議事録

第14回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成20年11月27日(木)
14:00〜16:00
旧文部省庁舎第1会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,井上,岩見,尾﨑,加藤,佐藤,中神,中野,西澤,山田各委員(計11名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,中野日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第13回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容(目的及び学習事項)(議論のたたき台)
  3. 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標及び内容(イメージ)
  4. 「国語分科会日本語教育小委員会における審議について(目次立て)(案)

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 事務局から配布資料2「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容(目的及び学習事項)(議論のたたき台)」と配布資料3「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標及び内容(イメージ)」についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
  4. 次回の日本語教育小委員会は,12月15日(月)の10:00から12:00まで旧文部省庁舎2階第1会議室で開催することが確認された。
  5. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
それでは,定刻になりましたので,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会の第14回会議,今期第8回を開会いたします。前回の会議では,日本語教育の標準的な内容ということについて検討を行いました。具体の学習事項の検討は関係者の協力を得て実施するというように事務局にお願いしていたところでございます。その結果が配布資料2と配布資料3としてここに用意されております。前回の会議では四つの領域と四つの目標によるマトリックスが議事録の最後に示されましたけれども,事務局に表の精査をお願いし,ここに議論のたたき台としての日本語教育の内容の一覧が挙がっております。これは,前回会議におけるマトリックスからは,少し形を変えたものになっておりますが,そのことにつきましては後ほどまた御議論を頂くことにいたしまして,配布資料2及び配布資料3について何か御質問はありますでしょうか,コメントよりも前に何か確認をしておくことがございましたら,まずよろしくお願いいたします。
○山田委員
学習事項の項目は,例えばどういうところから拾ったものなんですか。
○日本語教育専門職
まず,前回の会議で資料として提出しました五つの機関の聞き取り調査において収集された資料から収集いたしました。各機関を訪問して話を聞く中でメモとして取ったものも含まれますが,基本的には資料として御提出いただいたものの中にあったものです。さらに尾崎委員から御提出いただきました愛知県豊田市の『とよた日本語学習支援システム』の調査結果と,国立国語研究所日本語教育基盤情報センター学習項目グループ調査『移民等を対象とする移動先言語教育:シラバス対照表1(アメリカ・オランダ・帰国者)』の成果を御提供いただきまして,それらを合わせた形で掲載しております。ただ,表現ぶりについては,整えてお示ししているところでございます。
○西原主査
先ほど配布資料2と配布資料3の作成に御協力くださった金田智子氏,宇佐見洋氏,川端一博氏について事務局の方から御紹介がありましたけれども,その内のお一方である金田智子氏が代表となっていらっしゃるグループで研究なさったその成果も使わせていただいたということでございます。ここに所長の杉戸副主査がおいでになりますけれども,国立国語研究所の特に日本語教育基盤情報センターには御研究の成果を早々に公開していただくという形で利用させていただいております。それから同研究所の宇佐見洋氏と日本国際教育支援協会の川端一博氏には,評価の点で御知見が提供されているということで大変お世話になっているということでございます。それらの成果を拝借する形でこの表がまとめられております。
ほかに御質問等ございますでしょうか。
この配布資料2の一番右の学習事項(例)ですけれども,御覧になっていただくと,この中にも疎密があるというか,更なる階層化又は取捨選択をし優先順位を付けるというようなことを考えた方がいいような項目が並んでいるかと思います。この扱いを報告書でどうするかということも一つの問題でございます。しかし,それよりもこういうものが項目として挙がってきたということに今は御注目いただいて,更なる精査ということについてはひとまず置いておいて,今回この委員会ではそこを議論するというよりも別のことに議論を集中したいというふうに考えております。ですから,こういうことが実際に来期あるいはその後に教材化されるというようなときには,更にこの部分について検討が加えられて,かつそれがカリキュラムという形で再組織化されていくということかと思うのですけれども,そういうような扱いで今回はよろしいでしょうか。(→承認)
前回会議の一番最後にマトリックスを検討し,その精査を日本語教育小委員会が事務局及びそのタスクフォースに委嘱したということになっております。その際,「知識」,「行動」,「交流」,「ことば」という形で整理してはということでしたが,そのことが今回はまだ行われておりません。そして,前回会議で検討した四つの領域ではなくて,それが10の大目的ということになっております。タスクフォースのお話し合いの中でそういうことがよいのではないかということで,「大目的」ということになっております。
この「目的」及び「目標」という用語なのですけれども,これはなぜ「目的」という形でまとめられたのか,ちょっと御説明いただいてよろしいですか。
○日本語教育専門職
「生活者としての外国人」に対する日本語教育とは一体何かということを考えますと,学習者においては,いわゆる言語習得そのものに目的があるわけではなくて,むしろその先にある「生活」というところに日本語学習の目的があるわけです。正にそこがこの「生活者としての外国人」に対する日本語教育の一つの特徴ではないかというふうに考えました。ですから配布資料2は,一見すると日本語学習についての内容には見えないのですけれども,日本語を学習することによって達成されるその目的というものを並べることで教育の内容というのが示されるのではないか,特にこの分野の日本語教育についてはですね。それで,「目的」といたしました。
○西原主査
何か御意見がありますでしょうか。ここで確認したいことはこういう整理の仕方で御納得いただけるかということが一つございます。それから教育内容を学習項目というよりは,生活者として社会的に十全に生活していくための目的という形で整理するということでございますけれども,いかがでございましょうか。
○山田委員
これは以前というか,もう二,三十年前の話ですが,文化庁国語課で中国帰国者のための生活日本語という教材を作ったときに,同じようにこういう場面設定というのを取材そして作成しました。取材というのは実際に中国帰国者の人たちで帰ってきてから何年かたつ人たちが,帰ってきて3か月だか6か月だか忘れましたけれども,そのくらいで結構大変だった場面とかを出してもらってそれを一覧表にして,それぞれの場面について今度は実際に行って実態調査をして映像の資料とかいろいろな資料を集めたのです。最終的にまたもう一度その当事者の方々に,これで漏れはないかとかあるいはここのところではこういう点により注意をした方がいいとか,そういうことを伺ったことがあるのです。やはり当事者のチェックというのを受けた方がいいかなというふうに思います。
○西原主査
この学習事項を精査する時にということでしょうか。それとは別の機会にでしょうか。
○山田委員
そうですね,両方だと思います。「大目的」なんですけれども,その中でひょっとしたら,「こういうのが本当は大切なんだけれどもここにありませんよ」みたいなことがあるかもしれない。
○西原主査
そういうことですね,そのことに関連しましてはいかがでございましょうか。
直接に聞いたということではないけれども,例えば中国帰国者の資料というのもこの中には反映されているわけですが・・・。
○山田委員
ええ,時代もかなり変わっていたりしますが,来てすぐの人たちと,それからある程度一,二年,三年と生活していく上でまた大切になる場面というようなのがあると思うので,そういうことも含めてやっぱりチェックをしてもらった方がいいかなと思います。
○西原主査
ありがとうございます。そのことに関連しましてはいかがでしょうか。
○日本語教育専門職
この資料を作成するに当たってまず五つの機関に御協力いただきましたが,中国帰国者のための日本語教育の内容も含まれております。それは何度も改定を経たものでございますので学習者の声は反映されているというふうに考えます。さらに,豊田市で現在検討されております教育内容につきましては,正に今開発中の非常に新しいものでございますし,そちらの内容も含めたわけでございます。ですから現在御検討いただいている資料に改めて学習者,当事者の方に意見を求めるということは必ずしも必要ないのではないかというふうに私は思います。
