(平成24年第6回)議事次第

日時:平成24年12月13日(木)
    15:30 ~17:30
場所:グランドアーク半蔵門 富士西の間

議事次第

  1. 1 開会
  2. 2 議事
    1. (1)「間接侵害」について
    2. (2)その他
  3. 3 閉会

配布資料一覧

資料1 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第5回)における議論の要点 (168KB)
資料2 いわゆる「リーチサイト」の態様について (336KB)
参考資料1 「間接侵害」等に関する考え方の整理 (204KB)
参考資料2 間接侵害等に係る関係団体ヒアリング意見概要 (252KB)
  出席者名簿 (68KB)

【土肥主査】  定刻でございますので,文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第6回を,ただいまから開催いたします。
 本日はお忙しい中,御出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に,本日の会議の公開についてです。予定されている議事内容を参照いたしますと,特段,非公開とするには及ばないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいておるところでございますけれども,特に御異議はございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【土肥主査】  それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことといたします。
 最初に,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  配付資料の確認をいたします。お手元の次第の下半分を御覧ください。
 まず,資料1といたしまして前回の議論の要点を,資料2といたしまして「いわゆる『リーチサイト』の態様について」という資料をお配りしてございます。また,そのほかにも参考資料を2つほどお配りしておりますので,あわせて御確認いただければと思います。
 落丁等ございましたら,お近くの事務局員までお声がけください。
 以上でございます。

【土肥主査】  それでは,議事に入りますが,初めに議事の段取りについて確認しておきたいと存じます。
 本日の議事は,1,「間接侵害」等について,2,その他の2点となっております。1につきましては,前回,事務局からも案内がありましたように,本日はいわゆる「リーチサイト」に係る資料も準備していただいているようでございます。したがいまして,本日は,まず前回の本小委員会において出された意見について事務局が整理いたしましたものを説明していただきまして,その後に「リーチサイト」についてもあわせて説明をいただき,その上で議論をいただければと思っております。
 まず,事務局から説明をお願いいたします。

【壹貫田著作権課課長補佐】  資料1につきまして,簡単ではございますが,説明させていただきます。
 まず,お手元の1,総論のうち,立法措置の必要性についてでございます。
 積極的な意見といたしまして,いわゆる「3類型」について,諸外国のように差止を認めるべきとすれば,解釈論ではなく立法措置が必要であるという御意見。
 あるいは,いわゆる「直接侵害者限定ドグマ」というものを否定するためにも立法化で明確化する必要性は高いのではないか。また,「従属説」を前提として間接侵害の範囲の明確化を図るべきであるという御意見をいただいております。
 そのほかにも,間接侵害主体に対して差止請求できるかどうかがはっきりしていない中で,たとえ確認的なものであったとしても明文の規定があることが意味があるという御意見や,次々と新しいサービスや物が出てくる中で,今後も裁判を積み重ねることによって間接侵害を明らかにしていくよりも,立法によって明らかにするほうがよいのではないかという御意見。
 それから,どういう行為が侵害として差止対象になるのかという点について,さまざまな総合考慮により不明確な状態で決定してしまうのは著作権法の趣旨に合わず,直接行為者の範囲や権利制限との関係について明確化する意味においても,立法措置が望ましい。
 あるいは,いわゆる「直接侵害者限定ドグマ」が強いということであれば,少なくとも議論の出発点として間接行為者も差止の対象になることを立法で明確化したほうがよいのではないかという御意見が示されたところでございます
。  時間をかけて議論すべきという御意見に関しましては,間接侵害の規定の必要性は認めながらも,今の3類型でよいのかという問題があり,また,いろいろと御意見がある中で,すぐに結論を出すよりは,あと一,二年,議論をしてもよいのではないかという御意見もいただいております。
 一方で,消極的な意見につきましては,立法措置の必要性は乏しいという関係団体の意見がかなり多く,立法して現状を改めることまでは求められていないのではないか。また,仮に立法するとしても,規定内容を皆が納得する形で明快にすることは困難ではないかという御意見。
 それから,デジタル・ネットワーク環境における権利侵害は著作権侵害に限られないのであって,デジタル・ネットワーク環境における権利侵害とは何か,違法とは何かについては,ある程度,司法の判断にゆだねることもやむを得ないのではないかという御意見。
 さらには,著作権法は各国での違いが容認されている法体系なので,間接侵害についてどこまで国際的に整合的な概念を成立し得るのか疑問であるという御意見。
 それから,関係者の間の理解では,直接侵害主体の範囲に対する問題意識はあるものの,間接侵害の議論の整理という点はあまり頭にないのではないか。あるいは,間接侵害の立法に対する世の中の理解が高まり,立法事実がもう少し十分にならなければ立法化は困難ではないかという御意見をいただいております。
 次のページでございます。「直接侵害者限定ドグマ」を否定し,直接,間接問わず,あらゆる侵害は差止の対象となるとする考え方については,いまだ十分なコンセンサスが得られていないのではないかという御意見。
 それから,いわゆる間接侵害に係る規定を置くことについて,消極的な立場,積極的な立場,いずれの立場からも直ちに支持が得られない状況のもと,「直接侵害者限定ドグマ」を否定するための立法措置を行う必要があるのか疑問であるとの御意見。
 さらには,3類型中の「合理的措置」等の内容が,仮に今後の議論によって明確になり,コンセンサスを得られたとしても,それを報告書の形で解釈の指針として示すことまでやるべきなのかについて疑問であり,個別の事例に応じて司法が判断すべきものではないかという御意見が示されているところでございます。
 2.他についてでございます。
 ここでは,112条と119条との関係につきまして,両条とも「侵害」という言葉を使っているため,112条により間接行為者が差止の対象とされれば,119条により間接行為者が幇助でなく正犯として処罰されるとの懸念があるところであるが,112条は正犯的なものと共犯的なものを両方,規律し,これに対し,119条は正犯のみを規律するものであるため,かかる懸念は妥当しないと考えるという御意見が示されております。
 しかしながら,こういった御意見に対しましては,一方で,112条でいう侵害は「直接」「間接」を問わず,119条でいう侵害には「直接」に限定するというが,何が「直接」で,何が「間接」かは,条文上,明らかにはならないのであって,刑事の場面では「直接行為者とは何か」について法律上,定義を置かずに解釈にゆだねることができるのか,立法の際に問題として出てくるのではないかという御意見をいただいております。
 最後に,2の各論でございます。
 1つ目のいわゆる従属説につきましては,従属説を前提とした間接侵害の範囲の明確化を図るべきという御意見がある一方で,デジタル時代においては何が出てくるかわからないという中で,従属,独立と決め打ちをするととんでもないことが起きてしまう危険性があるのではないかという御意見もいただいております。
 2.の3類型につきましては,3類型の不明確さの程度は各類型によって異なっており,(1)については法律の専門家にとっても慣れ親しんだ文言であるけれども,(2)及び(3)についてはかなり不明確ではないかという御意見。
 一方で,「合理的措置」というものが不明確ではないかという批判があるものの,いわば一般条項のようなものを設けようとするものである以上,ある程度,不明確であることは仕方がなく,危険性との相関で合理的措置の範囲が決まるとすれば,現状よりはよいのではないかという御意見がございました。
 また,112条に3項として「本条の適用は直接侵害に限られない」という規定を入れることで,差止対象を司法の判断にゆだねることも考えられるけれども,特に(2)の類型については,Winny事件最高裁判決が示した基準のほうが明確であり,参考になると考えられるため,3類型についてはもっと時間をかけて議論することも必要ではないかという御意見が,あわせて示されているところでございます。
 資料1につきまして,簡単ではございますけれども,以上でございます。
 続きまして,資料2の説明に移りたいと思います。横長の資料でございます。
 まず,表紙にございますように,これは,文化庁でさまざまなサイトを拝見させていただいて,便宜的に分類したものとお受けとめいただければと思います。また,本資料中に「複製誘導型」等のさまざまな呼称を用いておりますけれども,これもあくまでも便宜的に用いさせていただいているところでございます。
 1枚おめくりいただきまして,まず1つ目の複製誘導型,ここではストレージサイト型と書いておりますものの概要につきましては,ユーザーが,ここでは映画Aとしている著作物の複製を求めてアクセスし,リーチサイトから映画Aが蔵置してあるストレージサイトへのリンクが提供されます。さらに,そのリーチサイトが提供するリンクを通じてストレージサイトにアクセスし,映画Aの送信を要求し,最終的には送信された映画がユーザーの手元で複製されるという態様になってございます。
 ここでは,あくまでもここでの定義として,サーバーに蔵置してある著作物をユーザーの要求に応じて送信,複製させるサイトのことをストレージサイトと呼ばせていただいております。
 なお,ストレージサイトへのアクセス数に応じてリーチサイトに報酬を支払うことが一般的に行われているようではございますけれども,必ずしも全部そうだということでもないですし,広告から収入を得るケースもあり得ると聞いてございます。
 1枚おめくりいただきまして,2枚目は,同じ複製誘導型でもBitTorrent型というものでございます。
 まず,BitTorrentとは何かというと,ユーザーのPC上で動作するファイル共有ソフトでございまして,特定の著作物と関連づけられましたtorrentファイルというものから当該著作物の所在に係る情報を解析することで,その著作物が置かれているPCを特定し,そのPCからユーザーのPCへと,その著作物を送信させるものでございます。この特徴的なところは,複数のPCから著作物が分割されて同時にダウンロードする態様をとっておりますため,ダウンロードに要する時間を比較的短縮することが可能となっている仕組みとなってございます。
 具体的な流れは,そもそもユーザーのPCにBitTorrentというソフトが入っていることが前提になるわけですけれども,まず映画Bとなっている著作物に係るtorrentファイルを要求し,torrentファイルが送信されてまいります。あらかじめPC上にあるBitTorrentを用いまして取得したtorrentファイルを解析し,映画Bが置かれている,ここでは便宜的にX,Y,Zと呼んでいるユーザーのPCを特定し,それぞれから映画Bが分割して送信され,最後にユーザーの手元で結合される形で映画Bが複製されるという態様になってございます。
 ここでも,リーチサイトは広告から収入を得るということが行われているようでございます。同じでございまして,すべてがそうかということではないと思いますけれども,それが一般的ではないかと言われております。
 次のページを開いていただければと思います。これは視聴誘導型というものでございまして,一番最初に説明いたしました複製誘導型のストレージサイトと,流れとしては同じ流れでございます。ユーザーが著作物の視聴を求めてアクセスし,リーチサイトが提供するリンクを通じて動画共有サイトにアクセスされ,映画Cの視聴ができるものでございます。最後,5が「映画A」となってございますが,これは「映画C」の間違いでございまして,映画Cを視聴するということでございます。
 ここでも,あくまでも便宜的に,視聴をさせるサイトのことを動画共有サイトと呼ばせていただいております。これも同様に広告収入があることがあるようでございます。
 1枚おめくりいただきまして,検索支援型でございます。これは違法複製物を配信するサイト等へのリンクを提供するもので,要すれば,著作物を要求するわけなんですけれども,いきなり送られてくるわけではなくて,まずリンクが提供されるものを検索支援型と呼ばせていただいております。それぞれ,ここでは複製を前提としているストレージサイトへのリンクでありますとか,先ほど御説明しましたtorrentファイルへのリンク,あるいは視聴だけが可能な動画共有サイトへのリンクという形でなっております。
 最後の5枚目は,便宜的にリーチサイト紹介型と呼んでおります。ここも,基本的にはさらにリーチサイトが1枚多くかむということでございまして,そのほかの態様は今まで説明申し上げたものと一緒でございます。ここにありますように,まず複製誘導型または視聴誘導型リーチサイトへのリンクを求めてアクセスし,それらのリーチサイトへのリンクが提供され,雲が3つに分かれていまして,ストレージサイト,BitTorrent,視聴誘導という形で,それぞれ分けておりますけれども,それぞれを経由して複製ないし視聴されるということでございます。
 大変簡単ではございますけれども,以上でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ただいま,前回,第5回小委員会における御発言のまとめの部分と,新たにリーチサイトについての御紹介がございました。この後の時間については,この2つのテーマについて意見交換を行ってまいりたいと考えております。
 前回,御出席の委員は御承知であろうと思いますけれども,前回の第5回小委員会におきましては,ワーキングチームメンバーでもある委員の方々からは一定の必要性が認められると御発言があったわけでありましたものの,他の一般の委員の方々からは,慎重ないし反対という御意見もございました。どちらかというと,後者のほうの委員の意見もかなり強く感じたところでございます。本日,総論的な話につきまして,これ以上,お話,意見交換をするというよりも,いわゆる3類型については前回,あまり御意見をちょうだいしておりませんので,3類型について御意見を伺えればと思っております。
 それから,前回,御欠席の委員の中で本日,おいでいただいた委員もおいでになるわけでございますので,前回,御発言にならなかった,そもそも間接侵害というものについての制度についてどのようなお考えをお持ちなのか,制度のあり方についての部分に御意見がございましたら,最初にいただきたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。
 はい,どうぞ。

