第156回(2009年6月29日)宗教法人審議会議事録

  • ○ 日時 平成21年6月29日(月)
  • ○ 場所 文部科学省東館16階特別会議室
  • ○ 議題
    1. 開会
    2. 議題
      1. (1)宗教法人審議会会長の選出
      2. (2)最近の宗務行政について
      3. (3)その他
    3. 閉会
  • ○ 出席者
    【委員】
    飯野委員 井田委員 打田委員 大石委員 巫部委員 黒住委員 氣多委員 小林委員 斎藤委員 佐藤(典)委員 島薗委員 杉谷委員 滝口委員 深澤委員 深田委員 山岸委員 山北委員
    【文化庁】
    清木文化部長 袖山宗務課長 その他関係者

10:29 開会


1.開会

○宗務課長
 それでは,定刻より若干早いんでございますけれども,皆さんおそろいでございますので,ただいまから第156回宗教法人審議会を開会させていただきます。
 第29期の宗教法人審議会は,本日初会合ということでございますので会長が空席でございますので,後ほど会長が選出されますまでの間,私,宗務課長の袖山が便宜上進行役を務めさせていただきたいと存じます。
 まず,開会に当たりまして,青木文化庁長官から一言ごあいさつを申し上げます。
○文化庁長官
 皆様,こんにちは。青木でございます。第156回宗教法人審議会の開催に当たりまして,一言ごあいさつ申し上げます。
 委員の先生方におかれましては,第29期宗教法人審議会委員にご就任いただきまして,また本日は大変お忙しい中ご出席をいただきまして,まことにありがとうございます。
 この宗教法人審議会は,ご案内のとおり,文部科学大臣の諮問機関として宗教法人法に定められた事項を審議するとともに,所轄庁が留意すべき事項に関し意見を述べることを任務としております。これは宗務行政の実施に当たりまして,宗教法人の特性等を考慮し,憲法に定める信教の自由の保障を担保する観点から設けられているものでございまして,宗教法人法の柱の一つをなす大変重要な役割を担う審議会でございます。
 今日,社会の変化や価値観の多様化が進む中で,宗教に寄せられます国民の関心や期待も大変高まっていると考えられます。また,平成18年6月には,公益法人制度改革関連三法が公布され,昨年12月1日から新たな制度が施行されております。この制度改革は宗教法人を直接対象としたものではございませんが,公益法人全体のあり方につきましても国民の関心が高まっているということが言えるかと思います。
 このような状況の中,文化庁では,委員の皆様方のそれぞれのお立場からの貴重なご意見,ご助言を賜りまして,宗教法人制度や宗務行政の適性かつ公正な運営実施を期してまいりたいと考えておりますので何とぞよろしくご指導くださるようお願い申し上げます。
 本日は第29期の最初の会議でありますので,まず会長のご選出をお願いし,その後,最近の宗務行政の状況等につきまして事務局からご報告させていただきたいと考えております。
 以上,簡単ではございますが,開会のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございます。
○宗務課長
 続きまして,委員の先生方をご紹介させていただきます。
 (委員自己紹介)
 次に,本日の配布資料を確認させていただきます。
 (配布資料の確認)
 続きまして,定足数の確認をいたします。宗教法人審議会規則第6条によりまして,総委員の5分の3以上の出席がなければ議事を開き議決することはできないとされておりますが,本日20名の総委員中17名のご出席でございますので,定足数を充足していることを確認させていただきます。

2.議事

 続きまして,議事に入らせていただきます。
 まず,宗教法人審議会会長の選出を行いたいと存じます。宗教法人法第74条第2項に,会長は委員が互選した者について文部科学大臣が任命するというふうにございますので,互選をお願いいたしたいと存じます。互選の方法でございますが,これまでの例から申しますと,学識経験者の委員の中から推薦という形で選出をされておりますが,どなたかご推薦をいただける方はいらっしゃらないでしょうか。
 学識経験者の委員から選出されているとのご説明でございますし,それも踏まえますと,当審議会の委員及び会長として本当に長いご経験をお持ちであり,幅広い研究活動をされている京都大学公共政策大学院長の大石委員にお願いしてはいかがでございましょうか。
 (拍手)
○宗務課長
 ただいま大石委員のご推薦がございましたけれども,これについて何かご発言はありますでしょうか。
 ただいま○○委員からご推薦のありました大石委員についてでございますが,会長をお願いするということについては私も同感でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○宗務課長
 それでは,今お二方のご意見がございましたけれども,大石委員を会長にお願いしてはということでございますが,もしご異議がなければ大石委員が互選されたものとしてよろしいでしょうか。
 (拍手)
○宗務課長
 それでは大石委員に会長をお願いいたしたいと存じます。
 大石委員,会長席のほうにお移りいただきたいと存じます。
 (大石委員,会長席へ移動)
○宗務課長
 それでは,一言ごあいさつをお願いいたします。
○会長
 座ったままで失礼いたします。
 ただいま会長にご推挙いただきました大石でございます。会長の責務を全うできますよう努めますので,どうぞ皆様方のご協力を引き続きよろしくお願いしたいと存じます。
 改めて申すまでもありませんが,この審議会は文部科学大臣の諮問機関として宗務行政の適正を期するために設けられているものでございます。在任中職責の遺憾なきを遂行したいと存じますので,どうぞよろしくお願い申し上げます。