○西原主査
実際に教材を作る時にはユーザーフレンドリー(user friendly)でなければ学習はしてもらえませんので,そこの段階では改めての教師及び学習者の声を集めるということはカリキュラム開発と同時にまた並行してされなければならないということだと思うのですけれども,いかがでございましょうか。
○山田委員
それで結構なんですが,こういう例がいいかどうか分からないのですけれども,例えば日本語教育でどういう言葉が教育の内容,目標になるかというような一覧表を作ろうというようなときに,既存の教材に載っているものを,それも複数の教材から抜き出して項目化してこれでオーケーだということは,それは何か教材から教材を作るためのものを引き出したにすぎなくて,実態そのものを見るとかなり大事なところで抜けていったりするというのがないとは限らない。これも教育の現場で使っているものだと思うのですけれども,その教育の現場というのは生活の現場ではないので,生活者の視点から見ていくためには何度かチェックをした方がいい,そういう趣旨なんです。
○西原主査
そうですね,多分今年度末,来年の1月にまとめられるものというのは経過報告の域を余り出ない形で出ていくということになろうかと思いますけれども,それが実際に使われるということに時期的にも内容的にも近づいた段階では,生活している方々からの聞き取り調査というかチェックというか目を通していただくということも絶対しなければいけないことですよね。マニュアルが使いにくいというのはきっとユーザーフレンドリーでないという,そういうことなのだと思います。
○尾﨑委員
先ほどからこれは例なんだということを強調なさっているというふうに受け止めたのです。我々のような小委員会からこういう文書が出るとあたかもその範囲でやればいいんだというふうに受け止められがちなので提出の仕方に気を付ける必要があるのかなというのが一点目です。
それからこれは飽くまでも例としてあるので,これを参考にしてそれぞれの地域の特性に応じたことを考えてくださいというところを特に強調する必要があるかなと思います。例えば,冠婚葬祭というのが項目としては挙がっているのですけれども,具体的にどうだと言われると,私は自分でもどうしようかと思うことが結構あります。これは多分それぞれの地域によって,そこで学んでいただく中身は違ってくるはずですから,飽くまでも事例であって,これはレフェレンス(reference),参考資料として生かしてくださいということを強調することが大事かなと思います。
それからもう一点,この日本語教育小委員会とは関係ないかもしれませんけれども,先ほど事務局から「生活者としての外国人」に対する日本語教育と留学生に対する日本語教育の違いというような話があったのですけれども,留学生であれ研修生であれ,みんな生きていく上では同じなんですよね。だから気の配り方とか,その気付き方とか言語教育の流れの中で,むしろ留学生教育の方が大事なところを少しおろそかにしているのではないかというような反省も含めて取り上げていかないといけないと思います。「生活者としての外国人」に対する日本語教育は特別ということは全くないんだという,そこはちょっと意識しておきたいというふうに思いました。
○西原主査
ありがとうございました。これは一般的なことなんですけれども,学校教育の中で使われている学習指導要領も読めば必ず「現場の独自な工夫というのにゆだねられている,この先はどうぞ現場で」と書いてあるのです。佐藤委員,現場としてはそれはどう受け止められているのでしょうか。
○佐藤委員
両極があるんじゃないでしょうか。プラス面で言うと,それぞれの独自性が発揮できるということはあると思うのです。一方でマニュアルの必要性が高まり,結果として先生方の創意工夫を奪ってしまう傾向が学校現場にあります。例えば,総合的学習であればそれぞれの地域の特色を生かして行うことになっている。また,生活科であればそれぞれの地域生活というものを前提にしてということをいわれるのです。けれども,やることがみんな同じになっているという状況が一方ではあるんですね。それは,学習指導要領に余りにも抽象的過ぎる部分があって,つまりそこまで細かく書けないから,とするとそこは学校現場での創意工夫というふうに言うのですが,なかなか創意工夫ができないために何か例を示してくれという話になっていく。そして,結局,教科書というものが中心になる授業を構成していってしまう。決して学習指導要領が日本の教育の内容を規定しているわけではないのですが,結果としては非常に画一的な教育が実践されているというのが現状ではあるのだろうと思うんですね。ですから,報告が抽象的であればあるほど非常に現場の創意工夫というところにゆだねていくことになり,そこに非常な難しさが生じる。だからマイナス面とプラス面両方あるような気がします。
○西原主査
一つの極論として「小目的」までのところを今年度は書く。そして学習事項(例)というところは何も言わないでおくという選択肢があるわけだろうと思うんですね。どこにとどめて,どういう警告を発するか。今,尾﨑委員がおっしゃってくださったように,こういうふうに言っておかないととんでもないことになるよという,その「こういうふうに」のレベルをどこでとどめておいたらよろしいかというのは大きな問題ではないかと思うのですが,現場の先生たちはどうなさいますでしょうか。
○岩見委員
今,私どもの協会で生活者のための日本語データーベース,「リソース型生活日本語」というのがありまして,web上で公開していますが,その目次項目というのは,ここの「学習事項(例)」にほとんど網羅されていると思うのです。外国人の方が地域の教室でこれだけを見せられて,翻訳も付いているのですけれども,本当にこれを習いたかったという意見が多く寄せられています。支援者たちは気付かないけれども当事者が気付く,あるいは支援者が何を教えていったらよいか分からないけれども,サンプルとしてこの具体例があるということで,これとちょっと違うけれどもどうしたらいいかという,そこにたどり着くための参考事例,例になると思うんですね。この具体例がないとなかなか生み出すということまで今の全国のボランティアの日本語教室の実情として難しいのではないかと思っています。これはとても貴重な例として出していいと思うので,これはあるべきだと私は思います。
○西原主査
分かりました。例示はするべきだけれども,どうあるべきかというところが問題だということですね。
○加藤委員
一方で書くことの恐ろしさということもあって,それは先ほど佐藤委員がおっしゃったことに通じるのかもしれません。書いてあることでそれだけすればよいのだとなってしまうのであれば中途半端な形ではかえって出さない方がよいのかなと思います。
私たちの現場でもそうなんですが,今,日本語教育のいろいろな参考書であるとか教科 書というのが非常にそろった状態です。そうするとそれを使うことがあたかも教育である かのようになっています。少し前だと教材がほとんどない状態で自ら作り出さなければな らない時代でした。本来はあったとしても考えて作っていくというようなことが大切なの ではないでしょうか。生活者というのは留学生ももちろん含めすべての外国人が想定され るので,事例はきちんと考えた方がよいと思うので,取りあえず出してみました,となる と,それが独り歩きしてあたかもそれがすべてであるかのようになるのではないかという 懸念を持ちます。もし今回の検討が一次であれば,そういうことを断った上で出さないと いうのも一つの選択であるかなというふうに,私は思いますがいかがなものでしょうか。
○岩見委員
私も現場でそういうことはあると思うのです。特に教材化した段階で必ずそういうことは起こってくるんですね。それはいつも大きな目標を失ってしまうがために瑣()末なところにとらわれていくのです。しかし,多くのボランティア教室ではそれに前々段階として毎回突然やって来る学習者に生活者としての日本語をどう与えていくか対応を迫られるのです。そのための具体例が必要ということだと思います。次の議論になるかもしれませんけれども,配布資料3の教育目標という四つの柱と言いますか,これをやはり一番左に持ってきて,それを大きな柱として明確に前提とすべきではないでしょうか。前回も議論で何度も出てきたと思いますけれども,その上でもう少し領域を区切って内容を示す。「目的」としてもいいですけれども,きちっとした横の線が並んでいるかどうかちょっと分かりません。しかし,「大目標」はやっぱりここにあるべきかなというふうに思います。領域がだぶるかもしれませんので,そこは線を引かないとかそういった形で取り上げてはどうでしょうか。事例についてはもう少し精査する必要があるかと思いますけれども,やっぱり目標はきちっと掲げておくことが大事なのかなというふうに思っています。
○西原主査
そうしますと,配布資料2と配布資料3をつなぐ形で平面上に実現するというふうにして,線はクロスしていますけれどもそのクロスしたことをそのままクロスしたよという形で載せてもよろしいかということでしょうか。
○岩見委員
クロスするというのはちょっとイメージがわきません。
○西原主査
配布資料3では教育内容が教育目標とクロスしていますよね。
○岩見委員
そうですね。ただ「中目的」,この辺はもう少し整理する必要があるのかとも思います。
○杉戸副主査
