(平成22年第5回)議事録

1.日時

平成22年5月27日(木) 10:30~12:00

2.場所

旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3 出席者

(委員)
小泉,末吉,道垣内,土肥,中村,松田,村上,森田,山本(たかし),山本(りゅうじ)の各委員
(文化庁)
合田文化庁次長,戸渡長官官房審議官,永山著作権課長,ほか関係者
(内閣府)
岡本大臣官房参事官(公文書管理課担当),中原大臣官房公文書管理課専門官

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)「公文書等の管理に関する法律」に関する権利制限について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1-1
資料1-2
資料1-3
資料1-4

(以上,内閣府提出資料)

資料2-1
資料2-2
参考資料

6 議事内容

【土肥主査】
定刻でございますので,ただ今から文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第5回を開催いたしたいと存じます。
本日は,お忙しいところご出席をいただきまして,本当にありがとうございます。
議事に入ります前に,本日の会議の公開につきましてですけれども,予定されている議事内容を参照いたしますと,特段非公開とするには及ばないと,このように考えられますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,特にご異議はございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【土肥主査】
それでは,そのように本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
なお,本日は岡山委員がご欠席ですけれども,岡山委員のお申出によりまして,法務省民事局付松尾博憲氏に代理としてお座りいただいておりますので,ご了承いただきたいと存じます。
また,この会場は後方までに音が届きにくいようでございますので,ご発言の際はマイクがございますけれども,マイクをできるだけ近付けてご発言いただきますようにお願いをいたします。
それでは,事務局から配布資料の確認と,法制問題小委員会権利制限の一般規定に関する中間まとめが著作権分科会に報告されたこと,そしてこの中間まとめが意見募集にかけられたことについての報告をお願いいたします。
【池村著作権調査官】
それでは,まず配布資料の確認の方からさせていただきます。お手元の議事次第の下半分,配布資料一覧をご覧ください。
本日,配布資料として,資料1から資料1-4,そして資料2-1,2-2,そして参考資料がございます。順に確認させていただきますと,資料1-1は公文書等の管理に関する法律についてという1枚紙,資料1-2もやはり1枚紙で,こちらは公文書等の管理に関する法律のポイントという表題のものでございます。資料1-3は公文書等の管理に関する法律と著作権法との調整についてと題する資料で,両面印刷の1枚紙でございます。資料1-4は公文書管理法の条文です。両面印刷で最終ページは48ページとなっております。この資料1-1から資料1-4までは内閣府提出に係る資料でございます。
続きまして,資料2-1は「公文書等の管理に関する法律」に関する権利制限についてと題する事務局作成の資料であり,ページ番号で申しますと6ページまででございます。資料2-2,こちらは参照条文であり,こちらも6ページまでの資料です。
最後に,参考資料といたしまして,前回までご議論いただいておりました権利制限の一般規定に関する中間まとめ,こちらの本体部分を配布させていただいております。こちらメールでは既にご案内しているものでございます。
配布資料の確認は以上です。不足や落丁等ございましたら,お近くの事務局までご一報ください。
続きまして,報告事項でございます。先週5月21日に文化審議会著作権分科会が開催され,本日参考資料として配布させていただいております権利制限の一般規定に関する中間まとめ,こちらにつきまして,土肥主査よりご報告いただき,これにつきご審議をいただいております。
そしてその後,5月25日付でこの中間まとめに関して意見募集,パブリックコメントの受付を開始しております。意見募集期間は6月24日の正午までとなっており,詳細につきましては文化庁ホームページや電子政府の総合窓口e-Govに記載されてございます。この権利制限の一般規定の問題につきましては,意見募集の終了後,さきの分科会で出されたご意見及び意見募集で寄せられたご意見等も踏まえ,再度,本小委員会でご議論をお願いすることになろうかと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【土肥主査】
ありがとうございました。
本日の議事ですけれども,昨年成立した公文書等の管理に関する法律に関する権利制限について議論を行いたいと存じます。本日は,公文書管理法を所管する内閣府の大臣官房参事官,公文書管理課の岡本信一様にお越しいただいておりますので,この法律の概要と権利制限要望の内容につきまして説明をお願いしたいと思っております。
それでは,よろしくお願いいたします。

(1)「公文書等の管理に関する法律」に関する権利制限について

【内閣府岡本参事官】
ただ今ご紹介にあずかりました内閣府の岡本でございます。よろしくお願いいたします。
まず,公文書管理法の内容に関しまして,概要を説明させていただきたいと思います。公文書をなぜきちんと管理しなければならないかということでございますが,業務での活用とか,それから年金記録のように国民の権利義務の証拠書類としてきちんと保存する,管理するということ。それから,情報公開で,現在の国民,住民に対する説明責任を果たすためにきちんと管理する。それから,歴史的な公文書として国立公文書館に移管された際に,国立公文書館等で利用するということで,これは現在及び将来の国民・住民に対する説明責任を果たしていくということで,過去の政策について,正しい判断であったのかどうかを検証したり,学問・研究での有効活用とか,それから本日,こちら著作権の関係でお話しさせていただいておりますけれども,いわゆる創作活動とかのベースになるということでありますし,また全体で見れば国民・住民のアイデンティティーの確保に役立つものだということであります。
