議事録

第10回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成20年6月26日(木)
14:00〜16:00
文化庁特別会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,井上,岩見,尾﨑,中野,西澤,山田各委員(計7名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第9回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 地域における日本語教育の体制整備について
  3. 地域における日本語教育の体制整備−役割分担と連携−(図)

〔参考資料〕

  1. 日本語教育小委員会の今後の検討スケジュール
  2. 国語分科会日本語教育小委員会における審議について(概要及び図)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 事務局から配布資料2と配布資料3についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
  4. 次回,第11回の日本語教育小委員会は,予定どおり7月18日(金)の14:00から16:00まで文化庁第2会議室で開催することが確認された。
  5. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
ただ今から,第10回,国語分科会の日本語教育小委員会を始めさせていただきます。
御欠席の方からもそれぞれコメントを頂いておりますので,それらすべてを踏まえて御議論いただくわけでございますけれども,配布資料2に(1)から(3)まで示されておりますので,多少前後することは構いませんけれども,(1)の方から御意見を頂くということにしたいと思います。
あらかじめ「国」という用語についてコンセンサス【consensus】を得てから始めたいと思います。前回までの御議論の中でも,国全体の外国人受入れ方針とか,国全体がこれからどういう方針で人的資源を考えるのかとか,国の示すべき体制整備の指針というものがあるべきではないかという御意見が出ていたように思います。今回,経過報告を行うに当たって,「国」というのは,その一番大きな傘ではないところで御議論を頂いた方が,日本語教育小委員会の分担する仕事としては具体性を帯びるのではないかということでございます。その一番大きな国の歩むべき道というのがないと地域における日本語教育についての審議ができないとするのではなく,文部科学省の下にある文化庁の審議会というところが国と考える範囲で,審議としてはどうかと思います。国がだれかということよりは,むしろ日本語教育を議論するという前提の下に責任を持ち得る範囲の仕事ということで限定的に進めていきませんと,「では国のどこが」という議論になります。今日は,手堅くというのは繰り返し申し上げるんですけれども,「4 地域における日本語教育の体制整備」というところに収まるような御議論を是非頂きたいと,取りまとめを今後国語分科会の総会で説明しなければならない立場としましては,そこが一番欲しいところということでもあります。それから秋以降にカリキュラムとか日本語教育の具体的な内容・計画というものに触れていくためにも,この部分が今日と,あと7月18日にありますけれども,その2回で委員の間のコンセンサスを得ることが,年間スケジュールから見て必要かと思うんです。長々とちょっと限定を掛けるようなことを申しましたけれども,どうぞよろしくお願いいたします。
皆さんからのコメントを頂いておりますので,それも含めまして,書きぶりに対する御批判,あるいは補足修正するべき事柄,それから全体のまとめ方について,各機関の役割分担と連携というところ,このイラストを御参考にしていただいても結構なんですけれども,いかがでございましょうか。
○岩見委員
まず「国の担うべき役割」のところで,「何らかのインセンティブ【incentive】」という「何らか」のという言い方は,もう少し具体的に示すべきかなと思います。
それから,「国の担うべき役割に,生活者としての外国人に対する日本語教育の標準的な内容」を示すとあります。「内容」だけでいいのかなということがもう一つ。中神委員の御意見にも賛同するんですけれども,インセンティブを与える方法には,いろいろあると思いますけれども,企業ではなくて学習者そのものにインセンティブを与える方法として,自分の学習の励みになるような学習の進度や自分の能力を知るための基準はインセンティブになると思います。ところで日本語教育の標準的な内容は秋以降ということでございますけれども,イメージとしてこの標準的な内容というのはどこまで具体的になるのでしょうか。「国の担うべき役割」の中に,後半やろうとしているような,カリキュラムガイドラインと言ったらいいんですか,標準的な生活者のための日本語教育の内容とか,方法とか,その評価も含めたものを,都道府県ではなくて国が,一つ示すべきです。そうしないと都道府県も非常にやりにくいと思います。統一することは可能だと思いますし,それがあって,都道府県あるいは市町村,その大きさによっていろいろ違いがあるでしょうけれども,地域の特性に応じて具体的なプログラムが作られる。そういうことにならないと,うまく動いていかないのではないかなと思います。
○西原主査
そういうつもりでこれは書かれているんだと思うんですけれども,いかがでございまし ょうか。その文言が尽くされていないのかしら。
○岩見委員
最初の文章の,「内容及び,日本語教育の体制整備に係る指針」というところのその内容のイメージがどういう中身なのかなということをちょっと確認したかったのが1点。
それから,「何らかのインセンティブ」というところですが,自分の学習の到達目標とか,その評価,位置付けというところが分かるということが,大いにインセンティブになるし,それこそ国がその中身を決めて,もう一度学習機会を提供するという必要がある。それは「はじめに」のところに行くんですか。
○西原主査
「はじめに」のところは,もう少し大きな傘でよろしいんじゃないでしょうか。つまり,国として人的資源というものをどう考えるかといった漠然とした抽象的なところはそこに入るわけです。岩見委員の第1点目のところ,それは,予告が不十分だという話になりますか。つまり,秋の作業で正にそれを作るわけでございますけれども,それをここでもう少し具体的に予告した方が分かりやすいのではないかという御指摘なんでしょうか。
○岩見委員
はい,ちょっと分かりにくいかなと思います,基本的な内容が…。
○西原主査
例えば,この間国立国立国語研究所の金田智子氏のヒアリングの内容に,オランダの例ですと,かなり具体的に,市民統合講座みたいなものが四つのジャンルで設けられて,その四つのジャンルをそれぞれクリアするために,標準的な内容があり,そのテストがある。日本版がそれになるかどうかは別として,参考になるスキーマでございましたね。それを秋以降に検討するとうたっているわけです。それをここに書いておいた方がよろしいということでしょうか。
○岩見委員
それを少し具体的に出しておいて,そのとおりでなくてもいいわけですね,「検討する」ですから。そうなると,イメージとしてつかみやすいのかなという気がします。
○西原主査
修飾を付ける,つまり,この委員会の目標として,年度末にまとめられる予定の日本語教育の標準的な内容と,そこに何か修飾語を付けておくだけでも助かりますか。
○岩見委員
はい。報告書を読む人にとって,分かりやすいのではないかと思います。
○西原主査
それから,岩見委員の第2点目のところは,杉戸副主査からも,ここはあいまいだ,という御指摘があったところでしたね。杉戸副主査からは,一つは,だれに対するインセンティブなのかということがまず分からない。つまり,受入れ側の日本人に対するインセンティブなのか,入ってくる新来参加者のためのインセンティブなのかが分かりにくいということが一つ挙げられていた。中神委員からは,入ってくる人たちに向けてということで一つ,在留期間の延長に対する優遇措置をインセンティブにできるのではないかという御指摘があったかと思うんですけれども。
○岩見委員
私は,学習の中身にもう少しフォーカスを当てて,学習指針みたいなものがあれば…。それをこういうものを勉強すればいいというような…。
○西原主査
例えばオランダの例で行くと,市民統合,それから就学,職業とか,そういうジャンルがありましたね。入門はクリアした,次に就職に行くというのは,次に向かってのインセンティブ,つまりこれは修了して次のコースに向うというようなものがありますね。
○岩見委員
そこまでのことではなく,私のイメージは,自分の日本語力がどのぐらいなのかという判定ができるといったような意味で,到達目標が示されるといいと思います。
