(平成22年第4回)議事録

1 日時

平成22年4月22日(木) 14:00~16:00

2 場所

三田共用会議所 3階 大会議室

3 出席者

(委員)
大渕,岡山,小泉,清水,多賀谷,茶園,土肥,中山,前田,松田,村上,森田,山本(たかし),山本(りゅうじ)の各委員
(文化庁)
戸渡長官官房審議官,永山著作権課長,ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)権利制限の一般規定について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1
資料2
資料3
参考資料1
参考資料2

6 議事内容

【土肥主査】
それでは,時間でございますので,ただ今から文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第4回を開催いたします。
本日は,ご多忙の中ご出席をいただきまして誠にありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましては,予定されておる議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場をしていただいておるところでございますけれども,特にご異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】
それでは本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
なお,本日は中村委員がご欠席ですが,中村委員のお申し出により,法務省刑事局付後藤有己氏に代理としてお座りいただいておりますので,ご了承いただければと存じます。
それでは,事務局から配布資料の確認と委員に変更ございましたので,あわせてその紹介をお願いいたします。
【壹貫田著作権課長補佐】
それでは,配布資料の確認をいたします。議事次第の下半分をご覧ください。
まず,資料1といたしまして,権利制限の一般規定に関する中間まとめ(案)を,資料2といたしまして,第3回法制問題小委員会における権利制限の一般規定に関する主な議論の概要を,資料3といたしまして第10期の法制問題小委員会の委員名簿をお配りしております。また,参考資料1としまして,知的財産推進計画2010の骨子の概要を,参考資料2といたしまして同骨子の本体をお配りしております。
配布資料は以上でございます。落丁等ございます場合には,お近くの事務局員までお声かけください。
また,本日付で筒井委員のご後任として法務省民事局参事官でいらっしゃいます岡山忠広様にご就任をいただいております。
以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
なお,岡山委員には,本日途中退室されるご予定と伺っておりますので,同様に法務省民事局付松尾博憲氏に代理としてお座りいただいておりますので,これもあわせてご了承いただければと存じます。
続きまして,議事に入ります前に,先月30日に開催されました知的財産戦略本部において,知的財産推進計画2010骨子が決定されておりますので,これについて事務局から簡単に紹介をいただければと思います。
【壹貫田著作権課長補佐】
それでは,知的財産推進計画2010の骨子につきまして,参考資料1の概要に沿って説明いたします。
参考資料1をご覧ください。
先ほど主査の方からもございましたように,本骨子は本年3月30日,総理を本部長とする知的財産推進本部において決定がなされました。本計画骨子では,世界から評価される文化力の潜在力を発揮させ,国際的競争力を強化するため知財マネジメントの強化やコンテンツを核とした成長戦略を展開することを目的に3つの柱を立てております。
それぞれの重点戦略の下には重点施策が掲げられておりますが,そのうち著作権の関係の深いものとしては,戦略2のコンテンツ強化を核とした成長戦略の推進の中に2つほど記述がございます。
お手元の資料の3ページ目をご覧ください。
3ページの中にございますが,1つ目といたしましては,左端の一番下に「デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権制度上の課題(保護期間,補償金制度の在り方を含む)について総合的な検討を行い,措置が可能なものから順次実施しつ,2012年までに結論を得る。」との記述がございます。
また,2つ目といたしましてその隣にございますが,「プロバイダによる侵害対策措置の実施を促す仕組みの導入や,アクセスコントロール回避規制の強化を内容とする改革案を2010年度中に策定する。」との記述がございます。
なお,重点施策につきましては,短期と中期という実施に当たっての期間が付されております。短期が1年から2年,中期が3年から4年というふうになっておりますが,先ほどの記述につきましては前者が中期,後者のアクセスコントロールに係るものが短期と位置づけられております。
そのほか,今度は参考資料2の方をご覧いただければと思いますが,参考資料2の骨子本体におきましては,通しのページで申し上げますと6ページ目以降になりますけれども,6ページ目以降において詳細施策というものが表になって掲げられております。
これは重点施策が再掲される形でより広い範囲の多くの施策が掲げられているわけでございますが,同表におきましても,例えば戦略Ⅱの19,それから25,38といったところで著作権関係の記述がございますので,後ほどご覧いただければと思います。
なお,今後の進め方でございますが,参考資料1の1ページ目の最後にございますとおり,本年5月に知財計画本体を閣議決定することとなっておりまして,同計画においてスケジュールや工程表といったものが示される予定となっております。
資料については以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,本日の議事に入りますけれども,初めに議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。
本日の議事は,1,権利制限の一般規定について,2,その他,この2点になっております。1につきましては,前回の本小委員会において事務局の作成した中間取りまとめに向けた素案について議論を行いました。本日は,引き続き中間まとめ案に基づき議論を行いたいと思います。
それでは早速議論に入りますけれども,中間取りまとめ案について,前回の素案から幾つか修正・追加された点がありますので,事務局から説明をお願いいたします。

(1)権利制限の一般規定について

