文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第2回)

日時:令和元年11月8日(金)

10:00~12:00

場所:AP虎ノ門3階I+J ルーム

議事次第

  1. 1開会
  2. 2議事
    1. (1)第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方について
    2. (2)本検討の前提となる用語・概念,検討対象場面の整理について
    3. (3)関係者に対するヒアリング
    4. (4)その他
  3. 3閉会

配布資料一覧

資料1
第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方(案)(104.7KB)
資料2
本検討の前提となる用語・概念、検討対象場面の整理(案)(187.1KB)
資料3
一般社団法人日本書籍出版協会提出資料(178.4KB)
資料4
一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム提出資料(2.3MB)
参考資料1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム委員名簿(81.3KB)
参考資料2
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第2回)ヒアリング出席者一覧(39.3KB)
参考資料3
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第2回)のヒアリングにおいてお伺いしたい事項(105.5KB)
机上配布資料1
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究報告書(平成30年3月)
机上配布資料2
著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究資料編(平成30年3月)

議事内容

【龍村座長】では, 定刻でございますので, 始めさせていただきたいと思います。ただいまから文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第2回)を開催いたします。

本日は御多忙の中, 御出席いただきまして, 誠にありがとうございます。

まず, 議事に入る前に, 本日の会議の公開につきましては, 予定されている議事内容を参照いたしますと, 特段非公開とするには及ばないと思われますので, 既に傍聴の方には御入場していただいているところでございます。特に御異議はございませんか。

(「異議なし」の声あり)

【龍村座長】ありがとうございます。

では, 本日の議事は公開ということで, 傍聴者の方にはそのまま傍聴いただくことにさせていただきます。

まず, 今回から新たにお二方, チーム員に御就任いただいておりますので, 御紹介させていただきます。

今村哲也チーム員です。

【今村委員】今村です。よろしくお願いいたします。

【龍村座長】栗田昌裕チーム員です。

【栗田委員】栗田です。よろしくお願いします。

【龍村座長】また, 前回御欠席でしたが, 今回, 森田チーム員に御出席いただいておりますので, 御紹介させていただきます。

【森田委員】森田です。よろしくお願いします。

【龍村座長】森田宏樹チーム員です。ありがとうございました。

それでは, 事務局より配付資料の確認をお願いします。

【高藤著作権調査官】まず, 議事次第の下の方に配付資料一覧を記載しておりますので, それに沿って御説明させていただきます。

まず, 資料が4つありまして, 資料1として, 「第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方(案)」, 資料2として, 「本検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面の整理(案)」, 資料3として, 「一般社団法人日本書籍出版協会提出資料」, 資料4として, 「一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム提出資料」。

次に, 参考資料が3つありまして, 参考資料1として, 「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム委員名簿」, 参考資料2として, 「著作物等のライセンス計約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム第2回ヒアリング出席者一覧」, 参考資料3として, 「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム第2回のヒアリングにおいてお伺いしたい事項」。

次に, 机上配付資料が2つありまして, まず1つ目として, 「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関する調査研究報告書」, 2つ目として, その調査研究資料編を配付しております。もし不足等ありましたら, お近くの事務局までお申し付けください。以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。

それでは, 初めに議事の進め方につきまして, 確認しておきたいと思います。

本日の議事は, (1)第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方について。(2)本検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面の整理について。(3)関係者に対するヒアリング。(4)その他, の4点になります。

では, よろしいでしょうか。早速議事に入ってまいりたいと思います。前回のワーキングチームでは, 進め方や検討の前提に関する御意見も出ておりましたので, まずは前回の議論を踏まえて, 今後の検討の進め方を改めて整理したいと思います。

では, 議事(1)第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方について, 事務局において資料1になりますが, 御用意していただいておりますので, これに基づいて議論を行いたいと思います。事務局より御説明をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】まず, 資料1を御覧ください。資料1では「第1回本ワーキングチームでの議論を踏まえた今後の検討の進め方(案)」を事務局で整理しております。

まず, 1として, 第1回本ワーキングチームでの議論を簡単にまとめております。第1回本ワーキングチームにおいては, 本検討の前提に関わる意見として主に次のような意見がありました。

まず, 1つ目の丸ですけれども, 「独占性」の意味に関して, 前回のワーキングチームの資料では「自分以外の者には利用を行わせない」と定義しておりましたけれども, 「こういう位置付けでよいのかと。これは, むしろ差止請求の話を先取りしていないか。ライセンスの独占性というと, 人に利用させないというよりは, ライセンサーは自分以外の者に対してライセンスをしないという約束が前提であって, ライセンシーの方が利用を行わせないというのとは, 若干, 差があるように思われる。」と, 使用する用語に関して, このようなご疑問が提示されたところでございます。

2つ目の丸として, 検討対象場面に関しましては, 差押のような場面も考えられるのではないかという御意見がありました。

3つ目として, 第1回本ワーキングチームの資料4で, 検討事項を列挙しておりましたけれども, これらのかなりの部分というものは, 前回のワーキングチームで議論していた物権的構成を取るのであれば, 検討対象ではなくなる。そうであれば, まずは物権的構成を取ると決めて検討を進めていくという方法もあるのではないか, という御意見もあったところです。

以上の御意見も踏まえまして, 今後の検討の進め方ですけれども, 1ページ目の2のところで整理しております。

個別の検討事項の検討に入る前に, まずは検討の前提となる用語や概念, 検討対象場面を整理したいと考えております。

また, 最初から物権的構成に決めて検討を進めてよいのか, 債権的構成を検討する必要がないのかという点については, 調査研究におけるヒアリング調査の内容からすると, 現行法のもとで債権的な効力しかないとされる独占的ライセンス契約について, その独占的ライセンスの独占性を対抗し, 差止請求権を行使できるようにしてほしいというニーズがあるとも思えるので, 改めて本ワーキングチームにおいて, 特に独占的ライセンスを活用している業界の関係者の方々のヒアリングを実施して, そもそも実現が期待されている状況を確認し, 債権的構成を検討する必要性を確認した上で, 個別の検討事項についての検討を進めたいと考えております。

まとめますと, 2ページ目に四角で囲っておりますけれども, マル1として, 検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面を整理して, マル2で関係者のヒアリングを実施し, 実現が期待される状況及び債権的構成を検討する必要性を確認・整理したいと考えております。その上で, マル3, マル4で, 個別の課題解決手段についての構成について, それぞれ検討を進めていくという流れを想定しております。以上です。

【龍村座長】ありがとうございました。

それでは, 事務局より説明いただきました内容に関しまして, 御意見, 御質問等がございましたら, お願いします。冒頭の指摘の議論が前回御指摘いただいた点になろうかと思いますが, 前回の御指摘の先生方の中で, どうでしょうか。一応それを前提に整理を頂いていると認識しておるのですが, いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

では, 大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】結論としては, 2ページの真ん中にある四角いボックスで囲まれたマル1からマル5については, これで大変よろしいかと思います。もともと私はそのようなものだろうと思っておりました。1ページ目の四角の3つ目の丸にもありましたが, 物権で済むのであれば, 物権でやったほうが早いのではないかというお考えも前回ありました。しかし, 私としては, 前回申し上げましたとおり, またヒアリングでニーズを洗い出しができるかと思いますが, 例えば, 出版の場合であれば, 出版権という物権的なものでも, 出版許諾契約という債権的なものでもカバーするというように, 複眼的にやるほうがよいと思います。もともと民法は物権と債権とあって, 両方拾っているわけであり, 著作権でもライセンスに関しては物権的なライセンスもあれば, 債権的なライセンスもあり, それで幅広いニーズを拾ってきたので, 物権だけに決め打ちにするというのではなくて, 最終的結論はとりあえず措いておいて, 物権, 債権に両方目配りして, 最終的に, 両方か物権だけなのか, という判断をするほうがよいと思われます。そのような観点からしますと, 2ページの真ん中に書いていただいたのはまさしくそのようなことであり, 前広にきちんと幅広くニーズを漏れなく拾って検討するという筋が非常によく出ているかと思いますので, これで大変結構だと思っております。

【龍村座長】ありがとうございます。そのほかよろしいでしょうか。

そうしましたら, 本ワーキングチームにおける検討の進め方といたしましては, まず, 検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面を整理いたしまして, 続いて独占的ライセンスを活用している各業界の関係者からヒアリングを行いまして, 実現が期待される状況あるいは債権的構成の検討の必要性を確認・整理した上で, 各課題解決手段について個別に検討していくという形といたしたいと思いますが, よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【龍村座長】ありがとうございます。では, 異議なしと受けとめました。

それでは, そのように今後, 検討を進めてまいりたいと思います。

続きまして, 議事に本検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面の整理について, 資料2に基づいて議論を行いたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】資料2を御覧ください。資料2は, 本検討の前提となる用語・概念, 検討対象場面を事務局で整理しております。

まず, 1として, 本検討の前提となる用語・概念の整理になります。1つ目, (1)「独占的ライセンス」という言葉ですけれども, こちらにつきましては, 特許法の方で本ワーキングチームで検討しているものと同様の課題が議論されたときに, 「独占的ライセンス」については専用実施権や独占的通常実施権と物権的なものも債権的なものも含むものとして使われておりましたので, 今回の検討でも特に断りがない限りは, 物権的なものも債権的なものも含むものとして使いたいと考えております。

また, 債権的なものと物権的なものを区別する際には, 「債権的な独占的ライセンス」, 「物権的な独占的ライセンス」といった呼び方で区別をしたいと思っていますけれども, 「債権的な独占的ライセンス」については, マル1に記載のとおり, 「現行法の下では債権的な効力のみを有するとされている独占性の合意がなされた利用許諾契約に基づくライセンシーの独占的利用権」と定義して使いたいと考えております。

「物権的な独占的ライセンス」に関しましては, マル2に記載していますけれども, 「特許法における専用実施権, 著作権法における出版権のような, 準物権的とされる独占的かつ排他的な権利」と定義して使いたいと考えております。

(2)「独占性の合意」ですけれども, 今申し上げた「債権的な独占的ライセンス」というものを, 「独占性の合意」が付された利用許諾契約と定義しておりますので, その「独占性の合意」が何なのかというのが, (2)の「独占性の合意」になります。この「独占性の合意」に関しましては, マル1として, 「ライセンサーが当該ライセンス契約で付与したライセンスの範囲と重複するようなライセンスを他の者に付与しない」といった内容の合意を指すと定義しております。

次のページに行っていただきまして, この「独占性の合意」に加えて, 「ライセンサー自身も, 当該ライセンスの範囲では当該著作物を利用しないこと」という合意がなされている場合については, 「完全独占的ライセンス」といい, そのような合意がない場合には「不完全独占的ライセンス」と区別して呼称しようと考えております。

前回の議論でも冒頭申し上げましたけれども, 基本的には「完全独占的ライセンス」を念頭に検討を進めていきたいと思っております。「不完全独占的ライセンス」に関して検討する場合には, その旨を言及した上で検討を進めたいと考えております。

