(平成23年第1回)議事録

1.日時

平成23年5月11日(水) 13:30 ~ 15:30

2.場所

 旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3 出席者

(委員)
上野,大須賀,大渕,小泉,末吉,多賀谷,道垣内,土肥,前田,松田,森田,山本(たかし)の各委員
(文化庁)
吉田文化庁次長,芝田文化庁長官官房審議官,永山著作権課長,佐藤国際課長ほか関係者

4 議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)法制問題小委員会主査の選任等について
    2. (2)法制問題小委員会審議予定について
    3. (3)その他
  3. 3 閉会

5 配布資料一覧

資料1 第11期分科審議会著作権分科会法制問題小委員会委員名簿 (100KB)
資料2 小委員会の設置について(平成23年4月18日文化審議会著作権分科会決定) (116KB)
資料3 ワーキングチームの設置について(案) (156KB)
資料4-1 各小委員会における検討について(第34回著作権分科会配布資料3-1) (132KB)
資料4-2 「文化審議会著作権分科会報告書(平成23年1月)」等で示されている今後の検討課題について (340KB)
参考資料1 文化審議会関係法令等 (164KB)
参考資料2 第11期文化審議会著作権分科会委員名簿 (140KB)
参考資料3 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」の設置について (168KB)
参考資料4 「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」(「デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスの在り方に関する事項」に関する議論の整理) (288KB)

6 議事内容

(1)法制問題小委員会主査の選任等について

  1. 本小委員会の主査の選任が行われ,土肥委員が主査に決定した。
  2. 主査代理について,土肥主査より大渕委員が主査代理に指名された。
  3. 以上については,「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」
    (平成二十二年二月十五日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき,議事の内容を非公開とする。

【土肥主査】  議事内容に入っていきます前に,配付資料の確認と本小委員会の議事の公開の取り扱いにつきまして,事務局から説明をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それでは,配付資料の確認をいたします。お手元の議事次第の下半分をごらんください。
 配付資料につきましては,資料1といたしまして,第11期の本小委員会の委員名簿,資料2といたしまして,先日,著作権分科会において決定されました小委員会の設置について,資料3といたしまして,ワーキングチームの設置についての案,資料4-1といたしまして,先日の著作権分科会でお配りいたしました,各小委員会における検討について,資料4-2といたしまして,本年1月に取りまとめられました分科会報告書等で示されている今後の検討課題についてまとめたものを配付しております。
 また,そのほかにも,参考資料1で文化審議会関係法令等を,参考資料2で著作権分科会の委員名簿,参考資料3で「電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議」の設置についてを,また参考資料4で同検討会議における議論の整理をまとめたものをお配りしております。
 なお,机上には,平成23年1月の分科会報告書もあわせて置かせていただいておりますので,ご参照いただければと思います。
 配付資料については,以上でございます。落丁等がございましたら,お近くの事務局員までお声がけください。
 続きまして,議事の公開についてでございますが,参考資料1の8ページをお開きいただければと思います。文化審議会著作権分科会運営規則第4条におきましては,原則として,議事は公開して行う旨が規定されておりますとともに,その他,分科会の会議の公開に関し必要な事項は,分科会長が分科会に諮って,定める旨が規定されております。
 次に,9ページをお開きいただければと存じますが,先ほどの運営規則第4条に基づきまして,平成22年2月に分科会決定されました文化審議会著作権分科会の議事の公開についてが定められております。
 本決定についての概略を説明いたしますと,まず冒頭で,小委員会を含む分科会の議事の公開について,運営規則第4条1項に定めるもののほか,下記により扱うものとすると書かれておりまして,具体的には,本決定の1におきまして,幾つかの案件を除きまして,会議は公開とするとされております。
 また,3では,傍聴者に係る規則について,4では,分科会長が許可した場合を除いて,会議開始後の撮影,録音,録画等の行為が禁止される旨が規定されております。
 最後に議事録の公開につきましては,6におきまして,議事録は,原則として,発言者名を付して公開することが定められております。ただし,公平・中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるとき,その他正当な理由があると認めるときは,議事録の全部または一部を非公開とすることができる旨,定められております。
 8の会議資料につきましても,原則公開でございまして,同様の場合に,全部または一部の非公開が可能である旨,定められております。
 なお,議事録につきましては,7にもございますとおり,仮に非公開とされる場合には,かわりに議事要旨を作成し,これを公開することとなってございます。
 議事の公開に関する説明につきまして,以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいま説明がございましたように,議事の公開については,原則,一般に公開した形で行うということで,分科会においても決定されておりますので,よろしくご承知おきをいただきたく存じます。
 本日の議事につきましても,公開で行いたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,ご異議がございませんので,これ以降,本日の議事は公開といたします。
 事務局の方は,傍聴者の方の入場をお願いいたします。

(傍聴者入場)

【土肥主査】  傍聴者の方の入場もいただいたようでございますので,それでは,第1回法制問題小委員会の開催に当たりまして,吉田文化庁次長よりごあいさつをちょうだいしたいと存じます。

【吉田文化庁次長】  文化庁次長の吉田でございます。委員の皆様方には,この法制問題小委員会の委員を,ご多用中にもかかわりませず,お引き受けいただきまして,まことにありがとうございます。
 今期は第11期ということになってまいります。前期第10期では,先ほど土肥主査のほうからもお話がございましたように,ある意味では,やるべきことがある程度決まっていて,そのために審議していただくということがございました。権利制限の一般規定あるいは技術的保護手段の見直しの問題など,精力的にご審議をいただきまして,今年の1月には著作権分科会報告という形でまとめをいただきました。まことにありがとうございました。
 今後の課題ということにつきまして,本日は特にご議論いただくわけでございます。先ほど土肥主査のお話にもありましたように,ある意味ではフェーズが変わってきている部分もございますけれども,そういう意味ではじっくりと議論すべきものが出てきているということでございますが,一方で,情勢の変化に応じまして,緊急にご審議をいただく案件が出てくる可能性もございますので,その点をまたよろしくお願い申し上げたいと思います。
 なお,昨期にご提言をいただきました権利制限の一般規定の関係の法制化につきましては,現在,関係省庁あるいは関係団体との調整を進めておりますけれども,現時点では著作権法改正案の国会提出にはまだ至ってない段階でございます。法案の提出には,なおしばらくの時間を要するかなと思っております。我々としては,提言を受けまして,できるだけ早く法案の提出あるいは成立に向けて努力をしてまいりたいと思いますが,あの大震災の影響などもかかわっておりまして,状況についてご理解を賜ればと思います。
 最後になりますけれども,今期におきましても,委員の先生方のご理解とご協力を得て,この審議を進めてまいりたいと思いますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。

