文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)

日時:
平成28年12月15日(木)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館阿蘇の間

議事次第

  1. 1.開会
  2. 2.議事
    1. (1)世界知的所有権機関における最近の動向について
    2. (2)諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策について
    3. (3)その他
  3. 3.閉会

配布資料一覧

第16期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第2回)

平成28年12月15日

【道垣内主査】時間になりましたので,ただいまから文化審議会著作権分科会国際小委員会の第2回を開催いたします。本日は,御多忙の中,御出席賜りまして誠にありがとうございます。

本日の会議の公開については,予定されている議事の内容を参照しますと,特段,非公開とする必要はないと思われますので,既に傍聴者の方には入場していただいているところでございます。この点,特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【道垣内主査】ありがとうございます。それでは,本日の議事は公開ということで,傍聴の方には,そのまま傍聴していただくことといたします。

初めに,前回御欠席のため,今回が本年度初めての委員会への御出席となる委員の皆様を御紹介させていただきます。

堀江亜以子委員でございます。

【堀江委員】堀江と申します。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】それから,従来からいらっしゃった方ですが,山本隆司委員でございます。

【山本委員】山本です。よろしくお願いします。

【道垣内主査】なお,本日は斎藤委員が御欠席されておりますが,同委員のお申出により,一般社団法人日本民間放送連盟番組・著作権部部長の田嶋炎様が御出席になっていらっしゃいます。よろしくお願いいたします。

【オブザーバー(田嶋様)】よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】続きまして,事務局の人事異動について御紹介いただけますでしょうか。

【北山国際課長】ありがとうございます。9月1日付けでございますが,文化庁長官官房国際課に着任いたしました野田昭彦海賊版対策専門官です。

【野田海賊版対策専門官】野田でございます。よろしくお願いします。

【北山国際課長】11月7日付けで文化庁長官官房付に着任しております水田功でございます。

【水田長官官房付】水田でございます。よろしくお願いします。

【北山国際課長】最後に,11月1日付けで文化庁長官官房著作権課に着任しております澤田将史著作権調査官でございます。

【澤田著作権調査官】澤田でございます。よろしくお願いいたします。

【北山国際課長】以上でございます。

【道垣内主査】ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

それでは,議事に入りたいと思います。本日の議事は3つございます。世界知的所有権機関における最近の動向について,2番目が諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策について,3番目がその他ということになっております。

まずは配付資料の確認をお願いします。

【小林国際著作権専門官】配付資料について確認をさせていただきます。議事次第を御覧いただけますでしょうか。

配付資料の一覧のとおり,まず議題の1といたしまして3つ資料を用意しています。資料1-1といたしまして,世界知的所有権機関における最近の動向について。資料1-2といたしまして,こちら英文になりますが,放送条約の最新の作業文書を付けております。また資料1-3としまして,表形式の放送条約の主要論点に関する各国のスタンスというものを御用意しております。

また議題の2に関しましては資料を1つ用意しております。諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策についてという資料になります。

また参考資料については,記載のとおり,2種類のものを御用意しています。

もし不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。

【道垣内主査】よろしいでしょうか。では,議事の第1番,WIPOにおける最近の動向について,まずは事務局から御説明いただき,その後,委員の皆様の御意見を伺い,議論をしていただきたいと存じます。

では事務局から御説明いただけますでしょうか。

【小林国際著作権専門官】資料1-1を御覧いただけますでしょうか。WIPOの最近の動向ということで,7月以降,WIPOの加盟国総会と第33回の著作権等常設委員会,SCCRが開催されておりますので,その2つについて概要を御説明させていただきます。

まず1ページ目にあります第56回WIPOの加盟国総会の結果の概要について御報告をさせていただきます。

日程は,こちらに記載のとおり10月3日から11日まで開催されています。WIPOの加盟国総会は,WIPO全体に係る事項の最高意思決定機関ということになっており,今回の10月の会合では,著作権以外では,意匠法条約採択のための外交会議の開催や,外部事務所の設置等について議論が行われております。また,著作権に関連する部分として,SCCR,IGCの活動報告や,マラケシュ条約の第1回の加盟国会合等が行われておりますので,それぞれについて,著作権に関連する部分のみ御報告をさせていただきます。

まず3の(1)SCCRの活動報告についてですが,昨年度の1年間のSCCRの活動について事務局から報告があり,その後,各国からステートメントが行われております。ステートメントの内容ですが,日本やEU,アフリカグループ,アルゼンチン等から,放送条約に関して外交会議の早期開催を望むという意見が表明されております。特にアルゼンチンからは,放送条約に関する議論を推進するという文言を議決文に追加すべきという主張がございまして,それに基づいて,アルゼンチンから,放送条約と制限例外を含むすべてのアジェンダについて明確なロードマップを作成するというものを議決文案に盛り込むべきという提案がなされております。これについては,コンセンサスを得ることができなかったということで,総会の最終日に当該提案が取り下げられております。結果的に議決文としましては,「SCCRにて議論を継続する」という非常にシンプルな議決文のみが採択されたという状況です。

次にIGC,こちらは遺伝資源や,伝統的知識,フォークロアに関する議論を行っている委員会ですが,こちらについても1年間の活動報告が行われております。遺伝資源に関する2回の会合の結果と伝統的知識に関する1回の会合の結果が報告され,その後,意見表明がなされております。

途上国側からは,IGCの議論の進捗の遅さに懸念を表明する意見があり,これらについては国際的な法的拘束力のある文書を作るべきという従来の意見が表明されました。

一方で先進国側からは,遺伝資源や伝統的知識等の制度を有する国の経験を共有し,事実ベースの議論を行うべきという従来のスタンスが表明されておりまして,依然として,途上国と先進国の懸隔が大きいという状況です。

最後に(3)のマラケシュ条約の加盟国会合について,こちらは9月30日にマラケシュ条約が発効したことを受け,第1回の加盟国会合が行われております。議長の選任や手続の規則が採択され,その後,多くの国や視覚障害者団体等からマラケシュ条約の発効を歓迎するという旨の発言がなされております。

以上が加盟国総会の結果の概要です。

次,2ページ目に移っていただきまして,第33回SCCRの結果の概要を報告させていただきます。

11月14日から18日まで1週間の日程で開催されております。2ポツの概要ですが,今回の会合では,これまでと同様に,放送条約に関する議論,そして権利の制限と例外に関する議論が2日ずつ計4日間行われております。その後,その他の議題として,追及権に関する専門家によるプレゼンテーションや今後の進め方について議論が行われております。

3ポツですが,放送条約,権利の制限例外等について,各論で御報告をさせていただきます。

まず,放送条約については1998年から20年近く議論が続けられていますが,今回の第33回の会合に際し,議長からリバイスされた議長提案が出されております。その中で,定義,保護の対象,与えられる権利という,この3つの項目についての統合テキスト案が提出されております。

資料1-2として英文で統合テキスト案を付けておりますが,こちらに基づき今回,逐条のテキストベースの議論が行われております。

(イ)議論の概要ですが,このテキストベースの議論の中で,特に(1)の放送の定義,(2)のサイマルキャスティング等のインターネット上の送信の保護,そして(3)の放送前信号の扱い等について,インフォーマル形式で集中的な議論がなされております。これらの論点に関して個別に御報告をさせていただきます。

まず放送の定義に関する議論ついては2つの案が出されております。放送と有線放送を別途定義する案と,もう一つの案が,放送の定義の中に有線放送も含めるという案の2案が出されており,この2案について検討が進められております。

議長からは,放送の定義の中に有線放送も含める,後者の案をベースにしたらどうかという提案がありました。この提案については一定の支持が得られたわけですが,既存の条約の定義と整合しないため,既存の条約,WPPT等の既存の条約と整合すべきではないかという意見も出されております。結果としましては引き続き,この2つの案について検討が継続されることとなっております。

なお,いずれの案についても,インターネット上の送信を定義の中に含むかどうかという点が論点となっていましたが,インターネット上の送信を含まないとする文言が両提案に追加されまして,放送の定義の中にはこのような文言を含まないことが方向性として確認されたということです。

次にインターネット上の送信の保護ですが,こちらについては放送条約の中で主要な論点とされているところでして,かなりの時間を割いて議論がされております。

WIPOの放送条約の議論では,脚注にございますようにインターネット上の送信を4つに分類して議論がされております。1つ目がサイマルキャスティング,放送のインターネット同時配信に関するもの。2つ目が放送番組の異時のウェブキャスティング,放送とは別の時間で送信するもの。3番目が放送番組のオンデマンド送信,キャッチアップサービス,見逃し配信のようなものでございます。最後に4番目として,インターネットオリジナル番組の送信。この4つに分類をして,それぞれについて議論が行われております。

このうち4,インターネットオリジナル番組の送信については,条約の適用対象外とすることでほぼ合意に達しておりますので,現在は残りの3つの項目について議論がなされているという状況です。