【池村著作権調査官】
それでは,資料1と資料2をご覧ください。
前回ご審議いただきました中間まとめの素案に,前回のご議論を踏まえて事務局において修正を行い,これを事前に委員の皆様宛てに送り,ご確認をお願いいたしておりました。そして,お送りした修正案につき事務局宛てに各委員の皆様からご意見をいただきましたので,これを踏まえまして事務局においてさらに修正を施したのが,本日資料1としてお配りしている中間まとめ案ということになります。事前にメールでお送りし,ご確認をお願いしているものと同様でございます。なお,前回の主なご議論の内容につきましては,内容ごとに整理し,資料2としてまとめておりますので,適宜そちらもご参照いただければと思います。
それでは,資料2に基づきまして前回の素案からの主な修正部分を中心にご説明申し上げます。
まず,はじめにと第1章から第3章,ページ番号でいいますと1ページ目から15ページになりますが,こちらの部分に関しましては誤字修正やてにをはレベルの修正のみであり,特段大きな修正,内容にわたる修正はございません。
続きまして16ページからの第4章でございますが,16ページの最終段落,「なお」で始まる部分,こちらは,前回AからCの枠内の表現がそのまま条文の文言になるものではないことに留意する必要があるとのご意見がございましたので,そのことを明確化すべくこの段落を新たに追加してございます。
続きまして,17ページからのA類型につきましては,枠内の表現は前回から特に修正はございませんが,17ページの下から3行目の部分,前回までは裸で「著作物」という単語を使っておりましたが,映像に音楽が入り込むといった事例も考えられますことから,美術の著作物や音楽の著作物等という形に表現を修正してございます。
また,同じく17ページの脚注46,「写し込み」に関する部分でございますが,こちらは一部表現を修正するとともに,「この点,Aの類型を,「写し込み」を含みうるものとして整理するか否かについては,慎重に検討すべきとの意見があった。」というご意見を追加してございます。
さらに18ページに行っていただきまして,2段落目,「なお」で始まる段落でございますが,こちらは新たに追加した部分となりまして,前半部分は明確性の原則に照らしてAの表現は問題がなお残るとのご意見,後半部分はそのご意見に対する反論として出されました,一般規定という性質に照らせば明確性の原則との関係はある程度柔軟に解してもよいといったご意見や,現行著作権法や他の法律でもこの程度の表現を用いられており,特段問題はないといったご意見をそれぞれ簡潔にまとめてございます。
続きまして19ページのB類型でございますが,こちらは前回のご議論を踏まえまして枠内の表現を2カ所修正してございます。
まず,前回許諾を得る前段階の準備行為における利用行為もB類型の対象と位置づけてよいのではないかとのご意見があり,特段反対のご意見等ございませんでしたので,前回までは,「適法な著作物の利用を達成する」としていた部分を「達成しようとする」という表現に修正し,このことを明確化してございます。
さらに,当該修正に伴い枠の外に書いてございます具体例も,漫画キャラクターの商品化を得ようとした場合における企画書という例を新たに追加してございます。
関連しまして,許諾を得る前段階の準備行為を対象に位置づけるのであれば,最終的に許諾を得られなかった場合の廃棄義務等を検討する必要があるとのご意見が前回ございましたのを受けまして,19ページの脚注48,そして20ページの脚注50,これらを追加してございます。
事務局といたしましては,廃棄義務のような方法もあるかと思いますし,現行法で49条が定めております目的外使用の制限,これに類似した制度設計も考えられるのではないかと考えているところでございます。
枠内の表現に戻りまして,前回まで「不可避的に生ずる」としていた部分につき,これでは厳格過ぎるとのご意見や,本文の例に合っていないといったご意見が複数出されましたことから,今回「合理的に必要と認められる」という表現に改めてございます。
続きまして枠の外に書きました具体例でございますが,先ほどご説明した例のほか,前回事務局にて口頭でご紹介した38条1項の例を追加し,これに関連して脚注48を追加してございます。また,前回いただいたご意見をもとに,新たに脚注49を追加しております。
続きまして,ページをめくっていただき20ページでございますが,その他の段落の後半部分,こちらは先ほどのA類型と同様に明確性の原則に関するご意見を追加しております。
次に,同じページのC類型でございますが,前回のご議論を踏まえ,枠内の表現を修正しております。前回の素案では,「著作物の表現を知覚するための利用とは評価されない利用」として,「(当該著作物としての本来の利用とは評価されない利用)」という括弧書きを続けておりましたが,括弧の中と外とで意味が異なるといったご意見等をいただいたのを受けまして概念を整理し,表現を修正したものでございます。枠内の表現は修正してございますが,C類型の意味するところそれ自体は前回から特に変わってはいないという認識でございます。
このC類型に関しましては,なかなか二,三行の短い文で概念を的確に過不足なく言いあらわすのは難しく,その意味で枠内の表現ぶりは非常に悩ましいものなのでございますが,この類型の趣旨は20ページから21ページにかけまして,むしろ本文の方で言いあらわしているものとお考えいただければと思っております。今般,本文の方もより丁寧に説明をする形で全体的に表現を修正してございます。
関連して21ページの中ほどでございますが,Cの類型は,技術の急速な進歩への対応やインターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図る措置として,近時の改正で設けられた個別権利制限規定を包括するようなものとしてとらえることができるとのご意見を追加で記載してございます。
また,21ページの後半部分,なおで始まる段落でございますが,先ほどのA類型,B類型と同様に,C類型につきましても明確性の原則に関するご意見を追加しております。
続きまして25ページをご覧いただけますでしょうか。25ページの[1]の要件の部分,具体的には著作権者の利益を不当に害しない利用であることとする追加要件を付すべきだという部分につきまして,ワーキングチームの報告書類もトーンダウンしているのではないかというご指摘をいただきましたので,そうではないということを明確化すべく必要な修正を施してございます。