こういう公文書でありますけれども,2つぐらい大きな課題がこの公文書管理法ができる背景にはありました。1つは国立公文書館が各国と比較いたしますと非常に脆弱で,中に入っている文書も余り期待できるものはなかった,本来あるべきものが入っていないし,それを支える体制もしっかりしていなかったと。あるいは移管が各府省の協議によって整ったものだけ移管されるというようなものなので,各府省の側にいわば拒否権があったということでありますけれども,移管が進んでいなかった,あるいは延長が繰り返されたということで,国立公文書館の充実・強化というのがテーマとして,福田官房長官時代から実は課題となっていて,政府部内で検討していました。この課題と併せて平成19年の秋の臨時国会で問題になりましたが,いわゆる年金記録の問題とか,自衛隊補給艦「とわだ」の航海日誌の紛失問題といった現用文書に関する文書管理の不適切事案が臨時国会で問題となって,公文書管理制度の見直しというものが課題となったということでありまして,この国立公文書館の充実・強化の必要性と公文書管理の制度の見直しといった2つの課題を1つの公文書管理というテーマにして法制化をするということが,平成20年の169回国会における福田内閣総理大臣の施政方針演説で,「年金記録などのずさんな文書管理は言語道断です。行政文書管理の在り方を基本から見直し,法制化を検討するとともに,国立公文書館制度の充実・拡充を含め,公文書の保存に向けた体制を整備します。」と述べられており,これを受けて,同年2月29日に公文書管理担当大臣が任命され,内閣官房の方に公文書管理の在り方等に関する有識者会議が設置されて,法案化に向けての検討が進められ,去年の3月3日には法案を閣議決定の上,国会で審議していただきまして,6月23日に全会一致で成立ということで,7月1日に公布されて,施行につきましては2年以内で政令に定める日から施行するということになっている法律でございます。
内容につきましては,資料1-1でございますけれども,公文書の意義でございますが,公文書は教訓を学び,未来の国民に対する説明責任を果たす国民の貴重な共有財産である。公文書を十全に管理・保存し,後世に伝えることは国の重要な責務という,こういうきちんとした意義があるにもかかわらず,公文書管理をめぐる状況は,先ほど申し上げましたとおり,不適切な文書管理とか,国立公文書館への移管が進まないという現状がある。
この問題解決を図るために公文書管理法を制定して,文書の管理について法的な規律を明確にし,適切な公文書等の管理体制の確立を図ることとしました。その法律の内容としては,まず目的規定において,公文書等が健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るものと位置付けています。
2番目が,法律や政令に基づいて共通のルールで策定された文書管理規則により文書を管理すること。これは各府省の不適切な文書管理事案というものの背景には,もちろん情報公開法上,今回改正前の第22条に行政文書の管理に関する規定があったわけですけれども,その規定に基づきまして,文書管理を政令下で規定しておったんですけれども,その実施につきましては各府省任せであったというのが実態でありまして,その各府省任せがこのような不適切事案を生むような土壌であったということでありましたので,今回のこの法律におきましては,法律や政令等に基づきまして,共通のルールを定め,さらに,総理の同意のもとに各府省の文書管理規則を設け,それらに基づいて文書管理をきちんと政府全体でやっていくんだということとしています。
それから,行政文書の範囲でございますけれども,その範囲につきましては行政機関の経緯も含めた意思決定に至る過程や事務・事業の実績を合理的に跡付け・検証することができるように文書を作成するというような形にしたということであります。
それから,国立公文書館に文書が移管されない原因が,内閣総理大臣と各府省大臣とが協議して,協議が整ったもののみ移管するというようなシステムだったところを,保存期間が満了した文書のうち,歴史公文書等は国立公文書館等にすべて移管するということによって,歴史的に重要な文書が国立公文書館に移管されるようにしたということであります。
また,保存期間が満了した文書を廃棄しようとするときは,内閣総理大臣の事前同意を受けなければならないということで,勝手に文書を各府省において廃棄ができないようにしたということであります。
ルールを定めるということは大事なんですけれども,それを守らせるというのも大事なことでありまして,コンプライアンスの確保のために,各府省から文書の管理状況を毎年度,内閣府の方に報告していただいて,管理に改善が必要な場合,公文書管理委員会の意見を聞いて勧告を行うなど,監視機能を内閣府が行うようにしたということであります。
それから,国立公文書館の独立行政法人化に伴いまして,国の文書の受け入れしかできないようなことになっていたところなんですけれども,その対象範囲を独立行政法人等の文書に拡大したということであります。これは先ほど情報公開のお話をさせていただきましたけれども,情報公開に関しましては,国の行政機関に関する情報公開法,それから独立行政法人に関しても別に情報公開法が定められています。この公文書管理法の位置付けとしては,文書管理の一般法というふうに位置付けられておりまして,情報公開の部分につきましては,それぞれ先ほど申し上げた2つの法律が情報公開に関する特別法という位置付けになりますので,要は国の行政機関と同様に情報公開の義務を負っている独立行政法人についても,この法律において対象とするとともに,移管もきちんと行うということにしたところであります。
それから,文書管理に関する事務を内閣府に一元化するとともに,必要な機能を加えた国立公文書館の専門的知見を活用する。これは現在の情報公開法と公文書管理の管轄は総務省であって,国立公文書館の所管が内閣府であるわけですけれども,両者連携してやってはいたところですけれども,なかなか行政文書のライフサイクル全体ではいろいろ壁がありました。それを,制度官庁を内閣府に一元化して,文書を作成・取得し,管理するところから,歴史的な重要な文書のところまで含めて内閣府の所管にすることによって,一元化を図り,全体の流れを良くするということと,それから,こういったもののシステムの中に国立公文書館の専門家の知見を活用していくこととしたということです。
それを全体図で示して見せたのが資料1-2であります。
各府省,内閣府,公文書管理委員会と左から並んでおりまして,公文書管理委員会は内閣府に設置される審議会であります。ここで有識者の方に御議論いただくわけですけれども,ポイント1といたしましては,まず文書管理の統一的な管理ルールを法令で規定する。
それから,これは新しいんですけれども,ポイント2といたしまして,レコードスケジュールの導入を図る。このレコードスケジュールというのは,文書の行き先ですね。例えば文書を30年保存して保存期間が満了したら国立公文書館に移管するとか,あるいは10年保存して廃棄するとか,そういったいわゆる行き先を予め定めるんだということですね。それを定めることによってきちんとした文書管理の流れを作っていくことにしています。
ポイント3では,コンプライアンスの確保ということで,先ほど申し上げたように,各府省にルールを守らせる仕組みということで,各府省からの報告,それから内閣府の方で疑義があると感じたときには,特別な報告聴取をしたり,あるいはさらに現地に行って実地調査もできるということで,コンプライアンスの確保を図るとともに,実際に調査するだけではなくて,調査結果を踏まえて内閣総理大臣から各府省大臣に対して,行政文書の管理の改善に関する勧告を行えるようにしています。各府省はその勧告に沿って取った措置について内閣府の方に報告する義務を負っているということであります。