その3つについて個別に,今回のSCCRでの議論の概要を報告させていただきます。まずサイマルキャスティングについてですが,EUをはじめとする多くの国から,時代のニーズや技術の進歩等を考慮すれば,これを義務的保護とすることが適切ではないかという意見が出されております。他方で,このサイマルキャスティングについて,義務的保護とすることに反対を表明する国はありませんでした。なお,一部の国については,サイマルキャスティングの保護について検討中であることから,現時点では最終的な態度を留保するとしております。

これらを受けまして,議長は,全体としてサイマルキャスティングの保護を義務的保護とする傾向となっているという発言があり,検討中,留保するとした国については回答を期待しているという発言がありました。

次に3ページ目,放送番組の異時のウェブキャスティングやオンデマンド送信に関して,EU等から,これを義務的保護とすべきという主張がありました。一方で複数の国が,これを保護対象とすることに懸念を表明し,現時点では共通理解が得られていない状況です。

以上がインターネット上の送信の保護の議論になります。

次に放送前信号の保護の議論について御報告をさせていただきます。放送前信号については,これを条約の保護対象とするということに反対する意見はなく,具体的な保護のレベルについて議論がされており,2つの提案が出されております。

1つは,放送前信号の無許可の再送信に対して禁止権を与えるという提案と,2番目については,放送前信号に対して適当かつ効果的な保護を与えるという各国の柔軟性を認める2案が出されておりますが,両案どちらにするのか各国で意見が分かれおり,次回会合にて引き続き議論がされるという状況です。

以上が放送条約の議論の概要です。

次に権利の制限と例外について,現在,図書館とアーカイブのための制限例外と,教育,研究機関等のための制限例外が議論の対象となっております。今次会合では,図書館とアーカイブの制限例外についてのみ実質的な議論が行われております。

(イ)の議論の概要ですが,図書館とアーカイブのための制限例外については,脚注の2に記載があるとおり,11のトピックに分けて議論が行われております。今回は,前回の残った部分,8番から11番目について,各国の制度に関する情報の共有が行われております。

最後に(3)の追及権については,前回の会合で合意された事項に基づき,メルボルン大学のSam Ricketson教授によるプレゼンテーションが行われ,その後,追及権について意見交換が行われております。

また,今後の議論の進め方についても意見があり,日本や韓国等からは,放送条約の審議の時間が減ってしまうのではないかということを懸念する意見が出されております。しかしながら,追及権に関する議論を行うこと自体に反対する国はありませんでした。

これを受け,セネガルから,SCCR等の既存の議題に審議時間に影響を与えないように,追及権に関する会合をSCCRとは別途開催するという提案が出されました。この提案についてはEUやアフリカ諸国を中心に多くの国が支持を表明し,結果として,次回の会合の直前に追及権に関する会合を別途開催するということが合意されております。

最後に今後の予定ですが,次回のSCCRは5月1日から5日に開催される予定です。

次に資料1-3を簡単に補足で説明させていただきます。資料1-3,表形式のものですが,こちらは放送条約の主要論点に関する各国のスタンスをまとめた資料です。

特に留意いただきたいのが左の3つ,伝統的放送機関が行うインターネット上の送信についてです。先ほどの4番目のインターネットオリジナル番組の送信については,既に条約の対象外とすることでほぼ合意に達しておりますので,この表には記載しておりません。残りの3つについて,各国のスタンス等を記載しております。

特に一番左側のサイマルキャスティングについては,今次会合を受けて明確に反対を表明することがなかったという状況でして,バツとした国はないということになっています。

真ん中の異時のウェブキャスティングについて,EUがマルとなっていますが,まだ定義等がはっきりしていないということでその他の国については,態度がまだはっきりとしていないという状況です。

オンデマンドの送信につきましては,こちらもEUが義務的保護を主張しているのですが,支持が広まっていないという状況でございます。

特に今回の委員会では,これらを参考にしていただき,サイマルキャスティングの部分の今後の方向性について,御意見や御議論を頂きたいと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。

【道垣内主査】ありがとうございました。それでは,委員の皆様の御議論を伺いたいわけですが,時間は30分ぐらいとっておりますので,これまで御意見を表明された方におきましても,もう一度この段階で,各論点について御意見を伺えればと思います。

まず,最初のページの全体の動向の部分について,何かありますでしょうか。どうぞ,上野委員。

【上野委員】マラケシュ条約に関しては,本年9月30日に発効したということであります。3年以上前のこの国際小委員会(平成25年11月25日)でも,当時の審議官から,「少なくとも20か国が締結して発効した後に加入するということは避けたい」との御発言があったかと思いますが,結局,日本は加入も批准もできないまま条約が発効してしまったわけです。もちろん関係当事者の利害調整というのも重要かと思いますので,引き続きその進展に期待するしかない,というものと理解しておりますが,この条約の受益者のことを考えますと,やはり早期の加入が求められるのではないかと私は思います。

以上です。

【道垣内主査】何か事情を御説明される必要があれば。特に明確な障害があるということではないと理解しておりますが。

【小林国際著作権専門官】前回の国際小委員会等でも御説明させていただいたとおり,権利者団体と障害者団体等で調整を続けているところでして,調整がつき次第,法制・基本問題小委員会にて御議論いただくということになります。

【道垣内主査】ありがとうございました。そのほか,全体の動向についてありますか。

私から1つ。放送条約についてアルゼンチンが熱心な理由は,何かあるのでしょうか。

【小林国際著作権専門官】詳細な理由は把握しておりませんが,アルゼンチンについては,放送条約に関する提案だけではなくて,同時に制限例外に関する提案というのも出している状況です。特にそれが関連するかどうかは定かではありませんが,提案を出している状況を踏まえますと,恐らく,その両方を積極的に同時に進めていきたいという意図があるのかもしれないと考えているところです。

【道垣内主査】ありがとうございました。そのほか,全体的なことでなにかありますでしょうか。

では,配付資料1-1の2ページ,3ページのところに,放送条約についての論点が幾つか書かれておりますし,資料1-3には対照表が掲げられているわけですが,日本の意思決定がまだはっきりはできていないということです。この審議会の場で,できるだけ御議論していただいて,それを参考に政府の方で方針を決めていただければと思います。どの点でも結構ですが,私もよく分かっていないところが多々あるので,できれば放送関係の方に少し事情を説明していただければと思います。放送機関としては一定のお考えがあると思います。それを明らかにされた上で,問題があるとすれば,こういう点があってというように,論点を明確にするようお願いしたいと思います。どなたかございませんでしょうか。では,よろしくお願いします。梶原委員。

【梶原委員】NHKとしては,これまでも何度も,この国際小委員会の場で申し上げているように,義務的保護ということでお願いをしているところです。これまで確かに日本においては,諸外国のように放送事業者の方がインターネットサービスに対して余り積極的ではなかったということがあるかと思います。ただ,そういったことを受けて総務省の委員会等においても今,特に2020年の東京オリンピックを目指してということだと思いますが,放送事業者がインターネットサービスをより活用する,より連携を強めていくという方向で今,議論がなされています。

現在,NHKとしては放送法の制約があり,NHKの同時配信,テレビの同時配信はできませんが,一昨日の新聞報道でもありましたとおり,2019年にはNHKとして同時配信を進めたいということを総務省の委員会等で述べさせていただいております。

是非,日本政府におきましても,サイマルキャスティングの保護については義務的保護としていただきたいとお願いしたいところでございます。

【道垣内主査】今の中でサイマルキャスティングだけ取り上げられたのは,できるだけ早く成果を上げたいというお気持ちもあってなのか。それとも,何かそれは区別して違う議論をすべきだということなのでしょうか。

【梶原委員】少なくともサイマルキャストについては,義務的保護としていただきたいと考えています。

これまではおそらく,サイマルキャスティングを義務的保護とするとインド等の反対があり,放送条約の早期成立のためにはサイマルキャスティングについては日本政府としては必ずしも義務的保護としない方がいいのではないかというお話でありました。さらにオンデマンドまで義務的保護の対象に入れてしまうと,条約に賛成する国がいっそう少なくなってくると思います。

しかし,今回は多くの国がサイマルキャスティングについては義務的保護とすべきとしたという報告もありましたように,早期成立のためにもサイマルキャスティングについては義務的保護ということの方向性になっているのではないかと思いますし,日本においても,そういったサービスが今後行われていくことを考えれば,是非ともそうしてほしいということです。

【道垣内主査】ありがとうございました。民間放送からは今回,代理出席をしていただいていますが,もしよろしければ。

【オブザーバー(田嶋様)】本日は委員の斎藤がベトナムの方で日本のドラマのプロモーションをやっておりますので,代わりにオブザーバーで出席させていただいております。発言の機会をいただきありがとうございます。

委員の皆さまには日頃,放送条約の成立向けて御支援を頂き,本当にありがとうございます。長くならないようにいたしますが,私どもの現状認識について少し,お話をさせていただきます。