次に,同じく25ページの[2]の部分,こちらには前回までの素案ではリバース・エンジニアリングに関する記載がございましたが,今般の案ではこれを削除し,場所を27ページの2つ目の○の方に移動しております。単純に場所を移したのみでございまして,内容的に特に修正はございません。
続きまして26ページ(2)著作者人格権との関係の部分でございますが,今回,B類型,C類型の表現や概念が変わっておりますので,それに伴い人格権との関係につきましても整理をし直しております。結論といたしましては,「著作財産権の制限と著作者人格権の制限との関係に係る現行著作権法の考え方に十分留意しながら,慎重に検討する必要がある」という形でまとめてございます。
最後に31ページの「おわりに」の部分,こちらはこれまでの本小委員会におけるご議論の内容を踏まえまして今回新たに追加した部分でございます。「近時の社会状況の変化には急激なものがあり,特に情報通信技術の発展等に伴う著作物の創作や利用を取り巻く環境の変化や法令遵守等,著作物の利用者側に求められる社会的要請などの変化にかんがみれば,何らかの形で権利制限の一般規定の導入することが適当であるものと考えられる。」,「具体的な制度設計の検討に当たっては,各国の法制にとらわれず,関係者から提出された具体的な事例を整理し分析し,権利者側の危惧,我が国の法制度との整合性,国民性などの社会的特性などにも配慮し,ある程度権利制限を認める範囲を明らかにした上で権利制限の一般規定を導入する方法を採用し,権利保護と利用の円滑化の調和のとれた制度を目指したつもりである。」という形でまとめております。
また,パロディ等に言及しつつ,この検討結果をもって権利制限の一般規定に関する議論を尽くしたものとは考えていないとし,あわせて関係者の利害対立が深い制度を新たに導入するに当たっては,現時点において合理性が認められる一定の類型について制度導入を行い,その施行状況も検証しながら,その他の類型について必要があれば改めて検討するという手法が合理的・効率的であるという形で締めくくってございます。
中間まとめ案に関する事務局からの説明は以上でございます。
どうぞ,ご審議のほどよろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
ただいまの説明につきましてご意見ございましたらお願いをいたします。
村上委員,お願いします。
【村上委員】
内容はこれで結構だと思うんですが,現時点で一つだけこの読み方について確認させてください。
現時点に限定するというのは,本当の議論は一般的な制限規定をどういう文言にするかという,そこで決まるので,もう一回具体的にどういう文言になるかというところで議論されることだろうとは思っています。現段階の読み方として,例えば研究開発目的での複製等については原文が23ページですか,「研究目的の著作物の利用に関しては,Cの類型に該当すると解されるものも相当程度存在する可能性がある。」と,こう書かれています。
それからもう一つがリバース・エンジニアリングに関する複製等については,これが27ページですか,ここには「一般規定による場合,権利制限に該当するか否かは,個別具体的な事案において,一定の包括的な考慮要件の下で裁判所の判断に委ねられることになる」そういう書き回しになっています。
それで,この辺の読み方として,今後,個別権利制限規定による対応については,いずれも検討は続けると書いてあるので,多分検討は続けることになるわけですけれども,仮に一般的権利制限条項ができた場合に,個別具体的にいろんな諸般の事情を考慮して新設される一般的権利制限条項というか,フェアユース条項に該当するという形で裁判所がそういうふうに判断して権利侵害にならないというか,そういう意味で研究開発目的での複製等とか,リバース・エンジニアリングに伴う複製等についても,一定の事情がある場合には個別具体的にこのフェアユースに当たって権利侵害にならないということはありうるという,そういう感じの解釈で読んでよろしいでしょうか。
読んでいると,そこまでは言っているのかなという気で読んでいたのですが,それでよろしいでしょうか。
【土肥主査】
ご質問ですのでお願いいたします。
【川瀬著作物流通推進室長】
ご指摘のとおりだと思っております。
一般規定と個別制限規定の関係をどう考えるかというのは,法制上はいろいろと関係をどう考えるかというのがあると思います。例えば個別規定の一般規定とは重ならないように考えるのか,それとも重なるというふうに考えるのかというようなことがありますけれども,基本的には一般規定の中で,今ご指摘をされたようなことについて,例えば明確に排除するというような規定,多分そういう制度設計では無理だと思いますので。そうすると,一般規定で読めるものは読めるものとして,それから必要とか社会の要望があるものについては個別制限規定の増設で並行して対応していくということになるんだろうと思います。
【土肥主査】
よろしいですか。
【村上委員】
それで,結構です。
【土肥主査】
ほかにご意見等ございますか。
大渕委員。
【大渕委員】
今,村上委員が出された点に少し関連いたしますが,資料1のまとめの20ページ以下にあるCの部分ですが,これは先ほど事務局からのご説明にあったとおり,四角の枠囲み部分の下の本文の方に,おおむね,ワーキングチーム以来,こういうものを含めるべしという「心」ないし「気持」のようなものが書いてあって,それを要約してこのCの枠囲み部分の中の3行にまとめたものですが,そのまとめ方が非常に難しく,非常に苦しんでいるところだと思います。
まさしくこれは事務局の方で悩んでこのように現時点で整理されたのであり,今回の作業はステップ・バイ・ステップだと思っておりまして,ここでこのようにまとめた上でパブコメをとって,また今後ここに戻ってきて検討するということでありますので,このCの部分を今の時点で特に文章を変えるというものではないのですが,Cの部分の「気持ち」ないし「心」として20ページから21ページに書かれているものについて,今の時点である程度私なりに把握している問題意識からすると,更に明確化が必要であると思われる点があり,それを出しておいた方が今後の作業にもよかろうという話であります。
この「気持ち」ないし「心」の部分が,前から言っていることと関連して先ほどのところにもリバースエンジニアリングにも関係してくるところがありますが,Cで挙がっているようなものを権利制限の対象とすべしというのはおおむねコンセンサスがあるかと思うんですけれども,Cを何ゆえ権利制限の対象とするのかという点が,結局Cが具体的にどこまでを権利制限の対象とするのかという点にかかってくるわけであります。そして,枠囲み部分に入っているところを見ると,これは非常に苦しみ悩まれて,「表現を知覚することを通じてこれを享受」というのが,前回まで,本来的利用でないもの等のいろいろな表現でもって範囲を画そうとされてきたものを,今回はこのような形で範囲を画そうとしているものではないかと思います。