なお書きで書いていますけれども, ここでいう「独占性の合意」については, 「ライセンサーがライセンシー以外の者の利用を排除しなければならないという義務」, すなわち, 「侵害排除義務」については含まないという前提で検討を進めたいと考えております。

次に(3)「独占性」という言葉です。こちらは具体的に対抗の対象となる「独占性」というものが何なのかというところです。こちらにつきましては, 暫定的に, 抽象的な定義をしていますけれども, 「独占的ライセンシーが独占的ライセンスを付与されたことによって取得する当該著作物の利用を独占的に行うことができるという地位をいうものとする」と定義しております。こちらについては, いろいろと御意見があるところかもしれないですけれども, ひとまずはこのような定義で検討を進めることにしてはと考えているところです。

(4)は「課題解決手段の呼称」と書いております。脚注の2で書いていますけれども, 前回の議論では, 「物権的構成」, 「債権的構成」と呼んでいた課題解決手段ですが, 前回の議論の後にチーム員の先生から, 債権, 物権という言葉ではなくて, より著作権法や業界で用いられている用語に即した, 分かりやすい呼称にした方がよいのではないかといった御意見もあったところですので, それを踏まえまして, 課題解決手段の呼称に関しましては, 本文記載のとおり, 変更してはどうかという御提案になります。

まず, 前回の議論において, 「債権的構成」と呼んでいたものについては, 「独占的利用許諾構成」と, 「物権的構成」と呼んでいたものについては, 「出版権的構成」と呼称してはどうかと考えております。

次の3ページ目にいっていただきまして, (5)「独占的ライセンスの対抗制度」です。「独占的ライセンスの対抗制度」については, 課題解決手段の構成によって検討する内容が異なるのではないかと考えております。

まず, 独占的利用許諾構成の場合につきましては, 「債権的な独占的ライセンスの独占性の部分のみを対象とする対抗制度」を意味するものとして検討することになるかと考えております。

他方, 独占的利用許諾構成における独占的ライセンスの利用権の部分に関しましては, 昨年度本ワーキングチームで議論した, 当然対抗制度の適用対象になるのではないかと考えております。

次に, 出版的構成の場合につきましては, 利用権の部分も含む形で物権的な独占的ライセンスの制度を新たに創設することになると思いますので, この構成の場合は「独占的ライセンスの対抗制度」というのは当該ライセンスの独占性の部分のみならず, 利用権の部分も含む形での対抗制度として検討する必要があるかと考えております。

(6)の独占的利用許諾構成における「独占性の対抗」の意味内容ですけれども, こちらも抽象的な定義の仕方をしております。まず, 「下記2の各検討対象場面(図マルア乃至マルウ)」と書いておりますが, こちらは5ページ以下に検討対象場面を大きく3つ整理しておりまして, 前回も申し上げましたとおり, 著作権の譲受人が出てきた場合, 二重ライセンスがなされて, 他のライセンシーが現れた場合, 不法利用者が現れた場合, 大きくこの3つの場面が検討対象になると思います。そして, 独占的利用許諾構成における「独占性の対抗」の意味は, それらの場面において, 「独占的ライセンシーが著作権等の譲受人や他のライセンシー, 不法利用者等に対し, その独占的ライセンスに基づく独占性を積極的に主張することができることをいうものとする」といった定義の仕方をしております。

こちらにつきましては, いろいろ御議論もあるかと思いまして, 検討事項を設けております。抽象的には(6)の四角で囲ったところに書いてあるような内容かと考えていますが, これの具体的な法的意味については議論があるかと思っています。

まず, 検討事項の1つ目のポツですけれども, 「『独占性の対抗』が具体的にどのような法的意味を有するかについては議論の余地があるものと思われるが, 少なくとも著作権等の譲受人や, 他のライセンシーとの関係では, 『これらの者に独占的ライセンシーが有する独占的ライセンスの独占性を認めさせ, これを維持する一方で, 当該譲受人が有する著作権等や他のライセンシーが有するライセンスに基づく対象著作物の利用権を否定できるという意味を有するもの』と考えることができないか」と書いております。

2つ目のポツとして, 「不法利用者との関係では『独占性の対抗』はどのような法的意味を有するか」と書いております。

ここで議論の参考としまして, 3ページ目の脚注6に, 不動産賃借権の対抗に係る議論を示しております。ただ, この議論というのは, 平成29年の債権法改正前の議論であって, また, 独占的利用許諾構成で対抗対象になっているのは, 利用権を含まない部分, 独占性の部分だけになりますので, これらの議論をそのまま応用できないとは思いますけれども, 参考までにお示ししているところです。

この独占的利用許諾構成における独占性の対抗に関しましては, 民法上, 一般的には, 対抗問題と妨害排除請求が認められるかどうかという議論が理論的には区別されているところですけれども, 他方で, 今回の検討対象になっている対抗問題というのは, 独占性の部分のみの対抗問題として検討しているので, 独占性の対抗というのは差止請求が認められるか否かという問題とイコールなのではないかといった考え方もあると思われるところです。ここでは, 何か結論を出すというよりは, まず, 検討の前提として, 「独占性の対抗」に関してどのような議論があるのかというのを今回, 共有したいという趣旨になります。

また, この部分に関しましては, 概念として何か一般的な整理をするというよりも, 具体的な場面で何を主張できるのかというものを整理して, その後で独占性の対抗の意味内容や, 理論的な根拠を詰めていくというやり方がよいのではないか, そのような考え方もあるのではないかと思いますけれども, その辺りも含めて御意見を頂ければと考えております。

4ページ目に戻っていただきまして, ※で「出版権的構成の場合」と書いてあります。出版的構成の場合に関しましては, 上記(4)で示したとおり, 独占的ライセンスのうち, 独占性の部分のみを取り出して対抗制度を導入するものではなく, 利用権の部分も含めた物権的な独占的ライセンスの対抗制度の問題となりますので, その対抗制度については, 既にそのような権利として存在する出版権の対抗制度と同様に考えて差し支えないのではないかと考えております。

以上が, 用語・概念の整理の案になります。

次に5ページ目にいっていただきまして, 検討対象場面を改めて整理しております。

まず, 図マルアは, 著作権が譲渡された場合です。独占的ライセンス契約が締結されて, その後に著作権等の譲渡がなされた。その譲受人がその著作物を利用している。その場合に, 現行法の下では債権的な独占的ライセンスでは, 独占性を対抗して直接差止請求を行うことができないというのが現状かと思います。

下の※に書いていますとおり, 図マルアは, マル1の独占的ライセンス契約によって取得する独占的ライセンスが完全独占的ライセンスであることを前提としています。

また, 2つ目の※に書いていますけれども, 差押えがなされて, 執行・売却されたことによって生じる著作権等の移転の場合も図マルアと同じような状況になるのではないかと考えております。ただ, この場合に関しましては, 対抗関係は独占的ライセンシーと差押債権者との間に生じると考えております。

6ページ目にいっていただきまして, 図マルイの1と2という形で2つ図を付けております。

まず, 上の方の図は, 二重にライセンス契約がなされた場合です。典型的な二重ライセンスの場合になりますけれども, まず, 独占的ライセンス契約が締結されて, その後, 他のライセンシーとライセンス契約が締結された。それに基づいて他のライセンシーが著作物を利用していく。その場合に, 独占的ライセンシーは独占性を対抗して, 直接差止請求を行使できない状況にあるかと思います。

次に, その下の図マルイ-2は, 二重にライセンス契約がなされた場合ですけれども, 著作権の譲渡が介在する場合になります。

まず, 独占的ライセンス契約が締結されて, 著作権等の譲渡がなされた。その後, 譲受人の方から他のライセンシーに対してライセンス契約がなされた。その場合に他のライセンシーが著作物を利用している。その場合, 独占的ライセンシーは独占性を対抗して直接差止請求権を行使できないというのが現状かと思います。ここの図マルイに書いてある他のライセンシーに関しましては, 脚注の7でも書いていますけれども, 独占的ライセンシーの場合もありますし, 非独占的ライセンシーの場合もあると考えております。

7ページ目にいっていただきまして, 図マルウは不法利用者が現れた場合です。

まず, 独占的ライセンス契約が締結されて, その後, 不法利用者による利用がなされている。その場合, 独占的ライセンシーは, 独占性を対抗して直接差止請求権を行使できない状況にあるかと思います。

以上が, 今回の検討の対象となる場面になるかと思います。ここでは典型的な事例を記載しておりまして, 契約の順序だったり, 独占的ライセンスに関して対抗制度を導入した場合の対抗力の具備の先後などによって対抗できるかどうかというのは変わってくるとは思いますけれども, その順番によって変わる部分に関しましては, 今後, 個別の検討事項の中で整理していきたいと考えております。

以上が, 検討の前提となる用語・概念の, 検討対象場面の整理(案)として, 事務局で整理したものになります。

【龍村座長】ありがとうございました。

それでは, 事務局より説明いただきました内容に関しまして, 御意見, 御質問等がございましたら, お願いします。前田委員, お願いいたします。

【前田委員】資料2の4ページの上から5行目のところで, 「不法利用者との関係では「独占性の対抗」はどのような法的意味を有するか」という記載がございまして, また, 資料2の最後の図ウのところでも, 「不法利用者に対し, ①の独占的ライセンス契約に基づく独占性を対抗し, 直接②の利用の差止めを行うことができない」という記載がありますが, 不法利用者との関係において「対抗」という言葉を用いることが適切なのかどうかということについては, 疑問の余地があると思います。

【龍村座長】ありがとうございます。まさに不法利用者の関係での, この辺りの問題意識は事務局でも持たれている点だと思いますが, その点を含めていかがでございましょうか。大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】まず, 直前に前田委員からお話があった点は私も同感であります。普通は民法でも対抗関係に立つものはある程度絞られており, 全くの無権限者というのはそうではないのではないかと思われます。このペーパーでは, 言葉の使い方を今後詰めていくという趣旨かと思いますが, 一般的に対抗と思われている範囲のものだけを「対抗」と呼んだ方がよいと思います。

他方で, 先ほどの2ページ目の(4)のところで, あえて「物権的」「債権的」という表現を使わずに, もっと具体的な, 「独占的利用許諾構成」と「出版権的構成」という, 法的性質というよりは現象的表現にして, 議論の余地を少なくする趣旨だと思います。これは「終了後, チーム員から」ということで, 私ではないほかの委員の方からのご提案だと思いますが, この点については賛成であります。きょうは一番ここの議論に強い意見をお持ちの方が御欠席されておりますが, 前回も申しましたように, 債権といっても結局, 最低限, 23年改正というか, 去年やった我々の改正で, 対抗力を具備しているという意味では, 一定程度物権化されています。債権といっても, 少なくとも物権化されているから, それを最初から物権と呼ぶかという話をし始めると大変混乱してきますので, このように独占的利用許諾構成といったほうが, 大本は債権だけれど, 物権化しているという点が出ると思います。また, 最初から物権である出版権的と置いているのは, これでよろしいのではないかと思っています。

