議事録

第23回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成21年12月14日(月)
10:00〜12:00
旧文部省庁舎2階第1会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,伊藤,伊東,岩見,内田,尾﨑,加藤,西澤,山田各委員(計10名)
(文部科学省・文化庁)
匂坂国語課長,西村日本語教育専門官,仙田日本語教育専門職,山下日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第22回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 学習項目の要素の記述について
  3. 標準的なカリキュラム(案)の位置付けについて
  4. 標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について
  5. 「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台

〔参考資料〕

  1. 「生活上の行為」の分類一覧
  2. 「生活上の行為」の事例の整理
  3. 「国語分科会日本語教育小委員会における審議について」(抄)
  4. 日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者一覧

〔経過概要〕

  1. 事務局から配布資料の確認があった。
  2. 前回の議事録(案)が確認された。
  3. 事務局から配布資料2「学習項目の要素の記述について」,参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」,参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」,参考資料4「日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者一覧」についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
  4. 事務局から配布資料3「標準的なカリキュラム(案)の位置付けについて」,配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」,配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」,参考資料3「国語分科会日本語教育小委員会における審議について」(抄)についての説明があり,その後,資料の内容に関し,質疑応答と意見交換を行った。
  5. 次回の日本語教育小委員会は,平成22年1月18日(月)の10:00から12:00まで,旧文部省庁舎の第1会議室で行われることが確認された。
  6. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
ただ今から文化審議会国語分科会日本語教育小委員会,通算で23回,今期第6回の会議を開会いたします。
前回に引き続きまして,学習項目の検討に入りたいと思います。前回の第22回日本語教育小委員会以降,11月9日に第9回日本語教育小委員会ワーキンググループを行いました。それから11月19日には日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者との打合せを行い,さらに先週,12月7日に第10回日本語教育小委員会ワーキンググループを開催しております。この2回の日本語教育小委員会ワーキンググループ及び日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者との打合せで,前回の第22回日本語教育小委員会で検討されたことに追加して,学習項目の要素の記述を行うべき「生活上の行為」の事例2(下位項目)の充足を図りました。具体的には「生活上の行為」の事例2(下位項目)を選び出し,さらに日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者の多大な協力を得て,学習項目の要素の記述作業を行いました。それが今,配布資料2「学習項目の要素の記述について」になります。
配布資料2「学習項目の要素の記述について」は,まだ微調整,修正等が行われる可能性があるのかもしれません。一応,相互に矛盾がないようにチェックを入れておりますが,まだ見落としがある可能性もあるかと思います。ただ,こういう枠組みで言語項目,学習項目の要素の記述を行いました。先ほど御説明がありましたように,来日間もない外国人が生活の基盤を築くために必要最低限と思われる「生活上の行為」の事例2(下位項目)について,学習項目を記述したのが配布資料2「学習項目の要素の記述について」でございます。これが後ほど御検討いただく標準的なカリキュラム(案)の素材の一つとして活用されることになるかと思います。
また,参考資料4「日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者一覧」に日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者の名前がありますが,このお三方には,本当に短い時間に膨大な仕事を集中的にやっていただき,きっちり締切日には全部そろえていただいて,感謝しております。その後1回,日本語教育小委員会ワーキンググループでそれについて検討を加えましたので,そこで修正も行われておりますが,先ほど申しましたように,まだ詳しく見ていくと相互矛盾が残っている可能性もあります。ただ,報告書を作成するまでにその点についても鋭意きちんとしたものにしておこうと考えております。
この配布資料2「学習項目の要素の記述について」の項目の数,つまり「生活上の行為」の事例2(下位項目)のうち106事例に星印が付いており,それから13事例に白抜きの星印が付いており,その13事例のうち5事例については解説が完成しているということでございました。この説明の部分につきましては,前回の日本語教育小委員会でもそのことが話題になったと思いますけれども,少なくとも代表的な母語,滞在者の多い人たちの母語に翻訳されて,それが情報としてあらかじめ伝わっている,学習の場で説明はするのかもしれませんが,「やり取り例」を練習するのではない形で伝えるということになっているかと思います。
この配布資料2「学習項目の要素の記述について」の「能力記述」の部分についてですが,言語教育の世界でこのごろキャン・ドウ・ステートメント(can-do statement)という名前でこの「能力記述」が理解されているかと思います。「能力記述」というのは達成目標とほとんど同じで,この「生活上の行為」を遂行するに当たって,このようなやり取り,そして場面,状況,文法,語彙ごい等を費やして,技術的には4技能と言われているところの幾つかを駆使して,能力記述にあるような行動目標を達成するということになろうかと思います。
何か御意見等ございますでしょうか。
○岩見委員
配布資料2「学習項目の要素の記述について」の「能力記述」の書き方ですが,もう少し精査する必要があるかなと思います。というのも,来日間もない外国人にとって基本的に不可欠であると考えられるもので,必要最低限というような言い方もされたと思いますが,例えば「0602040 賃貸契約をする」の能力記述に「契約書の内容を読んで理解する」という記述がありますが,そのすべてを理解するというところまでは最初の段階では行かないと思うので,何か条件を付ける必要があるのかなという気がします。
○西原主査
全体の中で,この配布資料2「学習項目の要素の記述について」がどういう段階の学習項目かということを,どこかに書く必要があるのかもしれませんですね。
例えば,ヨーロッパのCEFR(Common European Framework of Reference for languages:ヨーロッパ共通参照枠)では6段階表記,つまり能力は6段階になっておりまして,そして多分この配布資料2「学習項目の要素の記述について」に当たる部分というのはCEFRのA1ないしA2というごくごく基礎的な段階に当たる部分であって,その範囲での能力記述ということになりますね。例えばレベルCというのは,CEFRの段階で言えば,もうその言語を使って職業生活ができるようなレベルになるわけです。そのレベルではなくてAの部分と言うか−ABCと言うかどうかは別として−その段階のものだということを全体的にどこかに書くということで一つは解決できるでしょうか。
○岩見委員