しばらく前に西原主査が問題として提起された「目的」という用語についてです。今配布資料3の方に目が及んで「目標」という用語が出てきます。その「目標」と「目的」との関係などを考えに入れて選ばないといけない言葉だなと思って聞いておりました。それで大・中・小が付いていますけれども「目的」というだけで示していいかどうかちょっと疑問に思います。
○西原主査
ちょっと佐藤委員にいいですか,学習指導要領の中で単元は目的を持つんですよね。単元における「目標」と「目的」の関係は,どのようになっているのでしょうか。
○佐藤委員
いや,「目的」はもうちょっと高次なレベルになっています。「目的」の方が高次で,「目標」がその下位になっていくという構造です。
○国語課長
教育基本法においては最初に「教育の目的」というのが出てきて,その後に「教育の目標」というのが出ております。「教育の目的」というのは学校教育法の中でも,教育基本法に書いてある目的を達成するためにうんぬんという,そういう書き方になっております。
○西原主査
「目的」の方が高次ということですね。
○国語課長
少なくとも法律の世界では,高次ということになっているようです。
○杉戸副主査
そうなりますと,この配布資料3を左側に置いて,配布資料2を右に置くというこの大きなマトリックスの構造としては逆転するわけですから,「目的」という言葉を裸で出さないことを考えに入れておかなければいけない。つまりこれは「生活上の目的」のことですね。細かく言うとコミュニケーションの目的でもない,あるいは教育の目的とか学習の目的でもないことが書いてありますね。そういう領域の目的なんだということをきちんと示すようなラベルが必要だと思ったのです。
端的に言えば「生活上の目的」,あるいは「課題」,「生活上の課題」とか,和語で言えば「やること」とか,検討のプロセスで「目的」に代わる別の言葉について議論されたかどうか検討されたかどうか。大・中・小は付けるけれども「目的」というだけで示すのはちょっと問題を残すのではないかと思います。もし示すのであればこの表の説明の欄外にでもここで言う「目的」とは,「コミュニケーションの目的でもない」,「学習や教育の目的でもない」というようなことをきちんと説明する必要があるのではないでしょうか。
○西原主査
「目的」という言葉を使わないで別の言葉にする方が分かりやすい。注を付けないで済む分,分かりやすくはなりますか。
○杉戸副主査
「目的」に代わるものとして考えられそうなのは「課題」か「やるべきこと」ということだと思うんですね。それを比べてみてどれがいいか,検討してはどうでしょうか。「目的」が全く駄目だというふうには思っていませんが・・・。
もう一言,「小目的」だけが中に並んでいる項目からすると,「小目的」ではなくて「領域」と呼んでもいいものかなとも思いました。
○西原主査
「目的」で整理なさったその理由というのをもう一度聞かせていただけたらいいと思うのですが・・・。
○日本語教育専門職
「目的」で整理した理由ですが,「生活者としての外国人」に対する日本語教育というのは,表に挙げた目的を達成するための日本語教育なのであるということを示すことが必要ではないかということです。杉戸副主査が検討段階で何かほかの言葉も考えたのかとおっしゃっておりましたが,いろいろ考えられました。「大項目」とか「中項目」とかいう言葉も考えられましたし,各列の名称を変えるというようなことも検討しましたが,言葉はそろえた方が分かりやすいのではないかということで,こういう形にしているところでございます。
○西原主査
この整理の仕方はいかがでございましょうか。それからもう一つ,「知識」,「行動」,「交流」,「言葉」というその四つの次元が横軸に提供されて,そのことも考えるようにという宿題があったのですけれども,それは今回はまだ達成されておりません。それを次の段階でどのように有機的に今回整理されたものにつなげていくかということも問題の一つであろうかと思うのです。
○井上委員
この一番上に大,中,小の目的,学習事項と書いてあるところ,これはともかくとして非常によくまとめていただいたなという感じがいたします。私が非常にフィットしているなと思うのは,この「小目的」というところでして,ここはもう確実に一つの分野が明確になっていて分かりやすいなと思います。この中と大のところの関係なのですが,何となく大きいものと中くらいのものというような感じの分かれ方で,中くらいのものをまとめていくと大のところが入ってくるという感じですから,極端なことを言えばこれで「大目的」が10,「中目的」が20以上ありますね,名前の付け方はともかく分野の分け方はこれでいいのではないかと思いますね。
問題は,学習者に日本語を学ぶ目的を理解させるという意味であれば「目的」という言葉はいいと思うし,むしろ我々は逆に日本語教育の改正を作るという政策的な課題で言えばもっと違う言葉があるのかもしれない。それからもっと複雑にしてしまうと「生活者としての外国人」と書いてありますから,正に「生活をするために必要なこと」という整理の仕方もあるわけですね。ですからその辺りどれがいいのかなとちょっと迷っていますけれども,やはり学習をするという目標を持ってもらうためには,こういう「目的」という言葉が一番合っているかなという感じはするのです。その「生活者としての外国人」となると,やはりこれは目標どころではなくて,最低限これはやらないと困るでしょうという言い方をするのであれば,その「生活における領域」と言おうか,そのためのやるべきこと,そして分野とその学習事項と分けた方が,一つずつ別々に書いていった方がいいような感じもしております。
○西原主査
突然ちょっと順序を変えてしまって申し訳ないのですが,配布資料4を御覧いただきますと,今期の日本語教育小委員会報告の目次立ての案が示されています。その中でIIのところが「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容等について」ということで,日本語教育の内容ということを整理して「1「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目標」,「2「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容」というようなことになっています。その内容のところを御審議いただいているということになるわけです。そういう鳥瞰(ちょうかん)図でこの資料があるということをお考えいただきますと,どういう形でこの項目立てを付けていったらその展望に沿った形でネーミングができるかということも併せてお考えいただければよいのかと思いますけれども,いかがでございましょうか。
大・中・小の目的ということだけでなく,またそこにある目標というものにこれが合致しているということのみでなく,もっとこういう項目も立てたらよかったのではないかというようなことがありましたら,どうぞそのことも併せて御意見を頂ければと思います。
○中神委員
配布資料2の3ページの項目「働く」です。実務家の立場で行きますと,これは大変御苦労されて作られたと思うのですけれども,御存知のとおり今恐らく大部分の外国人の方の中で「働く」ということについての関心は,多分去年までですと「中目的」の三つのうちの2番目の「仕事をする」と3番目の「仕事に役立つ能力を身に付ける」が高かったと思うのです。けれども,今はもう明らかに「仕事を探す」に移っておりまして,現状,私どもの地域でもハローワークに人が殺到しています。問題は言葉ができないということと制度を知らないということの両方で,そういった面では直接この議論とはかかわりないかもしれませんが,この学習事項に書かれているこういった内容,例えば自分自身でハローワークに行って,ある程度自分の意図をきちんと伝えられるということができるような教材があれば本当にいいなという感じがいたしました。
当然これは鳥瞰(ちょうかん)的な資料でございますので,その時期その時期に応じて何に重きを置くか違ってくると思うのですけれども,働くことを含めて生活全般にわたってこれだけ書かれておりますので,これに何を付加するかというのはそれぞれの現場現場で考えればいい話であると思います。まだこれは完成ではないと思いますけれども,非常に役に立つなという気がしました。ただ,一点,今までの議論を伺っていて確かに「小目的」というのは,これは決して小さな目的ではないものですから,何か確かに分類1,分類2とかそうした方が,あるいは「領域」とした方がいいのかもしれないなというそんな感じがいたしました。
○西原主査
なるほど。大・中・小と重み付けされてしまうと,この「小目的」が決して小ではないということですね。
○中神委員
はい,もちろんそういう意味ではないと思うのです。この分類はよく分かりますので,この中では別に大・中・小でもいいと思うのです。ただ,より現実に現場に近い形で分類しているんだよということの意味に使っていると思うのですが,何となくこの「小目的」だけ見ると,何でこれが小なのかということを言い出す方がいらっしゃるかもしれません。
○西原主査
何かほかに良い整理の仕方の御意見はありますでしょうか。
○岩見委員
この「小目的」は要するに学習項目のカテゴリー化ですよね。だから「小目的」というよりは「学習項目区分」であるとか,そういった言葉はいかがでしょうか。
○西原主査
「目的」という言葉でそろえた方がよいだろうということは,それが表として分かりやすいからということでしたが・・・。
○中野委員