○宗務課長
 では,以後の進行を会長にお願いしたいと存じます。
 大石先生,よろしくお願いいたします。
○会長
 それでは,私のほうで議事進行をいたします。
 議題(1)が終わりましたので,議題(2)に移りたいと思います。
 本日は第29期宗教法人審議会の初めての会合でございまして,新任の委員もいらっしゃいますので,最初に宗教法人審議会の所掌事務等につきまして,事務局から説明をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○宗務課長
 それでは,お手元の資料2をごらんいただきたいと存じます。多くの委員が再任の委員でいらっしゃいますけれども,新たに選任されました委員もいらっしゃいますので,改めまして宗教法人審議会の所掌事務等につきましてご説明を申し上げます。
 お手元の資料2,1枚目でございますが,宗教法人法の抜粋を記載してございます。宗教法人審議会はこの宗教法人法に位置づけられているものでございまして,第71条第2項にございますように,この宗教法人法の規定によりまして,その権限に属せられた事項を処理することとされているものでございます。
 1枚おめくりいただきまして,宗教法人審議会の規則でございます。
 この中で,先ほどの定足数でも申し上げましたように,第6条にございますように,この会議の定足数は総委員の5分の3以上というふうに定められているところでございます。
 続きまして,[3]の資料でございます。これは宗教法人法の規定によりまして,宗教法人審議会の意見を聞かなければならないというふうにされている事項を一覧にしたものでございます。
 若干ご説明を申し上げますと,まず1番でございますが,所轄庁たる文部科学大臣による規則等の不認証の決定ということでございます。ご承知のように,宗教法人審議会におきましては,その所轄庁といたしまして,複数の都道府県にまたがります活動をしております宗教法人,もしくは包括宗教法人,いわゆる教派,教団等でございますが,これにつきましては文部科学大臣が所轄することになり,それぞれの都道府県の域内において活動する宗教法人につきましては,それぞれの都道府県が所轄することとされておるところでございますが,このうち文部科学大臣が所轄する法人に係る規則について,不認証を行う際には宗教法人審議会の意見を聞かなければならないこととされているところでございます。これが1番でございます。
 それから,2番でございますが,所轄庁による報告徴収・質問ということでございまして,これは国,それから都道府県にかかわりませず,所轄庁が宗教法人法に定められました報告徴収・質問を行う際には,宗教法人審議会の意見を聞かなければならないこととされているところでございます。この権限は平成7年の宗教法人法改正によりまして新たに加えられた規定でございまして,非常に限られた場合でございますけれども,その中に書いてございますように,公益事業以外の事業の停止命令,認証の取消し,解散命令の請求の事由に該当する疑いがあるような場合には,宗教法人に報告を求め,質問することができるとされておるところでございまして,これに際し,宗教法人審議会の意見を聴取するとされているところでございます。
 それから,3番目でございますが,所轄庁による公益事業以外の事業の停止命令,これを行うときには審議会の意見を聞かなければならないこととされております。
 それから,4番でございます。所轄庁による規則等の認証の取り消しでございます。これは任意に取り消すということではございませんで,宗教法人が発足して1年以内の期限におきまして,宗教法人の実体がないということが確認されたときのみにこの規則の認証の取り消しができるわけでございますが,その際に意見を聞かなければならないとされているところでございます。
 それから,5番でございますけれども,いわゆる不服申立てに対する文部科学大臣の却下以外の裁決または決定ということでございまして,多くある事例といたしましては,都道府県が所轄する宗教法人に対する都道府県の処分に対する審査請求といったもの,こういったものが多くあるわけでございますけれども,これについて文部科学大臣が裁決するに当たっては宗教法人審議会の意見を聞かなければならないというふうにされているところでございます。
 それから,6番でございます。収支計算書の作成を免除する基準となる収入額を定めるときとなっておりまして,これは宗教法人法の平成7年の改正に当たりまして,この収支計算書の作成というものが義務づけられたわけでございますけれども,その際,一定の会計規模に満たない場合には,この作成の免除ができるというようなことになっているわけでございまして,これについて,当時,議論をいただきまして,定めたところでございまして,これについては,大きな社会的な情勢の変化等があった場合には,必要に応じてこういったものを見直すというような必要が生じたときに意見をお聞きしなければならないということでございます。今現在におきましてここの部分について議論をいただくという予定はないところでございます。
 以上が宗教法人審議会の意見を聞かなければならないとされている事項でございますが,その関係を簡単な概念図で示したのが,次の4ページでございます。
 それから,5ページをごらんいただきたいと存じますが,宗教法人審議会の議事等に関する申し合わせでございます。この内容をご確認いただきたいと存じますが,まず1番でございますが,本審議会の議事録については,行政処分及び不服審査に係る審議を除きまして,原則として公開ということでございます。
 それから,行政処分及び不服審査に係る審議については,原則として議事要旨を公開ということでございます。
 また,会議そのものについては,委員の自由闊達な討議を確保し,信教の自由に配慮する観点から非公開ということで,そのような取り扱いにされているところでございます。