1-3の資料ですが,立体的でダイナミックな現地での議論を,事務局からも言及がありましたが,外交には表舞台と裏舞台があり,しかもパワーゲームですので,そういう現状を,この平たい紙の2次元の表に落とし込むのは,大変御苦労されたことと思います。

そのうえで改めて拝見をしますと,さきほどの「サイマルキャスティングのところにバツ印がない」,つまり反対している国がない,とのご説明には疑問を持っております。

1つは,EUにマル印が付いておりますが,このEUはEU代表部のことでありまして,EU各国が一致してマルであることを示しているわけではありません。EU代表部の意見がイギリスの意見であることは皆さまも御存じのとおりです。例えばドイツなどがEU代表に,「賛成と言っているけれども,誰にどういう権利を与えるのか」と聞いていましたが,EU代表部は,きちんと答えられませんでした。そういう状況ですので,この表からEU全体が賛成であると御理解いただくと,間違いになります。

また,インドに?マークが付いていますが,ここは横に3つともバツのはずです。

今回のSCCRはイギリスのEU離脱や,アメリカの大統領選がありましたので,公式な発言自体がすごく少なかった会合でした。また,本国のマンデートを持ち,いざというときに1票を投じられるような代表者も,多くの国で来ていなかったことから,そういう中で,サイレントの国が多かったのだと思います。

私どもももう20年,代表を派遣して参りましたが,こういう世界情勢の中での今回のSCCR33については,残念ではありましたが,想定の範囲内の結果でした。今回は,そういう会合であったということです。

もう一つ。日本政府は実はWIPOの中では大変重要な位置を占めていて,SCCR26のときに行った妥協案が,今まさに大事になっている,ということです。

日本政府は意思決定ができていないのではなくて,あえて留保して,バツの国とマルの国をつなぐことで,今後,国際貢献をしていかないといけない立場にあると思います。

もちろん国内の状況を考えますと,私どもNHKさんと一緒で,いかにネットを活用していくのかが重要な課題になっています。サイマルキャスティングの権利が将来的に立つことは重要であって,ここがバツのままでいいかということには,条約を早期に成立させるという課題に向き合いながら,別の問題意識を持っています。

まずは外交会議までの道筋をつけることが大事だ,というのが私どもの立場であり,今はブリッジ提案を維持する,そういう世界情勢なのだということを申し上げたいと思います。

長くなって恐縮です。以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。ちょっと追加の質問ですが,マルとバツをブリッジするということは,言葉では分かりますが,具体的なルールの中身ということではなくということでしょうか。もし第3の道があるということであれば,また違うと思いますが,いかがでしょうか。

【オブザーバー(田嶋様)】今は条約をなるべく早く成立させるための道筋を是非早く付けたいということです。

権利内容が不十分なものになっても早くできた方がいいということではありませんが,今このタイミングで優先すべきことは,議論の道筋を付けることです。サイマルキャスティングが必要だと日本が現時点で主張することが本当に必要だという御主張があるとすれば,仮に次回のSCCR34なりSCCR35でそのように対応したときに,誰がどう反応してくれて,今バツになっている国がマルの方に変わってくれる見込みがあるのか,ということを御説明いただきたいと思います。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。

業界と言うと何ですが,一番利害関係のありそうな方の御意見伺いました。もちろん,一つの御意見として伺ったわけですが,それ以外の方々,いかがでしょうか。今の御説明でよく分からないということでも結構ですし,御自身のお考え,あるいは日本法としてあるべき姿,様々な観点があろうかと思いますが,いかがでしょうか。どうぞ。

【梶原委員】サイマルキャスティングのところですが,やはりバツの方で合意されても余り意味を成さないのではないかと思っています。早期成立は大事だと思いますが,早期成立しても,サイマルキャスティングは保護しなくてもいいということになると,インターネットが世界中に広がっている中で,保護する国もあり,保護しない国もあるということだと,条約として,その実効性の点で大きな問題があるのではないかなと。やはり日本政府としては,早期成立も大事でしょうけれども,少なくともサイマルキャスティングについてはマルの方向(義務的保護)で議論を進めていただく。バツの国があれば説得していただくということが必要じゃないかと思います。

【道垣内主査】ありがとうございます。ほかの方,いかがでしょうか。上野委員,お願いします。

【上野委員】2点お伺いします。1点目は事務局に対して,先ほど田嶋様からも御意見ございましたが,国際情勢の認識がかなり政府と異なるように思いました。きょう御報告いただきました資料1-1の中では,そして先ほどのお話によりますと,サイマルキャスティングについて義務的保護とすることに反対する意見は出なかったとのことでしたし,また,一部の国については最終的な態度を留保したところ,その国は,議長から,次回この点に関する回答をするよう求められたということでした。ここにいう「一部の国」に日本が含まれることは明らかだろうと思いますが,日本と同様に,この点に関して態度を留保した国がほかにあるのでしょうか。これはもちろん「表向き」のことにはなるかと思いますが,そのような国がほかにあるのかどうかについて,お伺いできればと思います。

2点目は,田嶋様にお聞きしたいことがございます。これまでの日本政府は,サイマルキャスティングに関して任意的保護を提案してきたというのは確かですし,それは条約の早期成立を期待してのことだったというのもそのとおりだろうと思います。しかし,妥結できないまま20年近くもたってしまったということですから,日本が先のような立場をとり続けたことによって実際に議論の筋道が立てられたのかというと,これは疑問と言わざるを得ないように思います。

日本が任意的保護を維持する理由が放送条約の早期成立だといたしますと,先ほどご指摘のあったようなEU加盟国やインドが,もしサイマルキャスティングの任意的保護にこだわらないというのであれば,日本も任意的保護にこだわらない方が条約の早期成立に資することになるように思います。したがいまして,もし結果として早期妥結に資するのであれば,民放連さんとしても任意的保護にこだわらないお立場だと理解してよいものでしょうか,ということをお伺いしたいと思います。

以上です。

【道垣内主査】まずは事務局の方から。

【小林国際著作権専門官】1点目の御質問,一部の国が留保したということですが,こちらについて留保したのは日本のみであったと理解しております。

【道垣内主査】田嶋様,いかがでしょうか。

【オブザーバー(田嶋様)】

御質問ありがとうございます。公式,非公式ということで言うと,私の勝手な想像ですが,この表は公式な発言だけで作られている。それはお立場がありますから,そういう資料であろうと推察するわけです。

私どももようやく現地で,それぞれの立場で,それぞれの国から,いろいろな話を聞きますが,私どもの認識としては,このマル・バツの表のとおりではないと思っております。見解の相違ということであれば,それ以上の御説明はかないません。直接現地で聞いてきた話として,私どもがマル・バツを付けると,こうはならないということだけ申し上げております。

それと,日本がどっちか。委員御案内のとおり,任意規定,任意で国内法で手当てしていいよという提案を出していることが全体の進行を妨げているのかという問いには,水掛け論にしかなりませんが,ここでサイマルキャスティングを義務すれば本当に議論が進むのか。どういう根拠で,そういう御意見をお持ちなのかということを逆にお聞きしたいと思います。

私どもも条約が早く成立さえすればいいとは申し上げておりません。当然,中身が大事です。保護の内容は21世紀レベルであるべきだと思いますし,サイマルキャスティングの保護が含まれていない条約ができることは残念としか言いようがありません。しかし,そのことは,運動論として今すぐ考えることではないと思っております。

条約のあるべき姿の議論であれば,サイマルキャスティングが義務であるべきだと思います。将来的に日本がサイマルキャスティングの保護を義務化することで主張していく,という方針を,あらかじめ決めておいていただくことはいいかもしれませんが,しかし,運動論として,次のSCCR34のアクションをどうするのかは,別の議論としてやっていただければと思います。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございました。野口委員。

【野口委員】すみません。非常に初歩的なお話で恐縮ですが,私の頭の整理のために事務局にお伺いします。資料1-3の表を見ますと,この伝統的放送機関が行うインターネット上の放送,左3つの一番下の日本法の欄には全てバツが付いておりまして,私の理解では日本法は,まだここは保護されていないという意味のバツかと拝見をしました。

一方,こちらの資料1-2を拝見しますと,ⅢのRIGHTS TO BE GRANTED/PROTECTIONという欄の(1)が,サイマルや異時ウェブキャスティング,オンデマンド送信を定めているのかと思います。(ⅰ)でBroadcasting organizations shall have the right to authorize or prohibit …サイマルキャスティングとか,異時キャスティングとあり,放送機関が自分の放送について,いかなる方法によっても同時に再送信することをオーソライズし,又は禁止する権利を有すると書いてあります。

これは現在,放送事業者が持っている著作隣接権の送信可能化権ですとか,再放送権,有線放送権,テレビジョン権等ではカバーされていない何か差分があるという意味なのか。何か非常にそもそもの議論で恐縮ですが,教えていただければと思います。