そうですね。全体的に書くことも必要ですし,特に具体的なものが書かれているところはいいと思うのですけれども,抽象的な記述になっているところは少しブレークダウン(break down)する必要があるということですね。
○西原主査
なるほど,その場面に対応するような形で能力記述があることがよろしいかと思います。能力記述の部分は実はこの作業の中で,日本語教育小委員会ワーキンググループ,岩見委員も日本語教育小委員会ワーキンググループのメンバーですけれども,能力記述の部分が一番検討が遅れています。日本語教育小委員会ワーキンググループでも何度かそのことを話題にしてきました。作業の成果が参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」のようなところに落ち着くまでは作業の参考となるような先行研究が随分ありました。ですので,それを参考にすることや,それから外国で先行事例がある場合にはそれと余り矛盾しないように,または西澤委員の独立行政法人国際交流基金で開発を行っていらっしゃる「日本語教育スタンダード」とも原則相互矛盾のないように心掛けており,言ってみれば理論武装が可能でした。それが配布資料2「学習項目の要素の記述について」にある「やり取りの例」ですとか,実際小さな分類のところに行きますと,もう資料作成者自身の市民感覚に依存するしかないという状況です。「何が常識なんだろうか,何が基本的なんだろうか。」ということについては,相互に日本語教育小委員会ワーキンググループの中や日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者たちとも一緒に随分相互指摘はしましたけれども,もしかしたらこの事例では不適当というような感覚の方もおられるかもしれないですね。
○杉戸副主査
念のため。これまでも何度か話題になってきたこと−今西原主査が最後におっしゃったことで−参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」の事例1(上位項目)と事例2(下位項目)というレベルのもの,特に事例2(下位項目)を挙げようとしたときには,先行研究を幾つか参照しました。その結果,大項目主義でなされた先行研究を参照した部分と,詳細な項目を列挙するという態度で進められた先行研究を参考にした部分とが重なり合って,それがここに反映されてしまっているところがまだ残っていると思うのです。
例えば,参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」の1ページ目「0101 適切な医療機関の選択をする」というところだけ見ても,何か重なりが残っています。それは,ある項目に別の項目が含まれる,つまり,上位下位というような形で更に整理することができる事例が「生活上の行為」の事例2(下位項目)のレベルに残っているわけです。その整理がどういう形で必要かについても検討しなければいけないと思っております。
これは参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」で黄色がかかっているセルは学習項目の要素の記述を行う「生活上の行為」の事例2(下位項目)なわけですが,学習項目の要素の記述を行わない項目と行った項目はどう違うのかということも整理する必要があります。また,学習項目の要素の記述を行わない項目の中に,先ほど言ったような重なりがあるとすれば,そこを整理して出すのか,それとも行く行くは利用できるということで「生活上の行為」の事例2(下位項目)は重なりがあったとしても,あまり気にせずにたくさん残しておいた方がユーザー(user)にとっては有益なんだという,そういう態度で,重なりを前提として示すのか。つまり,削らずに示すのかどうかというその方針が決定されなければいけないと思います。
○西原主査
そうですね。例えば参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」の1ページ目ですが,「0101020 症状に合わせて適切な病院・医院を探す」の二つ下に「0101040 インターネットで検索する」というのがありまして,それは実は適切な病院を探す行為の一部でもあります。この「0101040 インターネットで検索する」に主語が付いていないので,だれがどこで何をするということをここで言っているのか,これだけでは不透明ですね。この「0101040 インターネットで検索する」には幾つかの「生活上の行為」の事例2(下位項目)が幾つか含まれているとも言えると思います。
○杉戸副主査
追加すると,参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」のような形でまとまったものを,配布資料2「学習項目の要素の記述について」の範囲で見ると非常にきれいに「生活上の行為」の事例2(下位項目)が順番になっているものと代表例を取り上げたものが上っているわけですが,その背後には参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」があり,ここの配布資料2「学習項目の要素の記述について」に反映されない項目がたくさんあり,その中にどういう整理が必要か,まだ検討が残っているものがあります。つまり端的に言うと参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」をどういう形で出すのか,公開していくのかということですね。
○西原主査
そうですね。まず参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」は割に相互矛盾のない形でまとまっています。その基になったはずの参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」が,実はまだそういう段階を含んでいるという御指摘だろうと思います。これは,例えば報告書の中には,この参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」,参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」も加わるとすれば,参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」は少し整理しておかないといけないという御指摘だったと思います。
それから,純粋に専門家的に言いますと,配布資料2「学習項目の要素の記述について」で記述されております「能力記述」もそうですし,「場面」とか「やり取りの例」とか「文法」とかのそれぞれをその分野の専門家の方が御覧になると,まだまだ書き足りなかったり,詳し過ぎたりするということがあるのかもしれません。そのことにつきましても,何かある判断をして,「このくらいでいいか。」というような,非常に乱暴に言えばそのような段階で手を打っているところがございまして,それぞれ詳しくすれば切りがありません。それからユーザーからしてどんなものがあったら,日本語教育小委員会で検討を行い作成を行っている資料が現場で利用できるようなものになるかということにつきましても,検討は加え続けなければいけないことかと存じます。
○杉戸副主査
今の最後の点についてです。もう一つ気になる点があり,今後,整理を行う課題としてあると思っているのですが,配布資料2「学習項目の要素の記述について」の中で,例えば「01 医療機関で治療を受ける」の最初の「生活上の行為」の事例2(下位項目)「0101060 隣人に容態を伝えて助言を求める」では,体の部位としてひざと耳だけが出ています。医療機関としても整形外科と耳鼻科だけが出ています。このことは,正に「「やり取りの例」なんですよ」ということを利用者に分かってもらえるようなイントロダクション(introduction)と言いましょうか,説明を加えないといけないと思います。
もう一つは,その背後に,耳鼻科と整形外科以外に内科もあり外科もあるのだということ,そういった情報をどこにアクセスすれば得られるかということについてもサポートすることが必要だという議論も日本語教育小委員会ワーキンググループでしました。
○西原主査
