「著作権保護技術と補償金制度について(案)」及び「私的録音録画補償金制度の具体的制度設計について(案)」に関する議論の概要(第2回,第3回小委)

平成20年10月20日

1.「著作権保護技術と補償金制度について(案)」
(第2回小委 資料2)

(第2回小委における意見)

  1.  権利者の要請という概念について,必ずしも納得できる定義が見当たらない。また,業界ルールという考え方も定義がなく,ダビング10という技術的保護手段の著作権法上の位置付けも依然不明だと感じる。
     このままでは補償金制度の縮小・廃止に向けた道筋が見えないばかりでなく,制度が際限なく拡大していくのではないかとかいう不安感を持つ。
    1. 1月17日の資料では,策定経緯からダビング10は例外的に補償金での対応を検討するということだったが,今回の資料では,補償が必要な場合は業界ルールであって権利者の要請によらない場合として一般化されている。今後の放送政策等の動向次第では補償の必要がある範囲が拡大し得ることとなり,将来的に廃止という原則論が後退しているのではないか。
    2. 本来,補償金の必要性に関する原則論の議論を十分尽くしたうえで具体的な制度設計を議論すべきだと思うが,それらの議論なく対象の拡大等が提案されているように見える。
  2.  業界ルールが検討される場において,特定の権利者団体から表明された意見通りのコピー回数にならない場合や,意見表明がなかった場合には,権利者の要請がないことになり,技術的に保護されていながら補償金が必要になることがあり得るのであれば,この考え方には賛同できない。
    1. 権利者かどうかにかかわらず誰かが導入を決めた技術的保護手段,著作権保護技術が施されたプラットフォームがある場合,その技術の恩恵に預かる形で権利者が著作物を提供するのであれば,その際の権利者の意思こそが補償の要否の判断において重要であると思うが,著作権保護技術の施されたプラットフォームが提供されている場合でも要請がなければ補償金が必要になるということには非常に大きな疑問がある。
    2. 権利者の要請があるかどうかの認定は非常に困難であり,法的安定性に欠けるのではないか。
    3. 現行法には業界ルールや権利者の要請という概念はなく,しかも,それらが技術の導入あるいは策定時に焦点を当てているということだが,他方で現行法の技術的保護手段の定義では,コンテンツリリース時の権利者の意思に焦点を当てている。そのような違いはどう説明されるのか。
    4. 著作権改正担当者が書き継いでいる「著作権法逐条講義(五訂新版)」(加戸守行著,2006,社団法人著作権情報センター発行)では,技術的保護手段の回避規制の解説として,著作権保護技術により私的複製に対して許諾権を及ぼせるようになったと説明しているところ,本小委員会の中間整理では,技術的保護手段を用いる権利者の意思は無償利用までを認める意思まで含まれいているとはいえないと説明されており,それぞれの解釈の関係はどうなのか。
       著作権保護技術を施すことが許諾権を及ぼすことと等価であれば,契約で提供する場合とどう違うのか。有識者の意見も拝聴したい。
       今後色々な態様のサービスが出てくるなか,補償金の要否に関する原則論が不明確なまま,ダビング10について評価することはできない。
  3.  どのような場合が業界ルールに該当するのかよく理解できないが,業界ルールであろうが個別ビジネスモデルであろうが,個々のクリエーターから見れば,全員が提供条件の検討に参加できるわけではなく,技術で利用をコントロールできることも同じなので,あえて分けて考える必要はないのではないか。
     いずれの場合もコンテンツのリリース時には契約があると思うが,個別ビジネスモデルの場合はリリース時点の権利者の意思を考慮するのに対し,業界ルールの場合は技術の導入時の権利者の意思のみを考慮するのはなぜなのか非常に理解に苦しむ。リリース時点の意思に基づいて判断するのが自然ではないかと率直に感じる。
    1. ダビング10は「権利者の要請により策定されたものとは言えないことは明らか」とされているが,権利者の言うとおりの内容でまとまらなければすべからく権利者の要請にならないのではないか。例えば苦渋の選択をしたとか納得がいかないと権利者が付言するだけで要請に該当しないことになれば,要請の有無の区別は実際上意味がないのではないか。
    2. 具体的な制度設計に入る前に,例えばタイムシフト・プレイスシフトの評価等,どのような行為に対して補償が必要かについてコンセンサスを得る必要があるのではないか。そうした前提を充分に議論したうえで,何が補償金の対象になるのか法律できちんと分かるようにしてもらわないといけない。
  4.  利用者がコンテンツをリスペクトしないということは決してない。自分が愛するクリエーターに対価を還元する方法は補償金でなくてもよく,よりダイレクトで確かな方法が技術によって確保されていくことが理想。
     そのうえで,補償金制度の分かりやすい存在理由や権利者の損害が何なのかが整理されておらず納得できないと申し上げてきたが,著作権保護技術が施されたものは対象にせず,音楽CDと地上波放送だけを,しかも権利者が選んだ著作権保護技術ができるまでの間に限り対象にするという趣旨であれば,随分整理されてきた。分かりやすい考え方に基づいて今後の制度設計等を議論していき,説明しやすい制度になるのであれば評価できる。