(2)法制問題小委員会審議予定について

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,次に,法制問題小委員会の審議予定について検討したいと思います。
 まず,ワーキングチームの設置についてでございます。今期のワーキングチームの設置案につきまして,事務局から説明をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それでは,資料2及び3に基づきまして説明いたします。
 資料2として配付しております,さきの著作権分科会で決定されました小委員会の設置についてにおきましては,その4(2)にございますとおり,議事の手続,その他各小委員会の運営に関し,必要な事項は,当該小委員会が定めるとされております。
 これを受けまして,資料3として配付しております,ワーキングチームの設置についての案におきましては,前期と同様,引き続き,ネット上で複数者により創作されたコンテンツ等に係る課題について検討を行う契約・利用ワーキングチームと,間接侵害について検討を行う司法救済ワーキングチームの2つのワーキングチームを置くこととしてございます。
 また,各ワーキングチームの構成につきましては,2の(1)にございますとおり,各ワーキングチームに座長を置き,法制問題小委員会の委員のうちから,法制問題小委員会の主査が指名することとされております。
 そのほか,(2)にございますとおり,各座長は,必ずしも法制問題小委員会の委員に限定せず,必要な若干名を指名することとされております。
 なお,検討方法につきましては,3にございますとおり,メーリングリストの活用等による機動的な検討ができるものとするということとされておりますほか,原則として,会議は非公開で行い,議事要旨を作成の上,これを公開するものとされているところでございます。
 ワーキングチームの設置につきまして,以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして,ご意見,ご質問等がありましたら,お願いいたします。
 特によろしゅうございますか。
 ワーキングチームの設置につきましては,特にご意見がなければ,このような形でご了承をいただいたと記録させていただきますけれども,よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,ただいまご了承いただきましたワーキングチームにつきましては,事務局から説明がございましたとおり,座長をこの小委員会の委員の中から指名することになっておるわけでございます。
 そこで,契約・利用ワーキングチームにつきましては,前期から引き続き末吉委員に,司法救済ワーキングチームにつきましても,前期から引き続き大渕委員に,座長をお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
 各座長におかれましては,ワーキングチーム員の構成を固めていただきたいと存じます。固まりましたら,この小委員会で名簿を配付したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に,今期の法制問題小委員会において検討すべき課題についての意見交換を行いたいと思います。
 本小委員会における検討事項につきましては,先日開催されました分科会においても,分科会委員よりご意見をいただいておるところでございますけれども,こうしたことを含め,事務局から,資料4-1,資料4-2に基づいて,説明をお願いいたします。
 また,本日は参考資料4としてお配りしております,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議における議論の整理につきましても,事務局から説明があるということですので,この点につきましても説明をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  それでは,資料4-1及び資料4-2に基づきまして,説明いたします。
 まず,資料4-1ですが,本資料は,先日開催されました著作権分科会で配付されたものでございまして,第11期の各小委員会における検討課題例を簡単に記述したものでございます。資料にもございますとおり,法制問題小委員会における検討課題例といたしましては,引き続き検討されることとされております間接侵害や,複数者創作に係るコンテンツ等に係る課題のほか,権利制限の見直しに係る課題が掲げられております。
 また,資料4-1の冒頭にもございますとおり,今後の状況の変化等に応じて,検討体制等については,適宜見直すこととされてございます。
 次に,資料4-2でございますが,本資料では,本年1月にお取りまとめいただきました分科会報告書において示されている検討課題など,著作権法制に係る課題についての検討の方向性やその具体的な課題について簡単にまとめてございます。
 まず,分科会報告書でございますが,1の(1)で基本問題小委員会について,(2)で法制問題小委員会について,それぞれ検討課題を記載してございます。細かな説明につきましては割愛をさせていただければと思いますが,例えば,基本問題小委員会におきましては,1ページから4ページにわたって掲げております課題,権利の集中処理の推進や書籍のデジタル化,違法流通対策のほか,その他としてまとめられている第30条の見直し,学術・教育関連の権利制限規定のあり方などといったものが掲げられております。
 また,4ページにございます法制問題小委員会におきましては,権利制限の一般規定に係る記述において示されたパロディ,クラウドコンピューティングといった課題のほか,間接侵害,ネット上の複数者創作に係る課題といったものが掲げられております。
 次に,ちょっと飛びますけれども,後ろから2枚目にございます7ページ目におきましては,知的財産推進計画2011関連についての記述がございます。同計画につきましては,現在,知的財産戦略本部において検討が進められており,著作権法制に係る検討課題の方向性として,クラウド型サービスの環境整備や,創作基盤としての二次創作の円滑化といったものが掲げられているところでございます。
 また,行政刷新会議 規制・制度改革に関する分科会において,さきに決定されました規制・制度改革に係る方針におきましては,学術用途における権利制限のあり方の検討といったことが検討課題として掲げられているところでございます。
 さらに4では,先日の著作権分科会において,委員の皆様方からいただきましたご意見について,簡単にまとめてございます。具体的には資料にあるとおりでございますが,(1)では,著作権法第30条の関連といたしまして,違法配信がなくならない実態があることを指摘しつつ,通常の著作権侵害と同様,何らかのペナルティーを導入するなど,新たな法整備の検討が必要であるといったご意見や,保護期間の延長・戦時加算について,国際間の問題として検討すべきといったご意見,さらには間接侵害について,予見可能性確保等の観点から,何らかの結論を得るべく検討すべきといったご意見をちょうだいしてございます。
 また,そのほかにも分科会等における検討に際しては,ユーザー側からも幅広く意見を聞くべきといったご意見をちょうだいしているところでございます。
 以上,資料4-1及び4-2に基づきまして,今後の検討課題例として,既に現時点において示されているものをご紹介いたしました。委員の皆様方におかれましては,これらの検討課題例をご参考にしていただきながら,今後どのようなことについて検討していくべきか,ご自由にご提言をいただければと存じております。
 私のほうからは,以上でございます。