私がこれを素直に見ると,「教育目標」と「大目的」,「中目的」までは,目標とその目標を少し具体化しているものという感じで,今「小目的」といわれているのは正にトピックスとかテーマに当たるもの,つまり目標を達成するためにどういう学習内容と方法が必要かとなったときに,その内容をテーマとして入れていく,そのトピックス例というかテーマ例というか,国によって違いますけれども,そういうふうに見えるんですね。だからこれは目標とか目的よりもその目標を達成する内容のトピックスというか,そういうふうに見ると思うのです。
○西原主査
そうすると同じ「目的」という名前で通さない方が分かりやすいだろうということになりますね。
○中野委員
「中目的」までが「目標」。例えば「教育目標」の「健康かつ安全に生活を送ることができるようになる」というのは,かなり抽象度が高いですよね。それが「健康・安全に暮らすことができる」,さらに「健康を保つことができる」というふうに抽象度が低くなってきている。それを達成するためにどういう具体的テーマ,内容を入れていったらいいかというふうに考えればよいのではないでしょうか。
それを,テーマといったりトピックスといったり主題といったりいろいろだと思うので すけれども,何か正に名詞止めになっているのは,そんな目標から内容へ変わり目のよう に見えるのです。
○西原主査
先ほど杉戸副主査がおっしゃったのもそのようなことでしょうか。
○杉戸副主査
はい,それに近いと思います。「小目的」は先ほどは「領域」あるいは「分野」という言葉ではどうかと言ったのですが。そういうふうに見えます。そして大と中はその「目的」という言葉をもう一度工夫して,この枠を残しておく。
○西原主査
ただ,先ほど上位概念,下位概念ということをおっしゃったときに,一般的に「目的」の方が上位に行くとなると,ここに「目的」を使うのはちょっと危険かもしれないですね。
○佐藤委員
作業上の概念としては何を使っても構わないと思うんですよね,それは作業上ですから。ただし公表していくときに教育の世界の中で「目的」と「目標」といったら明らかに「目的」の方が上位概念である。ですからこの配布資料3だけで言うと,これで関係するのであればよく分かるけれども,配布資料2と配布資料3と合わせると「教育内容」というのは明らかに「目標」に近いですよね。つまりこれは「大目標」があって「中目標」があるみたいなものです。そうすると「中目的」というのは実は領域論であって,そして学校教育の世界だと「小目的」とは実は単元なんですね。
そして小さなものが小単元という話なんですよね。ですから作業上でこういうアプローチであるのは,すごくよくまとまっていると思いますのでこれでいいと思うのです。要するに名前の話は少し整理しておかないといけない。そして配布資料2と配布資料3をつなげていくと,これもやっぱり「内容」と書いてありますけれども,これは「目標」のような気がしますし,それが10の目標になっていて,そしてその下に領域が出てきて,そして何か単元というのがある。単元というのは日本語教育の世界でいうのかどうか分かりませんけれども・・・。
○西原主査
学校教育の中ではそうですね。
○佐藤委員
そうですね。ですから,今の議論から言うと多分「大目的」というのはいわゆる一般的に「目標」であって,どこで「領域」にするか,中と小と両方あるようですけれども,その辺のところは議論が分かれるのではないでしょうか。
○西原主査
中野委員はここで「何をする」ではなくて名詞止めになっているというところが一つ別れ道になっているのではないかとおっしゃいます。
○杉戸副主査
今までの議論の中で「目標」よりも大きく使うべき「目的」という言葉があるという,それは配布資料3の左の四角の中の「教育目標」に2行ほど書いてありますが,その「〜図り生活できるよう」と,これは恐らく「目的」だと思うのです。その「目的」の下に以下の四つの目標を掲げるという構造になる。その2行分を「目的」と掲げて,あるいは「〜図り生活できるようにすることを目的として,以下を目標とする」という,そういう構造にして「目的」という言葉はもうそこだけに止めておくと国語課長から御説明のあった法令の世界とも合う。
○西原主査
「我が国において外国人がコミュニケーションを図り生活できるようになることを目的として,以下を日本語教育の目標とする」という整理をした上で大・中・小の「目的」という言葉は削除するという案ですね。
○杉戸副主査
「目的」でなく「課題」というのはどうでしょうか。あるいは「生活上の課題」。
○西原主査
「課題」と「領域」,そうすると大きな課題と中くらいの課題になる。
○杉戸副主査
はい,そういうことですね。
○加藤委員
その「課題」を「目標」としてはいけないのでしょうか。上の2行のところが「目的」というお話ですよね,今,杉戸副主査がおっしゃったのは「生活できるように」というところですよね。
○杉戸副主査
はい,そう言いました。そういう意見です。
○西原主査
ええ,そこが「目的」ですね,それが一番大きなところです。そしてその次に示されるのが「目標」になります。そのもう一つ下位に「大目的」というのが来ています。
○杉戸副主査
そこからは教育の「目的」とか「目標」とか「課題」ではない世界に入るわけですね。
○西原主査
ええ,そうですね。
○杉戸副主査
扱う生活の課題とか生活の目的であったり。
○西原主査
生活上の課題。
○井上委員
「大目的」と「中目的」を「生活の課題」でまとめてしまえばいいんじゃないですかね。
○西原主査
ただ,これはやっぱり下位分類されているので,そこの階層化はちょっと試したいですよね。
○岩見委員
仮に先ほど言った四つの柱が前に付くのであれば,「大目的」「中目的」のところを次の段階として生活領域であるとか生活課題としても,今,杉戸副主査がおっしゃったようにいいわけですよね。「大目的」と「中目的」を一緒にするかはちょっとそれぞれ違ってくるかと思いますが・・・。
○西原主査
頭の整理としてはここに三段階あるのはとっても助かるのではありませんでしょうか,いかがでしょうか。
○杉戸副主査
あった方がいいと思いますね。
○井上委員
今の議論を聞いていて私なりに少し整理したのですが,タイトルの「生活者としての外国人」というのは政府で決められた言葉なんですよね。ですからこれはもう動かし難いとすれば,それに対する日本語教育の目標・内容ですから,これを「目的」にするのか「目標」にするのかは別としても,飽くまでも政策面での「目標」なり「目的」を決めるというのがまず第一ですよね。ですから先ほどの配布資料3のところをまず整理して,これを表の冒頭に持ってきてしまって,まずそれをきちんと書いてしまう。その上でお話があったように「大目的」,「中目的」の言い方をどうするかはともかくとして,ここは飽くまでも「生活者としての外国人が日常生活を送る上での課題」なんですね。日本で生活をする上での課題として「大目的」が10,「中目的」が23,これで一つ。で,当然右半分の「小目的」から学習事項に関しては「生活者としての外国人」が日本語を学習する際の領域と事項として一つ。そういうふうに三つの例案に分けて表ができれば一番いいと思います。「教育目標」が一つ目の例案の表で,二番目は「大目的」と「中目的」の部分で,最後は「小目的」と「学習事項(例)」,このくらいの感じで分けてしっかりとそれぞれの位置付けができればよろしいのではないかなと思いますね。
○西原主査
そうすると先ほど杉戸副主査が「領域」とおっしゃったのを「学習の領域」というふうに「小目的」を書き換えてもよろしいという御意見でしょうか。それは中野委員がおっしゃったこととほぼ並行しますでしょうか。
○中野委員
はい,言葉はともかく内容を提示する一つの方法だと思います。「大目的」と「中目的」をいきなりここで「課題」とすることについてですが,私はちょっと違和感があります。つまり課題というのはたくさんあって,その課題を想定しながら教育の目標を作る。そしてその目標のための内容とか方法が考えられるという方が自然なのではないでしょうか。
最終的にはこれがカリキュラムにつながるわけですよね。
だから「課題」というのはちょっと違うのではないかと思います。
○井上委員
「生活上の課題」,これも外国人が生活する上での領域なんですよね。ある場の中でどう振る舞うかということですね。その振る舞うときに行動だけでなくて言葉がなければ駄目でしょうという言い方なので,そういう学習者に対する説得性を持つ言葉,それからちょっとこだわるようですけれども,飽くまでもここは文化庁という行政機関の検討会なので,やっぱり行政の政策としての位置付けというものがここの「生活者としての外国人」に日本語を学習する動機を与えるものでなければいけないわけですよね。ですからそこはしっかり分けて書いていって,両者があるところで結び付くという書き方がいいのではないかと思うんですね。
○西原主査
これは「生活の目標」でもあるわけですよね。
○井上委員
そうなんです。
○西原主査
目標1,2,3とかにするという話もあるわけでしょうか。
○井上委員
ありますね。
○佐藤委員
本当は,「大目的」というのは実は「目標」で,「中目的」は「中目標」になるのでしょう。そして「領域」になるということだと思うのです。普通はその「目標」,「中目標」,「領域」ということの方がすんなり落ち着くような気もするのです。こういうふうになって,この中からこういう「目標」を具体的に小の目標が出ました,その目標を達成するためにこの「中目標」を設定しましたと考えればいいのではないでしょうか。
○西原主査
そうすると「目標」が三つ並ぶという話になるのですが・・・。
○佐藤委員
でも,こっちは正に大きな目標,目的に近いような四つの「目標」ですよね。
○西原主査
四つの「目標」です。それを「目標」と呼んでいるわけですね。
○佐藤委員
それを更に細分化すると,こういう目標が設定されましたというのはまずいですか。