ほかのも全てよろしいかと思います。エでやや蛇足ですが, 5, 6, 7とあって, これも例えば, 最後の7のところだと, 先ほどの「対抗」という言葉がおかしいというだけでなくて, これは「☓」とされているのは現行法で, 今後改正してこれを改めたいのですが, 現行だとすれば, 直接差止請求を行うことができないと言い切っていいのかというのは, 不法占有者に対しては躊躇があるという趣旨であろうと思われます。私は, もっとドラスティックで, 授業等では固有権でも差止請求は解釈論上も可能であるとか散々言っているのです。少数説ですから, 大半の人は現行法では解釈論としてはそうおっしゃっていないという趣旨で書かれていると思います。私は全部とは言いませんが, アでもイでも, 要するに重要なのは特許法でいうと新99条で, マル1が, 独占的ライセンスが先にあって, それの後に譲渡されたという場合だったら, 現行法でも本当は請求できます。そのような意味では今回, 改正するとしたら, 全くの創設規定というよりは, 実は確認規定だと思っています。ただ, 一般的には, できないと思っている方の方が圧倒的に多いかと思います。将来的にはできるという方向に持っていくべきだろうということで, そのための現行法は一般的にはできないとされている。ただ, 実質的には恐らく多くの方はできるようにすべきだということなので, それを創設改正なのか, 確認改正というのかは別として, あるべき姿としてはできるように持っていくということを示すという点で非常に分かりやすくまとめていただいたのではないかと思っております。

【龍村座長】ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

奥邨委員, お願いいたします。

【奥邨委員】基本的にはこれでよろしいかと思うのですが, 1点だけ。私自身が十分理解できないところで, 2ページ目の独占性のところに線を引いておられます。独占性というのは「独占的に行うことができるという地位をいうものとする」とあるわけですが, 結局, トートロジーになっているのではと思ったわけです。ここは多分, これから議論した結果を実現できるようになることという趣旨であって, ゴールなので少しぼやかしているということなのでしょうか。注意をしないと, 独占性の意味が, 自分だけが使えるというふうに捉えられると, 必ずしもそうでもない状況も許容せざるを得ないのかもしれないので, 少し分かりづらいかもと思いました。, 私自身はまだ十分よく分かっていないのですが, ゴールとして出来上がったものが, 最終的にはここに言葉として入るという理解でよいのでしょうかとコメントしておきます。以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。確かにこの点は独占性と独占的な地位というところで, やや御指摘の点があるやにも思われます。いかがでしょうか。

大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】最終的にはここをどう考えるのか, ないしは例外を認めるのかという点は重要だと思いますが, 今回のものは中身を決めるというよりは, 整理学というところがポイントだと思います。今まで独占性, 独占性と言ってきましたが, それは少なからず同床異夢的であり, いろいろな独占性があり得ます。今回のポイントというのは, 独占利用性という意味であるということです。「独占性」は, ほかの独占の意味もあるのかもしれませんが, 用語として今まで「独占性」と漠然と使ってきたのは, 独占利用性の意味だと定義すれば, 議論が整序できるようになるという意味で, 賛成できるのではないかと思っています。この中身を決めるというよりも, 仮置きというか, このような置き方をして, それにより議論を深めていくのは大変よろしいことではないかと思っております。

【龍村座長】ありがとうございます。森田委員, お願いいたします。

【森田委員】用語の問題は, これから議論していくので, ニュアンスの差を包含した形での, 差し当たりの定義と受けとめるべきだろうと思いますが, この独占的という用語はエクスクルーシブと同義かどうかについても, 例えば, 「独占的かつ排他的」という表現をするときと, 単に「独占的」と表現するときでニュアンスが違うという方と, いや, 独占的というのはエクスクルーシブのことだから, それは排他的と同じだという方と, 両方おられるのだと思います。その辺りは, この時点ではいろいろな考え方があるということを包摂した形で先に進まなくてはいけないのだろうという前提で, 差し当たりの合意をするということだと思います。

それから, 最初に前田委員が指摘された点ですが, 不法利用者に対する関係では独占性の対抗は関係ないのではないかというのは, 結論的には私もそう考えるべきだと思いますが, 例えば, 賃借権は対抗要件を備えることによって, 不法占有者に対して明渡請求ができるという見解では, 対抗要件を備えた賃借権は物権化しているから妨害排除請求ができるという論理を挟むわけです。したがって, 対抗力を有することが不法占有者との関係でも一定の意味を持つという立場が現にあって, その限度では意味があるという考え方もありうるところです。これに対して, そういうことは意味がないのではないか, 不法占有者との関係では, 対抗の問題は本来関係しないはずだという見解もあり, これは賃借権が対抗要件を備えているか否かは, 不法占有者に対する妨害排除の要件とはならないと考えるべきだという主張と一致するもので, そういう考え方も有力だと思いますが, 対抗力を備えるか否かによって結論が違うという考え方も, 現に実定法の中にそのように解することが可能な規定もありますので, 選択肢としてはそれもこの段階で排除する必要はなくて, そういう考え方もあるけれども, それを採るべきかどうかというのは今後議論していくことで, その過程で今の点が問題になるのだろうと思います。

【龍村座長】大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】私が先ほど申し上げたのは, 対抗関係ではなく, 含意するところは, 対抗力ということですね。特許法の新99条では, 対抗要件を具備しなくても対抗力が法律により当然に付与される。その意味では, 対抗要件と対抗力の用語を細かく分けていかないといけないと思います。先ほど申し上げました, この図ウに関しては, 対抗力の問題です。ただ, 毎回申し上げますとおり, 特許法新99条に対応するものが著作権法でも去年できて, 対抗要件を具備しなくても, 当然に対抗力が具備されるというのは, 通常実施権が物権化されるから, それによって差止請求権が発生するという, そこには対抗関係というのとは別の, 対抗力が問題になっています。対抗力も対抗力自体というよりは, 対抗力が具備されているがゆえに物権化されて, 差止請求権が発生するという, 理論の構造になっていて, 対抗関係というのとは別に, 対抗力を具備したら物権化して差止請求権にいくという, そこは言葉を注意深く分けていけば統一的に説明できるのではないかと思っています。対抗関係と対抗力, ないしは対抗力から生ずる物権化と更にこれから生ずる差止請求権というのは別の話なので, そこは言葉を単に対抗とは言わずに対抗力とするとか, ないしは, 更に明確化するなどしていけば, 統一的に説明ができるのではないかと思っております。

【龍村座長】ありがとうございました。そのほかいかがでしょうか。

栗田委員, お願いいたします。

【栗田委員】2点ございます。まず, 先ほど来, 話題になっております

【資料2】7頁図ウ③の「独占性を対抗し」という部分ですけれども, たしかに「対抗」という言葉自体には色々な意味がありますから, 中立的に「独占性を主張し」のように修正していただければ, 後でご議論いただくことにも対応できるのではないかと思います。

次に, 図アから図ウまでに共通して「独占性を対抗し, 直接差止請求を行うことができない」と書いて頂いています。そうすると, 「独占性を対抗」できるということは「直接差止請求を行うこと」ができることと同義なのでしょうか。というのは, 独占性を主張できる場合には幾つかのパターンが考えられます。まず, 独占的ライセンス契約を締結したにもかかわらず, これに反するライセンス契約が行われた場合には, 独占的ライセンシーは, 著作権者等に対して債務不履行責任を主張することができます。また, 新しいライセンス契約の効力を否定して, 例えば, 妨害排除請求権等の著作権者等の有する権利を代位行使することも考えられます。最後に, 独占的ライセンス契約に基づいて直接に差止請求を行えるという場合があろうかと思います。以上のように, 3つくらいの場面が考えられますが, これからの議論では, 「独占性を対抗」できるという表現は, 「直接差止請求を行うことができる」という意味に限定されることになるのでしょうか。

【龍村座長】ご指摘の点は, まさにこの整理案の問題意識がその辺にあったのだろうと思います。

事務局から今の点, お願いいたします。ありがとうございました。

【高藤著作権調査官】ここに関しましては, 独占性を対抗できることイコール, 直接差止請求権を行使できるという考え方もあろうかとは思うのですけれども, 今, 栗田委員からおっしゃっていただいたような形で, 単にライセンスの効力を否定して, ただ著作権者の方の権利を代位行使できるという構成についても否定はしていないものになりますので, 幅広にその辺りも含めて議論を進めていければと考えております。

【龍村座長】ありがとうございます。よろしいでしょうか。

大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】先ほど, よくぞ言っていただいたという感じで, 私も前から同じように思っておりました。最終的にこの独占性の対抗という結論になることはあるかと思うのですけれども, 私としては, 独占性の「主張」という方がニュートラルでよいと思っています。結末としては何らかの対抗要件のようなものを具備しなくても当然に主張できるようになるのか, 第三者に主張する際に, 例えば, 登録がないといけないとか, 契約がないといけないとか, 何らかのものを要求するのか, 何もなくてもできるのかという辺りの話とも絡んできます。対抗というと, 普通は対抗関係ということになるので, 少なくとも不法占有者に対してはそうではないと思います。最初から対抗と言ってしまうと, 独占性の主張のために何らかの対抗要件のようなものが必要であるとしているように, ややプリジャッジしている感じのところもあります。よって, できるだけその辺りは, ニュートラルな方に持っていく方が, 摩擦ないし混乱が少ないのではないかと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。そのほか, いかがでしょうか。

前田委員, お願いします。

【前田委員】先ほど栗田委員から御説明いただいた3つのパターンがあり得るかどうかということですけれども, 図アと図イに関しては, マル1の独占的ライセンス契約の当事者となった著作権者等に対して債務不履行責任を追及できるのは, これは当然なのではないかと思いますし, それから, 代位請求ができるかということについては, 図アの場合と図イの場合は, もともとの左上の著作権者は, 他のライセンシーに対して, 差止請求ができないと思いますので, したがって, 代位行使することもできないということになり, 結果, 図アと図イの場合において考えられるのは, 独占的ライセンシーが他のライセンシーに対して直接の差止請求ができるか, あるいは, 更に言えば, 損害賠償請求ができるかという問題に帰着し, 栗田委員が整理された3つのうち, 著作権者等に対する債務不履行責任を追及できるかどうかという問題や, 代位行使ができるかという問題は生じないのではないかとも思うのですが, いかがでしょうか。

【龍村座長】ありがとうございます。

今の点につきまして, 栗田委員から御意見ございますか。 なければ, ご意見として承らせていただきます。事務局におかれては, 独占性の対抗に代えて, 独占性の主張という御提案がございましたので, 整理に当たってはその辺りも勘案いただければと思います。また, 4ページには, 不法利用者との関係で独占性の対抗というものがどのような法的意味を有するのかという問いもありますが, 妨害排除だけでなく不法行為の問題もありますので, 債権侵害の不法行為の問題と, 債権に基づく妨害排除の問題と, この2つが含まれてしまうことになるのかと。その異なる両方を問題として意識することができるようなネーミングが便利かと思います。