このようなルールを定めたり,勧告を行うに当たっては,内閣府が役人だけでやるのではなくて,公文書管理委員会という外部有識者からなる審議会を活用いたしまして,その知見を使いながらやっていくということとしております。併せて,国立公文書館の方々の専門的な知見も活用していくんだと。
下の方にまいりますけれども,今回,利用ということで,実際にこの文書を作って,国立公文書館等に移管をして利用していくということで,まず,国立公文書館に移管をされたものについては永久に保存すると定められており,寄贈・寄託も含めてになりますけれども,利用に関しましては,利用させなければならないという利用請求権が16条で定められているということであります。これは国民の権利として,新たに創設的に定めている権利であります。
また,権利救済の規定を入れておりまして,いわゆる利用制限のある情報が含まれている場合につきまして,実際利用制限に不服がある場合につきましては,異議申立てをできるという仕組みを作っておりまして,それに対して公文書管理委員会の方に諮問,それから調査審議,答申するような仕組みも法律で定めているところであります。
このように公文書管理法は制定されておりますけれども,この法律による効果といいますのは,お配りしてあります資料1-4の目的にありますように,第1条,これは非常に大事な規定なので読んでみますけれども,「この法律は,国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が,健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るものであることにかんがみ,国民主権の理念にのっとり,公文書等の管理に関する基本的事項を定めること等により,」―ここからですね―「行政文書等の適正な管理,歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り,もって」―ここからがまた大事ですけれども―「行政が適正かつ効率的に運営されるようにする」ということがまず一つの目的であります。もう一つが,「国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする」ということで,この法律全体の理念というのが,まさにここに書いてあるわけですけれども,このような要は国民に対する説明責任を全うするという目的がきちんと定まった上で,個別の規定があるということであります。
次に,資料1-3の方にまいりますけれども,「公文書等の管理に関する法律と著作権法との調整について」ということで,公文書管理法は,歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り,これによって,先ほど申し上げたことを一つの目的としているということであります。これを実現するための手続として,同法16条第1項の規定により,国立公文書館等の長は,国立公文書館等において保存されている特定歴史公文書等に対する利用請求があった場合には,利用制限事由に該当する場合を除きまして,利用(閲覧・写しの交付等)をさせなければならないということであります。
この点につきましては,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする情報公開法第5条に規定されます行政文書の開示義務と同様の仕組みとなっています。
また,公文書管理法においても,情報公開法と同様に公益上の理由による義務的開示を行うという規定が設けられておりますけれども,その開示を行うに当たっては,第三者保護手続が情報公開法と同様に定められているところであります。なお,公文書管理法におきましては,情報公開法の中の第7条にあります公益上の理由による裁量的な開示の規定はありませんので,この点は問題が複雑になっていないと思います。
この公文書管理法の仕組みに基づいて,利用請求者に供する特定歴史公文書等には,その一部に著作物が含まれる場合があり得ます。この場合においても,公表権や複製権等の著作権法上の権利は本来保護されるべきものであることから,必要な調整措置を講ずるに際して,これらの権利を制限する場合には,必要最小限度の範囲とする必要はあります。
以上のことから,著作権等の権利保護と公文書管理法の円滑な運用という2つの観点を踏まえて,以下のとおり,情報公開法と同様に,著作権法との調整を行えればということでお願いしたいということであります。
まず第一に,公表権ということで,未公表著作物を含む特定歴史公文書等について利用に供する場合の調整ということであります。
次に,氏名表示権ということで,特定歴史公文書等を利用に供する場合に,氏名を表示又は省略する場合の調整ということで,例えば,利用請求者に著作物を含む特定歴史公文書等を利用させるに当たって,著作者名が個人情報に該当することから,そのままだと非開示になる,利用制限にかかる場合があるんですけれども,そういったものについて,当該著作者名の表示を削除して利用に供する場合ということです。
次が複製権等でありますけれども,ここは非常に大事なところですが,公文書管理法に基づく利用に関する諸権利との包括的な調整ということでありまして,ここは情報公開法の際にも著作権法42条の2ということで調整していただいているところであります。
その他でありますけれども,利用に当たって作成された複製物の譲渡及び目的外使用,それから出版権及び著作隣接権の制限に関する調整等といった点であります。具体的には,利用請求者に出版物や実演等の録音・録画物を含む特定歴史公文書等の複製物を交付または利用に供する場合等ということが考えられます。以上が情報公開法並びの特定歴史公文書等に係る利用請求権の対応という点でございますが,これとは別にもう一点ございまして,もう一点は,前回の著作権法改正で国立国会図書館に関しまして改正いただいている点とのパラレルになりますけれども,特定歴史公文書等に係る永久保存への対応についてであります。
先ほど見ましたように,公文書管理法におきましては,特定歴史公文書等については永久に保存しなければならないということとなったところであります。これに対応するために,国立公文書館等においては,予め特定歴史公文書等についてマイクロフィルム,デジタル画像等の複製物を作成し,これを積極的に利用に供することによって原本を保護し,特定歴史公文書等の永久保存を確保することが望ましいということであります。
特定歴史公文書等の保存に支障が生ずるおそれがあると認めるときにつきましては,その写しを閲覧させる方法によりこれを利用させることができることとされてはいるんですけれども,このように文書の劣化が進んでから複製物を作るというようなこと,これ自体は著作権法の31条1項2号でもう既に定まっております。また,利用請求のための複製物の作成につきましては,申し上げたとおりのところで,利用の際の利用請求権の対応のところで可能ですけれども,公文書管理法の趣旨を踏まえれば,要は公文書というのは一点物なので,図書と違いまして,それが駄目になってしまったら,もうこの世にはなくなってしまうということでありますので,一点物がみすみす劣化していくというのを放置するのではなくて,劣化や利用請求を待つことなく,利用の多いものから順次複製物を作成いたしまして,利用者の利便を図りつつ,貴重な歴史公文書等の永久保存を確保していくことが必要なんだということであります。このために著作権法との調整を行いたいということで,この点につきましては,国立国会図書館のケースでは著作権法第31条2項におきまして,図書館資料の原本保護の観点から著作物を記録媒体に記録することができるとされているというところであります。