○井上委員
非常にこだわるのですが,やっぱり政策としての「目標」というのと,それから外国人が日本語を学習する「目的」というのは同じようで実は同じではないんですね,やっぱり両者がどこか接点で結び付いて,それではこういう場を使って教育の機会を与えますから学習をしましょうという形で歩み寄るのだと思うのです。
○佐藤委員
井上委員がおっしゃったのは,この四つが政策目標になるわけですね。
○井上委員
正に,そういうことなんです。
○佐藤委員
で,「大目的・中目的」が教育目標になるんですね。
○井上委員
そうなんです。
○西原主査
「政策目標」と呼ぶことはできないのですね。
○佐藤委員
もちろん,ここではね。
○井上委員
変な言い方ですけれども,むしろ余りぎらぎらと出さない方がいい。
○西原主査
そうですね。
○佐藤委員
だから「目標」なんですが,言葉を見付けるのであれば少しいろいろ案を出した方がいいですね。
○西原主査
ありがとうございます。少なくともこの教育目標の四つ,「大目標」の10個,それから「中目標」の23個,というのは段階別になっているということで「目標」なんでしょう。そして「小目的」を一応仮に「学習の領域」と呼ぶということにしますと,その「大目的」,「中目的」とここに提案されているものに対する良い用語というのは何でございましょうか。それが「目標」から有機的に降りてきて「領域」のところに至るための中間的な用語というのは,皆さんの生活の御経験の中では何と整理されていると一番分かりやすいでしょうか。
○中神委員
例えば配布資料3です。今「目標」になっていますけれども,これがまず「目的」になって,下に四つ目標が出て,それを達成するためという「内容」が右にございますよね。配布資料2の方ですけれども,これは分類と考えてはいけないのですか,教育内容にかかわる「大分類」,「中分類」,「小分類」というように。余りいろんな言葉を使いますと定義でまず混乱してしまうのではないかと思いますので。
「目的」があって,四つの「目標」があって,「内容」があって,そして内容を一応便宜的というかより具体的に分類するとしたら「大分類」,「中分類」,「小分類」とできるのではないでしょうか。ならばこれ多分価値判断はないですよね。余り価値判断が入ってくるような「課題」とかいう言葉を使わない方がいいような気がします。
○杉戸副主査
私は申し訳ないのですけれども,今の価値判断を入れた用語を選んだ方がいいと思うので,そういう意見を持っています。「大分類」,「小分類」,あるいは「中分類」というのはそれは使っていいものだろうと思いますが「生活上の課題」あるいは「生活課題」として,それに大分類,小分類として,今「小目的」となっているのを「領域」とするというような,そういう案を今の話を聞きながら思いました。つまり「目的」とか「課題」,生活上の目的,課題を解決する,それを「目標」にするのが「生活者としての外国人」に対する日本語教育という,そのことは価値を込めて,意思を込めて訴えた方がいいと今回思うんです。私はそういう意見です。
○西原主査
先ほど国語課長から法律用語についての御説明もございましたけれども,これを事務局に次までの宿題にしても大丈夫でしょうか。
○国語課長
できる範囲内でやらせていただきます。
○西原主査
この件についてお考えいただき,かつ行政府としての文化庁の下にある日本語教育小委員会が作る表ということを踏まえて,今の趣旨,つまりどこまでがどうだということの御説明を受けた形で,項目名をどう整理するかということを次までに宿題として考えていただくということでよろしいですか,それともまだもうちょっともんだ方がよろしいでしょうか。
○佐藤委員
一つだけ。学校教育の世界にはブルーム(Bloom.B.S)という有名な人がいまして,教育目標の分類学の提唱者なのですが,その翻訳がどうなっているかというのをちょっと調べて情報を事務局に提供しておきます。多分,目標1,目標2,目標3という,杉戸副主査がおっしゃったように価値付けをしながら1,2,3と分けていたような気もします。多分,「教育目標の分類学」の中ではオーソドックスな言葉が使われていたはずです。
○西原主査
分かりました。では,この議論はいろいろな御意見が出ましたけれども,ここまでとさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
○加藤委員
先ほど中神委員がおっしゃったところからの連想で,この「働く」というところに関してなのですが,特にこの三つある中の「仕事に役立つ能力を身に付ける」という部分が,今,留学生の30万人計画であるとか,いろいろそういったところで注目されています。経済産業省は実際に会社で働く外国人とはこういう能力を付けたらいいというようなことをアンケートを取ったりしています。それから海外技術者研修協会(AOTS)もこういう能力が必要だというようなものを出したりもしていますので,何か私たちにとってはここは今非常に重要であると認識しています。いかにしてここの能力を付けるかということが課題になっているので,その辺りのところも何か加味される形でよりここが充実されるといいと思います「事項例」というところも。10個ぐらい書いてあるだけですけれども,例示されているスキル以上の能力が多分求められていると思いますので,その辺りのところが課題でしょうか。
○西原主査
具体的に資料をお示しいただけますでしょうか。
○加藤委員
そうですね分かりました。では,このようなものというのをお知らせします。
○西原主査
もう少し「中目的」の「仕事に役立つ能力を身に付ける」の内容を細密にしたらどうかという御意見ですね。
○加藤委員
はい,実際にそういう資料もありますので,そういうのを御覧いただきたいということです。
○日本語教育専門職
確認ですが,学習事項についての御意見でしょうか。
○加藤委員
学習事項ではありません。私ははっきり今ここで何を増やしてくださいというだけのものを持っていないのですが,そういったものが既に現時点で去年,今年辺りは出ておりますのでということです。
○西原主査
つまり「小目的」のところはもう少し項目が多いだろうということですか。
○加藤委員
はい。そういうふうに予測されるという意味で資料などを御参考にしていただければと思います。
○西原主査
その資料はお持ちでいらっしゃいますか。
○加藤委員
はい,それを御連絡するということを先ほど申し上げました。
○西原主査
それは経済産業省の資料ですか。
○加藤委員
はい,それから海外技術者研修協会(AOTS)が出しているものです。その2点が私が今思い付く内容です。
○西原主査
それは「生活者としての」という範囲を超えない資料ですね。
○加藤委員
ええ,そうです。
○西原主査
中神委員から「働く」というのはとてもフォーカスが当たっている領域で,そこの「仕事を探す」というところがいまや新しく重要性を増しているという御指摘でした。加藤委員の御指摘は,「仕事に役立つ能力を身に付ける」というところがもう少し書き加えられるべき領域を含んだものであろうということでした。
○加藤委員
ええ,現状において。
○西原主査
現状においてそうであろうということです。そして日本語学校の教育活動の中にもそのことは反映されるべきということでしょうか。
○加藤委員
はい,そうですね。それは大学も同じように就職を控えたた学生にとって重要な部分です。
○西原主査
大学も就職というところに向けて能力開発をやっているということですね。
○日本語教育専門職
この資料は各機関で実施されている「生活者としての外国人」に対する日本語教育を元データとしております。いわゆる「仕事」だけに特化した教育内容も取り上げてこの資料は作られておりません。海外技術者研修協会(AOTS)につきましても,飽くまでも生活全般をカバーした教育内容を参考にいたしましてこの資料は出来上がっております。そのような作り方の中で,いわゆる「仕事」というところに特化したものをデータとして追加してよろしいかどうかというのは御判断いただきたいのですが・・・。
○西原主査
新しい傾向として加藤委員が今おっしゃったように留学生を就職させよう,つまり今までは留学生は卒業したら基本的に帰る人たちという想定だったけれども,このごろは定着させようということが強く出た形になっていますね。ですから既存の教材よりはむしろ今の動きの方がその先を行っているというふうに考えるとすれば,その今の動きを反映させた形でこの部分を少し細分化するというようなことが必要ではないかという御指摘だったと思うのですが,そのことはいかがでございましょうか。
○岩見委員
留学生に限らず定住と言いますか長く日本に住む人にとって,やはり仕事のキャリアアップですとか仕事の中で能力を生かしていくということは必要なことで,それこそ文化的生活ではないですけれども,自身を豊かにするとか生涯学習の観点からもとても大事なことだと思いますので,それは加えていくべきかなというふうに思います。
○西原主査
つまり,そうしますとちょっとイメージだけですけれども,配布資料2の「働く」の「仕事に役立つ能力を身に付ける」というところが,「仕事をする」の半分以下の分量になっていますけれども,項目立てとしてはもう少しいろいろな提案がされているのではないか,その部分を反映させたらどうかという御意見というふうに考えてよろしいですか。
○西澤委員
それと若干関係して質問なのですが,配布資料3で「教育内容」で整理している順序と配布資料2の「大目的」になったときの順序が変えてあるのは何か特別な理由があるのでしょうか。「働く」というのが配布資料3では2番目にきているのですけれども,この配布資料2では大分後ろの方になっているのは何か理由があるのでしょうか。