今村委員, お願いいたします。

【今村委員】今回初めてなので, 前回の議論を把握していない部分もあるのですけれども, 今回の概念の整理の部分で, 独占的ライセンスという言葉ですが, 独占性を対抗できない独占的ライセンスも, 一応, 独占的ライセンスとは言うという理解, そのように概念を整理する? 別の概念は作らないという理解でよろしいでしょうか。事務局に確認したいです。

【龍村座長】事務局への御質問でしょうか。

【今村委員】はい。

【龍村座長】事務局, いかがでしょうか。

【高藤著作権調査官】はい。独占的ライセンスと単純に呼んだときに関しましては, 現行法上, 独占性をほかの第三者に主張できないようなものについても, まず包含するものとして使って, それと違う意味で使う場合については, 何らかのその旨を言及していただいた上で御説明していただくのがよいのかと思っています。

【龍村座長】今の点, そのようなことでよろしいでしょうか。ドイツの場合だと, いきなり排他的ライセンスと言うことになり, 結論を先取りするようなネーミングになってしまうようですが, それとも違うご趣旨でしょうか。

大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】先ほどから気になっていたのですが, 独占と排他が違うと言って, ドイツ語ではausschließlichだから, 英語に訳せばexclusiveだし, フランス語だとexclusifだし, ほとんど英語とフランス語はほとんど一緒ですが, ausschließlichを「排他」と訳して, exclusiveを「独占」と訳すというのも意味が違う。結局はexclusiveの意味にausschließlichだってなるのではないか, そこは違う構造ではないのではないかとも思います。そこが違うのだったら, 最初から厳密に独占性と排他性は違う, でも, 一般的には独占するから排他できるので, そこは違うのだとしたら, 独占で決めるとしないのがいいのかもしれないので, その違いがどうなのかと思います。

【龍村座長】やはり両者は, やや違うのではないかと。

【大渕座長代理】そう思っていらっしゃる。独占と排他が違うのだったら, 先ほど言われたように, 独占的ライセンスの中に排他型と非排他型とあるのか。どの程度違うのか。

【龍村座長】先生方にお伺いしたいと思いますが, exclusiveとausschließlichと, 同義とお考えでしょうか。

【大渕座長代理】いや, その辺りはドイツ語にお詳しい方にお聞きするのが一番いいですよね。

【栗田委員】exclusiveの方が分かりませんから……。

【大渕座長代理】両方お互いに分からないから分からない。そんなに違わないのでしょうか。顕著に違うことではないということでしょうか。

【龍村座長】最初に説明がありましたのが資料1の, 前回のワーキングでの指摘や, 結論を先取りするようなネーミングは避けた方がベターであるという指摘であるわけですが, ausschließlichというのは, 排他的とのニュアンスで理解されがちと理解していたのですけれども, 他方, exclusiveは独占的と日本語に訳すことがあまりにも定着しているので, その辺の違和感なのかと。

【栗田委員】単純に日本語の問題ですが, 「排他性を有する権利」という表現を使って, 差止請求ができる権利であることを示すことがあります。例えば, 判例には, 人格権は「排他性を有する権利」であるから, これに基づく差止めが認められるのだというように判示するものがあります。このように, 「排他性」というときには, 差止請求権の根拠となるというニュアンスを帯びることがありますから, これを避ける趣旨で──この点をペンディングにするために──「独占的」という言葉を使うのには一定の理由があろうかと存じます。

【龍村座長】ありがとうございます。大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】今のお話は積極論であって, 排他であると, イコール差止肯定だから, それをプリジャッジするのを避けるために, 独占という言葉を使うということかと思います。今まで, 特許の世界でも「独ライ」(独占的ライセンス)と言われてきから, 私なんかも体に染み付いて, 「独ライ」だと思っています。あれはある種, 賢いネーミングだったわけですが, 排他と言った瞬間に差止肯定という結論と結び付いてしまうから, その言葉は避けて, 日本語の言葉の問題としては「独占」と置いておく方が, つまり, 「排他」よりは「独占」の方が中立性が高いということであれば余り異論もない話かと思います。できるだけ私としては中立性の高い言葉にして, 最後に結論が決まったらまた用語を変えることもあり得るので, そこまでの間の作業用の暫定的ターミノロジーとしてはできるだけ中立性の高いものを使った方がよいと思います。ですから, 栗田先生のお考えを聞くと, ますます「排他」という言葉を排して, 「独占」にした方がニュートラルでよろしいのではないかと思います。

【龍村座長】御異存なければ, そのような整理でいきたいと思いますが, よろしゅうございますか。

森田委員, お願いいたします。

【森田委員】先ほど栗田さんのご質問の中に, 図ウの局面で, 債権者代位権的なものは検討の対象に入っているかどうかという点があったと思いますが, 立法論する場合には, 債権者代位権による構成を具体化した規定であるとか, あるいはその特則的な規定を設けることでウの局面に対応するということも, 選択肢としてはあり得ることだと思いますので, これを排除するという趣旨ではないと理解すべきであると思います。この局面では, 著作権者の権利行使と利用者の権利行使とで齟齬があったときに, それをどのように調整するかという問題があり, それはどの法律構成を採った場合にも生じるものですが, 債権者代位権的な構成を採る場合には, それによって一定の整理がされる可能性がありますので, 立法論をする際にはそのような調整問題があるということを認識しているのであれば, 検討の視野に入ってくるということになろうかと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。栗田委員, お願いいたします。

【栗田委員】ありがとうございます。先ほど前田先生から御指摘いただいた点について, 私の考えを述べておきたいと思います。

【資料2】5頁以下の図アや図イの場面において著作権等の譲渡や第二のライセンス契約が有効であった場合には, もちろん, 債権者代位権の行使は考えられないかと思います。しかし, 「独占性の対抗」ということの意味をこれから考えるときには, 選択肢として, 例えば, ②著作権等の譲渡や②ライセンス契約の効力を否定した上で, 債権者代位権の行使のような手段を認めるという構成も一応あり得るのではないかと考えてお話ししたわけです。もっとも, それも難しいということであれば, またお返事を頂ければと思います。

【龍村座長】ありがとうございます。そろそろ時間が押しているのですが……。

大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】私は第1回のときも申し上げましたけれど, 前広にいろいろ言っておく方がいいので, 申し上げます。今のところ, 私は, 現行法でも, 通常ライセンスに基づく差止請求権が固有権として解釈論上できるという立場なので, ここで議論が進んでいる点は大変結構だと思います。ただ, 今後の議論で何が起きるか分からないので, 前広に固有権もあれば, 債権者代位もあるとして, 最終的には安定的に差止が肯定できればいいので, そこは余り最初から決め打ちせずに議論をしてはどうかと思います。その趣旨で, 栗田委員はいろいろ可能性を並べられたかと思います。メインは, 私としては, 固有権でやっていただくのがいいと思いますけれども, 債権者代位というのも忘れずに付けておくというのは, 議論を幅広くやるという意味では, よろしいかと思います。

【龍村座長】奥邨委員, お願いいたします。

【奥邨委員】検討のスコープの確認ですけれども, 対抗を認めるかという話と, 差止請求権を認めるかという話は密接に結びついているという問題設定であったように思っていたのですが。そのため, 私は, 対抗を認めるということと, 差止請求を認めるということはセットなのかと思っていたのですが, そうではないということですね。対抗はできる, そして, 差止めは, 差止請求権を直接付与するのではなくて債権者代位権とかの形で対応するという解があるということですね。当然, その場合は, 差止めが, 債権者代位権で対応できるようになった以上, その上で, 独占ライセンシーに差止請求権を直接付与する必要はないですね, というような整理になって終わるという理解でよろしいのですね。この辺は, ある程度終わってしまった議論なのかと思っていましたが, それが戻ってくるのですね。そこも含めて議論していい, 幅広に議論していいということであれば, それはそれでそうしますけれども, 念のために, 確認をしておきたかったのですが, 戻してしまって大丈夫でしょうか。

【龍村座長】事務局, お願いいたします。

【高藤著作権調査官】今年度のワーキングチームでの検討課題の主眼としましては, 独占的ライセンシーに直接かつ固有の差止請求権を認める制度を作るかどうかというところにあります。そのため, まずはそれを前提に御検討を進めていただければと思います。ただ, 前回も課題解決手段のところで整理しましたように, 債権者代位的な構成についても排除しているわけではありません。ですので, この直接かつ固有の差止請求権を認めるような制度というのが難しい, 若しくは導入することが不都合だという状況, 検討結果になりましたら, 債権者代位的な構成で, 例えば, 検討対象場面のうちの不法利用者の場面だけでも手当てするといった制度設計もあり得るのではないかと思っています。したがいまして, 検討の進め方としては, まずは独占的ライセンシーの直接かつ固有の差止請求権を認めるためにどういう制度設計があり得るかというのがあり, その中で「独占性の対抗」というものが, 理論的な前提として問題になるのではないかといった御議論が, 昨年度の本ワーキングチームにおける議論の中でもありましたので, それとの関係で「独占性の対抗」の制度の御議論を頂きたいと考えているところであります。「独占性の対抗」の制度と差止請求権の制度というのは, 行ったり来たりしながら議論を進めていく必要はあるかとは思っています。

【奥邨委員】分かりました。私の理解が不十分だったかもしれません。ありがとうございます。

【龍村座長】奥邨委員, よろしいでしょうか。

【奥邨委員】はい。大丈夫です。

【龍村座長】ありがとうございました。

では, 資料2については, この辺りで。また, 事務局の方で引き続き御整理をお願いいたしたいと思います。

続きまして, 議事の3番目になりますが, 関係者に対するヒアリングについてになります。議事1に関する事務局からの説明にありましたとおり, まず, 課題解決手段の各法制の検討に入る前に, 今回の検討課題において実現が期待されている状況あるいは課題解決手段のうちの独占的利用許諾構成を検討する必要性を確認・整理するために, 独占的ライセンスを活用している業界の関係者の方々へのヒアリングを実施したいと思います。

ヒアリングは, 今回, 次回に分けて複数の関係団体の皆様に対して行うことを想定しております。

本日は, 本ヒアリングのため, 一般社団法人日本書籍出版協会, 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの2団体の皆様にお越しいただいております。

ヒアリングに入る前に, まず, 本ヒアリングで関係団体の皆様からお伺いしたい事項につきまして, 事務局より説明をお願いいたします。

【高藤著作権調査官】参考資料3を御覧ください。参考資料3は, 「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム(第2回)のヒアリングにおいてお伺いしたい事項」と題しております。ここでは, 今回のヒアリングにおきましてお伺いしたい事項を大きく4つにまとめております。

1つ目が, 独占的ライセンス契約の実態についてです。具体的には, その業界においてどのような相手とどのような内容の独占的ライセンス契約を締結することが多いのかといった情報についてお聞きしたいと考えております。

2つ目が, 独占的ライセンスの「独占性の対抗」や独占的ライセンシーから直接差止請求ができないことについて問題となった事例, 若しくはそれについて何か現状, 懸念点があれば, それについてお聞きしたいと考えております。

