議事録

第30回国語分科会日本語教育小委員会・議事録

平成22年8月18日(水)
10:00〜12:00
旧文部省庁舎5階 文化庁特別会議室

〔出席者〕

(委員)
西原主査,杉戸副主査,伊東,井上,岩見,尾﨑,加藤,佐藤,西澤,山田各委員(計10名)
(文部科学省・文化庁)
舟橋国語課長,田中日本語教育専門官,仙田日本語教育専門職,山下日本語教育専門職ほか関係官

〔配布資料〕

  1. 第29回国語分科会日本語教育小委員会・議事録(案)
  2. 標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)
  3. 標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について(案)
  4. 具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)

〔参考資料〕

  1. 「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について
  2. 日本語教育小委員会における検討内容の大枠とそのスケジュール(案)
  3. 日本語教育小委員会における検討内容と進め方について(案)(概要)
  4. 日本語教育小委員会における検討内容と進め方について(案)

〔経過概要〕

  1. 事務局の異動について説明があった。
  2. 事務局から配布資料の確認があった。
  3. 前回の議事録(案)が確認された。
  4. 事務局から,参考資料2「日本語教育小委員会における検討内容の大枠とそのスケジュール(案)」,参考資料3「日本語教育小委員会における検討内容の進め方について(案)(概要)」,参考資料4「日本語教育小委員会における検討内容と進め方について(案)」について第29回日本語教育小委員会から修正・変更された点の説明があった。
  5. 配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について(案)」,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の説明があり,その後,質疑応答を行い「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案の活用方法について意見交換が行われた。
  6. 次回の日本語教育小委員会は,9月16日(水)に旧文部省庁舎5階文化庁特別会議  室で開催されることが確認された。
  7. 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。
○西原主査
それでは,通算で第30回,今期6回目の文化審議会国語分科会日本語教育小委員会を始めさせていただきます。本日は標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について御審議いただきたいと思います。
前回の日本語教育小委員会では,今後の審議スケジュールについて御検討いただきました。それについての修正は本日の配布資料に反映されております。そして,その御意見等が加わって修正されたスケジュールに従いまして,日本語教育小委員会ワーキンググループを2回開催しました。
日本語教育小委員会ワーキンググループでは,標準的なカリキュラム案を各地域においてより有効に活用してもらうための方法について検討いたしました。まず,標準的なカリキュラム案に工夫を加えて,地域の実情に応じた形にする際の基本的な考え方と,標準的なカリキュラム案を地域の実情に応じた形にするために加える工夫の大枠について検討を行いました。また,それを更に具体化するための手順について検討を行いました。
それから,前回の日本語教育小委員会におきまして,標準的なカリキュラム案のことを説明する際に,言語の役割と言語習得の考え方についても検討し,それも記載したらよいのではないかという御意見がありましたので,それについても検討を行いました。
まず,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」ですが,資料の内容,レイアウト,その他について御意見を頂ければと存じます。その際,事務局に確認しておかなければならない点があるのですが…。この配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」というのは,ガイドブックの内容の一部は配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」に組み入れられるだろうと考えてよろしいですね。
と申しますのは,省庁が審議経過報告を冊子として出す際に,この種のカラーページが概要としてイラストされていることが非常に多いと思うのです。そういった流れも踏まえた上で,この日本語教育小委員会でも配布資料が最終的には報告書の一部を構成するかもしれないと考えてよろしいでしょうか。
○山下日本語教育専門職
そのようにお考えいただいて構わないと思います。
○西原主査
レイアウトも御検討いただきたいと申し上げたのは,今後そのように位置付けられるということを念頭に置いて御議論いただきたいということでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩見委員
細かいことですが,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「2 活用及び指導方法に関するポイント(報告書より抜粋)」の部分,左から3列目,一番上の枠内に「言語・社会・文化的な知識を使って行動」の次に「である」がありますが,つながりがおかしいのでこれを削除してください。
○西原主査
事務局は「である」の削除をお願いします。「行動できるようになること」で止めます。
○杉戸副主査
その箇所についてですが,冒頭から2行目に「ということは」とありますから最後に「である」を付けないと体言止めになってしまいますよね。
○西原主査
それでは,この文言は修正していただくということでよろしくお願いいたします。
○杉戸副主査
配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは…」の最初に【基本的な考え】とありますが,その冒頭の部分で,「社会に十全に参加することによって」という部分があります。これはこの1行の文の中でどこにどう掛かっていくのか少しはっきりしないのではないかという疑問があります。その疑問を基に,参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」の冊子の中で,こういう「社会に十全に参加することによって」という文言がどこかにあったかどうかという疑問もあります。さらに細かな話になりますが,ここに書いてある「社会に十全に参加すること」というのは,この標準的なカリキュラム案を提案するその目的であるのか,それとも,例えば配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の下の方に青い四角で囲まれた部分「対話による相互理解の促進」とか「行動・体験中心の教室活動」とかがありますが,これが標準的なカリキュラム案の運用の仕方の手段なのかどうかということですね。「社会に十全に参加することによって」と書いてある「によって」と書いたのは,手段として位置付けるという認識があってのことなのかどうか。そういう解釈もありつつ,ただ,今の段階ではどちらが適当かよく分からないという形になっています。
○西原主査
私は「(社会に十全に参加する)ことによって」は,「向上を目指す」に掛かるのではないかなと読みましたが,そうなんでしょうか。それから「十全に参加する」というのは,実は,この標準的なカリキュラム案が出る前のもの,標準的なカリキュラム案の土台となった第8期日本語教育小委員会の審議経過報告に「社会に十全に参画」といった文言があったので,そこから引用しているのではないかと思いました。
○杉戸副主査
その場合はやはり手段として扱われていたことなんでしょうか。
○西原主査
目的でもありますよね。
○杉戸副主査
最初に申し上げましたように,「参加することによって」の「ことによって」という部分がどこに掛かるか,少し分かりにくいと思います。ここは端的に引用する部分ですから,目的なのか手段なのかをはっきりさせるような表現にした方がよいというのが意見です。目的としてはっきり位置付けるのであれば,「社会に十全に参加するために,対話による」と続けられ,それから標準的なカリキュラム案の手段の面を表現するとすれば,「十全に参加することを通じて」とするのでいかがでしょうか。「によって」は少し言葉が足りないなと思ったのですが,いかがでしょうか。
○山田委員
私は,よくいろいろなところに自分の意見を書くときに,社会参加ということは社会参加をすることによってでしか身に付かないということを言っているのですが,ここでは目的であり,手段でもある,両方だと思います。ただし,標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法ということに限って言えば,これは手段なので「によって」でいいのかなと思います。
○西原主査
「によって,そして対話による」というように,目指すものに掛けていると考えて,そこに句点があれば少し助かりますかね。
○杉戸副主査
句点があれば少し助かります。
○西原主査
では,句点を少なくともそこに一つ打っていただくということにしたいと思います。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」は概要なので,それだけで見ていただいても把握できるようなものにするというのはとても難しいですね。むしろ,こういうふうに文言にしない方がよろしいのでしょうか。
○杉戸副主査
