣旨がCの範囲なのかどうかはよくわかりませんが,リバース・エンジニアリングはどうなるかという点に関しましては,報告書で申しますと,お手元の報告書38ページの2つ目のパラのところでリバース・エンジニアリングについては個別権利制限規定を創設することによる対応が適当であるとの意見が大勢であったということになっておりますので,こちらのことが大勢だったということであろうかと思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにございますか。
多賀谷委員,どうぞ。
【多賀谷委員】
先ほど山本委員からトランスフォーマティブな利用というのは,Cの類型を考えるときに,もとにあったということを─私は最初にこの報告書を見せていただいたのは,やはりトランスフォーマティブのお話は第4の特定の利用目的を持つ利用のほうの話じゃないかというふうに読んでいました。それでトランスフォーマティブを何に解するということは大分違うんだろうという気がします。だから,その点はもう少し議論が必要だと思います。
もう一つは,特に憲法のところの議論とも絡むんですけれども,基本的にこのCの利用の場合も含めて補償は前提としないような形での利用ということになると思うんですね。ところが,恐らく,もしトランスフォーマティブな利用というのを例えば中山先生あたり考えられている例だと,それはコンテンツの改変であって,場合によると補償を伴うような利用という,そういう概念が多分この権利制限の議論に入ってきているんだと思うんです。だから,それを明確に除外したという結論になっているのかどうかということをもう少し確認させていただきたいと思うんですけれども。
【土肥主査】
これも私でしょうかね。今おっしゃった補償の関係,これは長谷部先生に来ていただいて,その点については御意見を伺い,私どもも質問を出させていただいた経緯ございます。一言でいいますと,仮に補償が必要であったとしても,憲法の直接適用が可能であるから,著作権法上にそのことを仮に盛り込まなくてもそれは構わないのであるということを繰り返して長谷部先生はおっしゃっておられました。だから,権利制限の中で仮に補償が必要なものがあったとしても,憲法上はそれほど困らないというのが先生の御意見かと思いますけれども,そういうものが仮にあるとすれば,著作権法にビルトインとしておいても一向に構わないものかなとは思っておりました。しかし,そういう受け止め方を私どもはしておったということでございます。
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
先ほどの多賀谷先生からの御質問というのは,多分にこういう規定をどういうふうに具体的に組んでいくかというところにかかってくるかと思いますし,それからトランスフォーマティブというのを全部拾うのかどうかというあたりにかかってくると思います。一例としては先ほど申し上げました,フェアユース論で議論された中では一番典型だったパロディに関してはむしろ逆側のほうに入っているということで,それ以外でも当然いろいろな御要請ありましたので,それらをいずれも念頭に置きつつ,これをつくりました。でき上がったものは,要するにここに印刷されて,皆さんのお手元にあるものでありますので,これを御覧いただくということになろうかと思いますので,Cが先ほど御説明あったのはそういうことの発端ででき上がったのがこのCなものですから,これはCはここに書いてあるようなものなんで,それがトランスフォーマティブ全般を拾っているかどうかというのは,これは御覧いただくしかない,そういう話じゃないかと思っております。それはまさしく各論性の非常に強いもので,どういうふうに組んだらどういうふうになっていくかという具体性の強い問題だと思います。今まで割と抽象的に議論されていること多かったんですが,今回のワーキングチームではこういうふうに具体的な形で議論しているというところが味噌でございますが,それでいろいろな問題は解消しつつ進んでいるんではないかというふうに理解しております。
【土肥主査】
どうぞ。
【多賀谷委員】
今の土肥先生の損失補償の話だけです。確かに憲法学者はそう言うのですけれども,確か河川付近地制限令についての判例で,何ら損失補償の規定がない場合でも例外として憲法29条3項で補償ができるという話で,通常は補償が必要ならば個別の法律に補償規定を置くのが普通だと思います。
【土肥主査】
ありがとうございます。
どうぞ。
【大渕委員】
今の点はまさしく,ここで書いてあるものが本来補償を必要とするほどの制限であるとする場合であれば,補償規定を入れるのか,直接適用するかという,次のフェーズの問題だと思いますが,私が申し上げましたのは,そもそもこれ自体がそういうものかどうかというところは当然検討しまして,むしろそういうところも踏まえながら具体論として言っているという趣旨でございますので,それで御理解いただきたいと思います。
【多賀谷委員】
法律の規定の中に補償の規定がないということは,要するに基本的に補償は必要ないような制限だという,Cで書かれている,それだけなんですか。
【大渕委員】
むしろそのほうではないかと思っております。
【土肥主査】
どうぞ。
【山本(たかし)委員】