すみません。

【道垣内主査】よろしいですか。

【小林国際著作権専門官】御質問ありがとうございます。御質問の件ですが,議論,2つポイントがございまして,どのような支分権を与えるかという議論。今,野口委員がおっしゃったような,Ⅲに書かれているようなRIGHTS TO BE GRANTEDというところにつきましては,どのような支分権を与えるかという議論がⅢでなされております。今申し上げているサイマルキャスティング等の保護につきましては,それとは別途,どのような信号が保護対象となるかという議論をしているところでございまして,具体的に資料1-2の対応する部分としましては,ⅡのOBJECT OF PROTECTIONというところの(3)にございます,どのような信号が保護の対象となるか。いわゆる伝統的な放送が保護されていますが,その伝統的な放送に加えて,インターネットのサイマルキャスティングについても保護対象とするかどうかという議論を,このⅡのところでされているところです。

ですので,日本法でバツ・マルというところですが,今,野口委員がおっしゃったことは,資料1-3の表でいいますと右から3番目の放送の再送信権というところ,受信した放送のインターネット上への送信に対する保護という,こちらが英文の資料1-2のⅢのRIGHTS TO BE GRANTEDというところに対応し,こちらについては日本法でもマルとさせていただいています。

【野口委員】ありがとうございます。整理をさせていただきますと,同時再送信で,放送で送信されているものと,インターネット上で送信されているものの信号のクオリティーが違ったりした場合に,それぞれの信号について独立に,別々に保護されるかという問題でしょうか。例えば,事務局の整理によりますと,現状で放送をテレビ局がしたときに,誰か悪い人が勝手に受信をして,インターネットで流しているとした場合に,そこの部分を保護されていないという理解ということでしょうか。すみません

【小林国際著作権専門官】サイマルキャスティングについては,国内の著作権法上は放送ではなくて自動公衆送信ということなのかと思います。著作権としての保護はもちろん,コンテンツとして,著作物としての保護は与えられるかと思いますが,放送事業者に隣接権としてサイマルキャスティングについては現状ではバツということなのかなと理解しております。

【道垣内主査】野口委員,どうぞ続けてください。私もよく分からないところがありますので。

今の第三者側が受信したものを送るという話とは別に,放送局自体がする話の方がビジネスとしては新しい話なのではないかと思いますが,電波で流れているものと同時にケーブル,インターネット等で流す場合,その扱いが違うということですか。

【小林国際著作権専門官】そうですね。こちらでバツというのは,現行法の著作隣接権の部分で放送事業者が保護されているのは放送の部分であって,サイマルキャスティングについては,現行法上は放送に該当しないということを意図したものでございます。

【野口委員】

テレビで,いわゆる放送の電波で放送されているものと,サイマルキャスティングによってインターネット上で放送されるものが全く同じであれば,事実上その放送で使っている方の隣接権で,今でもある程度カバーされているのかなというようなイメージがありましたので,お尋ねです。

【道垣内主査】どうぞ,よろしくお願いします。

【梶原委員】これは,あくまでも隣接権の話です。たまたま今,NHKでは同時配信の実験をやっています。今,私のスマホだと,多分,無線で来る放送電波で番組を見ることができますし,通信で流れてくる放送番組も見ることができます。今は無線については,それを第三者が送信可能化した場合には権利があると。ただし,インターネットで流れてきたものを第三者がインターネットで流した場合は,権利がない状況です。そこの部分を,多分,放送条約の中で世界の多くの国は,そこも保護してほしいということですけれども,日本では今,保護されていない。放送条約でどうするかということの議論かと思います。

【野口委員】わかりました。どうもすみません,ありがとうございました。

【道垣内主査】どうぞ。鈴木委員。

【鈴木主査代理】すみません,ちょっと細かい事実関係について,事務局にお尋ねします。先ほど,EUの加盟国の間で意見がばらばらというお話があったので,その関連でお聞きします。EUは,この条約の交渉において,WTOのようにEUとその加盟国それぞれが締結をしようということでやっているのか。あるいはEU単独でメンバーになろうとしているのかというのは,何か情報があれば教えてください。

【小林国際著作権専門官】御質問ありがとうございます。その点について現状,事務局として情報は持っていませんが,EUにつきましては,現状,発言をするとき等には事前にEU内で議論をして調整をした上で出しているものと認識しておりますので,EU代表部の発言はEUを代表した発言だというのは理解しております。

ただ,その御質問に直接お答えできなくて申し訳ございませんが。その条約に加入するときに,EUとして加入するのか,個別に加入するのかという点については,申し訳ございませんが,情報は持っていません。

【道垣内主査】どうぞ,上野委員。

【上野委員】先ほどサイマルキャスティングの義務的保護に関する質問をさせていただきましたが,ほかの委員から特にご意見がないようですので,私の意見を申し上げておきます。

現状については人によって認識が異なっているのかもしれませんが,先ほどの事務局の御説明と,私の見る限り,サイマルキャスティングを条約上の義務的保護対象とするかどうかという点につきましては,最近では,義務的保護とすることで国際的な議論はまとまりつつあるように見えます。従来,日本とインドが義務的保護に反対してきたわけですけど,そのインドも,今回のみならず前回からすでにサイレントになっているようであります。そうすると,サイマルキャスティングを義務的保護とする国際的コンセンサスの形成を依然として妨げているのは,ひょっとしたら日本だけかもしれない,とさえ感じております。

放送のサイマルキャスティングがますます一般化してくるであろう将来のことを考えますと,わざわざ条約を作る以上は,この点について義務を課さないというのでは,その意味が大きく損なわれてしまうのではないかと思います。

先ほど田嶋様からも,早期妥結の観点からは義務にしない方がいいけれども,少なくとも次のステップとしては,サイマルキャスティングについても義務的保護であるべきだというお話がありまして,これは非常に重要な御発言だったと思います。

そうだとしますと,日本政府といたしましても,今後の国際的な議論においては,義務的保護に反対する姿勢にこだわり過ぎて,――これを抵抗勢力と言ってはいけないかもしれませんが――,国際的なコンセンサスの成立を妨げることは避けるべきではないのでしょうか。今から日本提案を撤回するというのはさすがに難しいのかもしれませんが,もともと早期妥結のための提案だった以上,私はそれも選択肢になると思います。いずれにしても,今後,そのあたりの最終的な国際情勢の見きわめについては政府に委ねる方がいいのかなと私は思います。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。田嶋様,どうぞ。

【オブザーバー(田嶋様)】オブザーバーが何度も申し訳ありません。現状認識については見解の相違がございます。日本政府がサイマルキャスティングの義務化についてWIPOですぐさま対応することは,私どものこの20年の努力を,大変言葉が過ぎますが,台なしにしてしまうものですので,やっていただかないようにお願いいたします。

以上です。

【道垣内主査】分かりました。ちょっと私から伺います。日本法の改正の問題は本来,法制小委の管轄事項ですが,それについて日本が立法的措置をとっていないのはなぜでしょうか。放送の定義について,日本法を変えることはできなくはないと思います。それをしていない上で条約対応と言われても,外から見て,よく分からないのではないかと思います。何か理由があるのでしょうか。その事情を御存じの方からご説明頂けますか。そういう要求をしていないからでしょうか。

【梶原委員】当然,我々としてはしていただきたいのですが,多分,放送の定義,法定義付け,自動公衆送信権ができたときに,その同時配信については,放送の方ではなくて,自動公衆送信の方に,日本の場合,定義付けてしまったということだと思います。

諸外国の多くは,いわゆるライブキャスティングみたいなものは放送という定義をしている国もありますが,日本の場合は,自動公衆送信権の方に定義付けています。とにかく伝送手段の違いによって,日本の場合は著作権を分けたということだと理解しています。

【道垣内主査】いや,現行法はおっしゃるとおりだと思いますが,その無線という言葉を削除して,何かもう少し説明的に,サイマルキャスティングを含むような定義に変えてほしいという要望はないのでしょうか。今さら言っても,もう通らないから言わないということですか。

【梶原委員】いや,少なくともNHKの方は,文化庁さんにはそういう要望を出しています。

【道垣内主査】そこが通らないにも拘わらず,国際的な場ではそちらの立場をとるということはどうなのでしょうか。条約ができたときには入りますが,条約がない限り,国内法としてはそうしませんというのでは,何か説明がよく分からない。日本としても,もちろんそうしたいし,ですから条約もそうしてほしいし,そうすれば日本も入りますよと,いったようにセットになっていなくておかしいような気がします。その条約ができたら改正しましょうと,そういう方針なのでしょうか。それは何か外圧というか,黒船がないと改正できないみたいな話で,TPPと同じような話です。必要があるのであれば,日本としてもやるべきではないかと思いますが,国内法としては,そんな議論にはなっていないのでしょうか。隣接権を拡大することについて嫌がるというか,利害の対立があって,そう簡単ではないと。であれば国際的にも簡単ではないですよね。その立場を日本としてとるということを決めることについても簡単ではないように思います。