 それから,6ページ目でございますけれども,仮に不服申し立て等の案件があった場合における議論の流れでございますが,不服申し立てにつきましては,基本的に不服申し立てがあってから4カ月以内に処理をするというふうになっているところでございます。ということで,審査請求や異議申し立て等の不服申し立てがあった場合には,速やかに宗教法人審議会を開催いたしまして諮問をさせていただきます。通常の場合ですと,そこで小委員会を立てさせていただきまして,小委員会で議論をいたしまして,4カ月以内に小委員会の議論をもとに審議会としての答申をいただくというような流れになっているところでございます。
 以上でございます。
○会長
 ありがとうございました。
 ただいま事務局から詳しく説明をしていただきましたが,何かご意見,ご質問等ありましたらお願いしたいと存じます。
 ちょっとわかりにくいのは,私どもは割合なれているんですが,資料2の3ページのところで,不服申し立てが出てくるとかなり慎重に審議をするわけですが,却下以外の裁決または決定というところが少しわかりにくいんじゃないでしょうかね。そこをちょっと説明していただいたほうが。どうして却下以外のという話になるかというのを。
○宗務課長
 いわゆる形式的という言い方はちょっとあれかもしれませんけれども,こういった審査に当たっては,そもそも審議案件に該当しないといいますか,形式的にその案件に該当しないというような場合もあるわけでございますので,そのような場合においてまで議論いただく必要がないということで,却下以外のという形になっておるところでございまして,実質的に信教の自由等に配慮をして,十分な議論をいただいた上で裁決を下さなければいけないというようなものについては,必ず宗教法人審議会の意見を聞かなければいけないということでございまして,形式的なものにまでご意見をいただく必要はないということで,このような形になっているというものでございます。
○会長
 ありがとうございます。
 そういう趣旨でございます。そのほかはいかがでしょうか。どうぞ。
 資料2の2ページの第6条の5分の3以上の出席というのは,これは委任状も含めてなんですか。それとも実際の出席なんですか。
○宗務課長
 委任状という形式は本会議においては特にとってはおりませんので,実ご出席者数ということでやらせていただいております。
○会長
 そうですね,委任状の方式は全然とっておりません。この5分の3というのはなかなか高いハードルでございまして,この場でなんですけれども,今後よろしくどうぞご協力方,お願いしたいと存じます。  ほかはいかがでしょうか。
 すみません,もう一つ。
○会長
 どうぞ。
 こちらに来る前に,教派神道のほうの以前出た方からも聞かれたというか,確認ができたらというふうに言われたんですけれども,資料2の1ページの中で,いわゆる委員の資格とかそういうことについて今見せてもらったんですけれども,これについては年齢制限とか,男女の比率とかいうことについては,実際にはここに記入はされてなくて,そういった方向でお願いしたいという感じでいいんですか。70歳以下とかいうのも聞いてきましたけれども。
○宗務課長
 これは宗教法人審議会ということではございませんで,国全体の審議会委員の任命に当たる留意事項ということで,いわば省庁間の申し合わせのような,政府としての申し合わせのような形で運用されているものがございまして,その中で,一定程度以上の女性委員の割合を確保することでございますとか,それから年齢については基本的には70歳以下の方にするというような形で運用されておりますが,これはあくまで原則でございますので,例外的な取り扱いももちろんございます。
○会長
 ですから,運用上の問題として随分配慮はされているということでございますね。
 ほかによろしいですか。
 それでは,発言がないようですので,議題(2)につきましてはこれで終了したものといたします。
 次に,議題(3)に移りたいと思います。最近の宗務行政についてということでありまして,これもまた事務局のほうから報告がございます。
○宗務課長
 先ほど申しましたように,本審議会における審議事項につきましては,具体的な事例があった場合には案件になるわけでございますが,今現在そのようなご審議をいただく案件がございませんので,最近の宗務行政の状況につきまして簡単にご説明を申し上げます。
 まず,お手元の資料3から9まででございます。ちょっと量が多くなりますけれども,一括してご説明を申し上げます。
 まず,資料3でございます。資料3でございますけれども,これは近年におきまして本審議会においてご議論いただきました答申案件についてのその後の経過等についてご説明をするものでございます。
 1枚おめくりいただきまして,宗教法人「氣多神社」,これは石川県の所轄の法人でございますが,この規則変更認証処分に係る案件についてでございます。これについては平成18年を中心といたしましてご議論をいただいたところでございます。
 この事案の概要でございますが,宗教法人「神社本庁」の被包括宗教法人でございます宗教法人「氣多神社」が,被包括関係の廃止を内容とする規則変更の認証を申請いたしまして,これを石川県知事が認証いたしましたけれども,「神社本庁」からその処分の取り消しを求めまして審査請求がなされたところでございます。
 この審査請求に対しまして,文部科学大臣といたしましては,この審議会でご議論いただいた後に,変更後の規則が宗教法人法第12条第1項第8号において必要的規則記載事項とされております財産処分に関する規定が全部削除されているということを理由といたしまして,この石川県知事の認証処分を取り消す旨の裁決を行ったところでございます。これに対しまして,「氣多神社」は,文部科学大臣の裁決が違法であるということで,国を被告とした裁決取消請求訴訟を提起しているところでございまして,この裁判については現在も係属中でございます。