そうなんです。配布資料2「学習項目の要素の記述について」の「語彙」の欄について,実は配布資料2「学習項目の要素の記述について」の中では「やり取りの例」で取り上げられている単語だけが「語彙」の欄に出ているということです。日本語教育小委員会ワーキンググループの中で,日本語教育小委員会ワーキンググループ協力者も含めて,「語彙」の欄には括弧か色違いか,何でもいいから耳鼻科,整形外科のほかに内科,神経内科,何やらとかいうものも入れておいた方がいいのではないか,入れ替え可能な語彙を示しておくべきではないかという意見も出たのですが,それは必要以上に配布資料2「学習項目の要素の記述について」の表をややこしくするのではないかということになりました。それで,一般的な知識の部分については白星が付いているような処理で何か,マトリックス(matrix)が三次元になれば一番いいわけですけれども,そのような配慮をしたらいいのではないかというような意見もありました。ただ,今,杉戸副主査から御説明のあったことは,まだまだどうしたらいいのか分からない状態です。ほかにお店についても,例えば「0802040 電話で予約する」ですし屋だけが出ているけれども,注文できるレストランはほかにもいろいろありますし,喫茶だっていいわけです。というようなことは,際限もなく出てくるわけでございます。
それで,そのようなことを含みつつ,今後111,この111というのはすでに学習項目の要素の記述作業を行ったものであり,黒星の付いた「生活上の行為」の事例2(下位項目)が106,白星で説明の付いたもの「生活上の行為」の事例2(下位項目)が5で,残りの8につきましては説明が加えられるだろうということで合計119の「生活上の行為」の事例2(下位項目)があるのですが,最初申しましたように,この119の「生活上の行為」の事例2(下位項目)を来日間もない外国人が生活上の基盤を築く上で必要最低限ということでカリキュラムの話合いの基本的な学習項目としたいと考えております。今期はここに項目を新たに加えるということはせずにおくというふうに日本語教育小委員会ワーキンググループでは考えておりますけれども,それで御承認いただけますでしょうか。(→了承)
「これだけ学ぶのだって大変だ。」ということではございますが,ただ,我々の市民生活について考えると,こういうことの上に成り立っているということであるかと思います。
それで,先ほど申しましたように,配布資料2「学習項目の要素の記述について」には修正が加え続けられますので,御意見をいつでもお寄せくださるようにお願いいたします。
○内田委員
ちょっと質問をしてもよろしいでしょうか。配布資料2「学習項目の要素の記述について」を見ると,非常に大変な作業だったかと思い,感銘を受けましたが,これはどういう形で外国人の方に提示するのでしょうか。例えば,DVDになったりするのでしょうか。それから英文対釈,あるいはせめて中国語,韓国語などに対照させるような形で提示するのでしょうか。
○西原主査
この配布資料2「学習項目の要素の記述について」をどのように提示するのかという話ですが,これはデータベースそのものをだれがお使いになるのかということと関係すると思います。もし,間違いがあれば修正していただきたいのですが,私が理解しておりますのは,これは支援者側,つまり教師のためのデータベースであり,そして説明の部分が母語になるというのは,それを使っていただくという意味で母語になるのですが,配布資料2「学習項目の要素の記述について」そのものが学習者の目に触れるということではなく,その前段階のリソース(resource)と言うか,素材として用意したということでよろしいでしょうか。委員の方々もそういうつもりで作られていると思います。
○内田委員
入国管理局かどこかで,生活の便利帳のような形でここを開けると詳しい情報が出てきますというような形にするのはどうでしょうか。例えば「14日以内に住所変更しなければいけません。」というような情報は,例えば外国人が学校に行って学ぶ以前に,それが終わっていないといけないような手続きで,そうしたものも配布資料2「学習項目の要素の記述について」の中に含まれているように思うものですから,質問させていただきました。
○西原主査
入国管理局と在留資格,あるいは入国の出口,入口と,どのようにこのデータベースである配布資料2「学習項目の要素の記述について」が連携するかということにつきましては,御指摘のようにいろいろな可能性があるかと存じます。今でも成田空港で渡される,または「そこにありますよ。」と言われるものの中にはそのような情報が含まれていると思っています。各国語で,最低何か国語でということですね。ただ,これがどういう範囲で市民生活入門として定着するか,これが国のナショナル・カリキュラムになりますので,ナショナル・カリキュラムとして定着するかどうかということに関しては,御指摘のようにいろいろな議論をこれから積み重ねていかなければいけないことなのではないでしょうか。
○伊東委員
内田委員が今おっしゃったように来日したての人たち,日本に来たばかりの人たちに関しては,昨年度だったと思いますが,文化庁で「日本語学習・生活ハンドブック」を作りました。私のほかに加藤委員も執筆協力させていただいたのですが,あれが正に5か国語に翻訳されています。すぐに役立つ情報が盛り沢山になっており,それも日本語についての情報だけではなく,生活情報や日本語がどこで学べるかという情報がありまして,地域の人たちにかなり配布されています。ただ,今,在庫切れで,印刷をしてほしいという希望があるぐらいなので,これは単年度の予算ではなく,継続的に,ホテルのパンフレットのように在庫がなくなったら常に補充するような形で扱っていただきたいと思っていますし,それは課長にお願いしたいと思っています。とにかく来日する人はどんどん増えているわけで,増刷していただきたいと思います。私はそちらが一つ,まず最初に情報入手する際に用いられるものになるのかなと思っています。今,日本語教育小委員会で作業を行っているものは,やはりその後ということで,指導者側が利用するものですね。
○西原主査
これはその段階,日本に入国して,外国人登録を済ませた人,あるいは済ませる前にどの段階でこの方々を相手にこのようなサービスが加えられるかということ自体についてはまだはっきりしたシステムが出来上がっていません。そういう意味では,このデータベースの使われ方ということに関しては,可能性もあると同時に,まだ少し不確定な部分を含んでいると思います。市役所の,また区役所の窓口に行きますとパンフレットが並んでいて,結構より取り見取り,取れるようになっていますね。そのような中に加える,つまり「こういうサービスがあります。」ということが設定された段階では当然加えられて,お誘いするか,これは義務だと言うのか,そういう段階になれば,またそのファイルを確保することになるのでしょうか…。内田委員,御意見をお持ちですか。
○内田委員
いや,会話例という話が出ましたが,DVDが今,非常に安価に作成することができますから。それから皆さん割にコンピューターを持って来られたり,非常に安いものを購入したりされているので,留学生なんかは特にですけれども,「生活者としての外国人」の場合はまた別でしょうけれども,DVDの媒体でも作成されるといいなと思いました。
○西原主査
リソースの中にこういうものが入っているということですね。このごろはDVD付きの教材も,DVDが随分たくさん本の中に挟まれているような形でも存在しますし,ちなにみですが,エキスパートはほかにいらっしゃるのですけれども,例えばオランダでは,入国の水際のときにオランダに関する知識と,ごくごく基本的なオランダ語の知識について,DVDの画面で,タッチパネルのようなものを用いてテストをすると聞いております。だからその使われ方というのは,改めて教材としてDVDを用いるということもありますし,いろんな可能性があることでございますね。
では,だんだん標準的なカリキュラム(案)の話に入っているようなので,続きまして,配布資料2「学習項目の要素の記述について」を使った今期のもう一つの課題であります標準的なカリキュラム(案)についての話に移ります。標準的なカリキュラム(案)の作成はこの日本語教育小委員会の仕事として,前期末に既に確認されておりますので,そのことにこれからの議論は集中していきたいと思います。
いよいよ具体的なものが出てきたわけでございますけれども,まず,配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」にありました四角の中の三つの項目について,上から確認していただきたいと存じます。
一つは達成目標です。これは何度も繰り返されていることですけれども,この3行,つまり「来日間もない外国人が日本語を使って基本的な生活上の基盤を形成するために必要な「生活上の行為」と緊急性がある「生活上の行為」ができるようになる。」と言うか,これを達成目標と考えているということで,一応合意が形成されていると考えておりましたが,そういうことでよろしいでしょうか。これはよろしゅうございますでしょうか。(→了承)
