文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

日時:
平成29年10月19日(木)
10:00~12:00
場所:
東海大学校友会館
望星の間

議事次第

  1. 開会
  2. 委員及び出席者紹介
  3. 議事
    1. (1)主査の選任等について
    2. (2)国際小委員会審議予定について
    3. (3)報告事項
      1. (3)-1WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について
      2. (3)-2海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書(マレーシア)について
      3. (3)-3諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策について
    4. (4)自由討議
    5. (5)その他
  4. 閉会

配布資料一覧

第17期文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)

平成29年10月19日

【道垣内主査】傍聴の方々におかれましては,失礼いたしました。主査に選任されました道垣内でございます。よろしくお願いします。

本日は今期最初の国際小委員会でございますので,中岡文化庁次長にはここにいらしていただいております。御挨拶をお願いできますでしょうか。

なお,カメラ撮りというのは特にないですね。よろしくお願いいたします。

【中岡文化庁次長】文化庁次長でございます。一言御挨拶を申し上げます。

先生方におかれましては,大変お忙しい中,国際小委員会の委員をお引き受けいただきました。また,本日は大変足元の悪い中,御出席を賜りまして誠にありがとうございます。本年5月に取りまとめられております「知的財産推進計画2017」におきましては,2020年を見据えたコンテンツ力の強化が取り上げられるなど,魅力あるコンテンツを創造し,我が国のコンテンツを積極的に展開していく上で,著作権を初めとする知的財産を適切に保護,活用することの重要性は一段と高まっているところと存じます。

こうした中で,著作物は容易に国境を越えて世界に流通するデジタル・ネットワーク時代におきまして,著作権関連施策を推進していくためには,国際的な課題への対応が不可欠です。そのためには,国際的なルール作りへの参画,あるいは,海外における海賊版対策が必要となっています。

国際的ルール作りの参画の観点では,既にWIPOにおいてインターネット時代に対応した放送機関の権利保護に関し,放送条約の早期採択を目指して精力的な議論が繰り広げられております。そういう動きの中で,我が国といたしましても,これらに積極的に対応していかねばならないと考えております。

また,海外における海賊版対策につきましては,1つ目には侵害発生国,地域との二国間協議,2つ目には,取締りの強化,3つ目には,普及啓発活動を一体的に取り組むということが不可欠です。

このため,文化庁におきましては,中国,韓国との二国間協議や,著作権当局,あるいは,税関,警察等の執行機関職員を対象としたセミナーの開催,また,市民を対象にした普及・啓発に取り組んでおります。

さらに,今年度より二国間協議における交渉力強化のための体制強化のほかに,執行機関職員を対象とする真贋判定セミナーの実施国を拡充したところです。これは5か国を7か国に拡充したといったところです。

今後さらなる取締りの強化の要請や,著作権に対する意識の向上に尽力したいと考えております。

以上の取組を進めていくに当たり,専門家,実務家の皆様からの御意見を頂戴いたしますことは大変有用です。本委員会におきまして,こうした国際的な議論への対応の在り方,あるいは,海賊版対策の在り方等について忌憚のない御意見を頂きたいと存じます。委員の皆様方には,お忙しい中,大変恐縮ではございますが,一層の御協力をお願いいたしまして,簡単でございますけれども,私の挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございます。

【道垣内主査】御丁寧にありがとうございます。

それでは,議事の(2)でございます。本小委員会の今後の審議予定につきまして,事務局より御説明をお願いいたします。

【早川国際著作権専門官】それでは,説明をさせていただきます。

資料2を御覧いただけますでしょうか。こちらの資料は著作権分科会で御決定いただいたものですけれども,そこの1の(3)に国際小委員会を設置することが決定されています。また,審議事項といたしましては,2の(3)にございまして,国際的ルール作り及び国境を越えた海賊行為の対応の在り方に関することを審議事項として決定しています。

また,具体的には,次に参考資料の3を御覧ください。参考資料3の(3)にございますが,こちらには具体的な検討課題というのが2つ記載されています。

1点目といたしましては,著作権保護に向けた国際的な対応の在り方,2点目といたしましては,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方というのが具体的な検討課題として挙げられています。

1点目につきましては,主にWIPOの議論でございまして,WIPOにおけます著作権常設委員会やWIPO総会での最近の議論を報告する予定となっていますので,そちらについて議論をいただきたいと考えています。

また,インターネットによる国境を越えた海賊行為に対する対応の在り方ですが,こちらにつきましては,諸外国における著作権侵害の対策の実情,法的整備の状況について御報告させていただきますので,そちらについても議論をいただきたいと考えています。

以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。

今の御説明と資料の記載のとおり,分科会の決定により本小委員会に与えられたマンデートということになります。何か具体的に御意見等ございますか。このようなことで進めていってよろしいでしょうか。

では,そのようにさせていただきたいと存じます。

それでは,議事の3番目です。御報告をお願いしたいと存じます。まず,その(1)で,WIPOにおける最近の動向について,まず事務局より御説明いただきまして,委員の皆様の御意見を頂きたいと存じます。では,よろしくお願いいたします。

【早川国際著作権専門官】それでは,報告事項の1番目といたしまして,WIPO(世界知的所有権機関)における最近の動向について御報告をさせていただきます。

今回の御報告につきましては,2点ございまして,まず1点目といたしまして,5月に開催されました第34回著作権等常設委員会(SCCR)の経過概要につきまして御報告と,あともう1点につきまして,10月に開催されましたWIPOの加盟国総会の結果の概要を御報告させていただきたいと思います。

それでは,まず1ページ目,第34回著作権等常設委員会の結果の概要について御報告させていただきます。

今回の会合におきましては,これまでと同様に放送条約及び権利の制限と例外の議論が行われております。

3.の各論にございます,(1)の放送条約についての議論になります。経緯といたしましては,1998年に放送機関の権利保護に関する新たなルールの策定を目指して議題化されており,2007年以降は一般総会のマンデート,これは伝統的な意味での放送機関の保護を定めることとされていますが,これに従って議論が行われております。

今回の会合では,定義,保護の対象,及び,与えられる権利に関する統合テキスト案に基づいて議論が行われました。

続きまして,(イ)議論の概要になります。各国のオープニングステートメントが行われた後,逐条での議論はインフォーマルの形式において行われました。その議論の後に,各国からの修正提案が反映された修正テキスト案が議長によって取りまとめられまして,次回引き続き議論が行われるということになっています。

テキストに関する主な議論の内容については以下のとおりとなっています。

まず,放送の定義についての議論がございました。会合前のテキスト案では,放送と有線放送とを個別に規定する案と,放送の定義の中に有線放送を含める案というのが提示されておりました。また,いずれの案につきましても,インターネット上の送信につきましては放送の定義から除外することとされておりました。

今回の会合では,有線放送を明示的には定義せず,有線放送の保護については各国の任意とする案,及び,放送と有線放送のみならず,伝統的放送機関が行うインターネット上の送信についても放送の定義に含める案というのが,新たな提案がされています。これにつきまして,次回のSCCRにおいて議論を続けていくということになっています。

続きまして,インターネット上の送信の保護についての議論となります。脚注1にございますように,インターネット上の送信につきましては,1としてサイマルキャスティング,放送番組と同時のウェブキャスティング,2といたしまして,放送番組と異時のウェブキャスティング,3といたしまして,放送番組のオンデマンド送信,4として,インターネットオリジナル番組の送信の4つに分類しています。

まず,今回の議論におきまして,サイマルキャスティングについてですが,サイマルキャスティングを義務的保護の対象とする点につきましては,特段の修正の提案が出されず,義務的保護として議論が進んでいるところです。

次に,放送番組のオンデマンド送信につきましては,これを義務的保護とする案,任意的保護とする案,保護対象から除外する案とが併記されまして,引き続き議論が継続されることとなっています。

また,インターネットオリジナル番組の送信につきまして,会合前は保護対象外とすることでほぼコンセンサスが得られておりましたが,今回の会合におきまして,放送の定義の中にインターネット上の送信を含める提案というのが出されたことを受けまして,次回の会合においてインターネットオリジナル番組の送信を保護対象とするか否かにつきましても改めて議論されることとなっています。

続きまして,放送前の信号の保護についての議論です。こちらは保護レベルについての議論が行われています。会合前のテキストにつきまして,放送前信号の無許可の再送信に対して禁止権を与える案のみが記載されていましたが,今回の会合におきまして,放送前信号に対して適当かつ効果的な保護を与える案というのが改めて提案され,こちらも引き続き議論が継続されることとなっています。