このCについてのもともとの御質問だったと思います。その趣旨ですね。それに明確に答えさせていただきたいと思います。まず先ほど申し上げましたように,Cの議論の出発点になったのはトランスフォーマティブユースですが,そもそもトランスフォーマティブユースというのはフェアユースの類型ですので,損害が認められるような場合にはフェアユース成立しません。したがって,その補償金を与えるからフェアユースが成り立つ,あるいはトランスフォーマティブユースが成り立つとかという関係にはございません。したがって,Cが前提にしているのは,補償金があって権利制限が認められるという事案は念頭に置いておりません。そのことは,報告書の41ページのところにもちょうど真ん中ぐらいのところなんですが,四角くあって,その下の文章の2行目,「上記AからCのような利用類型についてはそもそも補償金の支払いによる権利者と利用者との間の調整を行うような利用行為ではないこと」という認識で,A,B,Cというような類型をやっております。当初の御質問に対する回答とさせていただきます。
【土肥主査】
長谷部先生の御説明の際にも,今山本委員おっしゃったように,そもそも著作権といいますか,著作権法の世界に例外と制限という権利制限についてのとらえ方があるわけですけれども,もともと著作権というものはそういう限界を持ったその権利であるというふうに認識すれば補償は要らないのではないかということをヒアリングのときにもおっしゃっておられましたので,あわせてつけ加えさせていただきます。
あと山本委員のおっしゃっているところ,重々承知しておりますけれども,このC類型に関しては,著作物的な利用,商標的な使用というような議論も一方においてあったということがございますので,これはワーキングチームの中でしかわからないところなんですけれども,そういうこともありましたので,お含み置きいただければと存じます。
ほかにいかがでございましょうか。
茶園委員,どうぞ。
【茶園委員】
報告書の42ページに規定のタイプというところがありますが,どのような規定のタイプとするかによって,明確性等の問題は大きく左右されるのではないかと思います。しかしながら,検討時間が制約されているために具体的な結論が得られなかったということは残念なのですけれども,今後この法制小委において検討されることになるということなので,この点に関してお聞きしたいことがあります。今までも受け皿規定とか,フェアディーリング型とかいろいろ用語が法制小委でも出てきたと思うのですけれども,その意味について,必ずしもみんなが共通の認識を有しているのかがよく分かりません。恐らく受け皿規定というものは何々に準ずるという,例えば現行法でしたら49条の次辺りに,30条から49条までの規定に準ずるといった形になるのかなと思います。また,フェアディーリング型というものは,イギリス法に研究等を目的にするような公正利用は許すといった規定がありますことから,このワーキングチームにおいて,フェアディーリング型として何かある特定目的のための利用は許すといったものを想定されていたのではないかと思うのですけれども,そうであれば,その目的としてどのようなものをお考えだったのでしょうか。あるいは,そうではなくて,目的を特に特定せずに議論されていたということなのでしょうか。
【土肥主査】
この42ページの今読んでいただいた(3)規定のタイプについてのところの文章というのは,これはもともと法制小委のところで決まったものが来たということでございまして,私どもはそれを受け止めたという形になります。それでフェアディーリング型,特定目的というのは今般の改正で調査研究目的の規定が入ったわけでありますけれども,ああいう規定,つまり調査研究目的における権利制限規定という,そういうことは考えました。なぜかといいますと,先ほどの添付資料にありますように,要望として100あるわけですけれども,その100の中には池村さんのほうから紹介してもらえばいいと思いますけれども,そういう調査研究目的に属するような,そういう要望もあったわけでありまして,したがって,そういう可能性の議論も当然したわけでございます。
池村さん,何かお願いします。
【池村著作権調査官】
お手元の71ページ以降,2分冊のほうの参考資料のほうですけれども,そちらの71ページ以降に要望のありました利用が一覧となっております。例えば74ページに新たな技術・機器の研究開発・設計・製造・販売・故障原因分析の過程において云々というポツがありますけれども,そこで挙げられているようなものについては,例えば研究開発といったような目的でくくれるのではないかというような議論もなされております。報告書でいいますと,例えば36ページの下から2つ目のパラグラフでございますが,なお,Cの利用については仮にこれを一般規定による権利制限の対象と位置づけるとしても,例えば研究開発目的等,一定の目的を有する利用に限定すべきであるとの意見があったというような意見もございまして,こういった記載となっております。
【土肥主査】
大渕委員,どうぞ。
【大渕委員】