2番目ですけれども,基本的には参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」にあるようなことを網羅的に学習することが,内容について言えば,この内容のすべてを含むこととするということになるわけです。しかし,この網羅性,少なくとも星印が付いていますが,基本的な生活基盤の形成のために必要性かつ緊急性がある「生活上の行為」ということで選び出している「生活上の行為」の事例は,すべてそこに学習項目として網羅されるということについてはいかがでしょうか。これもよろしいでしょうか。ただ,もちろん「網羅されているから絶対これはやらなければならない。取捨選択の権利はない。」かと言うと,そういうことではございません。ただ,標準的なカリキュラム(案)として提案されるものについては,これをすべて網羅するということでございます。
一番問題なのが恐らく順序とか,そういうことかと思います。これについては配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」にある学習項目のところに行為上の順序が付いておりますけれども,この頭から,つまり「01 医療機関で治療を受ける」からずっと学んでいくということではないということが配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」の矢印より下にあります「(3)標準的なカリキュラム(案)における学習事項の順序について」であろうかと思います。これについてはいかがでしょうか。これは,ぜひ最初から順番に学ぶのではないということを強調しておかないと,「教科書第1課から第30課まで順番に学びましょう」なんてなってしまうととても困るわけですね。人によって,場面によって緊急性というのは全く変わってきますし,「03 病気に気を付ける」のところでは「0301090 流行性の病気についての情報を理解し,適切に対処する」というのが代表例としてありますが,もしある種の病気が爆発的に流行したということになると,これはもう学習項目の順序どころではなく,緊急のものとして何かの広報がなされ,それについて学習が緊急に行われるというようなことが起こります。そういうことを想定しつつ,順序は基本的に学習の場で選択されるべきものというのが原則となるわけですが,これもよろしゅうございますでしょうか。
それから,その次に配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」で矢印より下にあります「(4)標準的なカリキュラム(案)にかかる時間及びその配分について」になるのですが,今,事務局から配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」において暫定的な案の提示がありました。週2回2時間ずつというようなことを考えて,配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」に掲載されています学習項目を全部学ぶとすると5か月掛かりますということなのですが,このように時間配分についての目標設定をすること自体についていかがでしょうか。
○山田委員
今,説明では週1回2時間という話だったと思います。
○西原主査
週1回2時間で5か月ですね。
○山田委員
それを前提にしてお話したいのですが,この参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」を作ったのは,「生活者として外国人」が日本に来て間もない間,どういうことが必要になるか,その必要性から考えてきたわけですね。それを今度習得する段階の話についても,必要性から考えて,そのときに週1回2時間が適切かどうかも含めて考えるべきであると思います。理想的にはプロが学校できちっと対応するということがありますが,現状はボランティアが対応しているので,現実的な対応として現在の現場から考える,それは仕方がないことかと思います。ただ,それが必ずしもいいというわけではないので,何らかの形で,例えば,「来てすぐのときはこれだけのことを集中的にやってもいい。」とか,後は「こういうものについては週1回2時間でも大丈夫かもしれない。」というように必要性から考えて,そして現実にやらざるを得ないということであれば,それはやらざるを得ないという発想で考えることが大事かと思います。でも,「こういうことを目指すべきだ。」ということも盛り込むべきじゃないかなと思います。
○西原主査
時間設定についてはやむを得ないという御意見と考えてよろしいですか。
○山田委員
やむを得ないではなくて…。
○西原主査
それともこういう目安を付けない方がよろしいということでしょうか。
○山田委員
付けてもいいのですが,付けるに当たっては,「こういう状態がより適切なのだけれども現状ではこうなってしまっています。」というように,何らかの形での主張と言うか,そういうのを込めておくべきだと思います。この日本語教育小委員会が現状を全く無批判的に受け入れているということではないと伝えた方がいいと思います。
○西原主査
私は「時間」というよりも「回数」とかですね。何回と言うような書き方もできるかなと思います。基本的に何回でというようなことで,そうすると「三十何回で一巡します。」という形もありかと思ったのですが,いかがでございましょうか。
○岩見委員
一つは,国が「生活者としての外国人」に必要な標準的なカリキュラム(案)ということですから,目安として時間を立てるということはいいことだと思います。ただ,実際に活動とか様々なことを考えますと,全ての現場に共通に「何時間で。」というように時間を特定するのはとても難しいと思います。現実的に考えて,まずその前に国が行うものということを考えて集中的に毎日日本語教室を実施するような形で標準的なカリキュラム(案)を考えるのか,あるいは学習者は忙しい社会人であるということを考慮に入れて週2〜3回程度で学べるようなカリキュラムを構成するとか。いずれにしてもその程度のバリエーションはあっても,専門家が担当するケースの理想を立てて,それから時間を設定するべきかなということが一つあります。
○西原主査
理想的というのは,回数についてもそうでしょうか。
○岩見委員
時間についてもそうでしょうね。日本語教室を週何回行うかいうことについても同じですが,時間の設定についても,それからコースについても,そのコースというのが今決まってない状況ですので,標準的なカリキュラム(案)を立てるのはとても難しいです。ただ,それが一番最初から地域の今の現状を考えて,そこに合わせるような形で標準的なカリキュラム(案)を作成するのはどうかなと思います。例えば「こういう場合はこういうことも考えられる。こういうように変更した方がいい。」というよう形で情報を付け加えるのであればいいですが。
○西原主査
ここに書かれている時間数について,岩見委員はどうお考えになりますか。
○岩見委員
基本的に配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」で示されている時間は少ないと思います。標準的なカリキュラム(案)に時間を付けるのはいいと思いますけれども,「能力記述」にあるような到達目標を達成するための活動とか教育内容方法について考えるとこの2倍はあっていいのかなと思います。
○加藤委員
私は基本的に岩見委員がおっしゃったことに賛同して申し上げるのですが,最終的には目安の時間というのは,「標準的なカリキュラム(案)」と言う以上,やはり何であれ,あって当然であると思います。ただ,それを数字ありきでいくと,本当に行く先を見誤ってしまうと思います。現状というものが少なくともわたし自身には今一つ分からないので,何度か出てきていますが,「多様」という言葉と「標準的な」という言葉が同じところに書かれていますが,非常に相反するものだと思うのです。
本来,標準的というものは特にこういった「地域の生活者」と言った場合に,いわゆる学校教育と全く違いますから,一緒にならないのじゃないかという疑問は最初からあります。ただやはり,何か国として一つ標準的なものはもちろん必要であり,そこに時間数が入ることも,一般的に学校でも市販テキストを課すような場合でも同じですが,やはり目安となる時間を見て,「ああ普通はこうなんだな。」というところから自分たちの現場に標準を落とし込んで生かしていきますので,目安となる時間は必要だと思います。ただ,最初に数字ありきではないということです。
ですので,まず数字でなく「多様性」,つまり対象となる人たちの年齢だとか,状況だとか,職業があるか否かというところも含めた上で時間の検討を進めていけばよいのではないかと思います。現状が大体この程度の数字で日本語教室が行われているから,そこから目安を算出するというよりも,現場側から見た上で,ここの日本語教育小委員会のオリジナルと言うか,そういった数字を考え出していけたらいいのじゃないかと思います。