西原主査が,最初に御確認の趣旨で発言されているんですが,この配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」がガイドブックの冒頭と言うか,ある位置に来る,そのすぐ後ろにそれぞれ図の中のこの部分を普遍するような文章のページが続くというイメージを私は持っているのですが…。
○西原主査
そうですよね。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」のようなものを含んだ報告書が書かれるときには,こういう1枚があり,その後ろに目次が来ると思います。実際の手引なりガイドブックなりのページ立てにつきましては,まだ分かりませんが,ただこれがそのように活用されている例をたくさん見てきたと思いますので,そうすると,イメージ図としてはこういうものをとにかく出すということなのではないかと思います。
○杉戸副主査
その文章で書く,この配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」に続く部分で今の「社会に十全に参加することによって」を手段として位置付けているんだということを,きちんと言葉を尽くして訴えるべきだろうと思います。
○西原主査
使い方としてはそうですね。
○杉戸副主査
それと,もっと意味を込めれば目的でもあるけれども,手段なんだというように山田委員のおっしゃるような趣旨を言葉を尽くして説明する必要があると思いました。
○岩見委員
過去に議論されたことを踏まえて,全体の流れを見てみますと,今作成しようとしているガイドブックというのは指導方法,活用方法についてまとめたものであり,そのページの一つ目,【基本的な考え】の部分で「対話による相互理解の促進」とあり,対話という手段を挙げています。以前から,地域の日本語教育の目的の重要なポイントとして社会参加をすることや,社会に十全に参加するということが挙げられていました。今までの続きから言うと,社会参加ということを目的として日本語教育を行っていくには「こういう方法を取るんですよ。」という流れで記述をした方が自然ではないかと思いました。
○西原主査
結局,今,検討していることがまとめられて冊子として出ていきます。そして,まとまったものがどういう役割を持つものになるのかと言うと,標準的なカリキュラム案をいきなり示されても恐らく地域の日本語教育の関係者たちは当惑するであろうから,標準的なカリキュラム案と実践をつなぐ役割を持つものとして今検討しているものがあります。それは,地域の人が標準的なカリキュラム案を見て,「さあ,どうしようか」と言うときに役に立つものとして今検討しているガイドブックのようなものがあるということですよね。
○井上委員
配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは…」の【基本的な考え】の最初の行が,私が標準的カリキュラム案を作成する際に議論したことと比べると,少し抽象的なのではないかと思います。参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」の2ページのIの(1)の目的にも書いてあるのですが,要するに標準的なカリキュラム案は「生活者としての外国人」が日本語で意思疎通が図れ,生活ができるようにするためのものだとすれば,「具体的な教育内容を検討する際のガイドブックとなるもの」と言った方が分かりやすいのではないかと思います。
参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」の3ページにも同じような趣旨のことが書いてあるのですが,要するに来日間もない外国人が,基本的な生活の基盤を形成するのに必要になるものということで考えますと,やはりともかく社会に十全に参加するというのも,非常に部分的でも日本語は必要になるわけですから,ハードルをいきなり「十全に参加することにより」という言葉にしない方がいいのではないでしょうか。そうではなく,「ともかく生活できるように,日本語で意思疎通ができるようにする」とした方がいいのではないでしょうか。そのための内容として,「標準的なカリキュラム案では生活上の行為をいろいろ切り分けて示したので,各地域で工夫を加えながら作ってほしい」ということにする。その際の構成要素は配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」で取り上げるキーワードとして,「教育内容の選択と工夫」「専門家や市民の協力参加」「行動・体験中心の教室」「対話による相互理解」があるというように整理にした方がいいです。いきなり来た人が「すべてできるようになることを目指そう」とすると,少しハードルが高いという感じがします。
○西原主査
確かにそうですね。ただ,後で御検討いただく予定ですが,例えば配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語の役割及び言語習得についての考え方について(案)」で示しているような議論についても最終的な成果物には入れようということになっています。今,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について(案)」の部分はまだ配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の中には反映されていないのですが,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について(案)」のような内容をどこに含むかと言うと,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1.標準的なカリキュラム案とは…」というところに入るのではないかと思います。そうすると,抽象度が上がったという御指摘もさることながら,ここで抽象度の上がった議論を繰り返しておくことによって,標準的なカリキュラム案が一体何なのかということを改めて考えていただくという役割を【基本的な考え方】の部分が負うということになると思います。だから,そこを更に飛ばして,「2 活用及び指導方法に関するポイント(報告書より抜粋)」から読む方があるということは,もちろんそうかもしれないですし,包括的,かつ抽象的,かつ分かりにくくなっているかもしれないですが…。
○山田委員
 
「十全に」という言葉を取ったらいいのではないかと思うのですが…。「十全に社会参加する」ということは,杉戸副主査のおっしゃるようにそれが目的だと思います。それを実現するための方法については,社会に参加するというスタンスで,そういう活動を通じて,そういう能力を最終的には身に付けていくということだとすれば,この「十全に」を取れば…。
○西原主査
「十全に」を取るだけでいいででしょうか。
では「社会に参加することによって,対話による相互理解の促進及びコミュニケーション力の向上を目指すもの。」
○尾﨑委員
今の「によって」のところなんですけれども,この前に行われている議論について何も分からない方がこれを読んだときに,「社会に参加することによって」と言うと,やはり日本語としては手段としての意味を取って読んでしまいます。「でも,社会参加ができない人に何か教えようとしているのではないのか」と理解してしまうのが普通だと思うのです。ですから,色々な背景の議論はあるし,言語習得とか,言語についての議論も出てきますが,最初は素直に読んだ方がすんなり読める文章にした方が良いのではないかというのが私の意見です。ですから「社会に参加できるように」というような言い方の方が素直だなと思いました。それが1点です。
それから,2点目に,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「2 活用及び指導方法に関するポイント(報告書より抜粋)」のところで11項目挙がっていますが,一つ,付け加えるべきかなと思うことがあります。それは一番左側の「教育内容の選択と工夫」というところです。参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」の中に「網羅的」という言葉があり,それについて少し議論した記憶があります。生活上の行為の事例は121事例出ているんだけれども,これは,「日本で生活していくためにや皆さん押さえておいてくださいという項目だ。」という議論があったので,もしかすると,標準的なカリキュラム案は,一応全部カバーするという目標はあると入れておいたらどうかと思います。
○西原主査
そうですね。こういう文言は使いませんでしたけれども,市民生活入門のためには,日本人であっても,ここで取り上げていることは知っていなくてはいけないわけですし…。それは,そうすると配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「2 活用及び指導方法に関するポイント(報告書より抜粋)」の三つのブルーの四角のそのまた上にもう一つ追加するということでしょうか。
○山田委員
私が思っていたのは,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「2 活用及び指導方法に関するポイント(報告書より抜粋)」の一番左側に項目が三つ並んでいますよね。「適宜修正を加え…」,それから「生活上の行為の事例を的確…」,それからここにもう一つ,「標準的なカリキュラム案の121事例は基本的にカバーするんだよ。」という事を入れればいいと思います。
○西原主査
そのことが,四つ目として。そこに入る。
○山田委員
四つになる。どうでしょうか。
○西原主査
つまり,社会に参加できるということは,この標準的なカリキュラム案の中で,少なくとも黒丸がついているところは全部網羅的に知るようになるか,できるようになることが大切だということですよね。
○山田委員