【大須賀委員】  それほど積極的な意見があるわけではありませんが,前回,欠席しておりましたので,私の意見を申し上げます。
 私は裁判所におりますので,基本的に裁判所の立場として,政策問題である立法の是非自体について,こうするべきであるとか,するべきではないと申し上げるつもりはありません。ただ,そうは申しましても,実際,立法されますと,それが裁判規範として機能することになりますので,規範としての明確性が十分でない立法がされるということになりますと,実際に裁判をする場合に困る点が出てくるのではないかという感じは持っております。
 そういう視点から,これまでの議論を伺っての感想としては,1つ大きな意見として出ていたのは,要するに直接侵害との切り分けの部分が明確でないのではないかという議論で,それと関係する問題として,おそらく3類型の明確性の問題が指摘されていたのではないかと思っております。
 もう一点は,従属説という見地からいいますと,最終的には3類型で要件を決めたとしても,その従属するもとはどういう場合に違法になるのかがはっきりしないと,明確性という点では,そこも引っかかってくるのかなという感じを持っております。ですから,私としては,明確性の問題について,もう少し時間をかけて議論をすれば,おのずと落ち着きどころが出てくるかなという感じは持っておりますので,そういう意味で,もう少し議論したらよろしいのではないかというのが私の意見でございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。よろしゅうございますか。
 では,3類型について意見交換をしていければと思いますけれども,いかがでございましょうか。
 それでは,まず私から3類型についてお尋ねするのも妙な話なんですけれども,お尋ねさせていただければと思います。
 第1類型は「専ら侵害の用に供される物品・場ないし侵害のために特に設計され,または適用された物品・場を提供する者」ということで,そういう事例について,『ときメモ』のケースが挙げられているところでございます。仮にこのケースが典型的なケースであるとした場合に,パラメータがメモリーカードの中に入っていて,例えばスロットが10あって,そのうち1つについてはいわゆる人格権の部分,20条の権利を害することになるとしても,残りのスロットの5つは通常のゲーム,残りのスロットはさらにブランクというか何も入っていないという場合,こういったものは第1類型のどこで読むのか。特にパラメータは,「物品(プログラムを含む)」となっておりますけれども,データ,パラメータでありますから,プログラムでもないだろうと思いますし,こういうところについてワーキンググループでどういう議論が行われているのかを含めて質問させていただいて,隗より始めよということでございますので,聞かせていただければと思います。
 どちらに。

【大渕主査代理】  私に視線が来ていますね。別にほかの方でもいいのですけれども……。では,お答えします。

【土肥主査】  では,お願いします。

【大渕主査代理】  今の点については,先ほど読み上げられた(i),B1と言っている部分の後半を念頭に置いて,「特に設計され,または適用された」,これは「specially designed or adapted」というのがもとのアイデアで,それを法律的な文言に落とし込んだものがここだと思いますが,今のものは要するにメモリーカードの一部だけが前半の狭い意味の侵害専用的という事例のようです。なお,あくまでこれは,前も留保いたしましたけれども,最高裁の考え方によればという前提で,そこ自体を議論する意思ではございません。それからすると,ここに書いてあるような「専ら特定のゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカード」のパラメータの部分のために「特に設計され,適用された」ものであれば,そこに当たって,残りの部分だけを切り離して流通に置けばもちろん大丈夫ですけれども,そのままであれば後半の方を満たしてB1に当たるということでございます。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 例えば,そのパラメータを入れない形で,1つのスロットから,必ずといいますか,登場人物が非常に早い時期に登場してくるような部分のパラメータはそこには入っていなくて,例えばその部分について必要な方はネットからダウンロードしてメモリーカードに記録するという仕組みの場合は,これは入るんでしょうか。