     補償金制度の存在理由を説明できるとすれば,複製が自由であることなのではないか。利用者はダビング10であれば補償金は不要とすることを最終目的としているわけではない。地上波の公共放送は全く別であり,自由が確保されるのであれば補償金があっても良いのではないか。ユーザーとしては私的な範囲での複製の自由が確保されることが理想。
  5.  放送,特に地上波は公共性が重要。多くの方に色々な番組や適切な情報を届けることが最大の使命であり,今後技術が変化したり多用なメディアが出現しても変わらないだろう。一方で,放送コンテンツの権利を守っていくことがそうした番組の提供にも繋がると考えている。ダビング10が一番の解決策とは思っていないが,現時点で取り得る選択肢としてはぎりぎりだと感じている。
     補償金の議論も恐らく今後ずっと続いていく面はあると思うので,それをどこで区切るかになってくる。現時点で,本資料については細かい反論や納得しかねる面もあるが,とりあえずこれでいくしかないのではないかと思っている。
  6.  現行の補償金制度を続けていくのであれば,情報公開を行ったうえで課金対象を増やすか,もしくは契約ベースのコピー回数制限を進めるかわりに補償金をなくす方向に進めるかの二者択一をきちんと方向性として示せない限り,消費者は納得しないのではないのかという印象を持った。
  7.  補償金制度の見直しの議論はそれぞれの立場から原則論が述べられ時間がかかっており,私的録音録画の実態が増える中,権利者への補償がどんどん減っている。一定の時間的制約もあり,権利者としては,今回の制度設計案をいわば段階的な結論として評価している。私的録音録画小委員会の責任としても段階的な結論を得ることは重要だと思っている。
    1. 本資料は,補償金制度のうち契約と技術で対処できる部分を切り分けて制度の対象外とするので,まさに制度が縮小されていくことになると思う。残った制度について,縮小する保証がないという意見があったが,CDが次世代メディアに転換されるのかなど,あくまでも実態を見ていくという内容なので,現時点で保証を出せという話ではまたスタックしてしまう。
    2. これまで適法配信を通じて著作権保護技術と契約で解決できると言われながら,具体的なモデルや方法論などが示されたこともなく,ただ補償金制度に対するアンチの観念論として主張され続けてきたに過ぎない。適法配信からの録音録画が補償金制度の対象範囲から外されることによって,もし今後消費者の利便性を損なうことなく権利者の不利益が発生しない形が実現できるとすれば権利者にとっても前進になると思うが,適法配信からの録音録画が補償金制度から外れると無許諾で行える私的複製の範囲が狭くなり許諾が必要な範囲が広がる。そのことや著作権保護技術の評価を踏まえ,関係者の合意によっては適法配信についても補償金制度で対応するという選択肢も残っている。消費者に与える影響も省みず原則論をずっと主張していればよいわけではないと思う。
       このような議論を継続していくためにも関係者が合意形成を目指しつつ冷静な議論を行うことが必要であり,この段階で段階的な結論を得ることが重要ではないか。
  8.  この資料は著作権保護技術の進展に伴って私的録音録画補償金制度を縮小していく筋道とその論理を明確に基礎づけるというスタンスであって,今後の業界ルール策定においては,補償の必要性がないことをデフォルトとし,補償金の対象とすることを前提に著作権保護技術を求める主張もありうるが関係者の合意がない限りは補償の必要性はないということだと理解している。それでも音楽CDと地上波デジタル放送は補償金の対象として当面は残らざるを得ないだろう,というのがこの資料の基本的な考え方であり,その論理は明確ではないかと思う。
     ダビング10は過去に策定された業界ルールであり今後のルール作りの考え方を適用するわけにはいかないので,当然,これまでの経緯に従った評価をせざるを得ないだろう。もしダビング10について前提理解が異なるのであれば,ダビング10はいったん白紙に戻し,この資料に示された今後のルール作りの考え方に従って補償金の対象としないことを前提に再度検討しなければ結局永久に解決できないと思う。
  9.  著作権保護技術が完全になり,著作権本来の契約によるシステムが実現すれば結構だが,現状では過渡的に補償金制度と併用していくことにならざるを得ないことを認識しなければならないと思う。理屈上は著作権保護技術と補償金制度が併存できないことは決してないはずだが,それを言いだすと収集がつかなくなる。業界ルールと個別ビジネスモデル,権利者の要請の有無などの区分において補償金制度を残す部分を絞る基本的な考え方は,この非常に難しい問題の調整の一案としてはあるのではないか。
  10.  「著作権保護技術と補償金制度について(案)」には,あくまでも補償金制度の縮小を原則とすることが明確に書いてあるが,その点が具体的制度設計案の中でよく読めない。
    1. ダビング10については既成事実をベースに議論せざるを得ないと思う。しかし,縮小の方向が原則なので,今回この方向で決めたとして,例えば5年なり10年たった段階で環境の変化等に基づいて見直すことを明記すれば,いろいろな疑念を持っている方も納得するのではないか。