○岩見委員
少しよろしいでしょうか。「標準的な」という言葉の解釈はいろいろだと思うのですけれども,「平均的な」というとらえ方もできると思うのです。今おっしゃった年齢とか,そういったこととかについてです。それはそれに合わせて,条件はいろいろあると思います。現場では標準的なカリキュラム(案)を変えて現場に合うように作っていけばいいので,現場の目的にかなう基本的なカリキュラム(案)として,平均的な時間数を出していけばいいと思います。どこを平均にするかということもそんなに簡単じゃないかもしれませんが,そういう考え方もあると思うのです。
○西原主査
では,どうしたらよろしいでしょうか。
○伊東委員
例えば,私はやはり多様性ということを考えれば,この「標準的なカリキュラム(案)」ではある程度パターンを示して−例えば4か月でとか,あるいは2か月でとか1か月でとか,あるいはそういう時間的な制約がない場合というような形で−幾つか示すのがいいのではないかと思いました。例えば,もし4か月コースでこういうことを達成したいという場合には,「こうこう,こういう具体的なことが必要になってきますよ。」という形で示す方がいいかなと思いました。それから,もし制約がなければ,「じゃ,1回当たり2時間でやると大まかに大体5か月ぐらいかかりますよ」ということで,枠を決めるか,あるいは個々に順番にやっていくと結果として5か月か6か月掛かるということですが,私はまず一つ一つのパターンを,ある意味では学校がそれでやった場合にはこんな形でできるよ,ボランティアの人たちがやった場合には,週1回の場合にはこのぐらい時間がかかりますよという形がいいのではないかと思います。現場が多様なので,その多様性の中に合うように,多様なプログラムの在り方を示していいかなと思っています。
○西原主査
そうしますと,配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」で示されているような具体的な表の中に,この表自体の中に時間数が書き込まれているのではなく,むしろこの表を使って学習計画を立てるときに,「4か月コースであれば配分はこれこれこのような感じ,6か月コースであれば配分はこれこれこのような感じですよ。」ってことを示すということでしょうか。
○伊東委員
要するにインプリメンテーション(implementation)というところ,具体化するところの指示ですね。その方がいいかなと思います。
○尾﨑委員
まず最初に,山田委員がおっしゃっていた「生きていくためにどうしても必要なことを5か月も掛けてやるということ自体が変だよね。」というのには賛成です。ただ,5か月掛かることもあるし8か月掛かることもあるということよりも,「この程度の内容のことをしっかり身に付けていただこうとすれば,このくらいの時間は要るとこの日本語教育小委員会では思っています。」ということを発信する,多分もうそれだけで十分で,それを「じゃ何か月でやるか」というのはそれぞれの状況で決まっていくのだろうなと考えています。
それから,将来的に来日した方にできるだけ早く基礎的な生活面の不便がないようにやると言うときに,「やはりこのくらいの時間はどうしても必要だ」という総時間数が多分予算と絡むので,カリキュラムで示すのは総時間数でいいのだと思います。
それで算定の基準を今説明してくださったときに,たまたま地域のボランティア教室ではということだったのですけれども,そこは確かに多様で,たまたま昨日,一昨日と浜松に行って話を聞いていたら,「先生方は泣きそうよ。」と言っていました。とてもじゃないけれども私たちが考えられないほど学習が進まないということが起きてきているというお話を聞くのですね。そういう現実もあるし,一方では中国から来ている技術研修生のような方で,自分でもどんどん勉強しているというような人もいるので,時間設定自体がそもそもとても大変だということを報告書を読む方に分かっていただいた上で,「せめてこのくらいかな。」というものを示せばいいのではないかと思うのです。
それから39時間という数字ですが,多分これは学校で先生がカリキュラムを組んで,学生ができてもできなくてもがんがん授業を進めるから39時間ということになるのでしょうね。「問診表に記入することができる」というのは,どのくらいだとできるのかちょっと分かりませんけれども,ローマ字で書くのですかね。
○西原主査
病院によってもいろいろでしょうね。
○尾﨑委員
そうなんです。
○西原主査
それからタッチパネルを多言語対応で看護師,介護師も記録までできるという,そういうシステムもあれば,医療ヘルパーみたいな人がいて,外国人が来たと行ってやってくれるところもあれば,だれも助けてくれない,自分で全部日本語でやらなければならないという人もいるわけです。
○尾﨑委員
多くの場合は日本の方が一緒に付いて行って手伝わないとできないから,「まあまあこういうことをやっておけばいいですよ。いざというときはわたしが付いて行くので大丈夫ですよ。」ということもあります。
○西原主査
例えばこの中で「分からないことはとにかく看護師やだれかに聞く」,または「医者に聞く」として,「問診票には大抵名前が書いてあって,ここには年齢が書いてあって,ここには保険者番号を書くというふうになっていますよ。」というようなことがありますね。まず名前が書けないと困るというような…。
○尾﨑委員
名前を書くということがどのくらいでできるものなのかとか考えていくと余りここの時間数が少ない−実はここで出た数字というのがいろんなところで,一応はこの時間で−というように,できてもできなくても関係なくこの数字が使われることがあると思います。この数字はかなり意味があるなと思います。ですから,よく考えて作った方がいいと思います。
○西原主査
そうですね。それから39時間というのはいかにも中途半端な気がいたします。もう少し丸くてきれいな数字というのはあるかなと思います。
そうしますと,とにかく目安として何らかの時間設定について言及するということについては御同意を得たと考えてよろしいでしょうか。
ただ,その数字の設定の仕方については工夫の余地があるということですね。配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」の中にこうやって書きこむというのも一案でありますね。それから,幾つかの場合を考えて,それぞれの場合にカリキュラムがどのように作成されるのか,この配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」の使い方と言いますか,ガイドラインを付けてそこに,「この場合はこうやってやれば6か月,またこうやってやれば何時間掛かります。」というように書くという書き方もあると思います。または,標準的なカリキュラム(案)の表の中に時間とその配分について書くけれども,それに条件を付ける。つまり,付記をするというようなこともあり得るけれども,目標設定,目安を書き入れることを標準的なカリキュラム(案)の一部とすることについては反対意見はないと考えてよろしいでしょうか。
そして,次に配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」の学習項目の欄に「順序」と「代表例」というのが付いています。これはいかがでしょうか。これは「生活上の行為」が順序性を持っているか順序性を持っていないかということです。これは学習項目の中に書き込んでありますが,これでよろしいでしょうか。それぞれの「生活上の行為」の条件と言うか,順序性を持っているか持っていないかということを付記したものをカリキュラムと言うということになるかと思います。
○杉戸副主査
ちょっとすみません。配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」の上の四角の2つ目「(2)日本語教育の内容について」には,「すべての人に共通して必要で,網羅的に学習することが求められる」と書かれていますが,読みようによってですが,かなりきつい表現だと思います。これをどういう形で提示していくのか,かなり課題があるなという気がして読みました。
それから時間の議論が進む中で思ったのですけれども,今検討している日本語教育の内容を今あるこの配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」のリストの項目全部を同じレベル,同じ横並びのものだと考えるという前提で行くのか,そこに何か内容,項目の段階で何か重点的なもの,あるいは緊急性の高いもの,そうでないものといったような,そういう意味の順序を何か設定することは考えないかということを少し思いました。つまり,順序というのをそういう意味でとらえました。