【大渕主査代理】  お尋ねですか。

【土肥主査】  ワーキングチームの方でも結構なんですけれども,広く御発言いただいたほうが,後々……。

【大渕主査代理】  そうであれば,もちろん。

【土肥主査】  上野先生でも。

【上野委員】  まず,先ほど土肥先生からの御指摘で,メモリーカードに10個ぐらいスロットがあって,そのうちの1つが改変をもたらすようなデータだった場合についてですが,確かにこれは「専ら」というものに関して,何をいわば分母としてとらえるのかという問題になるところかと思われます。ただ,侵害に用いる以外に用途のないような物でなくても「専ら」に当たり得るという点についてはコンセンサスがあるように思います。ですから,例えば,1つのスロット以外の部分はブランクであるというメモリーカードでありましても,例えばそれが高額で販売されているなどの場合は,「専ら」に当たる場合があることは否定できないのではないかと思います。結局のところ,侵害を引き起こす蓋然性が高いかどうかといった点を考慮して,「専ら」に当たるかを判断していかざるを得ないのだろうと思います。ちなみに,過去の裁判例でも,ときメモ事件のように,メモリーカードに収録されたすべてのデータが改変のためのデータだというケースばかりではありませんで,例えば,DEAD OR ALIVE 2事件では,1枚のCD-Rの中にさまざまなゲームの改変等を目的とした極めて多数のデータが収録されていて,そのうちの1つがDEAD OR ALIVE 2の改変を引きおこすデータだったわけですが,判決によれば,この場合も「専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とするもの」に当たると判断されております。こうしたことから考えますと,もちろんケース・バイ・ケースというところは残ろうかとは思われますが,「専ら」というものが,それほど厳格に判断されることにはならないのではないかと私は思います。

【土肥主査】  ほか,よろしゅうございますか。
 じゃ,村上委員,お願いします。

【村上委員】   1つだけ,よろしいですか。多少漠とした質問で恐縮ですが,この3つの文言だけを読んでも,もう一歩,イメージがわかないもので。
 これだけ国際化が進んでいる時代であります。比較法的に,ほかの国とあわせて,ほぼこういう文言があるとかまで言う必要まではないと思うのですけれども,アメリカやイギリス,フランス,ドイツという意味での主要国の著作権の法制の間接侵害や間接侵害者の取り扱いなり判例を見ると,こういう3類型が落としどころとしては相当であるという感覚はあるものなのかどうなのか。むしろこれはワーキンググループで検討されたところだと思いますが,その辺の検証がどの程度できているのかなという点だけ,お聞きしたいと思います。

【土肥主査】  お願いします。

【大渕主査代理】  これは3つあるわけですけれども,頭の整理としては,むしろ,どなたかも前回,御発言されたかもしれませんけれども,間接侵害は寄与侵害とも呼ばれるわけで,直接侵害に対して重要な寄与を行った者は直接侵害と同視して同様に差止めの責任を負うべしというあたりはコンセンサスがあろうと思います。その基本形を(ii)にとっていただくと,順番はわかりやすい方から(i)と並べてありますけれども,特に専用品ないしそれに準ずるようなものは特出しのような形になっておりますし,(iii)は積極的に誘引する態様という,また別の意味での特殊性があるものが特出しになっております。わかりやすい例でいいますと,おそらく(ii)がアメリカの寄与侵害で,(iii)が積極的誘引で,(i)はあまり名前もついていませんけれども,前半の「専ら」で読むのか後半で読むのかは別として,そういうものを対象とするというのは,おそらく異論はないところかと思います。その意味では,これもアメリカ,イギリス,ドイツなどの立場を,基本思想は前にお話ししたとおり相当因果関係であるのですけれども,もう少し明確化を図ってほしいという御要望がありますので,できる限り具体的に落とし込んでみたところ,この3つとなったということです。特に(ii)で,もともと間接侵害は寄与侵害というぐらいで,それを具体化したものなので,(i)や(iii)の特出しも含めて拾うべきものは拾っているということでございます。

【土肥主査】  村上委員,よろしゅうございますか。
 ほかに,3類型について,御発言はございませんか。
 はい,どうぞ。

【村上委員】  もう一つだけ。ちょっとくどいですけれども,それは法制で法文に規定として書いてある内容と照らしてということか,もう一つ,おっしゃられた判例法で,事実関係に基づく判例法として形成されているルールという意味なのか,どちらに近い形の議論になりますでしょうか。

【大渕主査代理】  これは,今,メモがなくて,詳細は司法救済ワーキングチームで書かれたとおりでありますけれども,たしか一般法理的なものを前提に,アメリカの特許法で狭い意味での寄与侵害と積極的誘引の条文があって,アメリカはもともと判例法的なのでありまして,そういう形では直接,著作権に規定があるわけではないのですけれども,特許法の条文に体現されている一般法理を著作権法でも体現するという形で肯定されております。そのようなものを参考にして,これを打ち出したものです。

【土肥主査】  ワーキングチームの委員の方で,何かありますか。この点については,かつて詳細な外国法制度の紹介に関する中間報告が出ておりますので,あれもぜひ御参照いただきたいと存じます。
 ほかにございませんか。3類型について,特に第2類型あたりは前回もかなり強く議論があったように記憶しておりますけれども,本日は,もうよろしいですか。
 森田委員,お願いします。

【森田委員】  1つは,前々から気になっていました「場」という表現は,比喩的な表現としては理解できるわけですけれども,法文にするときには「場」という書き方はできないと思います。これをもう少し明確に,比喩的な表現でない,法律にも書けるような用語に置きかえるとしたらどういう用語になるのか。物理的な「場」だけではなくて,観念的にサイトなども広く含めて「場」と呼んでいるわけで,イメージとしては理解できるわけですけれども,そもそもそれは「場」なのかと突き詰めていくと,ほかのものに解消されるような感じもします。このままの比喩的表現をとっていますと,何かいろんなものが入ってくるような気がしますので,特に1類型の「特に設計され,適用された場」というのは,例えばこれが当たるという例とともに御説明いただければ,もう少しはっきりするかと思います。
 第2類型については,ヒアリングの中でも,特にこれでは不明確だという意見が多かったと思いますけれども,その一つの原因は,「知るべきでありながら」というのが,いま間接侵害の議論をしているわけですけれども,第2類型は何かそれとは異なる一種の危険管理責任といいますか,一般的な過失責任のことを言っているようでもあり,これは間接侵害としては広過ぎるのではないかという感じがいたします。合理的措置とか,実質的危険性といった概念を操作して限定は可能であるという御説明もありましたけれども,それ自体はいかようにでも拡張できるものでありますので,実際には何ら限定になっていないのではないかという意見に対して,もう少し明確化を図るとすれば,どういう行き方がありうるのか。前回,山本(た)委員からは,Winnyの最高裁判決が出されたことを踏まえて見ると,この要件はやや緩過ぎるので,過失ではなくて,もう少し認識や認容という故意に近いような要件で絞る形で明確化を図るのがコンセンサスを得る一つの方向ではないかという御示唆がありましたけれども,このままですとコンセンサスが得にくいとすると,どういう方向で絞る可能性があるのかについて,御質問したいと思います。
 このような御質問をする背景として,前回の繰り返しになりますけれども一言しますと,ワーキングチームの御提案の力点は,直接侵害者限定ドグマを否定するほうがむしろ主眼で,それ以外を広く含めることにしたい,ただ,それだと明確性に欠けるという要請もあるので3類型を用意したということなので,主眼はどちらかといえば広く含まれるという点にあったわけです。しかし,一般のニーズはむしろ明確にしてほしいということにあって,そこにずれがあった。広く含まれるということと明確にするというのは,どうしても緊張関係に立つわけでありまして,広く含まれることを重視すればするほど明確性は犠牲にしなくてはいけないことになりますが,むしろそれとは逆の発想といいますか,直接侵害だけでなく間接侵害も差止めの対象に含まれるということは,今後,解釈論がそのような方向で形成されていくことを期待しつつ,差し当たり間接侵害として立法化する場合には,明確性の要請のほうを重視し,こういうふうに限定すれば大方の人がそれで問題ないだろうというものに限定して立法するという方向のほうが望ましいのではないか。それですべてカバーされると言う必要はないし,またすべてカバーされることを現時点で期待して立法すると,やはり不明確だという批判を免れないような案にならざるをえないものですから,もしコンセンサスを得る方向で成案を得る可能性があるとすれば,1,2,3の各類型をそれぞれもう少し明確にして要件を限定していくという方向が考えられると思います。そのような方向で明確化を図る知恵が出せればコンセンサスが得られる可能性はあるけれども,それが出せないと,やっぱり立法はこのままでは難しいという結論に至るのではないかと思ったものですから,そのような観点から,差し当たり2つについて質問させていただく次第であります。