以上が放送条約に関する議論となっています。

次に,権利の制限と例外の議題について説明させていただきたいと思います。

こちらは2005年以降議題化されています。現在のところ,図書館とアーカイブのための制限の例外と,教育,研究機関のための制限例外が議論の対象となっています。

(イ)の議論の概要ですけれども,今回のSCCRでは実質的な議論というのがあまり進まず,議長から今後の進め方に関するアクションプランというのが提案されていますが,各加盟国について,そのアクションプランの内容について更なる検討が必要であるとして,次回の会合において更なる議論をすることとなっています。また,これまで議論してきました非公式の議長チャートにつきまして,次回会合で委員会の公式文書として扱うか否かについて議論することとなっています。

続きまして,追及権に関する議論でございます。グレーディ教授により,経済的な影響分析という紹介がなされていまして,次回のSCCRにおいて分析結果の報告が行われることが決定されています。また,追及権に関して,今後の進め方についてEUやアフリカ等の国 から追及権に関する議題を委員会の常設議題にすべきであるという意見が出されましたが,これに対して,日本及びアメリカから常設議題に懸念を表明したことから,この議題に関しては引き続き常設議題ではなく,その他の議題において議論が継続されることとなっています。

続きまして,3ページ目のWIPOの加盟国総会の結果の概要について御説明させていただきます。

WIPOの加盟国総会では,著作権に関連する議題といたしまして,著作権等常設委員会,(SCCR)の経過報告と,IGC,遺伝資源等政府間委員会のマンデート更新,及び,マラケシュ条約に関する加盟国会合が行われています。

結果の概要ですけれども,SCCRの活動報告につきましては,その活動についてWIPOの事務局から報告がありまして,各国からステートメントが行われています。

放送機関の保護に関しましては,日本,EU,アフリカ,アルゼンチン等より,外交会議の早期の開催を望む声が表明されています。また,制限と例外の議論につきましては,アフリカ,イラン等が法的拘束力のある国際文書の策定を求めたのに対して,日本,EU,アメリカ等は,各国が柔軟に制限・例外を定めるべきであるとして主張しています。また,追及権の議論に関しましても,EUより追求権の議論を常設議題とすべきとの主張がありました。ステートメントの後には,具体的な内容の議論までには至らず,SCCRで引き続き議論を継続する旨の決定が採択されています。

続きまして,IGCの活動報告ですけれども,IGCにつきましては2年ごとにマンデートが更新されることとなっており,今年度はマンデートが失効する年に当たり,マンデートの更新について協議が行われました。協議では,早期の外交会議開催に向けて委員会日程の拡大を求めるアフリカグループと,それに反対する米国,EUとの間で意見が対立しました。累次の非公式協議を含めて,最終日まで議論が続けられ,最終的には2年の予算期間内で6回の委員会が開催することとなっています。

最後に,マラケシュ条約の加盟国会合につきまして,マラケシュ条約の加盟状況等について事務局から報告がありました。また,その後の各国のステートメントではマラケシュ条約の加盟国の増加を期待するという旨の発言が各国よりなされた状況です。

報告としては以上です。

【道垣内主査】ありがとうございます。

今御説明いただきましたWIPOの動向についての御報告について,何か確認したい点なり,内容についての御意見はまた後の自由討議のところで伺いたいと思いますが,御説明について何か御質問等ございますか。

では,私から質問です。このテーマは非常に長く既に議論していて,最初から関係している方が各国政府にいるのかどうかさえわからなくなるくらい長くい続いています。定義のところでずっともめているわけですが,中身の議論といいますか,例えば,ここに書いてある,権利の制限・例外とか,追及権とか,そういうところで,あるタイプの放送が入るとこうだけれども,そうでなければこうだみたいな,放送の定義にあるタイプのものが入るか否かによって中身が違ってくることが本当にあるのかどうか,を伺いたいと思います。どういう定義を前提にして次の中身の話に入っているのかがちょっとわかりません。要するに,ターゲットがはっきりしないまま中身の議論ができているわけですよね。権利義務等の中身が同じであれば,定義についてそんなにもめなくてもよさそうな気がします。

もしおわかりであれば御説明いただけますか。

【早川国際著作権専門官】20年間以来放送条約については議論が進められているところですけれども,定義についてもいろいろ議論が出ており,紛糾しているという状況は確かにそのとおりでございまして,その経緯については,各国の放送事情の違いというのと, ネットが更に進展していきまして,サイマルキャスティングだけではなく,オンデマンド,インターネットオリジナル番組の放送について事業者が実施するという状況の中で,どこまで範囲に含めるかについて各国が対立してきたという状況であります。また,定義が決まると更にその保護範囲まで決まってしまうということで,入口の段階でいろいろ議論がされているというのはそういう状況のためかと思います。

今回新提案として二つ出されたのもそういう経緯があると思われ,有線放送の保護について,任意的保護とする提案が出たというのは,その対象国におきまして有線放送の保護形態,事業形態が違う国からの提案でございますし,提案Bにつきまして,インターネット,伝統的放送機関の行うインターネットのオリジナル送信についても放送の定義に含めたいというのも,そういったインターネットオリジナル番組の放送企業が多い国からの提案であると思われます。したがいまして,その議論が揺れ動くというのは,その技術とか,その時代,社会背景についていろいろ変遷を含めた結果かと思っています。

権利制限の例外と追及権につきましては,放送条約よりも更に入口の段階で議論が続いている状況でして,こちらはまた実質的な議論というのが深まっている状況ではないという認識でございます。

以上です。

【道垣内主査】定義次第で中身が変わるかどうかというところまで詰められた議論はまだされていないということでしょうかね。

20年もたって同じ議論がずっとできるはずはなさそうな気がします。これからもまだ時間がかかるのであれば,もっといろいろ技術の変化が生ずるかもしれないので,とにかく早く決着をつけて次に進むべきかと思います。

そのほか何かありますか。どうぞ,上野委員。

【上野委員】追及権に関しまして1点御質問させて頂きたいと思います。

先ほどの御報告によりますと,前回のSCCRでは,追及権に関して,これを常設議題とすべきだという意見が,EUやアフリカなどの多くの国から出されたが,アメリカと日本がこの常設議題化について懸念を表明されたということでした。そこで,その理由はどういうものだったのか,ということについてお伺いしたいと思います。

なぜこういうことをお伺いするかと申しますと,追及権を設けるということについて,我が国がこれまで必ずしも積極的な立場をとってこなかったというのは確かですが,SCCRにおける常設議題化に,あえて積極的に懸念を表明するということについては,必ずしも議論されておらず,国際小委員会の場でもそうした意見はなかったように思います。

また,私個人的には,追及権に関しては,WIPOの場でももう少し積極的に議論を行ってもよいのではないかという考えを持っているところです。

その意味では,SCCRの場で追及権の常設議題化について懸念を表明されたことについて,政府部内でどのような考慮をなさったのかということについてお伺いできればと考えた次第です。

【早川国際著作権専門官】ありがとうございます。追及権に関しまして,我が国のスタンスですけれども,SCCRの議題につきましては,放送条約を優先的に進めるべきであるという認識を持っておりまして,したがいまして,今でもSCCR,基本的に5日間の期間ですけれども,放送条約の議論に割かれる時間が,今のところ2日になっております。その中で,追及権が常設議題となりますと,それに割かれる時間が増えるということになり,結果的に放送条約の議論にかけられる時間が減少してしまうということになり,その点を懸念として表明しております。

【道垣内主査】そのほかいかがでしょうか。

それでは,(1)についての御報告は以上にいたしまして,(2)海外における著作権侵害等に関する実態調査報告書,マレーシアについてですが,これにつきまして御説明いただけますでしょうか。

【野田海賊版対策専門官】まずは,事務局のほうから簡単に御報告申し上げます。マレーシアにおきます侵害実態報告ですが,侵害実態報告自体は平成24年度以降,毎年国を変えて行っております。昨年度はマレーシアを対象として実施させていただきました。マレーシアについて,私どもとしまして,中国,タイ,ベトナム,インドネシア等とあわせまして,権利者様からも問合せの多い,侵害規模が比較的多く深刻である国と認識している次第です。

実際に調査に当たりました新日本有限責任監査法人様,並びに,オープンフィールド様より,これから詳細に御説明をさせていただく予定です。

資料は4でございます。参照をお願いします。

それでは,新日本有限責任監査法人様,説明をお願いします。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】新日本有限責任監査法人の福井と申します。私のほうから報告をさせていただきます。

お手元の資料4を御用意ください。プロジェクターを併せて使って説明をさせて頂きますので,こちらも御覧いただければと思います。

それでは,まず3ページを御覧ください。

調査の目的と方法ですが,海外における効果的な海賊版対策の企画・立案のため,日本のオンライン型コンテンツ及びパッケージに係る著作権侵害の実態を調査,分析すること,そして,コンテンツの類型別,流通経路別の侵害規模を推計するということです。