これはそもそも問題点が幾つかあって,このCの中にプログラムを入れたときにうまく書けるという問題も置いておいて,そのプログラムの問題が先ほどのリバースエンジニアリングの話にも関わってくるかと思うのですが,これは「表現を知覚」と言うかどうかは別として,いわば何と申しましょうか,いろいろな著作物があっても例えば研究開発等々で使われているものは,著作物としての創作的表現を利用するというよりは,いわば単なる「情報の塊」のようなものが問題となるにすぎず,いろいろな技術を開発する際に,それこそネットを使えばいろいろなところで散発的に複製が自動的に起こるというような場合,あるいはいろいろな新しい技術開発システムとしてそれがきちっと動くかどうかの検証において,いわばデモデータの一種みたいな形で「情報の塊」を入れてみたところ,それはたまたま著作物の複製にも当たっていたというようなケースについては,そういうものを外すという,そういうような,強いて言えば表現非享受型というのか,これはうまく事務局が悩まれているのと同じように,そういうようなものだからCで外すということなのかということであります。
これはいわば「一本説」のような感じでありまして,要するに,対象が単なる「情報の塊」のようなものにすぎず,創作的表現を使っていないという意味でCとして権利制限するという考え方であります。もう一つの考え方としては,この点に加えて,このような点に加えて,先ほど出ておりました研究開発とか,サービス提供,開発提供行為の目的という,1個1個の個別の特定の目的というよりは,いわばかなり横断的な形での目的みたいなものと組み合わせた形で,いわば「合わせ技」のような形で,権利制限を肯定するという考え方であります。さきほどの点は,これらの考え方のいずれを採るのかという点にもかかわってくると思います。この点に関しては,多分,単なる「情報の塊」と言ってしまえば,多分リバースエンジニアリングはそうじゃないだろうと。単なる情報というよりは,特定のプログラムの中身が欲しいという意味では,単なる「情報の塊」とはいえないように思われます。-ただ,それも表現はとってなくてアイデアだけだと言えばここに当たるのかもしれませんが。いずれにせよ,明確化が必要だと思われます。他方で,それが先ほどのようにここの「心」の一つが研究開発だということになると,リバース・エンジニアリングは研究開発の最たるものという面もありますので,むしろ,産業政策上の特別の考慮が別途必要である等の理由により,ここのCから特に除外しなければ,Cに入ってくることになろうかとも思われます。
Cについては,枠囲み部分とその下の本体の部分の「気持ち」ないし「心」の双方について,今の点を含めて,明確化のためにさらに詰めていく必要があると思います。そして,このような作業を進めていけば,次第に,「心」と枠囲み部分の中に書いてあることとが一致してくるようになってくるのではないかと思っております。
その次に,20ページから21ページのところにかけての「例えば,」で始まるパラの第1文は,技術開発・検証のための素材として利用にとどまるということで,単なる「情報の塊」そのもののような感じでありまして,要するに単なる素材にしかすぎないと,多分創作的表現等々は利用していないようなものだということで,これはさきほどの定義であればすっと落ちるわけですけれども,他方で,「また,」で始まる第2文は,表現の知覚が行われるという意味では,表現の享受というものがないわけではないけれども,その態様等に照らして当該映画等の表現を享受することに直接向けられたものではないというようなことで,ここで切っているようであります。他方で,枠囲み部分の中では,「直接向けられた」ということは出てきません。
できるだけ,枠囲み部分の下の「心」の部分とそれをまとめた枠囲み部分は合わせておいた方がいいので,今の点は明確にしておいた方がよいと思われます。その関係で,この「直接向けられた」という部分がどの程度の意味ないしどの程度の重みがあるのかについて,お伺いできればと思います。
【土肥主査】
今後の検討課題,先の方ではない,後のところですけれども,Cの括弧書きの記載と,それから21ページの2段目のところについて,大渕委員のご指摘では十分マッチしていないというご指摘ですけれども,そうすると今回の報告書の段階で変更,そういったことを具体的にお考えでしょうか。
【大渕委員】
今回の作業は,ステップ・バイ・ステップでなされるものだと思っていますから,必要があれば最終的には何か整合,修正をするということであります。
【土肥主査】
他の委員におかれましては,何か今の点についてご意見ございますか。 お願いします。
【多賀谷委員】
私はこのCのところを読んでいて,文書の中で送信とか複製という手段と,それを享受する対応関係自体が崩れてきている状況をどう考えるかという,それが一つの理屈だと思うんです。あともう一つは,教育目的とか研究開発の話。両方どう考えるかということを考えていたんです。
1つとして享受するための利用ではないというのは1つのカテゴリーといいますか,1つの円であって,それと教育目的というのは手段とは関係ない話ですから,多分別のカテゴリーであると思います。その場合,両方の円が接している部分は明らかに両方の要素でもって排除できるから,それは権利制限に典型的に当たるということでしょうけれども,かといって,では,それぞれのカテゴリーが接しているところだけが抜けるというわけじゃなくて,2つのカテゴリーがそれぞれ独立して権利制限の対象になりうる。しかし,両方が接していればそれはより強く制限の対象になるというふうに,そういうふうに読むんだろうというふうに読んでいました。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。
ほかにございますか。
松田委員,お願いします。
【松田委員】
事務局にお聞きしたいんだけど,27ページのリバース・エンジニアリングの扱いは,個別制限規定を創設することが適当であるという結論になり,なおかつこのことについては21年1月の報告書でもう方向がまとまっているというふうにもなっているので,まさにそういう審議を分科会はしてきたわけですけれども,リバース・エンジニアリングの個別制限規定を,権利制限の一般規定を立法として導入するときに同時並行的にこの2つの改正をするというお考えはないのでしょうか。そうすれば解決が図れると思うのですが,いかがでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】