先ほどの茶園委員の御質問なんですが,これはまさしく先ほど主査のほうから言われたとおりで,ここの四角の42ページの上に書いてあるのが,この本委員会からのいわばマンデートだったわけですが,マンデートがこれだったからこれにそのとおり即して,要するに我々としては一般規定というのはどういうものがあるべきかということで検討した結果が先ほどあったようなAとかBとかCという形に集約されるんではないかということだったのであります。受け皿規定と呼ぶかどうかというネーミング自体というよりは,むしろヒアリングで出していただいたものを抽出した成果というのがA,B,Cとなって,これを今後またいろいろやっていく上で,それがどういう形になっていくかというのにもまたかかわってくるかと思いますので,そういう意味では私自身も,これ自体が受け皿規定なのかどうかを考えるというネーミングの点は,,今まで最後に置いてあれば受け皿規定というような定義もされていたりもするのであって,個人的には意味があまりないようにも思いますし,それよりは規定をどういうふうに固めていくかという形で進めていったほうがいいと個人的には思っております。
【土肥主査】
よろしいですか。ほかにございますか。
中山委員。
【中山委員】
期間の点ですけれども,裁判による期間と,立法による期間は余り変わらないということですが,これ一資料だから大した意味はないと言えばそれまでなんですけれども,恐らく一見して,これを読んだ人は,どちらの方式も余り変わらないという印象を与えると思います。立法については審議会の開始から起算しているわけですけれども,実際はその前にいろいろ長い運動があるわけですね。例えば身体障害者問題の例見ても,ずっと長い間運動してきて,やっと審議会に上げてもらえる,ひどい場合には審議会も全然扱ってくれないので,議員立法に持っていってやっと立法するとか,そんな例もある。裁判も訴え提起の前に,恐らく普通の場合はいろいろ長い間ごたごたがあって裁判になる。そうすると,訴え提起と審議会開始というところから始めるというのはどういう意味があるのかなという点と,あともう一つ,裁判による場合は仮にフェアユース規定を入れて裁判による場合は判決までは多分利用している。それに対し個別立法の場合は,立法してもらうまでは利用できないという違いがあるので,これを単純に並べた理由というのは何かあるんでしょうか。
【土肥主査】
中山委員がおっしゃるとおり,全くそういうことなんですね。つまり,一般的権利制限規定の場合は,利用ができて,判決が出れば,それは適用になる。だけども,法律の改正であると,そっから先の話なので,そこは本当に全く違う話ではあるんですけれども,ただ,求められたところの具体的な個別の権利制限規定によって事に対応するという場合に,何を持って検討の材料にするか,検討の資料にするかということがございまして,これは委員がおっしゃるような批判を重々承知の上でその重要な過去の判決例,そういったものの第一審の受理から最高裁の判決の確定まで,ちょっといろいろ理由はあるんですけれども,そういったものと,審議会を通じて法改正に至ったまでの日数を一つの情報の提供としてそういう目的のためにお出ししたという以上のものでは私はないと考えております。委員おっしゃるようなことは,重々私どもも認識をしておりました。
どうぞ。
【山本(たかし)委員】
今の点なんですけれども,要は問題解決に要する時間という点から裁判による問題の解決に要する時間,立法による解決に要する時間という比較として出したというのがこの報告書での期間計算の意味だと思います。その2つをじゃあどれだけ違いがあるのか,全く同じなのかというと,それは違うと思います。ここには明確には議論されて記載されておりませんが,それを単純にパラレルに比較してよしあし判断できるのかという問題点はあると思います。例えば,立法であれば,個人のレベルでどうこうできる問題じゃなしに,団体で利用者団体なり,権利者団体でそれぞれ役所に対して働きかけてでないとできないんで,個人のレベルではできない。それに対して裁判の場合はほかの人がどう思おうと,自分さえこうなんじゃないかと思えば,個人的にアクションを起こせる。その違いがあるとは思います。しかし,ここでは,一つの裁判でやれば早く解決できるんだということには必ずしもならないという問題点を出しています。この報告書では,裁判に要する時間も結構長いんですよということの意味だと思います。
【土肥主査】
どうぞ,大渕委員。
【大渕委員】
これは要するに,先ほども主査も皆様も言われたとおり,一つの目安というのに尽きていて,この点が時間かかるという御指摘があったものですから,印象論を言ってもしようがないから,何か統計的な手がかりはないかなということで出してみたという以上のものではもともとなくて,おっしゃるとおり,審議会においても事前の準備期間もあるし,訴訟においても準備期間もあるでしょうと言い出すと,それらはまず統計的にとるのが不可能でして,わかる,とれる範囲で一応目安的に組んでみたらこうだという,その点も付記した上での一つの目安でありまして,もともとこの時間の点だけですべてを決定しているわけではなくて,たくさんあるファクターのうちの一つのまたさらに一つの目安という,そういう位置づけとして受け取っていただくしかないのかなというふうに考えております。
【土肥主査】
どうぞ。
【中山委員】