○西原主査
つまり,カリキュラム修了とか,そういうことがインセンティブになるだろうと。
○岩見委員
ええ,どこまで自分の力が伸びたのか。また,何をすればどこまでできるようになるのかということです。
○西原主査
日本語能力試験でいけば,4級をクリアしました,次,3級をやってみましょうというような…。
○岩見委員
ええ,そういう目標を,学習目標を立てるということが必要だと思います。
○西原主査
学習目標に対するインセンティブということですね。
○岩見委員
はい。
○西原主査
中神委員からは,具体的に,それをクリアした結果として滞在が延びる,日本滞在が保障されるということがインセンティブになるだろうという,その二つの御意見が今のところ出ているわけです。
○岩見委員
「何らか」の例示をしておいた方がいいのかなと思います。「何らか」という言葉は避けておきたいですね。
○西原主査
私は,給料が上がるとかというのが一番いいんじゃないかと思うんです。お金に絡むインセンティブもいいんじゃないかと思うんです。
○山田委員
ちょっと確認なんですけれども…。「インセンティブ」という言い方で言ってはいるんですけれども,これは意欲を引き出すという話ではなくて,全く逆で,中神委員からお話の合った新聞報道で,「外務省は「日本語能力が高ければ在留期間を延長するなど優遇する」基本方針を固め」とあります。これは「日本語能力が低ければ在留許可を更新しないなど」という,そっちの方に強い意味があって,だからそれをクリアしなければいけないのだ,だから勉強しろという話だと思うんです。
○西原主査
でも,世の中はそれを「インセンティブ」と言うんです。
○山田委員
それで,私はいろいろ考えて,これは強制だなと思うんです。でもそのぐらいやらないと「統合」という目的は達しないのかなとも私は思う。だから,「統合」を目標にして,基本的なことをきちんとやれるような体制を,予算的な裏付けもして,作る必要がある。それは,自助努力として求めるのではなくて,補償教育というか,学べる体制を公的に保障はするということとセットだと思うんです。
○西原主査
そうですね。だから,その順序で書かれていて,その4番目にインセンティブがある。そう取っていただいていいわけですね。
○山田委員
私もその解釈で,インセンティブを示す必要があるというのはそういう意味で,「ねばならない」ということの裏返しの表現だと思っていたんです。
○西原主査
そうですね。例えばオーストラリアの場合でもよく言われるのは,これだけの英語ができればこういういい職業に就けますよと言っているわけだけれども,それは直ちに,これだけできなければこういう職はないんだということではありますね。そうしますと,書きぶりとしては,山田委員はどのようにこれを持っていったらよいとお考えですか。
○山田委員
よく分からないです。
○西原主査
つまり,国の指針として示され,かつ都道府県がそれをモディファイ【modify】する形で実施するような日本語教育の支援ですね。それに,その示す要請にこたえる…。
○山田委員
こたえ得るか。
○西原主査
こたえ得る…。
○山田委員
「質と量を備えた○○かで」としておくとか…。
○西原主査
学習者は,その国の要請,都道府県の要請にこたえる義務を負うという話ですか。
○山田委員
そのくらいの意味なんじゃないかなとは解釈したんですけれども…。
○岩見委員
私は逆だと思います。今,外務省と法務省が,こういう議論をなさっているようですけれども,今まで学習権の保障とか,そういうことがなかった状況で,いきなり「ねばならぬ」,「できなければ駄目だ」といったことはちょっと早急ではないかなと思います。まず学習の機会を与える,自分の励みになるような体制を整えること,それが先かなと思います。
そういう意味で「インセンティブを示す必要がある」という言葉を使うことに反対します。先ほどの議論のように逆に取られることもあるわけですね。さっき言ったように,今まで何もやってこなかったのに何が急に義務かと思いますし,やはり順番が逆ではないかと思います。
○西原主査
そうですね。ただ,国の機関又は行政機関という単位でこの日本語教育を考えるときに,善意というか,やりたい気持ち,受けたい気持ちというところはちょっと外さないといけないのではないんでしょうか。
○中野委員
インセンティブとその最初の○と関係するんですけれども,そもそもこれは在日の生活者としての外国人が日本の社会に参画できるようになるために,外国人の持つ権利及び義務を保障するために必要な日本語を学ぶというのが前提にあったと思うんです。権利と義務,両方あったと思うんです。そのことを先に示す必要があると思います。その権利と義務を行使できるようにするには,日本語の内容だけではなくて,到達すべき目標が,内容の前にまず必要であるような気がします。もし滞在許可とかそういうものに関係したとすれば,ミニマムな日本語能力は何かというのは多分問われるでしょうから,ある種到達目標のレベルを示して,そして最低限ここまでみんなやりましょうといった最低限の到達目標を示し,その目標を達成した上で内容が提示されるガイドライン【guideline】が必要なのではないかと思います。そうすれば,インセンティブが出てきたときに,学習者を中心にして,学習に対する動機付け,学習者が日本語を学ぶということの意味を納得するというインセンティブがまず重要ですね。でも同時に,もしかしたら行政あるいは地域の住民も含めた日本語というのは大事だ,そういうインセンティブもあるかなと私は思っています。
○西原主査
それはコンセンサスの方ですね。
○中野委員
はい。対象という意味では,まずもちろん学習者だと思うんです。
○岩見委員
そうすると,今おっしゃったように,権利と義務のセットであるのが大事で,義務だけといった印象にならないような書き方が大事だと思うんですけれども。
○井上委員
日本経済団体連合会で政策提言をまとめる際のプロセスの中で,いわゆる日系人の問題を取り上げたときに,ブラジル大使館の公使の方と折衝したのです。そのときにこれに近いような議論を随分したんですが,彼らにとっては日本に来ること自体はもう権利なんだという意識が非常に強いです。移民を送り出した国が移民の末えいを受け入れるのは当たり前だという考えです。
イタリアでもそうですし,スペインでも受け入れています。だから,日本語学習に関して言えば,余り厳しく言わないような書きぶりにしてほしいと思います。我々は最初は大使館の方に若干厳し目の球を投げたのです。彼らは定住者として日本に入っています。3年ごとに更新なのですが,1回目はともかくとして,2回目のときはある程度能力試験は受けていただけないかと言ったんです。3年もいたのですから,相当できているはずだと言うことです。それも,例えば日系人向けに少しハードルの低いものを作っていただいて,漢字はできなくても平仮名が書けるとか読めるとか,大体口頭でコミュニケーションがとれるとか,何か特殊な試験を作って受けていただくなどというのはどうでしょうかと言ったら,それはノーだと言うわけです。最後に折り合ったのは,日本語学習の機会を日本側でいろいろな形で用意する。それは,今ここにカラーの方で示していただいているように,別に学校へ行かなくてもいい,あるいはボランティア団体とかNPOとか交流協会とか様々な場所で,特にお父さん,お母さんについては,日本語を学習する機会も少ないだろうし,習得する時間も掛かるだろうから,とにかくあらゆる機会を通じて日本語を学習するような形にしてもらう,そういうところで折り合ったわけです。別に我々は大使館と交渉する権利も義務もないのですけれども,提言を作って,その実効性を高めるためにかなり,本当に毎週のように折衝したのです。
ですから,この文書を見ると,インセンティブの裏に義務があるという読み方もできないことはないんです。例えば永住権取得条件の緩和など考えられますが,永住権も日系人は簡単に取れてしまうものですから,一体何をインセンティブにするのか。例えば不法の人で在留特別許可を与えるときに,日本語が非常にできると,条件が緩和されている。それはインセンティブになるということがあるかもしれません。在留資格がなく特別許可を出すという時の助けになります。しかし,手に何らかの職を持っていたり頭脳を持っていたりしてきて,仕事の上では,英語と母国語だけでやっているという可能性もあるわけです。そうすると,日本語を学ぶというインセンティブというのは全くなかったりするわけです。しかもそれは,1年,2年で帰るということがその契約で,例えば野球の選手などはその典型だと思いますが,帰ることがひょっとしたら前提になる可能性があって,そうすると,欲しいインセンティブ,メリットというのは本当に百人百様なのかということになる。さき程から皆さんの御意見を聞いていろいろなことを書いてみたんですが,目標のレベルと,それから学習の機会を与える主体と,それから今度は与えられる外国人の様々な形を組み合わせていくと,ここでかなりいろいろなことを書き込んでいっても,多分漏れが出てしまうのではないかと思います。