今回,マイクロフィルム,デジタル画像等の複製物としたのは,いわゆるアーカイブスの世界におきましては電磁的な保存の信頼性という問題がありまして,電磁的なものは必ずしも100年もつ,1000年もつという科学的な実証がされていないということもありまして,マイクロフィルムがかなりもつということは分かっておりますので,マイクロフィルムと併用して現在やっておりますので,マイクロフィルムとデジタル画像等の複製物を作成するとしているところであります。
この後の説明の際に議論になるので予め説明しておきますけれども,公文書管理法におきましては,寄贈・寄託ができるということになっておりまして,まず2条7項で特定歴史公文書等の範囲というのがありますけれども,第1号は国の行政機関からレコードスケジュールに基づいて国立公文書館に移管されるものです。2号が,11条4項で独立行政法人等から歴史的に重要な文書として移管されるものです。それから3号が,14条4項というのは国の機関のうち行政機関を除いたもの,すなわち立法府,司法府からの移管というものでありますけれども,そういったものが3号であります。それから4号が,法人その他の団体又は個人から国立公文書館等に寄贈・寄託されたものということでありまして,その前に6号で,この法律において歴史公文書等とは歴史資料として重要な公文書その他の文書をいうというふうにしておりますけれども,現行法だと公文書館に移管されたものが歴史資料として重要な公文書等というふうな規定になっておるところなんですけれども,今回の公文書管理法の制定に当たりまして,ちょっと概念を変えておりまして,世の中に,この2条6項にあるように,あまねく歴史資料として重要な公文書その他の文書というのは存在し得るんだという前提にまず立っているんですけれども,その中で国立公文書館等,これは2条3項になりますけれども,この法律において国立公文書館等とは,次に掲げる施設をいうということで,1号が独立行政法人国立公文書館の設置する公文書館,2号が行政機関の施設及び独立行政法人等の施設であって,前号に掲げる施設に類する機能を有するものとして政令で定めるものというふうなものでありまして,これは具体的には宮内庁書陵部とか,それから外務省の外交史料館,あるいは日本銀行のアーカイブスといったものが一応イメージはされておるところですけれども,この国立公文書館等になりますと,第4章の歴史公文書等の保存,利用等の規制がかかるということでありまして,きちんと目録を作成するとか,永久保存するとか,先ほど申し上げたような義務を負うということであります。
この歴史公文書等から特定歴史公文書等に,要は受け入れるところで一回スクリーニングがかかっているわけですね。スクリーニングが必ずかかるような仕組みになっていて,歴史公文書等がそのまま来るのではなくて,きちんとスクリーニングをかけてこの1号から4号まで,4号については国立公文書館等でございますけれども―に寄贈・寄託されたものということで,国立公文書館等の方できちんと,先ほど申し上げた第1条の趣旨に沿った形で,すなわち国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにするというような,この目的規定に合致したものについて当然対象になるようにスクリーニングがかかるんだということであります。
したがいまして,ちょっと御心配の向きがあろうかと思いますけれども,例えば寄贈・寄託されるものの中に著作物とか,本とか,そういうものが入っているといったときに,それが全部,国立公文書館等に受け入れられ,公開されてしまうのではないかという心配があるかもしれませんけれども,そういうことはないんだということですね。きちんと特定歴史公文書等に,要は受け入れるときにきちんとジャッジをして,この目的に合ったものについて受け入れていくというような仕組みですので,そこの点は例えば,この後定めることになりますけれども,利用等規則といったものを国立公文書館等という機関については,第4章で定められておりますけれども,利用等規則というものをきちんと定めて,受け入れとか,保存とか,利用とか,そういったものについてきちんとした体制を作って,国民の利用請求権に応えていくということが義務付けられておりますので,そのようなきちんとした体制の下で受け入れをきちんとやっていくということが前提になっているんだということであります。
以上,簡単ではありましたけれども,資料の説明をさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。非常に丁寧にご説明いただきまして,ありがとうございます。
続きまして,事務局から,この公文書管理法に関する権利制限についての追加的な説明をいただければと思います。
【池村著作権調査官】
それでは,資料2-1,こちらをご覧いただけますでしょうか。
1ページ目の「1.問題の所在(1)公文書等の管理に関する法律の概要」,そして2ページ目の「(2)問題の所在」の部分につきましては,ただ今,内閣府岡本参事官よりご説明いただいたところと同様ですので,省略させていただき,2ページの「2.検討の方向性」,こちらの部分からご説明を申し上げます。
まず,「(1)文書等利用請求への対応について」でございます。ご承知のとおり,また先ほどもご説明がございましたとおり,行政機関等の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすること等を目的とする行政機関情報公開法及び独立行政法人等情報公開法が制定された際,これに伴い,文書開示の円滑化と著作権との調整を図る観点から,法律に基づく開示請求に必要な限度で公表権,氏名表示権及び複製権等につき,新たな権利制限規定を設ける著作権法改正を過去に実施しております。具体的には,公表権については18条の3項と4項,氏名表示権につきましては19条の4項,複製権等につき42条の2,そしてその他関係規定の整備,こういったものが行われております。
続いて,3ページ目をご覧いただき,最初の○でございますが,公文書管理法に関しましても,行政機関等の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすることという目的は,情報公開法のそれと同様であり,公文書管理法に基づく利用請求に応じた利用は,行政機関情報公開法等に基づく文書開示と同様の意義を有するものであると考えられるかと思われます。
また,公文書管理法に基づき利用される文書のうち,行政機関等が保有する文書に関しては,国立公文書館等に移管されるまでの間は,先ほど申し上げた各規定により著作権が制限されるわけでありますが,移管された後はこれらの権利が制限されなくなってしまうというのは望ましくない結論であるように考えられ,移管の前後で取扱いを分ける合理性は特段見出せないように思われます。