3つ目に, 独占的ライセンスの対抗制度や独占的ライセンシーに固有の差止請求権を付与する制度を導入することについて, どう考えるかというところをお聞きしたいと考えております。

具体的には, マル1として, 独占的ライセンスの対抗制度を導入することについて, どのように考えるか。

マル2として, 独占的ライセンスに係る差止請求権の制度を導入することについて, どのように考えるか。

マル3として, 具体的にそれらの制度を導入するに当たって, どのような制度設計が望ましいか。仮に相手方が著作権等の譲受人だったり, 他のライセンシーだったり, 不法利用者の場合で制度設計を変えるべきと考えている場合には, それぞれどのような制度設計が望ましいか。

2ページ目にいきまして, マル4ですけれども, 独占的ライセンシーに固有の差止請求権を付与する制度を導入する場合には, その差止請求権の行使にあたって著作権者の承諾を要件とすることについてどのように考えるか。その他, 承諾を要件としないまでも, 差止請求権の行使前に著作権者に事前通知するなど, 著作権者に配慮した要件を課すことについてどのように考えるか。

マル5として, 独占的ライセンスの対抗制度や差止請求権の制度の導入方法として, 既存の独占的ライセンス契約を含めた債権的な独占的ライセンス契約については, 現行法における取扱いを維持して, 別途, 出版権のような物権的な独占的利用権を新たに創設して, 当該独占的利用権の設定を受けた者だけが, 第三者に対して, その独占性を対抗して, 差止請求権を行使できるという制度にすることについてどう考えるか。ここが独占的利用許諾構成にすべきなのか, それとも出版権的構成でもよいのかといった御質問になります。

次に4は, 「出版権の利用状況等について」と書いてありますけれども, 出版物の独占的ライセンスがある場合のみの御質問事項になります。

具体的には, マル1として, 締結している出版物に係る独占的ライセンス契約のうち出版権設定契約と独占的な出版許諾契約の割合はどの程度か。

マル2として, 出版権設定契約ではなく, 独占的な出版許諾契約を選択するのはどのような場合か。

マル3として, 出版権設定契約を締結している場合, 出版権の登録を行っているか。行っているとすればどのくらい行っているのか。また, 出版権の登録を行う, 行わないの判断に際し, 考慮するポイントは何か。

マル4として, 出版権に基づいて差止請求を行う場合, 実務上, 著作権者の承諾を得ているか。得ている場合については, それぞれどのような対応で承諾を得ているのか。

マル5として, 出版権を利用するにあたって支障を感じている点があるか。あるとすれば, どのような点に支障を感じているか, といったところをお伺いしたいと考えております。

こちらにつきましては, 個別に一問一答形式で答えてもらうというよりも, まず, 各団体の皆様にこれらについてまとめた形で10分, 15分程度で御説明していただいた上で質疑応答という形を想定しております。こちらのお伺いしたい事項に関しましては, 事前に各団体の皆様にお渡しして御検討, 御確認いただいているところであります。以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。

極めて多岐にわたる事項で恐縮ですが, それではヒアリングに入りたいと思います。流れとしましては, まず2団体の皆様に順番に, 今, 事務局から説明のあった事項についてお話しいただきまして, その後, まとめて質疑応答及び議論の時間を設けたいと思います。

それでは, はじめに一般社団法人日本書籍出版協会の村瀬様, お願いいたします。

【村瀬氏】よろしくお願いいたします。事前に今, 御説明いただいたヒアリングについてお伺いしたい事項に沿って資料3として回答を書面の形で既に御提出させていただいております。一問一答でお答えいただく必要はないと事務局からも言われたのですけれども, 逆に一問一答的な方が説明しやすいかと思って, このような資料とさせていただきました。

資料3に基づいて口頭で捕捉しながら, こちら側の意見を述べさせていただきたいと思います。流れとしては, このヒアリングでお伺いした事項, 参考資料3のところで書かれた1と4のところをまとめて御説明した後, 2, 3についての意見を整理して述べさせていただくという順番でいきたいと思います。

まず, 「独占的ライセンス契約の実態について」というところですが, おおむね出版界での契約は, 基本的に紙媒体書籍ないしは電子書籍の「著者」と出版社の間で締結されるケースが多いです。その場合, ライセンサーとなる著者自身の「出版」利用は原則としてNGであって, 用語の整理で頂きました完全独占的ライセンスとなるものが多いというのが, 事前の調査というか, 業界内での確認で出てきたものです。

一方, 電子的利用においては不完全独占的ライセンスとなることも多くなっている。これについては, 後でもうちょっと説明しますけれども, そういう状況です。

また, サブライセンスに関しては, 紙媒体書籍に関して, ライセンシーになる出版社が更にサブライセンスを行うというケースはほとんどないと考えられています。

一方, 電子書籍に関しては, 電子書店や電子取次に対して, 配信許諾を出版社が行っている関係で, その法的構成としてはほとんどサブライセンスする形を取っているという契約が行われています。

また, 出版利用以外の二次的利用について, 事前に包括的な独占的ライセンスを得ているというケースはあったとしても少なく, 平たく言えば窓口契約という形でオプションを持っているというケースが多いと考えられています。

ヒアリング事項の4に沿ってお話をいたしますが, 独占的だけれど, 契約の割合はどのぐらいなのかというところですが, そもそも先ほど申し上げたとおり, そのような独占的なライセンス, これは出版においては出版権という既存の制度がございますので, それを利用しているケースも含めて, 電子書籍も含めて, ほとんど書籍というスタイルのものの契約のうち, 9割近くが出版権ないしは独占的利用許諾権になっているのではないかと考えられます。

その一方で, ムックであるとか, 雑誌に関しては, ほとんど執筆契約とか, 掲載許諾とか, いろいろな言葉が使われていますが, 独占的ライセンスというように解釈できるような契約関係は現実にはそんなに存在してないのではないかと思われます。というのは, 雑誌などについては, 流通期間がはじめから限定されていますので, その期間だけ雑誌として出ればいいという感覚が非常に強いので, そのある程度の期間, 独占をするというよりは, とにかくそこに執筆して掲載する許諾だというように整理されているケースが多いのではないかと思います。

それから, 4のマル2のところで, 出版権という制度があるにもかかわらず, そのような出版権制度を使わないケースはあるのかというところですけれども, これは紙媒体書籍の場合, 紙媒体として複製して出版するという意味では, 同じものであるものの, 商品として単行本であるとか, 文庫本であるとか, 新書系のものであるとか, 商品としてある程度セグメント分けがされているケースというのが, 出版市場において存在しますので, そこを複数の会社にまたがって出版されるようなケース。その場合には, 出版権というものが複製権というものに対して設定される関係で, 非常にそのような意味では使いにくいことになっていますから, 実際の契約においては出版権設定契約というスタイルを取らずに, 単行本に関して独占的に出せるとか, そういった契約形態になっているケースが多いのかと見受けられます。

また, 電子書籍の場合は, 近年, 電子書籍プロパーとして出るものも含めて, 最初の著作権者自身が自らのサイトその他で強力な発信力を有しているケースもあって, そうすると公衆送信権に関して出版権を設定してしまうと, 著者自らの発信力をそいでしまうというケースもありますので, 意図的にそこのところを外して, 細かく権利の使い方について設定するような契約のスタイルが取られているといった状況だと考えられます。

マル3について, 出版権設定契約を締結している場合に, 登録を行っているか, 否かというところですが, これは登録が行われているかどうかというのは, 文化庁が一番御存知のはずで, ほとんど行われていないと思います。というのは, そのポイントは何かということで言うと, 出版は1点ごとの売上の総和というのが, 本当に100万円程度とか, その程度の小さいもののプロジェクトの集成ですので, そこで例えば, 今, 登録料は1点当たり3万円でしたっけ。3万円というのは3%に相当するわけです。この経費というのは, 到底承諾し難いというのが, 第一のポイントとしてあります。

それから, あとはそれ以外のところにも関係してきますが, 出版利用の場合は著作権者個人であるケースが基本的に多い。それから, なおかつ, ペンネームを使ったりということで, その実名を秘匿したいというプライバシーに関する配慮という問題もあります。その辺りが登録の場合, なかなか実際に実名の住所など明らかにして登録することが原則として求められていると解釈しておりますので, そこのところも登録を行わないポイントかとは思っております。

それとあともう一つは, 本来の対抗要件としての登録という点で言うと, 出版においてなかなか二重契約にあたるものというのは起きなくはないのですけれども, これまでの場合, 出版社同士の事前の話し合いで解決できていたケースが多くて, わざわざ出版権を持ち出さなくても解決に至ったケースが多いというのが, これまで出版権の登録がほとんど行われてこなかった理由ではないかと考えられているところです。

それから, 出版権に基づいて差止請求を行う場合ですが, この承諾を得ているか, どうかというところで言いますと, そもそも出版権を設定するかどうかというところについては, 当初の出版契約において出版権の登録をすることができるというように包括的に同意を取って出版社は臨んでいるわけです。実際に差止請求をする場合にどうするかというところですが, これは著者が実は許諾をしていたとか, バッティングする著作物が, 著者が別名で出していたことであったとか, いろいろなケースがあり, 個別の案件ごとに相談, 確認をするのが一般的な実務であるところが会員各社から寄せられた意見です。

ただ, その一方, 明らかな海賊版の場合は, 対応スピード優先で著者に確認, 相談せずに差止請求を選択することはあり得るのではないかというのが大方の意見でありました。

出版権を利用するに当たっての支障はどうかというところでありますが, これについては後ほどの2, 3とも関係するところではありますけれども, 紙媒体出版の時代では, 出版権の設定ということと, 出版に関する利用許諾というのは, ほとんど法的にもずれがなく動いていたのだろうと思いますが, 現在, 紙媒体や電子媒体もビジネス戻りが多様化し, 特に電子書籍に関しては携帯自体がいろいろなスタイルを取りつつある。そうした場合に出版権という概念だけで, これは, 原作はそのままという要件がかかってくるのかもしれませんけれども, そことの関係で出版権がなじまないものが出てくる可能性があるのではないかというところ。

それから, もう一つは, 先ほど申し上げたとおり, 出版権が支分権の複製権ないしは公衆送信権に基づいて, それに対する独占的な対抗力が, どのような言葉で説明したらいいかというのがありますけれども, それに対して設定するというたてつけになっている一方, その出版利用といった場合に, その複製権ないしは公衆送信権という支分権単位の利用で本当にくくることができるのかというところに, 多少流通形態, それから, 最終的な商品形態の多様化も含めると, 疑問が残るところがある。そこのところが出版権を利用するに当たっての支障として考えられるのではないかという意見が出ているところです。

以上の1, 4を前提として, 2, 3の諮問についての回答ということになるわけですけれども, 差止請求権ができないことについて問題となった事例, 懸念はあるのかということで言うと, 繰り返しになりますが, 従来は出版権の制度があったので, 出版業界においてはこのような問題, これが直接ないから困ったという話はなかなか起きてきていない。ただ, 今後については, 商品流通形態の多様化に伴って, 後でMCFさんが調べられるようなゲーム系のコンテンツも出版の利用の中に入ってくる可能性もあったりするわけですから, それを考えると今後, こういった問題が浮上する懸念はあるのではないかと考えます。