調査対象国,地域はマレーシア全国で,調査方法によっては都市に限定して実施をしております。

調査対象コンテンツの累計は,映像としてアニメ,映画,テレビ放送番組,そして,音楽,ゲームソフト,出版物としてコミック,雑誌,書籍を対象としております。

調査対象コンテンツの流通経路については,大きく3つに分けて,オンライン流通とパッケージ流通とテレビ放送,映画館等としております。

オンライン流通については,特定事業者,運営者によるコンテンツ配信や動画投稿サイトによる流通などを対象とし,パッケージ流通については,実店舗によるパッケージ販売や,雑誌やテレビ等によるパッケージの通信販売,そして,また,ハードディスクドライブやUSBメモリ等へのコンテンツのコピーサービスなど,コンテンツ入りの外付ハードディスクドライブの販売等も対象にしております。

テレビ放送,映画館等ということで,地上波テレビ,衛星テレビ,ケーブルテレビ放送,また,ラジオやカラオケ等の利用も調査対象にしております。

調査方法については,3ページの下段にありますが,まず文献資料調査を行い,次に,ヒアリング調査ということで,日本の著作権者の方にマレーシアでの正規展開の状況や,エンフォースメントの実態についてお話をお伺いしております。その上で,グループインタビュー調査を日本とマレーシアの両方で実施しております。日本においてはマレーシアからの留学生を中心にグループインタビューを実施しております。現地のマレーシアでは店舗調査という,現地の店舗でどのようなパッケージが売られているか,書籍が売られているかということを調査した上で,メインの調査であるウェブアンケート調査を現地のインターネットユーザーを対象にして実施しております。その中でも特に人気があったサイトについては,コンテンツ流通サイト調査ということで,今回26サイトを対象に詳しく調査をしております。

具体的な調査方法ですが,ウェブアンケート調査については,3ページの左側下のオレンジの箱に記載しておりますが,実施調査対象についてはマレーシア全国を対象としています。分析においては,地域差を見るために,都市部とその他地域に分けています。都市部については,クランバレーと呼ばれるクアラルンプール連邦直轄領と,それに隣接するセランゴール州の都市で構成される地域,ジョホール・バル特別市,ペナン島市を含めております。

具体的な調査実施方法については,ウェブ調査で2段階の調査をしています。まず,アンケートAの日本コンテンツの入手経験率があるかどうかということについて,800のサンプルを性年齢別の人口構成に合わせてサンプリングをして,その上で,調査Bとして,日本コンテンツの入手経験があると回答した方を対象に,日本コンテンツ入手経験者の日本コンテンツ入手実態調査ということで,同じく800件のサンプルで調査を実施しました。

それでは,実際の調査結果概要を見ていきます。

10ページと11ページの参考資料1,2を御覧ください。

まず,日本のコンテンツの入手経験率について,各国地域別に比較をいたしました。その中で,この図表でいいますと,(1)のアニメではマレーシアと並んで日本のコンテンツの入手・視聴経験率は5割弱と高く,次に,11ページの(11)のコミックでは,マレーシアとほぼ同じ水準で日本コンテンツの入手・視聴経験率が3割と最も高くなっています。そのほかに,日本の割合が高くなっているコンテンツ類型としましては,また10ページに戻りますが,(2)の映画,(7)のオンラインゲームと(8)のスマホのゲームアプリ,あと,(9)のゲーム専用機用ゲームで,米国,マレーシアに次いで日本のコンテンツの入手・視聴経験率が3番目に高くなっているということでございます。

他国の状況を見てみますと,マレーシアは(3)のテレビ番組(ドラマ),(4)のテレビ番組のバラエティ,あと,(6)の音楽,次のページ,(12)の雑誌,(13)の書籍が高くなっています。米国については,(2)の映画,(5)のテレビ番組(ドキュメンタリー),あと,(7)から(10)までのゲーム全般についてコンテンツの入手・視聴経験率が最も高いという結果が出ております。なお,11ページの下の注に書いてございますけれども,事前のグループインタビューでは,アニメやゲーム,コミックなど,日本のコンテンツの人気が高いということが確認されておりました。ただ,ウェブアンケート調査では,オリジナルが日本のコンテンツでもマレーシア語に翻訳されて流通している場合にはマレーシアコンテンツと回答されている可能性が排除できないということで,マレーシアの数値が高く出ている可能性が考えられます。

それでは,6ページに戻りまして,日本コンテンツのマレーシア市場における流通の現状についてです。日本コンテンツの正規展開の状況については,日本の権利者へのヒアリング等を行い,映像についてはDVD等のパッケージ流通を中心に一定程度正規展開がなされているということ。あと,音楽についてはほとんど正規展開がなされていないということです。ゲームソフトについては,済みません,ここ誤植ですが,正規展開はなされています。また,雑誌,コミック,書籍については,一部正規展開がなされているものの,多くは海外からの輸入であるということが把握できました。

日本コンテンツの流通の現状の国別比較については,お手元の資料には載せていませんのでこの参考資料10,こちらのプロジェクターを御覧いただきますようお願いします。過去に調査を実施した国別の調査結果と今回のアンケート調査結果を併せて見てみます。一般市民1人当たりの日本のコンテンツの類型別,流通経路別の平均入手・視聴件数の国別比較を示しております,これらのデータについては別途,事務局からお送りする報告書の本編に掲載しています。マレーシアは他国と比べて全体的に日本コンテンツの平均入手・視聴件数が少ないという傾向が出ております。ベトナムは特に日本コンテンツの平均入手・視聴件数が多いのですけれども,これは日本コンテンツの入手・視聴経験のある人の割合がベトナム等と比べて全体的に低いということが1つの要因になっているというふうに考えられます。また,同じスライドで流通経路別に見ますと,パッケージ流通の構成割合が他国に比べて少なくなっているということです。これはマレーシアのインターネット環境の整備が進んでいることが背景にあるというふうに考えられます。

それでは,また7ページに戻りまして,著作権の認知度,正規版の意識が他国の調査結果としてどうであったかということを見ていきたいと思います。著作権の認知度につきましては,こちらもプロジェクターのみの図表でございますが,マレーシアでは9割弱,インドネシアを上回って,ベトナム,タイ,中国とほぼ同等の水準で高く認知されているということでございます。

次に,正規版の意識については,こちらのグラフでございますけれども,日本コンテンツをインターネットで入手・視聴する際に正規版であるかどうか,正規版であることを意識するかどうか,アニメコンテンツを例に比較すると,日本のアニメコンテンツに関して,マレーシアにおける正規版を意識するという割合は,ベトナムやインドネシアと比較しても低いというように見て取れます。

さらに,アニメコンテンツを例に,正規にインターネット上で日本コンテンツを入手・視聴できるようにした場合のコンテンツ1件当たりの価格について,他国と比較したスライドがこちらでございます。左側の赤線囲みの部分でございますけれども,マレーシアでは正規版でも無償の割合が他国と比較して高く,約半分程度という傾向があります。

次に,日本コンテンツの不正流通の動向について見ていきます。資料18ページの参考資料6でございますが,コンテンツ類型別の入手・視聴の侵害規模ということで,インターネットユーザーを対象にしたアンケートの回答をもとに,侵害規模の推計をしています。まず,人口規模に換算して,件数ベースの侵害規模を算出し,それをネットユーザーに換算しています。この表の上の段が全国で,下が全国ネットユーザーの数値でございます。表を見ていただきますと,侵害規模の合計は,全国のネットユーザーで年間約21億件です。特に件数ベースでアニメが多く,約9億件となっています。飽くまで参考として,金額ベースの侵害規模を表の右側で出しています。その左側の有料ダウンロード換算合計というものが表の下の注にもございます。全て有料配信と仮定した場合に,有料ダウンロード換算として推計をしています。右側の広告費換算は全て無料配信で広告収入のみと仮定した場合,広告費換算として推計し,有料ダウンロード換算合計が,全国ネットユーザーベースで約1兆2,300億円,広告費換算が約5億円と,大きな開きがあります。一部有料ダウンロードのサービスもマレーシアにはありますが,ほとんどが広告費換算なので,現状はこの右側の広告費換算の方の金額が参考になると思います。今後インターネット環境が更に整備されて,コンテンツのオンライン利用が進むということになると,この有料ダウンロード換算の数値も参考にしていけるのではないかということで載せています。

表の下に侵害規模推計に当たって,無許諾の流通とみなした範囲を示していますので,参考にしていただければと思います。

今後の侵害状況がどうなっていくかということを考えますと,マレーシアでインターネットの接続環境が更に整備をされて,PCやスマートフォンの普及が更に拡大すると,オンライン流通が増加し,それに伴い侵害も増加することが想定されます。

資料の8ページに戻りますが,今回の調査の中で,マレーシアにおける侵害状況を考える上で他国と異なる点について説明します。パッケージについては,マレーシアでオプティカルディスクについて,MDTCCという機関に申請して認可されれば,Optical Disc Labelというシールが貼られることになっています。ですから,日本のコンテンツの海賊版が申請されても,MDTCCが海賊版であると判断できないため,海賊版にもODLシールが貼られてしまって,ユーザーにとって正規品との区別ができない上に,ユーザーが海賊版を正規版と誤認して安心して入手してしまいかねない状況というのが他国との大きな違いだというように考えています。この状況が改善されない限り,海賊版を正規版と誤認するユーザーがなくならないと考えます。