(第3回小委における意見)

  1.  権利者の要請の有無も重要かもしれないが,ダビング10のように著作権保護技術が機能している範囲では私的複製が制限されているため補償の必要はないと考えざるを得ない。
     今後,著作権保護技術に関する権利者の要請は補償金制度を前提としないものになるということだが,仮に権利者以外の関係者が補償金制度を前提としたルールを提案して合意されれば補償金制度は存続することになる。ダビング10はまさしくそのような状況に近く,結局,ダビング10の経緯が一般化される恐れがあるのではないか,ダビング10がさらに変更されることで本当に補償金制度廃止の条件が整うのか,と懸念している。
    1. 私的録音録画機器の今後の正確な見通しを持っているではないが,機能は複合的になっていくだろうし,汎用化していく姿は変わらないと予想している。また,ネットはユビキタスな環境になってきているので,コンテンツ管理もより容易にできるようになるだろう。一方,パッケージからの録音録画は当然縮小していくと思うので,補償金制度の縮小・廃止に向かい,契約と技術をベースとした新たなコンテンツビジネスモデルが生まれていくことになろう。
  2.  著作権保護技術が施されている場合には,当該著作物についてその保護技術が機能する範囲においては私的複製をオーバーライドする,いわば契約によって法的に複製を許諾・制限しているのに等しい状況なので,当然ながら補償は不要という見解である。
     技術的保護手段を回避して複製した場合,私的使用のための複製とは認められず,著作権侵害に該当するので,法律を利用すること自体が権利行使と同視できるのであって,そのような場合にまで補償金を与えることは,二重利得に該当する恐れが高い。
    1. 著作権保護技術は利用者の複製行為が私的録音録画の範囲を超えないように制限するだけのものだという意見がある。この考え方によると,私的複製の範囲は著作権保護技術が許容する複製の数によって伸縮することになるが,解釈としてふさわしいか学識者の意見を拝聴したい。
       仮に,著作権保護技術によって私的複製の範囲が伸縮するとすれば,法的評価は私的領域で行われる複製について契約で許諾を与える場合とますます変わらないとも考えられる。契約によって許諾された複製を私的複製の範囲から除外するという考え方は,この小委員会でもほとんど合意されていると思うが,それとの相違について法的な説明が必要ではないか。
    2. 権利者の要請があったとされる条件が明確でない。単に権利者が技術仕様の策定に参加していれば条件が満たされるわけではないことは明らか。「策定されたルールが権利者の意向を反映していればいるほど,権利者の被る経済的不利益は少なくなり補償の必要性もなくなるはずである」ということは,逆に読めば,権利者の意向がルールに反映されない程度によって,補償の必要性があると読める。
    3. 検討経緯に照らしてダビング10は「権利者の要請により策定されたものといえないことは明らか」と記載されているが,ダビング10の検討経緯と同様に,当該技術仕様の策定に関与する権利者団体が立場を明確にしない場合,あるいは表明した複製数と異なる結論になった場合に,権利者の要請はなかったので補償の必要性があることになると読める。これでは補償金制度が縮小するということに疑義が生ずる。
    4. 著作権保護技術と補償の必要性の有無を検討するに当たっては,権利者の要請という概念によって技術仕様の策定時点での権利者の意思の反映を評価するのではなく,実際に著作物を提供する際の権利者の意思を評価すべき。したがって,技術仕様の策定時点の経緯にかかわらず,複製回数が制約される環境に著作物が提供される事実をもって補償の必要性はないと考えている。
    5. 音楽CDからの録音について,著作権保護技術との関係を考察する限りでは,補償の要否を検討する余地があると考えている。しかしながら,補償の要否を決するためには権利者に重大な経済的不利益が生じているかどうかを吟味する必要があり,自ら購入した音楽CDをプレイスシフト再生したり,音楽配信サービスからダウンロードした音楽を再生することを主目的として録音される場合には,重大な経済的不利益が生ずるとは考えられず,補償の必要がないと帰結すると考えている。
    6. レンタルCDからの録音が権利者に経済的不利益を与えているかどうかについては,著作権保護技術が及んでいない場合でも,権利者,レンタル事業者,利用者間の契約によって複製の対価を徴収できるはずであり,電子情報技術産業協会が行ったアンケート(第3回小委参考資料2-3)においても,レンタルCDの利用者の61%がレンタル利用料の中にリッピングの対価,複製の対価が含まれていると思っているという結果が出ている。
    7. 北米のコンテンツ産業の隆盛は資本主義社会のルールである契約によってもたらされている。北米のビジネスモデルでは,コンテンツホルダーの要望を受け,メーカーがコンテンツ保護技術を開発,提案,導入をして,コンテンツホルダーに対価が還元されるというビジネスモデルが構築されてきたという事実がある。
    8. 私的自治の原則の下で契約と技術によって対価が還元されるモデルを推進していくために,メーカーは技術の開発と提供に努力しており,今後もその環境作りを支援したいと考えている。したがって,補償金といった法制度ではなく契約と技術による解決を志向することによって,消費者の認識や不公平を是正し,権利者に対する利益の還元を推進し,さらには産業の国際競争力を強化できる道を目指していくべきだと考えている。
  3.  私的複製に該当するかどうかは誰のために複製するかという質と複製の量という要素から判断できると思うが,少なくとも複製回数を制限する著作権保護技術は,家庭内またはこれに準ずる限られた範囲内で使用することに必要な量という観点から,私的複製の範囲を明示し,それを超える回数を制限する技術であり,補償すべき適法な私的複製の領域をスポイルするものでもないので補償の必要性が消えるわけでもないと考えている。
    1. 音楽CDはSCMSという著作権保護技術がかけられていながら補償金の対象になっているが,著作権保護技術がかけられていれば補償の必要性はないという意見との関係をどう説明するのか。