【山中著作権課著作物流通推進室長】  それでは,引き続きまして,電子書籍の流通と利用の円滑化についての検討会議につきまして,ご説明させていただきます。参考資料3を先にごらんいただきたいと思います。
 昨年の6月になりますが,総務省,文部科学省,経済産業省の三省合同で開催いたしました,デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会の報告を取りまとめております。
 当該報告において示されました具体的施策それぞれの取り込みにつきましては,関係者の参画を得た上で,その合意を図りながら進めることが必要であるとされております。文部科学省として取り組むべき具体的な施策の実現に向けた検討を進めることを目的に,昨年11月,文部科学副大臣決定による懇談会としまして,この電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議が設置されております。
 メンバーにつきましては,後ろのページの別紙にメンバーがございます。
 3番のところに主な検討事項ということで,3つほど掲げられておりますが,このうち(1)のデジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスのあり方に関する事項につきまして,一定の方向性が取りまとめられましたので,参考資料4として配付させていただいております。参考資料4のほうをごらんいただきたいと思います。
 デジタル・ネットワーク社会における図書館と公共サービスのあり方に関する事項につきましてでございますが,基本的な考え方としまして,広く国民が出版物にアクセスできる環境の整備を図ることが重要な課題であること。
 このような中で,国立国会図書館のデジタル化資料の活用のあり方の検討は緊急の課題であり,早期に実現すべきものと中長期的に検討を進めるべき課題とに整理した上で,戦略的に取り組むことが必要。
 図書館と民間の適切な役割分担を踏まえた上で,その環境整備を連携して行うことが重要。
 こういった基本的な考え方のもとに,2にございます国会図書館が担うべき役割について,4ページのほうに飛びますけれども,国会図書館の蔵書を対象とした検索サービスについて,3ページの(3)です。(4)デジタル化資料の民間事業者等への提供についてといったことにつきまして検討を進めております。
 もう一つ,4ページのほうになりますが,公立図書館等の役割についても,検討を行っているところでございます。
 1ページのほうに戻っていただきまして,国会図書館が行うべき役割についてでございますが,検討に当たっての中ほどにありますように,納本された紙媒体の出版物に係るデジタル化資料の利活用により,サービスを提供すること。
 サービスの実施に当たっては,原則として現状どおり画像ファイルを用いたサービスを提供すること。
 サービスの実施に当たっては,原則として権利者の許諾を前提としてデジタル化資料の利活用を行うこと。この3点を前提にして検討を行っております。
(2)の国会図書館からの送信サービスでございますけれども,この点につきましては,一定の条件下により実施すること,著作者,出版者利益を不当に害さないことに留意すること,可能な範囲から早急にサービスを実施するなど,戦略的な取り組みが必要であること,この3点につきまして,意見の一致が見られております。
 国会図書館から各家庭まで送信を行うことにつきましては,2ページになりますが,障害者や高齢者へのアクセシビリティについても十分配慮され,すべての国民が公平かつ便利に利用できるよう,国会図書館のデジタル化資料の利活用を図ることが重要であるということですが,これを実現するには,関係者間の協議により許諾に係る条件などを取り決めた上で,個々に契約を結び,各家庭まで提供を行うことが必要になりますので,許諾契約,料金の分配を円滑に実施するために,集中的な権利管理機構を設立するなど,解決すべき課題が多いということで,実施までに相当の時間を要すると考えられるという形で整理されております。
 一方で,送信先,利用方法,対象出版物等を限定した上で,国会図書館から地域の公立図書館,大学図書館等にデータを送信するということであれば,早期に権利者,出版者の合意を得ることができると考えられ,その利用方法として,閲覧のみとし,プリントアウトを認めない,出版物の所蔵冊数を超える複数者の同時閲覧を認めないといったこととする。
 対象出版物の範囲について,基本的には相当期間重版していないなど,市場における入手が困難な出版物とする。
 このように,著作者,出版者の利益を不当に害することがないように,十分配慮するものであれば,利用者に対して無償提供で行うことは可能と考えられる。
 しかしながら,対象となる図書館,市場における入手が困難な出版物の範囲について整理することが必要といった課題が残るとしております。
 2ページの一番下のまとめになりますが,そのようなことから,まとめとしまして,国立国会図書館のデジタル化資料の送信サービスの実施に当たっては,各家庭等までの送信を目標とし,課題解決に向けて検討を進めていくことが必要であるが,そのための第一段階として,公立図書館等まで送信を行うことの実現を目指すことが適切。
 3ページになりますが,サービスの範囲が限定的であるが,関係者による早期の合意が期待され,迅速なサービスの実施が期待できる。
 権利制限規定の創設により対応しても,著作者,出版者の利益を不当に害することにはならず,電子書籍市場の発展にとって意義のあるものと考えられる。また,権利が制限された場合においては,送信対象となる出版物の著作権者等の求めがあった場合には,当該出版物を送信サービスの対象から除外する方式を導入するべきであると考えられるという形でまとめられております。
 次に,国会図書館の蔵書を対象とした検索サービスにつきまして,さらなる利用者の利便性の向上を図るため,本文検索サービスの提供が必要。国民の出版物に対する新しいニーズの発掘に資する面もあるということで,そういう点で意見の一致が見られました。
 ただ,国会図書館の所有するデジタル化資料につきましては,画像ファイルということになっておりますので,検索サービスを行うためには,テキスト化ということが必要になるわけです。検索サービスにおける検索対象として利用するためのテキスト化であれば,著作者,出版者の利益を不当に害することにはならないと考えられる。
 ただ,表示方法によっては,著作権が働く場合もあるということで,そこは留意する必要があり,表示の方法につきましては,今後の関係者間の協議を進めていくことが必要と整理しております。
 (4)番目のデジタル化資料の民間事業者への提供についてでございますが,電子書籍サービスを実施する民間事業者等へのデジタル化資料の提供を実施することは重要としておりますが,現状でも国会図書館の蔵書をもとに復刻版などを作成する場合には,権利者の許諾を前提とし,有償で資料の提供を行っているということから,民間事業者へのデジタル化資料の提供については,適切な仕組みを定めた上で実施するべきであると考えられるということでございます。
 4ページでございますが,その提供のための環境整備ということで,権利者の許諾が前提ということになりますので,特に過去の出版物等について,権利者情報が不明の場合が多いということがありますので,集中的な権利管理機構の創設等により,簡易,迅速な許諾システムを構築することが必要であると考えられる。
 また,国会図書館のデジタル化資料を活用した新たなビジネスモデルの開発についても,関係者間の協議促進のための場を文化庁が設置することや,事業化に意欲のある関係者による有償配信サービスの限定的,実験的な事業の実施なども検討することが必要とまとめております。
 最後に,公立図書館等の役割についてでございますが,所蔵資料の電子アーカイブ化やネットワークを使ったサービス提供を推進することは意義があると思われる。
 民間事業者との契約に基づいた上で,当該事業者が提供するサービスを図書館において利用させるなど,さまざまなサービスが行われておりますが,サービスの実施は,公立図書館が果たす役割等を踏まえ,それぞれの図書館の判断運用にゆだねられるべきと考えられる。
 また,公立図書館等は,知の集積と情報発信の地域拠点であるという自身の意義にかんがみ,各館の特色を踏まえつつ,引き続き多様で豊かな蔵書の収集に努めていくことが重要。
 公立図書館における電子書籍の利活用は,電子書籍市場と相互補完的に機能すべきものであり,両者が競合することがなく,発展していくための関係者間の協議促進のための場を設けることや,必要に応じて,サービスの実施等に意欲のある関係者によるモデル事業の実施なども検討することが必要であるという形で整理しております。
 長くなりましたが,以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明に対するご質問も含めまして,意見交換を行っていただければと思っております。どうぞ自由にご発言いただければと思います。
 山本委員,どうぞ。