○西澤委員
それで,先ほど西原主査が最初の前提条件とされた,文科省の下にある文化庁の審議会ですよということであれば,そのインセンティブだって,在留期間の延長だとか何とかというのは,文化庁の権限では行えないわけです。そうするとここで示せることというのは,学習すること自体に対して,例えば日本語学校へ行ったら授業料割引になりますよとか,何かそういうことになるのかなと,私は最初に頂いたときに,そう思いました。要するに,文科省ができる範囲でインセンティブを示すということであれば,そういうことになるのではないでしょうか。それとも,国全体の施策として,全体の施策の在り方のところでもう一回戻ってくるけれども,そういう在留上のインセンティブだとか,ほかの職業上のインセンティブだとかということも併せて各省にお願いしてやるのですといったことを想定しているのか,その辺がよく分からなかったんです。
○西原主査
そうですね。例えば,このごろ運転免許だって,理容師になる,美容師になるにしたって全部筆記試験があります。調理師免許にも筆記試験があるようです。ということだと,それは日本語をクリアしなかったらそもそも受けられないことなので,その日本語ができるということがそれらの資格につながっていることになります。日本語ができることに確かに何か御褒美が付く,そういう意味でのインセンティブがありますね。
○井上委員
インドネシア等から介護士,看護師が今度入ってきますね。あの方々は日本語での資格試験を受けなくてはいけない。これによって間違いなく日本語を勉強するモチベーションは出てきます。
それから,今私がちょっとお手伝いしているのは,主に中国から日本の大学に来ている留学生たちです。その人たちが日本の企業に勤めたいと考えた場合,こう言ってしまうと大学の関係者に失礼なんですが,大学で学んでいる日本語だけでは駄目だということに気が付き始めています。日本語学校にわざわざ通い直し,ビジネス日本語を習い始めています。それをやっている学生は本当に上手な日本語を話す。彼らは,ともかく大手銀行に入りたいとか,商社に入りたいということで努力しているわけです。彼らは,全部自腹を切ってやっているわけです。これに対して何らかの支援というのはあり得るかもしれません。
最後のグループというのが日系人のグループで,これは種々問題があります。ともかく日本語はできなくてもいい。通訳を介して企業側とコミュニケーションをとって,とにかく2年働いたら帰る,親一人しか来ていない,家族もいないといった人たちは,モチベーションみたいなものは最後までないでしょうね。ですから,モチベーションのないところにインセンティブを付けても多分何も起こらないし,幾つか企業でやっている例でも,ほとんど無料の日本語学習の教室を開いていても,日本語教室に行っても,最初の1回か2回ぐらいでみんなドロップアウトしてしまうということを聞きます。
○西原主査
我々が言っているインセンティブというのは,この場合には要するにニンジンです。それ以外のインセンティブの解釈はいっぱいあると思うんですけれども,何か奨励の印になるような,心理学でいう報酬というのがインセンティブと考えると,岩見委員がおっしゃった,よくできたという,それこそ証書がもらえるとか,そういうこともインセンティブになるわけですね。具体的には滞在の延長につながるような資格の取得とか,そういうレベルの日本語ができるということにインセンティブの第2段階か第3段階かがありますね。そういうことで,それを「何らかの」以上のことがどの程度書けるかという問題です。
○尾﨑委員
ずっとお話を伺っているんですけれども,そもそもの議論を思い返してみると,生活者としてくくられるような方たち,実態としては多分日系の方とか,国際結婚をした方とか,そういう方たちが想定されていて,そういう方たちに日本語を勉強してくださいと幾らいろいろ言っても,勉強できるような生活環境,学習環境に置かれていないということがあるわけです。そういう方たちが頑張って出てきやすいような環境をどう作るかというところのインセンティブだろうと,最初はそうだったと思うんです。ですから,中神委員が書いていらっしゃるような日本語能力が在留期間の延長とどうかかわるかというのはまた別に後から出てきた議論なので,こことしては私は西澤委員がおっしゃったような枠組みで考えたう方がいいなと思います。そこに収れんしておかないと,これはもう広がり過ぎて,どうしようもないと思います。
○西原主査
そうですね。ということは,具体的にこの文言はどうしたらよろしいでしょうか。
○尾﨑委員
「インセンティブ」という言葉がこれだけ議論を呼ぶのであれば,もう使わない。
○西原主査
使わない方がよい。何と言ったらいいですか。
○尾﨑委員
「外国人生活者の日本語学習を支援するための仕組みを入れる」で,例えば,西澤委員がおっしゃったこともあるでしょうし,あるいは場合によったらバウチャーみたいなものを検討するなど考えています。住民登録をしたときに,本人に日本語能力の申告をしてもらって,「うちの地域には日本語の学習機会としてこれだけのものがあるから,是非行ってください」と言ってバウチャーを渡して,それをもらった外国の人がどこかに行ったら,ちゃんと行きましたというあかしをもらってくる。
○西原主査
10回参加クーポンみたいなものですね,それは。
○尾﨑委員
はい。実際参加したら,その方が行ったところが「はい,確かにいらっしゃいました」と判子を押して,それを市役所へ持っていったら「お疲れさん」といってお金が出るとか,それはインセンティブですから,それは日本語学校の授業料を安くするのと同じような発想です。それは一つだと思います。
○西原主査
具体的な御褒美というのがあってもいいかなと。
○井上委員
この文章で引っかかる点があります。「定住する」と限定する必要はないような気がします。それから,「成人」というのも限定する必要もないのかなとも思うのです。
○西原主査
そうすると,どうですか。「滞在」でいいんですか,これは。
○井上委員
今「生活」という言葉をお使いになったけれども,それが一番自然かもしれませんね。
○西原主査
「日本国内で居住し生活する外国人の日本語学習」。子供も入れてしまっていいということですか。
○井上委員
そうですね。大抵の子供たちは日本の教育の枠組みに入っていきます。問題は外国人学校に入った場合で,ここでは日本語を学習する機会は事実上ないですね。
実は私,文科省の方の初等中等教育の,研究会にも参加しています。初等中等教育における外国人籍の子供たち,外国につながる子供たちに対する学習支援を検討しているのですが,こちら日本語教育小委員会はあくまでも地域に住んでいる,生活をしている外国人全般という考え方で,主に成人を相手にするのですが,子供も入ってくるということですね。
○西原主査
はい。そうしますと文言はどうなりましょうか。
○西澤委員
「奨励措置」とか何とかとか,そういう日本語にしていただいた方がいいのかなと思います。今の議論を聞いていてそういう感じがするんです。
○西原主査
「奨励措置」。そうですね,「インセンティブ」という言葉が非常に誤解を生む可能性があるということですからね。
○井上委員
それから,ちょっと議論を蒸し返すようなのですが,日本語学習の機会を提供する側に対するインセンティブみたいなものは書き込めないでしょうか。
○西原主査
いや,書けると思うんです。
○井上委員
これは日本語学校とか,ボランティア団体,NPO,地方自治体も含めて,これは非常に重要なのではないでしょうか。まだ総量的に足りないのではないかという認識というなのですが。
○西原主査
具体的にはどうすればよろしいですか。
○井上委員
具体的には,例えば「日本語学習の機会を提供する主体に対する措置」というのでしょうか。
○西原主査
それは,補助金が出るとかですか。
○井上委員
そうですね。実際に,ボランティアといっても,交通費やお弁当代も出したいところですが,それがほとんど出ていないというのが実態です。1時間1,000円だとすれば,どのぐらいのコストが掛かるかというのは自然に計算できるだろうと思います。
○西原主査
そういう話もありますし,それは,だから,地方自治体がそのような予算立てを考えるということでしょうね。
○井上委員
そういうことになりますね。
○尾﨑委員
多分,自治体によって取組方に温度差が随分あると思うんです。それで,外国人登録者数と市町村の住民の比率が,例えば3%を超えたらこのくらいのことは当然やってくださいよねというものがあって,5%を超えてこれだけのことをやっていなかったら駄目だとか。駄目だと国が言う以上は,それだけのことがやれるだけの助成をするというのは多分前提になると思うんです。だから,一定のガイドラインとか指針というものを出して,都道府県なり市町村がこれだけのことはやってくださいと言う以上は,それをやるための予算措置が当然くっ付く。それは助成金か補助金か分かりませんけれども,そういうものが一緒になっていなければいけないので,インセンティブという意味では,これは当たり前のことです。