 この裁判につきましては平成18年11月に訴訟が提起されてございます,一番上にございますが。平成19年9月にこれについての東京地裁の判決がございまして,これについて東京地裁はいわゆるこの訴訟を認容するということで,国の裁決を取り消すという判決が出たところでございます。これに対して,被告である国のほうといたしましては控訴いたしまして,平成20年9月10日に高裁判決が出まして,第一審地方裁判所の判決を取り消すということで,国側勝訴という判決が出たところでございます。
 その主な内容でございます。3番のところでございますけれども,宗教法人法の目的にかんがみますと,法に記載されております基本財産や宝物その他の財産の設定,管理及び処分に係る事項の規定は,宗教法人においては本質的事項に係る不可欠の規定というべきであって,規則において一義的に明示されることが求められている事項であるという判断。
 それから,被控訴人らは,裁決行政庁は一部についてのみ処分行政庁の処分を取り消せば足りると主張するが,それは許されないというべきであるし,本件認証の取り消しをする前にその補正を促す措置をとるべき義務があるとは認めることができない等々の理由によりまして,原判決を取り消すという判断がなされているところでございます。これに対して,「氣多神社」側は上告をしておりまして,現在最高裁のほうで係属しているところでございます。
 続きまして3ページをごらんください。宗教法人「冠纓神社」についての規則変更の不認証決定に係る案件でございます。これは香川県の所轄の法人でございますけれども,事案の概要といたしましては,宗教法人「神社本庁」の被包括宗教法人であります「冠纓神社」について,被包括関係の廃止を内容とする規則変更の認証申請をしたところ,香川県知事が,この規則変更が,いわゆる変更の手続が規定に従ってなされているということが確認できないということをもちまして,不認証といたしたところでございます。
 これに対して「冠纓神社」のほうから不認証の処分取り消しを求める審査請求がございましたけれども,宗教法人審議会に諮問の上,責任役員の選任,それから責任役員を選考する総代会を構成する総代の選任,これについて適正に行われたことが確認できないということをもちまして,この規則変更が規則で定める適正な手続によって行われたものであることが確認できないということで,この香川県の処分が適法なものであるということで,請求を棄却する旨の裁決をいたしたところでございます。これに対して神社側は,不認証処分が違法であるということで,これは香川県を被告とした処分取消請求訴訟を提起しているところでございまして,これについては現在,高松地裁において係属中ということでございます。
 以上が資料3でございます。
 続きまして,資料4の不活動宗教法人対策についてご説明を申し上げます。
 この不活動宗教法人対策は,現在,宗務行政の中で最も力を入れて取り組んでいる内容についてでございます。宗教法人の中には,例えば代表役員の不存在でございますとか,礼拝施設等の滅失により不活動であると推定されるような法人がございます。これらについて,例えば宗教法人の税制優遇といったものに着目した,いわゆる法人格の売買あるいは売買した後の脱税といったような不正行為の温床になるおそれがあるということで,この整理が急務になっているところでございます。後ほどご説明いたしますけれども,最近報道等で問題になった宗教法人の事例等の多くもこの不活動宗教法人を悪用したものというふうに考えられるところでございます。
 我が国の宗教法人の総数は今現在18万3,000弱ございますけれども,このうち2番にございますように,不活動宗教法人の数は全国で約5,000弱というふうに推定をしているところでございます。この不活動宗教法人の定義でございますけれども,宗教法人法第81条がございまして,ここで裁判所による解散命令という規定がございます。裁判所による解散命令というものができる要件の中に宗教団体が不活動状態にあることというのがございまして,それは具体的には1年以上にわたって宗教活動をしていない,あるいは1年以上にわたって代表役員がいない,あるいは礼拝施設が消滅してから2年以上にわたってその施設を備えない,こういった要件にある場合には裁判所は宗教法人に対して解散命令をすることができるわけでございますが,このような要件を踏まえまして,何らかの対策を講じなければいけない不活動状態にあるというふうに推定いたしまして,所轄庁が不活動であるというふうに判断している法人を不活動宗教法人ということでカウントしてございます。
 ただし,この不活動状態というのもなかなか実際には認定が難しいところもございますし,宗教法人の状況にも逐一変化が生じてくると。また,なかなか宗教法人の実態というものがつかみにくいというような実情もございまして,それぞれの所轄庁において実態を把握すべく努力をしているところでございますけれども,状況の変化等によって所轄庁の判断も変化するところがございます。したがいまして,この5,000弱という数字はあくまで目安の数字というふうにお考えいただきたいと存じます。
 いろいろ対策を,きょう述べます対策を講じることによって,着実に対策を講じて措置をしているところでございますけれども,一方で,高齢化でございますとか,社会の変化というようなことで,後継者難というようなことによりまして,新たな不活動状態というようなものも生じてきているというような状況もございますので,なかなかこの数という部分については,正確な数というものを申し上げるのは難しい状況であるということについてご理解いただきたいと存じます。