【山本(た)委員】  参考資料4の3ページ目ですが,丸の2つ目のところで,よくわからないんですけれども,まず,公立図書館等まで送信を行うことについて,その利用制限の内容が法令に担保されるのであれば,権利制限規定の創設により対応して,著作者,出版者の利益を不当に害することにはならないという文脈があって,1つは,権利制限の決め方が法令で定められていれば,つまり,形式の問題として,法令という形式であれば,権利者の利益を不当に害さないということになるという趣旨のように読めるんですけど,そういう意味なのかどうかです。
 やっぱり権利者に対して,利益を不当に害さないためには,その辺は,対価を支払うということが必要ではないのかなと思うのですが,ここではそういうことは考えられていないのか。書かれていないだけで,それが前提になっているのかどうかです。その点についてお聞きしたいと思います。
 といいますのは,例えば,公立図書館等で,送信してもらうことができるのであれば,最初から蔵書を買わずに,国立国会図書館から送信してもらえるものだけを頼りにして,資料を提供すればいいということになってしまったら,本来的には公立図書館が図書を買って,公衆に提供するということはなくなってしまって,それだけ購入機会が減ってしまうということになるので,その辺の手当てもやっぱり必要なのではないのかなと思うのですが,その辺はどういうふうに議論されているのでしょうか。

【永山著作権課長】  それでは,私のほうからお答えをさせていただきます。
 参考資料4をごらんいただきながら,お話をお聞きいただけますでしょうか。
 今,山本委員のほうからご指摘をいただきましたように,この検討会議の大前提,1ページに基本的な考え方がございますが,そこでは最初の下線が引いてありますところにありますように,知の拡大再生産の実現が前提である,これは知の創造のサイクルの維持ということと,基本的には同義と考えております。きちんと対価が権利者に還元されることによって,次の創作活動をきちんと担保していくんだということを実現することを前提としつつ,電子書籍に対応できる環境を整備していこうということが,検討会議の基本的な検討のスタンスになっております。
 その上で,個別の課題について検討した結果ということで,ご指摘がございました3ページの2つ目の丸のところでございますが,今回の検討会議の議論の整理におきましては,まず第一歩として,国会図書館のデジタルデータを,地域の公立図書館または大学図書館等まで送信を行うことについて,権利制限の創設,著作権法の改正により対応すべきであるということが1つの方向性としてまとめられております。
 その際の条件については,その利用制限の内容が法令によって担保されるということであり,その具体的な内容についてでございますが,2ページに幾つか書いてございまして,2ページに四角囲みで,国会図書館からの地域の公立図書館等まで送信を行うというところの下の丸のところにございます。今回については,そこにあります送信先,利用方法,対象出版物というものを限定する,その上で,そういう利用制限が法令に担保されることによって,権利を制限するということであれば,先ほどのところにありますように,出版者や著作者の権利,利益を不当に害することにはならないだろうということが基本的な考え方です。
 具体的には,その下の丸にありますように,利用方法としては,閲覧のみにするとか,プリントアウトを認めない,また,対象になる出版物の範囲についても,国会図書館の蔵書すべてということになれば,山本委員が先ほどご指摘になったように,当然,権利者,著作者への不利益が無視できない程度になると考えておりますので,今回の議論の整理の中では,対象出版物の範囲につきましても,基本的には市場とバッティングをしない,相当期間重版していないような,例えば絶版のように,市場では入手が困難な出版物を対象として,そういう制限が法令によって担保されるということであれば,権利制限規定,無償で,許諾を得ずにということになりますが,権利制限規定の創設により,そういう送信を可能にすることにしても,権利者の利益を不当に害することにならないだろうという趣旨でございます。

【土肥主査】  よろしゅうございますか。まだ続きがありますか。

【山本(た)委員】  ありがとうございます。
 今のところで,ご説明していただいたところでわかったのですが,3ページ目の上から丸の2つ目の一番最後のところで,権利者等から求めがあった場合には除外するというオプトアウト方式をとるという,ここの点なんです。これは結構だとは思うのですけれども,例えば,多少なりとも重版等がなくて,要は絶版状態が続いているものについては使えるということは極めて重要なことですし,いいことだとは思うのですが,出版者や権利者のほうに,全く一銭もお金が流れないということになれば,あまりメリットがないので,単純に権利者側としては,すべて除外するという方向に流れてしまうのではないか。
 多少なりともお金が入ってくるのであれば,重版して,費用をかけて出すのとの見合いになりますので,わざわざオプトアウトという手段をとらないとは思うのですけれども,ゼロだったら,どっちにしても自分の利益にもならないのだから,オプトアウトをやっておくという方向に流れるのではないかなと思ったりしますので,コメントだけです。

【土肥主査】  ありがとうございます。

【永山著作権課長】  1点補足をさせていただければと思います。
 今,山本委員のほうからご指摘をいただいた点について,検討会議でもさまざまなご議論があった部分でございます。基本的な方向としては,オプトアウト方式の導入が必要だということで,委員の間の共通認識が得られておりますが,オプトアウトについて,今,山本委員がおっしゃったように,要するに,権利者の自由意思で,これはやめてほしいという場合について認めるのか。それとも,例えば,これについては,近々,電子出版する予定があり,絶版状態ではなくなる。そういうある程度正当な理由がある場合については,オプトアウトができるようにすべきだという意見もございます。
 両方の意見があるということで,その点については,さらに,今後,具体的な制度設計の段階では,さらに詰めていく必要があろうかと思っております。
 また,もう1点ですが,参考資料4の4ページのところをごらんいただけますでしょうか。最初に山本委員から問題点のご指摘があった点については,この検討会議でも,当然議論がございました。
 3.公立図書館等の役割の中の3つ目の丸でございます。そこに,あわせてということでございますように,当然,公立図書館等の購入によって支えられている出版物も,我が国の出版文化をかなり支えているという面がございます。そういう点について十分踏まえながら,今後も引き続き,国公立図書館の役割をきちんと踏まえて対応していくことが重要であるということは,この議論の整理の中でも触れられているということは,ご紹介させていただきたいと思います。
 以上でございます。