【土肥主査】  御質問ということになりますが,御意見も含め御質問ということですね。

【森田委員】  別にワーキングチームのメンバーの方でなくても,こういうふうに限定すれば,もう少し明確性が確保できるという,何か提案がおありであれば,どなたでも御示唆いただければと思います。

【土肥主査】  わかりました。
 では,その辺で。

【大渕主査代理】  要件というのは,絞れば絞るだけ明確性が高まる反面,漏れが出てくるので,我々なりというのも恐縮なのですが,できるだけの明確化を図りました。これも前回もお話ししたかと思いますが,広げる方に主眼があるわけでも絞る方に主眼があるわけでもなくて,広げ過ぎず,狭め過ぎずというところをぎりぎりにやってみたらここに落ち着いているということで,その緊張関係が出ておりますが,これを打ち出してみて,これをもう少し絞れば,また絞り過ぎて漏れが出るというところであります。
 「場」というのは,サイトを含めるのに,物自体とは言いがたいかと思いますが,「サイト」と書くわけにもいかないので「場」としております。実際の条文化に当たっては従前の法令用語との関係等で工夫をしていただくことにして,ここでは,内容を出すことが重要と思います。ここはそういう意味でできるだけ絞りました。限定については,全体としては,まず従属説では絞りがかかっていますし,さきほどのような1,2,3ということでも絞りがかかっていて,それぞれについてできるだけ絞った結果,こうなったということであります。可能な限り明確化を図ったので,むしろここで「物品・場」の「場」をほかのものに変えた方がいいというのであれば,そのような御示唆をいただいた方がよいかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 山本委員,どうぞ。

【山本(た)委員】  今の森田委員の御質問に関連して,私の前回の発言も引用していただいたので,ちょっとコメントさせていただきたいと思います。
 2の類型に関して,最高裁のWinny判決を御紹介しました。あの判決は刑事の事件なので認識,認容の要件なのですが,ここは民事の問題なので,認識,認容に限定する問題ではない。だから,そこでのモディファイは当然,必要だという前提での話だと思います。
 「物品・場」は,ワーキングチームの中で使ったのですけれども,皆さん,これに対して込めた思いは違うと思います。肝心なところは押さえた表現にしようという意図はあるのですけれども,どこまで広げるべきか等は認識がきっと違うんじゃないか。私は,「物品・場」を併せて平仮名で「もの」でいいんじゃないかなと思いますし,漢字の「物」であれば「物及びサービス」と考えていいんじゃないかと思っております。
 今度,絞る,絞らないの話も出てきたので申し上げたいと思います。前回も従属説なのか独立説なのかという議論もありまして,考え方として,差止を認める対象として何を法益として考えるのかといったときに,従属説は既存の権利を法益と考えて,それに対する救済として差止を認めるというアプローチなのですけれども,独立説は,おそらく従前の保護の対象になっている法益以外に別に法益を創って,それに対して救済を与えようというアプローチになると思います。ここで我々が考えているのは,新たに独立の法益を創ることも,必要があれば結構です。しかし,ここで検討しているのは,既存の権利の侵害に対しても未だ救済として不十分でしょう,だからそれに対して差止請求権を認めるようにしましょうということです。独立の新たな必要性があれば,それは否定するつもりは一切ありません。ただ,従属説から考えて,大渕委員から何度も御指摘がありました直接侵害者限定ドグマが災いしているんじゃないのかなと思います。従属説に従った,つまり既存の法益を守るために差止を認めると,その法益の侵害に対して相当因果関係にある間接的な行為は,本来的にはすべて差止の対象になるべきだと思います。
 では,それは何なのかという議論になったときに,ある程度,イメージを持てるように類型化しましょうという意図で,この1,2,3という類型を出したと私は理解しております。したがって,類型化した形で立法化されるべきだというイメージは私は持っておりません。あくまでもこの3類型は,従属説の中で差止の対象になるのを具体的なアイデアで示すという位置づけだと理解しております。ですから,考え方はそうなのですけれども,この表現が不明確だとかいう御指摘は当然あると思いますので,そこはもむ必要があることも認識しております。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかに。

 松田委員,お願いします。

【松田委員】  風邪を引いていますので,このままで失礼させていただきます。
 今の刑事と民事の議論で,従属性説を両方とりながら,民事の差止請求を3分類によって法定しようとするところです。民事の場合は,正犯が既遂になっていようが,なっていまいが,具体的に正犯の行為者が氏名等で特定できなかったとしても,当該物やサービスが実質的危険性を生じるような侵害の危険性を生じるものを提供してしまえば,刑事と違いますので,正犯の特定なしのまま,販売の差止ができることになります。そういう理解でいいでしょうか。

【山本(た)委員】  はい。

【松田委員】  だとしたら,民事の場合の従属性説は極めて従属性が弱いということを認識しなければならないと思います。刑事の場合には正犯が特定できて既遂ですから明確であるわけですけれども,民事の場合には,この第2類型のところのものを差止で認めようとしたときに,正犯が特定できていなくてもいいし,正犯が未遂であってもいいわけですから,言ってみますと,従属性説とはいうものの,抽象的な危険性がありさえすれば,もう既にそこには第2の要件を従属してしまうのではないかと考えることができるのではないかと思います。
 加えて,この要件ですと,知るべきであった場合も含むわけですから,この第2類型の従犯者が実質的危険性を認識していなかったとしても,それは四囲の事情から知るべきであったでしょうということだけで差止の対象になることになるという結論になるのではないかと思うのです。私は,これに反対しているわけじゃないんですけれども,実はそういう場合まで含めてこの差止を可とするんだと踏み込んだんだという御意見なのかどうかを確定しておきたいと思います。

【土肥主査】  これは山本委員にお答えいただいたほうがいいんですかね。

【松田委員】  そうですね。山本先生のほうから。

【山本(た)委員】  今,御指摘いただいたような事例は,まさに差止しても構わないという事例だと思っております。わかりやすいものでいうと,まずは専ら侵害の用に供されるようなものは,売り出されたら,買ってユーザーが使えば侵害が発生することが明らかなわけですから,そもそも販売することを差し止めることには何らの不都合もないだろう。そもそも,差止というのは将来における侵害を防止する手段なので,直接侵害が発生しているなんていうことは要件の中にあるわけではありませんので,そのことはあまり問題にする必要はないだろう。
 それから,専ら侵害の用に供されるものじゃなくたって,そのものの性質として,これを使えば50%,70%,あるいは80%,侵害に使われることがわかっているようなものであれば,それを提供する側としては,その侵害のリスクを下げるための努力をして提供すべきだ。そうでなしに,80%の侵害の可能性があるものでもそのまま提供するということであれば,侵害の結果を招くことになりますので,それに対しては差止を認めるということは,私の感覚としては全然おかしなことじゃないと,まずは認識しております。

【土肥主査】  お願いします。

【大渕主査代理】  先ほど特に刑法的なところをお聞きになりました。おそらくもう答えは予想されているかと思いますけれども,刑法の場合には既遂が原則で,未遂は例外的にしか処罰しませんけれども,民事と申しますか,差止めは,112条を御覧いただけばおわかりのとおり,おそれということで,既遂でなくて,おそれがあれば差し止めるということでございます。ここで言っているのは,およそ正犯が成立し得ないようなものは外すということなので,別にそれ自体が具体的に発生していることは差止めの要件ではありません。そもそも,おそれで足りるもので,なり得ないものだったらおそれでもないわけですけれども,そういうことで,先ほどの部分はもう回答済みです。
 それから,先ほどの「又は知るべきでありながら」というのは加重要件ですので,これで広がっているのではなく,「物品・場を,侵害発生防止のための合理的措置を採ることなく」というのに加えているから,これ自体を不明確と思うか,もっと絞り込むべきかは別として,むしろ合理的措置だけよりは加重要件として加えた方が明確になるだろうと思われます。それ自体については,合理的措置の中に入れ込むとかどうかなど,そこのあたりは,先ほどのように最後のぎりぎりの絞り込みをどこでやっていくかであります。