○西原主査
そうしますと,学習者に対する学習の奨励策ということと,それからそれを計画する側,行政機関に対する何らかの奨励策というのを書き分けますか。
○井上委員
下の次の○がそれに近い言葉にはなっているんです。
○西原主査
「体制の整備」ですね。
○井上委員
「体制の整備」で読めるかどうかというのが私には分かりません。
○西原主査
「と奨励策」とそこに入れますか。
○井上委員
地域における日本語教育の体制がしっかりと整備されるように,「支援する必要がある」と書いておく。
○西原主査
「支援する」と書いておく。でも,文化庁が来年度その予算を措置できるかというと,そうではないと思うんです,今は。だから,そこのところは「必要がある」と書いておいて,そういうことを提言して省庁間の調整に掛けるとか,そういうことになるんでしょうね。
○井上委員
実際に今行われていないわけではないんです,ゼロではないですね。
○西原主査
私が知っている集住都市の市などだと,市から予算が出ることが結構あります。
○井上委員
それを,例えば中神委員のところでは,愛知県も出すけれども,実は企業にも参加してほしいという呼び掛けをしているわけです。それに対して企業がいま一ついい返事をしていないというときに,国はどうしているのかといった疑問が一つあるわけです。小中学校・高校で,初等中等教育であればもちろんのことです。
しかし,成人の一般の生活者としての外国人に対する日本語学習ということになると,まだ国の支援が足りないという感じがあるのではないでしょうか。
○西原主査
そうですね。結局押しつけ合っているところがありますね。つまり,国は「受入れ企業がやりなさい」,受入れ企業は「それは国の仕事じゃないか」みたいな,外国人集住都市会議の宣言でも,国に対する要求がいつも宣言されます。国は何をしているんだみたいな話になって,多分それは押しつけ合いに多少なっているところがあるわけです。
○西澤委員
今の議論とちょっと関係するんですけれども,ほかのところ,都道府県とか市町村には,いろいろな関係者の協力を得てやるために連携しなさいと書いてあるんだけれども,国のところではそれが全く書いてないんですね。今の日本語学校にお願いするにしろ,経済界にもっと支援してくれということをお願いするにしろ,国としてもそういういわゆる中央的な組織,経団連なり,あるいは日本語教育振興協会なり,いろいろなところ,要するに自分の直接の所管ではないかもしれないけれども,そういうところにも呼び掛けて,こういう体制でやりましょうということを支援するような,そういうコーディネート的な機能というのか,調整機能みたいなものは果たしていただきたいなと思います。だから,法律上直接所管しているとかしていないとかということではなくて,これにかかわっているいろいろな主体を国レベルでも組織化し,一緒にものを考えていくような方向を考えていただきたいという感じがするんです。国レベルのところでは,そのことについて全く触れていないんです。
○尾﨑委員
枠組みを見ると,配布資料2の最初の「?国の担うべき役割」と書いてあるんです。だから,これは全部,国が責任を持ってやろうとしている中身が書かれているんですね。
○西澤委員
ただ,コーディネート機能みたいなことはここには全く触れられていない。市町村や都道府県のところにはいろいろ書いてあって,いろいろなプレイヤーを活用してやりなさいと書いてあるんだけれども…。
○井上委員
それは,この「体制」の中に全部含まれると読むんでしょうかね。「日本語教育の体制」というのはいかにも漠とした感じがあるんだけれども,これはかなり広い,様々な主体が参加する体制なのですよね。
○西原主査
今,審議会や分科会の提言を受けて,文化庁国語課がこれをやりますとは言えないわけです。それはその後のコーディネーション【coordination】にずっとかかわるわけだけれども,ただ,井上委員がおっしゃるように,そこまで読んでくれるでしょうか。
○井上委員
地域によって,あるいは集住都市のありようによってこの体制というのは随分違うのです。それから,市町レベルでやるのと都道府県でやるのとは違います。ですから,そういう意味では今回のレベルだとこの辺までかなとは思うのですが,「多様な主体との連携を強固にするような体制」といった言葉を使えないでしょうか。
○山田委員
はっきり書いてしまっていいんじゃないですか。
○国語課長
この文章には書いてありませんけれども,配布資料3に概念図を示させていただいておりまして,行政機関といろいろな団体との連携を進めることは,当然のことだと理解しております。
○岩見委員
国の中での縦割りではなく,その横の連携もという意味が取りにくいというのではないでしょうか。
○国語課長
配布資料3に入っていますので,ここで新たに言葉で書き加えてもいいのかなとは思います。
○西原主査
なるほど。では,○を一つ作って,連携の可能性をにおわせるというか,示唆するというか,そういうことでまとめていただくとしましょう。
○日本語教育専門官
関係機関の連携協力の在り方については,配布資料2の(2)の二つ目の○ないしは三つ目の○で,まず二つ目の○で,「国,都道府県,市町村間の連携はもちろん,省庁,都道府県,市町村同士の連携が重要になる」と言ったり,「行政機関は,行政機関以外の関係機関とも連携協力を図ることが必要である」と,ここで包括的に述べられていると思うんですが。
○西原主査
ただ,配布資料2の(1)の?,?,?のところでももうちょっと連携についての説明文を載せておくべきではないかという御示唆じゃないかと思うのです。文言については御検討くださいませ。それで,「国」の次に「都道府県」がございますけれども,2ページ目のところですが,これはこれでよろしいでしょうか。それからついでに「市町村」についても御確認ください。
○井上委員
今,連携のところでそういうお話があったんですが,「行政機関は」とか「市町村は」とか「国は」とか,いろいろな書き分けがされてしまっているんです。当然,ここは連携協力の在り方なので,いろいろな連携協力の中心になるところが書かれているのだと思うのですけれども,今議論していた配布資料2の(1)の最後の○の「体制の整備」の「体制」のところに連携というものを読み込ませるという観点から言うと,これは連携のところが市町村の役割になってしまうんです。「体制の整備」という言葉が同じように使われているんですけれども,配布資料2の(2)の五つ目の記述というのは正しいんです。市町村がある程度地域の実情,ニーズに応じて体制の整備をしなければいけないということは間違いないんだけれども,国がある程度それにお墨付きを与えて何らかの体制整備を支援するということになった場合に,国自身がどういう機関と連携してやっていくのかということが書かれていないと,国はあとは市町村にお任せしますという感じしか読めなくなってしまう。支援するというのはお金だけの問題なのだろうか。お金だったら,はっきりと「予算」と書いた方がいいと思うし,その辺りは,国として連携を強化するための役割みたいなものを明確に書いた方がいいような気がします。これは市町村だけではなくて都道府県もあり得ると思うし,やはり引っ掛かりますね。
本当に極端な話,お金だけで済むのだったら,お金と書けばいいと思うのです。
例えば,これも何度もお話が出ているかもしれませんが,今,「アジア人材資金構想」というのは非常にシンプルで,大学あるいは地域のコンソーシアム【consortium】にお金を落として,そのお金が回り回って留学生の中で,日本で就職したいと思っている人にお金が落ちるということになっているんです。大体一人当たり単純計算すると100万円ぐらい掛かっているんです。その一人当たり100万円を運用しているのは,大学以外にいわゆる人材ビジネスみたいなところだったり,日本語学校だったり,それからあとは商工会議所なども入っているんです。そうすると,今お話しになった地域によっていろいろなやり方があるんですけれども,お金を出すのは国で,それを審査して,これはどうもうまく行きそうだというものに対してお金を落として,あとは自立化させて横展開するというやり方なんです。
○西原主査
国語課としては非常に慎重で,できるかどうか分からない,あるいはめどが立たないという約束をここで書けないんだと思うんです。そこを,だから何とかうまくすくう文言が必要なのではないでしょうか。
○井上委員
経済団体の立場はちょっと置いておいて,NPOの仕事をしている者として言うと,お金はのどから手が出るほど欲しいです。
○西原主査
しかも国のお金が。
○井上委員
ええ。ふだん,無料で使える施設を探すだけでも本当に何本電話するかという感じです。ちょっとした留学生の相談会とか講演会を開くのに,無料で大学の教室を貸してくれないかと何本電話を掛けるか。本当に大変な思いもするし,嫌な思いもします。