  4.  音楽CDのSCMSは,もともとMDのようにコピーコントロールができる装置で使用されることを目的とした技術だったが,パソコンでは残念ながらコントロールすることはできない。したがって,そのような場合にはコピーに伴う重大な経済的損失の有無の判断によって,補償の要否を決するものと考えている。音楽CDのMDへの複製については,1世代は無制限にコピーできることについて補償金が必要であるという判断が過去になされたのだろうと想像する。
  5.  著作権保護技術の範囲内であれば複製されることが了解されているので補償の必要性はないという意見は,著作権保護技術の範囲内であれば経済的不利益はなく,対価の還元は不要であると言っているのと同じであるのに,なぜ総務省情報通信審議会のダビング10の検討過程において,そのような主張がなかったのか。
  6.  情報通信審議会では著作権保護技術がかかっていれば権利行使をしていることと同等であるから,補償の必要性はないと言ってきた。
  7.  対価の還元が必要であることには賛同しており,その方法は補償金であるということだけではないと考えていた。
  8.  あくまで想像の世界だが,ダビング10を運用しつつ,補償金制度を廃止した場合,映画製作者としては10個もの複製の対価が受領できないのであればダビング10を白紙に戻しコピーネバーを選択せざるを得なくなる。そうなれば録画機器・記録媒体は売れないからメーカーの利益もなく,当然,映画製作者にも補償金は発生しないのでネガティブながらフェアな構図が成り立つ。しかしながら現実には,無料デジタル放送では保存視聴されて困る番組とそうでない番組が編成上混在しており,公共性も高いため,コピーネバーを選択できず想定外の甘い基準を甘受せざるを得なかった。実際にダビング10は解禁され,メーカーは放送番組を録画したい消費者の欲求を利用して録画機器・記録媒体を製造販売し利益を得ている。そうであれば,録画の対象となる著作物を創作している権利者に対しても対価の還元があってもよいのではないか。ダビング10の解禁によって,自分たちの利益は確保するが権利者にはびた一文支払わないという偏った主張はいかがなものか。
  9.  メーカーが果たすべき役割は,コンテンツの視聴環境をよくすることによって広く社会に貢献することだと考えており,様々な環境を作るビジネスによってコンテンツのクリエーターが利益を上げられるということも当然あると考えている。
  10.  メーカーと権利者との間でフェアかどうかを論じるのは違うのではないか。メーカーが補償金を払っているわけではなく,ユーザーが私的録音録画をすることによって補償金が発生し,メーカーがそれを協力者として集めているということであって,メーカーの利益とどう関係があるのかよく分からない。
  11.  消費者の立場も入れて考えれば,コピーネバーならば権利者の対価もメーカーの利益も消費者の利便性もないというフェアな構図だが,ダビング10はメーカーが利益をあげ,消費者の利便性も向上する。権利者だけが置いて行かれるのはどうしてなのか。
  12.  なぜ消費者が1回複製をするという行為が何らかの対価を生むべきものとされなければならないのか。仮にコピーネバーでテレビに映画を流しても対価がゼロになって利益もないということになり理解できない論理である。
    1. 私的録音録画補償金制度は私的複製による損失があるから必要だと説明され,損失があるのかないのかという議論をずっと続けてきたはずだが,もしそうではなく,メーカーに複製機器等の販売による利益があるから必要だということならば,補償金制度は消費者には関係がない。これまでの補償金制度の理念を捨てたうえで,消費者に価格転嫁を一切許さないという厳しいルールのもとで,権利者とメーカーで利益を還元する方法を直接討論した方がいいように思う。
  13.  映画製作者は劇場用映画だけでなくテレビ映画も製作しており,人気があるものはDVDを販売して収益を上げているので,大量にコピーをされれば経済的不利益がある。
  14.  権利者の主張は,消費者がコンテンツを楽しむ方法を時代錯誤的に指定したいように感じた。
    1. 消費者としては,コンテンツを楽しむ際に,技術的保護手段がかかっていれば補償金は不要とするか,補償金をかける代わりに私的複製が自由に認められるかの二択であると理解している。現実的には後者の意見が多いと思うし,個人的にもそう思っている。しかし,本小委員会の流れとして,消費者が求めているものが一つも認められず,コンテンツを消費するための環境が非常に不便になっている。
       仮に地上デジタル放送がコピーネバーだとしたらどうなるかという意見もあったが,消費者からすれば大して利便性が向上するわけでもないダビング10について,渋々妥協してやったような言い方は非常に不快であり,コピーネバーにしても構わないが,本当に困るのは権利者だと強く言いたい。現実のビジネスモデルの中でコピーを認めない技術を採用できないから,妥協点として補償金制度を検討しているのであって,その意味では補償金制度の意義を感じており,返還制度や共通目的事業などを含めた制度的な問題の改善について議論がしたいが,ダビング10に関する応酬などで議論が矮小化されており,結論が見えない状況に不安を覚える。
  15.  映画製作者としては保存をされることが困るのであって,録画した映画を一度見た後に消すタイムシフト視聴であれば制限するつもりはない。
  16.  コピーネバーを選択せざるを得ないというのは,補償の必要性を否定されるのであればという意味で発言した。
    1. 技術的保護手段には,複製を管理して課金するためのものと,複製量が私的複製の全体の範囲を超えないようにするためのものの2種類を分けて考える必要があり,ダビング10は後者なので補償金制度と両立すると思う。
  17.  まさに妥協点を探ろうとして我慢を重ねてきたが,「補償金の制度の論点についてのJEITAの見解」(第3回小委資料2-1)を拝見して,音楽作家としては我慢の限界にきているというのが正直な感想。今日の駄目押しのような見解をいただいたこと踏まえ,団体として今後の態度を決める必要性を強く感じている。
    1. 複製回数を制約する環境に著作物が提供されれば補償の必要性はない,と主張するのなら,その前提として,複製回数を制約する環境が未来永劫保証されるということを保証してもらう必要があるのではないか。