【土肥主査】   ありがとうございました。
 多賀谷委員。

【多賀谷委員】  ありがとうございます。私は電子図書館のところを読ませていただいて,やっぱり国会図書館はいいんですけれども,公立図書館の位置づけがはっきりしていないなという感じがいたします。
 2ページのところでは,公立図書館,大学図書館等は,国会図書館からのデータのアクセスポイントとしての位置づけがされているわけですけれども,他方,4ページのところの公立図書館という場合には,それは固有の電子データを所蔵しているという位置づけになっているわけです。
 両方のところが,どうもいまいちはっきりわからなくて,例えば2ページのところで,国会図書館からの送信データの利用という場合には閲覧のみとして,出版物の所蔵冊数を超える同時利用は認めないということですけれども,国会図書館に所蔵されている冊数は,おそらく限りがある。多分限定的になると思うんです。
 現実に公立図書館等でやっていると,例えばある大きな政令市や何かですと,公立図書館は,複数の図書館があって,その中にそれぞれ同じ本が何冊かあって,相互に物理的に本を回しているという状況があると思うんです。その意味において,公立図書館においても,やや似たような話が将来的に出てくるのではないかという気がしますので,ご回答をいただかなくても結構ですけど,その両方の関係を今後検討していったほうがいいのではないかなと思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかに。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】  まず,国立国会図書館の利用の範囲なんですけれども,これはもう立法的措置がされていて,第31条の第2項で,それが導入されているわけです。それとの関係で,国会図書館で閲覧したものを,第31条の第1項第1号,いわゆる一部コピーですが,これをすることができるかどうかという見解では,文化庁もこの範囲内では可と考えているのではないでしょうか。その点,いかがでしょうか。

【土肥主査】  どうぞ。

【松田委員】  いいですよね。そうですよね。一部コピーはいいんですよね。

【永山著作権課長】  すみません,これまでにどういう議論がなされていたのか,つまびらかにすべて把握してないもので,この場で確定的な回答は。

【松田委員】  私は文化庁のコメントを読んでみて,そういうふうに読んでいますので,とりあえず,そう……。だとしたら,それと同じ範囲内で,公共図書館も,第31条の第1項第1号の範囲内の一部コピーは許すという方向で考えたほうがいいのではないでしょうか。
 というのは,閲覧まではしてもいいけれども,蔵書をまた引っ張り出してきて,一部コピー申請をしなければならないわけです。これは確かに時間と手間暇をかければできるわけですけど,ここまでシステムをつくっておいて,閲覧後は本を借り出せよというのは,いかにも迂遠のような気がしますので,公共図書館でも国会図書館並みのことができるということまではいいのではないかと私は思っています。

【土肥主査】  現在のところ,電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議の報告書とに委員のご関心が集まっておるところでございます。本法制小委としましては,こういう問題も検討スコープの中に入れていきたいという委員のお考えのあらわれかなというふうに認識をしておるわけですけれども,もしそうであるとすれば,そういう形でこの先,検討していくことになるのではないかと思いまして,議論の詰めとして,今現在どこまで詰めなければならないかというのは,まだもっと余裕がある話ではないかと思うんですが,事務局としてはいかがでしょうか。

【永山著作権課長】  今後時期を見てきちんとその点についても検討していきたいと思っています。

【土肥主査】  こうして委員の方々のご関心が,もしこういうふうに熱ければ,スケジュールからすると,一番最初のほうで検討していくということになるのではないかなと思いますけれども,こういうテーマももちろんその1つとして,ほかにもございましたら,ぜひ,本日はそういう意見交換の場でございますので,出していただければと思いますけれども,松田委員は,何かそれに加えてございますか。

【松田委員】  それでは,続きまして,このペーパーを見ますと,民間のサービスにも資料化されたデータを提供することも考えているわけです。これは,言ってみれば,国会図書館がナショナル・アーカイブをつくったら,実質的に権利の侵害にならないような場面であれば,どんどん使っていかなければ,ほんとうはいけないんだと思っているわけです。ですから,その点についても,私は個人的に大賛成です。
 一方,公共図書館のほうは,データは来るんだけれども,閲覧までだよということになります。先ほどの第31条の第1項第1号のコピーはどうかというものも検討はしてもらいたい。
 もう一つです。公共図書館でも,全部コピーしてしまえばいいではないかということがあってもいいのではないかと思います。民間にデータを提供して,有料でサービスを提供するのであれば,国会図書館や公共図書館も同じことができて,なおかつそれを有料にすればいいのではないでしょうか。それは公共施設がやるけれども,ある意味では商用のサービスと同じような状況が生まれるわけです。そうすれば,図書館で利用した人が,さらにもっと便利になるのではないと私は思うわけです。その点まで,もちろん踏み込めるかどうかは,検討会のほうで議論していただきたいですけど,1つ,論点としてあり得るのではないかと思います。
 そういう制度をつくるということになると,ここにもありますけれども,管理事業者的な組織をつくらなければいけないよとなっています。管理事業者的な組織をつくらなければいけないのであれば,そこでライセンスを付与することを事業としてやるわけです。そうしたときに,ライセンスの範囲内を,公共図書館ならいいのか,民間ならいいのか,いくらならいいのかというものは,実は権利者が決めればいいわけでありまして,そういうふうに細かく出版データについても,利用が促進できるようになるとすれば,今までの公共と民間という役割を単純に図式的に分けるのではなくて,実は混在してあるけれども,権利者の侵害にはならないようにするためには,どうしたらいいかという制度の枠組みをつくるべきではないかなと思っています。ご検討くださればありがたいと思っています。

【土肥主査】  どうぞ。

【永山著作権課長】  1点補足をさせていただきたいと思います。今,松田委員のご指摘のように,電子書籍の流通の形態にはいろいろな形があると思っております。今回,先ほどご紹介させていただきました参考資料4の議論の整理については,その中の1つのルートについて,考え方を整理した段階と考えております。今回については,国会図書館のデータを公立図書館を通じて,国民の方がアクセスできる電子的な環境を整備をしていこうという1つのルートについて,考え方を整備したという段階でございます。
 松田先生が今ご指摘のように,それ以外のスタイル,当然民間が電子配信をどんどん進めていくというルートもございますし,国立国会図書館と民間が協力しながら,新しい提供のルートをつくっていく。
 また,アメリカなどで既にビジネスとして行われておりますけれども,民間と公立図書館が協力して,1つの新しいビジネスモデルをつくり上げていく。そういういろいろなルート,やり方があり,そういうやり方が共存することによって,電子書籍の環境がこれから整備されていくんだと思っております。
 今回検討会議で整理していただきました内容は,その中のいろいろなルートがある中の1つの考え方を優先して整理いただいたという段階でございます。また,全体を進めていくために,松田先生が今ご指摘のように,権利処理の円滑化ということも非常に大きな課題となってございます。当然,検討会議でも,次の検討課題として,ご検討いただくという予定になっているということでございます。
 以上でございます。