私ももちろんそう思っていまして,先ほど枕詞に一資料としてであれば大した意味はないと言えばそれまでなんですけれども,と申し上げたのはその意味ですが,ただ,これを見た人は何だ同じじゃないかという印象を与えのではないかということを言いたかっただけで,それは山本委員とか大渕委員のおっしゃるとおりだと思います。そこら辺のことをもう少し書いたほうが読んだ人に対しては誤解を与えないのじゃないかという,そういう意味です。
【土肥主査】
中山委員の御指摘のところですけれども,ワーキングチームとしてはこういうふうな情報の提供においても法制小委においてはしかるべき委員の方々ばかりおいでになりますので,十分活用していただけるんではないかと思ったんですけれども,広く読まれるということも踏まえて,これはこれでまとめましたので,御了解いただきたいと存じますけれども,今後何かありましたら,またそういう広くこうしたものが読まれていくということを前提に書いていくということを肝に銘じたいと思っております。
しかし,こうやって中山委員がおっしゃっていただいておりますので,一体としてこの本日の議事録,そういったものとワーキングチームの報告書というものは一体として伝わると思いますので,恐らく十分誤解のないような形で理解していただけるものと思っております。
ほかにございますでしょうか。
もう一つですね。
【中山委員】
議論になったかどうかをお伺いしたいのですけれども,フェアユースになるかどうかというかなり大きな一つのファクターとして,お金を徴収するシステムがうまくできているかどうか,つまりトランズアクションコストの問題ですね。徴収するシステムができていればフェアユースを否定する要素となりうると思いますし,徴収システムがなければ金を払いたくたって,払えないので,フェアユースを認めるほうに傾きやすいと思うわけです。ですから,そういう徴収方法とか,実効性とか,トランズアクションコストといった議論はあったんでしょうか。
【土肥主査】
これはありました。既に複製についてはそういうものがあるわけでございますけれども,こういう仕組みを通じたものということについては委員の中では評価は少し分かれておりまして,そもそも現実として著作権者の複製権というものがああいう形で対価請求権にかわっているわけですけれども,そういうものを許諾に基づいてそういう運用がされているんであれば,それはそれなりに意味があるんだろうと思うんですけれども,中山先生なんかのものが複写権センターの対象になって複製されておると思うんですが,それは仕組みとして先生のところに還元されているわけですか。
【中山委員】
具体的な複写権センターについての問題は,それはここではちょっと申し上げられないといたしまして,例えばアメリカで言えば,日本の30条の規定ないわけですよね,そこでフェアユースの問題になるわけです。しかし,それでは30条に該当するような行為は本当に全て全部自由かというと,今現に自由では部分もあって,お金取る部分もあるわけですね。そのような部分については,仮に30条がなくてもフェアユースは認めにくい。それがなければ,家庭の中まで全部切り口入り込んでいって抑えなきゃいけないというのはおかしいからやはりフェアユースに傾きやすいという,つまり実効性の確保,つまりトランザクションコスト,これとの関係でフェアユースというのはどうなるかという議論がありましたかという,こういう質問です。
【土肥主査】
そういうことですね。それももちろんございました。トランザクションコストとの関係でということになりますと,当然計量的な話も入ってくるわけでございまして,なかなかワーキングチームとしてはそこから先を詰めていくことはできなかったんですけれども,御質問がそういうことも踏まえて,このワーキングチームの報告書を作成されたのかということであれば,全くそのとおりであるというふうにお答えしたいと思っております。
何かこの点について補足される方はおられますか。
どうぞ。
【大渕委員】
トランザクションコストで思いつくのは,アメリカの判決なんかでも研究関係でクリアランスセンターができたからむしろマーケットフェイリュアが解消されてフェアユースでなくなったというような話が思い出されるところなんですが,そういう関係では今回むしろ40ページの真ん中辺に研究目的の著作物利用については,研究等は後から別途やりましょうという部分があったかと思うんですが,そちらのほうの話の中では必ず出てくる話で,複写権センター等の関係もあるので云々かんぬんという,そこのところでは必ず出てくる話であって,本ワーキングチーム全体について議論していた中の端々で出てきている話というふうには理解しておりますが。
【土肥主査】
クリアランスセンターの話に関しては,当然そのことは議論したわけですので,池村さん,何か。
【池村著作権調査官】
議論をした上でこの報告書になっているというのは今大渕委員や土肥主査からあったとおりでございますが,報告書の中に具体的にそれが表現されているかというと,それは表現されていないということになると思います。
大渕先生が今おっしゃったのは39ページから40ページのあたりで研究目的について個別でやるべきだという意見が大勢であったという形になっております。
【土肥主査】
無記録ですけれども,それはよく議論になりましたので,御報告しておきたいと思います。
大体,以上でよろしゅうございますか。