以上を踏まえますと,公文書管理法16条1項に基づく利用請求に応じた利用につきましては,基本的には行政機関情報公開法等と同様の調整規定を著作権法上に置くことが適当であると考えられるのではないかと,こういった形で整理をしております。このような整理でよいのかという点につき,後ほどご議論をいただければと思います。
ただし,公文書管理法において利用請求の対象となる特定歴史公文書等は,2ページの※2にも書いてございますとおり,また先ほどもご説明がございましたとおり,行政機関以外の国の機関からの移管文書ですとか,一般からの寄贈・寄託文書という行政機関情報公開法等の開示対象とはなっていないものも含まれる概念であるため,これらについては別途整理が必要であると,このように考えております。
具体的には,3ページの[2]をご覧いただきまして,まず行政機関以外の国の機関,具体的には裁判所や国会からの移管文書ということになりますが,これらの文書につきましては現在,移管前は情報公開法の趣旨を踏まえ,各機関において自主的に開示が行われているとのことであります。この自主的な開示につきましては,法令上の義務によるものではないこともあり,先ほどの情報公開法に基づく開示とは異なり,著作権法において特段,権利制限規定は設けられておりませんが,これらの文書は国立公文書館等に移管された場合は,行政機関からの移管文書と同様に,公文書管理法に基づく利用請求の対象となることから,あえてこれらを区別し,別の取扱いをする合理性は見出せないと考えられ,著作権等の制限についても行政機関や独立行政法人等から移管された文書と同様の取扱いをすることが適当であるという形で整理をいたしております。これにつきましても,このような整理でよいか,後ほどご審議いただければと思います。
続きまして,一般からの寄贈・寄託文書の取扱いでございます。公文書管理法に基づく利用請求の対象である特定歴史公文書等には,法律の文言上は法人その他の団体や個人から国立公文書館等が寄贈・寄託を受けたものが含まれることとなっております。これらについて,行政機関からの移管文書と同様に権利制限の対象としてよいかという点につきましては,行政機関等から移管を受けた文書と同様に,これを開示することに公益性が認められるか,そして開示対象となる文書に含まれ得る著作物の著作権者の利益への影響の度合いについて,整理をする必要があるものと考えております。
この点,こうした一般からの寄贈等文書は,先ほどもご説明がございましたとおり,公文書管理法の目的にのっとり運用されることになることから,無制限に対象文書が拡大するといった事態にはならないものと考えられるところですが,権利制限の対象と位置付ける場合には,法律の適切な運用,すなわち寄贈等の対象となる著作物の性質,分量等に照らして,著作権者の利益を不当に害するものではないことが運用上確保されることが必要になると考えております。実際の運用につきましては,先ほど岡本参事官よりご説明いただいたものと思いますので,後ほどご議論をいただければと思っております。
次に,[4]といたしまして地方公共団体の公文書管理法に相当する条例への対応という論点でございます。
公文書管理法34条では地方公共団体に対して,公文書管理法の趣旨にのっとった文書管理の努力義務,こういったものを課していることから,仮に地方公共団体において公文書管理法の利用請求に相当する規定を置く条例,便宜上,ここでは公文書管理条例というふうに言いますが,こうした条例が作られた場合,これについても権利制限の対象とすべきか否かという問題があるかと思います。
ご承知のとおり,情報公開法上も地方公共団体への努力義務が規定されており,同様の問題があるわけでございますが,情報公開条例につきましては現行著作権法上,情報公開法と同様の手当がされているところであります。この点,現状では公文書管理条例は余り数が多くないとのことでありますが,今般の公文書管理法の成立に伴い,今後こうした公文書管理条例の整備が進むことも想定されるところであり,仮に著作権法において公文書管理法について権利制限を行う場合は,条例についても同様の対応を行うことが適当ではないかと,こういった形で整理をいたしております。こちらにつきましてもこのような整理でよいか,後ほどご審議をいただければと思います。
続きまして,5ページをご覧いただき,もう一つの大きな論点であります,「(2)保存のための電子化」についてございます。
まず,[1]といたしまして,国立公文書館等における永久保存の意義の確認でございます。こちらは現在及び将来の国民への説明責任の全うというところに公文書管理法における永久保存制度の目的が求められることから,これには一定の公益性が認められるという形で整理をしてございます。
続きまして,[2]として現行法の解釈による対応可能性についての考え方の整理でありますが,先ほどもご説明ございましたとおり,現行法では31条1項2号での適用が考えられるものの,公文書館への移管直後に良好なコンディションの下でデジタル化をすることが31条1項2号で許容されるか,この問題につきましては必ずしも明らかではないということを21年の分科会報告書の記載も注釈で引きつつ,確認をしてございます。
続きまして,[3]をご覧ください。永久保存義務の対象となる文書に含まれる著作物について整理しております。公文書管理法の規定上,永久保存の対象となる文書は,先ほどの利用請求の対象と同様に,特定歴史公文書等でございます。このうち,行政機関及び独立行政法人等からの移管文書については,新聞,雑誌,書籍,その他,不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものが法律上除外されております。
さらには,国立公文書館の行った調査によりますと,現在,国立公文書館の所蔵資料のうち,行政機関以外の者が著作者等であると考えられる著作物には,新聞記事,ポスター,建築図面などがあり,割合としては0.5%程度であるとのことであり,これらに照らすと仮に国立公文書館等における永久保存のために複製権を制限するとした場合,著作権者に与える不利益の度合いは少ないと考えられるところであります。
以上を踏まえた対応の案でございますが,公文書管理法に基づく永久保存に認められる公益性と著作権者への利益への影響の度合いに照らすと,当該永久保存に必要な限度で権利制限を行うことは適当と考えられるのではないか,こういった形で整理をいたしました。こうした整理でよいか,ご議論をいただければと思います。
最後に,この永久保存の対象には,先ほどの利用請求に基づく利用と同様に,一般からの寄贈・寄託文書が含まれてくることから,先ほどと同様の観点から検討する必要があるものと考えてございます。
資料2に基づく事務局からの説明は以上でございます。どうぞご審議のほどよろしくお願いいたします。
【土肥主査】
ありがとうございました。
それでは,今説明をちょうだいいたしました点について審議を行ってまいりたいと存じます。
大きく分けて2つあったかと思いますけれども,文書利用請求時の対応の問題と,それから保存のための電子化の問題と,2つ大きくあったと思います。それで,最初の文書利用請求時への対応として,どのように権利制限規定を考えればいいのか,この点についてご意見をいただきたいと存じます。どうぞ。