【土肥主査】  ほかにいかがでございましょうか。
 上野委員,どうぞ。

【上野委員】  今の図書館の問題も重要だと思いますけれども,ほかの点についてもということでしたので。

【土肥主査】  ぜひお願いします。

【上野委員】  今後の検討課題といたしまして,資料4-2に示されている論点はいずれも重要なものと思われまして,まさに課題山積ではないかと思います。
 直近の著作権分科会第34回で出されました意見の中には,「著作権法第30条関連」ということで,いわゆる違法ダウンロードに関する著作権法30条1項3号に関しまして,先ほどご紹介がありましたように,「通常の著作権侵害と同様に,ペナルティを導入するなどの新たな法整備の検討」をすることが提案されているようでございます。
 ここで言う「ペナルティ」というものが刑事罰を意味するといたしますと,現状では刑事罰の対象になっていない私的複製について,30条1項3号のダウンロード行為については刑事罰の対象にするということになりますので,その妥当性ですとか,現実的な効果に関する議論が避けられないものと想像いたします。
 ただ本日のところは,そうした個別の問題の中身に立ち入るというよりも,今後の検討課題を整理するということが議題だと思いますので,そのような観点から申し上げたいのは,30条1項3号という平成21年に設けられたばかりの新しい規定より,むしろ,より以前から30条に存在する他の規定を含めて,30条全体が検討の対象にされてもよいのではないかということでございます。
 例えば,30条1項はたしかに私的使用目的の複製を原則として許容しているわけでありますけれども,1項柱書きで「その使用する者が」と規定しておりまして,私的使用者みずから複製行為を行うことを要求しております。このことから,いくら私的使用目的であっても,他者に複製を委託することは認められないと言われているわけであります。
 これは,複製業者に委託してコピーさせることは私的複製として認めないという考え方に基づいているわけですけれども,このような考えに従いますと,例えば,古いSPレコードが自宅にたくさんあって今は再生できないという場合であっても,その著作権や著作隣接権が存続している限り,SPレコードのプレイヤーと複製機器を持っている他人やお店に頼んでCDにコピー(メディア変換)してもらうといったことは許されないということになりかねません。この点をどう評価するかが問題になろうかと思います。
 また,30条1項1号は,「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」を用いる場合を権利制限から除外しております。すなわち,街などで一般の人が使用できるようになっている自動複製機器を用いる場合は,たとえ私的使用目的の複製であっても許されないとされているわけであります。
 最近では,電子出版に関連しまして,いわゆる「自炊」と呼ばれる書籍の電子化が問題になっているところでありまして,自炊を代行するサービスですとか,客がみずから自炊するための機器を使用させるサービスなどが登場しているようであります。そうしたことから,このようなサービスを法的にみてどのように評価すべきかということが問題となりますが,それとともに現状の30条が現状に適合しているといえるのか,その基準の是非が課題になっているのではないかと思います。
 もちろん,30条1項1号に関しましては,著作権法に附則5条の2という経過措置が定められておりますので,「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」でありましても,「専ら文書又は図画の複製に供するもの」につきましては,「当分の間」これを除外することになっております。
 したがいまして,例えばコンビニに設置されているコピー機も,あれは「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」には当たるわけでありますけれども,これを用いて私的複製することは,現状では著作権侵害にならないわけであります。
 しかし,附則5条の2という規定は,「当分の間」という文言からも明らかなように,あくまで暫定措置として設けられた規定とされております。こうした「当分の間」という文言を持つ経過規定は,ほかにも,例えば,適法録音物の再生について演奏権の対象から除外する附則14条や,貸本業について貸与権の対象から除外する附則4条の2など,かつては我が国著作権法にいくつか存在したわけでありますけれども,その後,次々と削除されまして,現状ではこの附則5条の2を残すのみとなっております。
 この附則5条の2は昭和59年改正によって設けられて以来,「当分の間」のはずが25年以上にわたって残っているわけでありますけれども,仮に将来これを削除しますと,先ほどのようなコンビニのコピー機を用いた私的複製が許されないということになるわけであります。そうしますと,それで本当によいのかどうか。とりわけデジタル時代におきましては,コピーというのは自動複製機器でなされるのが一般的なわけであります。そのような現代におきましても,「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」を用いた私的複製を一律に認めない30条1項1号の規定は,そのままの状態で現状に適合しているといえるのか,といったことが課題になろうかと思います。
 さらに申しますと,30条2項すなわち私的録音録画補償金制度につきましても,率直に申し上げて,平成4年にこれが設けられて以降,もはや制度として機能するには限界に近づいているのではないかと感じております。
 これをめぐりましては,ご存じのとおり一部で訴訟も行われておりまして,昨年12月27日には地裁判決も出たところでありますけれども,今後いくら訴訟を続けたところで,この問題を本質的に解決することは,もはや解釈論には無理ではないかという印象をわたくしは持っております。もちろん,私的録音録画補償金につきましては,文化審議会でも長く議論されてきたのは承知しておりまして,もちろん簡単な問題ではないのですけれども,やはり立法的措置が急務ではないかと思われる次第でございます。
 このように,30条をめぐりましては,先ほどの違法ダウンロードに関する30条1項3号以外の規定も含めて,その全体について,従来の基準やルールが現状に適合していると言えるのかどうか再検討されて然るべきであるように思います。
 そうした検討におきましては,――これは30条以外の権利制限規定についても一般的にいえることかもしれませんけれども――,権利制限を拡大するにしましても,権利を拡大するにしましても,完全な排他的権利の対象とするのか,それとも完全な自由とするのかという,オール・オア・ナッシング的な立法だけではなく,権利制限するけれども報酬請求権は残すといったような中間的な措置が有効な場合も少なくないように感じられます。私は最近までドイツにおりましたので,ドイツかぶれしているところがあるかもしれないのですけれども,日本の著作権法は比較法的にみると,著作権の対象として著作権侵害とするか,権利制限により完全に自由として権利者に報酬請求権も与えないか,というオール・オア・ナッシングの解決をする規定が多くて,権利制限プラス報酬請求権という規定は比較的少ないように思います。先ほどの図書館に関する問題も全く同じなのですけれども,ある程度自由な利用を認めるかわりに報酬支払いの対象とするという中間的解決が,権利者にも利用者にも望ましい結果をもたらす場合もあり得るのではないかと思っておりますので,このことはわが国著作権法全体の中期的な課題としましても大いに検討されて然るべきなのではないかと感じている次第でございます。
 以上,問題提起として申し上げます。

【土肥委員】  ありがとうございました。いみじくも最後に中期的な課題とおっしゃったところが気になるところではありますけれども,第30条問題,ほかになおご意見がございましたら。
 大渕委員,どうぞ。