恐らく,現場で利用なさる方がその通りに行うかどうかは別ですが,日本語教育小委員会としては,そういう趣旨で生活上の行為の事例を121事例選んでいます,それは網羅的ですということも書いてあるので,一応そのことは念頭に置いて,それぞれ検討していただきたいということになるのかなと思います。
○西原主査
この点についてはいかがでしょうか。四つ目を加えておきますか。
○佐藤委員
今の意見ともかかわって,2点。基本的な考え方について言うと,何が目的なのかと言ったときに,カリキュラムですから,やはりどういう資質・能力を規定するのかという部分が何か前面に見えた方がよろしいのではないのかと思います。そうすると,【基本的な考え】の部分にある「対話による相互理解の促進とコミュニケーション能力の向上」というものが恐らく資質・能力に当たり,そのことによって社会参加していくんだということが,これは恐らく岩見委員のおっしゃっておられたように,私たちがここで議論したのはそういう議論だったのではないかと思っております。カリキュラムですから,やはりどういう資質・能力を目指すのかというところがメインに来た方がよろしいのではないのか思います。そうことをはっきりさせた方がいいのではないかということです。
○西原主査
具体的な文言としてはいかがでしょうか。
○佐藤委員
「対話による相互理解の促進及びコミュニケーションの向上を目指すことによって社会に参加できるようにする」というのが,我々の議論してきたことではないかということです。社会参加するということは,要するにどういう力を付けることによって社会参加をさせるのか,あるいは地域の中で生きていく,生活できるようにするのかといったことになります。
○西原主査
そうすると,社会参加は目的になりますね。
○佐藤委員
そして,もう1点。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「3 活用及び指導方法に関するキーワード」の「教育内容の選択と工夫」と「専門家・市民の協力参加」についてです。右側の二つ「行動・体験中心の教室活動」「対話による相互理解の促進」はキーワードとして非常に的確にとらえられているんですが,左側の二つがキーワードとして若干抽象度が高くて,一般的過ぎるかなと思います。
例えば,今までの議論で言うと,「地域や学習者に応じた教育内容の選択と工夫」とか,何か的確に表すようなキーワードがあるともう少し分かりやすいのかなと思います。それから「専門家・市民の協力と参加」というキーワードが,他の三つと比べると,中身としてはこの順番でよろしいのかと思いますけれども,少しどういうことをイメージするのかということが,なかなかこのキーワードだけではイメージしにくいので,ここは何か違うキーワードがあったらいいのかなということを思いました。
○西原主査
これが「抽象度が高い」というのはどういうことでしょうか。
○佐藤委員
例えば「行動・体験中心の教室活動」とか「対話による相互理解の促進」というのは,キーワードとして非常によく分かりますよね。
ところが「専門家・市民の協力と参加」と言ったときには,この標準的なカリキュラム案の中で具体的に何がどういうことなのかということが,キーワードからイメージできるかどうかということです。
配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」を見させていただきますと,そこでも「指導者・協力者についての検討」と書いてあるのですが,要するにこれがもう少し違うキーワードの方が違和感がないかなと思います。
○西原主査
例えばどういったキーワードでしょうか。
○佐藤委員
それについては,もう少し考えさせてください。
「教育内容の選択と工夫」についても,何かもう一言,「地域や学習者に応じた教育内容の選択と工夫」といったようなものがあれば,非常によくキーワードとして内容を反映しているのではないかと思います。
○西原主査
そうすると,修飾も付けるということですね。
○佐藤委員
若干のですね。余りにも一般的過ぎるのではないかという感じがしました。
○西原主査
はい。そうすると,「地域に応じた」…。
○佐藤委員
「教育内容」,あるいは「学習者に応じて」,「地域・学習者に応じた教育内容の選択と工夫」といったキーワードになるといいのかなと思います。
○西原主査
少し長いキーワードになりますが…。
○佐藤委員
先ほど西原主査がおっしゃっておられたように,この配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」がもし概要として出てくるのであれば,キーワードは余りにも一般論ではなくて,やはり内容を的確に反映したキーワードであった方がよいのではないか思います。そのためには若干の修飾が付きます。
○西原主査
それでは,「地域・学習者に応じた」…。
○佐藤委員
「教育内容の選択と工夫」と言えばどうでしょうか。そのようにした方が恐らく,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」で示されている内容が的確に反映されるのではないかと思います。「専門家・市民の協力と参加」については,少しどういう言葉がよろしいのかどうか…。
○西原主査
要するに学校文化の中で連想できるようなテキストを使って,先生が学習者との閉じられた空間の中で教育が行われるのではありませんよということですよね。
それは,地域の場合には重要なキーワードになります。それを言い表す適切なキーワードとして,これが抽象的過ぎるとすれば,何かありますでしょうか。
○佐藤委員
例えば,専門家・市民というのが,具体的に,例えば何を意味するのかというのがはっきりとしません。
○西原主査
元々は「周りの人たち」という話ですものね。
○佐藤委員
はい。「市民」というのが,何かある独特の言葉なのか。若干,先ほどの尾﨑先生の話とはずれましたけれども,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」に関しては,そのような印象を少し受けました。
○西原主査
いかがでございましょうか。一番最初のキーワードについて,修飾語を付けるということについてはよろしいでしょうか。それから「専門家・市民の協力と参加」というキーワードが抽象的だということに関しては,少し工夫の余地ありというところでお受けしたということでよろしいでしょうか。
○佐藤委員
「専門家」という言葉が出ていますけれども,「市民」という言葉に若干引っ掛かります。これは重要なキーワードであることは間違いないので,これをうまく的確に表現することが必要でしょう。先ほど,西原主査がおっしゃっておられたような,つまり学校型日本語教育ではない,学校型の教育ではなく開かれた形,何かもう少し「協力と参加」,「参加・協働」とか,何かそういうキーワードだと思います。何かそこをうまく的確に表すようなキーワードであると…。
○西原主査
まず,「市民」という言葉について,何かいい代替案がありますでしょうか。
○山田委員
代替案ではないのですが,今の佐藤委員の話を聞いて,「専門家」より「住民との協働」という言葉を使ったらどうかなと思いました。
○西原主査
では,「専門家・地域住民との協働と参加」。
○山田委員
「協働」だけでいいと思います。
○西原主査
では,山田委員の案は,「専門家・地域住民の協働」。そうすると,「だれが」ということが抜けてしまいますけれども…。
○山田委員
これは,教育プログラムをする人ですよね。
○西原主査
分かりました。では,「専門家・地域住民との協働」として,元々の表現からは「参加」を取るということでいいでしょうか。
○山田委員
もう少し検討してもらいたいことがあります。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の一番上の【基本的な考え方】というところで,おっしゃるように社会参加というのを目的にして,実際にプログラムと言うか,教育プログラムとしては「対話による相互理解の促進及びコミュニケーション力の向上」ということなんですけれども,「対話による相互理解の促進及びコミュニケーション力の向上」を目指してということを中心にするのがいいと思います。例えば,言語についての文字,発音,基本的な文法事項などを重点的にするのではなくて,活動して何かができるようになることが重要だということを強調したいと思います。そのために,私は逆に,例えばですけれども,「実際の社会参加を想定し,対話による相互理解の促進及びコミュニケーション力の向上を目指すもの」というように,一つの手段ということを重点化する表現の方がいいかなと思いました。
○西原主査
「社会参加を想定し,対話による相互理解の促進及びコミュニケーション力の向上を目指すもの」ですね。
○山田委員
一番最初に,「実際の社会参加」と入れたらどうでしょうか。
○西原主査
「実際の社会参加を想定し」とするのは,いかがでしょうか。
御趣旨は分かりましたので,事務局に預からせていただいて,今の御意見を基本的な考え方に反映するということでこの配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」に関する議論を収めてよろしいでしょうか。
○井上委員
キーワードの並べ方も,重要だと思っています。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「3 活用及び指導方法に関するキーワード」の部分で「教育内容の選択と工夫」が1番目に来るのは分かります。それから,その手段である「行動・体験中心の教育活動」は2番目ではないかなと思います。4番目の対話による相互理解の促進というのは,かなり普遍的なもので,これをどこに置くか。「専門家とか地域住民との協働」は,どこに入れるのでしょうか。「対話による相互理解の促進」の「対話による」と言うのは,要するに外国人であろうと,日本人であろうと,違う部分はあるかもしれませんが,多様な人たちが,相互理解を促進して地域社会が安定的になるということを目的としていきましょうということですよね。