【松田委員】  はい。

【土肥主査】  大須賀委員,お願いします。

【大須賀委員】  松田先生から重要な御指摘をいただいたので,そのあたりに関連して申し上げますが,今回の立法は要するに,一方で直接侵害というのがあって,それとは別のものとして,いわば刑法でいえば教唆犯,幇助犯のうちの一定の悪質な類型のものを間接侵害として立法化するものだという発想で理解していたんです。そうしますと,当然ながら正犯というものがあって,それに対応する教唆,幇助があるから,正犯が成立しなければ教唆,幇助は成立しないという理解をしていたわけです。しかし,今の議論ですと,未遂であってもいい,あるいは正犯の行為がなくてもおそれがあればいいということで,従属説の内容というか,広がりがよく分からなくなったんです。とにかくこの3類型が満たされれば侵害とするのか,そのあたりが分からなくなってしまったんですけれども,御説明いただければと思います。

【大渕主査代理】  要するに,先ほど申し上げましたとおり,刑法の場合には過去の一回的行為なので,起訴状で特定する必要があるかどうかなどは別途,刑事の問題としてありますけれども,その点を別にすれば,過去の一回的な正犯があって,それに対しての教唆犯,幇助犯なのですが,これはもともとおそれなので,そういう意味で先んじてやっているから抽象化されているだけで,まだ発生していないから,この人だろうという程度にしかやりようもないわけです。そういう意味で,おそらく大須賀委員が言われた御疑問は解消していくと思います。おそれだから先んじているという意味で,やや抽象化されていますけれども,なくていいとも,それが成立しなくていいというわけではなくて,刑法の場合には過去の一回的行為だから,済んでいるから,済んでいる人を押さえるべきであるけれども,ここでは,おそれなので,それこそ間接侵害において,直接侵害ですら別に起きていなくてもやろうとしている人を押さえられるというところが刑法との大きな違いであります。刑法の議論は非常に参考になるので,教唆,幇助とやっているのですが,行為が必要かとか,あるいは実際の過去の一回的行為かという点で大きく違うので,似ているところと違うところがあると思っております。

【大須賀委員】  もう一つだけ,追加でよろしいでしょうか。

【土肥主査】  どうぞ。

【大須賀委員】  それは,おそれということで,なるほどそういうことかなということは理解できるんですが,そうすると,従属説ということを言う意味は一体どこにあるのかがよくわからないので,そのあたりを教えていただければと思います。

【大渕主査代理】  これは先ほど山本委員が説明されたところに一端が出ているかと思いますが,一番わかりやすい例が,特許法で恐縮ですけれども,101条の1号,2号は,専用品でも多機能品でもいいのですけれども,通説では折衷説で,直接侵害に当たる部分が非業実施でも間接侵害は成立する。あれはおそらく,刑法的に言うと,幇助犯というよりは新たな独立の正犯をつくるという形になっているので,法令用語でも擬制侵害となっているのは,侵害でないものを法で創設的に擬制しているという意味で,先ほど言われた別の法益と呼ぶかどうかは別として,家庭内の実施が侵害であることを前提に,それに幇助犯として加担するというのではなく,それを,別に切り出して独立正犯的にしたものであります。そういう意味で,こちらの方が119条1項の教唆,幇助だとすれば,そういうものとはまた別のものとして切り出した独立正犯というのが実態に近い。そういうものであれば,あれは日本では折衷説と呼んでいますけれども,一部独立説の方が実態に近いと思うのですが,そういうことになるのです。だから,刑法の問題というよりは,特許法で,御案内のとおり従属説,独立説,折衷説という議論がありますけれども,あれとパラレルに考えていただいた方が分かりやすいと思います。あちらの特許法は,特則で一部独立説になっているけれども,こちらの著作権法は,特則でない,一般則のままの従属説というように考えると,イメージが湧きやすいのではないかという気がいたします。

【土肥主査】  大須賀委員もこの期の委員会の頭のほうでおっしゃっていた30条問題なんですけれども,私も大須賀委員がおっしゃった御発言,30条の問題と間接侵害の関係については,30条に手を突っ込んでしまう議論をすると影響も大きく大変な問題になるので,ここでの間接侵害についての検討のスコープはそういうところには扱わないような形での議論になるのかなと私は思っておりました。そういうことからすると,この従属説というのは,言ってみれば,30条の問題に関係なく,直接侵害行為があることを前提に間接侵害行為,教唆,幇助行為の一定の範囲のものが規制の対象になるという理解をしていたわけですけれども,先ほどの話からすると,相当広がっているなという印象を私は持ちました。ただ,大渕委員がおっしゃっておられるところの直接侵害行為者のドグマを立法的に克服するというテーマについては,若干の御異論もあることはあるのですけれども,この問題を克服することについての共通の認識はあるんじゃないかと思います。
 そこで,この問題,つまり直接侵害者に限定してしまうと,著作権の実効性が失われる部分が出てくる。その点については,範囲を限るかどうかは別にして,委員の中に若干のばらつきがあることは認識しているんですけれども,そういう点についての問題意識は,ほぼ共有されているのではないかと私は思います。先ほどから,あるいは前回の議論からも出ておりましたけれども,明確性についてもかなり議論がございます。明確性について争いがある以上は,この点についてはもう少し時間をかけて議論させていただければと思います。
 この後,時間の問題もあってリーチサイトの問題も出てくるわけですけれども,リーチサイトについての問題意識は,ワーキングチームの委員は御存じのようなんですけれども,我々のようなワーキングチームに入っていない者は実は今日初めて見たようなところがございますので,ワーキングチームの委員以外の方で御質問等がありましたら,リーチサイト問題について,まず質問をお受けした上で意見交換をしたいと思うんですけれども,いかがでしょうか。
 小泉委員,どうぞ。

【小泉委員】  ヒアリングのときに,この問題についてニーズがあるみたいだから,さらに詳しく御検討をお願いしますとお願いした立場なので,非常に詳細な資料をつくっていただいて,ありがとうございました。
 その上で,1つ質問なんですけれども,考え方の整理の5ページで,リーチサイトについてはその他という扱いになっているんです。単純な質問なんですけれども,ワーキングチームの段階でその他扱いになったときに検討の対象になったものは,今日,配られた資料と同じものと考えてよろしいんでしょうか。それとも,ワーキングのときは対象になっていなかったけれども,今日初めて把握されたものというのがあったりするんでしょうか。

【壹貫田著作権課課長補佐】  基本的に同じようなものとお考えいただいて大丈夫かと思います。

【小泉委員】  そうですか。では,今,どういうものが多様な類型に含まれているかが見える化されて,私のようにワーキングに入っていない人間にとっては非常に助かったんですけれども,ぱっと見ますと,従属説というものを確かに貫くと,例えば1ページ,2ページあたりの行為は,幇助として,正犯なければ共犯なしという形になりそうなので,そういうことからすると,いわゆる今回のもともとの考え方の整理からは外れるという整理もあるのかなと私としては理解したんです。
 ただ,その後の考え方の整理をめぐる議論の中で,今,まさに議論があったとおり,必ずしもいわゆる従属にこだわらなくてもよいという話にもしなっていくと,今日,配られた資料2の類型の中の行為のすべてとは言いませんけれども,少なくとも一部については,先ほど森田先生から御議論があった3ページの第2類型の「場」にウェブサイトが入るという指摘があるわけで,第2類型の注の中に,こんな行為もあると。直ちに対象になるか,違法になるかどうかはもちろんケース・バイ・ケースなんだけれども,全く別の行為として,別枠のものとしてとらえるというよりは,少なくともこの例の幾つかは,各論というか,特に第2,第3あたりなんでしょうか,BitTorrentなんていうのは,もしかすると第3類型に関連するのかなとか思ったりもするんですけれども,そうやって注のような形で取り込むこともできるのかなと。それほど精査したわけではありませんし,事実関係もまだいろいろあるんだと思うんですけれども,ここに書かれたことを前提に,そういう印象を持ちました。
 ある種の独立説をとっていくとすれば,第2類型と第3類型の一つの限界例としてリーチサイトの問題を注に入れ込むことができるんじゃないか。そうすれば,2,その他という形で全く別で,しかも各論が,どういうのが多様なのかという例が全然挙げられていないので,その他というところはもうとってしまって,第2類型,第3類型の一つの例として,いわゆるリーチサイトのあるものがここに挙がりそうだなという整理もあるのかなと思った次第です。そんな感じです。