続いて,資料の9ページで,他国と比較したマレーシアにおける日本コンテンツの侵害状況についてですが,これも21ページの参考資料9,コンテンツ類型別入手・視聴の侵害規模の各国比較というグラフと表を載せています。上の右側にある侵害件数各国比較の表で, 全国ネットユーザーの侵害規模で見ると,中国が最も大きく,次いで,ベトナムが多いという状況で,マレーシアが最も少ないということがわかります。また,下の左にある1人当たりの無許諾と考えられる流通経路の平均入手・視聴件数の各国比較を見ると,ベトナムが最も多く,中国が最も少ないということが見て取れます。マレーシアは中国に次いで1人当たりの平均入手・視聴件数が少ないという状況になっています。

資料の9ページに戻りまして,アンケート調査結果から読み取れる示唆ということで,特にユーザーの多くが著作権に対する認識は高いものの,それが著作権保護の行動につながっていないということが挙げられると思います。また,マレーシアのユーザーは日本の正規コンテンツに対して無償で入手・視聴したいという傾向が高いというのが他の国と比較して見てとれましたが,一定の対価は支払ってもよいと考えている人も半数程度存在しています。実際他国と比較して,正規版と意識してインターネットから入手・視聴する人が少ないというのは,先ほど申し上げましたが,そもそもユーザーが正規版かどうかの判断ができない,という状況にあること,また,インターネット上で正規コンテンツを入手・視聴できない中で,海賊版が容易に利用できる環境にあることが大きな要因であるというふうに考えられます。

最後に,4ページ,5ページで,日本コンテンツの不正流通対策の在り方をまとめています。まずは,やはり不正流通対策と正規版展開を車輪の両輪として実施していくということが必要だということです。今回ヒアリングでお伺いした日本の権利者の方によりますと,不正流通対策はいまだ十分とは言えないだろうということで,今後現地の政府当局や代理店等と協力して,不正流通対策を充実・強化していくことが必要です。また,ユーザーの著作権認知度は高いものの,実際に著作権保護の行動につながっていないということなので,著作権教育,著作権意識の啓発は効果が大きいだろうということが想定されます。ただし,ユーザーが海賊版を正規品と誤認する状況は変えていかなければならないということで,パッケージに貼られているODLシールについては,CODAさんが現地のMDTCCと対応について協議を進めているということです。

マレーシアではまだ大容量のコンテンツが十分スムーズに入手・視聴できる環境にはなっていない部分がありますが,既にスマートフォンが一定程度定着しているということと,今後も更にネット環境の整備が進み,コンテンツの流通が増加して主流になっていくだろうということが想定されます。そのため,テレビやパッケージの正規流通に加えて,特にオンラインの正規流通を強化していくことが必要であろうと考えています。

最後に,我が国政府として必要な対策としては,今後現地政府に対して著作権意識の啓発,不正流通対策を働きかけていくということが必要であろうということと,今回の調査のように,コンテンツ不正流通に係る実態把握のための調査等に基づいて,権利者への情報提供を行うということ,あと,日本の権利者の間で現地正規配信に成功した事例であるとか,コンテンツ情報の提供によって認知度や人気が高まった事例等を共有する整備を整えることで,日本の権利者がより正規展開を行いやすくすることが重要であろうと考えております。

以上,簡単でございますけれども,報告をさせていただきました。

【道垣内主査】ありがとうございました。

今の御報告につきまして,何か御質問等ありますでしょうか。

では,まず私から。MDTCCというのはお役所だと思いますが,この目的は正規品と海賊版とを区別しようということなのでしょうか,それとも,ちゃんとしたディスクだということを認証,認定することなのでしょうか。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】正規品ということを証明しようということを目的としていますが,その機関が申請書を見てもその申請を行う権利者が,日本の住所の場合,それが正規か不正かということが判断できないということで,これまでは日本の住所であれば正規であろうということで申請を受理してきたというようなことがあるというように伺っています。

【道垣内主査】マレーシア国内の人や会社からの申請であれば,その人が本当に権利者かどうかを確認してからラベルを貼っているということですか。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】そう理解しています。

【道垣内主査】外国の会社についてはそれをやっていないと,そういうことですか。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】そうですね。

【道垣内主査】このシールがついていれば市場で正規品だということが広く消費者にもわかり,少し値段が高く売れるのですか。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】そうですね。そのシールが貼ってあれば正規品だというふうに消費者は認識をしていますので,そういうものが書店やショップで適正な価格で売られているということでございます。

【道垣内主査】わかりました。ありがとうございます。何か他に御質問ありますか。

どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】今のMDTCCの件について,CODAの方が対応しているということですが,どのような対応になるのでしょうか。10年前,同じような問題でうちはイタリアで,刑事事件でローマ警察を使って権利侵害の訴訟を起こしました。イタリアでもSIAEという団体が全ての著作物,コンピュータソフト以外の著作物についてはこの管理商標みたいなものを貼って,そこで使用料みたいなものを一定取っていました。このシールが貼ってあると,故意を阻却するということで,我々としても事件化前に,そういうシールが貼ってあったとしても権利侵害の認識というか,その故意について証明できるということで,ローマ警察と組んで始めたわけです。しかしながら,結局10年たって訴訟が終わってみたら,やはりそのマークから故意を阻却して無罪ということで,誰が見ても海賊版のような商品にもかかわらず,結局このマークがあるということで,刑事手続は相当難しいということでした。そこで,このマークにどう対応するかということで,当協会も10年前にはSIAEさんと組んで,でも,1週間か2週間ぐらいの調査期間しかしないみたいなんですね。ですから,日本とチェックができないか検討しました。ネットでやったとしても1週間から10日の間に権利者に確認をして,海賊版だと証明するのがなかなか時間的な問題から難しくて,結局協会の方もそれ以後は十分注意をしてチェックしてくださいというようなやり取りのまま推移して10年たっています。このあたりについては,CODAさんは,短い期間だと思うんですけれども,どのような対応をするかというようなことについては対応策をもし知っていれば教えていただきたいと思います。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】すみません,具体的にCODAさんがどういうやり取りをされているのかということについてはお伺いしていないので,私の口からはお答えできません。一方で相当難しいということで,決定的な決め手になるようなことはもちろんなかなか難しいということで,お話をお伺いしたときに聞いたのは,結構長い時間をかけて対話を継続しているということで,そういう意味ではあまり進んでいないのではないかなというふうには想定されます。

【有限会社オープンフィールド(澤様)】関連してですが,このシールが貼られていれば捜査機関,取締機関は正規品とみなしてそのままにしておくと。逆に,本来の正規品であってもシールがないために摘発の対象となることもあるというようなことは聞いています。店舗の方から聞きました。

【道垣内主査】そのほか。今村委員,どうぞ。

【今村委員】マレーシア市場のことについて詳しくないのでお伺いします。今回は日本のコンテンツということで,日本のコンテンツに関しては,6ページなんかではほとんど正規展開がなされていないものもあるということですが,これマレーシアのアニメとか映画とかに関しては,普通は正規展開がなされていて,消費者はそれを購入しているという状況でしょうか。要するに,日本は正規輸出していない部分があるのに,その部分は入手するとしたら不正なものを買うしかないわけですけれども,マレーシアのコンテンツに関してはマレーシアでは普通に正規に購入できるのか。

少なくとも,適切な対策がなされて,かつ,日本も正規展開をすれば,マレーシアレベルぐらい,マレーシアのコンテンツが守られているぐらいのレベルまでには持っていける,いきたいというふうに思うわけです。不正なもの全部を駆逐することは難しいと思います。マレーシアのコンテンツよりも保護される状態に持っていくということは難しいと思いますが,少なくともマレーシアのコンテンツの正規展開がなされているレベルで,日本のコンテンツも保護できるようになれば,それぐらいは何とかできればというところかと思います。そもそもマレーシアのコンテンツ自体が正規流通,普通にしているのかどうか,そこはちょっと実態がわからないので,感触というか,インタビューした範囲での,わかる範囲で構いませんが,お伺いできればと思います。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】

今回のマレーシアのコンテンツについては,スコープ外だったので,具体的に正規展開がどういう形でなされているかとか,それに対してインフォースメントがどうなされているかみたいなことについては,ちょっとわかりません。ただ,パッケージについてはMDTCC が結構力を入れて取締りをやったということで,相当昔に比べると市場がきれいになったということを日本の権利者の方は,おっしゃっています。