【大渕委員】  テーマとしては,検討すべき点が多々あろうかと思いまして,今後は何をやるかがあまりはっきりしていないものが多いということですが,間接侵害は,検討に時間がかかっているだけで,元々すぐにでもやらなければいけない重要なテーマであることは,先ほど上野委員からもご指摘があったとおりでありますので,その関係で,当然検討対象になるでしょうから,先ほどの契約,流通の関係,それ以外のことで,検討対象とすべきものを拾い出すというところが,今我々に期待されているところではないかと思います。
 そして,電子出版の関係は,先ほど多々出ておりましたが,多分,今ここでは電子出版自体について議論するというよりは,それ以外の問題で本小委員会の検討の俎上にのせるものは何かというところが,今,期待されているのではないかと思います。
 その関係で,第30条関係の問題が,このペーパーの7ページ,第34回の著作権分科会のところで出ていまして,ここでは,主に第30条第1項第3号のところに焦点を当てて,意見が表明されていたと思います。これは先ほど上野委員が言われたものと少し違う視点かもしれませんけど,第30条問題は非常に根深い問題で,大げさに言うと,著作権法だけに限らず,知的財産法全体で「公私」問題と言われることもありますけど,私的領域の関係で著作権等が及ぶ範囲をどのように画していくかという意味での線引きという,非常に難しい大きな問題の一環ではないかと思います。
 その1つのあらわれが,著作権法で言いますと,この第30条です。これは,第1項,第2項,さらには第1項の中でも第1号,第2号,第3号という項号に分かれてはいますが,これらを含めた第30条全体で,トータルな1つの制度としてできているし,また,そもそも,著作権制度全体が,支分権と権利制限規定とで著作権の権利範囲を画しているという,制度全体を見渡した上でないと,的確に解決できないような問題であります。しかしながら,どうしても,今までの現実の立法等では,第30条の一部についての,その都度の個別の緊急の立法問題が出てくれば,第30条のあり方全体というところには,必ずしも集中する時間的余裕はなく,個別の問題として解決してきたところなのですが,先ほど第1項第3号の話が少し出ていましたけども,刑罰の関係を含めまして,第30条全体をトータルとして,どう位置付けていくのかということを検討することが不可欠ではないかと思います。
 これを「公私」問題といたしますと,複製権の場合には,ほかの支分権と違って特殊な面がありまして,第27条は別にいたしますが,他の支分権では,基本的には支分権該当のために「公」性が要求されているという意味では,「公私」問題はそこで解決されて,「公」のものしかそもそも支分権としてカバーしないという権利の「建て付け」になっております。
 それに対して,複製の場合には,支分権該当性のところでは「公」性は要求しないけれども,結局,第30条で「私」の部分は,支分権には該当するけれども,権利制限で外れるという形の権利の「建て付け」になっています。ただ,権利の「建て付け」が違うだけで,全体として見れば,著作権全体が「公私」問題を何らかの形で解決しようとしていて,そういう枠組の中の1つのあらわれとして,ほかの支分権と違って,「公私」問題の解決が権利制限側で図られているということになっているので,ペナルティーないし第30条第1項第3号だけの問題として,矮小化とすると言うと言葉が悪いのですが,あまりそこに限定して,それだけをとらえるというのは適切ではないように思います。
 第30条について検討するのであれば,個別の各論的な問題だけを視野に入れるのではなく,やはり第30条全体を何らかの形でトータルに考えなければいけない時期に確実に来ているのではないかと思います。先ほども出ておりましたように,緊急を要する案件が,去年等から比べると,多くはないという意味では,このような検討をじっくりと行うことが可能となっていることでもありますので,第30条の一部を検討の対象とするのであれば,しっかりとトータルな意味での第30条全体をきちんと検討の対象にする必要があるかと思います。
 その関係では,去年でしたか,一昨年だったかもしれませんが,権利制限の一般規定についてここでの議論をした際には,やはり抽象論,観念論だけをやっていてもしようがない,実情を把握することが必要であり,それもできるだけ最新のものが必要だということで,ヒアリングを2フェーズぐらいに分けてやったような記憶も残っていますけど,今回の問題についても,何かの形で検討するのであれば,地に足のついたしっかりとした議論するためには,やはり現状として,第30条関係でどういう点が問題になっているのかというあたりにつき現状をヒアリングするような機会があればいいのではないかと思っております。

【土肥主査】  ありがとうございます。今の委員のご発言は非常に貴重なご意見かなと私も思いますので,事務局におかれましては,ぜひそういう場をこの委員会の中に設けていただければありがたいと思います。
 ほかにご意見はございますか。
 第30条もおそらくヒアリング等を受ければ,短期的な課題あるいは中期的な課題,そういう整理は当然できるのではないかなと思います。何はともあれ,できるだけ早い機会に関係の事業者の方々のご意見,ご要望を伺うことができれば,大変参考になるということは,はっきりしております。
森田委員,どうぞ。お願いします。

【森田委員】  先ほどから第30条関連の発言がありますので,それを付言して。本日の配付資料の検討課題の抜粋には入っておりませんけれども,前期の報告書の85ページでは,技術的保護手段の見直しに伴う回避規制の議論の中で,欧州等では,複製物の利用者がバックアップ等の目的で私的複製を行うような場合については,技術的保護手段の回避を規制しないような制度があわせて設けられていて,技術的保護手段の回避規制を認める一方で,それによって利用者の利便性を阻害しないような措置もあわせて講じられているということが指摘されております。ただ,前期のワーキングチームの議論では,専ら技術的保護手段の回避規制の問題に焦点を絞って検討することとし,私的複製そのものについては,これに立ち入ると議論が多岐にわたって大変になるので,そこには正面からは立ち入らないということで,報告書では,今後の課題として,我が国においても,技術的保護手段の回避による複製と私的使用複製の関係との関係について検討していくことが必要ではないかという指摘を挙げるにとどめております。したがって,仮に第30条関連での検討を正面から行うのであれば,その点も検討課題として認識されていたということを記憶にとどめておいていただきたいと思います。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 よろしく事務局も,今の点については,テークノートいただければと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。
 山本委員。

【山本(た)委員】  昨年度,ワーキングチームであるとか,いろいろな場面での検討の過程で出てきた問題としまして,著作権法の第50条の権利制限規定と著作者人格権との関係は,見直す必要があるのではないかという意見は出ていながら,タブー視されているところがあって,しかし,最初に主査がご指摘のように,今,近々の課題がない状態で,じっくり検討できるという時間があるんだとすれば,こういう問題についても,そろそろ検討し始めていいのではないか。例えば,ワーキングチームでじっくり検討してもらうという形で進めるとか,やっていいのではないかなと思ったりもします。
 著作者人格権と権利の制限規定,ここを影響を及ぼすものと解釈してはならないと書いてあるのですけど,それはかなり無茶な話で,裁判手続の中で証拠になるような著作物に手を加えていけないということはあり得ないので,そうしますと,著作権法第42条の適用をやっぱり考えてしかるべき話だと思いますし,ちょっと現実離れしているようなところがあると思いますので,この点についてもご検討をいただければと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 松田委員,どうぞ。