今検討を行っているのは,飽くまでもやはり自治体とか,そういったところで意識をしていただかなければいけないガイドブックなのでしょうから,それを最後に持ってくるのかなと思います。少し繰り返しになりますけれども,教育内容の選択が1番目で,2番目が教室活動で,3番目が協働,4番目がかなり大きな目標としての相互理解というように並び替えた方がいいような気がします。
○西原主査
そのことと連動するのが配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」なのですが,実際には配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」が概念図となり,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」が実際の作業手順を示すことになります。
それで,その作業がどういうサイクルで行われるかというところで配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」を見ていただくと,教育内容の選択と工夫が行われ,それから現実どういう状況かという地域の状況があります。実際には,状況設定がされ,そしてどういうリソースがあるのかということを検討した上で,一番最後にと言うのはおかしいですが,具体的に教室活動というのがどうあるかということで現場に落ちていくという順序になっています。それと連動する概要として配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」があります。飽くまでも,対話による相互理解の促進というのは,最終目標と言うのはおかしいですけれども,現実にどういう教室をするかというレベルではこの考慮というのは,作業手順とは少し関係がないというところで外に出ているというのは,それはよろしいわけですよね。
協力と参加と体験学習が入れ替わるという案になると,実際の作業手順としては少し違うことになるという話になるのですが…。
○尾﨑委員
これを見せられて「ああ,こういう活動をすればいいんだ。」と言って,「実体験とか,だれか呼んで来るんだよ」となって,それから「ああ,あそこにだれそれさんいるよね。」というように指導者を探したりするんだろうなと思います。そうすると,井上委員のおっしゃったような順序の方が,頭としては付いて行きやすい気がします。人的リソースがどうあるかということを先に考えるよりも,どういうことをやればいいのかということを言った方が,それからそれに必要な人を探そうとなるかなと思います。
○西原主査
それでは,その配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の2ページ目を見ていただけますでしょうか。
一体何をするのかということが,かなり具体的になっているのがページ2,3,4と続いています。まず,地域の外国人の状況や人数,地域のリソース等の把握というのを言語教室計画者としては考えてくださいというのが配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の1ページの1つ目の「・」の内容です。その中の各地域というところで,地域のリソースの把握というのがそこに入っています。つまり,この図によれば,「生活者としての外国人」がだれかということと,生活課題が何かということと並行して,地域のリソース,どんな教室が使えるのか,だれがいるのか,ここではどんな人が使えるのか,協力的なのか,協力的じゃないのか,というようなことが(1),(2),(3)になって,目的や設置場所についての検討というのがなされていくということです。そして,実際の教育プログラムが作成されるとなっています。
実際の教育プログラムの作成の中に,どういう人を使うかということが入ってきます。ですから,どういう人がいるかということがその前に分かってないと,実際にはこういう順序できちんと行くかどうかということについて分かりませんし,すべてが並行して進むということもあります。
○尾﨑委員
恐らく情報はあるんだと思います。
○西原主査
それから,学習者についても「こういう人がいるよ」と言って想定して始めたら違う人が入ってきたり,途中でやめてしまったりすることがあります。それから,地域の事情が突然変わって,例えば突然不況になって,学習している人が全部帰ってしまったりするということはあり得るわけですから,実際にはこのとおりの順序で行くのではないでしょう。ただ,考え方の順序としては,「このように考えていってください」ということになっています。
○尾﨑委員
そういう背景があって,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」ができているという方がいいと思います。資料作成の背景までは読む方には分かりませんので。それから,この配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」を見たときに,四つのキーワードの並び順が左から右に移っていくときに,どの並び順の方が頭にすんなり入るかなということを考えました。
○西原主査
そうすると,井上委員の案のように,修飾語を先ほどの案のように変えたとして,教育内容の選択と工夫の次に,行動・体験中心の教室活動が来て,そして,市民の参加等が3番目に来て,それで対話についてのキーワードが来る方が概要としては見やすいかなという御意見でしょうか。
○尾﨑委員
そういう気がします。
○佐藤委員
私も,最初,実は井上委員の案のように考えたんですが,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」を見ると,やはりこの順番だろうと思いまして発言しませんでした。先ほど,専門家・地域住民との協働といういいキーワードを付けていただいたのですが,実は,これは後ろを見ていると,このキーワードが少し違うなと思ったんです,後は,何か地域リソースを見つけて,どう活用していくのか,どう編成していくのかという話なんですね。
○西原主査
そうです。カリキュラムの活用の話です。
○佐藤委員
そうすると,「専門家・地域住民との協働」と言うと非常に大きなテーマになってしまって,そのキーワードがこの順番と何かうまく合わないという印象がありました。ですから,ここが市民ということもそうだったのですが,要するに専門家とか地域住民,もっと広い意味ではどういう地域的な課題とか,地域リソースというのがあって,それをうまくどう編成していけば,その内容をうまくどう教えていけるかというような順番だと思ったのです。ですから,これを専門家,市民,この順番を配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」を生かすとすると,この2番目のキーワードが,改めてもう一度これでいいのかどうかという議論をしておかないといけないと思います。つまり,おっしゃるように,専門家・地域住民との協働であれば,確かに内容,方法,協働,そしてその促進という,こういう順番になってくるんだろうと思います。ですから,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の,この順番を生かすとすると,専門家・市民の協力と協働というところのキーワードを,もしかしたら少し内容に合った形に変えた方がいいのではないかと思いました。
○西原主査
実は,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」を日本語教育小委員会ワーキンググループで検討しているときに,「2 日本語教室の目的や設置場所についての検討」は「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」の後ろに来るんじゃないかということが意見として出ました。しかし,やはりこれは地域において,日本語教育を実際に計画してくださる方を第一の読者として考えているわけです。そうすると,現実どういうことが可能なのかということなしに,「理想的なプログラム」ができてしまったら困るわけですよね。「2 日本語教室の目的や設置場所についての検討」がここの「2 日本語教室の目的や設置場所についての検討」にそのまま戻ったと言うか,動かないことになったという経緯が日本語教育小委員会ワーキンググループの中ではありました。
○加藤委員
少しまた戻るかもしれません。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について」の順番のところで,今,佐藤委員がおっしゃった,さっきの言葉を変えたところはもう一度考えた方がいいかなと思います。ただ,一番下にキーワードとして四つ青い四角がありますが,左から順番に,例えば優先順位が高いとか,順番であるという解釈ではなくて,今の現状として,教育内容の選択もそうですけれども,教室の中で,例えばボランティアの方が授業として行っているという背景を踏まえて,ボランティアの方のみで授業を行うのではなくて,専門家や地域住民が参加するということも入れておきましょうということです。それから,その「学習者のニーズに合わせてリソースを選び取っていきましょう」ということが大事で優先順位が高いと考えられるので,「専門家・市民との協力と参加」が配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について」の一番下の部分,左から2番目にあり,それから「行動・体験中心の教室活動」とか,さらに「対話による…」とかが続くといったように非常に具体的な教室の方法論という形に近付いていくことになります。ですので,私は配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について」の順番というのはこれでいいかなと思います。