この場でも,いわゆる理論的に反対だという方,それは好ましくないという御意見もあるのでしょうか。すみません。私はそのあたりの事情が分かっていません。

【上野委員】そもそも日本ではテレビのサイマルキャスティングが,今まで,それほど行われていなかったからかも知れませんね。しかし今後,放送事業者がサイマルキャスティングをやるようになるのであれば,サイマルキャスティングされた信号も著作隣接権で保護してほしいというご要望が具体的に出てくるかと思います。そして,先ほどの梶原委員のお話によれば,今までにもご要望はあったのかもしれません。

もし,日本法でサイマルキャスティングされた信号も著作隣接権の保護対象にするとなると,「放送」の定義を変更して,少なくとも,放送の同時再送信,サイマルキャスティングを「放送」に含めるか,あるいは,「放送」の定義は維持したまま,放送事業者の著作隣接権の対象に,放送だけでなく,サイマルキャスティングされた信号といったようなものを加えるということになるかと思うわけですが,なかなか大きな改正になりますので,こういった国内の立法論を進めないと,条約の議論ができないというものでは必ずしもないように思われます。

ちなみに,条約の場合,他国において,条約が定める保護を日本の放送事業者が受けられることになるわけですから,一般論として,日本の放送事業者にとっては,義務的保護にした方が,条約上付与される権利が増えてプラスになるわけですから,本来はそういう議論になるはずのものではないかと私は認識しております。

以上です。

【道垣内主査】それは,しかし日本でも保護してあげなきゃいけなくなるので,同じことではないかと思います。条約があれば実現できるのであれば,条約がなくても,すべきことはすべきではないかと思います。そうではないのでしょうか。それは受け入れられない,それは自分たちの利益に反するという方がいらっしゃるのですか。事情が分からない人に分かるように説明していただける方がいらっしゃれば,お願いしたいのですが。ありがとうございます。

【オブザーバー(田嶋様)】直接のお答えにはなりませんし,もう釈迦に説法でございますが,放送は著作物や実演やレコードを乗せている船でありまして,放送の隣接権は,まさに海賊から船を守る権利でございます。乗せている,お預かりをしている荷物。一つ一つの著作物とか,レコードとか実演を,荷物扱いして恐縮ですが,それらを安全に運ばせていただくために,皆さまが放送の保護が必要だとおっしゃってくださる枠組みの中での権利です。著作権や,ほかの隣接権の権利者の皆さんのように,権利が直接的にマネタイズできるかというと,状況は変わってきましたが,まだビジネス上の状況も違うように思います。

私どももインターネットに出ていくようになりますので,権利が直接マネタイズできるようになるかもしれません。しかし,前提としては船を守ってくださいという話でありますので,関係者の皆様のなかにも,放送事業者の隣接権が強くなることそのものについては,そんなに御異論がないのではないかと勝手に思っているところです。

それと主査がおっしゃいますように,国内でどうするのか。国内の保護のレベルが低いのに条約で求めていくのは,おかしいじゃないかという御議論は,そのとおりのように思います。資料1-3の表で,日本法の固定後の権利のところが固定権,複製権と書いてございますが,21世紀レベルのこの部分,インターネット周りの固定後の権利についての在り方については,かねてより著作権課にお願いしてきている事実もありますので,国内的な議論も活発にやっていただくということについては歓迎を申し上げたいと思います。

以上です。

【道垣内主査】これ以外の論点についてでも結構です。あるいは今の点についてでも結構ですが,いかがでしょうか。

30分時間をとっていると冒頭申しましたが,もうその時間は恐らく過ぎていると思いますので,これ以上なければ。なかなかまとめることは難しいので,私はまとめませんが,文化庁として,どういう意見が出たのかということは議事録も精査していただいて,5月の会議では,日本はどうするのかと直接聞かれるのではないかと思います。宿題を与えられているのだと思いますので,言葉を濁すというのは余り適当ではないと思います。

この条約作成は十分遅れているので,今さら急ぐといったって,どうしようもないぐらい遅れている話なので。ここについて柔軟な対応をとれば早期の条約完成に結びつくかというと,そうとも思われません。もう少し,少なくとも横棒じゃなく,少なくとも三角ぐらいに,あるいは薄い丸かもしれませんし,よく分かりませんが,きょうの議論を参考に態度を決めていただければと思います。よろしいでしょうか。

それでは,議題の第2の諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策についてというところに入りたいと思います。この部分については,事務局によるイントロダクションの後,株式会社三菱総合研究所の福島様から御説明を頂き,その後,委員の皆様に御意見頂きたいと思います。それでは,よろしくお願いします。

【野田海賊版対策専門官】事務局でございます。まずは趣旨を御説明申し上げます。本調査につきましては,デジタル・ネットワーク社会の発展,あるいはスマートフォンの普及などに伴いまして,インターネット上においても音楽・アニメなどコンテンツが容易に視聴できるようになった一方で,同様に海賊版も世界規模で流通してしまっているという状況でございます。また,著作権侵害の深刻さにつきましては,ますます,これが深刻になってきているという状況でございます。

その上でもって,この流通手段ですが,より巧妙化,複雑に変化してきております。例えば,これまではDVD等のフィジカルであった海賊版が,日本のユーザーに流通している。これ,日本のユーザー向けに作られた海賊版コンテンツが,実は国外にサーバーが設置されている状況ですとか,あるいは運営者が日本に所在していないといった例などが指摘されているところでございます。また,その侵害対応につきましては,各権利者様で行っておりますが,その状況が非常に難しい状況,これは顕在化している状況です。

こういった状況を踏まえまして,その対応策の強化について検討を行うべきということが考えられておりますけれども,その一方で,対応策強化の導入に当たりましては,インターネットの利用が過度に阻害されないように,そのバランスに留意することが求められている状況でもございます。

このような状況を踏まえまして,本調査では,諸外国におけますインターネット上の著作権侵害対策について調査を実施しまして,今後の我が国における著作権侵害対策に係る検討に貢献するといったことを旨としております。

この調査におきましては,7月の技術審査を経まして,三菱総合研究所様に委託をして実施しております。いまだ調査は途上でございますけれども,本委員会におきまして報告,状況を共有させていただくとともに,先生方におきましては御議論を賜りたいと考えております。頂いたコメントを踏まえまして,今後の調査に反映させるとともに,調査そのものを完了させていきたいと考えているところでございます。

それではまず,調査を実際に行っております三菱総合研究所様より報告をお願いいたします。

【三菱総合研究所(福島)】

三菱総合研究所の福島と申します。今回は諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策調査ということで調査をさせていただきましたので,その結果について概要を報告させていただきます。

今回は複数の国を調査させていただいていることもあり,発表時間は限られておりますことから,各国について調査結果の概要を御報告させていただいた上で,各国の制度の比較を御報告させていただきたいと思っております。

開いていただきまして,調査目的のところが4ページ目になりますけれども,先ほどの文化庁様から御説明いただいたとおりですので,こちらについては割愛させていただきたいと思います。

次のページ移っていただきまして,調査内容を御覧いただければと思います。5ページ目になります。

今回の調査ですが,アメリカとカナダ,あとオーストラリア,イギリス,フランス,ドイツ,スウェーデンの7か国を調査対象とさせていただきました。

調査に当たっては,インターネット上の海賊版流通を防止するための手段に着目して調査をしております。

この表に挙げられているとおりではございますが,まず一般的に利用されているウェブサイトの削除,アプリの配信停止のほかに,ブロッキング等のウェブサイトへのアクセス制限,検索エンジン結果からの海賊版コンテンツの削除,また広告の配信停止などの海賊版サイトの資金源をどう止めるかという対策。またスリーストライク制度に代表されますが,個人のインターネット接続の停止。あと,スリーストライクとちょっと近いところもありますが,通信事業者と権利者団体が協力して,簡易に著作権侵害者に対して警告を送る仕組みを作っている例がありますので,そのような仕組み。また再犯者に対して罰則を強化することなどがあるのではないかということで,これらの手段を対象といたしました。また,これ以外の手段もあるだろうということで,その他の手段についても併せてヒアリング調査を行うという形をとっております。

また,調査の際,これらの対応策は,法制度には必ずしもよらないだろうということで,民間での自主的な取組も含めて調査をするということで行っています。

次の6ページ目に行きまして,調査手法でございます。調査に当たっては,こちらに挙げておりますが,弁護士事務所若しくは調査会社を通じて弁護士,法学者,権利者団体等にヒアリングを行い,それによって取りまとめているということになります。