【土肥主査】  ありがとうございました。

【大渕主査代理】  今の御質問に対するお答えは,今年の1月から何度も使っている1月12日付の本日の参考資料1の5ページの繰り返しになってしまいまして,大きく,重要なポイントとしては,もう御案内かと思いますけれども,ここではリーチサイト全体かリンクかは別に考えるべしということで,リーチサイト全体としてやるのであれば別途の立法になるのではないかということなのですが,リンク自体は,最初のパラグラフの一番最後のセンテンス,「リンクによって,その態様やリンク先で行われる著作物等の利用行為の内容(ダウンロードを伴うか,視聴に限られるか等)」として,視聴に限られれば,視聴は著作権で捕捉しない行為だから,先ほどの従属説であれば非侵害の行為だから対象にしないということの各論で個別に判断する。そういう意味では,これはサイト全体だったら特出しになっているので,ここにあるようにいろいろな意見があったと別になっていますけれども,リンクは各論の一つだから,たくさんある事例の中の一つだから,個別に判断するしかないということで,まさしくここに書いてある「個別の事案ごとに判断せざるを得ない」として,特出しというよりは枠組みを決めた上での各論でありますので,これはたくさんあるうちの一つの事例になろうかと思います。リーチサイトというサイト全体についてはリンクとは別だろうということで,こういうことになっております。

【土肥主査】  何か御質問は。
 では,上野委員,どうぞ。

【上野委員】  今,小泉先生が御指摘になられましたように,リーチサイトの問題を第1類型から第3類型の中でとらえることも可能ではないかという議論は,ワーキングチーム内でもあったと記憶しておりますし,そのような記述にすることも一つの考えとしてはあったと思います。ただ,リーチサイトは間接侵害という観点からすればやや特殊な応用問題というところがあります。また,この3つの類型がすぐにコンセンサスを得られるかどうかわからない状況において,リーチサイトに関しては早急な対応を目指すという意味で外したというところがあるものと考えております。
 コンセンサスという観点からしますと,いわゆるリーチサイトというものにつきましては,その現状に鑑みますと,これに対して権利者が何らかの対策をとれるようにするべきではないのかという点で,基本的なコンセンサスがあるのではないかと思われます。他方,インターネットにおけるリンクという行為の法的な評価につきましては見解が分かれるところでありますが,少なくとも,インターネットにおける通常の行為が過度に阻害されることのないようにすべきではないかという点においても,また基本的なコンセンサスがあるのではないかと思われます。
 ただ,リーチサイトにはいろいろなタイプがあるのだろうとは思いますけれども,形式的にはリンクの集合体ということですから,先ほども大渕先生が御指摘になられましたように,確かにリンクというものは,実際に違法配信が行われているサイトに到達可能になるという側面を持っているといたしましても,それはユーザーによる閲覧行為やダウンロードを助長しているだけで,もちろん違法サイトであることを知りながらの録音,録画であれば権利侵害に当たる場合もあるのでしょうけれども,多くの場合,リーチサイトというのは適法行為を助長しているに過ぎないのではないかということが問題になります。さきほどの従属説に立ちますと,この場合はリーチサイトに対する差止は認められないことになります。他方,リーチサイトというのは,リーチサイトのユーザーがリンク先において違法配信を閲覧することを通じて,単にユーザーの閲覧行為を助長しているだけではなくて,リンク先における違法な公衆送信を助長していると評価することもできるのだ,という考え方もあり得るわけでありまして,この点は以前の議論にも出てきたところであります。ただ,いずれにしましても従属説を前提とした間接侵害という観点からすれば,リーチサイトはやや特殊な応用問題ということになろうかと思います。
 そのように考えますと,リーチサイトを3類型の中で扱うというのは,なかなか容易ではありません。もちろん第2類型に当たる可能性も一応なくはないのだと思いますけれども,第2類型はあくまで侵害発生の用に供される物品・場を念頭に置いておりまして,その物や場を用いて侵害行為が行われることを想定しているわけです。ところが,リーチサイトは,多くの場合それ自体が直接に侵害行為に用いられるものではないように思われますので,第2類型でカバーできるとは限りません。もちろん,それでも第2類型でカバーできると解することは不可能でないという考え方もありますし,そうした議論はワーキングチーム内でもあったかと思うのですけれども,あまりこれを強調して無理をしますと,ともすると違法サイトへのリンクという行為が一般的に第2類型の間接侵害に当たるという解釈につながりかねません。例えば,違法サイトへのリンクをTwitterでつぶやくとかいう単発のリンク行為も,それはリンク先の侵害行為を助長していると評価されることになって,それも第2類型に当たることになりかねないのではないかと思います。
 もちろん,違法サイトにリンクを張ることは別に正当化できるものではなくて,少なくとも違法サイトであるとの認識がありつつリンクしている行為については権利者による差止請求の対象になってしかるべきだという考え方もあるのだろうとは思いますけれども,現状,FacebookですとかTwitterで自分の好きなYouTube動画などをリンクしていることが非常に多い状況を見ますと,そうしたリンク先の動画が完全に適法とは言えないという場合は実際かなり多いのではないかと思います。また,検察エンジンというのも,検索結果の表示はまさにリンクでありますので,リンク先に権利侵害コンテンツが含まれるというだけで,これを理由に当該検索結果の削除を求めることが常に認められていいかどうか,この点も議論があるところではないかと思います。
 そうであれば,このように難問であるリンクという行為それ自体の法的評価には直接踏み込まずに,差止請求の対象にすべきことについて結論としてコンセンサスを得られそうなリーチサイトというものを特に対象とする個別の規定を設けて,これを一定の条件の下に差止請求の対象となることを明示するほうが無難ではないのかという考えが,この「考え方の整理」というまとめ文書の背景にあるのではないかと思います。具体的に申しますと,例えばですけれども,「権利侵害に当たる公衆送信を行うサイトに対する多数のリンクを,その事実を知りながら業として提供する行為」などといった特定をして,そういう行為を著作権法113条のみなし侵害の一つに加えるという方向が考えられるのではないかと思います。
 このように,確かに第1類型から第3類型の中でリーチサイトを論じることもできるのですけれども,そうした3類型を一般規定として設けることとは別に,これとは別に,リーチサイトに関する個別規定を設けることが検討されてもよいのではないかと,個人的には考えております。そして,その点についてコンセンサスが得られるのであれば,この規定だけ早期に実現を目指すこともあっていいのではないかと私は思っております。
 以上です。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 後半の御発言の部分ですが,この報告書から私自身そこまで読みとっていなかったのですが,113条のみなし侵害のところの一類型ということをお考えであったということなんですね。
 奥邨委員,どうぞ。