 この不活動宗教法人対策として,現在,文化庁として取り組んでいる内容について若干ご説明いたします。まず,大きく分けますと,都道府県に対する,所轄庁に対する取り組み,それから包括宗教法人に対する取り組みというのがあるわけでございますが,都道府県向けといたしましては毎年度,不活動宗教法人対策会議の開催をしてございまして,20年度は5会場,毎年5会場ほどでこの会議を開催させていただいておりまして,さまざまな事例研究等を通しまして協議をいたしまして,不活動宗教法人対策の推進に役立てているところでございます。それから不活動宗教法人対策マニュアル,それから不活動宗教法人対策事例集といったようなものを作成いたしまして参考に供しているところでございます。本日お手元に幾つか資料をお配りしてございますけれども,この分厚い黄色っぽい表紙の,これが都道府県に対する事例集でございます。それからこちらが都道府県に対するマニュアルというものでございます。
 それから,包括宗教法人向けの取り組みといたしましては,まず平成17年度に文書による協力依頼をいたしまして,平成18年度には包括宗教法人に対するヒアリング等を実施いたしました。また,平成18年度から包括宗教法人を対象といたしました不活動宗教法人対策会議も実施させていただいておりまして,20年度は4カ所で実施をしてございます。ここでは不活動宗教法人の現状やその対策の必要性等々をご説明いたしているところでございます。それから,包括宗教法人向けの手引書,さらに事例集等を作成して配布をいたしているところでございます。手引書はこちらの青い表紙のこちらでございまして,それから事例集は,これは一番新しく,今年の3月につくったものでございますけれども,こちらが包括宗教法人向けの事例集でございます。
 このような取り組みを通じまして不活動宗教法人対策を進めているところでございますが,具体的にどのように不活動宗教法人対策を進めてまいるかということでございますけれども,それを4番に書かせていただいております。
 不活動宗教法人対策を進めるに当たって所轄庁として留意していることでございますけれども,憲法に保障されている信教の自由の観点から,宗教法人法におきまして,所轄庁は宗教法人に対しまして一般的な調査権あるいは監督命令権を有しておりません。したがいまして,調査等をするに当たりましては,こういった点を踏まえまして慎重な取り組みが必要であるということを各所轄庁は留意の上,対策を進めているところでございます。
 具体的には,どのような段階を経ていくかと言いますと,まずはやはり実態を十分に把握していくということでございまして,これは例えば宗教法人のほうから提出されております書類を精査するといったことでございますとか,あるいは関係者の任意による聴取というようなこと等を通じまして実態の把握に努めるところでございます。それで,実態を把握した上で不活動状態にあるといった場合にはその対策を進めていくわけでございますけれども,具体的な対策としては大きく分けますと4つの対策があるわけでございます。
 1つは,活動再開ということでございまして,法人として宗教活動を維持・存続させる意思はあるんでございますけれども,例えば役員を欠いているというようなことで活動が停滞をしているというような場合もあるわけでございますけれども,このような場合に規則にのっとって適切な手続によりまして役員を補充するなどいたしまして,速やかに活動を再開するというようなことによりまして,不活動状態を解消するということもあるわけでございます。こういった活動再開に当たりましては,特に被包括宗教法人におきましては包括宗教法人の協力といったものが不可欠になってくるわけでございます。
 それから2番といたしましては,吸収合併という方策がございます。これは役員がそろっているというような状況にあることが前提であるわけでございますけれども,非常に規模が小さくなってしまって,信者の数が減ってきてはおりますけれども宗教活動は継続したいというような場合に,例えば近隣で同様の活動をしている宗教法人がございましたら,そういった法人と合併をして宗教活動をしていくというようなことが考えられるわけでございまして,これも一つの方策としてあるわけでございます。
 それから,3つ目といたしましては,任意解散ということでございまして,実際には規則上の役員等はいらっしゃるわけですけれども宗教活動を再開する意思がないというような場合には,任意に解散をするということで,規則にのっとりまして手続を経た上で解散を行うというような方策もあるわけでございます。
 4番目といたしましては,解散命令申立てということでございまして,これは規則にのっとった適法な手続ができないというような場合においては,所轄庁において裁判所に対する解散命令というものを請求いたしまして,裁判所による解散命令というもので解散をさせるということでございます。これは言ってみれば上記の対策がとれないときの最終的な手段ということになるわけでございますけれども,こういった方策を講じまして不活動宗教法人の解消というものに努めていくということでございますが,いずれにいたしましても所轄庁あるいは包括宗教法人の連携といったようなものが重要でございますので,こういった観点に立ちまして対策を進めているところでございます。
 続きまして,資料5でございます。宗教法人の書類提出状況というふうにございますけれども,これについてでございますけれども,これはご承知と思いますけれども,平成7年の宗教法人法の改正におきまして新たに宗教法人の所轄庁に対する書類提出制度というものが設けられまして,そもそも宗教法人において事務所に備えつけなければいけない書類のうちの一部を所轄庁に提出するところとされたところでございます。
 この制度ができまして10年以上たったわけですけれども,次第に定着してきたというふうに考えているところでございまして,提出率についても向上をしてきてまいっているところでございますが,ほぼ一段落と言ったら変かもしれませんけれども,制度としては定着したと。逆にこれまでずっと伸びてきた数字についてはほぼ頭打ちというような状況にもあるのではないかというふうに感じております。