  18.  これまでと同様に補償金制度の問題はバランスの問題であり,ダビング10についても,ブルーレイディスクの政令指定という形で産業と文化のバランスを政治的に調整されたのであるから,尊重したほうが良いと思う。しかしながら本日の議論は最初に戻ってしまっている。ダビング10をコピーネバーにすることはあり得ないはずなので,補償の必要性がないと仰る方には,もう少し柔軟に考えてもらいたい。
    1. これまで補償金制度の議論に関わってきたが,いささかでも技術的保護手段を加えれば補償金請求権がなくなるというような見解は全くなかったし,その後もない。このことについてこの小委員会でも質問をしたことがあるが,回答はなかった。議論を最初に戻すのではなく,一般的な法律的見解を前提としたうえで,積み重ねてきた個々の議論を尊重し,この小委員会でまとまるようにしていただきたい。
  19.  レンタルされている音楽CDからのコピーについては,中間整理で,現在はレンタル事業者が技術的保護手段をもって複製回数を管理できないため契約では対応できないと整理されていたと思う。契約である以上,契約が守られているかどうか検証できる必要があるが,それができない場合について,どのように考えれば契約で対価を徴収できるはずという意見が出てくるのか全く分からない。
  20.  利用者がCDをレンタルする際に契約をする意思の中に複製の対価を含んでいるのではないかと申し上げた。
  21.  私的録音録画問題については,権利者,利用者,その他関係者の考え方がもともと違っており,それぞれに不満がある。その中で妥協的なものとして出てきたのが補償金制度だと思うので,原点に立ち返って議論することはそろそろやめた方がいいと思う。今回の資料の内容はあくまでも妥協であって,いろいろと不都合な部分もあると思うが,決定すべき時期だと思う。
    1. ダビング10に関係する機器は全て補償金の対象とすべきでないとする意見と,コピーワンスからダビング10に移行すれば差分の9枚分の補償金を取れるとする意見があり,双方に不満があるのは分かりきった話で,このあたりで妥協するしかないだろう。
    2. 補償金制度を前提としたうえで,権利者から見れば対価を回収するもっとよい方法もあるはずだし,またユーザーから見れば自由にコピーができる範囲は補償金で済ませ,それ以外はきちんと対価を払うようにすればいいので,将来に向けてこれから技術開発をどんどんやってもらいたい。今回の議論はここで手を打ち,そのうえでもう少し今後のことを議論したらいいのではないかと思う。
  22.  補償金制度ではなく契約によって私的複製の対価を回収できる方法があるのではないかという議論をしてきており,レンタル事業についてもその中で考えるべき。
    1. 私的録音録画補償金はメーカーの利益を権利者に還元する制度ではなく,何らかの看過できない経済的不利益が発生している場合に補償措置を行う制度だと認識しており,技術的保護手段の評価などを含め,補償の要否についてもう一度きっちり論議したいという考えをずっと持っている。
  23.  この委員会でまとめられつつある結論は,消費者としてはどこも譲られた部分がないというのが正直な感覚。三方一両損という話であれば,この結論で消費者は何を得しているのだろうと強く感じている。
  24.  権利者からすると,議論を先に進めるため,有料配信は補償金の対象から外して契約と技術で対応していくことと,音楽CDを自由にコピーできる状況を作った汎用機を補償金の対象から外すことの点で,極めて大きな妥協をしたつもりだ。それにもかかわらず,「補償金制度の論点についてのJEITAの見解」(第3回小委資料2-1)では2年前と同じことを言っており,全く妥協するつもりがない。
  25.  本小委は既に3年くらい議論がなされており,議論が延びるほど一方が有利な構図になっているので,ここで次のステージに行くべきであると思っている。そういうことはないと思うが,一方的に延ばすという作戦があるとすればこれは非常にうまくいっている形になっている。
  26.  「補償金制度の論点についてのJEITAの見解」(第3回小委資料2-1)において,今後の方向性として契約と技術による解決の方法を目指していく旨が記載されているが,その方向をもっと積極的に模索すべきであって,事務局は私的録音録画補償金制度は縮小していくということを具体的に示唆すべきではないか。それとともに,どうやって新しい契約やビジネスのスタイルを作っていくか,法的な場だけではなく,しっかりと関係者間で模索していただきたい。
  27.  有料放送は放送事業者と加入者との間で複製を認める契約関係があるわけではないので補償金の対象にしてほしいと申し上げたが,今回の資料では補償金の対象から外れることになっている。また,コピーワンスも従来は補償金の対象だが,資料では対象から外れることとしている。民放としてもそうした点で妥協して今回の資料の案に乗ったと理解している。
    1. 補償金制度は非常に暫定的なものだが,利用者と権利者の関係を現実的に解決するための一つの制度であり,当面はやはり重要であろうと思っている。今後の契約による解決の方法をどのように検討していくかについては,やはり長い議論が必要であり,非常に重要だと思っている。
    2. 技術は,守る者とそれを破る者のイタチごっこであり,絶対的な保証はあり得ないだろう。技術的保護手段と契約や補償金制度などで,利用者と権利者の間の調整を図るのが常識的な考え方だろうと理解している。
  28.  前回の小委員会で資料について一定の評価をすると申し上げたのは,将来縮小・廃止に向かうという一点において賛成できるということ。
    1. 複製が自由である限りにおいて,補償金制度の対象であってもいいのではないかと考えているが,その条件をあてはめれば,ダビング10には補償金は要らないだろうという結論にはっきり結び付くと思う。
       実際は複製が自由でも権利者に補償しなければならないほどの損失は発生しないだろうと考えているが,百歩譲って複製が自由なら補償金の対象だということも考えられると意見を変え,損失云々の細かい議論はやめようと思った。しかし,権利者の主張のように,私的複製が許された範囲全てが補償金の対象になり,従ってダビング10でも補償金の対象になるというのなら,そもそもの補償が必要な損失の有無に立ち戻り議論すべきだが。 はっきりと損失が認められる場合は限定されるだろうから,料率は全体として大幅に下がるはずであり,そのうえで将来的に廃止・縮小の方向とするしかない。そうした前提であれば対象機器を現状に合わせていくのは間違ってはいないと思う。