リバース・エンジニアリングについては,ご指摘のとおりここにも報告書に書いていますように,この法制問題小委員会で検討していただきまして個別制限規定で対応するというご判断が出ているところでございまして,その対象とすべき要件等については審議会の中で整理されているというふうに理解をしております。
したがって,今の段階でその将来の法改正についてどうなるかというのは的確には申し上げられませんけれども,例えば一般規定の導入と同時に,リバース・エンジニアリングについても個別規定で対応するというオプションは当然ありうるというふうに私どもは理解をしております。
【松田委員】 
意見として。似て,しかしリバース・エンジニアリングは非なるものであるということのご意見はほぼ間違いないわけで,Cの類型には当たらないだろうということで,明確にするという意味ではリバース・エンジニアリングと一般規定とを同時立法過程を踏んでいただきたいというのを意見として私は残しておきたいと思っております。
【土肥主査】
ありがとうございました。
ほかにございますか。
山本委員どうぞ。
【山本(た)委員】
Cに関してなんですけれども,2点あります。
まず,このCの気持ちは説明部分にあるということですが,この四角の枠の中のて表現として適当なのかなという疑問を持っております。
1つは,ここで書かれているこの表現から行くと,要件が「知覚」というのと「享受」というのがあって,その2つの要件を満たさないものが,「とは評価されない利用」として許されることになるとすると,ものすごく広くなるように思います。つまり,知覚でもなければCに当たっちゃいますし,享受でもなければCに当たってしまう。
恐らくこの趣旨としては,表現を享受するためではない利用というのがあって,かつ知覚を行う場合というような意味合いだと思うんですけれども,この文書からそうは必ずしも読めないんじゃないかなというのが1点なんですが。
もう一つは,この知覚を通じてという要件がそもそも必要なのかなと。知覚という概念は,五感の作用として物理的なもので明確だということから,枠をはめるために知覚という言葉を入れたいということだとは思うんですけれども,このコンピュータープログラムとかいうようなことを考えても,知覚というのが存在しない。それで,コンピュータープログラムであろうと,それ以外の著作物であろうと,同じようにそれ自身の表現の持っている鑑賞価値とか利用価値を享受する行動でなければこのCに当たっていいだろうと。そうすると,知覚という要件は余計なだけで,これはそのまま「著作物の表現を享受するための利用とは評価されない利用」というような方がより明確なんじゃないか。そういう意味で,「知覚を通じてこれを」というような文言は余計なだけじゃないかなというのは私の意見です。
【土肥主査】
この点,大渕委員どうぞ。
【大渕委員】
今,山本委員がご指摘になった点は,私はCを見たときに前々から気になっているプログラムの関係でありまして,「表現を知覚することを通じてこれを享受するため」というのを文字どおり読むと,プログラムの利用は一律に全部Cの権利制限に当てはまり,非侵害となってしまいかねないのでないかと思います。
要するに,プログラムは動かして機能を得るものであり,見たり聞いたりするという意味での知覚するものではないということであれば,「表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用」とは評価されないこととなり,Cの枠囲み内の文章を文字通り読むと,Cの権利制限に該当することとなり,非侵害になるというこであればプログラムはどう利用しても非侵害になってしまうということとなり,多分全く「気持ち」ないし「心」としては想定していないことになりかねないと思われます。
他方で,表現の方も古典的著作物的な意味での表現として考えると,プログラムには表現はないという話にもなりそうなのですが,ここは例えば著作権法2条1項10号の2のプログラムの定義をご覧いただくと明らかなように,「組み合わせたものとして表現したものをいう。」ということで,要するに表現部分だけを保護するという意味での表現だと思えば,表現の点はクリアーすることとなり,あとは,「知覚」をとれば,プログラムも,それでももう少し文言は工夫した方がいいのかもしれませんが,「知覚」が入っているよりはこの枠囲みの中の表現でも説明しやすくなるのではないかなという気はしております。
プログラムの利用がCですべて非侵害になるというのは,ワーキングチームの「心」ないし「気持ち」ではなかったと思います。また,このCについては,ネットワーク上で散発的に起きる複製などでもって,これはいわば形式的に複製に当たるからといって止められてはいけないので,権利制限とするという趣旨であるとすると,それは,プログラムについてもあてはまると思われます。ので,その意味では,Cに適切な形で入れておくのが一番いいのではないかと思いますが,そのためには「知覚」を外すだけでも随分違うのではないかという気がします。
【土肥主査】
ほかにいかがですか。
山本委員のご提案としては,享受の方で十分ではないかというご意見でございますけれども。
はい,どうぞ。
【川瀬著作物流通推進室長】
Cの類型につきましては,まず意見をヒアリングの結果等では,やっぱり研究開発とか,それからいわゆるネット社会におけるネット関連の利用ということに伴って様々な利用形態が,既存の利用形態もございますし,新たな利用形態が生じてくるということを踏まえてCの類型というのを考えられたというふうに理解しているわけでございます。
そのときに,まず想定していたのは,いわゆるコンピュータのプログラムのような特殊な著作物は除く既存の普通の著作物を念頭に置いて考えていましたので,ですから著作物の知覚というような要件が出てきたわけでございます。
コンピュータのプログラムの著作物というのは,既存の著作物とはすごく違う性格の著作物であるということで,Cの類型で当初想定していたのは,いわゆるプログラムを除く著作物ということでございます。
この報告書を見てもらうとわかりますように,25ページの一番下の段落を見ていただくとわかりますように,ここでCの類型とプログラム著作物の関係について言及をしているというような構造になっているわけでして,繰り返しになりますけれども,Cの類型自体は,主として想定しているのはやっぱりプログラムを除く既存の著作物と。それで,プログラムの著作物というのは当然著作物ですから,プログラムの著作物の取り扱いについては,この25ページの「もっとも,」以下で言及をしていると,そういう報告書の構造になっているということでございます。