それでは,さまざまな御意見,御質問ありがとうございました。
どうぞ。
【大渕委員】
確認だけですけれども,報告書を見ますと40ページのその他のあたりと,それから43ページについて,先ほど御説明済みなので再確認だけですが,先ほども御紹介ありましたこの我々のワーキングチームの前にあったUFJの報告書などでもかなり出ておりました43条関係というのはこういう形でこの中に盛り込まれているということで確認させていただければと思います。事務局のほうでも先ほどの御説明のとおりでよろしいという理解でよろしいでしょうか。
【池村著作権調査官】
はい,そのような御理解で結構です。
【土肥主査】
先ほど申しましたように,まずもって貴重な御意見,御質問ありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。
今期の法制問題小委員会におきましては,報告書の形ではまとまっておりません。したがいまして,審議の経過という形で来週(水)の文化審議会著作権分科会において,報告が必要になってくると思いますけれども,この報告を審議の経過という形で私から報告させていただいてもよろしゅうございますか。
それでは,私のほうから審議経過の報告をいたしますけれども,その際の内容につきましてもこれも御一任いただいてよろしゅうございますか。
それでは,私に御一任させていただくという形で進めさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
本日,報告していただいた事項につきましては,来期の著作権分科会においても引き続き検討されることになります。この点,今後の審議の進め方について,事務局から説明をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
本日御報告いただきましたネット上の複数者による創作に係る課題,そして間接侵害につきましては,来期の法制問題小委員会において引き続き御審議いただくことを予定しております。また,権利制限の一般規定につきましては,来期の法制問題小委員会での審議を迅速かつ円滑に進めるため,必要に応じ,適宜委員の皆様から意見をちょうだいする機会を設け,その意見を来期初めの法制問題小委員会において紹介することも考えております。
委員の皆様におかれましては,引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,最後に先日著作権法施行令の改正等が成立したと伺っておりますので,事務局からその報告をお願いしたいと存じます。
よろしくお願いします。

(4)その他(著作権法施行令の改正等について)

【壹貫田著作権課課長補佐】
それでは,このたび改正いたしました政省令等につきまして,お手元の参考資料1から3に沿いまして,簡単ではございますが,御報告,御説明いたます。
お手元の参考資料1,2,3でございますけれども,それぞれ概要のペーパーと,それからその後ろに政令におきましての要綱,改め文,新旧等あわせてつけておりますので,ちょっと資料が煩雑になって恐縮でございますが,そちらのほうを御参照いただきながらお願いいたしたいと思います。
まず,参考資料1にございますように,今回の政令改正のポイントは大きく6つございます。そのうちの1つ目でございますけれども,障害者福祉関係についてでございます。今回の法律改正によりまして,障害者の情報アクセス,これをより容易にするため,対象となる障害種の拡大や認められる行為の拡大等を行ったところでございます。具体的には,従来視覚障害者という限定があったところをその他視覚による表現の認識に障害のある方,具体的には発達障害の方々とか,そういったことも含めるよう法律を改正したところでございます。このように法律の趣旨を踏まえまして,政令で定める権利制限規定の主体となるものについても,今回拡大を図る方向で政令を定めております。
具体的にはまず視覚障害者等のための複製等が認められる者についてでございますけれども,現行政令で指定されております施設,知的障害児施設や障害者支援施設,それから大学図書館等の施設,これらの設置者について引き続き規定をいたしております。また,広く一般公衆への情報提供を行うことが期待されている国立国会図書館及び図書館法上の図書館について,新たに規定をいたしました。さらに,技術的能力,経理的基礎,その他の体制を有するというふうに認められるものにつきましては文化庁長官による個別指定ということもできるように規定をしているところでございます。
このように,従前からの施設につきまして引き続き規定をいたしますとともに,また図書館等新たに規定した施設もございますが,従来から規定している施設につきましても今回障害種の拡大が図られたことに伴う見直しを行っております。例えばでございますが,入所型の施設である知的障害児施設につきまして,新旧のほうを実際に御覧いただくとわかりやすいかと思いますけれども,ページが共通して振っていなくて恐縮ですけれども,新旧のページでいいますと2ページ目にございますが,例えば知的障害児施設につきまして括弧書きにおいて,従来は専ら視覚障害をあわせ有する児童を入所させるものに限るという限定を付していたところですが,このたびそういった限定を外すなどの所要の見直しを行っております。