あと,これはきちんとした裏付けが取れていませんが,オンライン流通に関して,マレーシア独自の海賊版サイトというのはありません。アメリカや,中国とか,そういうところに見にいっているわけですが,そういうところ,特定のところに対してサイトブロッキングをするということが実際なされているということで,そういった意味で,日本コンテンツ,外国のコンテンツについては対策もなされているということを伺っています。

【有限会社オープンフィールド(澤様)】若干補足です。マレーシアのコンテンツの海賊版が横行しているという話は,これまでの調査では出てきておりませんので,恐らくそれなりに正規品が少なくともパッケージについては流れているのだろうというように感触としては得ています。ただ,スコープは置いていないので,正確ではないかもしれません。

【道垣内主査】今の点追加の御質問に関連しますが,こういう制度をわざわざつくっているわけですから,正規版と海賊版が混じっているという状況があったのだろうと思うのですけれども,それはそうなのでしょうか。しかも,外国のためにやっているのだとすると,外国の著作権者のものについては簡単にシールを貼っているというのであれば,全然目的を達していないので,ちょっと今御説明の趣旨がうまくつかめませんでした。国内品で海賊版がなければこんな制度は作られないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】海外のコンテンツのためにやっているわけではなくて,国内のコンテンツを対象にしてやっているということでございます。そのときに,海外のコンテンツももちろん同じ制度に乗っかっておりますので,特に海外のコンテンツだけを対象にした制度ではありません。

【道垣内主査】それともう1点,何か急いでシールを貼ってあげているみたいですね。

1週間ぐらいしか余裕がないと今おっしゃいました。

【久保田委員】イタリアの場合ですね。

【道垣内主査】要するに,正規版であることが確認されない限りは貼らないというか,そのシールは出さないという,プラクティスにはならないのでしょうか。よくわからないときは出してあげるというプラクティスになっているのでしょうか。

【有限会社オープンフィールド(澤様)】感触としては,書式が整っていると貼られているようなイメージでございます。形式審査のような感触を得ています。

【道垣内主査】そのほかいかがでしょうか。どうぞ,前田委員。

【前田委員】質問させていただきます。正規版と海賊版との区別を認識させるということで,そのパッケージについてはこのMDTCCというところが役割を果たしているということですが,インターネット上で流通するコンテンツについて,正規版か海賊版かの認識をさせるというのはどのようにして行われている,あるいは,行われるべきだという話になるのでしょうか。そのあたりについて教えていただけると幸いです。

【有限会社オープンフィールド(澤様)】今おっしゃった部分は,少なくともマレーシアの一般のユーザーにとっては区別できていないということだと思います。それに対してどうするかというアイデアは,私どももとりあえず今持ち合わせてはいません。少なくとも現状では区別できていない。ただ,無料のものは恐らく正規版ではないだろうといった感覚はマレーシアの市民も持っている方が多いということです。あまり答えになっていないとは思うのですが,以上ということでよろしいでしょうか。

【道垣内主査】よろしゅうございますか。もう1つ御報告をいただきますので,マレーシアの件についてはこれくらいにしたいと思います。ありがとうございした。

【新日本有限責任監査法人(福井様)】ありがとうございました。

【道垣内主査】では,(3)の諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策調査でございます。これは文化庁の昨年度の委託調査でございまして,その最終結果報告書がまとまっております。この調査を実施されました三菱総合研究所様から御報告をいただきまして,先ほどと同じように委員の方からの御質問をいただきたいと思います。では,よろしくお願いいたします。

【株式会社三菱総合研究所(安江様)】

三菱総合研究所の安江と申します。よろしくお願いします。

お手元の資料と同じものになりますが,ちょっと文字が多くて見にくいので,お手元の資料で見ていただくほうがよろしいかと思います。

お時間にも限りがありますので,一部ちょっと駆け足での御説明をいたします件御了承ください。

まず,目次ですが,全体4部になりまして,調査概要につきまして,インターネット上の著作権侵害対策に関する調査と,それから,続きまして,海賊版コンテンツへの誘導行為に関する調査,最後に,各手法の導入状況ということで,各国での導入状況と評価といったものをまとめてございます。本日は4のところを中心に御説明したいと思います。

調査概要ですけれども,4ページにございますように,そこにあるAからHの手法につきまして各国でどのように導入されているのか,どのように議論されているのかということを調査しました。

調査対象国ですが,アメリカ,カナダ,オーストラリア,イギリス,フランス,ドイツ,スウェーデンの7か国でございます。

インターネット上の著作権侵害対策ということで,今挙げた手法について,各国でどうなっているかというのが2章,6ページ以降になります。

7ページがアメリカです。ちょっと字が細かくて大変恐縮ですが,各国についてこのように手法がありまして,根拠は何かということと,実施概要,それから,評価となっています。評価につきましては,最後に4章のところにもう少し詳しく書いていますので,詳しくはそちらを御覧ください。アメリカでいきますと,例えば,A.ウェブサイトの削除/アプリの配信停止について,著作権法第502条による差止めと,それから,第512条によるNotice and take-downがあります。ウェブサイトのアクセス制限については,著作権法による差し止めあるいはセーフハーバーと,それから,著作権者が実際にコンテンツプロバイダと,例えば,ユーチューブ等と契約して,侵害のあるコンテンツを表示しないようにするという契約といったような形であります。

まとめたものが,15ページにございます。これを見ますと,各国でどういう手法がとられているかといったことが一覧になっております。12月にも中間報告という形で御報告していますが,その段階からのアップデートということで言いますと,スウェーデンのBのウェブサイトのアクセス制限について,ISPが著作権法第53b条による寄与侵害に当たるという要件が必要と言われていましたが,控訴審でその規定はEUの情報社会指令の第8条第3項と合わないということで,ISP事業者が寄与侵害だという要件が無くてもブロッキングを認めるというような判決が出ています。したがいまして,ウェブサイトのアクセス制限につきましては,寄与侵害の要件なしで認めるということになります。

駆け足で恐縮ですけれども,3章です。こちらは海賊版コンテンツへの誘導行為に関する調査ということで,各国で法的にどう位置づけられているかということと,どういった手法が可能かということをまとめています。

まず,アメリカにつきましては,ハイパーリンク自体は著作権侵害に該当しないということで,特定の条件の場合に寄与侵害に該当するというふうに判例が出ています。

17ページにありますように,まず一般的にハイパーリンク自体は著作権侵害でないというふうに判示されています。

それから,侵害該当性が肯定されたケースということで,17ページ,18ページにありますけれども,18ページでいいますと,まず第三者が著作権侵害をしているということがあります。18ページで言うと真ん中辺ですね,被告がウェブサイトの閲覧者による著作権侵害に寄与したことについて,まず(1)として,ウェブサイトの閲覧者が原告の著作権を侵害したということがあった上で,被告がその閲覧者により原告の著作権侵害に寄与したということをそういった基準に従って認めたという形,これがアメリカでは一応判断されているという形になっております。

それから,19ページですね,カナダについては,著作権法第27条2.3項,2.4項,これらは2012年の改正で盛り込まれましたけれども,こちらでこういった誘導行為が著作権侵害に当たるというふうに規定されています。

判例はまだありませんが,和解事例でこちらの規定を踏襲したと言われるようなことがありまして,BitTorrentのサイトですけれども,こちらの判決の中で,この2.3項の条文を引用する形で侵害行為を認めて命令を出しているといった事例があります。

それから,オーストラリアにつきましても,著作権法で誘導行為を侵害と認めるといった規定がございます。こちらにつきましては,許諾,いわゆるauthorisationという形で,それを行った場合には著作権侵害になるということが,著作権法第101条の第1項で規定されていまして,1A項でその条件が示されております。

判例としましては,22ページのようなものです。こちらがございまして,音楽ファイル自体が蔵置されていないけれども,違法な音楽サイトを検索することができると,そういった場合についての判例でございます。

EUについては皆さん御存じだと思いますが,情報社会指令の第3条第1項の公衆への伝達ということにおいて,伝達を侵害しているかどうかで判断されています。判例としては代表的なものは3つあるのかなということで挙げています。

まず,もとのコンテンツが適法に公開されている場合,Svensson事件とBestWater事件ということで,もとのコンテンツがもともとオープンに公開されているという場合には,公衆への伝達というものを新たにやったことにならないと判断されています。

これに対して,もとのコンテンツが違法に公開されているときに,それに対してリンクを張った場合どうなるかというのが,24ページのG.S.Media事件でございます。こちらに関しては,昨年判決が出ているわけですが,24ページにございますように,ハイパーリンクの設定者がその違法性を認識していた場合,また,認識すべきであった場合には公衆への伝達を構成することになるということと,営利目的でそのハイパーリンクを設定した場合については,その違法性を認識したということが推定されるということで判断されますという判決が出ています。