○西原主査
配布資料2の2ページ目の「?都道府県の担うべき役割」の四つ目の○というのも,これはコーディネートのことが書かれていて,かつ3枚目の「各機関の連携協力の在り方」のところにも都道府県の名前がもう一度繰り返されてきますので,そこら辺のところは国についての文章をもう一つ付け加えても大丈夫でしょう。
それから,井上委員のおっしゃる,もう少し具体的な支援の中身というのをどこまでコミット又は文言として書くべきかということについては,検討が必要ですね。
この草稿には具体的な支援の中身のことを,委員の強い意志でもあることですから,是非入れていただきたいし,ただその具体的な内容,つまりお金が絡むかどうかということについては次回以降また御検討いただくということではいかがでしょうか。
○山田委員
具体的には,「適切な予算措置を講じるなど」としてはどうでしょうか。
○井上委員
今は外国人をうまく使っていこうという空気はありますね。
○西原主査
それはそうですね。それは確かに,そういう意味での上げ潮ですね。外国人邪魔者扱いという時代ではもうない。
○井上委員
彼らの能力を引き出す最も根本的な方法は日本語を覚えてもらうことです。
そういう説得力のあるものが最終的に答申で書ければ,予算も取れるんじゃないかと私 は思っておりますが。
○西原主査
予算は何とか付けてもらわないといけないんだと思います。
それで,都道府県・市町村のところはいかがでございましょうか。このくらいの書き方 でよろしいでしょうか。都道府県から市町村に行けば行くほど,かなり具体的になります が。
○岩見委員
非常に具体的に挙がっていますね。ただ,前に頂いたものより多少簡略化されているというところもあるんですけれども,具体的だからこそちょっと気になるところがあります。
評価分析ということで,活動に対する評価分析というのは載っているんですけれども,能力に対する評価分析というのがないから,個人個人の学習の能力判定の評価分析というのが含まれているのか,ちょっと分かりませんでした。
○西原主査
この活動というのは何活動ということになるんでしょうか。これは教育活動,学習活動でしょうか。
○日本語教育専門職
これは,日本語教室で行われる日本語教育そのもののことです。
○西原主査
教室の活動状況に関する第三者評価的な,そういうものですね。
○日本語教育専門職
そうです。
○岩見委員
学習者の能力評価というんですか,そちらのものはどこでなされるのでしょうか。そこが書かれていないんです。
○西原主査
それも実際の教室の行うべき役割の中に書き加えておくべきだという御意見でしょうか。
○岩見委員
いや,それは先ほど言ったように,基本的な基準は国レベルで,都道府県を超えたところで一つあるべきだなと思います。それを参考に具体的に個別に評価をしていくんですね。
○西原主査
この市町村の果たす役割というところに,当然のことながら,国が作るべき指針というのがあります。それに基づいて日本語教室を設置運営するということがこの日本語教室の設置運営の中に当然入っていると読んでよろしいんでしょうか。
今期後半の審議でガイドラインのようなものを作りますね。それに基づいて日本語教室は設置運営されるわけですね。
○日本語教育専門職
そうです。都道府県で具体的な内容にブレークダウン【breakdown】するということをイメージしておりますけれども。
○西原主査
例えば,うちの県は圧倒的に農業県だからということで,カリキュラムにその農業色をつけるとか,そういうことになるわけですね。それに基づいて市町村の教室が運営されると。
○日本語教育専門職
そうですね。具体的なカリキュラムについては,基本的には現場でなければ作り得ないものですから。
○西原主査
そうしますと,この岩見委員の質問ですけれども…。
○岩見委員
実際に,大枠の評価のガイドラインというものがあって,それに基づいて現場は現場で,実際に学習された結果の評価というのが行われるという状況を作り出せるのではないかと思うのです。
○西原主査
何とか市版到達目標1,2,3とかいうのがあって,それを達成すれば,証明書に印が付くだとか。
○岩見委員
それを国が認定するのか,どこが認定するのかという問題はあります。
○尾﨑委員
今のお話は,市町村レベルではなくて,少なくとも国として一定のものを出しておかないと,あちらこちらへ移動する方もいるわけですから,ヨーロッパのような枠組みというのは当然作っておかなければいけないので,中神委員の1ページ目の下のところに「到達目標とその評価方法」という,これはみんなで十分議論して,一つのものを作らないといけない。そういうものができれば,当然法務省なり外務省なりが議論なさっていることでどのレベルという話に行くでしょうけれども,それは結果としてそうなので,私たちとしては,どういうスケールで能力判定,能力もどうとらえるか,大議論になると思うんです。そういうスケールと,それを測るときの手段,一体だれがそれを測るのかという問題がある。測る資格のない人が適当に測ることは許されないので,当然それはコーディネーターかだれかがやるわけですね。
○西原主査
昔は村の長が独断でやったんですね,そういうことは。
○尾﨑委員
ほうっておくとそういうことになりかねないので,そういうふうにしてはいけませんというのが今議論しているガイドラインだと思うんです。少なくとも国が示す指針というのは,そういうものを整えましょうというぐらいのことは書き込んでいただかないといけない。それがあった上で,うちの状況だったら,差し当たり我が町に住んでいる,今度来てくれたお嫁さんたちには,2年以内には能力評価のレベル3までみんなが到達するようにどうするかとやっていただければ,それでいいんだと思うんです。
○西原主査
そうしますと,ここにある活動に対する評価分析というところは,それではないんですよね。
○尾﨑委員
違います。
○西原主査
違いますよね。そうすると,岩見委員がおっしゃるこの評価分析のこれは不必要だということでしょうか。
○尾﨑委員
多分,評価分析というときに,教室を開いてやっていて,公的なお金をそこに何らかの形で入れてやってもらう以上は,教室での活動がそれなりにきちんと行われているんだということを議会なり住民なりに報告する義務が生じますね。それがここで言っている教室活動に対する評価分析ということだと私は理解していて,だからこれは教室そのものなんです。
○西原主査
では,これは「教室」と言ってくれないと不明確ですね。
○尾﨑委員
でしょうね。でも,そういう意味でここの「市町村」に書いていらっしゃるんだなと思います。
○西原主査
前に日本語教育大会に出たときの記憶なんですけれども,市の方がボランティア団体に対してそのことをかなり強くおっしゃいました。つまり,市のお金を使うからには,使いましたよだけでは駄目だと。その教室を運営した結果これこれができるようになりましたとか,税金は無駄には使われませんでしたというところまでNPOは責任を持ってもらわなくては困るんですみたいな話をしていらっしゃった。そのことですね。
○尾﨑委員
NPOで,それは分からない。ボランティアだとちょっと違うんでしょうね。
○西原主査
ボランティアがNPOを作っているということでした。ボランティアであれ,NPOであれ,公的なお金を使う人はそれなりの実績をちゃんと示しなさいということでしょう。それがどういう形であれ,それはその市との交渉でということになりましょう。
○井上委員
本当は,一番いい方法は,市町でも都道府県でもいいんですが,もしもそういった教室に対する資金的支援をする場合には,評価委員会のようなものを作って,ちゃんと報告書を出させて,それが適切に実際に運営されているかどうかも把握した上でやっていくというのが一般的ですね。
○西原主査
つまり,次の年に例えば同じお金を落とすかどうかみたいなことはそれで決まるということですね。
○井上委員
ええ,そうですね。
○西原主査
そうすると,これは支援活動でもあるし,教室運営活動でもあるし,何かそういう修飾語が付いている話ですね。
○山田委員
確認だけしておきたいんですけれども,さっきやっていた「国の担うべき役割」の一番上の○の「日本語教育の標準的な内容」という,ここまでにも「標準的」という言葉が使われているので,ここでかなり到達目標もあるだろうし,それからそれをはかるスケールもあるだろうし,それにフィードバック【feedback】する仕方とかというのもあるだろうし,そういうものが示されていてほしいのですが…。
○西原主査
それが委員の方々の9月以降のお仕事です。
○山田委員
そうですね。それを具体的にやっていくのがそれぞれの都道府県であり,市町村であると考えればいいわけですね。だから,それは日本語教室の運営ということの中に今言ったような評価まで含めて入っていると考えるのが一般的じゃないでしょうか。