一方,参考資料1にもございますとおり,例えば図書館についてでございますけれども,今回,権利制限規定の幅を拡大しているところを踏まえ,利用者の確認をしっかりしていただくという意味で,図書館につきましては司書等の配置を求めるなど,権利者の利益保護と本規定に係る著作物の利用とのバランス,こういったものに配慮した規定としておるところでございます。
続きまして,聴覚障害者等のための字幕等の作成等が認められている者等につきましても,視覚障害者等の場合と同じく現行政令で指定されている施設でございます視聴覚障害者情報提供施設,これを設置して事業を行う者を引き続き規定しております。
そのほか,視覚障害者等と同じく,一定の要件を満たす場合,文化庁長官が個別指定するという道を開いておるところでございます。
最後に映画の作成・貸し出しが認められる者として,これは利用実態等手前どもでもいろいろと調べまして,その結果,大学図書館や公共図書館,学校図書館のほか,視聴覚障害者情報提供施設を規定しているところでございます。
また,同様に文化庁長官の個別指定についても規定をしておるところでございます。
なお,映画の作成・貸し出しが認められる者につきましては文部科学省令に定める基準に従って行うことをすべての事業者に求めることとしております。
お手元の参考資料2でございますけれども,Ⅰのところで,その聴覚障害者等用複製物の貸し出しの基準というものを具体的に書いております。すべてを読み上げることはいたしませんけれども,例えば,貸し出しを受けようとする聴覚障害者等の登録をお願いをする。あるいは貸し出しに関してはここにありますように目的外使用しないであるとか,デジタル複製防止手段が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸し出しを受ける場合には,新たな複製物を作成しないでいただきたいという旨の規則を定めるといった規定を省令上置いているところでございます。
続きまして,参考資料1のほうに戻りますけれども,Ⅱにございます美術品等の譲渡等の申し出のための画像掲載関係について御説明いたします。
改正後の法律におきまして,著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じている場合には,美術品や写真の譲渡,または貸与するために商品紹介用の画像掲載を認めるという改正がなされていたところでございます。
このことを受けまして,政令では複製と公衆送信とに分けて規定をし,また資料2もございますとおり,著作物の表示の大きさや精度について,文部科学省令で定める基準に適合する旨規定しております。
さらに,これも参考資料を御覧いただきますとわかりますように,いわゆるコピープロテクションを用いている場合には,これは画像の複製によって売買取引終了後も繰り返し干渉されるおそれが少ないということなどを踏まえまして,著作権者の利益に及ぼす影響が比較的少ないと判断し,表示の精度が文部科学省令で定める,これは省令上イと書いてありますけれども,イの基準よりも緩やかな基準に適合するものとなるよう規定いたしているところでございます。
省令の中身については,また前後して恐縮ですけれども,参考資料2の2ページ目,Ⅱを御覧いただければと思います。
具体的に先ほども申し上げましたように,このたびに省令で定めている基準としては表示の大きさ,それから精度というものを定めております。2.を御覧いただきますとおわかりになりますとおり,図画として行う場合,これについては50平方センチメートル以下であれば,それから,デジタル方式による複製については画素数が32,400以下であれば無許諾に複製ができるというふうに定めさせていただいております。また,先ほど申し上げましたコピープロテクションを用いている場合につきましては,お手元の資料の3ページ目にございますけれども,この場合,緩やかな基準ということで,画素数が9万以下ということを規定いたしたところでございます。
そのほかにつきましても,表示の大きさ,精度について定量的に定めたところでございますけれども,実際には例えばでございますが,抽象画のように大変単純な表現に比して,細密画のような複雑な表現を伴う著作物については比較した場合に,そこに含まれる情報量が大きくなるという事情もございますし,また取引の対応を見た場合に,実際に現物を見ることができるかどうかといった違いによっても必要な商品情報の量に違いが生ずることを考えあわせまして,このたび,定性的な規定もあわせて省令上書かせていただいているところでございます。
続きまして,参考資料1でございますけれども,Ⅲの送信の障害の防止等のための複製関係について御説明いたします。
法律におきましては,いわゆるサーバー管理事業者が送信の障害の防止等のために必要な複製を行うことを今回認めることとなっております。著作権法では,先生方御案内のとおりかと思いますけれども,送信については従前自動公衆送信について規定しているものの,電子メール等の特定少数間で行われるような送信や求めに応じないで行われる送信については規定がございませんでしたので,このようなものについて,今般政令で規定したところでございます。