イギリス以降,EU加盟国については基本的にこれが踏襲されると思いますが,それ以外の部分についてもまとめたものが25ページ以降です。

まず,イギリスですが,こちらは判例で,先ほど述べました許諾による侵害を認めた例が幾つかございます。今後はそのG.S.Media事件によるCJEUの判決を踏襲していくだろうということですが,EU脱退後どうなるかについてはまだわからないという調査結果になっています。

それから,フランスについては,直接ホスティングしていない,蔵置していない場合でも直接侵害と認められ得るという意見を法学者から頂いています。実際の判例としましては,eMuleという,これもBitTorrentの検索のソフトウェアを蔵置したサーバの話ですが,こちらについて著作権侵害を認めたという判例があります。今後はやはりG.S.Media事件の判決を踏襲していくだろうと言われております。

それから,ドイツについては,まずハイパーリンク自体は妨害者責任ではないということが言われています。先ほどのBestWater事件,これはCJEUではディープリンクをした場合,普通のハイパーリンクとの違いがあるのかという判断ですが,それを受けてドイツの連邦最高裁が判断したものがBestWater事件での連邦最高裁判決でして,こちらの場合,ハイパーリンク先のコンテンツに権利者が同意を与えていない場合には妨害者責任が成立しますという判断を示しています。

こちらについては,今後はやはりG.S.Media事件の判決ですね,CJEU判決を踏襲するとしていますが,実際昨年11月18日のハンブルグ地裁判決,そのCJEU判決に従って著作権を侵害したコンテンツ,これ写真家が撮影した著作権のある写真を改変したものを上げたものに対して,そのハイパーリンクを張った人に対して,ウェブサイト運営者に対する差止請求が認められるということで,そういった傾向も少し出ているということです。

それから,最後スウェーデンですが,ハイパーリンクが著作権侵害の寄与侵害ということで著作権を定義されていますが,その寄与の定義は刑法23章4条における幇助で判断しますよということなので,寄与侵害と認められることがありました。今後はCJEUに基づいて直接侵害であると判断される可能性があります。

寄与侵害に関する判例としましては,そこにあるPirate Bay事件というのがありますが,今後は直接侵害で判断される可能性もあるということです。

以上まとめたものが32ページです。

4章ですけれども,各手法の導入状況について,手法ごとに御説明したいと思います。駆け足で申し訳ありません。

まず34ページ,ウェブサイトの削除/アプリの配信停止ですけれども,まずアメリカの場合,実務上第502条による差止めよりは第512条によるNotice and take-downが多いということで,評価についてはこちらの方を書いております。これについて,アメリカではホスティング事業者は基本的にこの手法で良いのではないかというふうに評価しています。ただ,権利者が自動的に通知を送ってくるので,その通知への対応というのは結構大変です。特に中小のホスティング事業者だと,そこはちょっと負担が大きいねという意見を出しています。

他方,権利者ですが,権利者は基本的にかなり負担があると主張していまして,そこに1から5とありますが,基本的にはその負担が結構大きく,効果は結構限界があるねといったことです。特に対応が遅いですとか,あるいは,1つのファイルについて通知しても,同じファイルがほかにあった場合対応してくれないとか,あるいは,同じファイルが別の名前でとか,ちょっと変えて上がってきたときに対応してくれないとか,そういうのがあるので,結構大変ということが言われています。

カナダについてはやはり今現在実務上セーフハーバーが多く,この改正が2012年ということで,まだあまり経っていないため,評価としてはまだあまりないというのがヒアリングの結果です。

オーストラリアについて,これは差止めとセーフハーバー両方併せての御意見ですが,法律事務所,こういった知財を扱った法律事務所の視点としては,バランスのとれた手法というふうにみんなが評価しているのではないかということです。ただし,セーフハーバーを導入するときに,権利者とISP事業者両方からお互いに結構負担があるよねということで反対もあったと。訴訟を起こすよりは少し負担が減るのではないかということで導入されたということなので,必ずしも満足されていない可能性があります。

イギリスでは,権利者は差止めとNotice and take-down両方に満足していると。特に最近の判例では,権利者保護の趣旨に沿った結果が出ているので,ホスティング事業者が何でこれを削除しなければならないのかというようなことは言わなくなってきているということで,その点はいいと言っています。ただ,やはり訴訟にお金がかかるということと,海外サイトについては難しいということが課題だということです。

ホスティング事業者から見ますと,このスキームはやはり負担だということで,アメリカの場合と同じだと思いますが,特に公聴会などで月にこれだけ対応していますといった意見が出ているということです。

フランスについて,権利者は命令で削除できるので,基本的には効果はあると評価しているということです。ただ,動画配信サイト等に動画が上がった場合,一応再投稿防止システムがありますが,フォーマットをちょっと変えたりとか,若干編集をして短くしたりとかいうことで上がってしまうということがあって,その場合にやはり対応し切れないというのが課題だということで,ちょっとそこに不満があると。あともう一つ,これは有識者からの意見ですが,パロディやコラージュみたいな合法のコンテンツについてどうするかといった意見があって,それを自動的に全部削除していいのかという指摘もあります。それから,ドイツは差止請求が海賊版配信の減少につながっているとのことで,権利者は評価しています。また,ドイツの場合,差止請求が認められた場合,将来にわたっての監視義務,同じコンテンツが上がらないように監視する義務があります。これはテレメディア法のセーフハーバーの規定ではなくて,判例で付けられているということですけれども,これが結構地道に効果を上げるので,地道に通知を出すと権利者は言っています。他方で,これはやはりISP事業者にとっては負担が大きいのではないかという議論はあります。それから,スウェーデンは基本的に貢献しているという評価でした。

それから,アクセス制限,ブロッキングですけれども,こちらにつきましては,アメリカの場合はその第512条に基づく事例がないため,評価は不明ということです。ただ,2011年に提案されたSOPA法案で,やはりこのブロッキングについてより法的根拠を明確にすべきということで議論になりましたが,結果的には廃案になっています。

SOPA法案反対の立場からは,そこにありますように,オーバーブロッキングがあるので,ブロッキングというのは安易にすべきではないということと,それから,ブロッキングしても結構簡単に回避されてしまうのであまり意味がないのではないかという意見,それから,3点目として,DNSのところでいろいろなモニターをすることになりますが,それが最近のDNSのセキュリティー・プロトコルに合わないのではないかと。それから,4番目に,例えば,どこかの独裁政権が言論監視のようなことをするという前例になってしまうのではないかというような意見を出しています。

賛成側としては,オーバーブロッキングに対しては,法案では特定のサイトやページを対象とするということと,その技術的な方法,DNSブロッキングなのか,URLブロッキングなのかといったことですね。そういったものを指定しませんので,適切に対応できるのではないかということ。

それから,3番,4番ですね,こちらについてはDNSでのフィルタリングというのがもう既に広く利用されているのであまり問題ないのではというような反論をしています。

それから,オーストラリアも導入からあまり経っていない,2015年の改正ですので,評価としてあまり確立していません。ただ,海外の侵害サイトに対して差し止めが難しかったということなので,権利者はこの導入を強く熱望していました。

他方,議会での意見招請では,ブロッキングはやはり言論,表現の自由への影響はあるということ,また技術的に回避されやすいので,その効果はどうなのだという指摘があったということです。ただ,そうはいっても,権利者団体は今後この事例を増やしていきたいという意向をヒアリングでは述べていました。

イギリスにおいて,権利者は海外サイトのブロッキングが可能になったということで,非常にこれは好意的に評価していますということです。ただ,従来より改善されていますが,命令を得るために必要なコストや時間がかかるということがあるので,全部には対応できないと。大規模な侵害サイトについてのみやっていくということなので,そこのところに課題があると言えばあるということです。

それから,ISP事業者については,ブロッキングをやるのはいいが,効果に疑問がある,回避されやすいという問題と,回避ツールがやはり出るので,これがすぐ大量に出回ってしまうということです。もともとブロッキングは児童ポルノを対象にやってきたわけですが,それが著作権侵害にも拡大したという経緯があります。こういう著作権侵害に拡大すると回避ツールがすぐ出回りやすくなるということで,もともとの児童ポルノブロッキングの方にも影響が出てしまうのではないかということを懸念しているということです。

フランスにおいて,権利者は海外サイトに対しては効果的といっていますが,一方,技術的有効性にはやはり疑問も若干あるということです。それから,費用と時間の制約がやはりありますので,ブロッキングを求めることができるサイトが限られているということで,行政命令によるブロッキングを導入できないかということを言っている人もいるということです。ただ,表現の自由とも関連するため,その行政命令化には反対意見も多いということです。

それから,ドイツにおいて,ブロッキングを認める際には,プロバイダの自由を制限することになることと,回避が難しくないということから批判がありましたということ,それから,児童ポルノで発信源への対策に集中したという成功事例があるということで,ブロッキングよりは発信源対策をすべきだという意見がありました。