具体的な内容に入りますが,8ページ目でございます。こちら比較表ということで,今回の調査結果の概要を,まず一覧にしてみたものになります。各手法について,何らかの制度がある場合には法律を記載しております。また民間が自主的に取り組んでいる場合,その場合には何らか協定書があったりとか,自主憲章があったりすることがありますので,ある場合には,それを書いております。そういうのがなく,単純に,ただ協力関係にあるであるとか,若しくは個別企業がやっているような場合については,自主的な取組という書き方で書かせていただいております。

全ての枠が埋まっているという国はなかなかありませんが,どの国も大体複数の手法を活用して対応している状況でした。

具体的に各国の対応について御説明させていただきますが,まず9ページ目を御覧ください。アメリカについて,こちら概要をまとめさせていただいております。

アメリカについて,全体的な傾向としては,インターネット上の著作権侵害についてはセーフハーバーの仕組みによってNotice and take-downを利用していることが多いとされています。

ただ実際には,大もととして,まず差止めができるという話があり,具体的な手法としては,ウェブサイトの削除,アプリの配信停止であるとか,ウェブサイトへのアクセス制限,検索結果からの削除については差止めができる。その差止めを前提として動くということになります。

なお,アクセス制限については,調査をした専門家から可能とコメントをもらっておりまして,また2002年に訴訟を提起したということもありますが,判例としてアクセス制限をしたという例がありません。そういう意味では,これが実際にできるかどうかについては,まだ分からないということで,右側の欄に実例なしと書かせていただいているというものになります。

検索結果の削除とウェブサイトへの削除については,実例は複数あるということと,また実際にはNotice and take-downの方がほぼ利用されているということで,Notice and take-downの実例が多数あるということでございます。

また資金源対策については,決済事業者がセーフハーバーの対象となるかどうかについて判例上はっきりしていませんが,大手の決済事業者は独自に通知を受け取る仕組みを用意して,通知を受けたら海賊版サイトへの決済を止める試みを行っているということで,それがよく利用されておりました。

また個人のインターネット接続の停止について,こちらも差止めで行うことができることになっておりまして,繰り返し侵害をしている場合については行うことができるということになっております。

また,簡易な警告システムと書かせていただいております。これは権利者団体とISP団体の協力によって,ここではCopyright Alert Systemというシステムを構築していますが,著作権者が著作権侵害している者のIPアドレスを見つけて,それをISP事業者に通知する。その後ISP事業者が当該IPアドレスを利用している者に対して警告書を送付するということで,権利者が侵害者を特定せずとも連絡することができるということで,リーズナブルに警告を送ることができる仕組みとして利用されています。

また,この警告システムを利用することによって,警告を送っても,再度また侵害をしていることが分かれば,次に訴訟につなげやすい,その証拠にもなるということで使われている仕組みになります。

また,その他の取組として,ドメインの差押えということが行われておりまして,これは刑事的な手続になりますけれども,NIPRCCという機関,こちらが捜査をしてドメイン差押えを行う仕組みもあります。

次にカナダに行きまして,10ページ目。カナダについては,ウェブサイトの削除,アプリの配信停止等につきましては著作権法で行うことができるとなっております。同じ法律においてNotice and take-downも行っております。

また検索結果からの削除についても法律上行うことができるとなっていますが,著作権者に生じている被害と検索エンジン事業者が負うことになる負担を比較考慮した上で判断するとされております。

実際に実例があるかという話で聞いてみましたが,こちらについて,まだ法律ができてから,そこまで時間がたっているわけでもなく,まだ判例としては存在しないと回答が返ってきておりますので,できるけれども,まだ実例はないということになっております。

カナダについては簡易な警告システムを法律上作っているというところになります。2006年頃から自主的な取組としてはやっていましたが,それを法律にする形になりまして,Notice and Noticeという言い方をしており,ISPに警告とIPアドレスが送られてくると,ISPが転送する形をとっているということです。

これは何回もできますが,Noticeを何回も送って,結局犯罪が続けられている場合にも,罰則はない状況です。ただし,もちろん何回も著作権侵害しているということをもって訴訟にすることは可能になります。

次にオーストラリアについては,こちらも各国と同様にウェブサイトの削除,アプリの配信停止については差止めとして行うことができるということになっておりますし,実例としても多くあります。

アクセス制限については,昨年の法改正によって導入されています。こちら,国外のサーバーに蔵置されている場合に限り,ウェブサイトのアクセス制限,ブロッキングができるとされております。

現状では,まだ判例がありませんが,現在,音楽業界と映画業界と,あとオンライン,ウェブTVの業界で,それぞれ訴訟を起こしているということで,近いうちに判例が出るだろうと,先方からは聴取しているところです。

検索結果からの削除のところを自主的取組と書いておりますが,こちらは大手の検索事業者の方で対応しているということで書かせていただいております。

個人のインターネット接続の停止については,ISPサービスが提供するサービスを利用して著作権侵害を行っているユーザーがいる場合に,ISPの判断でユーザーのアカウントを停止することができるとは法律上整理されているということで書かせていただいております。

ただし,これは訴訟にはなっていますが,実際にアカウントを停止された実例はないということになっております。

また簡易な警告システムのところ,まだバツとなっておりますけれども,これはアクセス制限を作るときに一緒に議論がされております。ただ,実際のところ,アクセス制限がまず認められたということで,アクセス制限対策の効果についてまず様子を見ようということになって,こちらの簡易な警告システムの仕組み自体は,まだ動いていないという状態になっております。なお,これは2017年の4月以降に再度議論が開始されると聞いております。

引き続き12ページですが,一旦まずEUについて簡単に整理をさせていただいております。というのは,このイギリス以降の欧州の国については,EUの制度を大もとにしていることも多いので,簡単にEUについて御報告させていただきます。

EUについて,今回のAからHまで作っていた手法に関係するものとしては,A,B,C,Dに関係するものが現状Directive等であるのかなと考えております。

まずウェブサイトの削除,アプリの配信停止につきましては,E-Commerce Directiveの方でNotice and take-downの手続が定められており,こちらが各国で導入されているということでございます。

ウェブサイトへのアクセス制限につきましては,InfoSoc Directiveの方で,構成国は著作権者が著作権若しくは関連する権利を侵害するために第三者によって利用されている媒介者に対して差止め命令を申し立てる立場にあるようにしなければならないということで整理がされています。

こちら,ウェブサイトへのアクセス制限と検索結果からの削除につきましては,同じInfoSoc Directiveが関係しています。

また資金源対策につきましては,IP Enforcement Directiveの方で現在議論がされていると聞いております。

こちらについて,詳細を13ページ目から書かせていただいております。これはE-Commerce Directiveについてですが,こちらはNotice and take-downの定めでございますので,大体皆様御存じだと思いますので,割愛させていただきたいと思います。

14ページ目,こちらInfoSoc Directiveになります。先ほど申し上げたとおり,効果としては,8条の3の規定においてISP事業者に対して海賊版コンテンツ掲載サイトのアクセスブロッキングを求めることができるようになります。

またもう一つが,検索エンジン事業者に対して,海賊版コンテンツ掲載サイトを,検索結果から削除するように求めることができるということで,媒介者が,その検索エンジンやISP事業者に当たるということが基礎となっているということでございます。

続きまして15ページ,資金源対策になります。IP Enforcement Directiveの中で,現在follow the moneyアプローチという言い方をされているんですけれども,海賊版サイトの資金について,どこからお金が回っているのかというところをどう規制するかについてのアプローチ,それをどう遮断するかについてのアプローチをちゃんとやっていこうということが,議論がされております。

現在,これについて,2014年,15年とずっと議論がされておりまして,2015年12月から公開協議も開始されているところでが,我々の把握している限りでは,まだ改正法案が提示されていないというところです。

ただ,これに並行して,EU委員会と関係者によって覚書が締結されるということも起こっております。Directiveを作る前に,まずEU委員会で自発的な合意ができないかということの動きがありまして,2016年3月,広告主,広告事業者,権利者,消費者団体等が会談を実施した上で,2016年10月21日に“Follow the money”approachの枠組みに合意するということが起こっております。

合意された指針によると,この覚書にサインした団体は,著作権侵害コンテンツに対して広告が配置されないようにする義務を負うということになっております。

このような動きも踏まえまして,ではEUの各国ではどうなのかということです。16ページ目ですが,イギリスについては,ウェブサイトの削除,アプリの配信停止については差止めで行うことができます。

ウェブサイトへのアクセス制限につきましては,著作権法の中で裁判所の命令を得ればウェブサイトへのアクセスを遮断することができるとなっております。こちらは結構実例も多く出ていると聞いています。

一方で,裁判所を通さない方法で簡単にできるようにしたいというニーズもあり,Digital Economy Actにおいて,行政命令でアクセス遮断をできる規定がつくられています。法律上はまだ生きていますが,施行令が出ていないという状況になっており,現状では利用可能な状態にありません。