【土肥主査】
山本委員。
【山本(た)委員】
この25ページの説明のところはわかるんですが,つまりどちらの考え方をとるべきかというのは慎重に検討すべきだというお話だとは思います。しかしCのところで知覚を通じてというのを残すことは,もう結論を与えちゃっていることになると思うんですが。
先ほども申し上げましたように,プログラムも含めて適正な範囲について一般的な権利制限規定を与えるべきだというふうに思いますので,もう結論的にプログラムについては除くような,こういう必要性はないんじゃないか。それで,知覚というのは除いておいて,どこまでの範囲にするのかというのは,知覚という言葉を除いておいても今後の検討の対象になりうると思います。あえてここで知覚を入れると,もう結論を出してしまうことになるので,適当じゃないというふうに思います。
【土肥主査】
これで山本委員も今おっしゃったように,ワーキングチームにおける議論というのは,コンピュータプログラムというものは外すという,そういう基本的な認識はあったんではないかなというふうに思いますけれども,法制小委として新たな観点からこういったものを含めてという,そういう今新しいご提案になっているわけですが,ほかの委員のご発言も伺わないとこの法制小委としての意見がまとまりませんので,他の委員のご意見をお聞かせいただければというふうに思います。
ございませんか。
森田委員。
【森田委員】
Cの類型は,プログラムも含めて基準を考えたというよりは,プログラムについては当初からCの類型に含めるのはその趣旨からすると違うのではないかということで,Cの類型から外すというのが25ページの考え方だろうと私は理解しております。したがって,そのことと,「知覚することを通じて」という要件で,プログラム以外の局面で何か仕分けをするのかしないのかという問題とは一応切り離して論じた方がよいのではないかと思います。つまり,プログラムの扱いをどうするかということをめぐって,「知覚することを通じて」という要件が適切かどうかを論じるのではなく,プログラムはそもそもCの類型から外すべきかどうかという議論をして,そして外れることを前提にした場合に,なお「知覚することを通じて」というのが残っていると他の局面でまずいことがあるのかというふうに議論をしていった方がよいのではないか,そのほうがパブコメをする上でも検討する対象というのは明確になるのではないかと思います。
そして,最終的な法文でどうするかというのは,また次の問題だと思いますが,差し当たりは,その2つの問題は区別して論じた方がよいような気がいたします。
【土肥主査】
山本委員も前回の法制小委でご発言があったかと思いますけれども,このCの類型というのは著作物の享受,エンジョイメントであるという,その享受というのは,その文脈の中ではその人の知覚を通じて享受するというふうに私伺ったわけですけれども,知覚をしないで享受をするという,その場面は特に何かお考えですか。
【山本(た)委員】 
以前申し上げたことで言いますと,鑑賞価値を享受するというような表現を申し上げました。それから利用価値を享受するというような表現を申し上げたと思うんですが,典型的にはプログラムの利用ですね,それはプログラムをプログラムとして走らせるんであれば,それは著作物としてのプログラムの鑑賞価値の利用,プログラムの場合には利用価値の享受という意味合いで入ってくる話だと思います。
先ほど主査からお話がありましたように,ワーキングチームの中ではプログラムは除くんだというようなご意見があったのは理解しておりますけれども,私は必ずしもそういうふうには思っておりませんでして,しかもCの想定しているものがトランスフォーマーティブユースという認識であるとすれば,それは著作物の種類を問わずに当てはまるべき話なので,その文脈からいって,プログラムだけ何で除かないといけないのかというのは,私にはちょっと理解できないところであります。
【土肥主査】
これは知覚を通じて享受をするということが,特定の著作物を規定の上で明確に排除しているということにもならないんじゃないですか。
【山本(た)委員】
知覚という言葉と,以前主査の方からお話がありましたように,知覚という言葉を使っているのは,気持ちにおいては鑑賞だというようなお話もあったかとは思うんですが,しかし,知覚とか感得とかいう言葉は著作権法の議論の中で何度も出てきておりますが,知覚というのは,物すごく一般的には広い物理的な概念,五感の作用のあらわす概念としてとらえられていて,鑑賞というような著作物の持っている価値を利用するというような価値的な評価は入っていない,一方でもっともっと物理的な広い概念としてあって,人間の五感の作用を通じないのは含まない,そういうもののように正確には理解しております。
したがって,ここで議論を詰めていく過程では,あえて申し上げると適当じゃないんじゃないかというのが私の意見です。
【土肥主査】
大渕委員どうぞ。
【大渕委員】
私が申し上げたのはちょっと違う方向なのですけれども,私は実は,ワーキングチームの段階ではリバース・エンジニアリングは前も申し上げたとおり,いろいろ別途の考慮が必要なのでパロディと同じように外れるとは思っていたんですが,プログラムのリバース・エンジニアリングは産業政策的考慮等々が必要なので別枠になると思ったんですが,プログラム自体はむしろCの中の典型例の一つかなと思っておりました。
ただ,今回の作業はステップ・バイ・ステップだと思いますので,リバースも含めてプログラムは別枠にした方が,今の段階でクリアであり,要するに,古典的著作物だけで固めて今回つくってみて,後々また今後広げていくという方が,いろいろリバースとの関係等々含めて,より混乱が少ないというのであれば,別にそれはそれでもいいとも思うわけであります。
ただ,そうであれば,その点は,最初から明確に,ここにA,B,Cと書かれているのはあくまでプログラム以外の著作物についてであるという点をはっきりさせるべきであると思われます。
【土肥主査】
ほかにございますか。
中山委員,お願いします。
【中山委員】
リバース・エンジニアリングにつきましては,同時かあるいは近い時期にやるということで,それはそれで納得できるんですけれども,このフェアユースの規定からプログラムを除くということは,やっぱり山本委員おっしゃったように奇異な感じがするわけで,なぜ除かなければいけないのか。除くとすれば,プログラムだけについて何か今度新たな規定を設けるのか。それもなかなか難しいわけで,リバースは別として,プログラム一般はやはりベースに入れるべきだと私は思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。