最後に3ですが, 今回, 諮問であった独占的ライセンシーが独占利用できる地位があると主張できる制度を導入することについてどうだということに関しては, 我々は基本的に望ましい, あった方がいいと考えております。

次に, 固有の差止請求権についても, これも望ましいと考えております。この「固有に」というところで補足をすると, 先ほど申し上げたように, 出版利用の場合, 多くは著作権者が個人であるということ, それから, 匿名性を要望している著者も多いということを考えると, その著者の権利を行使するという構成より, ダイレクトに独占的ライセンシーたる出版社が行うということの方が, はるかに当事者の意思に合致をするものになるのではないかというところ。それから, 出版社はそんなに大規模な出版社はありませんけれども, それでも個人の著者に比べれば経済的力, その他についても, マンパワーについても大きいところがありますので, その著者と出版社との基本的な契約関係のお互いの認識からすると, そういったことは基本的に出版社にやってもらいたい。出版社としてもそれを当然やっていくつもりだという合意が存在しているというのが実情ではないかと思います。

マル3で, 制度についてどう考えたらいいかというところです。これは我々側から申し上げるのは僭越かもしれませんけれども, ここで回答させていただいたのは, 二重譲渡, 二重契約的な状況の場合では, この独占的ライセンス契約の存在を立証するとともに, 相手方がその存在を認識していることを立証できれば対抗できるというスタンスでいいのではないかと。一方, 不法に利用されている不法利用者の場合であれば, 単に独占的ライセンス契約の当事者であることの立証があれば対抗できるというところで差をつけてよいのではないかといったところが大方の意見のまとまりであります。

なお, この契約の存在の認識をどうするのか。先ほど出版権というのは使っていないと申し上げたので, そうするとどういった契約が成立しているかどうかというのは外から伺い知れないということになりますけれども, 数年前から日本出版インフラセンター, JPOが展開しているJPROという出版情報のデータベースというものを公開しております。そこのところで今, 広がっている途中であって, 率としては高くないのですけれども, 契約状況, 今は出版権の設定状況というものをそこに乗せることができるという形にしております。そうすると, それがある程度定着してくれば, 例えば, この契約を新たに行おうというものは, そこを見れば出版権が設定されている契約が存在しているかどうかというのを知り得る状況が作れるのではないかと考えて, 数年前からJPOにおけるJPROという事業を進めているところですので, そのような存在を前提とすれば, 今申し上げたウの選択がいろいろな当事者間の問題の利害関係を考えると妥当なところかと考えた次第です。

マル4についてですが, これは先ほどお答えしたとおり, 要件とするかどうかに関していうと, これは多くの契約の場合, 基本的にはお任せしたいというのが著者の意向であるケースが多いし, あと, スピード感などを考えると, それが出版社が主体的に行っていくことが望ましいと言えるわけですが, 今言ったように二重ライセンスみたいなケースの場合にはどちらにせよ問い合わせは実務上しておりますし, 問い合わせをしないケースというのはほぼ不法行為が海賊版利用などに限られている状況なので, これを法律上の要件とされると, 少し実務に足かせがかかる形になるのかと考えておりますので, せいぜい通知ないしは事前又は事後の通知程度であれば, 実務に大きな影響は起きないのかと思います。

最後に3のマル5ですが, この最終的な制度が仮にできた場合に, 出版権的構成になった場合には, この既存の出版権制度をどうするのかという議論が起きてくるのではないかというところが事前の事務局とのミーティングの中でも出てきたわけですけれども, ここにいらっしゃる委員の先生方, 皆さん御存知のように, 平成26年に現行出版権制度が改正される段階で, 書協としては, 実はその前は現行出版権制度ではない別の制度の導入を強く主張していた経緯がございまして, 出版権というのは, もともと八十数年前にできたときから今に至るまで, 一種の妥協の制度であると認識しております。それから, 出版権自体が支分権に紐付いた権利という点で, その意味で手堅いものではあるものの, 実際の利用形態とのずれがあるところも使いにくいところであるので, 今の出版権について満足しているという意味ではないのですが, とは言いつつ, もう八十数年その出版権制度と出版界が付き合っておりますので, そこのところが大きくいじられるような制度改正につながることは躊躇するというのが, 会員各社の総意だというところです。

以上, 雑駁な意見になりましたが, 書協からの意見としてヒアリングに対する回答とさせていただきたいと思います。

【龍村座長】ありがとうございました。

では, 続きまして, 一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの板谷様, よろしくお願いいたします。

【板谷氏】一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムの板谷です。よろしくお願いいたします。

資料4をお願いいたします。本日は意見を申し上げる機会を頂きましてありがとうございます。早速ですが, 著作権制度で対応を必要とする事項につきまして, 特に著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入の必要性と, 独占的ライセンス契約の対抗制度及び独占的ライセンシーに対し差止請求権を付与する制度の導入についての意見を述べさせていただきます。パワーポイントの右下にページ数を振っておりますので, そちらの御確認をお願いいたします。

1ページ目をお願いいたします。モバイルコンテンツ市場ですが, こちらはカテゴリー別の内訳となっております。2018年にはモバイルコンテンツ市場というのは, 2兆2, 261億円の市場に成長しております。カテゴリー別の内訳としましては, 「ゲーム・ソーシャルゲーム」が構成比の60%以上のシェアで, その他音楽・動画等がございます。このゲームの方が1兆4, 177億円の規模に成長しているという状況になっております。市場は年々成長を続けていることが御理解いただけるかと思います。

2ページ目をお願いいたします。こちらは情報通信業の倒産件数の推移です。平成24年から28年は減少傾向にあったのですが, 28年からは340件ほどで横ばい傾向が続いていることが理解できるかと思います。

続きまして3ページ目をお願いいたします。次はM&Aの件数の推移です。我が国におけるM&Aというのは増加傾向が続いております。2018年には件数最多を記録しております。グラフの濃い青色の部分が日本企業同士のM&Aですけれども, 日本企業同士のM&Aが急激な増加傾向の要因になっていることが理解できるかと思います。

4ページ目をお願いいたします。スマートフォン, モバイルのゲームの分野で急成長しているトレンドのビジネスを事例として御紹介いたします。「ゲームサービス業」と言われるゲーム分野のセカンダリ市場についてです。「ゲームサービス業」というのは, このビジネスモデルは左の図のようにスマートフォンのゲームを開発・運営しているゲーム企業から, 運営専門の企業がゲームタイトル又はゲームタイトルと関わる人員を移管, これはM&Aだったり, 協業となったりするわけですけれども, そういったビジネスモデルで運営専門企業がゲーム運営を続けていくというビジネスモデルになっております。

主なビジネスモデルとしては大きく2つになっております。1つ目は, ゲーム企業が移管の際に運営企業から対価を得て, タイトル等の全てを運営専門企業へ譲渡するビジネスモデル。

2つ目は, ゲーム企業が運営専門企業から一時金を得た上で, 運営する権利を運営専門企業へ譲渡して, 運営によって生み出された利益の分配金を運営専門企業から得るといったビジネスモデル, こういったものになります。

ゲームサービス業が, 急成長, トレンドとなっている主な理由としては, 運営専門企業が運営を引き受けることによって運営に係るコスト構造などを見直しており, その結果, 利益が増加しており, また, 運営の見直しによる長期運営を実現しているところにあります。右のグラフというのは, そこのスマートフォンゲームのセカンダリ市場の規模の統計と予測になっております。年々急激に市場規模を拡大していて, 2017年には1, 000億を超えている市場に成長していることが御理解いただけるかと思います。

5ページ目をお願い致します。急成長している, このゲームサービス業における著作権に関する主な契約類型を御紹介いたします。スマートフォンにおけるゲームの大多数というのは, 将来に向かって新たに著作物を生み出して, 著作物を追加していって成立しているコンテンツになります。そのため, 表に示したように, これは契約時点ですけれども, 移管時に発生している著作権の権利の処理と, 移管後の将来運営している中で発生する著作権の権利の処理をするということになります。

主な類型としては, このマル1からマル5の5類型があります。マル1は, ゲーム企業から運営専門企業へ権利を譲渡する類型になります。マル2, マル3は, ゲーム企業から運営企業へ独占的ライセンスを与えた上で, マル2として移管後に発生した権利は運営専門企業が保有している類型。マル3は, 運営専門企業からゲーム企業へ権利を譲渡して, 独占的ライセンスの許諾を受けている類型となります。

マル2というのは, ゲーム企業と運営企業の各々が著作権の権利を保有している類型で, マル3というのは, ゲーム企業が著作権の権利を保有して, 運営専門企業というのは独占的ライセンスの許諾を得ている類型となります。

マル4とマル5は, マル2とマル3の非独占ライセンス許諾を得ている類型と御理解いただければいいかと思います。

ここで類型マル2からマル5について, 現行法上, 仮にゲーム企業が運営専門企業へタイトルを移管した後に倒産などをした場合には, 運営がかなり不安定になってくるといった現象が起こってきます。

6ページ目をお願いします。今までのIPを利用してのライセンスももちろんですけれども, 今, 御説明いたしましたビジネスの環境から著作権の権利移動が発生している状況にあります。これを大前提として意見を述べさせていただきたいと思います。記載をしております「著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」の改正案については, 速やかに改正されたいと要望したいと考えております。

7ページ目から9ページ目が, 独占的ライセンスの対抗制度に関する意見となります。7ページ目をお願いいたします。7ページ目は, ライセンサーが第三者に権利譲渡をした場合についてとなります。独占的ライセンシーが安定して, 独占的に著作物を使用したビジネスを継続できることが必要という意見でございます。意見としては, 新たな権利者に独占的使用権の契約は引き継がれるべきであるといった趣旨になります。そのため, 独占的な使用に関するライセンスフィーというのは新たな権利者にお支払いすることを記載しております。

8ページ目をお願いいたします。無許諾の第三者が使用している場合についてでございます。意見としましては, 独占的ライセンシーは独占性を侵害性されている状況となっておりますので, まずは権利者であるライセンサーが第三者の無許諾使用を排除すべきだと考えております。これはライセンサーが独占的ライセンシーに与えたのを独占的使用の履行する意味になると理解しております。ただし, 権利者であるライセンサーが一定期間での差止等の対応をしないなどの事情がある場合に, 独占的ライセンシーが自らの独占的使用を守る目的の範囲で, 無許諾の第三者の著作権の使用を差し止めることができるという法制度というのは妥当と考えております。

9ページ目をお願いいたします。「ライセンサーから新たに許諾された第三者に対して」という部分の意見です。こちらは独占的ライセンシーの契約をしているライセンサーがそもそも新たな第三者へ許諾すべきではないということですので, ライセンサーには落ち度がありまして, 新たに許諾を受けた第三者もライセンサーへの確認の落ち度があると理解しております。そのため, 独占的ライセンス契約が存在するにも関わらず, 新たに契約された第三者への使用許諾契約は無効とされる法制度ではいかがかと, そういった法制度も妥当ではないかと考えております。