スウェーデンですが,ヒアリングした段階では,先に説明した控訴審判決はまだ出ていませんでしたが,寄与侵害を要件としなくていいのではないかという意見がありました。次,36ページです。検索エンジンの検索結果削除ですけれども,アメリカの場合はNotice and take-downの削除件数は公表されていませんが,検索エンジン業者はたくさん対応していますよというふうに主張しているということですね。それから,カナダはまだ評価が難しいとのことです。

オーストラリアについては,まだ導入されていませんが,政府は基本的には消極的ということで,特に著作権法第101条第1A項に関して,先ほどのauthorisationのところですね,

ISP事業者が二次的責任を負う主体とならないという判断をした判例があります。それを踏まえると,検索エンジン事業者についても二次的侵害を負う責任にならないのではないかということが考えられるということで,消極的と言われているということです。

他方,政府の委員会が検索エンジン業者をセーフハーバーの対象に含めるべきという提言を出していますが,これについて権利者は逆に権利者の権利が制限されてしまうので反対だということを言っているということです。

イギリスも検索エンジンに対する検索結果の削除というのは法制化されていません。権利者と検索エンジン業者の意見が対立しているということで,議論が進んでいない状況です。権利者は海賊版へのアクセスにおいて検索がすごく大きな役割を果たしているので,止めるべきと,対応すべきということですけれども,検索エンジン側は,いやいや限られていますということで,まだこの段階では足並みがそろっていないということです。

フランスは検索結果から削除しても別のドメインで結局すぐ上がってきてしまうという指摘がある一方,海外の海賊版サイトについては有効で重要だと考えているということです。だから,もう一歩進んで,検索エンジン事業者がより厳格な監視を行ってほしいという意見もありました。

ドイツは実施例がないため,わかりません。

スウェーデンですが,アクセスブロッキングの判例に基づいて可能かもしれないと言われていますが,判例がないためわかりません。ただ,権利者はやはり必要だと考えています。

資金源対策ですが,こちらにつきましては,アメリカの自主的な取組,これはDMCAのように通知があった場合に取り下げているということで評価が高い。また,イギリス,フランス,スウェーデンで,やはりその広告団体と権利者団体が連携して,侵害サイトのリストを共有して,そこには広告を出さないようにしましょうということで,実際広告が減ったり,広告主がこういうサイトにはやはり出さない方が自分たちにも得だよねというふうにマインドを持ってきているということが評価されています。

個人のインターネット接続の停止ということで,スリーストライク等ですけれども,38ページです。こちらにつきましては,基本的にはやはり結構強い施策なので,権利者としてもあまり積極的に望まず,むしろ利用者に対しては啓発が大事という意見が見られました。

それから,39ページ,簡単な警告システムです。こちらにつきましても,警告を評価する意見もありますが,コストを誰が持つのという意見,それから,警告で終わってしまうと難しいので,アメリカがやっているように,警告に従わない場合には最後は回線容量を絞るといったことも結び付けてほしいといった意見がありました。

それから,再犯者への罰則強化については,著作権侵害における再犯への罰則強化については特には議論されていません。ただ,オンラインとハードコピーで罰則の上限が違うとか,重罪というカテゴリーを設けたらどうかといった議論が行われているということでございます。

その他の手法ですが,こちらについては,先ほども説明したが,アメリカで言うとCopyright Alert Systemという,警告を行った後で,従わない場合は回線容量を絞られますという手法について権利者,ISPの両方ともリーズナブルだと認めているということです。

逆にスウェーデンのユーザー情報の提供,これは権利者からISPにこの人が誰か,このIPアドレスが何か悪いことをやっているから教えてくれということですが,これはあまり使われていないということです。

以上,駆け足ですけれども,以上で報告を終わります。

【道垣内主査】ありがとうございました。膨大な情報をまとめていただきました。何か御質問等ございますか。

【道垣内主査】どうぞ。

【井奈波委員】詳細な御報告ありがとうございました。

質問ですが,19ページ目と21ページ目,アメリカとオーストラリアの事案が出ています。アメリカの事案ですと,要件として閲覧者が原告の著作権を侵害したこととあって,その前を見ますと,ダウンロードできるURLを紹介したことということが掲げられています。また,オーストラリアの方も同じで,恐らくこのダウンロードが可能なようにサイトを設計しているという,22ページ目がそうなっていますが,これはハイパーリンク先のサイトでダウンロードできるサイトは違法で,ストリーミングだったら適法という区別はなされているのでしょうか。

【株式会社三菱総合研究所(安江様)】この判例では,ダウンロードの場合なので,そういった判断はまだされていません。ヒアリングの中でもそこのところは明確ではありませんでした。

【井奈波委員】ありがとうございます。

【道垣内主査】そのほか何かございますか。

また今後議論するときに貴重な資料かと思いますので,活用させていただきたいと思います。ありがとうございました。

では,ここまでで報告事項を終わりまして,4番目,自由討議でございます。今年度最初の委員会でございまして,現在のWIPOでの議論以外でも,国際情勢を踏まえたルール作りへの参画,あるいは,インターネットによる侵害行為の実効的な対策等につきまして,広く御意見を伺いたいと思います。法制化可能かとか,条約作りが本当にできるのかというのは次の話で,まずはどうすべきなのか,どうあるべきなのかということの御意見を伺いたいと思います。何かございますか。

特に先ほどの最後の三菱総研の報告書の中には,日本でもこれはできそうだ,あるいは,これはできそうにないというのがあるのではないかと思います。例えば,法制の問題ではありませんが,資金源を断つということについて,企業の間での自主的な協定,あるいは, 了解をつくるといったことは,そんなに難しくはなさそうですが,実は難しいのだということがあればぜひ教えていただきたい。法制化に進むことになりますと,この国際小委員会ではなく,法制基本問題小委員会へ回すということになりますが,どういうルールが望ましいのかということは,こういう諸外国の制度調査が非常に参考になると思います。ぜひ御意見を伺いたいと思います。じゃあ,墳﨑さん,どうぞ。

【墳﨑委員】CODAの墳﨑です。

今道垣内先生のおっしゃられたその資金源対策の話は,ぜひ日本でもやれたらなと思っています。何個か難しいというか,こうできないかなと思っているところはありまして,イギリスでは取組が効果的だという話があります。これは権利者団体,広告事業者だけではなくて,ロンドン市警も入っています。結局その民間だけでの話合いで進めようとするというのはあっても,やはり法的根拠があって,その報告を止めてくれというふうに今言えるような状況ではないというふうに認識していて,そうなるとなかなか話合いというのは難しい部分も出てきてしまいます。なので,そういう意味では,少し官側というか,政府の方に御協力いただいて,そのあたり少し取り持ってもらえる形にした方が話は進むのかなというふうに思っております。もちろん何か法律ができると一番いいのかもしれませんが。

【道垣内主査】違法なコピーを送信可能な状態に置くことが違法行為で,犯罪行為なので,犯罪者に資金を提供するのと同じですよという話は一定の説得力があるのかもしれませんね。リーチサイトの方はまだこれからの法制ですが,リーチサイトは違法だということにもしできれば,同じように説得できるのではないかと思います。

【墳﨑委員】イギリスですと,そのロンドン市警の方がまさにそういうことを広告主の方に話に行って,要は,「犯罪のそういう集団に資金が流れているのは,マネロン法とかに引っかかるんですよ,あなたたち大丈夫,これで私たちはもうお伝えしたから,あなたたちこれわかってやることになりますよね。」というようなことを言って,プレッシャーかけてくれるというのは聞いたことがあるので,そういった形で少し何かできないかなというふうには思うところではあります。

【道垣内主査】そうですね。反社会的勢力対策が現在うまくいっているとすれば,次のターゲットはこれですよと,当局にお知らせするというのはいいかもしれませんね。

そのほか何かございますか。

辻田委員,どうぞ。

【辻田委員】先ほど上野先生が質問されたところで,WIPOの追及権に関して,常設議題化に懸念を表明されたという理由が,放送条約の方を重視されたいという,そちらの方を先に進めたいということでしたが,追及権に関して,イギリス,フランス,ドイツには既にあることは承知しております。イギリスにはサザビーズとかクリスティーズというオークションがあって,洋画等が流通しております。先ほどの形式的な理由のほかに,実質的に見て我が国で追求権が必要とされるような立法事実というのが果たしてあるのかとどうかということをお伺いします。

ほかの委員会でももしかしたら議論されていることかもしれませんので,御存じの方いれば教えていただきたいのですが,追及権による報酬というのは,絵画等の所有者ではなくて,著作者側に支払われるものですので,仮に我が国において導入すると,事実上外国の作品に支払う方が多くなりはしないかと,そうすると,日本にお金は入ってこないで,外国の方にお金を払うことが多くなってしまうのではないかというふうに思いますけれども,どうでしょうか。