2.「私的録音録画補償金制度の具体的制度設計について(案)」
(第2回小委 資料3)

(1)対象機器・記録媒体の範囲

(第2回小委における意見)

  1.  中間整理に向けた議論の過程でずっと申し上げ,取り上げられないままになっているが,一体型機器への対象の拡大には反対。中間整理では分離型機器・記録媒体と一体型機器の区別は不要という意見が大勢とまとめられているが,そのベースとなった検討資料の段階から不適切だと指摘をしている。
  2.  今回の制度設計案が今までの考え方をどんどん拡大していくのではないかという疑念があったが,そのようなことはないのではないか。いわゆる汎用機器,パソコンについては補償金制度の対象とすべきではないことが明確化されている。パソコンも録音録画機能があるから対象にして,実態を調査したうえで料率を調整すべきだという意見は補償金制度の導入時からあり,大変な議論となった。しかし,制度のある程度の明確化が必要であり,汎用機器は対象としないという考え方を取ったと思っている。その考え方は今回もこれで維持できるのだろう。
    1. 専用の録音録画機器,専用の記録媒体という2つの要件を同時に持っているような機器を一体型録音録画機器として議論の対象にしていると認識しており,補償金制度がある以上はこれを補償金の対象に入れることはやむを得ないと考えている。もしこれ対象から外すというのであれば,この制度自体を全部廃止するという状況を確認しなければならないだろう。
  3.  現時点では汎用的な製品を対象にしないというだけで,将来の方向性につは不透明だと感じた。読みようによっては拡大するようにも読めるので,制度の縮小を目指すのであれば,その点を明確にしていただきたい。
  4.  インターネットで調べたり話を聞いたところでは,一体型メモリー・オーディオに課金する方向に対して抵抗感や否定的な意見を持つ消費者が多い。単純に価格に上乗せされることを嫌がる人もいれば,自分が購入したCDを録音することに何故補償金を支払わなければならないのかという意見もあるが,やはり,消費者は単にお金を払うのが嫌だというわけではなく,どれだけ合理的な理由で補償金を支払うのかが明確に分かることを非常に重用視している印象がある。
    1. 補償金制度を続けていくのであれば,筋としては,一体型機器を対象に含めなければ制度的におかしいとは思うが,消費者がよく分からないまま補償金の対象が増えていくということについて世間が抵抗感を持っているというのもまた事実であり,どういった形で補償金が使われているのか消費者が納得できる形で情報公開が行われたうえでないと,課金対象は増やせないのではないかという印象を持っている。今回の制度設計で情報公開の論点も盛り込まれているが,そうした点をやり終えて消費者が納得した上で課金対象を議論しないと理解は得られないのではないか。
  5.  権利者団体は情報公開の機会があれば積極的にやりたいと思っている。制度に必要となってきているので,進めていくべき。
  6.  補償金の対象を一体型機器に広げるかどうかという議論の立て方が必ずしも適当ではないように思う。従来は対象の決定に際しては機器の客観的な性能に着目していたが,今後は当該機器の実際の用途を考慮して決めることになり,前提が大きく変わっている。従来の考え方に立って,機器の客観的な性能から当該機器の主たる用途を判断することは理論的にも難しいと思うが,そうではなく,今後は実態調査などにより当該機器の実際に果たしている機能に着目して用途を定めるということなので,対象機器の範囲を画する基準として十分機能するだろう。この考え方の変更を踏まえたうえで,一体型オーディオ・レコーダーをどうするかを考えるべきだろう。
     料率についても,実際の録音録画源を考慮して決めることになるという前提も踏まえたうえで対象に加えるかどうかを検討しないと,議論がすれ違いになるだろう。
  7.  従来からメーカー側の委員も音楽CDからの録音に関する補償の必要性を承認しているので,一体型メモリー・オーディオを補償金の対象から外す合理的な理由は全くないと思っている。メディアがどんどん変わってきているが複製は当然従来と同様に行われているので,ある程度合意できそうなところは切り出して対象に加えていくしかないのではないか。そうしなければ,仮に権利者が私的録音録画補償金を受けるべきであるという結論が出たときに,議論に費やしたこの2年間や今後の議論があるとすればその期間の分の補償は誰がするのかという問題になろうかと思う。了解が得られるであろう部分は早めに決めていただくのが衡平に適うのではないか。
  8.  見直し後の制度設計案では分離型専用機器と専用記録媒体は当然対象になるとされているが,補償金制度を縮小する方向であれば現在指定されているものでも指定対象外となることが当然ありうるはずで,見直しが必要だろう。指定対象外とする決定方法が書かれていないので,あたかも拡大を続けるように読めてしまう。
     また,一体型機器であっても補償の必要性がない態様のみに利用されるものもありうるが,当然対象にならないはずだ。