それから,最初の方の議論にありましたが,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは」の【基本的な考え】のところですが,ここに余りに具体的な基本的な考え方を掲げてしまうと,この標準的なカリキュラム案が非常に小さいものになってしまうのではないかと思います。そうではなくて,トップに挙げる【基本的な考え】に「十全に」という言葉が適切かどうかというのは私にも疑問はありますが,余り方法論に偏らずに,まずは大きいところを掲げた方がいいのではないかなと思います。
○西原主査
配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」と配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」が連動しているということを先ほど,御説明申し上げていたのですが,それから加藤委員のお考えとしては,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」は,このキーワードが左からこの順序で並んでいて文言の修正を加えていいのではないか。加えた上で,この順序でいいのではないかという御意見でした。
いずれにしましても,すごく難しいことであります。実際にガイドブックを手に取る人の中には概要だけ読んでいる人もいますし。それから概要は読まずに中身を読んだくださる方もあります。それから,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」をむしろ概要よりも先に読んでくださる方もあると思うので,それぞれの利用ということが考え方としてあると思います。やはり是非,専門家・市民の協働と行動体験の教室活動が入れ替わった方がいいという御意見が強いでしょうか。
○井上委員
皆さんの意見を聞いて,何となくこだわらなくてもいいのかなと思い始めています。例えばこれをガイドブックと呼んでいますけれども,ガイドブックの利用者というのはどういう人なのかということを考えると,要するに今まで全く日本語教室を開いたことがないような自治体の人たちなのか,それとももうかなりレベルで活動をしている人なのかで違ってくると思います。とてもハイレベルな活動をしている自治体には必要ないのかもしれませんが,もう少しグレードアップをしようとしている自治体あるいは日本語教育を全く行っていない自治体,何かやっているけれどもうまくいかない,不況になると参加者が増えたり減ったりする,やっていることが少し混乱しているんじゃないか,ニーズに合ってないんじゃないかということを感じている自治体が,もう一度基本に帰って,日本語教室の在り方だとか,あるいはカリキュラムを考え直してみよう,あるいは参加する人たちの構成を考え直してみようと自治体がそれぞれ教育内容を地域の実情に応じて選択をし,工夫をしましょうということですね。
それから生活の基本というものを教えるには,行動とか体験を中心とした教室活動にすべきではないかということですよね。それから3番目が,自分たちだけで考えるだけではなくて,地域には外国人もたくさんいるし,今まで日本語を教えていた人もたくさんいますので,そういう人たちにどのようなやり方をしたらうまくいくのか,あるいはどのような場面を設定したらうまくいくかということを聞きながら考えていく。最終的には,外国人がその地域に定住するのは非常にメリットになるということを理解して,日本語による対話で相互理解を深めていくことを考えてもらう。そういう順番で考え直して,カリキュラムなり,教室の目的なり,設置の方法を再検討するというように使っていただくとすれば,やはり順番を考えた方がいいような感じもします。配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」でかなりブレイクダウンした作成の手順を加藤委員からお話があったように,この項目の順番にとらわれることなく,もっと詳細に書いてもよいのではないかなと思います。
○西原主査
それの詳細が,実は,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の3ページ以降です。
○井上委員
3ページ以降というのはプログラムですよね。
○西原主査
だからそこに落としていくんですね。このプログラムが実は行動・体験中心の教室活動なわけですけれども…そのプログラムになっていくんですね。
そのときに,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」がどうしてここに戻ったかということになるのですが,プログラムを作るときに,生活上の課題の把握をするということが3ページ目の上の方に書いてあります。つまり,外国人はこういう状況にいますよということがあって,その次に,4ページ目のところなんですけれども,協力体制とか,それからそういうことも考えた上で,最終的にはプログラムに落としていくということになります。地域でプログラムを計画するときに,生活者としての外国人を知るということと,それからリソースを知るということがあって,それから最終的にプログラムに落ちていくんじゃないかという考え方に立ったので,この順序,つまり「1 域内の外国人の状況・ニーズ,地域のリソース等の把握」,「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」,「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」で日本語教育の実施になっているということなんですね。現実問題,この「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」を外していただくと,プログラムとしては具体性を欠くという恐れを抱いているからのことです。
○岩見委員
この最後の列のキーワードですが,文言は検討するにしても,この順番でいいと思います。私は,専門家の助言を受ける,あるいは同国人の先輩の参加によって,どこでどういう助言を受けるとか,参加してもらうかというときなど,カリキュラムそのもの,プログラムそのものを作るときから専門家から助言を受けることが恐らく必要だろうと思うんですね。それは,外国人にも協力を仰ぎながら,専門家が,実施のときもそうですし,いろいろな現状の把握をし,全体的なカリキュラムの編成のときから重要な役割を果たすと思います。
それは,現状のボランティア依存型の態勢を改善するということにつながるので,専門家,市民の協力参加は,カリキュラム編成に必要なポイントとして挙げておくべき事柄だと思うんです。右の列にある行動・体験中心の教室活動というのは,こういった方法で―つまり指導方法ですね。対話というのも,対話そのものは指導の方法の一つとして対話というのを捉えている。その目的は相互理解につながるというものかもしれませんが,右の二つは方法ということになると思うので,それは右の方に残して,専門家,市民の協力参加というのは,左側で大きいポイントとして残した方がいいと思います。
○西原主査
そういうことで,先ほどの案としては,「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」が順番が変わらず元に戻ったというスタンスでよろしいでしょうか。結局は最初の案の通りということなのですが…。
○西澤委員
私も,一義的な利用者は,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは…」に書いてあるように,日本語教育担当者だと一応想定すればですね,これを使うのは,要するに,例えば担当者研修会みたいなところで,今行っている教室活動をどうしたら改善できるかとか,これから新たに始める場合にどうしたらいいですかということについて具体的手順を示して,具体的な手引きにしてもらうという意味から言うと,やはり配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」で示しているような流れになるんだろうなと思います。
協働して,コミュニティーとして包み込んでやっていきましょうというのは分かりますけれども,実際に担当者として何をしなければならないかということを勉強するということを前提に考えると,この順序の方が具体的な手順に即しているという意味で分かりやすいのかなという感じがします。
○加藤委員
それと,私たちの学校,いわゆる日本語学校を考えた場合に,地域の人というのは抜かして,いわゆる留学生を対象としています。そうすると,私たちが着目していないのは,やはり配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について」でキーワードとして書かれている専門家・市民と言うか,地域住民との協働というところで,ここが抜けているわけなんですね。
教育内容の選択と工夫はします。それから行動・体験中心のというのはそのつもりでしていますし,大学でというようなのも大きい私たちの指針であるんですが,やはり抜けているのが,そこの地域に根差したとか,そこの人と一緒にとか,あと,本当に滞在日数が長い外国人本人であったり,地域の教育専門家に精通したというところで,この辺りがやはり大きなポイントになるかなと思います。そうすると,何かこの位置にあるというのは,非常にこれは重要なことであるという意味合いで,ここをおいて方法の話に行きたくないなという思いがあるということを,改めて今また思いました。
○杉戸副主査
私も,今の配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」のキーワードの並び順はこのままにしておくということでいいと思います。それから配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の1ページの右の方のブルーの四角の中のこういうキーワードが縦に四つ並んでいるのも,このままでいいです。