【道垣内主査】もしわかる点ございましたら,お願いします。ほかの方でも結構ですし,事務局からでも結構です。

外国にお金が流れても構わないと思いますが,今おっしゃった立法事実,つまり権利者からの要求がないのではないかということですか,日本ではそうなのでしょうか。

【辻田委員】日本で追及権というのが果たして必要とされているのだろうかという素朴な疑問です。

【道垣内主査】いただけるものはいただきたいという方はいらっしゃるのではないかと思いますけれども。

WIPOで日本が積極的に推すかどうかという点でいえば,そういうインセンティブがあまりないのではないかということですね。わかりました。

よろしいですか,何かありますか。

【早川国際著作権専門官】追及権に関しましては,要望があることは認識しておりますけれども,立法事実といいますか,そういうことを調査あるいはデータを持っているということはないという認識です。

以上です。

【道垣内主査】先ほど辻田委員御発言の前に,私がWIPOと言いかけたのは,WIPO自身もいいテーマがなくて困っているのではないかと思うので,こういうのをやったらいいのはないかということがあれば,日本から提案していったらどうか,ということです。国際機関は,働き,成果を生まなければ存在意義を問われますので,それにふさわしいような,しかも,日本国にとっても意味があるような,何かテーマとかございませんでしょうか。

追及権は必ずしもそういう類ではないということはわかりました。

どうですか。例えば,インターネットが絡む場合も含めて,海賊行為対策についてもっと有効な何か条約等がないとったことです。一国でうまく制度をつくっても,すぐに国境を越えて逃げていく人たちが海賊行為をしているのだろうと思いますので,そこを捕まえるには条約は有効だと思います。そこに盛り込むような何か新しい良いアイデアなり,球がなければどうしようもないわけですが,いかがでしょう。

どうぞ。

【墳﨑委員】今の話でちょっとお聞きしたいのですが,現在侵害行為とかに関する情報の共有とか,執行共助はどうなっているんでしょう。趣旨としては,要は,今CODAが抱えている一つの問題としては,一度お話ししたことがあるかもしれませんが,中国でサイトを立ち上げている人がいると。でも,中国では見られない,日本では見られるというようなときに,中国政府に何か言っても,中国で見られないから何も侵害行為がないと。それは動画共有サイトなので,複製権侵害をしている人はまた別にいるという整理にはなりますが,「中国で見られないからなかなか対応しにくいよね。」という話をされ,「いや,でも,日本で見られているから困っているんだけれども」という話をします。そういった問題が起きたり,あとは,サーバ等が全然別のところにあって,中国国内でサイトを立ち上げているが,サーバも別にある,銀行口座も別の国にあるという状況下で,中国政府に取締りを依頼しても,「情報が全然得られない」という理由で断られてしまいます。そういった点のいわゆる情報の共有とか,執行の共助というのは,今,どれぐらいやられているのかとか,どういう条約があるのかというのは把握できていませんが,そのあたりはどうなっているのかなと。

【野田海賊版対策専門官】事務局でございます。おっしゃった点,例えば,私どもであれば,二国間協議の枠組みを持っていまして,おっしゃったように,中国との情報であるとか,あるいは,東南アジアの国々との情報はありますが,マルチな形でもってそれを収集するといった仕組みは現在持ち合わせていないところでございます。場合によったら,捜査当局さん方はもしかしたらあるのかもしれませんが,私ども著作権当局同士では残念ながらそういったマルチなチャンネルは現在はございません。

【墳﨑委員】私の認識だと,一応インターポールである程度マルチに情報を共有するというのはできたはずだと思いますが,何かどこまで機能しているのかなというのがよくわからなくて,実態としてどこまで機能しているのかなというところとかも教えてもらいたい,若しくは,それを前提に話ができればなというところではありますね。

【道垣内主査】国際的な情報共有を強化していくような何か仕組みを作るということが必要じゃないかという御意見かと思います。

パイレーツというか,海賊は国際公法上国際犯罪で,自国の船が襲われなくても,誰でも捕まえてもよいというくらいの強い制裁というか,規制の対象になっています。著作権侵害行為がそれと同じだということになれば,それは被害がうちでは起きていませんからというのは言い訳にならない。そこまでの共通認識が本当の海の海賊と同じ程度にあるのかどうか,国によってレベルが違うのかもしれませんが,WIPOの加盟国は多いわけですから,一応基本的な共通認識はあるのだろうと思います。そこをより強化していくにはどうしたらいいのかというようなことが,何かいいアイデアがあればいいかなと思います。

このト書きには発言のない方には発言を促してくださいと書いてあるのですが,長く委員をおつとめいただいている山本委員,今日はお静かなようですが,何かありませんでしょうか。済みません,突然。

【山本委員】御指名とは思わなかったものですから。

【道垣内主査】こういうのはめったにないことですが。

【山本委員】思うことはいろいろありますけれども。

【道垣内主査】そうだと思いますので,どうぞ,どうぞ,思いのたけを。

【山本委員】はい,例えば,海賊版対策に関して言いますと,今取組なさっているような,今回であればマレーシアでどのように対応をとられているのかというお話を聞いていて,例えば,マレーシアで日本企業が積極的に権利行使をしやすいように,あるいは, 正規製品を販売するためのルート作りができるように,その権利者団体の共通の現地事務所のようなものがあって,そこが,例えば,マレーシアで正規製品を販売したい,あるいは,権利行使をしたいというときのサポートをするような,そういう機関があるとものすごく良いのではないのかなと思いました。そこは当然規制当局との情報交換もするし,権利行使のために必要な弁護士についての情報も持っているというような,そういうセンターのようなものを各国に作るというようなことができれば良いかなということを,今お話を聞いていて思いました。

【道垣内主査】各国が作るのか,WIPOの予算で世界中に置くのか,いずれでしょうか。

【山本委員】誰がお金を出すかということについては,別に政府が必ずしも出す必要はないと思います。ですが,そういうものをオーガナイズするというのは日本政府なりができるだろうなというふうに思います。既にあるCODAさんであったりとか,ACCSさんであったりというようなところが中心になって,そういう活動できるのかなというふうに思ったりしました。

以上です。

【道垣内主査】そういうイニシアチブをとったらどうかという御意見と理解いたしました。

どうぞ,久保田委員。

【久保田委員】今の関連の中で言うと,大使館の中には,不正商品対策官というような侵害対策の情報を集める人が必ず大使館の中にいらっしゃる。イタリアでの事件では文部省さんの傘下の役人の方が取締官という,そういうポジションにいたために,日頃日常生活の中でたくさん海賊版を見るし,その方もアニメが好きで,何でイタリアのテレビでは「釣りキチ三平」を毎日のようにやっとるんだと,そういう著作物,いろいろな著作物ありますが,そういう関心がある人が現地の大使館の中にいらっしゃると,日常生活の中でそういった情報をつぶさにキャッチしてくれる。現在,CODAさんの方に海外での侵害対策主力が行っていて,私の方も今門外漢になりつつありますが,どうもそういう意味では,大使館の中におけるそういった機能がうまく動いていないのではないかなと。もう少しその意識を強化すれば,相当数情報は吸い上がってくるんじゃないかと思います。実態としてどのように機能しているのか,おわかりならちょっとお話ししていただけたら幸いです。

【久保田委員】法務省の方でもいらっしゃっていると聞いています。

【道垣内主査】ええ。ネットワークを作って,活用して,今,例えば,山本委員のおっしゃったようなことを実現していくには,そういう方々もコアになっていただかなければいけないということですね,各国で。わかりました。

そのほかどうでしょう。大体時間ではございますけれども,何かございますか。

では,4番はここまでにしまして,5番,その他,特にこの際今のこと以外のことで何か御意見等ございますか。よろしゅうございますか。

では,その他はなくて,閉会でございますが,事務局から何か御連絡されることがありましたらお願いいたします。

【奈良国際課長】1点,情報提供させていただきたいと思います。資料の一番下に,「WIPO 主催 著作権等に係るアジア・太平洋地域会合の開催について」という御案内を差し上げております。これはWIPOが3年ぶりに日本で開催するアジア・太平洋地域30か国の著作権業務の代表者が出席をして議論するものでございますけれども,来週の月曜日からでございますけれども,初日の月曜日につきましては終日一般の方も傍聴することができるプログラムとなっておりますので,御案内を申し上げます。WIPOの著作権担当次長フォルバン氏の基調講演のほか,本委員をお願いしております上野先生,あるいは,山本先生にもスピーカーをお願いしているところでございますので,もしよろしければ御参加いただければと思います。

それから,次回のこの会議の開催につきましては,また主査と御相談の上御案内をさせていただきますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【道垣内主査】では,本日の国際小委員会はこれで終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

――――

Adobe Reader(アドビリーダー)ダウンロード:別ウィンドウで開きます

PDF形式を御覧いただくためには,Adobe Readerが必要となります。
お持ちでない方は,こちらからダウンロードしてください。

ページの先頭に移動