検索結果からの削除については,事業者の取組として書かせていただいております。

資金源対策につきましては,ロンドン市警と広告事業者,権利者団体との連携によって,著作権侵害サイトのリスト,IWLと呼ばれていますが,リストを作りまして,これを共有し,著作権侵害サイトへの広告出稿を行わないという取組を行っております。

2013年に開始したところ,著作権侵害サイトに出ている広告が73%減少した効果があったとされており,かなり海賊版サイトに対する経済的な打撃を与えることができるということで,かなり注目されている仕組みになります。

個人のインターネット接続の停止につきましても,これもDigital Economy Act2010に規定がありますが,同様に,これも施行令が出ていないということで,利用可能な状態にはありません。

簡易な警告システムにつきましては,Voluntary Copyright Alerts Programmeというシステムを作っておりまして,アメリカなどと同様,権利者から警告をISP経由で送ることができる仕組みが整っています。

17ページ目に行きましてフランスですが,フランスについては著作権法の中で,1つの条文でかなり広範に規制ができるようになっており,ウェブサイトの削除,アプリの配信停止であるとか,ウェブサイトへのアクセス制限,検索結果の削除につきまして,同じ条文でできるようにされております。それぞれ実例があるということで,実際に実施されているということでございます。

資金源対策につきましては,広告事業者団体と権利者団体とで自主憲章を定めるという形で,広告で海賊版コンテンツ掲載サイトに誘導を行わないこと,海賊版コンテンツ掲載サイトへの広告掲載を行わないことを定めています。

また,オンライン決済事業者と権利者団体とで同様の仕組みを作る話もありましたが,そこまで至らず,現状ではベストプラクティスの共有を開始するということになっております。オンライン決済事業者対策については,今も検討が行われていると聞いております。

個人のインターネット接続の停止については,インターネット上で著作権を侵害している個人に対してスリーストライク制度があります。スリーストライク制度の中で接続の遮断をする罰則がありましたが,これは,その接続の遮断をする罰則が廃止され,今は罰金のみとなっております。

ただし,アップロードをした人に対しては有罪になったときの追加措置として接続遮断をするという定めはあります。

簡易な警告システムにつきましては,まさにスリーストライク制度が現状では警告と罰金の仕組みになっておりますので,同様に今でも警告が行われているということです。

再犯者への罰則強化につきまして,再犯の場合,課される刑罰が2倍となるという法律が,存在しております。

次にドイツです。こちらは基本的にウェブサイトの削除によって対応がされているわけですが,ウェブサイトへのアクセス制限と検索結果からの削除については,これは判例として,InfoSoc Directiveの第8条3項を適用する形で,できることにはなっています。現状で判例として,できるけれども,そのときの事例としては対象外で,これについてはブロックを認めないという判断になっていますので,実例としてはないけれども,できることになっているということです。

また簡易な警告システムにつきまして,これは2012年から13年にかけてキャンペーン的に行ったことがあるとは聞いております。ただし,現状では行っていないということでした。

最後にスウェーデンですが,スウェーデンについても,まずウェブサイトの削除,アプリの配信停止によって対処は行われております。

ウェブサイトへのアクセス制限と検索結果からの削除については,これは53b条によって行うことができるとなっています。先ほどのInfoSoc Directiveでは特に条件などは書いていなかったとは思いますが,スウェーデンにおいては,ISP事業者若しくは検索エンジン事業者が海賊版のサイトを幇助していることが条件とされておりまして,この幇助の条件を満たすことができずに,実際にはアクセス制限を認めた例がないということになっております。

検索結果についても同様で,それについても幇助が必要になります。

このときの幇助というのが,例えば普通のISPからこの海賊版サイトにアクセスしているというときに,そのISPは特に海賊版サイトに,ただアクセスを提供しているだけでしかないので,それについては特に幇助とは認められないという判断がされています。

また資金源対策につきましては,広告主をメンバーとする権利者団体がガイドラインを作っておりまして,そのガイドラインを使って,広告主が著作権侵害サイトの広告枠を買わないようにするということや,広告事業者に助言する形で対応を行っているということでございます。

あと,その他のところに書かせていただきましたが,最近ですと53a条によってドメインの没収をするということで,パイレート・ベイのドメインが没収されています。そういうドメイン没収や,若しくは53のc条,d条によって,侵害を行った可能性の高いユーザーのIPアドレスにひも付いた契約者情報を,ISP事業者から権利者に提供することを可能にする法律を作るなどをしているということでございました。

このように,今7か国分,簡単に説明させていただきましたが,比較表という形で21ページ目から作成しております。

21ページ目,ウェブサイトの削除,アプリの配信停止についは,基本的にどの国でもできるということで整理をしています。

22ページ目でアクセス制限の方を比較していますが,こちらで見ると,カナダについては制度がなく,ほかの国については制度があるということですが,実例で見ると,イギリスとフランスだけでして,ほかの国については,制度はあってもできていないであるとか,若しくはオーストラリアのように,制度もあるし,多分できると思われますが,まだ訴訟中で実例が出ていないような状況になっています。

スウェーデンについても,現在,実例はありませんが,上訴中ですので,もしかしたら認められるかもしれません。しかし現状の条件で言うと,多分無理だろうとなっております。

23ページ目,検索エンジンの検索結果の削除についての比較ですが,こちらについても,実施例がある国については,アメリカがNotice and take-downで実施していますのでアメリカがありますのと,あとフランスは,実際にその訴訟をやって確定判決を得た例もありますということで,実例があります。ただ,ほかの国につきましては,今のところ実例がないという状況です。ドイツとスウェーデンは,基本的にこれはアクセス制限と同じような条件が付いていますので,今のところ実例はないということです。

24ページ目でございますが,資金源対策です。こちらについては,法律上ちゃんと作っているというと,アメリカの連邦民事訴訟規則の65条の話でして,サイトが著作権侵害をしている,有罪であるという判決を得た後に止めるという話ですので,かなり対処が遅くなってしまうということで,実際にはNotice and take-downでやっている,Notice and take-downと類似の自主的な取組によって行っているということです。

イギリス,フランス,スウェーデンについては,この協定等に同意するところについて止めてもらうと。実際に,この協定に参加している事業者に,広告を出すのをやめてくださいという形でやっているということです。実際イギリスでは,広告が減ることで,効果も上がっているということで進められているところです。

25ページ目でが,インターネット接続の停止につきましては,現状でやっているところはアメリカで実例があります。これは繰り返し著作権侵害をしているときに,ISPが切断をすることができるということになっております。

オーストラリアについても,できることにはなっておりますが,こちらは実例がありません。

フランスも,同様です。こちらについても,判例としては見つかっておりません。

26ページ目ですが,警告システムにつきましては,これは民間でかなりいろいろなところで作っています。スウェーデンとオーストラリアでは現状でまだ作っていないというところでして,ドイツについては時限的に行ったということで,時限的には行ったが,では今後行うのかということについても,予定は今のところはないということで聞いております。

フランスとカナダが法律上行っており,アメリカとイギリスについては自主的な取組として行っているということです。

実際の警告件数については,イギリスとフランスは実際の件数を書かせていただいておりますが,アメリカとカナダにつきましては,実際の件数については公表されていなかったので分かりませんでした。

最後に再犯者への罰則強化につきましてですが,こちらは著作権法等で法律上やっていたのはフランスのみという結果でした。

以上のとおりでございます。ありがとうございました。

【道垣内主査】ありがとうございました。大変多くの情報を分かりやすくまとめていただいて,縦横に切っていただいたので,よく分かる資料になっていると思います。

皆様方から,ただいまの御説明につきまして,御質問あるいは御意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ。

【奥邨委員】すみません。私,授業がありまして,そろそろ出ないといけないものですから,ピンポイントで申し上げます。アメリカについてです。私はアメリカ以外についてよく分からないのですが。こういう資料でまとめられているからかなとは思うのですが,少し気になるところがあります。

例えば資金源対策で連邦民事規則65条となっていますが,これは,いわゆるインジャンクションに関する一般的な手続規定であって,資金源対策のための特別の根拠規定でも何でもないわけです。ですので,これを根拠規定とするのはどうなのかなというところがあります。

それから,個人のインターネットの接続の停止のところで,512の(i)が出ていますが,512条の(i)というのは,プロバイダーが免責を受けるための資格条件を決めているのであって,個人の接続を禁止できますと書いてあるわけではありません。繰り返して違反をする人の接続を禁止するプロバイダーは免責を受けられますと書いてあるだけです。

それから,私,刑事法,よく分かりませんので,間違った発言でしたら,野口先生や山本先生もおられますので御訂正いただいた方がいいかもしれませんが,再犯者の罰則強化のところです。私の理解では,アメリカでは著作権侵害に関する一定の再犯の場合は,長期懲役5年のところ10年になるということだったと思います。これ多分,アンケートの質問のが「著作権法」でと聞いているのでこうなってしまったのかもしれないのですが,アメリカの場合は罰則が別途の法律になっていますが,それは一体運用されていますので,それを前提にすべきだと思います。