○西原主査
そうだと思います。配布資料2の2ページの一番下の「・」の「評価」というは,しっかりやっているかどうかということを見るという話なんじゃないですか。
○山田委員
だから,この「活動」というのは,教室活動ではなくて,運営に対する評価だと考えるのが普通だと思います。
○西原主査
事務局の説明はその意味だと思います。しかし,「教室活動」というのは不明確な言葉ですね。
○岩見委員
当然,お金を出したところがその中身まで評価するというのはあると思います。
○西原主査
では,「運営に対する評価」としてはどうでしょうか。
○岩見委員
中身も評価のしやすいものができれば,それも可能だと思います。
○西原主査
では,これは「活動」ではなくて「運営」とか,そのようにしていただくということでいかがでしょうか。
○井上委員
1ページ目の国の役割のところから考えていくと,例えば支援が予算措置だとすると,最近のやり方としては,アウトカム目標みたいなものを必ず作れと言われるのです。実は,明日私の別の担当で社会資本整備,交通政策の審議会が開かれるんですが,全てアウトカム目標がベースです。例えばバリアフリーの歩道の整備率を何%にするとか,そういうものがあれば,恐らく国も予算が取りやすくなるし,逆にこういうところの運営に対する評価もしやすいのではないかということです。ですから,どこかで,これもまた1ページに戻ってしまうのですけれども,結果的にはそういうものがあれば,市町村あるいはNPO等の活動まで見ていくことができるようになる。この文章を見ていて,こういうものができれば非常に画期的だなと思うのですが,最初に国が何らかの予算的なものを取って,それがちゃんと目標どおりに使われているかどうか,結果的にどういうことが改善されたかというのが分かるようになったら,すばらしいことだと思います。最初からそれを組み込んでおいた方が,こういう報告書を作るときにはいいんじゃないかなと思います。
○西原主査
そうすると,委員の方々のお仕事がもう一つ増えますね。というのは,今,国が指針を示すと言っているときのガイドラインは,一般的に多分私たちの頭の中では第一義的には日本語教育の内容のことですね。つまり,市民統合とか市民の社会参画ということをプログラムにした場合には,このような日本語教育で,それがこのようなことを知っているべき,あるいはこのような日本語を知っているべきといったことが書かれていくという,それに伴う評価までというのが一つですね。今,井上委員がおっしゃったのは別のことで…。
○井上委員
ええ,全然違います。
○西原主査
つまり,住民を10%抱える自治体は,週に何時間の,例えば年間100時間の日本語教育を設置する…。
○井上委員
一人当たり何時間のものが準備できたか。それに対する参加率がこれぐらいまで上がったとかというものです。
○西原主査
そのようなことについての評価。設置目標というのはそういうことですね。それもあった方がよろしいということでしょうか。
○井上委員
ええ。それがあると予算は取りやすくなる。それが日本の社会の安定につながる,あるいは外国人の能力の発揮につながる,そういう国の目標にもつながっていくわけです。それがないとなかなか,あなたたち専門家の世界の中の話でしょうということで一蹴されてしゅうしまいます。
○西原主査
なるほど。そうしますと,今書く必要がありますか,それとも,我々が心にとめておく必要がありますか。
○井上委員
それは,この1ページの体制整備とか,それぞれ評価とか書いているところに通じる考え方として,本来であれば1ページ目に書いた方がいいんのではないかと思います。
「目標」という言葉だけでもいいと思うんですけれども。
○西原主査
「日本語教育の標準的な目標」,「日本語教育の目標及び標準的な内容」。
○井上委員
そうですね。「目標」というのがあったらいい。そうすると,活動に対する評価分析とかにきれいにつながるんじゃないですか。
最近,そのアウトカム目標は本当に当たり前になっているので書いておいた方がいいと思います。
○西原主査
そうだと思います。それは確かにそうですね。
○岩見委員
目標というのは,一つは内容としてのミニマム日本語という到達目標の目標でありますし,一人何時間の学習時間が必要とか,そういう外形的なものもある。
何%の成果が上がったかというのと両方必要なのではないでしょうか。
○井上委員
両方あるので,それはこれから議論するにしても,あった方がいいわけです。
○西原主査
そうですね。
それで,今度は3枚目から「各機関の連携協力の在り方」です。かなり具体的なことが書いてありますけれども,ここに書き加えるべきこと等はございますでしょうか。配布資料2の(2),(3)です。これが,国語課としましては,来年度予算を獲得して,その予算によって人材育成をしよう。その必要となる人材というのが(3)のところに書かれているということです。それが,この間,尾﨑委員もおっしゃっていたように,行政的な手腕を必要とするところと,それから,「体制」と「内容」とここでは書かれていますけれども,プログラム評価とシステム評価というものを,また片仮名語かと思われるといけないので,「体制」というのがシステムで,「内容」というのがプログラムだと書き換えたということなんです。
○岩見委員
配布資料2の最後の4ページになります。この間の議論でもちょっと気になっていたんですけれども,三つある○の一番上です。「コーディネートを行うことができる専従職員」,「それは,行政機関の政策担当者であることが望ましい」。これは,そういったこの事業を担う行政機関があるということが一つ前提として望ましいことであり,そこに,中神委員のような役割を果たすコーディネーターだけではなくて,その同じところに日本語教育のプロパーも必要じゃないかと思うんです。文化庁の国語課の例でもあるような,それが次の○二つにきちんと書いてあるわけですね。次のところで,「体制面のコーディネートは,行政職が担うべき役割で,内容面のコーディネートには,日本語教育の知識,能力,経験を有する専門人材」。これはどこにでも言えることで,もちろん二人とも行政機関の政策担当者ということで。この上の最初の○と合体させた方がいいんじゃないかと思うんです。
○西原主査
それは内容面のコーディネートの仕事になりますね。
○岩見委員
下に書いたものですね。だから,上の最初の○の意味が不明瞭。
4ページ目に○が三つありますね。都道府県の中で,行政機関に置くのは政策担当者のみでよいと取られませんか。取られないのならいいんですけれども,前回の意見で,システムコーディネーターは行政の担当者,プログラムコーディネーターは地域の日本語教育の専門家,そういう構図に分けているということがちょっと危険かなと思ったんです。もちろんシステムコーディネーターとしての行政マンも必要なんですけれども,そこにプラスして日本語教育の専門職も置く。
○西原主査
多分,この上は両方とも含まれているんじゃないですか。つまり,それを具体化すると,開いていくと二つに分かれるけれども,専従職員というのは,ここは行政官と書いていないですね。ちょっと分かりにくいですか。
○岩見委員
ええ。
○西原主査
岩見委員がおっしゃるのは,専従職員の中に両方いてよろしいということですね。
○岩見委員
そう思います,プロパーも。
○西原主査
専従職員は行政職と,つまり体制面と,それから内容面のコーディネーターが両方とも専従職員であってよろしいということですね。
○岩見委員
そう思います。何かちょっとそのように取れなかったのと…。
○西原主査
そのように一番上の○が読めないと。
○岩見委員
ええ,ちょっと読めなかったんですが…,私だけでしょうか。
○井上委員
これは本来であれば中神委員がいらっしゃるとすぐ分かるんですが,多分愛知県庁があのようなことを始めたのは,愛知県下の市町村の中にそういう体制ができていないところがあるので,ある程度愛知県として動かざるを得ない状況というのが出てきたからじゃないかと思うのです。ですから,ここに「自治体が設置した国際交流協会には,専従職員が雇用されているところが多い」と書いてあるのだけれども,そもそも自治体に国際交流協会がないようなところはたくさんあって,そこに外国人が住み始めてしまっている。だから,そのときに,都道府県で,4ページの1つ目の○ですけれども,「専従職員が位置付けられていることが重要で」と読むのかなと私は,思っています。
○西原主査
上からつながってきているんですね。
○井上委員
そう読んだのです。それは「政策担当者」となると,これは市町村で交流協会がない場合には公共団体の職員がやらなければ駄目ですよと書いてあるに過ぎない。
○西原主査
文章立てとしては,そこまでが一つの流れで,「ところで」というので「日本語教育のコーディネートには」となっているんじゃないんですか。
○岩見委員
この間の議論の中で,システムコーディネーターは行政マン,プログラムコーディネーターは専門職,何かそういう枠組みの分け方にちょっと受け取れたものですから,その流れなのかなと思って。