【奥邨委員】  リーチサイトについては,私も,この議論をしているときも,今,上野先生からおっしゃっていただいたように,基本的には別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンク集というような整理であるんですが,こういう形でどんどん,どんどんと,例えばBitTorrentのtorrentファイルを含むであるとか,いろんな形で広げていくと,かなり外縁がよくわからないということになるのではないかなと思っております。いわゆるリンク集,違法サイトをわかった上での,極端に言えば,一番簡単なのは2の類型のようなものが典型的だということであれば,視聴もしくはダウンロードということであればわかりやすいんでしょうけれども,非常に広がっていっていて,まずその辺の整理も少し必要なんではないかと思っています。
 今日,ここに臨むのに昨日あたりから調べて,英語でLeechsiteを調べると出てくるのは,こういう形ではないんですね。定義も別段はっきりとあるわけではなさそうですし,出てくるのは,1の1のストレージサイト型のさらに特化したものだけが,premium download link generator(Leechsite)みたいなことになっているものも多くて,極端に言いますと,御案内だと思いますけれども,Leechというのはヒルとか寄生虫,吸血虫という形で,人の成果におんぶに抱っこするフリーライダーという意味で使っているようであります。
 そのときに問題になってきているのは何かというと,一つ,よく検索サイトで上のほうに上がってくるリーチサイトと呼ばれるものは,1の1のMEGAUPLOADのようなサイトは,だれでもダウンロードできるんですが,お金を払っていない,ユーザー以外はすごく遅いスピードでゆっくりダウンロードしないといけなくて,1時間,2時間かかる。お金を払うと,ものすごく速いスピードでダウンロードできるようになる。しかし,みんなはお金を払いたくない。なので,だれか一人がお金を払って,ダウンロードするリンクを確保する。それをみんなで使えるようにするサイトをリーチサイトと呼んでいる。その人はどうやってお金を設けるかというと,みんなからドネーションをもらったり,広告サイトをしてもらうみたいな,ほんとうの意味の寄生だなという形になっている。
 ですから,私自身が前に申し上げたけれども,リーチサイトという言葉を使う上でも気をつけないと,少なくとも外国でいうときのリーチサイトと同じなのかどうか,実態としてだんだんちょっと違ってきているのかなというのがあるので,物を仮に規制するとするならば,まず言葉の整理をしていかないといけなくて,リーチサイトという言葉自体は,吸血ですから,どんどん,どんどん広がっていっちゃうので,そもそも適切なのかどうか。まず私たちが押さえたいのはどういう形か,違法コンテンツをわかった上で大量にリンクする,しかもそれが,上野先生から今,あったように業としてとか営利目的でという形で,リーチサイトだからということじゃなくて,もう少し実態を整理してやったほうがいいんじゃないかなというのは,調べていてすごく心配になってまいりました。
 もう一つは,今,上野先生からあったのと同じですが,仮に大量にリンクがあるものをアウトにするという場合,私もそういうサイトがいいと思っているわけでは全然ないんですが,やっぱり重要なのは一般的な検索サイトに対するセーフハーバーはきっちり提供しないと大変なことになるんではないかなと思います。もちろん知っている,知っていないとか,いろんなところはあるんですが,どういう形でやるか。別段,セーフハーバー規定としてつくらなくても,リーチサイトをアウトにするという規定の書き方で工夫すればいいんだろうと思いますが,例えばアメリカであれば,リンク集は基本的にはDMCAの512(d)条で,DMCAの通常の手続に乗っている限りは免責されることになりますので,日本だけ厳しくなってしまうことがあってもいかがなものかと思います。
 さらに,上野先生からあったように,今度はセーフハーバーというよりもさらに踏み込んでですけれども,個人のブログでのリンクであるとか,サイトやツイッターでのつぶやきに対して,問題になることがないということをより積極的に担保していかないと,かなりの萎縮効果があって,本来,ねらっていた非常に悪い業者のようなもの,大量集積のものをつぶす以上にネットに与える影響が多いので,私はこれを規制すること自体を反対しているということでは全くないんですけれども,非常に限定して,きっちりと,悪いもの,今,皆さんがお困りのものに限って悪影響を防ぐようなセーフハーバーなり,さらに踏み込んだ対応をすることをした上でやるということで少し整理をしていくべきではないかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 どうぞ。

【大渕主査代理】  もう,おおむね今まで出たとおりですけれども,やや御説明を加えますと,IIで別枠になっていますのは,今までありましたいろんなことを考えた上で,本体Iと一緒にはできないと。いろんな意味で,サイトとリンクの問題もありますし,リーチサイトというのはそもそも用語がはっきりしないというあたりから始まり,定義としては,このペーパーといたしましては,5ページにありますとおり「別のサイトにアップロードされた違法コンテンツへのリンクを集めたサイト」という,仮置き的な作業用の定義を与えた上でこういうふうに書いております。要するに,先ほど御発言がありました中にも,こういうものは押さえるべしというのと,こういうものは押さえてはいけないという微妙な判断を要求される中で,そういうものを本体と一緒にしてしまうと,全体として,これは先ほども御説明したとおりできる限り明確化を図るということで,無理はしない,必要以上に検討のスコープを広げてしまって,微妙なところでばさっと線を引いてしまわないようにというところを配慮した上で作業してみたら,本体はIでまとめられたけれども,IIは別立てにして,用語も,何を規制するか,しないかも踏まえて,前のヒアリングの際にはこういうリンクのようなものをあまり検討していないのではないかという御発言がありましたけれども,むしろ検討すればするだけ線引きは難しくて,先ほどの「物品・場」ではないですけれども,書けるところをできるだけ書いてみたところ,こういうふうになったということであります。そうなので,この一端にも,先ほどありましたような非常に難しい線引き,何しろ実態自体がどういうものかも必ずしもわからないというところが表れているということであります。一個一個,どういう類型なのか,ないしはこれは規制すべきなのかどうかを,一般のものとは別途に,考えていく必要性が高くて,113条の点も含めていろいろ考えなくてはならない類のものではないかと思っています。

【土肥主査】  ありがとうございます。
 ほかに,この点について何か御質問,御意見ございましたら,お願いいたします。
 末吉委員,お願いします。

【末吉委員】  先回,間接侵害に対するヒアリングの成果をいろいろ見て,必ずしも間接侵害に対する御理解が十分でないという点が立法事実的に心配だと申し上げたんですけれども,今日,リーチサイトのお話を承って一つ感じたことは,最も間接侵害の規定を求めていたのは,実はリーチサイトをたたいていきたいという業界の声だったという点を思い出しました。小泉先生の御意見と私が同じかどうかわかりませんが,大変取り扱いが難しいという大渕先生の御指摘はごもっともであるんですけれども,やはりリーチサイトだからということでたたく,差止請求を認めることはあり得ないのだということは大前提として,実際にリーチサイトの実情を踏まえて,こういう被害があるところを,こういう規定をつくると,こういう効用があるのではないかという点を,我々は,もしかしたらヒアリングを受けられる方に提示できていなかったんじゃないか。あるいは,私もよくそこが理解できておらず,大変複雑なものであるという点は今日初めて理解したんですけれども,そこに踏み込まないと,正確な立法事実としての把握という意味ではちょっと残念だったなという感じがいたしました。
 以上でございます。

【土肥主査】  ヒアリングを受けて,ある種のリーチサイトと言われるものの現状を我々が共有した結果,本日,こうやって特に資料を出していただいて議論しているわけでありまして,この問題の重要性を認識していないわけでは決してないわけです。特に書協のヒアリングの際のああいう状況や,コミックなどは録音,録画のダウンロードからは外れていますので,あの状況はかなりひどいなと私は痛感いたしました。ですから,そういう状況がそのまま放置されることは,著作権分科会法制小委としてこういう形でいいのかと私は思っております。特にその部分については問題状況が深刻ではないかなと思っておりますので,上野委員がおっしゃったようなことも一つは考えられるわけでありますし,あるいは小泉委員がおっしゃったような可能性もあるのかもしれませんが,適切な方向性をここで打ち出せればと思います。法制小委の報告書の中でも何らかの積極的な考え方を示していければと思っております。
 どうぞ。

【大渕主査代理】  1点だけ。最初に参考資料にございますとおり,これはあくまで差止めに限定しておりまして,損害賠償は今でも共同不法行為で一般にできますので,それに加えてと申しますか,差止めは損害賠償とはまた違いますので,差止めとしてどうするのかというところです。そこも念頭に置いた上で,先ほどのようなことで,そもそもリーチサイトとは何ぞやというところから始まって,規制するからにはそこの認識を得なくてはならない。資料自体は,これより詳しいものでいろいろBitTorrentなどを検討した結果,非常に多種多様だから,打ち出すとしたらこれぐらいしか出せないということでありますが,そのあたりは,差止めの必要性等も含めた上で,また今後の検討課題になってくるところではないかと思います。

【土肥主査】  ほかに。
 はい,どうぞ。

【中山委員】  立法するとすれば,差止と損害賠償は当然だろうと思いますけれども,刑罰はどうするのかという点と,それ以外に例えばスリーストライク制など,何か他の方法も考えておられるのかという点については,いかがでしょうか。