配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」で取り上げられていることを全体を網羅的に学習するということは当面最終の目標とするにしても,お勧めとして「これをまずやった方がいいですよ,これは2番目でもいいですよ。」というように,学習者の種類,立場によって違うとは言いながら,「基本的にやはり緊急性ということから考えたらこういうことがありますよ,緊急性の高い学習項目の固まりとしてこの部分がありますよ。」という目安を出す必要はないのかということです。
○伊東委員
わたしはその部分については,学習者やボランティアとか指導に携わる人に任せてもいいかなという気がしています。ですから,配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」を活用するに当たっては,必ずしも順序通りやらなくてもよくて,そのときの学習者のニーズや状況に応じて適宜選んで活用してくださいという指示を付けた方がいい気がします。
ただ,学習項目の欄に付けてある順序については「生活上の行為」の事例が正にこういう順序で事が運ぶので,「生活上の行為」の事例に順序性があるかどうかということと,どの「生活上の行為」の事例を緊急性が高いものとして選ぶのかということは別だと思いました。
○西原主査
例えば国際結婚をした配偶者の女性たちは,家族の中に住むわけなので,おしゅうとさんから自立する,つまり「付いて来てもらわなければ何もできない」という状況から1日も早く脱却して,主婦として自立するというのが当面の目標になります。おしゅうとさんに面倒を掛けるということは良心的にも済まないし,かつ牛耳られるし,何か良くないと思っているという人もいます。それから,派遣会社から来て明日から出勤する人となると,緊急なのは交通手段及び職場でのあいさつが「明日やらなければならない。」ことになります。そういう意味でのバラエティーはあり,学習者によってすぐ学ぶことは違うという話と関連すると思います。
ただ,実は日本語教育小委員会ワーキンググループの中で今杉戸副主査がおっしゃったようなことも検討を行う際に出ました。参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」で丸印を付す項目に「生活上の行為」の大分類「01 健康・安全に暮らす」が入ってきたところで,「これはすべての人がすぐに病気になるわけじゃない。」という意見が出たことがありました。参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」に後で赤丸が付いたというのはそういうことですね。だれにでも起こることなのかということが,最初に「生活上の行為」の小分類を選択する基準でしたけれども,健康・安全または緊急性ということを考えると,「もし,そうなってしまったら大変だ」ということで「生活上の行為」の大分類「01 健康・安全に暮らす」が入ったということがあります。
○杉戸副主査
日本語教育小委員会ワーキンググループあるいはこの日本語教育小委員会の議論の段階として,先ほど私が言った優先順位とか緊急度というのは2段階チェックを受けて今日のこの配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」になっていると思うのです。第1段階はこの参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」で赤い丸,黒い丸が付いている「生活上の行為」の小分類と,付いていない「生活上の行為」の小分類を選んだ段階です。それから第2段階というのは,今日の参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」で黄色になっている,つまり学習項目の要素の記述及び解説を付けたものと付けないものということで,そこで選択があって,より重要なもの,残さなければいけないものを資料の方に残していこうという形で行われました。日本語教育小委員会及び日本語教育小委員会ワーキンググループで行った作業が先ほど伊東委員のおっしゃったように,ユーザーに任せられる段階まで我々としては選択したということが保障されていると理解すれば,私もこれ以上段階を作る必要はないという意見に賛成です。ただ,そのことをやはり説明しておきたいと思います。参考資料2「「生活上の行為」の事例の整理」にたくさん「生活上の行為」の事例2(下位項目)があり,その中からこういうふうに2段階,私の理解では2段階ですけれども,そういう2段階の選択を経て残ったものが重要なものとして提示するものです。また,その「選択の基準はこうです」ということを説明しておきたいと思います。
○西原主査
そうしますと,先ほどから凡例という言葉が出てきますが,凡例と呼ばないまでも,配布資料5「「生活者としての外国人」のための標準的なカリキュラム(案)」にはこのカリキュラムの使い方という1章が設けられ,その中に条件設定として,「このようにしてこのカリキュラムが作られました」ということが書かれ,その中に「どのようにして「生活上の行為」の事例」を選び出したのかということも入るということでよろしいでしょうか。
○杉戸副主査
繰り返しますけれども,この配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」で四角で囲まれている中の第2項目の表現「学習項目の要素の記述を行った「生活上の行為」の事例は,来日間もないすべての外国人に共通して必要なものであり,基本的には網羅的に学習することが求められる。」は非常に強いので,独り歩きし始めるとすると,これは「どうしてもやらなきゃいけない。」と,がちがちの動き方をすることは多分覚悟しなければならないと思います。
○西原主査
そうですね。ただ,私は実は少し強くてもいいかと個人的には思うのですが…。
○杉戸副主査
私もこういうのは強くしないといけないという側面があるのだと理解するのですが,強くするのだったら「こういうふうに考えて強くしたのだ」という根拠をしつこいぐらいに言っておかないといけないと思います。
○西原主査
そうしますと,今の段階で配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)のたたき台」に時間数が書いてありますけれども,この表の中からこれを一応外すのでしょうか,このままにしておくのでしょうか。
○山田委員
外さないのであればもっと検討して,本当にこの時間が妥当かどうかを考えないといけないと思います。後から何か,「これは標準的です。」というふうに言ったとしたら,いろいろなところから「これは標準ではないです。」と言われる可能性も大きいと思うのです。
○西原主査
だれにとって標準かということでもありませんし…。
○山田委員
何かスーパーマンにとって標準みたいなところがあって…。
○西原主査
それからやり方ですよね。それこそ「大きな声でやり取りの例を3回繰り返しました。終わりました。では,次へ行きましょう。」というように学習活動が行われると,標準的ではあっても,「その活動を通して何を学んだのですか。」ということになってしまいます。
○山田委員
でも,それはこの日本語教育小委員会で検討している標準的なカリキュラム(案)の基本がキャン・ドウ・ステートメント(Can-do statement)になっているので,結局は「生活上の行為」ができないと評価がゼロになってしまいます。
○西原主査
この日本語教育小委員会で開発を目指している標準的なカリキュラム(案)の土台にキャン・ドウ・ステートメントがあるので,山田委員のおっしゃるとおりです。
では,これは提案されたということで,それらの御意見もあり,今は早急に削除にはなりませんけれども,時間とその配分の書き方及びこの数及びその設定と言うか,それについては,時間的な目安を付けるということについては御同意を頂いたけれども,その付け方及びその付ける量については議論の余地があるということでよろしいでしょうか。
そのほかに標準的なカリキュラム(案)について,先ほど内田委員からDVDのようなものが提案されました。それでこの配布資料3「標準的なカリキュラム(案)の位置付けについて」の中に,参考資料1「「生活上の行為」の分類一覧」と配布資料2「学習項目の要素について」が位置付けられていますが,この中にリソースとして加えられるべきものとして,さっき内田委員がおっしゃったような使えるツール,使うべきツールと言うか,例えば「生活上の行為」の視聴覚資料とか,そういう御意見がありますでしょうか。使えるべきツールと,それから先ほど私が乱暴にも「やり取りの例」を頭から覚えこんだらこれができたと考えるかどうかということは,要するに教室活動の種類と言うか,そういうようなものについてもまとめたものをリソースとして加えておくということだろうと思います。