(第3回小委における意見)

  1.  この制度設計案では,いわゆる一体型機器について,録音録画を主たる用途としている限り分離型と区別する必要はないと簡単に片付けられているが,一体型機器はタイムシフト・プレイスシフトに使われることが主流なので,権利者の経済的損失についても分離型とは違うのではないかと従前より主張してきているが,それがあまり顧みられていないということに懸念を感じている。
    1. 記録媒体内蔵型録画機に録画された番組は,タイムシフト視聴後に別の記録媒体に移されるか消去されるので,経済的損失はないのではないか。
    2. 携帯オーディオ・レコーダーによるプレイスシフトは技術的革新により利便性が高まった例であり,権利者に経済的不利益を与えていないことは明白。レンタルCDのリッピングへの損失は契約によって解決できるのではないかと従来より申し上げてきており,「第2回私的録音録画小委員会における資料2及び資料3に対する質問への回答(Q&A)」(第3回小委資料1)によれば,関係者間の合意形成の場を文化庁が設けるということなので,早期にやってもらいたい。
    3. パソコンや携帯電話などの汎用機器については対象外としているが,「現状では」という留保がついているように見えるので,対象の拡大についての懸念は払拭できないと思っている。
  2.  録音録画に供される機器は専用機器から汎用機器へと多様化してきている。将来,録音録画専用機器がなくなることはないが,明らかに機器は汎用化していくと考えている。そのような将来を考えると,現在の制度設計案では対象が縮小していくどころか,かえって拡大していくように受け取れる。録音録画機器等の移行であり当然に補償金の対象とすべきという意見があるが,制度の拡大だと捉えている。
     パソコン等の汎用機器について,対象化すべきとの主張が繰り返されてきたことに鑑みると,本制度設計案では「現状では」との表現があるために今後同様の主張が繰り返されることが容易に想像される。
    1. HDD内蔵録画機,携帯オーディオ・レコーダーは,タイムシフト・プレイスシフト又は契約によって提供される著作物の録音録画に用いられる機器なので,これらを補償金の対象とする合理性はないと考えている。
    2. 電子情報技術産業協会が実施したアンケート結果(第3回小委参考資料2-2,2-3)によると,音楽CDからの録音については,純粋なプレイスシフトだけで約35%,その他契約等で対価が回収可能な複製を加えると,補償が不要と考える複製は約78%にも及ぶ。あるいはテレビ放送の録画についても,約72%がタイムシフト目的と答えている。このように補償が不要な複製に用いられる割合が7~8割にも及ぶこれらの機器を補償金の対象とすることは認められるべきではない。
       この点,「第2回私的録音録画小委員会における資料2及び資料3に対する質問への回答(Q&A)」(第3回小委資料1)の問12には「一人の利用者が行う私的録音録画の全体に着目すれば経済的不利益を生じさせていることについては概ね共通理解がある」とあるが,一人の利用者が行う私的録音録画の全体に着目しても,補償が不要な複製以外は全く行わない人もいることになるので,経済的不利益を生じさせると断ずることはできないのではないか。
       さらに,単に経済的不利益があるというだけではなく補償が必要と言えるためには,少なくとも補償が必要な複製が大半を占める必要があると思うが,アンケートによれば利用実態はその反対の結果を示している。にもかかわらず,「第2回私的録音録画小委員会における資料2及び資料3に対する質問への回答(Q&A)」問1で「プレイスシフト・タイムシフト自体の評価について明確にすることが望ましいことは言うまでもないが,このことを明確にできなくても録音録画の実態から補償の必要性については一定の関係者の合意が形成されている」と書かれているのはかなり強引であり,事実に反すると考えている。
    3. 一体型機器を補償金制度の対象にすることについて,昨年の第5回,第11回の小委,中間整理に対する意見書で一貫して反対してきた。この立場は現時点でも異ならない。一体型に関する中間整理の記述に関し,事務局からは,細かい点に踏み込んで議論をしておらず,一般論として書いていると説明されているが,中間整理が公表され意見募集が行われた後,審議会において一体型機器の取り扱いについて深く議論をしたという記録はない。
  3.  補償金の対象について,録音録画を主たる用途とするものと限定したうえで,現状では汎用機に関しては対象とすべきでないとされており,未来永劫汎用機は対象とすべきでないと書かれていないからといって拡大の方向性だというのは完全な論理の飛躍としか考えられない。
    1. 確かに一体型機器を対象に追加すれば品目が増えるという点では拡大かもしれないが,単に分離型から一体型に機器がシフトしているだけで,実質的な面を見れば決して拡大ではなく,移行に過ぎないと思うが,何をもって移行ではなく拡大というのか。
  4.  汎用機器を対象としないことについて,単純に,なぜ「現状では」と留保されているのかが問題。
    1. 主たる用途で限定するというが,現行法はまず機能を限定したうえで,誤解が生じないように主たる用途という限定がかかっていると理解しており,機能的な限定なく主たる用途のみを要件とすると,専用機であれ汎用機であれ対象になることになってくるのではないか。
  5.  電子情報技術産業協会のアンケート(第3回小委参考資料2-2,2-3)ではHDD内蔵型レコーダーや携帯オーディオ・レコーダーは補償が不要な複製に用いられる割合が7割から8割あるということだが,逆に言うと2割から3割は補償が必要な録音・録画目的で使用されていることは認められるだろうから,それをどうするかという議論に入るときが来ているのではないか。
  6.  そろそろ当面の施策に関する結論を出したうえで,もっと根本的な議論や検討をしていく必要があると思う。妥協点として,ブルーレイも携帯オーディオ・レコーダーも対象にすることになっているが,消費者から見ると,妥協点を早急に見出すという点ではどちらか一方を対象にすべきではないかという気がしている。
     ダビング10の導入で,権利者は複製回数が10倍に増加すると感じるかもしれないが,実際には10回もダビングする利用者はほとんどいないと思う。ダビング10はエラーの問題を解決するためのとりあえずの対処だが,いつの間にか大勢が10枚コピーして配り歩くというような議論になっているところが,事実を歪曲して議論しているように思う。その点で個人的にブルーレイは対象にしなくてもよいのではないかと感じている。