○西原主査
そうは書いてないとは思うんです。両方とも専従でいいんです。ただ,するお仕事が違うでしょうという話はどこかに書いておかなくてはいけないでしょう。
○井上委員
本来はそうなんだけれども,実際には,市町村レベルで何も体制がない場合には,行政がやらざるを得ないんでしょうね,プログラムも含めて。
○岩見委員
そうでしょうね。しかも一人しかいない場合には,両方兼ねるしかないですよね。
○井上委員
それは,市にいなければ,都道府県でやらなければいけないということですね。
○西原主査
そういうことですね。それでこの間も政令指定都市はどうするのかという話でしたけれども,都道府県を経なくても,これは国から直でもいいわけですね。国の指針を政令指定都市が受けて独自にということもあるので,市町村の中にそれも含めておいていいわけですね。市にいろいろあるわけだけれどもというか,2種類あるわけだというのは別に書かなくてもいい。
○井上委員
余り役割分担を分けるのも,どうかなとは思うんです。要するに,行政の方はシステムで,例えば交流協会がプログラムを動かすということでもないと思うのです。
○西原主査
そういう役割分担になっているところもありますけれども,それだけが唯一の在り方ではないということですね。これをどうやってうまく書き分けるかというのが,すごく問題ですね。
○山田委員
前回申し上げたのは,いわゆる日本語教育というのは,教育活動ではあるんですけれども,かなり専門性の高いものなので,それを運営する主体がゼネラリスト【generalist】というか,行政職であっても,2年間で替わってしまうという人だけでそれを動かすことは難しい。必ずその専門職員なり,その専門を担う人とペアになって,予算措置とか会計処理というものはいわゆるゼネラリストの人が担当してもいいけれども,内容とか,それから具体的な教室の運営そのものということはスペシャリストがやって,それが片一方は替わるんだけれども,片一方は替わらない,あるいは同じようなことができる人に受け継ぐというシステムが必要だと。
○西原主査
それが反映されてこういう文言になった。
○山田委員
それが言葉になったらこうだと受け止めたんです。
○西原主査
なるほど。それはいかがでしょうか。
○岩見委員
それは賛成なんですけれども…。
○西原主査
ただ,そこに職階制を附帯してはいけないということですね,岩見委員のお話は。
○岩見委員
はい。
○西原主査
例えば2年ごとに替わっていく総合職と,ずっとそこにいる専門職という書き分け方をしてしまうことに危険がないかというお話だったんじゃないんですか。
○岩見委員
いいえ,私はそこまでは言っておりません。
○西原主査
岩見委員は,両方とも県レベルの雇用者でよろしいということでしょうか。
○岩見委員
県レベルの今の体制で,ゼネラリストで動く人と,それからスペシャリストとして継続して引き継いでやれる職という山田委員がおっしゃったような体制が望ましいと思います。
○西原主査
それをそのように書いた方がよろしいということですか,体制面,内容面というのを。
○岩見委員
二つ目の○がそういう意味を持っているわけでしょうが。何かよく分からない。
○西原主査
そう読めないけれどもということですか。
○尾﨑委員
書いてくださった方に教えていただきたいんですけれども,4ページの一番最初の○のところで,日本語教育のコーディネートを行うことができる専従職員が必要だ,それは行政機関の政策担当者が望ましいと,ここで書かれているコーディネートする人というのは,システム・体制のコーディネートという意味でお書きになっているんでしょうか。
○西原主査
どうぞ。
○日本語教育専門職
システムコーディネーターという意味でも書いておりますし,それからプログラムをコーディネートするという意味でも書いております。
○尾﨑委員
そうすると,システムであれ,プログラムであれ,コーディネートする人は行政機関の政策担当者であることが望ましいと,そういうことですか。
○日本語教育専門職
はい。会議においてもこのように議論されたのではないでしょうか。
○山田委員
そうしたら,配布資料2の(3)の最初の○二つ,4ページの一番上の○と二番目の○を逆に,上と下とを入れ替えれば,いいんじゃないですか。
○日本語教育専門職
もう少し説明させていただきたいと思います。このように書いた一つの理由に,現在日本にいるコーディネーターと呼ばれている人たちが果たしている役割は,個人の能力によるところが非常に大きく,その人がいる,いないで,その地域の日本語教育がうまくいく,いかないといったことがはっきりしてしまうという非常に不安定な状況にあるということがあります。安定して役割を果たしていただくためには,行政機関に属しているのがふさわしいのではないかということになったわけです。そこにコーディネーションを果たす機能と人が備わっているべきであるといった御発言を基に,こういう文章を作成いたしました。
○西原主査
御納得いただけましたでしょうか。ではこの3行をどうすればいいんでしょうか。
○井上委員
やや行政の責任に偏っているかなと私は読みますね。だから,最初に「国際交流協会」が来て,その後に「専従職員」あるいは「行政機関の政策担当者」という言葉が来て,また更に駄目押しのように「専門人材」と書いてあるわけです。何かちょっと流れが悪いのか,頭にすっと入ってこない。
○西原主査
では,どうしてあったらよろしいでしょうか。
○井上委員
まず行政においてどうあるべきかというのが書かれるべきで,先ほど御指摘があったように,配布資料2の4ページの最初の○と3ページの最後の○は完全に入れ替えた方がいいような感じがします。そのときに,「専従職員が位置付けられていることが重要で,それは,行政機関の政策担当者であることが望ましい」と言った場合には,非常に人事を制約します。「専従職員」というのはどういう定義なのでしょうか。
○西原主査
パートじゃなくて,地方公務員試験を受けて入ってきた人,そういう意味でしょうね。
○井上委員
となると,ここは,市町村において日本語教育全体の在り方をコーディネートするということになりますね。
○西原主査
市の方針にかかわるという話ですよね。だから,嘱託職員とか,そういうのではなくてというわけです。
○井上委員
次に,「日本語教育のコーディネートには,体制面のコーディネートと,具体的な活動にかかわる」,これは正しいですね。これは能力も経験も違います。だから,これは難しいので,「専門人材が担うべき」ということですね。「担うべき」というよりも,むしろ専門人材を育てるべきということだと思います。その上で,国際交流協会が設置されているようなところには,中には専従職員がいるので,こういう人たちも自治体の方針に沿って,拠点としての活動のコーディネートをしてくださいと書いた方がいいと思うのです。だから,4ページの上二つの○を先に持ってきて,最後に交流協会を後ろに持ってくるということなんじゃないですか。最後の○は,要らないと思います。
○西原主査
一般的な話ですからね。
○井上委員
最後に交流協会の話を書いて,交流協会はまた更に,実はボランティアとかNPOとの連携を図るというコーディネートの役割が必要なので,そういう趣旨も書いた方がいいかもしれませんね。
○西原主査
委員の方々にお伺いしたいのは,ここに外国人住民の自主性というか,その役割というのは,このコーディネートの中に何か積極的に位置付けなくてよろしいんでしょうか。つまり,今は何となく日本人側の話になっていますよね。
○井上委員
最近よくある,これはちょっとレアケース【rare case】かもしれませんけれども,留学生あるいは日系人の第二世代の人たちがそういう活動の支援する側,すなわち支援される側ではなくて,日本語を学ぼうとしている人たちを支援する側に回っているケースが結構あります。ただ,これはコーディネートの中に入る話なので,いわゆる役割としては余り特記する必要はないと思います。自分たちが目標を持って何かやるというということが,実は外国人に対する日本語教育,日本語学習と言いながら余り書かれていないので,総論でどこかに書かれる必要があるかもしれません。
○西原主査
そうですね。「学習しに行こうよ」と言うのは外国人同士の方がうまくいきますね。それから,「こんないいことがあったんだよ,私には」と言えるわけです。そのようなコーディネート,つまり,その場に連れてきて参加させるためのコーディネートというか,それはシステムではなくて,体制ではなくて,受益者とサービスを与える側とのコーディネートという,そこも結構重要な役割かなと思います。
○山田委員