ご質問がございましたら,ご質問でも結構でございますので,どうぞお出しください。
小泉委員,どうぞ。
【小泉委員】
今ご説明いただいた資料2-1の4ページの○の2つ目,「この点」というところに関連いたしますが,電子化の場合と同様に,利用者に渡す場合についても,ナショナルアーカイブに入るということは,事実上,パブリックドメインに入ったというような扱いをしていかないと,せっかくのこの制度の運用がうまくいかないと思います。4ページの○の2つ目に,適切な運用が確保される必要があるというところに括弧が長く入っておりますけれども,どのような文書を選ぶか,何が重要かというのは,著作権法の問題というよりはアーカイブの方の運用の問題だと思います。どの程度の分量が想定されるかという点につきましては,たとえば半分しかコピーできないというのは,いかがなものかという気がいたします。資料1-3で想定されております,たとえば,懸賞に応募して落っこちたものの中で,特に歴史的な価値があるということを公文書館の方でご判断されたものであるならば,非常に重要なものなので,特に著作権法上あいまいな足かせを課すという必要はないのではないかなという印象を持ちました。
以上です。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかにご意見ございましたら,お願いいたします。
前半の方は,今,小泉委員のご意見がございましたけれども,それ以外にも,基本的に3ページのところの上から3つ目の○の,これまで情報公開法との関係でやってきたような,そういう調整規定をこの公文書管理法についても基本的に取れることが適当ではないかと,そう事務局版で出ておるわけでございますけれども,この点はよろしゅうございますか。
【小泉委員】
賛成です。
【土肥主査】
1のところだけでなく,2のところも含めてご発言いただいても結構でございますが,保存のところ,かなり先ほど岡本参事官からの説明のところでは詳細に,国会図書館の場合とか違うのではないかという,文書の性格上,一点物であると,こういうようなことで,恐らくこれは入れたらすぐにという,そういうことなのではないかと思うんですけれども,この保存について,いかがでございましょうか。
では,お願いします。
【小泉委員】
私は賛成でございます。
【松田委員】
公文書館に一点物が入ってきて,それを保存のためにすぐにデジタル化して資料として保管をするとしたときに,現行著作権法ですと,31条の1項の2号ですか,保存のための複製をすぐできるというふうに条文化するとするならば,31条の2項相当の条文を作ればいいということになります。その立法的な要請まではないというふうに考えていいのでしょうか。事務局も含めて。
【池村著作権調査官】
すみません,5ページを見ていただきまして,[2]のところの「現行法の解釈による対応可能性」の最初の○でございますけれども,現行法の解釈による対応が可能かというところは,昨年の分科会報告書でもご報告いただいているとおり,現行法で31条1項2号で,移管後直ちに良好なコンディションでデジタル化できるということは必ずしも明らかではないということから,この点をすぐできるような,31条2項に相当するようなものを置く必要があるのではないかということを事務局としては考えております。
【松田委員】
そうですか,分かりました。2項相当の立法を含めて判断すると,こういうことですね。
【池村著作権調査官】
はい,そのとおりです。
【松田委員】
結論的に言えば,国立国会図書館にある権能と同じように,公文書館においても2項相当の規定があってもいいのではないかなとは思います。そのことで特に問題が起こることというのは何なんでしょうか。あるとすれば,そもそも最初から著作権侵害をする複製物ではあるんだけれども,歴史的に非常に保存に重要なもの,これをデジタル化していいかという問題は起こるかもしれませんね。その辺はどう考えたらよろしいんでしょうか。
必ずしも公文書館に寄贈されるもの,ないしは政府が作られたものでありましても,全て,著作権法上,全部完璧に適法だとは言えないのです。可能性としてはいつでも危険性がある。そういうものをデジタル化して永久保存をしていいか,そういうことになれば,当然のことながら閲覧もスムーズになるわけです。そういうことについての検討はいかがなものでしょうか。
【内閣府岡本参事官】
可能性はあるのではないかという話でしたけれども,我が方としてはそういうものは当然,受け入れ段階でスクリーニングしたいと考えておりますので,まず入り口からシャットアウトということが当然要請されるということだと思います。また,権利関係についてもきちんとした上で受け入れるとか,そういうことが前提になるのではないかと思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。先ほどスクリーニングの規則は今から作るというふうにおっしゃったわけですけれども,そういうところに反映されるという,そういう理解でよろしいわけですね。
【内閣府岡本参事官】
そうですね。具体的にはこの後になりますけれども,この法律の施行に当たってきちんとした,これは国立公文書館だけでなく,外交史料館とか宮内庁書陵部,あるいは日銀アーカイブスさんとか,その他,この後の調整になりますけれども,国立公文書館等に入れてくれという機関に対しては,一律にまずは共通ルールがありまして,それに基づいてそれぞれの機関が利用等規則を定めて,それについて共通ルールとの適合性を内閣府の方で公文書管理委員会に諮りながら判断するというような過程もございますので,それぞれの機関において,きちんと利用等規則が入るようにウォッチもできるというような仕組みになっております。共通ルールも定められるし,それからウォッチもできるということであります。
【土肥主査】
ありがとうございました。ほかに何か。
どうぞ。
【松田委員】
引き続きまして,国立国会図書館の電磁的記録化とパラレルに考えますと,少なくとも保存のためのデジタル化,電磁的記録化は相当だろうなというふうに,直感的といいますか,考えます。国立国会図書館の場合には公共の利用に供するためという目的がございまして,言ってみれば,一般市民に端末で,少なくとも館内では閲覧させることになるわけです。
公文書館では恐らくそういう目的まではないんだろうと思うんですが,電磁的記録にした場合については完全に,職員がそれを閲覧等をする,請求によって謄写等をする場合はあるかもしれませんが,国会図書館のような公共の利用に供するための目的というものを入れる必要はないと考えますが,この点はいかがでしょうか。
【内閣府岡本参事官】
ここは先ほどの資料の方に書いておりますけれども,資料1-3の2ページ目の一番下になりますけれども,利用請求のための複製物の作成というのは1の方で御議論をいただいているところでありますので,それについては1で対応するということでありまして,2については基本的には保存のためのものであるということでありますので,将来的にそれが請求されるということはあるかもしれませんけれども,あるいは利用がされるかもしれませんけれども,そこはちょっと切り分けて考えております。それぞれお願いしたいということであります。