【土肥主査】  御質問ですか。どなたに……。事務局ですかね。事務局に聞くと怒られるかもしれませんけれども,私はリーチサイトについては本日初めて状況をお伺いするものですから,事務局に今の点についてお答えいただければどうかなと思いますが。

【壹貫田著作権課課長補佐】  特段,刑事罰の関係うんぬんで検討しているということではないと思います。先ほど大渕先生がおっしゃっておられたように,リーチサイトについては,ワーキングとしてはあくまでも差止の対象になるかどうかという観点からしかやってございません。

【中山委員】  あと1つだけ。これは非常に漠然とした話で恐縮ですけれども,サイトにおける自由というのは,おそらく日本と比べれば欧米の動きが極めてすさまじいという気がいたします。違法ダウンロード刑罰化の改正のときにも,アノニマスと称するところから官庁に対するサイトの攻撃があった。たかが著作権法改正であんな攻撃があるとは思ってもいなかったが,ヨーロッパやアメリカのいろんな状況を見ますと,ネットへの自由の要求にはかなりすさまじいものがあります。それはネットのヘビーユーザーである若者が中心で,その反対の運動はおそらく年々,年が上がっていくと思われますので,そういう動きを非常に注視して改正していかないと,世界から攻撃を受ける可能性もあるのではないか,と思います。これは規制が非常に難しいというか,文言が非常に難しいとは思うんですけれども,そのことを注意していく必要があろうかと思います。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかにございますか。
 森田委員,お願いします。

【森田委員】  リーチサイトについての法規制を考えるときに,ここで,ある悪質なサイトのことをリーチサイトと呼んで,法文化するときにそれをどう定義するかについて知恵を絞るという発想で臨むと,どのように書いても不明確な規定になるおそれがあるという面は否めないのではないかと思います。先ほどの3類型で,第1類型の場合には,物品あるいは場,ないしはサービスの特性から見て客観的に絞りがかけられるわけですが,そのような客観的要件で限定することができない2類型の場合には,主観的要件の絞りをもう少しかけないと明確にならないと私は思っていますが,いずれにせよ,リーチサイトは第2類型に対応する問題ですので,それが違法であるかは,主観的な要件を満たすかどうかにかかってきます。
 ただ,そうなってきますと,主観的な要件を満たすことをどうクリアするかという点で,実際にこれをどのように立証しうるかがいろいろ問題になってくるわけです。あるサイトの画面を見て,これはリーチサイトかどうかと判別できるような客観的な基準があればよいわけですけれども,おそらくそうはいかなくて,その行為者がどういう意図でサイトを運営しているのか等の主観的意図をもいろいろ総合的に考慮して認定していかなくてはいけない。間接侵害の一般規定で対応を考える場合にはこのような整理になるわけですけれども,仮に特別法をつくるとすれば,サイトの画面を見て,これがリーチサイトに当たるかどうかといった観点だけではなくて,例えば,サイト運営者に対して一定の措置をとったけれども,それに対して応じないとか,先ほどスリーストライク制という表現も出まして,これは問題の局面は違うのですが,一定の手順や手続を踏んでいくことによって主観的な意図の悪性を確定していく方法はありうるわけです。したがって,ある時点で切りとって,これがリーチサイトかどうかという観点よりは,一定の手順を踏んでいって,これが悪質なサイトであると確定する方法を特に法律に用意して,その結果,これは悪質であることがはっきりすれば差止請求の対象としてよいというような,間接侵害の一般規定とはもう少し違う発想で,何が悪質で,何がそうでないかを仕分ける工夫をしていかないと特別法を定めることは難しいのではないかと思います。リンクというのは情報提供サービスでありますから,情報提供サービス一般の中で適法なものとそうでないものをどう区別するかという問題は,どんなに主観的要件で絞ったとしても間接侵害の一般規定の適用によるときはその立証に不明確な点が残らざるを得ない。そうすると,そのような方向で考えていっても果たして正解が得られるのかというと,私自身は悲観的に考えていますので,もっと異なる発想に立った知恵がないかをむしろ議論すべきではないか。リーチサイトを法文でどう定義するかだけではなくて,いろんな仕組みの中で悪質なサイトであることを確定させるようなプロセスを法律の中に織り込んでいって,そのプロセスを踏んだ結果,悪質であると判明した場合には一定の措置をとれるという発想で考えられないか,そうしないと解決がつかない問題ではないかという観測を持っています。

【土肥主査】  ありがとうございました。
 ほかに。今のことですか。

【大渕主査代理】   今のことで。リーチサイトの関係ではないのですけれども,前に御説明したことがあるかと思いますが,B2といいますか(ii)で書いてある「合理的措置」というのは,前にどなたかの御発言にもありましたとおり,リーチサイトではないですが,普通のサイトの場合ですと,具体的な特定性のあるノーティスが来たら,ノーティス・アンド・テイクダウンと呼ぶかどうかは別として,それに応じた対応を採るというのが,「合理的措置」であります。サイトの運営者には,包括的な事前監視義務が一般的に要求されるものではなく,「合理的措置」が採られていれば,差止めは免れることとなります。そして,「合理的措置」の具体的内容は,通知の具体性・明確性との相関関係で決せられることとなります。リーチサイトをどうしていくのかは別ですけれども,間接侵害の本体としては,そういう点も込めております。

【土肥主査】  はい,どうぞ。

【中山委員】  事務局に実態をお伺いしたいのですけれども,いわゆるリーチサイトというものは,日本に蔵置されているものが多いんでしょうか,それとも中国あるいはどこか違う国に置かれているものが多いんでしょうか。

【壹貫田著作権課課長補佐】  どちらが多いかは,実証的にはまだなかなか把握し切れていないところではございますけれども,もちろん海外に置かれている映画もあるとは思っております。

【中山委員】  もし海外が多い,あるいはこの立法がなされたときには海外に持っていけば安全だということになれば,せっかく立法してもあまり意味がないということもありますので,その実態について調べていただければと思います。

【壹貫田著作権課課長補佐】  はい。

【土肥主査】  どうぞ。

【村上委員】  もう一つ,よろしいですか。私も,リーチサイトでつくって,どのぐらい機能するのかなというのが心配なのです。結局,差止請求権を認めた場合には,裁判所に提訴して差止命令という形で命令内容を考案して,だれに対してどのような内容の命令をときちんと構成しなければいけない。それで相手が素直に従えばいいですけれども,従わない場合には,今の日本の手続上は代替執行か間接強制かでやるという話になります。それがうまく強制執行できるような状況になるのかなというのと,執行可能な命令をうまく考案できるのか。それは将来の問題かもわかりませんけれども,その辺が,どうなるのかなという気がいたしますというのが正直なところです。外国の事例であれば,その辺を紹介してもらえればと思います。

【土肥主査】  ほかに何かございますか。特によろしゅうございますか。よろしいですか。よろしゅうございますか。
 第6回の法制小委ですけれども,前半において間接侵害に係る立法措置の必要性及び3類型について,御意見をちょうだいいたしました。また,後半においては,リーチサイトに関して御意見をちょうだいしたところでございます。今日の議論,意見で直ちにどうこうということではないわけでございますので,おそらく今後,この先,この期の取りまとめのようなことが出てくるだろうと思います。したがいまして,そのときにまた皆さんの御意見を踏まえて最終的な期の取りまとめに入りたいと思っております。本日,御質問,御意見が特にございませんでしたら,本日はこのくらいにしたいと思います。
 事務局から連絡事項ということでございますけれども,今から連絡事項をおっしゃる方は,この法制小委,3年半の長きにわたって御苦労いただいて,いろいろ我々をサポートしていただきました。最後の法制小委の壹貫田課長補佐のサポートになりますので,連絡事項がございましたら,お願いいたします。何かつけ加えていただいても結構ですが。

【壹貫田著作権課課長補佐】  過分なお言葉をちょうだいいたしまして,ありがとうございます。皆様,ほんとうにありがとうございました。
 次回の法制問題小委員会は,また日程が決まり次第,御連絡したいと思いますので,よろしくお願いいたします。

【土肥主査】  それだけですね。(笑)どうもありがとうございました。
 それでは,本日は,第6回法制問題小委員会を終わらせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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