○日本語教育専門職
配布資料3を見ていただきますと色が教育目標と教育内容で色をそろえて示されているところがございます。「日本語を使って健康かつ安全に生活を送ることができるようにすること」というその教育目標は,「○ 健康・安全に暮らす」,「○ 住居を確保・維持する」というその教育内容に当てはまるのではないか,つながるのではないかということが検討作業の中で考えられました。
一番下に水色で「○ 消費活動を行う」,「○ 目的地に移動する」,「○ 子育て・教育を行う」,「○ 情報を収集・発信する」という部分につきましてはどこかというよりはそのほかすべてにかかわるのではないかという整理を一応検討作業ではいたしました。その部分を下にまとめましたので順番がずれているということでございます。
○西澤委員
そうすると「消費活動」,「目的地への移動」,「子育て・教育」というのは一番下の欄から上の方に行っているわけですよね。配布資料2では,「働く」の前にこれらはなっているのが,どうしてなのかというところがよく分からないのです。
○日本語教育専門職
配布資料2の項目の並べ方につきましては,ここも検討作業の中で一応議論はして,個人で行える生活の最も基本的なところからコミュニケーションの意味でそのほかの人とかかわりを持つ,そういう場面にまで広がっていくという並びにしてございます。つまり,「健康・安全に暮らす」とか「住居を確保・維持する」というようなことは生活をしていく上で非常に基本的なところでございます。それから後ろの方にいきまして「自身を豊かにする」,「人とかかわる」,「社会の一員となる」というところにつきましては,より他者との関係性を築けないと達成できない内容へ広がっていくと,そういう並べ方でございます。
○西原主査
今の西澤委員の御指摘は「働く」というのが配布資料3で2番目に来ているのに,水色の部分が項目として配布資料2では上に行ってしまった結果,表にすると何かそこに大きなクロスができてしまうということをどう考えるかという話だと思うのです。配布資料3の「働く」が2番目のところで黄色に位置されているにもかかわらず,配布資料2の表としてはこの水色の部分を上に上げてしまったというのはなぜかという御指摘だと思うのです。
配布資料3の「教育内容」というところでは,オレンジの教育内容の説明の後,サーモンピンクの「○ 健康・安全に暮らす」,「○ 住居を確認・維持する」が来て,次に黄色の「○ 働く」があるのに,配布資料2では,その黄色とサーモンピンクの間にこの水色が挟まってしまったのはなぜなのかということです。
○尾﨑委員
今のお話をずっと伺っていて何か配布資料3を見ていると四つ出てきているのは,「大目標」ということなんですよね。
配布資料3の「教育目標」の黄色のところで「日本語を使って自立した生活」と言うと,やっぱり収入を得ていないと自立とは言えないだろうというので,すぐ横並びで「働く」が来たのだと思うのです。もちろん働くことが自立の前提だとは思いますけれども,やっぱり移動できるとか口座を開けるというのも自立するためには必要なことですから,一応四つ大目標があって,それをブレイクダウンさせたら10個ですよと,それを余り無理やり対応させるのをやめて,この10個の並べ順がどうなったら一番すっきり理解できるかというのは別に議論をするとして,一応四つ「大目標」があって,10個「中目標」があって,そしてこの表の「中目的」のところが「小目標」になって,その「小目標」を踏まえて学習内容の領域を細分化したという構造にしてはと思います。
○西原主査
無理にこのカラーで「教育目標」と「教育内容」を結びつけなくてよろしいということですね。
○尾﨑委員
そう思います。
○岩見委員
たまたま配布資料3では先ほど尾﨑委員から発言があったように「自立した生活」は「働く」の一つですけれども,配布資料2から見れば,自立した生活を送るためには住居を確保しなければいけませんし,そこから次のところですね,消費活動も自立した生活に必要,それから目的地に移動するのも必要です。で,その次の「働く」です,ここまでが「自立した生活」に必要なものですね。ただ,少しニュアンスが違うのは「子育て・教育を行う」。これは,自立した生活にも必要だし,社会への参加にもかかわってくる。この辺にこだわるとすれば下の「子育て・教育を行う」を「働く」の次の方に持ってきた方がよいのではないでしょうか。それは,「人とかかわる」,「社会の一員となる」のような社会への参加とかそういうのに近いのかなと思うからです。そしてその次のところの「自身を豊かにする」というところが「文化的な生活」と。情報収集はいろんなところにかかわってくるので,これはまた議論していただきたいと思います。
○西原主査
そうすると,このイメージ図というものを無理に報告書の最終的な段階としてこの色分けを使わなくてよろしいということでしょうか。
佐藤委員の先ほどの御意見では,私たちの報告作成者の頭を整理するためにこのようになっているけれども,実際に出ていくものとしてはこういうものでなくてよろしいという,つまり教育目標があって,大目標が10個並んで,いわく言い難いにじのようになっても構わないということでしょうか。
○中野委員
大変シンプルに言えばイメージはこれだけでいいと思うんですね。この四つの「教育目標」だけ。そして次に配布資料2が出てくればいいように思います  私も最初に配布資料2を見たときに,どうしてブルーが下なのかを推測して納得していました。それは,多分この四つの目標ってクォリティーオブライフ(quality of life)としては結構挙がってきますね,そういう議論があったと思うんですよ。下へ行けば行くほどクォリティー(quality)が上がっていく。多分このブルーのところは「働く」の前にある辺りに位置するという位置付けがあったのかなと思うんです。ただ,クロスしちゃうなと思って下に持っていらしたのかなと勝手に思っていたんですよ。だから本当は「消費」も「目的地」も「子育て」もどちらかというと,そのクォリティーから言うと自立した生活辺りなのかなというふうに思いました。
その方が分かりやすい。ここの表にその続きが書けていればよろしいのではないでしょ うか。
○西原主査
ほかの委員の皆様方,よろしいでしょうか。西澤委員もそれだったら御納得いただけますでしょうか。
○西澤委員
はい。
○佐藤委員
別の観点で一つだけ確認をしたいと思います。こういうカリキュラムとか内容の開発をするとどんどん増えていくと思うんですよ。
これは,ミニマムエッセンシャル(minimum essential),つまり必要最低限,生活者としては最低これだけはという議論でよろしいのでしょうか。例えば今の「働く」というところでも確かに「仕事に役立つ能力」と言うのですが,それはすごく幅がありますよね。例えば,どこの大学とは言いませんけれども,カリキュラム開発と言うと3,000ぐらいの授業が出てくるのです。これをスクラップ(scrap)して議論をすると,これも必要だ,これも必要だという議論になりかねないですね。そうすると,これは飽くまでも必要最低限だ,学習指導要領も同じで最近はそういう位置付けになりましたが,それをもっと増やすのだったらそれぞれやってくださいということになります。そうすると私たちが「学習事項」は別にしても「小目的」というここで言っている項目については,これはもうある意味で必要最低限で,これに過不足あるかどうかという議論でよろしいのでしょうか。
○西原主査
そうだと思います。何といってもミニマムエッセンシャルはこの目標のところに集約されるわけで,右に行けば行くほどそれが最低限かということについては議論の余地が生じてくるということですけれども,少なくとも「中目的」のところまではもう必要最低限ですよと言わなければならないと思うのですが・・・。
○佐藤委員
いや,そこを「中目的」にするのか「小目的」まで下ろすのかというところを,ちょっと確認をしておく必要があると思います。これで議論していくと「小目的」のところはどうしても増えていきますよね。
○西原主査
ちょっと飛躍するのですけれども,次期の日本語教育小委員会にはもう少し具体的な教育内容ということが課題になることは必須ですよね。その次に何があるかというと,じゃあ,どこまで達成されたかどうかを,どうやって評価するのですかというような評価目標というようなものがその次に浮かんできます。その評価目標のときにこんな学習事項例みたいなものを350示されて,それをすべて評価するなどということはできません。そうするとどこまでをできたか,できないかという判断の根拠とするかというようなことも,佐藤委員のおっしゃるどこまでを最低限と考えるかということと関係するのだろうと思うのです。それを「中目的」の辺りにしておくか,「小目的」とここに書いてある領域の辺りにしておくかということは大変重要な思案のしどころかと思いますけれども。
評価ということを考える立場というのを想像してみると,右の方に設定されればされる ほど苦しくなっていきます。
○佐藤委員
それはそうですね。評価が具体的にはなりますよね,仕事を探すというよりは就職活動ができたかどうかということですから。
どこまでの評価をするかということですよね。つまり生活者としてやってきた人たちが 自分で実際にいろんな仕組みを理解して,実際に就職活動ができたかどうかというところ は評価の対象ですよね。ただし,仕事を探しましたけれども見付かりませんでしたという 話では困るわけです。
○西原主査