そう思います。それともう一つは,日本人側の学びをどう推進するかというのがあるので,それはこの配布資料2の【参考】の「1」,「2」,「3」,今は「4」だけ考えているんですけれども,恐らく「はじめに」にも含まれるだろうし,「2」の「日本語教育の政策的位置付け」というのにも協働関係を結ぶものも入るだろうし,「3」の「地域における日本語教育の内容の改善」という,その「内容」というところに,日本語教育というのが外国人の日本語学習者にだけ向いている教育ではないんだ,それは,「統合」と言うかどうかは別にして,受入れ側の適応能力とか,受入れ側の日本語能力とか,そのようなものにもかかわってくるということとか,それから,その主体が,学ぶ主体と教育を提供する主体が,必ずしも外国人がどっちで日本人がどっちだと決めてしまうのではなくて,いつも変わり得るということでもあるとかというのは,そちらに入るんじゃないかと思うんです。私はそう思って,「4」にそれを入れてしまうと,余りにも細かくなりすぎてしまうのではないかと思います。
○西原主査
細かくなってしまう,そうですね。
○井上委員
私も最後に申し上げようと思ったのですが,コーディネーター機能も非常に重要だし,それは最近よく語られているんですが,そもそも日本語を教える人たちの能力というのはどうなのかというのが全く言及されなくていいんでしょうか。
○西原主査
それは,いかがでしょうか。
○井上委員
例えば育成の問題ですね。
○西原主査
支援側の育成ですね。ここの文脈ではどうしたらいいんでしょうね。
○尾﨑委員
忘れないうちに先ほど山田委員のおっしゃったこと,日本人側のことはどこかに入れたいなと思います。それから,外国の方というのは,支援の対象ではなくて連携のパートナーというのが基本的な共生のコンセプトですから,西原主査がおっしゃったような視点というのは,具体的にどうということなのかは次のこととしても,考え方としては入っているのが望ましいと思うんです。既に文化庁は,日系のブラジルの方を教師として,教える立場でトレーニングを始めています。そういう流れがありますから,それは是非入れた方がいいと思います。
その次に,ずっとこれはどうするのかなと思っていたのは,きちんと教えられる,「日本語教育者に求められる能力」と中神委員が書いていらっしゃる,ここなんです。つまり,外国の人に日本語を教えるということがちゃんとできる人,その人が教える場を確保するということになると,当然予算が必要になるわけです。この日本語教育小委員会としては,だれが教えるかはボランティアの人が教えるのだという現状の上で,そこがうまく動くようにコーディネーターをと言っているのか,どうなのか。ここでドイツとかを引き合いに出せば,当然これは一定の時間数はきちんと教える資格を持った人が教えるシステムを作ろうという話です。その部分がここはあいまいなんです,ずっと。これを持ち出すかどうかというと,どこかで持ち出さないといけないんですけれども。
○西原主査
カリキュラムを運営するからには,運営する能力がなければ駄目ですね。
○尾﨑委員
そうです。それがプログラムコーディネーターという名前でコーディネートをするということなんです。実質的にプログラムを動かすときに,その方が教えるということで,一人,二人じゃなく,もうちょっと必要になりますね。
教える人を教えるだけじゃなくて,御自身が教えて,その教えたことをベースにして,今度はパートナーと呼ぶか,ボランティアと呼ぶか,そういう方が,地域で暮らす人と外国の人が一緒に出会う場は確保しておきたいので,「プログラムコーディネーター」というとき,私の勝手なイメージでは,地域の一般市民と外国の人が出会って,そこで共有体験を持てるような,そこがうまく動くようなプログラムと,実質的にこれだけ日本語が伸びました,あるいは伸びたと言わなければ立場上済まない人がプログラムコーディネーターという名前で実際に教育するという,二つを混ぜた形で私の中では議論している。今ここでこれを分ける議論をしてもちょっと難しそうだから,黙っていました。ですから,プログラムコーディネーターというのは,自身が教えるというのと,その両方を見られる人じゃないとと思うんです。
○山田委員
今言われていたような日本語教育を担当する,主としてその教室活動を担当する人間というのを,配布資料2の最初の体制整備,「(1)国の担うべき役割」の?の1行目,「日本語教育の目標及び標準的な内容」で扱ったと思うんです。その「標準的な内容」と「・」で「方法」というのを入れて,その「方法」の中には,ではどういう人間が教師にふさわしいかみたいなことを盛り込む。それを今度はこの大きな「3」の「地域における日本語教育の内容の改善」のところに入れるということにしてはどうでしょうか。
○西原主査
その御提案はよろしいですか。「目標」,それから「内容・方法」と,「方法」が加わるということでよろしいでしょうか。
○中野委員
さっきの「市民参加」なんですけれども,頂いたメールの中には市民参加について3か所ぐらい入っていたんです。それが今日の資料では全部消えてしまっているんですが,もし問題がなければ,それを復活するというのはいかがでしょうか。。
○日本語教育専門職
検討させてください。
○西澤委員
それで,この全体の「はじめに」があるのでよく分かるんですけれども,これを中間まとめでお出しになるとすれば,何か中間まとめ自体若干,先ほど井上委員がおっしゃっていたような,現状を概観して,こういうことが問題だということを提起する部分があった方がいいんじゃないかなと思います。それを言わないと,何かもう既に,現に外国人がいて生活しているところの人たちだけの注意書きみたいな感じに受け取られて,今後増えてくるそういう地域の人たちもまともに真正面から受け止めてもらえなくなるんじゃないか思うんです。それで,ちょっとそういう部分が必要なんじゃないかなという感じがするんですけれども。
○西原主査
この議論は,年度末に書かれるべき草稿が示されていく段階でもう一回収れんして,大きいところは大きく書くということでいかがかという御提案が冒頭になされたのではないかと思います。
○日本語教育専門職
今,西澤委員から,前提となる状況について提起するという御提案がありましたが,この審議は昨年度まとめた「国語分科会日本語教育小委員会における審議について−今後検討すべき日本語教育の課題−」というところで一応まとめられておりまして,それを踏まえたものになっています。
○井上委員
これを読んでおけば,大体今回何をやっているかというのは分かるということですね。
○西原主査
ええ,そういう審議経過ということでございます。
○日本語教育専門職
それを踏まえて,参考資料2の課題の二つ目の体制整備について今審議していますということです。
○西原主査
そうですね。ただし,ここでは今年度,これから年度末にかけて新しい動きがあるやもしれず,政府部内で,又は国全体として,そういうものは昨年度末には書かれなかったことが,今年度末には書ける,言えるという状況になってくるかもしれないですね。
○尾﨑委員
今後のことですが実際に評価のスケールとか,評価方法をどうするかとか,教材をどうするかとか,活動にどういうものがあるかといったことをこの日本語教育小委員会で細かいところまでやれるわけではありませんから,大枠が出ますよね。その大枠を具体的にどこでだれがやるのか。そのときに,国立国語研究所はもう御承知の状況ですから,この先もっと具体的に作業を続けるときにどうなるのだろうかなということを懸念はしているということを申し上げます。
○西原主査
当面は国語課の担当者に頑張っていただくということになるんだと思うんですけれども,その先は確かに心配ですよね。どうするんでしょうか。実は,国語研究所が優れたお仕事を今までしてきていらっしゃって,そこでヨーロッパの例とか,そういうまとめがなされています。それは大いに参考になるし,先ほどヨーロッパの共通参照枠の話も出ましたけれども,そういう先達となるべきお手本というのは結構あるわけです。それを読んで,大枠これだろう,日本ではこの程度だろう,ここまでだろうということを委員の方々におまとめいただくということになります。それが今年度で終わったとして,ではそれ自体の中身をだれがどうするかという話というのが次なる目標ということになろうかと思いますけれども,そこのところが御心配だと。
○尾﨑委員
はい。
○西原主査
みんな心配です。でも,今即答はできないですよね。どうするんでしょうか。
○井上委員
現在,日本語教育の重要性が政治家も含めて多くの人にだんだん浸透していますから,なるべく早目に然るべき体制を専門的な立場から提案しておいた方がいいと思います。それができれば,予算も付けやすいと思います。
○西原主査
そうですね。それでは,今回はこれまでということにさせていただきまして,次なる会 がまだございますし,今年度はまだまだ続きますので,各委員の方々には引き続き御協力 を是非よろしくお願いいたします。
では,第10回の小委員会を閉会とさせていただきます。御協力ありがとうございまし た。
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