【土肥主査】
どうぞ,道垣内委員。
【道垣内委員】
今のお答えがちょっとよく分からなかったんですけれども,私も保存については恐らく問題なさそうだと思うんですが,法律の19条で,写しを閲覧させる方法とか,あるいは写しの交付の方法もあり得るんですか。要するに複製物をそのまま渡してしまうということがあるのでしょうか。先ほど小泉委員がおっしゃった例では,例えばある映画監督が若いころ応募した映画があって,それを保存されているとします。そのことを知った人がその映画について複製物の交付を要求するということもあり得るわけですか。ただし書きは,保存に支障のあるときは駄目ですと書いてあるんですが,著作権者の利益を侵害するおそれがある,あるいはそれが経済的にも非常に大きな利益かもしれないような場合には,法律的は止められないんでしょうか。その辺の作りがちょっとよく分からないんですが。
【内閣府岡本参事官】
公文書管理法19条の利用の方法をご覧になっていただければと思うんですけれども,国立公文書館等の長が特定歴史公文書等を利用させる場合には,文書または図画については閲覧または写しの交付の方法により,電磁的記録についてはその種別,情報化の進展状況等を勘案して政令で定める方法により行うということで,先ほど例に挙げた一般の映画みたいなものは,そもそも我が方の所管ではなくて,多分フィルムセンターさんの方にっているもので,国立公文書館にそもそも入っていないものですので御指摘のような問題が起こる可能性は低いものと考えております。
基本的には,例えば国立公文書館に入っているものとしては,自衛隊の映像とか,そういう防衛省で作った広報資料みたいなDVDとか,そういったものが入っておるわけですけれども,これを例えばブースでDVDを視聴していただくとか,基本的にはそういうような形になると思います。
【土肥主査】
道垣内委員,よろしゅうございますか。
【道垣内委員】
しかしそもそもこの問題は,行政機関が作ったものではなくて,普通の人が作ったものが混じっているところからスタートしているんじゃないんですか。今おっしゃった例はもともと防衛省のものではないかと思うんですけど。
【内閣府岡本参事官】 
映像資料でそのようなものが公文書館に来るかというと,余り来る可能性はないのではないかと思います。
【内閣府中原専門官】
内閣府の中原と申します。
可能性としては入ってくる確率は極めて低いと思っておりますが,本当に万々が一ということでありましたら,情報公開法と同様,事前の第三者に対する意見書の提出の付与の制度がございますので,その意見書を踏まえて,国立公文書館等で適切に判断することとなり,御指摘のような経済的に大きな侵害が起らないよう留意することとしております。
【土肥主査】 
ほかにいかがでございましょうか。山本委員,どうぞ。
【山本(た)委員】
せっかく参加させていただいていますので,賛成か反対かの意見の表明だけはさせていただきたいと思いまして。
小泉委員の方からご指摘がありましたように,重要な歴史資料というのは国民共有の財産で,これはPD扱いにして本来いいものだと思います。ただ,じゃ重要な歴史的な資料なのかどうかという判断が緩くなれば,著作権者に対する影響がかなりあるという問題は発生するんですけれども,それはどこかで判断せざるを得ませんので,公文書館でやっていただくというのは,それは仕方のない話だと思います。何らかの歯止めが必要だとは思うんですが,ここでPDだったらもう何でもありのところを,かなり謙抑的な制限を利用方法についてかけられていますので,この程度であれば極めて合理的で,何も問題ないのではないかなというふうに私は思います。
【土肥主査】
ありがとうございました。保存についても同様ということですね。
【山本(た)委員】
はい。
【土肥主査】
いかがでしょうか。保存について特定歴史公文書ですか,そういったものについて私人のものが入るということでございますけれども,先ほどの例では,歴史的な第1回目の有名な監督のポスターとか,そういうものが公文書としても入るようなことがあり得るという,そういうことですよね。そういったようなものについて保存をするということは,恐らくこのメンバーの中で異論はないのではないかというふうに思います。量的にも,先ほどの事務局からの説明だと極めて少ないということのようでございました。
それから前段,第1の方の利用の場面においてどうなるのかということについては,これは先ほどの説明からお伺いすると,まだまだこれから決まっていくという面も多々あるわけですね。そういうところできちんとやっていただくということなんですけれども,本小委員会ということでは,従来やっている情報公開法との並びの中で権利制限を基本的に考えていくという,そういう考え方は皆さんよろしゅうございますか。
それでは,特にご意見をまだいただいていない方がおられましたら,ちょうだいしたいと存じますけれども。
どうぞ,山本委員。
【山本(り)委員】 
ちょっと確認したいのですが,私も基本的に賛成です。その上で一つ,念のためにお伺いしたいんですが,資料2-1の4ページのところで,地方公共団体の公文書管理法に相当する条例への対応ということがありまして,これは(1)の問題と,あるいは(2)の方の問題にも関わるのかもしれませんが,その上で地方公共団体の公文書管理法に相当する条例というのはどの程度現在あって,あるいは準備がされているのかということと,それから先ほどの寄贈・寄託の問題ですけれども,国の機関に関しては規則を作って,それで内閣府でチェックするということだったんですが,地方公共団体でここのところの範囲がばらばらになるとか,そういったご懸念というのは何かあるのか,あるいはないのかというあたりをお教え願いたいんですが。
【内閣府中原専門官】
地方公共団体の条例の整備状況なんですけれども,こちらは実態として,地方の公文書館自体がかなりまだ少ないということもありまして,地方が公文書館に移管したものに請求権のようなことを条例で書いているような例というのは,我々が把握している限りでは今1件しかありません。現在は,公文書管理法ができて,第34条で地方公共団体に公文書管理の努力義務が課せられたことから,各地方において,これを参考にして,条例を作っていこうという動きが,少しずつ出てきているようであるというような段階です。
【内閣府岡本参事官】
民間の方で公文書管理条例に関する検討会みたいなのが立ち上がっているというふうに聞いておりまして,我々まだコミットはしておりませんけれども,地方レベルでは検討が進み始めているということであります。
それから2点目については,地方公共団体は要は国の様子を見て決めていくというようなスタンスだと思いますので,国の方できちんと定めていけば,それに見合ったものを定めていくというような流れになっていくと思いますので,国の方できちんと問題がないように利用等規則を定めるようにしたいと考えています。
【土肥主査】
お願いします。
【中村委員】
寄贈・寄託の受け入れの判断に当たって,著作権者の意向というのはどの程度考えられるものなんでしょうか。
【内閣府岡本参事官】