政令につきましては,参考資料にもございますように,特定送信として受信者からの求めに応じて自動的に行う送信で自動公衆送信以外のもの,それから受信者からの求めに応じて自動的に行う送信以外の送信で,電子メールの送信その他の文部科学省令で定めるものという旨規定しております。
2つ目のほうの文部科学省令で定めるものの具体的な内容につきましては,参考資料2のⅢを御覧いただければと思います。
参考資料2のⅢに書いてあります内容につきましては,そこに掲げているとおりでございます。具体的な条文上の表現については新旧のほうを御覧いただければと思いますけれども,一号については電子メールの送信や携帯電話のショートメッセージの送信といったものを,二号につきましてはIP回線を使ったファクシミリ送信などを具体的に想定しております。また,三号につきましては,今後,特定送信に該当すると考えられるような新たな技術が開発されたときに柔軟に対応できるようこの規定を置かせていただいたところでございます。
それから,同じ文脈でございますけれども,法律上特定送信をし得るようにするための行為で,政令で定めるものといたしまして,現行法律にございますいわゆる送信可能化に係る規定を踏まえまして,条文を御覧いただいたとおりの内容で定めさせていただいているところでございます。
続きまして,参考資料1のⅣ,情報検索サービス関係についてでございます。法律では政令で定める基準に従う者に限って情報検索サービスを実施するための複製等を行うことが認められております。今般のこの法律改正の行った際の権利制限の根拠の一つといたしまして,情報検索サービスによる情報収集が自動的に行われているため,著作権者の事前の許諾を得ることが困難であるといったことがございました。このことを踏まえまして,政令では基準として,一つには情報の収集,整理,提供といったことをプログラムによって自動的に行うこと。それから,文部科学省令で定める方法に従って,情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しない。また既に収集した情報につきまして,先ほど申し上げた[2]の措置がとられたことが判明したときは当該情報の記録を消去することといったことを規定しております。
省令の具体的な内容につきましては,参考資料2のⅣを御覧いただければと思います。非常に細かい内容が書いてあるところでございます。この条文を置くに当たりましても,関係省との相談や具体的な技術対応をいろいろと調べさせていただいた上で書かせていただいておりますけれども,検索エンジンサービス事業者による措置を書いているこの内容については,こうした方法が一般的な業界の慣行になっているというところを踏まえまして,このような具体的な書きぶりをさせていただいているところでございます。
続きまして,参考資料1のⅤ,電子計算機における著作物利用に伴う複製関係についてでございます。法律ではインターネット上のウェブサイトの閲覧等をする場合に,パソコン上で情報処理の円滑化のために適法に作成された複製物について,政令で定める一定の行為等をしないで利用する場合には,目的外使用として複製とみなし,権利制限を認めないという規定が置かれております。
若干わかりにくいところではございますけれども,法律で適法になる行為とは具体的には例えばウェブページに更新日時が記されており,ウェブページを求める信号を送った時点が当該更新日時を超えていないような場合において,パソコンに蓄積,複製されているウェブページを利用することが想定されます。
この場合には,ウェブページそのものの著作物の情報が送信されるのではなく,更新がされていないという旨の情報が送信されるのであって,そうしたことを具体的に想定しながら政令において条文のような書きぶりを定めたところでございます。
具体的な条文の内容等につきましては,参考資料や新旧を御覧いただければと思います。
最後に参考資料1のⅥについてでございます。今回の法律では,これも皆様御案内のとおり,文化庁長官の裁定を受ける前であっても,長官の定める使用料相当額の担保金を事前に供託した上で著作物を利用することができる,いわゆる申請中利用制度を創設したところでございます。このことを受けまして,政令では一つには相当な努力を払っても著作権者と連絡することができない場合や,申請中利用の際に供託した担保金の払い戻し事由とその金額,それからその他,裁定申請の際に添付すべき資料等の事項につきまして,定めることとされております。まず,相当な努力を払っても著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合でございます。
これにつきまして,参考資料1の該当部分を御覧いただければと思います。いろいろと書いてございますが,端的に申し上げますと,氏名や住所など,権利者と連絡するために必要な情報を得るために政令で定めているすべての措置,具体的にア,イ,ウでございますけれども,そういった措置をとり,かつ当該措置により得られた情報その他その保有するすべての情報に基づいて連絡するための措置をとったにもかかわらず連絡ができなかった場合ということが定められているところでございます。