 文部科学大臣所轄のものについてでございますけれども,上にございますが,提出率については97%でございます。それから都道府県知事についてでございますけれども,提出率が92.6%ということでございます。その前年が都道府県については94%であったわけでございますので,若干落ちているということでございます。制度としては90%以上の提出率でございますので,定着しているというふうに考えておりますけれども,先ほども申しましたように,若干頭打ちの状況になってきておりますので,所轄庁といたしましては宗教法人に対する理解を求めまして,こういった制度が着実に遂行できるように今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
 なお,この提出書類が提出なされない場合には,最終的には過料というような罰が講じられるわけでございますけれども,これについては平成19年度の過料件数は625件というふうになっているところでございます。以上が資料5についてでございます。
 続きまして,資料6でございます。資料6でございますけれども,情報公開に対する対応状況というふうに書いてございます。宗教法人に関しましては,資料5で申し上げました宗教法人からの提出書類等々に関しまして情報公開請求等があるわけでございまして,こういった情報公開に対しての対応状況というものを整理したものでございます。これはあくまでも文化庁といいますか,文部科学省としての対応状況を整理したものでございまして,平成13年に情報公開法が制定されましてから平成20年度までの累計でございます。
 表の1が,これは宗教法人に関連する決定件数でございます。開示をしていますほとんどのものがいわゆる規則に関するものでございまして,それ以外のものについてはほとんど開示をしてございません。といいますのは,この宗教法人に関する情報公開への対応といたしましては,基本的には信教の自由というものに配慮をする観点から,いわゆる公知の事実のみ開示をするというような取り扱いをさせていただいているところでございます。公知の事実というのは,具体的には規則及び登記事項ということでございまして,その内容に係るものが提出書類の中にある場合のみ開示をするというような取り扱いにさせていただいておるところでございます。したがいまして,ほとんどの開示内容が規則に関するものであるということでございます。
 それから,不開示の件数については全部で13件というふうになっているわけでございますが,これは正式に開示要求があったものに対する不開示の決定ということでございまして,実際には事前問い合わせというような形で,どういったものが開示できるのかというような問い合わせというものはたくさんございます。そこで我々としての情報公開の方針等をお伝えいたしますと,その場合には開示請求そのものがなされないというようなことでもってこのような件数になっていうところでございます。
 なお,表2でございますけれども,これは文部科学省,文化庁全体としての決定件数でございます。特に文化庁関係で見ますと全体が440件,そのうちの139件が宗教法人関係ということでございますので,非常に文化庁関係の中では宗教法人に係るものが多く占めているということがこの表からご理解いただけるのではないかというふうに考えているところでございます。以上が資料6についてでございます。
 続きまして,資料7でございます。宗教法人制度の運用等に関する調査研究でございまして,この調査研究についてでございますけれども,そこにございます目的にございますように,宗務行政を取り巻く社会情勢の変化等を踏まえまして,宗教法人制度の運用に関する諸課題及びその他関連する事項について調査研究を行うということで開始されたものでございます。これはあくまでも既存の宗教法人制度をどのように適正に運用していくかという観点からいろいろとご議論をいただいているものでございまして,議論の開始当初におきましてはいわゆる,後ほどご説明をいたしますが,公益法人制度改革等の動きをにらみまして,どのような対応をしていくかというようなことについてもご議論をいただいたところでございますが,これについては政府として一定の決着を見ましたので,今現在は各宗教団体あるいは都道府県等からのヒアリング等を行いまして,これを踏まえまして,宗教法人制度の運用等に係る問題点,課題の抽出等をいただいているところでございます。
 2枚目がこの運用に関する調査研究協力者でございまして,大石会長はこちらのほうの調査研究協力者会議におきましても座長を務めていただいているところでございます。
 3ページが平成20年度における会議の開催状況でございまして,宗教団体からのヒアリング,それから都道府県からのヒアリング等を実施させていただきました。今年度もこの会議を引き続いて開催する予定でございまして,こういったヒアリングの結果等を踏まえまして,さらに議論を深めていただきたいというふうに考えているところでございます。
 続きまして,資料8でございます。宗教法人の行う事業に関する調査についてでございます。この調査は,大きな枠組みでいいますと,先ほどの資料7にございます宗教法人制度の運用等に関する調査研究の一貫として実施をしているものでございまして,ちょっと先に申し上げますが,中段にございます調査実施方法というところにございますように,この調査協力者会議のもとにワーキンググループを設置いたしまして,具体的にはこのワーキンググループを中心にご議論をいただいているところでございます。