そして, ライセンサーと第三者の間の契約が無効との前提に立てば, 新たに許諾を受けていた第三者による著作物の使用が仮にあれば, この前8ページで意見しました取扱いと同じ処理で対応できるのではないかと御意見いたします。

10ページ目をお願いいたします。その他検討すべき事項としまして, 本意見に係るところを記載しております。権利の明確化というところがあるのですが, こちらは著作権の権利というものはあくまでも権利者にあるということを前提に, 意見を作らせていただいております。ライセンシーに必要な権利行使として, 独占性を守る範囲での差止請求権の権利行使が妥当ではないかと考えております。多数の契約として存在している著作権の独占的な使用に関する契約というのは, ライセンシーが差止請求及び損害賠償請求できる契約事項とはなっていません。要するに, 特許法でいう専用実施権の契約といった格好にはなっていないということです。スマートフォン, モバイルコンテンツビジネス, 大きなシェアを占める, 特にゲームビジネスでは, 将来に向かって著作物が出てきますので, その契約時点で発生しているものだけを想定してはいけないということです。

以上のとおり, 手短ではございますけれども, モバイル・コンテンツ・フォーラムからの意見とさせていただきます。ありがとうございました。

【龍村座長】ありがとうございました。

それでは, ただいま御説明いただきました内容についての御質問, 御意見がございましたら, お願いいたします。奥邨委員, お願いいたします。

【奥邨委員】どうもありがとうございました。書協さんとモバイル・コンテンツ・フォーラムさんにお伺いしたいのです。

まず, 書協さんにですが, 頂いた資料の2ページ目のところで, 先ほどJPROとおっしゃったシステムのお話がありました。結局, 認識を立証するためにはJPROのようなシステムが使えるのではないかという御提案だったと思うのですが, 裏返すと, これは文化庁の登録ではないのですけれども, 誰がやるかは別として, 何らかの公示手段がないと認識というのは機能しないのではないかという御趣旨なのかと思ったのですがいかがでしょうか。JPROがあった方が便利だというのは分かるのですけれども, そのようなものがなかった場合はやはり厳しいんでしょうか。今回, 出版だけではなくて, いろいろなものが対象になるわけですが, JPROのようなものが整備されていない分野は多々ありますので, そういう場合は認識を求めるのは難しいという, ご趣旨の御意見だったのか, そこをお伺いしたいのが1点です。

それから, 2点目は, 3ページ目の5のところですけれども, 御趣旨としては, 出版権はそのままにしておいた上で, やるのであれば, 二階建てというか, 建て増しというか, 外枠でもう一個ということでしょうか。つまり, 物権で構成するのだったら, 出版権の方は改造せずに, 建て増しで, という御趣旨なのか, 確認したかった点です。

それから, モバイル・コンテンツ・フォーラムさんについては, 頂いた資料の7ページ目のところでライセンスフィーの支払い方ですけれども, これはいろいろ議論のあるところですが, ライセンシーは, 元のライセンサーに払うべきで, その後は, 元のライセンサーと, 権利を譲り受けた人の間で勝手にやってもらうという考え方もありますが, そういう制度は, 実務的には厳しいということなのでしょうか。ご提案は, 新しいライセンサーに払えるようにしてほしいといったことだったのですけれども, 逆に言うと, ライセンスフィーのところは, 元の人に払うということは厳しいということでしょうかというのが1点目です。

それから, 2点目は9ページ目ですけれど, 独占的ライセンスの対抗制度のところで, 第三者の契約を無効にするのが妥当となっていますが, 妥当とお考えの理由を伺えればと思います。何で無効が妥当なのか。実務上はこうしてもらった方がいろいろと便利だとか, 役に立つということがあれば, その辺を説明願えればありがたいと思いました。以上です。

【龍村座長】ありがとうございます。モバイル・コンテンツ・フォーラムの板谷様からよろしいでしょうか。

【板谷氏】1つ目に頂きました御質問につきまして, ライセンスフィーの支払いのところについて, 7ページ目ですね。こちらは権利者がはっきりしているのであれば, 権利者に支払ってしまった方がいいといった考えで, この考え方をお伝えしております。

9ページ目の無効が妥当ではないかという理由につきましては, 先ほどのお話の中にも入れたのですけれども, もともとライセンサーというのは独占契約をしていることを認知していることがまず大前提だと考えております。そのライセンサーが第三者に対して新たに使用権を与えたといったときに, 使用権を受ける側もライセンサーに確認する義務が発生していると考えています。その両者のお互いの落ち度があると考えて, これを無効にしてもいいのではないかという理由でこちらを記載させていただいています。

【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。

【龍村座長】順序が逆になりまして失礼いたしました。

日本書籍出版協会, 村瀬様, お願いいたします。

【村瀬氏】お伺いの2点のうち, 2つ目の二階建てでどうかという話ですけれども, これを議論したときには, 果たして最終的な決着点というか, 制度がどうなるかというところは, 我々が議論すべきところではなく, むしろ出てきたときに考えようという話でありましたので, 現行, 出版権制度に実質的な変更がなく, 二階建てになるということは, 許容できないのかというと, それはそれで別に現行の出版権がそのまま残るのであれば, それはそれでありなのではないかと思います。その一方で, 客観的に見ると, 何か二階建てというのは据わりが悪いよねと考えると, 従来の言葉で言うと債権的云々という言い方を使っていたと思いますけれども, そっちの方が望ましいのかしらというところで, 議論はしたものの結論は出ていないというのが書協の内部での状況です。

1つ目, 最初のところについてですが, これは独占的ライセンス契約の存在を認識していることの立証と言うのは, 必ずしも公示だけではないと思いますけれども, 実際, 他業界のことを考えてここの主張をしたのかというと, 別に考えているわけではなくて, 出版業界ではこのような公示に類する制度を業界内として設けているので, そういった事実を考慮した上で制度設計に役立てていただければという趣旨で書いたと受けとめていただければと思います。

【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。

【龍村座長】よろしいでしょうか。大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】二者の両方にお伺いできればと思います。大きな話から始めますけれども, 著作権法上一番の主役は著作者, クリエイターで, それを支える出版社という重要な役割を果たされているのですが, その二者の関係についてお伺いしたいと思います。まず, 海外の方からいくと, 英米の理系の出版社だと, 著作権を吸い上げるのは当然で, 原稿料を払うのではなくて掲載料を取っているところから始まっているとのことです。日本の出版社の場合には, 著作権を吸い上げるというのではなくて, 出版社が得ている権利が, あくまでも物権なのか, 債権なのかということですよね。その前置きの上で, 民法の場合だと, 例えば, 立法者は, 土地の利用権の関係では地上権を想定したけれど, 力関係で地上権という物権よりは賃借権の方が, 資本側というか, 所有者には負担が軽いからということだと思います。そのようなことになったということも言われているので, そのような力関係のようなことも考える必要があると思います。この民法の場合とはむしろ逆になっており, 著作権の場合には資本を持っているのはむしろ出版社の方で, クリエイターの方は持っていないから力関係は逆になっていると思います。その表れかどうか, 先ほどの英米の理系の出版社がどちらか分かりませんが, そのような観点から見ると, 物権の方が強くて債権の方が弱いから, 力関係から資本側は強い方を選ぶということでもあり得るわけです。そこで, 何をお聞きしたいかというと, 先ほどの書協さんの御説明だと, 要するに割とシンプルなアンサーだったのですが, 紙媒体は出版権を使い, 電子の場合には債権が多いということなので, それはさきほどの力関係における強い, 弱いという話ではなく, 紙媒体は出版権が使いやすいし, 電子の場合にはそうでもないということが, 今後考えていく上で出発点になるところだと思いますので, その辺りの両者の関係のようなものをお伺いできればというのが1点です。

2点目は小さな質問なのですが, 先ほどJPROでしたか, 公示でもってやればいいのではないかということを言われたのですけれども, 私がいろいろな方からお聞きすると, 本の場合には奥書という, その方が言われるには, 公示などよりは皆が一番見るのは奥書というのが最大の公示方法なのだから, そこに何らか書くという方法があるのでしょうか。方法はいろいろあるのかもしれないので, 文化庁の登録でやるというのもあれば, ホームページでやるという方法もあれば, 奥書という方法もあるかと思うので, 先ほどせっかくホームページの話が出ていましたので, 奥書の利用可能性についてお伺いできればと思います。

【龍村座長】では, 書協さんの方から, お願いいたします。

【村瀬氏】まず, 単純に, 奥書というか, 奥付ですね。奥付利用ということで言うと, これまでの出版物での記載慣行からすると, 翻訳出版物のときに翻訳権を独占するということを書くというのは, エージェントの要請というのもあるのですけれども, 慣例的にほぼ定着をしている。その一方, 国内出版物に関して, それが独占的利用許諾に基づくものなのか, 出版権設定に基づくものなのかということを奥付上表記するという慣行というか, 具体的に進むというのは, 今, 実質的に行われていない状況です。ただ, これについては, 今後, そのようなことが望ましいという状況があれば, 奥付にどんどん書いていくということを誰も否定するものではないだろうと思います。

それから, もう一つ, 権利, 例えば, 譲渡契約であるとか, 云々という話ですけれども, 書協の方で認識している契約状況としては, 日本においても医書系であるとか, 理工系のものについては, 出版契約の中で著作権譲渡契約を選択しているケースが見受けられます。ただ, 譲渡といっても, これは期間限定で, 出版期間が過ぎると契約終了とともに当然に著作権が著者の元に戻るというスタイルのものが取られています。出版社が立場的に強いにも関わらず, 強い権利をなぜ取らないのかと, そのような趣旨なのかどうかとありますけれども, 実際にはそれほど大きくない規模の出版社であっても, 年間数十点という書籍を出し, また, 雑誌で月刊誌を出している場合, 月に12回雑誌を出したとして, 1つの雑誌で使っている外部著者の数というのは何十人にも及ぶわけで, 結構たくさんの著作物を利用しているわけです。そうすると, 出版社の立場としては, 要は出版物が流通している期間だけ権利があればいいのであって, それをどのような形で取るのかというところでいうと, 過剰な形で取るのはかえってその権利を管理するコストであるとか, 処理するコストのことを考えると, 余り合理的ではないのではないかという印象は持っていると思うのです。そうすると, 先ほど申し上げたとおり, 雑誌については流通期間が物理的に限定されている関係上, それを一つ一つ, 著作権譲渡契約であるとか, 出版権設定であるとか, そういったものを結ぶ, これも本来トラブルになったときを想定すると, きちんと書面化するということが実質的には必要な処理だろうと思いますけれども, そういったことがかなり実務的に過剰な対応になっているという認識が出版社の現場にあると思います。