御本人の著作物の場合は,寄贈・寄託時点で当然御本人に確認をさせていただいて,御意向を伺って,これはやめてくれとか,そういう話になると思うんですね。御本人ではなくて,さらに第三者が含まれる場合につきましては,寄贈・寄託の際に受け入れるときに,何らかの形で問題がないかどうか聞くような運用にしたいと思いますので,その時点で,処理をきちんとその際にできればというふうに考えています。
【土肥主査】
まだいろいろ詰められるところがあるようにも伺いますけれども,恐らく受け入れの際にはまたリポジトリの何かそういう提供者との間の手続があるんだろうというふうに伺いました。
本小委員会におきまして,従来の情報公開法と同様の調整規定を考えていくということについては,もう皆さんご意見,ご異論ないということでございますし,そういう意味からいたしますと,先ほどの条例についても同様に考えていくということになろうかと存じます。ただ,保存のところは従来とは違ってという,そういう私は皆様のご意見だと思いますけれども,つまり資料の傷みとか,そういう激しくなった後の状態,そういうことを考えるよりも,とにかく貴重な一点物の国民共有のある種財産,そういうような性格から,直ちに保存ができるような,そういう仕組みを考えておく必要があるのではないかと,こういうことではないかと思いますけれども,その点についてもよろしゅうございますか。
それでは,皆さん特にご異論がなければ,今申し上げたような方向で,この権利制限についてはまとめていただければというふうに思いますので,今回,事務局から説明がございました方向性でご了承いただいたというふうにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
森田委員,お願いします。
【森田委員】 
細かい概念の整理の問題になりますか,「永久保存」のためには,一点物の場合には早い時期から複製を作ることが必要であるというのは,これは一般的に「保存」のためにはそうしたことが必要かといえば,これまではそうとはいえなかったけれども,「永久保存」のためということになるとそれが必要になるということだとすると,「永久保存」という概念と「保存」という概念がどういう関係になっているのかが,私には必ずしもうまく飲み込めていないところがあります。もう少し端的に,「永久保存」のためにというよりは,早い段階で複製できるということを書いてしまった方がよいように思われます。そうしませんと,現行法のもとでも,図書館資料の「保存」のためには権利制限がかかっているわけですから,一点物の場合には,永久保存することを考えると,早い段階から複製するということが必要だということになると,現行規定における図書館資料の「保存」の解釈としても,それと同じことがあてはまりそうな気もするものですから,その両者の関係がうまく整理されているのかということが若干気になるところですが,そこはいかがでしょうか。
【土肥主査】
永久保存のためにという,そういう観点で今回の保存を考えていいのかどうかというのが,恐らく事務局からの我々の法制小委に投げられた質問の一つというふうに私は認識しております。それで,まさにそういう,永久に国民共有の財産,情報を保存する必要があるのではないかということと私は思いますけれども,森田委員もそういうことですか。
【森田委員】
結論については異論はないのですが,「永久保存のため必要な限度で」と言うと,何か非常に抑制的に感じられて,早い時期から複製することもそれに含まれると解することは難しいようにも思えます。むしろ,これは永久保存のために望ましい保存の仕方は何かという問題であって,「永久保存に必要な限度で」というのは,何かニュアンスとして意図しているところと齟齬があるような気がします。永久保存のためであれば,受け入れ段階で直ちに複製するのが望ましい場合があるが,ただ,それが必要な限度とまでは言えないとなると,どちらかが微妙な場合が出てくるように思いますけれども,「永久保存に必要な限度」というのはそういう趣旨ではないのでしょうか。要するに,「永久保存」という概念の意味内容なのですけれども。
【土肥主査】
おっしゃるとおりだと思いますけれども,そういうことで,謙抑的にぎりぎり永久保存の必要性があるかどうかという,そういう限度を見てということではないと私は理解しておりますし,皆さん,いかがでございましょうか。
よろしゅうございますか。
【松田委員】
もう直截に公文書館の一定の資料については電磁的記録化をすることができるという方向で規定してしまえばいいんじゃないでしょうか。
【土肥主査】
ありがとうございます。いずれにしても,ここでは方向性というものを示していけばよろしいんだろうと思いますので,本日の各委員の意見に基づいて,さらに詰めていただければというふうに存じます。
それでは,各委員,全員のご了承が得られたということと思います。幸いに本日,法制小委も成立しておりますので,本日の審議事項については以上というふうにしたいと存じます。
【松田委員】 
それでいいんですけれども,実は公共の目的である機関が複製ができるという規定の仕方をしますと,先ほどちょっと言いましたように,その規定があれば,適法複製物からの複製であろうが,違法複製物からの複製であろうが,全部その制限規定でリカバリーできる規定とすべきなのか,そうでないのかということは,一応,立法段階では事務局は慎重に検討していただきたいというふうに思っています。著作権法の中には,恐らくその2種類があるのではないかなと私は思っているのです。
【土肥主査】
今の点は詰めておく必要はありますかね。そこを分けずに全てというふうに私は認識しておったんですけれども。いかがですか。特にございますか。
事務局,何かありますか,今の点について。
【川瀬著作物流通推進室長】
ご指摘のとおり,そこのところは検討させていただきますけれども,一般論として言えば,制限規定の中に適法なものに限定してという規定というのはほとんどありませんので,多分どちらかというと,そういう方向,図書館のアーカイブ化なんかも違法複製物と適法複製物は仕分けはしていませんけれども,国会図書館なんかはちゃんとした出版社から納本手続によってもらっていますから,基本的には適法な複製物であるという蓋然性が高いというようなことを前提にして,多分規定ができていると思いますので,公文書館についても,そういうような公文書館の性格を踏まえて,立法段階ではそこら辺は考えていきたいというふうに思っております。
【土肥主査】
ほかに特段ございませんようでしたら,本日はこのぐらいにしたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。 ありがとうございました。
事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。
【池村著作権調査官】
次回の法制小委員会でございますが,まだ日程が決まっておりませんので,日程が決まり次第,またご案内をいたします。
【土肥主査】
それでは,これで第5回の法制問題小委員会を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

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