それはそうです。そうしますと少なくとも学習事項と言っているところの詳細については,今回は書くとしても事例にしか過ぎないということは強調するしかなくて,少なくともミニマムエッセンシャルというのは「小目的」と言われているところまでというふうに考えるのではないでしょうか。
○佐藤委員
そうすると過不足があるかどうかという次の議論につながっていくのですけれども,「仕事に役立つ能力を身に付ける」というのは,これで過不足があるからという議論でよろしいのですね。
○西原主査
そうですね。先ほど加藤委員がおっしゃったのは少なくとも実際の教育現場ではもう少し「小目的」のところが子細になっているのではないかということで,御提案があったと思うのです。これは事務局に判断をお任せしなければなりません。つまり経済産業省が出しているものを,そのまま取り入れてよいかということは大きな問題だと思いますし,それから海外技術者研修協会(AOTS)のものは一応もらっていることになっているので,その海外技術者研修協会(AOTS)の最新の資料に,そこには入っていないというのはどういう理由なのかというようなことも御検討いただく必要があるかと思うのです。
○加藤委員
私もミニマムエッセンシャルとしてやはりこれは絶対に必要なのかどうかという観点で自分は自分で資料を見てみたいと思います。もちろん御検討を頂きたいと思いますが,私の意見というか考えを事務局に御連絡をさせていただくということでよろしいですか。
○西原主査
分かりました。そして配布資料3のことで先ほど御提案のあったことですけれども,この配布資料3の右の部分のこの色付けというのはなくてもよろしいでしょう。つまりこの色付けされている四つの目標から配布資料2の方の一番左の項目に移ってよろしいでしょう。そしてそこには交差する線を引かなくてよろしいでしょう。ということでよろしいですか。それを各自判断してくださいということになりますけれども,よろしいですか。
(→了承)
○日本語教育専門職
「教育目標」を欄外に示す。つまり表の上の部分に掲げるというようなイメージでよろしいでしょうか。
○西原主査
それでよろしいわけですね。
○日本語教育専門職
分かりました。
○西原主査
それから「〜図り生活できることを目的として」というふうに「目的」を上に上げるということで「目的」という語は使われるということでございますね,そこもよろしゅうございますでしょうか。
ということで,資料の修正というのを次回までにまたお願いするということです。タスクフォースの皆様方には2回ですか長時間にわたって御協力いただいた結果がここに反映されていると思いますし,これはこれですばらしい成果というふうに考えます。しかし,報告の対象とする人々あるいは報告がまとまっていく先ということを考えると,今のような整理を更にした方がよいのではないかという御意見というふうに考えます。次回までには事務局でこのことを反映していただいて,次なる御提案を頂くということでよろしゅうございますでしょうか。
そして最後に先ほどお示しした目次案というものがあるのですが,これについて御検討を頂ければと存じます。
配布資料4を御覧いただきますと,この期の前半に検討され,7月の段階でまとめていただいた結果というものが「I」ということでまとまっております。このことにつきましても,更に書きぶり等について検討はなされると思いますけれども,一応中間的な整理を見ておりますので,これが先に来る。そしてそれを踏まえて「II「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容等について」という章が来るであろうということです。その中に目標と内容と書かれているところですが,更に盛り込むべきことあるいは我々のこの日本語教育小委員会の検討というものを踏まえて,このことも書き込まれていなければならないだろうということを大枠で結構でございますので,御審議を頂きたいと思います。
○杉戸副主査
「目的」という言葉にこだわりますが,この目次立ての「II」の1,2と今ありますね,その1が目標,2が内容であるわけですが,その前に「目的」というのを書くのか,あるいはさらに「はじめに」とか,ローマ数字のI,II,IIIの単位で何か「目的」というのを掲げるのか。
○西原主査
そうですね,「生活者としての外国人」という全体を包括することというのは,「はじめに」のところに書かれるべきことでございますよね。この日本語教育小委員会が課題としたことというか,お仕事としてこの1年間御議論いただいたことというのは,「はじめに」のところに書かれるわけですけれども,今「目的」というふうに整理した配布資料3のオレンジ色のところの最初の2行のところというのはどこに書かれるかということです。杉戸副主査が「今,選択の余地がありますね」とおっしゃったのは「I」の1というところの前に,これでいくとゼロになりますけれども,一番最初に「目的」というものが記述されるべきだという選択肢か,さらに一番最初の「はじめに」の部分にその「目的」というものが記述されるべきなのかという選択肢か,両方ということもあり得ますね。
○杉戸副主査
両方というのもあります。かぎ括弧を付けた「生活者としての外国人」という用語なり概念なりがこの報告の中で最初にどこに登場するか,それによって変わってくると思います。今の流れですと何か2の最初が落ち着くのかなという気持ちがありますが,どうでしょうか,書いてみないと分からないですね。
○西原主査
いかがでございましょうか。
実は配布資料4の「I」の部分についても,7月の後で反応を頂いて,「そうだ,そうだ,都道府県はこういう職を作ってくれるんですね,」というような反応を頂きました。「いや,職を作った方がいいんじゃないかと言っただけです」とお答えしたのですけれども。IIにつきましても,これを読んだ人たちから「我々ボランティア団体はこれでやればいいんですね」というふうに思われる可能性がありますね。
国はこれを教育内容としますと言ったというふうにも読まれます。これが今年度末に出ていくと,中間ではあっても,「あっ,これで行くのだろうな」という目安が示されたという反応になりますよね。
○佐藤委員
最終的にそれがねらいというか確認ですか。つまり先ほどミニマムエッセンシャルと言いましたよね。ということは,必要最低限これでやってくださいよというメッセージですか,あとはそれぞれの創意工夫と言う,ここをどういうふうに伝えればよいのか検討しなければならないと思います。
○西原主査
少なくとも「中目的」の辺りから領域に当たるところぐらいまでは,責任を持ってこれぞミニマムエッセンシャルと言わなければならないのではないでしょうか。
○佐藤委員
尾﨑委員も冒頭に御心配されておられたのですが,それをやってくださいよというメッセージを出すのかどうか,その辺の確認をしないといけないのではないでしょうか。
つまりある部分問題があるにしても提案して,先ほど山田委員がおっしゃったように当 事者の声でもまたフィードバックしながら改善をしていくというのも手だと思います。
○西原主査
そうですね。パブリックオピニオンを聞くというようなことがどこかで必要になりますよね。そこまで責任を持って我々はこれを結論付けるべきだということでよろしいでしょうか。
○国語課長
方向性としてはそういうことですね。
○岩見委員
この内容をもって国,都道府県,各市町村に協力を依頼するということでしょうか。
○尾﨑委員
このレベルで出されてもほとんど現場ではお手上げに近いので,具体化の作業を継続的にやれるような場を用意するというところが多分すごく大事で,どれだけの仕事が残っていますよねという確認は是非今後の課題のところに入れていただきたいことだと思います。
○西原主査
尾崎委員としては具体的にはどう思っていらっしゃいますか。
○尾﨑委員
必要最低限というお話があるのですが,例えば長期的なことになるのでしょうけれども,少なくとも国,それから自治体が日本で暮らす外国の方に一定程度の責任を果たすために日本語教育をするのだとすれば,一体どこまでは保障する範囲なのというのはどこかでだれかが議論するのだと思うんですね。
それは具体的にはどういう内容で,その内容に応じてどのくらいの時間数が必要で,でもそんなとんでもない時間数は無理じゃないのとか,これはいろんな海外の事例等もあると思いますので,このくらいの時間だったらミニマムはこれだけのことは必要だよねというような議論を,これから積み上げていくのだと思います。そういう議論をする場をどう確保するかということと,それから実際にこれを見ていろいろなことをなさっていくでしょうから,いろいろ行われていることをどうやって情報共有して,全体として動いていけるような仕組みを国語課としてお考えくださるか,それから我々日本語教育関係者もそういうことをどうやって考えるかという課題があります。
○西原主査
そうですね。この日本語教育小委員会は来年度も継続しますか。
○国語課長
そのつもりです。
○西原主査
ということは,この日本語教育小委員会の仕事は継続し,この課題は引き続き検討されることになるということですね。
○尾﨑委員
一つは公的にここまでの日本語教育はやっぱり必要じゃないのというような議論はしていく必要があると思います。
○西原主査
そうですね,現場の方々が教材化をするというふうに考えるときに,手の届く範囲までこの領域及び学習目標というものが階層化されていないと困りますね。
○尾﨑委員
更に具体的な言語項目というところまで行き着くはずですね。そうでないと教材化できませんから。
○西原主査
今回積み残した四つのことですね,教育であればという四つのことというのが,実は今回はなされないわけですよね。「知識」,「行動」,「交流」,「ことば」というふうに展開されていかないと,実は現場でも,それから外国人本人もどうしようもないというところを次の課題にするわけです。