ほかにございますか。
多賀谷委員,お願いします。
【多賀谷委員】 
私もプログラムを全部抜いちゃうと,特にこれは情報通信産業の場合は,まさに最終的にエンドユーザーが知覚でもって見るものについて,コンテンツを伝送する手段自体がプログラムになっているでしょうし,それからコンテンツ自体もグラフィックスや何かのプログラムと密接に絡んでいるので,それを抜いちゃうと何にも,多分アナログ放送しか残らないと。それはちょっと無理だろうという気がいたします。
【土肥主査】
村上委員。
【村上委員】
私は,前提としてリバース・エンジニアリングとかプログラム全部をC類型で読むということはしないという案という理解で伺っていたものなので,それを前提にしていたものなので,先ほど申し上げたのも,むしろリバース・エンジニアリングの中でもここに書いてあるのは,用いる用途,それから目的及び態様に照らしと書いてあるので,まさしく態様とか何とかを見ていって,中にはこれで読み切れるのも個別具体的な中には出てきても,これは当然法文の作りによってはあり得るだろうということであって,全部をここに含めるという議論というのは,今まで私が聞いている前提とは大分違うかなという気がします。
とはいいながら,やっぱり個別具体的,いろんな事情の態様とか目的によっては,確かに法文の作り方によってはそれがプログラムだから除かれるということはあり得ないのであって,当然それも入ってくる場合もあるという,そういう感じでよろしいのでないかと。そういう意味で,この表現でも良いという気でいましたということです。
【土肥主査】
ありがとうございます。
茶園委員,お願いします。
【茶園委員】
C類型の心というのが,先ほど大渕委員がおっしゃられたように,一つの情報の塊として考えられる,そういうものとする利用形態としますと,私もCが直ちにプログラムをどうするかというのを決しているのではないように思います。そもそも表現が難しいということがあるのですけれども,知覚を通じてこれを享受するための利用とは評価されない類型というのは,恐らくここで考えておられるのは,知覚がされるのが本来と言うか,あるいは普通である著作物なのであるのだけれども,それが知覚をされないということで,その利用が通常の利用形態ではないとか,あるいは著作権者に大きな影響を及ぼさない利用形態であるということを前提にしているのであろうと思っております。
ですから,少なくとも普通に知覚されるような著作物については,知覚を通じてこれを享受するための利用とは評価されないと,そういう意味であろう思いますが,ここの表現だけではプログラムをどうするかはなかなかわかりにくいものとなっています。プログラムは,知覚されるのが普通でない著作物ですが,知覚されるのが普通の著作物が知覚されないということと同様の態様で,プログラムが普通でない方法で利用される場合もあるからでして,C類型からプログラムを最初から全面的に排除するのはちょっと説明がしづらいと思います。もし排除しないのであれば,それを明確にするために,知覚を条件にしないような言葉を付加することがよいのではないでしょうか。
ただ,知覚という言葉を削除することについては,躊躇を感じます。享受するための利用ということだけであれば,この類型がどのようなものを対象としているのかが分かりにくくなるのではないでしょうか。知覚を本来の利用形態にするような著作物については,知覚を通じてという言葉を用いることにより非常によく理解できるようになっていると思われるからです。
要するに,音楽とか美術の著作物については,「知覚することを通じて」という言葉は残しておいた方がよいのではないか,他方,プログラムを排除せず,これを対象に含めるのであれば,そのことを明らかにする言葉を追加することがよいのではないかと思います。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。
森田委員,どうぞ。
【森田委員】
先ほど2つを分けて議論したほうがよいと申し上げたのは,いまの茶園委員のご意見と共通するのだと思うのですけれども,仮にプログラムも含めた場合に,それも含めてすべてを一元的な基準で,C類型に当たるか否かの基準を立てるのか,それともプログラムについてはやはり少し特殊性があるので,それ以外のものとは区別して2段階で基準を考えていくのか。それで,2段階でいくのであれば,やっぱり大きな区分けとしては,プログラムの特殊性があるということを押さえつつどうするかということを検討する必要があると思います。
その点について,25ページの書き方は,「除外して考える等も含め,慎重に検討する必要がある」となっていて,ある理解をとればCの類型の一般的な基準を妥当させる方法もあるのではないかという意見もあったということですので,プログラムを除外するかどうかということについても,25ページでは結論は出していないと思いますが,プログラムを除外しない場合には,プログラムにどういう形でCの類型の趣旨を及ぼしていくかということについても25ページでは一定の言及がなされているというふうに私は理解しております。
そのように考えるのではなく,初めからプログラムも含めて考えて,「知覚することを通じてこれを享受する」というのか,それとも「表現を享受する」ということなのか,どちらかの基準を決めてしまって,その一元的な基準ですべてを適切に割り切れるのかというと,それはそれで,プログラム以外については基準が不明確になってしまって,かえってC類型の趣旨が伝わりにくいことになるのではないかという難点もあるように思います。大まかに2つの問題を分けて論じた方がよいというふうに申し上げたのは,そういう趣旨であります。
【土肥主査】
ありがとうございました。
皆様のご意見を承っておりまして,1つはリバースについては個別的な権利制限規定との関係で,同時あるいは別かもしれませんけれども,それを法制小委として結論を出す。
それでC類型に関して,コンピュータプログラムをワーキングチームにおいては基本的にはこれを外すという方向では考えておったわけですけれども,特段これを除くという,そういうことを法制小委において明確に出すわけではなくて,25ページのところで,そこは「等」というふうにしておりますので,その前提のもとでC類型の括弧書きの中の,その2行目の「著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」,その部分ですね,「知覚」という,この文言があることによって,このC類型が予定しておる射程がよく伝わっていくという点が1つある。