それから配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の4ページの上から2行目を見ていただくと,特に縦に流れるプログラムのフローチャートの中で,必ずしも順番通りに設定すべきものではないと書いてありました。これは,既に皆さんから異口同音に語られているように,現場ではこの仕事の順番が入れ替わったり,行ったり来たりしながら進むということがあります。ですから,これがここに1行書かれていると思うんです。そのことと,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の縦の順番というのは基本的なパターンは書いてあるけれども,現実はそうばかりでもないということです。そういうことを,この4ページの上から2行目のところで書いてあります。少し言葉を濁しますけれども,この1ページに示した順番がどうでもいいという意味では決してないけれども,基本的なパターンはこうだという,そういう意味で,必ずしも,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の横並びの順とは対応しないということです。対応するものじゃないということですね。
○西原主査
対応しない場合もあるだろうし,対応する場合もあるだろうということですね。
○西澤委員
そういうことですね。そういう前提でこの順番で。
○西原主査
確かに,地域で実際にかかわっていらっしゃるボランティアであれ,教師であれ,そういった方々と話をしていると,やはり日本の教育文化,つまり教室で閉じられた空間で教師と学習者が対峙(たいじ)するという形を引きずっている人がとても多いと思います。そこをブレイクダウンしないとこのプログラムは始まらないと思うんですね。始まらないと言うか,その当初の目的を達成していかないんです。そこのところは非常に根強いと私は観察しています。そのためにはどのようにこのガイドブックが書かれていき,かつ研修が行わなければならないかということをよく考えて書くべきだし,また研修もされるべきだと思うのです。
○伊東委員
私も,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の順番はこれでいいかなと思います。やはり,これが標準的なカリキュラム案のメッセージを一つ,主張していくところでもあるので,そのことがやはり読者にとって顕著に見られる形にするという点ではこのままでいいのではないかと思います。
○西原主査
というような御意見が出たということで,後で事務局で少しそれを取りまとめていただきたいと思います。
先ほどから配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の「2」とか「3」とか「4」とか「5ページ」等と言っていますけれども,これに書かれている内容についてはいかがでしょうか。
実は,これは地域のニーズ把握とか状況の把握に基づいて,実際に参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」で示した内容を教室のプログラムに落としていただくための手順と言うか,例示がされているわけです。これは,ですから参考資料1「「生活者としての外国人」に対するに日本語教育の標準的なカリキュラム案について」では生活上の行為の事例を表すものとして7桁の数字がありますように,実際のカリキュラムのここに書かれているものから引いてきます。こういうことを聞きながら考えていくのですよという順序設定になっています。この部分は,このようなことでよろしいでしょうか。
着任なさったばかりですが,課長,報告書の中でカラーというのはあるのでしょうか。
○舟橋国語課長
あると思います。
○西原主査
カラーができると部数が減るとか,そういうことはありますでしょうか。
○舟橋国語課長
全部カラーというのは難しいかもしれませんが,本日の配布資料で示されているようなものが参考資料的に入ってくるというのはあると思います。
○西原主査
ところどころにカラーが入ってくるというのは可能でございますか。
○舟橋国語課長
ええ。
○西原主査
カラー例示はあるだろう,可能だということで,こういうものがカラーで入ってくるという可能性があるということを考えて,このような説明が付いていくということで配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」があるわけです。
○井上委員
配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の1ページ目についてお聞きしたいのですが,「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」と「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」が基本的には検討なんですよね。
プログラム作成とは書いてあるんだけれども,1番目は教室の目的や設置場所についての検討であって,次はプログラムの中の作成に当たっての検討ということなんですけれども,これは一緒にはできないのでしょうか。例えば,当然教室の目的があり,学習者のニーズ,リソースに基づいた教室の設置をすることが前提となって,この学習内容とか学習順序だとか時間の設定とか協力者とかというものがあると思うのですが,非常にシンプルにするのであれば,例えば,[1]ニーズ,リソースの把握,それから[2]教室の設置とプログラムの作成に当たった検討,それで[3]実施,[4]プログラムの見直しと,四つにしてしまった方が分かりやすいんじゃないかなと思います。
○西原主査
頭の中では実際にそうなんですけれども…。
○井上委員
恐らく一緒に考えるのではないでしょうか。
○西原主査
ええ。実際に「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」が日本語教育小委員会ワーキンググループの中でこの順序から抜けたり,元に戻ったりしたのはそういうことなんです。実際に,この「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」の大切さというのは,実際に,例えば予算立てをする人,それから関連の地域ですから,県の部署とか,それから国際交流団体とかと交渉をして,そもそも「こういう人たちがいるんだけれども,教室を作ろうよ。」という合意を得るとか,その段階が「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」に当たるので,むしろ,これを外してしまうとやりにくくなるんじゃないかと思います。ということで,「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」がこの位置に戻ったという経緯がございます。
○山田委員
かなり以前の議論でしたけれども,プログラムコーディネーターというのとシステムコーディネーター−実際に両方を置いているところもあるわけですけれども−こういう発想がここに入っていて,私も井上委員がおっしゃるように,配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」の「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」の「(1)日本語教室の目的をまとめる」と「(2)学習者のニーズ,地域のリソースに基づいた教室の設置」が大事だとは思うんですけれども,考える方としては分かりにくいので,「2 日本語教室の目的や設置場所等について検討」,「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」を便宜的に置いて,これが,相互作用をしながらということ,つまり「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」が決まらないと「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」も決まらないけれども,「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」も決まらないと「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」も決まらないということだと思うんです。
もちろんこれについては4ページ目に「必ずしも順番通りに設定すべきものではない。」と書いてありますけれども,この辺にも何か順番じゃないじゃなくて,これは相互作用をしながらやっていくものだというのを一言書いておいたらいいんです。
○西原主査
そうですね。ただ,これは「どうでもいい」と概要に書いてしまうと,概要の意味が全く否定されてしまうでしょう。
○山田委員
どうでもいいのではなくて,それらを有機的に関係付けていくことが大事だというように書くのがいいのではないでしょうか。
○西原主査
そのための概要ですからね。一目で見て分かるということが概要を作る意味なので,これが金科玉条になるというのは概要の意味ではないとは思うのですが…。
○山田委員
恐らく,地域で非常に苦労されている事例というのは,非常にニーズもあって,それから学習者も意欲的だけれども,場所がない,時間がないので日本語教室の設定ができないということがあると思います。そうすると,これはやはり「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」と「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」と,行きつ戻りつということが結構ありますよね。