 目的といたしましては,宗教法人が行っている公益事業,それからその他の事業,収益事業等についてでございますが,こういった内容の実情を把握するということでございまして,実はこの調査を行うのは3回目でございます。おおむね20年に1回という間隔で実施してございまして,前回の調査が平成元年から2年にかけまして実施をしてございますが,それから20年たちまして,社会の変化等々がございまして,宗教法人の行う事業等の概要にも変化が生じているのではないかということで調査を実施しているところでございます。
 平成20年度,それから本年度,21年度の2回にわたりましてこの調査を実施してございます。具体的には,調査対象法人,2番目にございます[1]から[3]の法人に対しまして調査票を郵送いたしまして,この調査票を回収いたしまして,集計,分析をするというような形になってございます。20年度にこの調査票の回収を行いまして,現在この集計,それから分析を進めているところでございます。この分析が終わりましたら,分析結果につきましてワーキンググループ等でご議論をいただきまして,その後,今年度につきましては実情聴取調査ということで,具体的に出向きましていろいろお話を聞くというようなことをやってまいりたいというふうに考えております。郵送による調査,それから実情調査,この2つを合わせまして最終的な調査報告書というような形に取りまとめたいというふうに考えているところでございまして,最終的には調査協力者会議のほうでご議論をいただきまして,結果をおまとめいただきたいというふうに考えているところでございます。以上が資料8でございます。
 最後,資料9でございます。海外の宗教事業に関する調査についてでございます。この調査についてもかなり長い期間実施をしてきてございまして,おおむね4カ年をサイクルといたしまして調査をするというような形で実施をしております。今期の調査につきましては昨年度から調査を開始いたしまして,調査対象国はスウェーデン,スペイン,ロシア,カナダ,この4カ国を対象として実施をすることとしております。初年度,昨年度につきましては予備調査というような形で,いわゆるシンクタンクのほうに予備調査をお願いいたしました。本年度は予備調査の結果を踏まえまして,そこにございます調査協力者の方々に具体的に現地に出向いていただきまして,さまざまな調査をしていただきたいというふうに考えているところでございます。以上が資料9でございます。
 大変雑駁でございましたけれども,私からの説明は以上でございます。
○大石会長
 ありがとうございました。
 ただいま事務局から大変詳しいご報告をいただきました。ご質問,ご意見等を伺いたいのでありますが,この資料3から9までですとかなり大変な分量になりますので,便宜,資料3から6までをひとまず区切りといたしまして,その間の資料の関係で何かご不明な点がありましたらまず出していただきたいと思います。答申案件の経過についてという資料3から情報公開に対する対応状況という資料6までを,ひとまずはご質問等の対象にしたいと存じますが,いかがでしょうか。
 はい,どうぞ。
○斎藤委員
 斎藤でございます。
 ただいまご説明いただいた中で,資料4でございますけれども,不活動宗教法人の対策について,この中のご説明の最初の2行目のところでございますか。「いわゆる法人格の売買の対象となるなど」と,このようなご説明があるわけでございますけれども,宗教法人法上は宗教法人の法人格は,これは売買の対象にはなり得ないというふうに考えますが,この点いかがでございますでしょうか。
 それと連動いたしますけれども,ここで言わんとしているのは,いわゆる不正な手続における宗教法人の責任役員,代表役員の変更と,それに伴って何らかの形での金銭の移動があったということであろうかと思いますが,果たして全部不正な手続と金銭の移動があるのかどうか,この辺も確認をされているのかどうか,その辺をお尋ねいたしたいと思います。と申しますのは,金銭の移動が必ずしもなされない場合でも,責任役員,代表役員の不正な変更手続,こうしたことも中にはあるんだと,このようにもお聞きしております,ということもございます。
 続けて申し上げますと,いわゆるこの宗教法人の法人格の売買,こういう言葉が何か一人歩きをしているようでございます。宗教法人法の趣旨をかんがみますと,法人格というのは売買の対象とはならない,なり得ないということを考えますと,何らかの形で,この「法人格の売買の対象」という表現は,これは検討をしていただいたほうがよいのではないかと思います。大体長くなりますけれども,例えば不正な手続による宗教法人格の利用と,宗教法人法の趣旨を逸脱した法人運営,こういうことになろうかと思いますけれども,この辺についてのご見解を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○大石会長
 ありがとうございます。
 3点ほどご質問がありました。1つは,売買の対象とはならないのではないかという対象の問題です。それから,金銭授受等の問題もあります。それから3番目には,文字通りその表現の問題を問われましたが,その点ちょっとお答え願いたいと思います。
○宗務課長
 斎藤委員ご指摘のとおり,宗教法人法上,この宗教法人格というものの売買というものは全く予定されていないと,法制度上そのようなことがあるということは全く想定されていないわけでございます。したがいまして,そのことを禁止するとか,できないとか,そういう規定がもちろんあるわけでもないと。法制度上はそういったものが売買されるということが全く予定されていないわけでございます。しかし,一方で,現実問題として金銭の移動を伴う何らかの形での売買といいますか,契約行為といいますか,そのようなことが行われているというようなこと,これについては正直申しまして我々のほう,文化庁でも,あるいはそれぞれの所轄庁のほうでも十分な実態を把握しているわけではございません。そういう意味では,うわさの域を出ないとも言えるような情況ではあるわけでございますけれども,例えばインターネット上などを見ますと,こういった売買を仲介するような文言といいますか,そのようなものがたくさん出てくると。あるいはオークションに出店されているとか,そのような事例もあったりするところでございます。