それから,コンピュータプログラムというものも,これは入るのではないかというふうにおっしゃっている意見からすると,そこについては一つ工夫をせざるを得ないのかな,こういうふうに思っております。
事務局に今お尋ねしたいわけでありますけれども,「著作物の表現を知覚する」これは残すと。それで,コンピュータプログラムのようなものが,この25ページのところの判断の中で入ってくるとすると,C類型を二元的に書き改めるという,今,出ているんですけれども,これはどういうふうにお考えでしょうか。
【川瀬著作物流通推進室長】 
もう一度ちょっと繰り返しになりますけれども,もともとワーキングチームの議論を踏まえた上で,また法制問題小委員会の議論を踏まえた上で,私どもとして案を作らせていただいたんですけれども,先ほど私が言いましたように,まずは典型的な普通の通常の著作物を踏まえた上でその概念を整備し,プログラムについては別途ということですけれども,これはもちろん当然のことながらプログラムの著作物を排除するという意味ではございませんので,とりあえず既存の著作物で概念整理をしてみて,それからこの25ページでそういう記述をして,これは私どもとしては最終的にどうするかというのはまだ結論を出していないわけです。
中間まとめですから,とりあえずこういう書き方をしておいて,これはまた関係者のご意見もございましょうし,それから当然,法制問題小委員会でそういうご意見を踏まえた上でさらに検討するという段取りになっているわけでございますから,今までの議論を踏まえれば,中間まとめでは確かにこういうような問題点が残っているということは重々承知の上でございますけれども,この辺の整理で中間まとめをして,一度世に問うて,またさらにこの委員会でご議論していただいて,最終的な考え方を整理すればいいのではないかなと,そういう気持ちで原案を作った次第でございます。
【土肥主査】
ありがとうございます。
この後の段階としては,もちろん従来と同じような形で法制小委のこの案というものがかたまっていくんだろうと思うんですけれども,この後パブコメ等も当然あるんだろうと思われます。それを受けて,また法制小委にも返ってくる。その過程の中でリバース・エンジニアリングやコンピュータプログラムの著作物についての考え方も絞られてくるのであろうと思います。
それで「知覚する」というここの部分については,今回のところはこのまま残して,時期的にもう既にかなり時間的な余裕もないところに来ておりますので,山本委員を初めとしておっしゃっておられるその考え方,これを落とすということはないんですけれども,コンピュータプログラムについて何か考えるというのは,この後に考えさせていただくということでいかがでしょうか。
【山本(た)委員】
もし,このCの中に「知覚することを通じて」というのを残すのであれば,この21ページの終わりの方でも構いませんから,この「知覚」という言葉を入れるというのは先ほど指摘しましたような懸念があると。プログラムを必ずしも排除する結論をここで出しているわけじゃないというような何か一言書いていただいた方が,予見を与えなくていいんじゃないのかなというふうに思うんですが,いかがでしょうか。
【土肥主査】
それは25ページのところ辺りで考えさせていただいていいということですよね。
【山本(た)委員】
いえ,この20ページのところでCについての説明がなされておりますので,ですから,20ページの[3]でCが説明されておりますが,その説明が終わるのは21ページの下の方です。その下の方でも構いませんから,このCについての「知覚」という言葉を入れた意味合いとして,ここにコメントをなお書きででも書いていただければというのが提案です。 
【土肥主査】
今おっしゃった提案はわかったんですけれども,この報告書のスタイルというのは,25ページでその点を書いているという,そういうふうには,つまり委員としては25ページのC類型のところで見ていただくというわけにはいかないわけですね。
【山本(た)委員】
ええ,余りこだわりたくはないんですけれども,そもそも「知覚」という言葉を入れた,主査のさっきのお話にもありましたように,ワーキングチームではプログラムを除くという前提があってこの「知覚」というのが入ったというようなご理解がありましたように,このCの説明のところを読んだ限りでは,読んだ人はこの「知覚」という言葉を見てプログラムは除かれるんだという前提に立って,なおその25ページのところで変わるかもしれないよというような理解しかしないと思いますので,つまりそういう予見を与えないがためにCにおける「知覚」というのは,そういう限られた意味合いだというのをこのCの説明の部分で少なくとも21ページまでのところで書いていただければというのが提案です。
【土肥主査】
わかりました。
25ページのC類型のところの記述も若干それに応じて変わってはくるとは思うんですけれども,そういう記述を20ページのところで書いていくと,そういうことでよろしいですか。
それでは考えさせていただきます。
ほかにいかがでしょうか。
よろしければ,先ほど皆様からちょうだいしたご意見,若干修正意見といいますか,中期の部分についての修正意見ございますけれども,それに伴って25ページの辺りのところが少し整合性を合わせる必要が出てくるのかなというふうに思っておりますが,Cの括弧書きの中はそのまま置いておくということにいたしまして,この今おっしゃったところの修正意見の取り扱いということについては,私に一任していただくということでよろしいですか。
ありがとうございます。
それでは,必要な修正を加えまして,後日各委員に改めてお送りをしたいというふうに思います。
なお,取りまとめられました文化審議会著作権分科会法制問題小委員会,権利制限の一般規定に関する中間まとめにつきましては,次回著作権分科会におきまして私から報告をし,分科会においてご審議をいただいた上で意見募集を行うということが予定されていると,こう聞いております。その点をご紹介させていただきます。
ご質問,その他なければ,本日はこのくらいにしたいと思いますが,よろしゅうございますか。
それでは,事務局から連絡事項をお願いいたします。

(2)その他

【池村著作権調査官】
本日はありがとうございました。
次回の法制問題小委員会でございますが,日程が決まり次第,また別途ご案内させていただきます。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,本日はこれで第4回法制問題小委員会を終わらせていただきます。
本日はありがとうございました。
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