○尾﨑委員
そうですね。それからあとは評価の問題ですが,これは大きな仕事ですね。
○西原主査
必ずこれをやりなさいというからには,達成目標が達成されたかどうかということが判断されないと困るということになりますでしょうから,どこまでがだれの責任の範囲で行うのかということを含めて,今後の課題というふうにしなければならないという御意見ですね。
○尾﨑委員
はい。
○西原主査
今後の課題の方はそういうことでたくさん残るのですけれども,ローマ数字IIの方はいかがでございましょうか。
○尾﨑委員
内容に関してですけれども,先ほど配布資料2の一番右側,学習事項の例を載せるか載せないかという議論がありましたがいかがでしょうか。
○西原主査
載せるという御意見が強かったように思いました。
○尾﨑委員
そうですか,じゃあ,私の誤解です。
○西原主査
ただ,全部をこの形で載せるかということについてはどうでしょうか。
○佐藤委員
次期の日本語教育小委員会に持ち越すという議論がありましたよね,つまりここを例示してしまうと,縛りが掛かってくるということもありますよね。私も尾﨑委員と同じでここは載せないという意見が強かったように思ったのですが・・・。
○尾﨑委員
私もそういう意見が強かったのかなと思いました。
○加藤委員
私も先ほど載せないという気持ちもありという言い方をしました。載せるのであればちゃんとこれは例であるということと,載せるのであればここについてちょっと時間を掛けた方がいいかなと思います。ただ,まるでないのはという思いもあります。と言いますのも自分で,この「学習事項(例)」を見て,「あっ,そうか,この内容がこれを指すんだな」ということはやはり分かるんですね。ですから,飽くまでもこれは例示である,極端なものも入っているかもしれないというようなことが分かればいいのではないかと思います。
○西原主査
加藤委員と岩見委員が同じようなことをおっしゃって,右の事項の側から左の項目を理解してくださる方があるということを考えると,「学習事項(例)」は例として載せておいた方がよろしかろうということです。
○尾﨑委員
はい,結構です。
○岩見委員
飽くまで例であれば,もっと少なくてもいいのかもしれない。少なければ考える余地が出てきますが,余りたくさん載っているとかえってこれだけでいいのかなと思うのです。
○尾﨑委員
載せるとそれが逆にそれだけやればいいと思われるという危惧(きぐ)をしているのですけれども,なければないで「これじゃあ,駄目だ」と言うに決まっている。とにかくこういうような項目は広がりがすごくあるでしょうということを提示しないと,この委員会は何か非常に抽象度が高い議論だけしたみたいになるので,私は載せるのに賛成です。
それからふきんとぞうきんは私も見ていて逆に面白いと思ったのです。洗剤を付けた後で流さないところもあるんですね,中性洗剤でお皿を洗ってそのままぽんと置いといて乾いたら使っている。だからこういうようなことも含めて広く見ましょうよというのなら,これはいろいろごった煮状態ですよというようなスタンスで事例を提示してはどうでしょうか。それでもいいかなというのが私の意見です。
○西原主査
何でこれが入ったのでしたか,どこかのカリキュラムの項目にあったんですよね。
○日本語教育専門職
中国帰国者定着促進センターの中のカリキュラムです。その資料の中に含まれていました。
○西原主査
お皿を洗う布と床をふく布が区別をされないという地域をたくさん知っているので,日本人の衛生感覚からすればそれはとんでもないことだけれども,じゃあ,どう違うのと言われると,「それは違いますよ」という以上に私たちは何が言えるかという,何かそういうことがありますよね。衛生観念というところを単元とするとすれば,具体的にはいろんなことが挙がってくるだろうと,そういう例としてこれがあえてここに出てきたのだろうというふうに考えるのです。
○佐藤委員
載せる,載せないの判断はちょっと留保しておくとして,今議論になっているのは分かりやすさから言えば挙げた方がいい。しかし私たちの提言が皆さんに分かっていただくために例示にとどめるのかということです。実際にはこれを使って何かを作っていくわけですよね。
作っていくための指針としてこれが役立つのかどうかという議論ですね。つまり分かりやすさの点からあった方がいいですね。しかし逆にいうと現場の中でこれを例示されて,これ全部できるのかいというおそれとかそういう現場に与える影響というところは少し議論を分けないと難しいと思うのです。
○佐藤委員
要するにこんなものをイメージしていますということの例示であればまだ分かると思うのですが,これがただ例というふうになってしまうと,恐らくこれもまた項目として挙がってくるのでしょうと皆さん理解しますよね。ですから見て分かりやすさということは非常に分かります。私もそうだなというふうに「学習事項(例)」を見て初めて分かる。ただ,実践の中で,必要最低限だと言いながら,ただ全部入れ込むというのはミニマムエッセンシャルとは違うと思うんですよね。
○西原主査
それは書かないといけないんですよね,少なくとも学習事項というのは,学習事項と呼ぶよりは事例と呼ぶとか・・・。
○佐藤委員
何かこれを見ているとトピックスみたいなものもありますね。
○西原主査
ええ,そうですね。とにかく「学習」という言葉を付けない方がよろしいのでしょうか。
○佐藤委員
挙げるのであれば何か少し工夫をする,精選するか何か説明をきちっとしないといけないのではないでしょうか。
○西原主査
説明をきちんとするということはできると思うんですね。1,2でこの中に目標設定をするという1と,教育の内容という2がありますので,その2の中でここに挙げている表について更に説明する,表だけが独り歩きしないような工夫をする。
○加藤委員
この表自体は,ここで書いてある「小目的」というところまでは公式のものと思うんですね。見やすさからすると確かに「学習事項(例)」は一緒にくっ付いていると右から左にすぐ目は追えるのですが,場合によっては「学習事項(例)」というのは例えばこのようなものであるというように別立てにするということも考えてはどうでしょうか。
今自分が使う側にあった経験を思い出すと,日本留学試験ができた時の,それから今ヨーロッパの共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages)の例示が書いてあった時に,ぱっと見た瞬間分かる事例というのがあるのですが,実際は,私の現場はそうじゃないからこれをこれに言い換えようという思考は働くのです。ただし,公式のこの中に出てくるとあたかもこれをしなさいというふうに見られるという誤解は避けておいた方がいいので,別立てするかどうかは別としてもきちんとその辺の説明が必要ではないかと思いました。
○杉戸副主査
「学習」があるからそういう問題意識になるということに同感なんですね。「学習」という言葉は消して,例えば「場面例」とかあるいは学習指導要領に近づいちゃいますけれども「言語活動例」とか,というふうにして,つまり左の方は領域とか課題とかというそういう分野でそういう領域の言葉が使われる方向で検討がゆだねられていますよね。だから「学習」という言葉は避けるとしてはどうでしょうか。
○西原主査
その一方で実はこういうことが「生活者としての外国人」の学習項目なのだというメッセージというようなものが送られるべきではないかと思うのです。日本語教育の世界の中で人間の生活とは離れて独立体として言語体系があるように思っていらっしゃる教師も結構いらっしゃって,この生活場面と密着した形でコミュニケーション活動の手段としてこの「学習」がなされるということ自体に,大きな疎外感というか疑問を持っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃって,そういう方に向けてのメッセージとしては,これは学習項目につながるものなのですということを例示することの意味はあると思ったのですが,いかがでしょうか。
○中神委員
今日の「学習事項(例)」ですけれども,これがないと迫力がものすごくないと思います。この学習事項を更に具体化したのが教材だと思うのですが,「小目的」で終わってしまうといかにも抽象度が高すぎて多分活用されないと思うのです。だから正に限定条件付きでこういったようなことが今現在考えられますということで,ただ,先ほど加藤委員から御指摘あったように,正式な報告書で例えば「小目的」で切ってしまって,参考として別枠でその「小目的」に合う学習事項はこんなものがございますという形でもお渡しいただければ,当然これだけ多岐にわたっていますからどう使うかは使う方の裁量ですけれども,やっぱり具体性があった方が仮に発展途上の方であっても,私は多分役に立つような気がすると思うのです。
こういう議論を今まで伺っていて,本当に難しい問題だということはよく分かりました。
○西原主査
ありがとうございました。それでは,これ以上具体的な御意見を今直ちに頂くということは無理かもしれませんけれども,事務局の方で次回までにはこの内容が少しふくらんだな報告書案を御用意いただきたいと思います。
報告書案については目次からもう少し書き込んだものが示されないといけないですよね。今期はそんなに回数があるわけではないので具体化を進めていただきたいと思います。
それではこれで第14回日本語教育小委員会を閉じさせていただきます。どうも御参加ありがとうございました。
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