以前に少し日本語教育小委員会ワーキンググループでもお話したのですが,結局やり取りの例は−初級はある程度丸暗記という部分がどんな言語についてもあるので,覚えなければならないというところを外すことはできないけれども−能力記述で日本語で何とかすることができるようにという基準を満たす,「生活上の行為」を満たすということが目標である場合には,やり取りの例が言語的に頭に入ったというだけでは不十分です。それでは,どういうタスクを立てておくかということも,リソースとしてはなければいけないことになりますね。ロールプレイにするのか,それとも何か模擬的な疑似体験にするのか,それとも頭から飛び込んで泳げにするのかとか,教室活動の形態についていろいろなことがあり得ると思うのですが,それらの可能性についてもリストが必要かなと思います。そのほかに何か「こういうものもリソースでしょう。」というようなことがございますでしょうか。
○内田委員
携帯電話は皆様すぐに手段として使えるようになりますね。携帯電話でクリックをすると医療機関への行き方などが出てきて,すぐに耳へ入ってくるというのはいかがでしょうか。
○西原主査
そうするとメディアとして,標準的に示されるDVD等の視聴覚ではなく,もっと電子メディアを使うと言うか,そういうことでしょうか。
○内田委員
DVDはもう一つ,これは映像が出せるので,登録医院を一緒に見ながら,「そうか,ここに行こうか。」と分かるので,効果的だと思うのですが,携帯電話ですと皆さんお持ちになりますよね。
○西原主査
確かに今,携帯電話を持ってない人は大変少ないですね。ほかに何か思い付くもの,何でも結構です。後で整理してまとめますので…。
○伊東委員
もしリソースということであれば,繰り返しになりますけれども,私たちが作らせていただいて文化庁から出された「日本語学習・生活ハンドブック」はリソースとしていいと思います。日本で生活する上で使えるインターネットのホームページのアドレスも入っていますし…。
○西原主査
各種ハンドブックですね。
○伊東委員
はい。だからそれと併せて「日本語学習・生活ハンドブック」を使っていただけたらという気がします。
○西原主査
補助教材みたいな形でしょうか。
○伊東委員
それと,「日本語学習・生活ハンドブック」では理解するということについて,情報がかなりの部分,彼らの母語で書いてあります。そういうことを考えると,新たに作り足す必要がある部分もありますが,既に活用できる部分もあります。そこはやはり生かしてほしいなという気がします。
○西原主査
参考資料一覧みたいなものがリソースとしてあるだろうということですね。
○内田委員
「日本語学習・生活ハンドブック」で掲載されているホームページへのアクセス回数なんかもお分かりになられますか。
○伊東委員
ちょっとそれは分からないです。「日本語学習・生活ハンドブック」ではいろんなサイトのURL(Uniform resource locator)を紹介しただけですので,各URLのアクセスは私たちではチェックできません。
○加藤委員
今の関連で言いますと,「日本語学習・生活ハンドブック」の作成には私も少しかかわらせていただいたので,「このようなものです。」とお読みいただけるといいなと思います。それが一つです。
次に私もDVDに戻るのですが,色々具体的にどのようなやり方があるかという話は,要はその教室活動をするに当たって…というときの話ですね。対象別に考えた場合に,学習する人にとっては,例えば病院であれば,「病院でこんな場面が実際あるのだ。」という本当の病院の様子,「こんなところでこういうことをこんなふうに聞かれるんですよ。」ということを示したものがありますね。それからもう一つは教える側の人のために,何かタスクが示された場合にも,例えばロールプレイと言われても,ロールプレイってどのようなことをするのかが分からないという人も現実にはいらっしゃるように思うのです。ですので,全部に対してではなくても,例としてこういった情報が書いてあるときは,「教室でこんなふうにするのですよ。」というようなものがあるといいと思います。
○西原主査
「こういうものをロールカードと言うのですよ。」というような,その実際のロールカードみたいなものが例示されているようなイメージでしょうか。
○加藤委員
そうですね。イメージしたのは,DVDなどで映像として,「このような教室活動が今日は1つ,2つできますね。」みたいなものもあるといいかなと思います。
○西原主査
実際の「生活上の行為」の事例の場面のDVDと,それからタスク達成のためのノウハウとしてのDVDということですね。
それはどのくらいのお金を使って作成するのかということになります。標準的なカリキュラム(案)を作成する段階で,「リソースとしてそういうものがあったらいいね。」というリストはできます。けれども,今度は,教材側というか,その次の段階になったときに,それはお金との相談ということになりますね。
○加藤委員
そうですね。今,日本語教育小委員会で作業を行っていることが実際に使われないと本当に意味がないですね。その際には,ある程度,標準的なカリキュラム(案)の今の段階では例えばここまで作業を行い−実際は教科書等を市販する会社もたくさんあるわけで−そういった会社に結び付けて,そこが本当に重要であるということで販売も含めて,この事業の後を引き継いでくれたら,そこがお金を掛けて,今私が申し上げたようなものも作るのじゃないかなというふうに思います。そこに結び付けることが必要かなと思っています。
○西原主査
そうですね。民間に委託するということですね。
○加藤委員
そこにつなげるということですね。
○西原主査
国際交流基金のスタンダードはどうですか。最終的に3月にお出しになるものは冊子だけでしょうか。
○西澤委員
まだ,どういう形になるか分かりませんが,メディアがあった方がいいだろうという議論ももちろんあります。ただ最終的にどういうものにするかということ自体,まだ固まっていません。
○西原主査
取りあえずは冊子の形で出てくるだろうということでしょうか。
○西澤委員
一応記述の形で示されたものが原案として上がってきています。
○西原主査
メディアの時代なので,メディアはある方がいいと標準的なカリキュラム(案)では書いた方がよろしいですね。それから参考資料リスト,一般にもう既に出回っているもの,それから活動例というものが,できればメディアと共に示されるということでございましょうか。
それからリソースとして「人」というのがありますが,この中に,先ほど山田委員がおっしゃったように,第一にボランティアというのではなく,カリキュラムのライターのプロとか,それからコーディネーターとか,地方自治体の担当者とか,人が人としてのリソースとして,配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」の「リソース」の中に入り,例示されるのでしょう。
ほかに何かございますか。これは項目を立てておりませんので,こういうようなものもカリキュラムの一部と自分は考えていらっしゃるということで全く構いません。
○山田委員
ちょっと関係ないかもしれないのですが,配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」の凡例の上の方の黒ポツ,「大目標・中目標・小目標」,「数字はそれぞれの目標を達成するための目安となる学習時間を示す。」となっているのですが,これは削除した方がいいかと思います。「時間については1小目標あたり2時間を基本とするが,一つの小目標に含まれる学習項目の数(☆を除く)が1〜2の場合は1時間,6以上の場合は3時間とする。」としているのですが,これを置いておかない方がいいと思います。
○西原主査
つまり,この場での議論のためにはこの資料は使われたけれども,これ以上カリキュラム(案)としてこういう資料があるのはよくない。
○山田委員
ここはちょっと外した方がいいのじゃないか。
○西原主査
根拠であっても…。
○山田委員
はい。
○伊藤委員
でも,先ほど言われたように,2時間とか,まだその時間についてはこれから検討される,載せるか載せないかも検討していくということですから,当然ここは今の御説明を受けた基本の説明だけのものですから,当然これが載ってくるという前提ではないですね。
○西原主査
最終原稿には多分こういう根拠というのは,ここで今こう書くのは詳し過ぎるという御意見であろうかと思いますけれども。
○山田委員
何か,いわゆる機械的過ぎるのじゃないかというふうに思われると,この場での議論が全部そんなふうに見られるようで嫌だということです。
○西原主査