なお,御覧いただいたらわかりますように,例えばアのところにつきまして,広く権利者情報を掲載していると認められるものとして,文化庁長官が定める刊行物その他の資料,イ,ウも同様に文化庁長官が定める者,あるいは文化庁長官が定める方法といったものを今般文化庁告示で示しております。具体的な内容につきましては,参考資料の3を御覧いただければと思います。
参考資料3の2.に告示の内容を記してございますが,すべて読み上げることはいたしませんが,(1),(2),(3)に書いてありますようなことを現時点において告示させていただいておるところでございます。
御案内のとおり,1月1日施行ということで,申請中利用制度,これから具体的な運用が始まるところでございますけれども,今後の運用を重ねまして,必要があればまた見直しをしてまいりたいというふうに思っております。
また,そのほかにも政令におきましては,担保金の額が著作権者が弁済を受けることができる額を超えることとなったとき,その超過額を取り戻すことができる。あるいは裁定申請書に記載すべき事項として,申請中利用を行う場合には,その旨を記述していただくといったことなどを規定しているところでございます。
以上,大変足早の説明で恐縮でございますけれども,これら政省令について定め,ことし1月1日から施行をいたしておるところでございます。
駆け足の説明でございましたけれども,皆様御案内のとおり,今回の政省令の改正内容につきましては,種々具体的な内容が含まれているところでございます。御不明な点等ございます場合には,個別に著作権課法規係までいつでもお問い合わせいただければ,お答えいたしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,もし何かありましたら著作権課までお問い合わせいただければと存じます。
ほかに特段ございますか。
どうぞ。
【中山委員】
きのうの複数の新聞に今日の審議会の内容が載っていて,もう既に決まっているような内容で載っているわけです。これは文化庁の話だけでなくて,私が関係する多くの審議会でも大体事前に新聞に載ってもう決まっているようなことになっているわけです。これは,事前説明を受けた委員からリークされたのか,事務局からリークされたのか全くわかりませんけれども,あの新聞を読む読者は審議会って何だと,もう決まっているではないかという印象を与えてしまう。特に今回の場合はワーキングチームは秘密のはずなんです。本来漏れるはずがない。情報の管理というのは事務局も含めて,もう少ししっかりやっていただきたいと思います。そうしませんと,審議会の権威にかかわるのではないかという感じがいたします。
【村上委員】
それ別にここの審議会じゃなくて日本の審議会とか日本のことすべてについて共通なんで,事前にもう決まったような情報が漏れて,それはやはりまずいというのは私も同じ意見なんで,そこら辺の管理はしっかりくれぐれもやってもらうことは大切だと思います。
【村上委員】
別にここの審議会だけでなくて日本の審議会すべてについて共通なので,事前にもう決まったような情報が漏れるのはまずいというのは私も同じ意見なので,そこらの情報管理はしっかりやってもらうことが大切だと思います。
【土肥主査】
十分踏まえて,今後この法制小委でも進めてまいりたいと思っております。新聞読んでなかったのでわかりませんでしたけれども,早速確認しておきたいと思いますし,今の御指摘は事務局も踏まえ,重々今後この点重く踏まえて進めていくと思っております。
ほかに特にございませんでしたら,本日はこのくらいといたしたいと存じます。
事務局に連絡事項がございましたら,お願いいたします。
【合田文化庁次長】
文化庁次長の合田でございます。
連絡事項ということではございませんが,本日の会合は今期の最後の会合ということでございますので,一言御礼を申し上げさせていただきたいと存じます。
今期の法制問題小委員会では,先ほど来お話もございました権利制限の一般規定の問題,あるいはネット上の複数者による創作に係る課題,間接侵害といったような大変大きな問題について大変精力的に御審議をいただきまして,改めまして心より御礼を申し上げたいと存じます。
来期も引き続き,これらの問題につきまして,御検討をお願いをすることになります。大変御多忙の中ということは重々承知しておりますけれども,引き続き御理解,御協力,また御示唆をいただければ大変ありがたいと考えてございます。私どもといたしましても,そういった御審議を通じて,いろいろと御示唆をいただいた中で,一生懸命取り組んでまいりたいというふうに考えております。
なお,情報の管理の問題について御指摘がございましたが,私どもといたしましても,その点,また改めて十分に注意をして対応してまいりたいと考えております。
そういったようなことで,来期もぜひ引き続きよろしくお願い申し上げます。
簡単でございますけれども,御礼の御挨拶とさせていただきます。
よろしくお願い申し上げます。
【土肥主査】
どうも合田次長,御挨拶ありがとうございました。
それでは,本日はこれで今期の法制問題小委員会を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
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