【松田委員】  審議会で近年,論じたことで最も大きくとらえれば,デジタルコンテンツ,特にインターネット上における利用の促進をどう実現していくかということが大議論だったと私は思います。この方向性は,実はだれも反対していないんだろうと私は思っています。
 しかしながら,この審議会ないしはそれ以外の機関等でありましても,大きく分ければ,2つの議論があったんだろうと思います。それは何かと言うと,著作権法上の許諾権を報酬請求権化するし,なおかつ権利を一元化できるような管理者,権利者に集中して,その利用を拡大していこうという特別法的な考え方と,いや,著作権法はそのままにしても,流通を促進しなければいけないんだとすれば,それは契約によって,それを促進していこうではないかという考え方になったと思います。
 その間にほぼ同じような視点で,一般的制限規定,制限規定の一般的規定の問題が起こり,同時にGoogle問題が起こりました。Google問題もアメリカの問題ではありますけれども,どういう範囲内で使えるのかなというものを見るには,大変に参考になったと思います。現に今,検討会で議論している国会図書館のアーカイブ化と,それの利用の拡大については,意外とGoogleのアイデアに似ているではないかと私は思うぐらいのところでありまして,そうすると,方法論は別論としても,目指すところは大体みんな同じ,場合によっては世界中同じなのかもしれないと思うわけです。
 そうなったときに,では,この審議会ではどういう議論をしたかと言うと,一般的規定はもうある程度固まって,法案までおそらくできているんでしょう。それ以外の促進論については,実は2つの意見は出たけれども,どちらをとるというまでもなく,結論が出ない状態なのかなと思うのでありますが,資料4-2の2ページの一番上の箱書きにあるように,権利者団体のほうは促進をするべく,団体間協議で事を進めるような組織をつくり始めているということが,1つあらわれています。
 Googleや国会図書館データの利用の問題で出てきたものは,もうまさしくオプトアウト方式をとっていいかなという議論をしているわけです。当然,オプトインはいいんだろうと思うんですが,しかし,それにつけても,やっぱり契約形態はまさしく変わっているんだと私は思っています。
 それ以外にも考えますと,協約と契約の関係をどのようにしたらいいかなというのは,必ず起こるのではないかなと思うわけです。ということは,もう著作権法が,著作権契約法を無視して書かれる時代ではなくなっているのではないですかということを,私は思っているわけです。
 やっぱり2ページの次の第2番目の箱の中にありますように,この前の報告では,法律とは別なソフト・ローで一体的に運営していかなければならないという,そういう仕組みをつくらなければならないと指摘されているわけです。
 まさしくそうでありまして,しかし,ソフト・ローをどうつくるかというのは,協約,協定,契約だと私は思います。審議会が適当かどうかはわかりませんが,契約のあり方をこういう時期に5年間ぐらいかけてじっくり検討して,将来のことを見据えたほうがいいのではないかと思っています。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 松田委員からご指摘のところでございますけれども,こういう重要な問題もあるということでございます。
 ほかにございますか。
 本日の各委員のご意見を踏まえて,1つは,先ほどの電子書籍の流通と利用に関する報告書の問題のとらえ方という問題です。第30条問題もございます。あるいは,非常に大きな問題でしたけれども,権利の集中処理と契約制度の問題,そういうご意見が出ておるわけです。
 短期的にすぐに検討ができる問題と,先ほども松田委員がおっしゃいましたけれども,5年ぐらいの時間を十分かけてということになると,この場よりも別の場ということのほうがいいようなテーマもあろうかと思います。
 いずれにしても,まずは,大渕委員がおっしゃったように,関係団体の現状です。第30条問題に特に集中していいんだろうと思いますけれども,権利者,利用者における現状に関する問題状況を,我々はまず認識したいと思いますので,できましたら,事務局にそういう手配をお願いできればありがたいと思います。
 親委員会と言うんでしょうか,分科会のご意見,これまで本法制小委の前のときの報告書です。あそこの中で,例えば,クラウドコンピューティングの問題とか,あるいは,パロディの問題であるとか,あるいは,障害者の方に関するアクセスビリティの改善の問題,技術的保護手段との関係でと言われましたけれども,そういう引き継ぎの課題もあるわけです。
 そういたしますと,やはり,1度事務局において,こうした問題を一つ整理していただいて,どういう形で,今期,この法制小委の場で検討していくのがよろしいのか,相談させていただきたいと思っておるんですけれども,そういう進め方でよろしゅうございますか。
 それでは,そういう形で,一度,事務局との間で引き取らせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 特にほかにご意見がないようであればですけれども,ほかにございますか。ないようでございましたら,今のような形で今後進めていくということで,本日の意見交換を終わりたいと考えております。
 どうぞ。

【末吉委員】  今の主査のおまとめで異論は全くないんですが,一言だけ。
 知財推進計画2011を引いている箇所が,資料4-2の終わりから2枚目にございます。私はコンテンツ強化の専門調査会の委員をやっているんですが,法制上というか,著作権法上,どうなのかというのは置きまして,コンテンツの利害関係者にとっては,クラウドの問題と,いろいろな創作基盤としての二次創作の問題とは,大変深刻な問題です。つまり,どこまでできて,どこまでできないのかという点について,大変不安に思っているところだろうと思います。
 これはもう継続検討課題に多分入っているんだと思いますけれども,そういう点も踏まえて,仮に立法的なマターにならないのだとしても,この場で,あるいは,別の会ができるのかもしれませんが,論点整理がなされることは,この時期,この年度になされることは大変大きな意義があると個人的に思っていますので,どうかよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 考えますと,課題としてはたくさんあるんだろうと思いますので,一度整理させていただきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。
 それでは,本日の意見交換は,このくらいにしたいと存じます。
 事務局から何か連絡事項がございましたら,お願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  本日はありがとうございました。
 本日の皆様方のご議論を踏まえまして,先ほど主査のほうからもございましたけれども,主査ともご相談をさせていただきながら,今後の検討課題について事務局としても整理してまいりたいと思っております。
 なお,次回の法制問題小委員会につきましては,改めて日程の調整をさせていただいた上で,また,皆様方にご連絡を申し上げたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 それでは,本日は,これで,第1回法制問題小委員会を終わらせていただきます。
 本日はまことにありがとうございました。

── 了 ──

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