そういうことですか。学習指導要領ですと,1年の授業時間がほぼ決まっており,そしてそれを分割して,この単元は基本的に何時間とか言えるわけでございますね。そういうことが受け入れられやすい環境もある。ただしそれが盲目的に受け入れられてしまうという環境もあることを考えると,余りここに詳しく羅列しない方がいいのかもしれないという御意見ですね。
○山田委員
はい。ひょっとしたらこれが配布資料として,ここでの議論のための資料として使われたものだということが出た場合に,どうもこれは,こんなことをやっているのかみたいになっては困ると思うんです。
○西原主査
事務局に伺うのですが,この議事録が出てきますよね,ホームページに。そのときにこれらの材料も出てきますよね。
○匂坂国語課長
配布資料ですか。はい。
○西原主査
出てきますね。その段階で既に危惧きぐを感じられますか。
○山田委員
感じます。
○西原主査
世の中には何か注意深く見ている人がいるのですね。
○山田委員
何人かの人の顔が浮かんできます。
○西原主査
それで,先走って,だれも言わないうちに教科書を作ってしまおうという人もいますよ。いかがでしょうか。
ただ,そういう意味では各段階で配布資料が出てきていますので,半年前の配布資料を見てくださると,最新のものとは大分違うということになっていると思うのです。ほかの皆様はどういう御意見でしょうか。
○加藤委員
数字を出すことの是非について,少しだけ言おうと思うのですが,根本的に学習指導要領とかに基づくいわゆる学校教育と,私の知っているランゲージスクール(Language school)の間に実は非常に齟齬そごを感じています。地域で行われる日本語教育ということになると強く齟齬そごを感じます。入った段階で1年生じゃない人もいるわけです。いきなり6年生だっているわけで,その人に求められるものも違います。10年間日本語を教えてもらうことが必要な人もいれば,2か月やってぽんと終わりでもいい人でもいるわけです。その辺りのことを考えると数字が出る,さらに「標準的」ということで出ることへの,何と言うのでしょうか,そういうものがあるのかなという疑問のようなものがあります…。
○西原主査
そうですね。例えばCEFRの統一のプロファイル(profile)を見ると,数字設定というか,ドイツの場合は900時間のプログラムを提供するので,その枠内でやるわけですけれども,1クール(cours)が確か3か月となっていると思うので,その計画が個別にピックアップ(pick-up)して立てられます。ただ,1クール(cours)は3か月ということになっているわけですね。
○岩見委員
私は時間についてはある程度決める必要があると思うのです。この場合は日本語力がゼロの人に対してで,すごく積極的で習得力がある人に対して付けるかどうかですが,この程度の時間は最低限必要ですよというようなことは必要だと思います。
○山田委員
学習者タイプを配慮して決めましたと書いてあるのだったら全然問題ないのですけれども,学習事項の数が1から2の場合は1時間,6以上の場合は3時間と,一つの項目に掛かる時間がそんなに機械的に決まっていいのかということがあります。そういう配慮で学習活動というのが作られていくものではないのじゃないかというふうに絶対言われると思います。
○西原主査
そうしますと,「目安となる学習時間を示す。」までは,とにかくそうなので…。
○山田委員
そこはいいと思います。
○西原主査
その残りの行と次の行をここからは削除しておきます。それで目安が必要だということの了解というのは取ったとしておく,そういう御提案ですが,よろしいですか。
はい,では事務局,よろしくお願いいたします。配布資料5の凡例のブレットポイントの方ですね,下の二つの中黒(・)というのですか,の1行目の後半,「時間については1小目標あたり2時間を基本とするが,…」のところを削除しておくということでお願いします。
○尾﨑委員
もう1点よろしいでしょうか。先ほど少し話題になった「順番」,「代表例」というところなんですけれども,すごく親切で,そこまで親切にしてもらわなくても分かるのではないかと思います。
○山田委員
表が精緻化せいいちかされると親切かも知れないけれども,見る方の負担が多くなって,一所懸命見たら,「何だこれ,分かり切っているじゃないか」と言われるような気がするのですけれども,いかがでしょうか。確かに順番があるということは分かるのですけれども…。例えば一番最初のところの「隣人に容態を伝えて助言を求める」,普通この順番に行くのでしょうけれども,でも容態を伝えるだけで終わったっていい場合もあります。
○西原主査
もちろんそうです。この順番どおり全部やらなければ病院にたどり着けないわけではありません。
○尾﨑委員
これ何か,順番って,余りに忠実過ぎるような気が私はしましたが,いかがでしょう。
○山田委員
恐らくそういう意味じゃなくて,ここの部分は順番だと言うのだけれども,代表例というのは,次第が分かるようにメモが張ってあるのじゃないかと思うのです。「代表例」の部分については並べられている学習項目は流れがあるのではなく,どっちかという形で選ぶことができる。それが代表例になっているのじゃないかと思うのです。
○岩見委員
先ほど,杉戸副主査が「2段階チェック」とおっしゃいましたが,星印が付された「生活上の行為」の事例の中から,どの事例に対して学習項目の要素の記述を行うか選択する際に,「生活上の行為」に順序性がある事例はその内の不可欠のもの,緊急性の高いものを代表例として選びました。順序性がない事例(2.下位項目)についても同様の観点で代表例を選びました。それが配布資料1の学習項目となっています。ですから,「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム(案)配布資料1に「順番」「代表例」という文言は入れる必要はないかもしれません。
○西原主査
今は作業の中間段階ですから「順番」や「代表例」という言葉が載っています。ただ,これが学習項目になってカリキュラムになるときには,これは当たり前のことなので,載せなくてもいい,そういうことですか。
○尾﨑委員
そうです。
○伊東委員
あるいはこの学習項目の段階で私たちが,やはり「生活上の行為」の事例に関しては,順序性のあるものもあれば単発のものもあるということを少し書き添えておくだけでもいいかなというふうに思いますね。
○西原主査
使い方のところに書き添えるということですね。ありがとうございます。
○内田委員
先ほど学習時間の話があったときに発言すべきだったのですが,戻って申し訳ありませんけれども,配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」の三つ目の丸「標準的なカリキュラム(案)における学習事項の順序について」です。そこで「「生活上の行為」の事例を学ぶべき順序」の次に,「・学習時間については」というふうに,「順序・学習時間については」と入れていただいたらどうかなというふうに思いました。
それから,杉戸副主査も言われたのですが,それで西原主査が,やはりこれはきちんと学習することを強く求めましょうということで,同じく配布資料4「標準的なカリキュラム(案)の開発に関する検討について」の二つ目の丸ですね。「標準的なカリキュラム(案)に含まれる日本語教育の内容について」で「来日間もないすべての外国人に共通して必要なものであり,」の次に「緊急事態に対応するためにも,」を入れ,次に「基本的には」は取って,「網羅的に学習することが求められる。」としますと,理由も書かれ,かつ基本的にじゃなくて網羅的にというのが少し強調されるかなと思いました。
○西原主査
それでは,この配布資料5「「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム(案)」の表のこれからの充実のさせ方につきましては,時間等の目安については要検討ですし,それから最終的に順番があるかどうかということを,どこに書くのか,基本的な表に入れるのか使い方のところに入れるのか,どういう注書きにするのかということについても要検討ということで,御指摘を頂いたとさせていただきますが,今の段階でほかに何か御指摘いただくようなことがございますでしょうか。
次回の日本語教育小委員会は1月18日です。後で改めてアナウンスしていただきますが,それまでこの日本語教育小委員会はありませんけれども,約1か月更に検討する時間がありますので,もし後で思い付いたということでございましても,ぜひ御意見をお寄せいただけたらと存じますので,引き続きよろしくお願いいたします。
では,時間がそろそろ迫っております。どうも御出席ありがとうございました。
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