○西原主査
ただ,「2 日本語教室の目的や設置場所等についての検討」が,それこそシステムコーディネーターとプログラムコーディネーターとすれば,システムコーディネーターの仕事ですよね。そのところが飛ばされてしまって,なし崩し的に「3 具体的な日本語教育プログラムの作成」を行うようなところに対しては,やはりこの図を作ることによって,多少防ぐことができるのかなと思います。そういう概念図だと思います。
それで,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」に戻っていただきたいと思います。そもそもの部分がとても大切ではないかということが前回,7月の終わりに開催された第29回日本語教育小委員会で御指摘いただいております。それを受けて,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」で示しているようなことをどこかに入れるということになりました。これは配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは…」のところに入らないまでも,これが入っていくんだと思います。
配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」が今回書かれるガイドブックの一部として必要だという御意見ですので,この【言語について】,【言語習得について】,こういう文言を使うかどうかは別にして,二つのカテゴリーの中で,今は項目が1から6までできていますけれども,これについてはいかがでしょうか。こういう考え方に立ってくださいというメッセージの部分だと思うのですが,御意見を頂けますでしょうか。
○佐藤委員
中身は非常によくまとまっていると思うんですが,【言語習得について】のところの[5]と[6]の文が最後「わけではない」と否定形で終わっていますよね。これを何かうまく工夫できないかと思います。
○西原主査
肯定形にするということですね。
○佐藤委員
もしも,何か配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」が表に出るのであれば,ぜひ肯定形で書いていただきたいと思います。
○西原主査
事務局が中間的に,この配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」も配布資料4「具体的な日本語教育プログラムの作成手順(案)」のような概念図にまとめてくださりかけたのですが,これは恐らく文言として展開していく方がいいのではないかということで本日の日本語教育小委員会ではそれを出しきておりません。
それで,まずこれがどこに行くかということですが,ガイドブックには配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」を含むということはよろしいでしょうか。
○尾﨑委員
まず,話し言葉と書き言葉ということについてです。やはり言語というのを両面から見ないとまずいのではないかと思います。それを項目として加えられるかどうか。
今,「社会的に十全な参加」ということでも,読むとか,多少なり書くということはもう避けようがないという状況です。
○西原主査
そうですね。参考資料1「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」の中の,4技能の丸の中にも,私は,書くがどの程度あるかなと思って数えてみたんですけれども,結構な数が入っています。しかし,話し言葉と書き言葉があるという文言にするのか,それともどういった文言にするのがよいでしょうか。
○尾﨑委員
「習得」と言うときの対象として話し言葉と書き言葉と…。
○西原主査
相互理解だのコミュニケーションだのと言ってしまうと,話すということが主たることになりかねないかなというのは懸念しますよね。
ただ,今度は「書く」ということを強調してしまうと,やはりそこに行くのかということになってしまいますよね。それをここにどの程度書き込むのかということだと思うのですが…。この6項目の中の,つまり生活する,生きるために不可欠なというときに,「話せるだけではだめだ。」ということをそこに言うかどうかという話だと思います。
○尾﨑委員
そういう形でもいいと思います。
それから,【言語について】というヘディング(heading)を考えたときに,言語というのがコミュニケーションの手段であれ,あるいは認知的に考えるのであれ,読み書きという部分は当然…。
○西原主査
と同時に,非言語,パラ言語も言語なんですよね。そういったことはここの中のメッセージには含まないといけないと思います。
○尾﨑委員
そうですね。一つの提案としては,今,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」の【言語について】で[1]から[3]となっているところに,[4]という項目を新たに入れるか,それでは目立ち過ぎるので,どこかに入れ込むかは御検討いただければと思います。
○西原主査
生物多様性ではないですけれども,言語の多様性ということについて新たに[4]を項目として立てて書くかどうかということですね。それでは,今の件につきましては少し預からせていただいてよろしいでしょうか。そして,それから2番目のポイントについてはいかがでしょうか。
○尾﨑委員
もう1点,【言語習得について】と配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」ではかなり自然習得的な,社会参加を通して学ぶとか,対話ということを強調されているんですけれども,実は読み書きのことも含めて,自分自身で頑張ってもらわないと,どうにもならないということがあります。
むしろ,下手な教室に行くよりは独習した方がましだという人もいるわけですから,習得というのを個人個人での学習も含めて考えると,むしろ,長期的に,外国の人が自分で学ぶことをサポートするようなことも含めて書いておいた方がいいんじゃないかなと思います。自律学習と盛んに言われていますけれども,そう考えると,今項目が六つになっていますが,もう一つ加えて何か書き込むかどうか,これも検討していただきたい。
○西原主査
言語習得という用語を使うこと自体に私は少し抵抗があるのですが,どうやって身に付いていくかということだとすれば,今おっしゃったようなことが関係します。日本語教師がずっと一緒にいるわけではないですし,言語のサポートはいつまでもあるわけではないですし,生活していくときには自立しなければいけないんだよということをここに書くかどうかという話ですね。
そうすると,今,[4]及び[8],[4]が入れば[8]になるのですけれども,それが入るかどうかということについて検討するようにという御意見を頂戴したということでよろしいですね。ただ,これも,書き出すときりがないものです。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び移動方法について(案)」の「1 標準的なカリキュラム案とは…」というところに,どの程度書き込むかという話ではありますが,そこに書き込むのだということを御了承いただいた。そして,項目については,詳しくする案というのが出たということでよろしいでしょうか。
(→了承。)
○西原主査
ありがとうございます。
○杉戸副主査
体裁のことなんですけれども,配布資料4「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」の1ページをどう扱うかということに関係します。配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」の頭の方にそれを入れ込むことは,少し物理的に不可能だろうということですね。
○西原主査
概念図としては不可能だけれども,内容としてはここの1項目の中のものですよね。
○杉戸副主査
そうですね。それを前提にしているのですが,二つあります。この配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」の右半分に大きくくくって「◎」で示されている項目がありますが,この部分は非常に情報量が少ないんですね。前文で書けばいいことだと思います。
それから,もう一つは,それぞれ[1]から[6]までにそれぞれ短い右向きの矢印で書いてある項目が付いています。これは,少し言葉を付けて言うと,例えば上の方にある「[1]言語はすべての人にとって生活する・生きるために不可欠なものである」と我々は考えている,こう考えるので,それを矢印で示される部分に書いてあるわけですね。そのことを,この図で,図と言うか1枚もので示すときには,それを補足しないといけないですね。
○西原主査
そうですね。1枚ものと言うよりはこれは文章でつづられていきます。
○杉戸副主査
文章で書くとすれば,そこの今の説明はしやすいと思うんです。その工夫が必要でしょう。
○西原主査
つまり,これも標準的なカリキュラム案を使っていただくための基本的な考え方の中に入るものですよね。だから,そもそも「言葉」というのはということなので,「言葉」というのはこのように習得と言うか,自分のものになっていきますということを書くところですよね。
○井上委員
配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」に戻るのですが,下の方にある「3 活用及び指導方法に関するキーワード」の上に来るものでしょうか。
○西原主査
いえ,上の方の「1 標準的なカリキュラム案とは…」というところに来るものです。
○井上委員
それを説明するということですか。
○西原主査
説明するのですが,この配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」というのはそもそも論ですよね。
○井上委員