(2)対象機器及び記録媒体の決定方法

(第2回小委における意見)

  1.  非常に多くのものが一体型機器として補償金の対象になり得るので,決定に際して評価機関が出てくるのかと思うが,その評価機関について構成,決定事項等が何ら提示されていないと段階でこの案を評価することは難しい。この小委員会の審議のように議論が進められるとすると,非常に不信感を覚えざるを得ない。フランスでは権利者が多数を占める評価機関で多数決ベースで対象が決定されていると承知しているが,補償金制度が実際にどう縮小されていくかの筋道がこの資料ではなかなか見えないのではないかと思う。
  2.  評価機関は紛争を吸収する機能があるにはあると思うが,その判断は政令指定後の評価なので行政的な処分ではなく,もし疑義がある場合は,評価機関の判断自体を争うことはできず,メーカーは最終的には政令指定範囲外の機器であるとして協力義務不存在確認訴訟を提起するほかない,ということは認識しておくべきだろう。それでもこの制度全体の中ではやむを得ないと一応考えている。

(3)補償金の支払義務者

(第3回小委における意見)

  1.  今後は明確にメーカーを支払義務者とする方向で検討した方がいいのではないか。

(4)補償金額の決定方法

(第2回小委における意見)

  1.  将来的に補償金制度を廃止するという原則論とも関わるが,基本的には著作権保護技術は補償金を不要とする要因であると思っている。もしそうでない場合があるとしても,少なくとも明らかに減額要因であり,デジタル管理の技術の進歩に伴って補償金が減少していくだろうと考えている。
     他にも補償金から除外する要因になると考えてきた事項が金額の決定に係る留意事項とされているところも見られるため懸念がある。
    1. 評価機関で補償金額を決定するとあるが,その評価機関の運営方法や権限などが不透明なので,設置自体に賛成できるかどうか疑問。
  2.  著作権保護技術を考慮して補償金額をどう決めるかは大変難しい問題であると思う。しかし,できるだけ機器・媒体ごとの複製の実態を調査し,それを反映して額を定めるようにすべきと考えている。技術的保護手段が付された機器・媒体であっても一応補償金の対象となり,なおかつ実態調査を踏まえ,全く保護技術のないものと対比して,実質的な私的複製が減少しているのであれば反映するというような運用をすべき。
  3.  今回の資料によれば,対象機器・媒体が増加したとしても,補償金の対象が音楽CD及び地上波放送からの録音録画に限定され,コピーワンスの分,契約による分,回数が決まっている分,適法配信の分などが全て除かれるはずなので,補償金額の総量は減少するのが正しいと考えている。
    1. 現行の料率は無制限のコピーに対するものなので,万一,ダビング10も補償金の対象となった場合は,無制限分の10というような料率を当てはめていただきたい。

(5)共通目的事業

(第2回小委における意見)

  1.  大多数の消費者が,よく分からないうちに補償金が徴収され,どのようなプロセスで誰に配分されるのかも分からないという状態だと思う。共通目的事業は使途は公開されているが,著作権の研究に補償金を充てられることや,消費者が共通目的事業の使途の決定に一切コミットできないことなどが消費者の不信及び抵抗感につながっている気がする。

(6)補償金制度の広報

(第2回小委における意見)

  1.  返還制度の拡大が必要と思うが,かなり大変だ。縮小する方向が決まれば補償金制度の位置づけは暫定的なものとなるので,補償金管理協会に法的な広報義務を課すのであれば,補償金制度の重要性をPRするよりも,補償金の返還制度をむしろ強くPRすべきであり,返還されなかった補償金の分配状況もPRするという形として,この制度設計案を基本的に受け入れて進むしか選択肢がないというのが率直な気持ちだ。
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