その一方で, 書籍はある程度一定期間, 3年とか5年, もうちょっと長い期間, 売り続ければもっと長くですけれども, ある程度長期にわたって運用するものなので, そこのところできちんとした独占的ライセンスというものを出版権という形で持つということは, 契約に係る手間暇などを考慮しても十分に割が合うし, お互いの著者と出版社との間の認識にも合致をする。そんな形で使い分けていると御理解いただけるといいかと思います。

【龍村座長】では, 板谷様, お願いいたします。

【板谷氏】まず, ビジネスの中で著作権の譲渡が最初に想定されるのです。その次に独占的, それが無理だったら非独占という順番で, ビジネスを作っていくことになるのです。その中で要因となるものとしては, 譲渡を受けたいのだけれども受けられないというのは経済的な問題だったり, 権利者の考え方だったりするわけです。ただ, 進め方としては, まず, 譲渡があって, 独占があって, 非独占という順番で考えて進めていくということです。もともと譲渡していただいて, ビジネスを進めたいというのがありますので, 何もわざと債権的なところを選んでいるわけではございません。利用関係, その立場については, 独占的なものが得られた場合については, 独占性を守っていきたいというのは基本持っております。なぜあるかというと, それは非独占でもいいところを独占にしているところが理由です。

以上で答えになっていますでしょうか。大丈夫でしょうか。

【龍村座長】よろしいですか。ほかに, ございますか。

では, 前田委員, お願いいたします。

【前田委員】書協さんにお尋ねしたいと思うのですが, 資料3の3ページの段落3の最後のところで, 「現行出版権規定が支分権単位の設定となっていることを考えると, 出版権的構成だと実際の利用形態に対応が難しく」という記載をしていただいておりますけれども, この部分の趣旨についてお伺いしたいと思います。仮に二階建て構成を取るとしても, 出版権的構成を取るとすると, どうしても支分権単位の設定になってしまったり, あるいは権利の内容を法定する必要が出てくるだろう, しかし, それは実際上は使いづらい可能性があって, それよりは, 債権的な独占的ライセンスであれば, ライセンス対象は自由に定めることができるので, 自由に対象を定めることができる独占的ライセンスに対抗力あるいは差止請求権を付与してもらった方が実務上使いやすいのではないかと, そのような御趣旨という理解でよろしいのでしょうか。

【村瀬氏】はい。前田先生のおっしゃるとおりの御理解で結構でございます。

【龍村座長】よろしいでしょうか。ほかにございますか。

では, 私から何点か。書協さんにお伺いしますが, 先ほどのJPROについてですが, そのデータベースはライセンスの独占性についても公示がされているのですか。

【村瀬氏】今は出版権を設定しているコンテンツですか, ということを掲示するスタイルになっていますので, その意味では独占性があるということで。

【龍村座長】著作権法上の出版権の公示がされているということですか。

【村瀬氏】はい。

【龍村座長】モバイル・コンテンツ・フォーラム様にお伺いしますが, そちらの業界では, そういった公示的なものはあるのでしょうか。

【板谷氏】ございません。

【龍村座長】ないわけですか。ただ, その利用者の目線から見て, ある程度, どこがほぼ独占と言いましょうか, ほぼメインでサービス提供しているということは分かるものなのでしょうか。

【板谷氏】著作権表示自体はございますけれども, 独占という意味ではございません。独占性の表示はございません。

【龍村座長】ありがとうございます。ほかにございますか。

では, 奥邨委員, お願いいたします。

【奥邨委員】モバイル・コンテンツ・フォーラムさんにもう一点追加で。7ページのところで先ほどライセンスフィーのことをお伺いしましたけれど, これは, 譲り受けた人に, 完全にライセンサーになってもらいたいというような認識だと思うのですがいかがでしょうか。特許の議論では, 元のライセンサーからしか提供されない, いろいろなサポートがあったり, いろいろなノウハウがあったりするので, 権利を譲り受けた人が, 使用を認めてくれるのはよいのだけれども, それ以外の部分まで, 元のライセンサーから権利を譲り受けた人に全部移られても困る, ということがよく言われるのですが, ゲームビジネスの場合は, ライセンサーというのは基本的に「権利を使っていいよ」ということぐらいしかしてくれない人ので, 権利を譲り受けた人が完全にライセンサーとなっても特に差し支えがないということでしょうか。元のライセンサーから何かサポートがあったり, いろいろなノウハウがあったり, 協力があったりと, そういうことはないという理解でよろしいでしょうか。

【板谷氏】それは違います。例えば, 使い方の監修だったりございますので, 協力を得ないといけないところはございますので, それを含めて権利者になったからには一旦は契約を引き継いでいただいて, 具体的にどうするかというところはその後話し合うことかと思っております。

【奥邨委員】分かりました。ありがとうございます。

【龍村座長】では, 栗田委員, お願いいたします。

【栗田委員】その点とも関連するのですが,

【資料4】5ページのところで, 移管前著作権と移管後発生著作権の処理について表を作っていただいています。その前提についてお聞きしたいのです。移管後に追加コンテンツを制作するのは, 一般的には「運営専門企業」の側なのでしょうか。例えば, 移管後に開発元である「ゲーム企業」の側に──例えば委託のような形で──追加コンテンツを作ってもらうことは少ないという認識でいいのでしょうか。

【板谷氏】移管後の運営企業の方が作っていっておりますので, その運営企業の方に著作権が発生していっております。

【栗田委員】「ゲーム企業」の側で追加コンテンツを作ることは余りない, ということでしょうか。

【板谷氏】そのとおりです。

【栗田委員】分かりました。

【龍村座長】では, 大渕委員, お願いいたします。

【大渕座長代理】私は最初聞いたときから気になったのですけれども, 前田委員から聞かれて, ますます疑問が深まりました。要するに, 支分権で押さえたいというときには, 当然, 設定出版権の枠組みですけれども, そこにずれがあるので困るよと言われて, 抽象的にずれがあるというのは分かるのですが, 具体的に, 複製権, 公衆送信権以外のどこを押さえたいのに, 支分権がないから, 押さえたいところとずれているのかという, ずれを具体的に述べていただければというのが1点あります。それをお聞きしてからの方がいいのかもしれませんけれど, そのずれがあるにも関わらず, そのずれがすごく問題であれば, 最初から出版権を現在でも使わずに, 全部, 先ほどのように自由に選べる許諾契約で処理するという方にいきそうなのに, その方向にいかずに紙出版については, ずれが気になるけれども出版権を使い続けているというのは, ずれてもさほど気にならないのか, 差がないからそれでよいのかという, その辺りのずれの具体的内容と, ずれがあるにも関わらず, 物権的な出版権を使っておられる理由, あるいは, 今後はまた出版権による処理から変わるのかもしれないのかという辺りについてお伺いできればと思います。

【村瀬氏】現状, これまでずれを我々の中で議論したものの多くは, 紙媒体出版において先ほども御説明しましたけれども, 書籍の質自体の版型ごとに出版の内容を限定する, ないしは, 著作権者の意向として書籍はこちらA出版社, ペーパーバックはB出版社といった設定をしたいといった要望があったときに, そのときに出版権設定契約を使うのか, 使わないのか。使ったときに少なくとも紙媒体出版の複製権という意味ではかぶってしまうので, そこのときにどのように解除するのか, ないしは契約を巻き直すのかというところが実務上は各出版社, いろいろな方法で対応しているというところが, ずれを認識している1つのポイントかと思います。

もう一つは, 今後出てくるのかというところであるのですけれども, 電子書籍に関して, です。何らかの著作物に対して, ある種のいろいろな加工を施した上で, それを一体のものとして出すといった場合に, 「原作のまま」という表記でいけるのかどうかというところは気になるところだと言えると思います。この2つかと思いますけれど, よろしいでしょうか。

【龍村座長】森田委員, お願いいたします。

【森田委員】書協さんとモバイル・コンテンツ・フォーラムさんとそれぞれに対するご質問になりますが, まず, 書協さんに対しては, JPROというデータベースについてのコスト負担といいますか, 先ほど1件当たり3万円の登録料は負担しえないということですが, こちらのコスト負担がどうなっているかについてお伺いしたいと思います。

それから, モバイル・コンテンツ・フォーラムさんについては, 先ほどのお話しにあった, 移管後発生著作権について, 著作権を一旦譲渡した上で独占的ライセンスをするというのは, 著作権が発生する前にそれについて譲渡契約と独占的ライセンス契約とを結ぶということを前提とされていると思いますが, 移管後に運営専門企業で発生した著作権をゲーム企業が譲り受けて, 更に運営専門企業との間で独占的ライセンスをするという仕組みを採ることのメリットといいますか, なぜこのようなことをされているのかということについて教えていただきたいと思います。

【龍村座長】よろしくお願いいたします。

【村瀬氏】書協からでいいですか。

【龍村座長】はい, 書協さんからお願いいたします。

【村瀬氏】JPROの利用料ですけれども, 実際このJPROで公示されている情報というのは, 権利情報に全然限らず, むしろそれ以外の書誌情報, 書籍のそれがいつ出版されるのか, どのような価格なのか, それから, その内容はどういったものなのかといったもの, 皆さん, 昔から本屋さんで見たことがある「これから出る本」というのが小冊子で出ているものがありますけれども, もともとそのような近刊情報から発生して, その書籍として出ているもの, 流通可能なものの内容の書誌の一覧というものを書店又は流通事業者に対して提供するという制度の中に権利情報を一緒にぶら下げているという体裁を取っています。その全体の登録利用料として, 確か, 今, 1件1, 000円の御負担を出版社からいただいている状況です。

【龍村座長】板谷様, お願いいたします。

【板谷氏】御質問いただきました, ゲーム企業の方がなぜ譲り受けるのかというところですけれども, こちらはIPとか, ゲームに関わっている著作権を, 自ら全部管理しておきたいからというのが1つの目的です。あとは, 本当に経済条件というところで, この構成を取っております。

【龍村座長】ありがとうございました。よろしいでしょうか。

では, 最後に1点, 私から書協さんにお伺いしますが, JPROといったデータベースがあるとのことですが, 基本的にはそれは様々な機能を持ったものであって, それがもし存在しないとした場合でも, 世の中に奥付付きの書籍が出回っているという状態で, 同業者であれば当然に分かるはずだという認識をお持ちでしょうか。つまり, JPROというものがなくても, 書協としては, ある程度, 事実上, 奥付のそのような機能が浸透しているという御認識でしょうか。

【村瀬氏】もちろん, そうです。

【龍村座長】ということのようでございます。ほかによろしいでしょうか。

では, この辺りとさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

それでは, 最後に, 全体を通して御意見, 御質問等がございましたら, お願いいたします。よろしいでしょうか。

では, なければ, 本日はこのくらいにいたしたいと思います。

最後に事務局から連絡事項ございましたら, お願いいたします。

【高藤著作権調査官】本日はありがとうございました。次回のワーキングチームにつきましては, 改めて日程の調整をさせていただき, 確定しましたらまた御連絡したいと思います。

【龍村座長】それでは, 本日はこれで第2回のワーキングチームを終わらせていただきます。本日はありがとうございました。

――了――

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