でも,この矢印のところは,今,杉戸副主査がお話しになったように具体的なことが書いてあるんですね。
○西原主査
いや,それはカリキュラム案に書いてあることですから。その「→」の右側で標準的なカリキュラム案と結び付きます。
○井上委員
それを,もう少し概念的に話すとこういう[1]から[6]という言葉になるということですね。
○西原主査
おっしゃるとおりです。ですが,[1]から[6]の文言というのがあった方がいいんじゃないかという御指摘を先回の日本語教育小委員会で頂きました。その御意見というのはこういうことだったのでしょうかというのが,この配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」で示している[1]から[6]です。今,尾﨑委員は「[4]もありじゃないか,[8]もありじゃないか。」という御意見を下さったので,それは,そうするとガイドブックが少し分量が多くなることを覚悟の上でそこに書いていくということですね。ですが,飽くまでもこれは標準的なカリキュラム案の使い方に関連することなので,「→」の右側に来ることは重要なことです。
○井上委員
逆を言えば,矢印の方向が違うような感じもしないでもない。突き詰めて考えると,「言語というのはこういうこと,あるいは「言語習得というのはこういうこと」と説明する。
○伊東委員
井上委員がおっしゃったことですけれども,やはりこの標準的なカリキュラム案を見たときに,どういう考え方がその背景にあるかということをこの言語及び言語習得についてで示したかったのですが,流れとしては先回の日本語教育小委員会で御指摘をいただいたので作成したということになっています。その背景というものを具体的に私たちは言語及び言語習得という項目を標準的なカリキュラム案には書かなかったので,要するにそれを理念的なこととして提示したかったということがこの配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」で示されている1枚紙というように理解していただければいいかなと思います。
そして,この標準的なカリキュラム案の配列ですよね。なぜ,「能力記述」が最初に来て,一番右のほうに「文法」や「語彙(ごい)」が来ているのかということも,今,杉戸副主査がおっしゃったように,本当にさらっと書いてあるけれども,私たちは,やはり「文法が重要,語彙が重要じゃないよ」というメッセージを伝えたかったということもあって,標準的なカリキュラム案では配列も変えました。そのことをここでもう少し明示した方がいいということですよね。
○西原主査
そういうことですよね。それが,括弧右の,いかにもさらっとしているという御意見があったところですよね。これを余りさらっとではなく,もう少ししっかりと書いた方がよろしいということですね。
○伊東委員
そういう意味では「→」だけだと,少し物足りないかもしれないです。
○西原主査
いえ,これを文言にしていくので,「→」が実際には付くのではないと思います。標準的なカリキュラム案を説明するときに,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」の[1]から[6]か,[1]から[8]かの文言を使って,そもそもこの標準的なカリキュラム案というのはどうして書かれたんですかと,今おっしゃったようなことを書いておくということだと思います。
かつ,標準的なカリキュラム案の学習項目の要素の一覧の表でなぜ,左から右にこういう順序で項目が並んでいるのかということも,もう少ししっかりと書くということでしょうか。
それは実際の文言の中ではこうなっていくんだけれども,この概要,配布資料2「標準的なカリキュラム案の活用及び指導方法について(案)」をこれ以上頭を重くするととても読むのが大変になってしまうので,それは避けて,配布資料3「標準的なカリキュラム案における言語及び言語習得についての考え方について」で示されているような内容を文章として大切なメッセージとして伝えていくということでよろしゅうございますでしょうか。
(→了承。)
○山下日本語教育専門職
本日頂いた御意見を踏まえて,また日本語教育小委員会ワーキンググループで本日の資料については修正を行っていきます。
あと,具体的に配布資料2,3,4で示したようなものに沿って,カリキュラム,具体的なプログラムの例示をするということについて,御意見等あればお伺いしたいと思っています。
○西原主査
この日本語教育小委員会ワーキンググループの1回目から2回目に掛けて,特に1回目の終わりに,こうやってプログラムを作ってくださいとだけ言っているのではなくて,実はこういう学習者のプロフィールを与えられた場合には,こういうプログラムに落としていくでしょうということを例示した方がいいのではないかという意見が日本語教育小委員会ワーキンググループの中で出ました。具体的には,滞在形態というのはいろいろあり,今度は少し減ったらしいですけれども,200万人以上の方々がいます。どういう方々か見ていくと,少なくとも特別永住者についてはこのプログラムは必要なかろうと思いますし,永住者についても,もしかしたら具体的にはプロフィールとして挙げることはないだろうと思います。そうすると,定住している人たちで,実際に今日本にいる方々のうちからプログラムとして地方の公共団体が考えるときにあり得る形としては,例えば定住者の中でも,日系の中南米の方,それから日本人の配偶者の方になりますが,そういった方たちがパーセンテージとしては人口の図の中でこの方々は特別永住者,永住者を除くと多い人たちになります。かと言って,それを集団的に扱うことはプログラムの例示としては大変難しいので,Aさんの場合,Bさんの場合というように,状況設定をポイントした上で,こういう人のためにはこういうプログラムができていくでしょうとしたらどうでしょうか。
次に多いのは,実は留学生及び技術研修生等が並ぶのですが,実際に生活している人だと,短期滞在ではあるけれども技術研修の方々というのが第三のカテゴリーとして入ってきます。そうすると,日系中南米のAさん,国際結婚のBさん,そして技術研修をしているCさんというようなことで「実際のプログラムというのをこの手順に従ってやると,こうなりますよ」というのを例示するという案が出ています。それはやはりやった方がよろしいでしょうか。
やはり,ガイドブックなので「これを使って,こう書くと,この人についてはこういうプログラムになりますよね。」と言った方が親切じゃないかと思います。ただ,そのことによって,メリット,デメリットの両方あるような気がします。デメリットの方は「そうか」と言って,すべての人についてAさんでやってしまうということです。そういうことが危惧(きぐ)されます。つまり,「地域,地域でよく考えてやってくださいよ」と言い続けているにもかかわらず,「Aさんの例」というのが出てくると「そうか」と言って,それが何か定石のようになってしまうというおそれはあります。ただ,そのサンプルを示すことで,「ああ,こうなんだ」と言ってプログラムを読み返してくださると言うか,このガイドブックを読み返してくださるというメリットもあるのではないかと思います。
日本語教育小委員会ワーキンググループとしましては,やはり,たった三つかもしれないですが,この標準的なカリキュラム案の中に実際の教室活動の案が例示されており,そういう役割を負うものがあってもいいんじゃないかという結論に達しました。
○佐藤委員
できれば作っていただければ有り難いと思います。作ってしまうデメリットはあっても,メリットとして現場がプログラムの見直しをして,それで実践的利用が高まっていくということがありますから。なぜ合わないのかということを考えればいいわけです。最初からうまくいくというのはあり得ないですね。是非,それはなぜそこがうまくいかなかったのかというところを判断して,さらに再構成する力ということで,深まっていくということですから。是非そこは可能であれば,作っていただければと思います。
○尾﨑委員
ぜひ,お願いしたいのですけれども,それを実際に検討して作ってくださるのはどなたたちなんでしょうか。
○西原主査
日本語教育小委員会ワーキンググループ及び協力者です。その協力者の中には,実際に生活している外国籍の方も入っていた方がいいのではないかという意見が出ていたり,ただ,実際に書いていただくのは難しいかもしれないので,参考として御意見を聞いて,それを反映できるような協力者にお願いしようというのが一番堅い線ではないかと思っております。
○尾﨑委員
更に希望を言わせていただくと,これが出て,来年度,実際に幾つかの地域でやってみてもらうというのは次のプロセスとしては当然あるでしょう。そのことも含めて,今年も三つぐらい,「例えば」というのがあると非常に有り難いです。
○西原主査
そうですよね。それから,今年度の中でも,そういうことのできる協力者,つまり自分でフィールドを持っている人が来てくれれば一番いいかなと思います。
○尾﨑委員
是非入れていただきたいと思います。
○西原主査
ただ,年度半ばに時間をこれだけ使う人,集中的に使える人をそういう条件で探すというのは至難の業でもありますが,事務局が最大限の努力をするということでお願いします。
それから8月27日に開催されます平成22年度文化庁日本語教育大会で主査である私が,今までの審議経過について説明をするセッションがございます。それから伊東委員にコーディネーターになっていただいて,実際の地域の職員の方及び地域で日本語教育を行っている方に御検討をいただき,学習院大学教授の金田智子氏にも来ていただいて,これについての御意見を伺うというセッションがその後に続くと思いますので,そこで頂いた御意見も実はここに反映されるであろうということです。
では,これで本日の日本語教育小委員会を終了とさせていただきます。ありがとうございました。
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