この辺,この資料だからなのかとは思いますが,せっかくの資料ですので,細かなところで,ちょっと気付いたところだけ申し上げました。また御検討ください。

【道垣内主査】ありがとうございました。そのほか,何かございますか。山本委員。

【山本委員】貴重な情報をありがとうございます。質問2点お願いします。

1点は,オーストラリアのところ。ウェブサイトへのアクセス制限についての制度について教えていただけますか。ここでのオーストラリアの制度はイメージが湧きやすいので,これを例に,制度についてお聞きします。

このウェブサイトに違法物がアップされている場合,サーバーが国内にあれば,それ自身を押さえればいいのですが,ウェブサイトへのアクセス制限をやる意味があるのは,サイトのサーバーが外部,国外にあるという場合だとイメージができます。その場合には国内で,そのサイトにアクセスしようとすると,ISPも,1つのISPではなく多数のISPからアクセスが可能になると思います。

そうすると,ここでのISPに対してこういうアクセス制限ができるというのは,これ,もし訴訟をするとなると,国内のISP全部を対象にして訴訟をするということでないと実効性持たないような,そういう制度なのでしょうか。それとも,このサイトをアップしている者に対して侵害だというような判決をとれば,各ISPに対して,それを求めることができると。通知だけでできるとかと,そういう制度作りなのでしょうか。その点について,まずお聞きしたいと思います。

【三菱総合研究所(福島)】各国によってもちょっと違ってくるところはありますが,こちらについては基本的に全てのISPを訴えるという形になります。オーストラリアについては,まだ事例が出ていない,裁判の最中です。イギリスについて実際にブロックが認められたNewsBin2についての判決は,BTについて認められた判決ですが,BTだけにアクセスブロックが求められまして,ほかのISPからは行けるという状況になっておりました。その関係上,それ以降イギリスで裁判をするときには,全てのISPとまではなかなか難しいので,大手のISPは全部上げて訴訟をすることが続いているという状況になっております。

【山本委員】ありがとうございます。もう1点は,資金源対策についての,この制度作りも少し気になるところなのでお伺いしたいのですが,例としてはフランス。17ページに書いてあるところを読んでいて,具体的にどうするのかなと思いました。

広告事業者団体と権利者団体との間で自主憲章を定めて,広告で海賊版コンテンツ掲載サイトに誘導を行わないこと,それから海賊版コンテンツ掲載サイトへの広告掲載を行わないことを定めていると書いてあります。前者の方の誘導は行わないようにというのは,そうしましょうという合意だけで済む話だと思います。今度は後者の方の掲載は行わないというためには具体的な,そういう海賊版をアップしているようなところがあった場合に,広告を載せるのをやめましょうという合意をしても,それが違法だ,海賊版だということを分かっているのであれば,そこを削除してしまうことができるので,その後に広告を掲載しませんと言っても意味がないと思います。

ということは,削除される前に何らかの広告を削除するような,そういう制度がとられているのかなとイメージしましたが,これはそういうことでしょうか。ほかのところにも同様の制度がありますが,例として,ここで御質問します。

【三菱総合研究所(福島)】ここで言っている,先ほどの誘導については多分そのとおりでして,誘導するような広告をやらないということです。こちらのもう一つの海賊版コンテンツ掲載サイトに載せないということにつきましては,これ国内に限っているわけではなくて,まずはリストを作ると。著作権侵害サイトを行っているサイトのリストを作った上で,このリストに対しては広告を出さないようにしましょうというのを合意する形です。そういう意味では,国内につきましては,そのリストに載った時点で削除すればいいじゃないかという話はもちろんあるとは思いますが,それとは別に,まずそこのリストを作ったら,このリストに対しては出さないのを合意するというのが,この制度の趣旨でございます。

【山本委員】ありがとうございました。よく分かりました。

【道垣内主査】はい,どうぞ。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑です。何点かありますが,まず再度事務局への御質問になります。非常に参考になる資料ありがとうございました。この資料についての質問の1つとして,対象国を選ばれていますが,なぜこの国なのかということをお教えいただきたい。また,もし調べられていたら教えていただきたいのですが,ウェブサイトへのアクセス制限のところで,恐らく,このアクセス制限は,DNSの,ドメインネームでのブロッキングになると思います。そうすると,コピーサイトとかでドメイン名変えられた場合には避けられてしまいます。その場合の措置まで各国がどういう対応をとるようになっているのかというところまで,もし御存じであれば教えていただきたい。最後は感想めいたものですけれども,ウェブやアプリの削除,21ページのところで,アメリカは,アメリカ国内でコンテンツが表示できることが要件とされています。実はアメリカのサーバーは値段が安いこともあり,海賊版サイトによく使用されています。私が今どうにかしたいなと思っているサイトは,アメリカではリージョンブロックで見られないようになっており,他方で日本では見られる,そういうものが意外とあります。やっぱりこういう要件があると結構厳しいなと。これは感想として思ったところです。

【道垣内主査】対象国は発注者の方が決めたということですか。

【野田海賊版対策専門官】はい。対象国でございますけれども,まず1つは対策が進んでいるだろうと思われるところ,それと私どもが,それ以前に余り情報を持っていなかったところが挙げられます。そういった事々を事前に詳細に落とす際に検討した結果,この対象国となったと承知しております。

また別途,二国間協議のスキームを持っている国々につきましては,政府を通じて,そういう情報が比較的得られやすいだろうという推測もございます。

【道垣内主査】2番目の点につきまして,お願いします。

【三菱総合研究所(福島)】まずアクセス制限についてDNSか,若しくは何でブロックするかということですが,国によって,まず,そもそも使っているシステムが違うということはありまして,大体の場合はDNSを使われています。ただ,イギリスの場合は,ちょうど別のもののブロックに使っていたシステムがあるので,別のブロックシステムを使っておりまして,URLベースだと聞いております。

回避の可能性につきましては,回避が可能であるので。特にフランスとかでは,実際にブロックした結果,翌日とか翌々日とかすぐに,また大体回避したサイトができてしまっていて,結局効果がないじゃないかという批判があるとは聞いております。

じゃあ,そこの批判を防ぐための制度があるかというと,現状では聞いておりません。各国とも,そのような状況だと認識しております。

【墳﨑委員】ありがとうございます。

【道垣内主査】そのほか,いかがでしょうか。野口委員。

【野口委員】必ずしもこの調査そのもののコメントいうわけではないのですが,検索エンジンについては特にまとめられておりますし,あと資金源対策で広告についてもまとめられておりますので,御参考までに資料を御紹介させていただければと思います。弊社も検索エンジン,国によっては大きい存在感のある事業者ですので,著作権対策については真剣に取り組んでおりまして,今年度9月に,グーグルの著作権侵害対策ということで,日本語版でグローバルの取組みを御紹介しております。数字も幾つかご紹介しておりまして,例えばリクエストを頂いてからの検索からの削除に掛かる平均時間が6時間ぐらいであること,2015年9月から2016年3月までの6ヶ月間に67万件の広告を著作権侵害を理由にブロックしたこと等,幾つか成果を報告しているところございますので,有識者の皆様に御案内まででございます。

【道垣内主査】ありがとうございました。そのほか,いかがでしょうか。

【今村委員】よろしいですか。

【道垣内主査】どうぞ。

【今村委員】詳細な調査をどうもありがとうございました。大変参考になるものでございます。最終的な報告書には盛り込まれると思いますが,この実例の有無という部分では,それぞれ法制度ができて間もないものと,かなり時間がたっても実例がないものとあると思われます。そのため,それぞれの法制度ができた年などがありますと参考になるのではないかと思います。もちろん実例がないからといって,伝家の宝刀的に役に立っている制度として,実際に侵害を抑制する効果があるのかもしれませんから,どれだけ時間たっているかということが必ずしも実例があるなしの結果に結び付いているとは限りませんけれども,その制度導入年などが報告書の記載に反映されていたら参考になる点もあるかと思いました。どうぞよろしくお願いします。

【三菱総合研究所(福島)】ありがとうございました。

【道垣内主査】よろしゅうございますか。

私からも,それぞれの国で最もエフェクティブな方法はこれだみたいなことがあれば,そこは強調していただくといいのではないでしょうか。もちろん,ほかの制度とのの関連もあるので,単独で取り上げて云々することは難しい加毛しれませんが,よろしくお願いします。この調査の目的は最終的にはいずれ日本の著作権法改正にも役立てるという点ありますので,よろしくお願いいたします。

よろしいでしょうか。

それでは,2番目の議題はこれぐらいにいたしまして,3番目のその他については,こちらで用意していることは特にございません。何か,ここで特段のことがございますか。

では,事務局から連絡事項等ございましたら。

【小林国際著作権専門官】本日はどうもありがとうございました。次回の委員会につきましては,日程調整の上,追って御連絡をさせていただきます。

【道垣内主査】では,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

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