 正直申しまして,仮にそういった形で金銭の移動を伴う何らかの行為が行われているとして,これを法的にどのように位置づけるものなのかというのも,ちょっと我々のほうでも少し研究をしてみなければいけないなというふうに考えているわけでございますけれども,いずれにいたしましても,宗教法人法上そういった売買というようなものは全く予定されているものではございませんので,そのようなことというのは基本的にはあってはならないことであろうというふうに考えているところでございます。一般的に売買という言葉が多く使われておりますので,わかりやすさという観点から我々としても安易にちょっと使ってしまうというようなところがございますけれども,表現については十分気をつけてまいりたいと考えております。
 また,そういったものを防止するという観点におきましては,いろいろな兆候というものがございまして,例えば規則変更を申請されるに当たって,例えば主たる住所を変更する,あるいは代表役員を変更する,所轄庁を変更するといったようなものがあるときに,そういったいわゆる売買といったようなものが原因となって行われるというふうなものが疑われるような事例もあるわけでございまして,そういったいわゆる不自然なものについて安易に認めることがないように,きちんと宗教活動の実態を確認する,あるいは宗教施設そのものをきちんと確認するといったようなことを通じまして,所轄庁としてそういったいわゆる売買といったようなことが行われないような手続ということを推進するということも重要であるというふうに考えておりますし,それから先ほど申しました不活動宗教法人対策というものを通じまして,宗教法人格を不法に利用されないようにするというようなことが重要であるというふうに考えているところでございます。
○大石会長
 ありがとうございました。いずれにしましても,こういうことが現に行われているということが,宗教団体なり宗教法人に対する,国民の目からすると,やや不信感を招くといいますか,地位をおとしめるような話につながりかねないということは事実でございますので,今お話がありましたような観点も含めて,少し運用等の問題も検討してまいりたいと存じます。よろしいでしょうか。
 私からちょっと,資料4で,不活動宗教法人の総数というのは全国で5,000法人弱と書いてありますが,上の分類だと,要するに大臣所轄と知事所轄がありますね。性質上,大臣所轄というのはかなり大きなものだから基本的には5,000の中にはほとんどなくて,知事所轄の中にこれがあるんだというふうに理解してよろしいですね。
○宗務課長
 一応,文部科学大臣所轄のもので今現在不活動というふうに推定されておりますものは2つございます。ですから,それ以外はほとんどが都道府県の所轄であるというふうにお考えいただけるということです。
○大石会長
 ほかにいかがでしょうか。今ご質問等を受けつけておりますのは資料6までの範囲でございますが。よろしゅうございますか。
 それでは続きまして,資料7から9までが,やや性質の異なったことでございますので,これについても何かご不明な点がありましたら出していただければ幸いでございます。
 資料9に関連して言いますと,前回,主要5カ国ということで,ドイツ,フランス等の調査をやりましたね。私も参加しましたが,私どもがかなり力を入れたのはそれぞれの国の法令関係の資料です。本文そのものは交換されたんですが,その資料につきまして,要するに本文編と資料編に分けるということで,資料編のほうも随分と力を入れて私どもやった覚えがあるんです。それがいまだに日の目を見ないというのが,同じく委員として参加した者たちからのやや不満がありまして,その点どういう進行状況かというのをちょっと教えていただくと助かるんですが。
○宗務課長
 ちょっと実はその辺のところについて十分な資料の整理というものがいまだできていないというようなことがございまして,大変ご迷惑をおかけしているところでございますけれども,これまでの資料につきましてもできるだけ早く整理をいただいて,活用していただけるようにしてまいりたいというふうに考えております。
○大石会長
 ありがとうございます。それを申しましたのも,この調査対象国で今回また新たに始まるわけですけれど,多分参考として書かれてある調査協力者の方々がかなり努力をされる,相当忙しい中でやられるわけですけれど,基礎資料をそろえた上で報告書が書かれるのが普通ですからね。それもまた同じようなことになるとちょっと気の毒だなという感じはするものですから,その点よろしく。
○宗務課長
 ちょっとそういったこともございまして,従前とはやり方を変えまして,そういった基礎資料の収集とか,あるいは基礎資料を整理するということについてシンクタンクに依頼をして,そちらのほうに作業をさせるというような方式を今期からとらせていただいておりまして,ちょっとなかなか宗務課のほうもマンパワー的に不足しているというような状況もございまして,今回からはそのような方式をとらせていただいているところでございますので,十分そちらのほうと連携をとりながら,先生方が調査しやすいような体制というものを講じてまいりたいというふうに考えております。
○大石会長
 よろしくお願いしたいと思います。
 ほかにはありませんでしょうか。調査の関係でよろしいですか。
 それでは,ご発言がないようでしたら,議題(3)につきましては以上で終了したものといたします。
 次に,議題(4)に移りたいと思います。その他の事項ということでございますが,この点について事務局から報告がございます。よろしくお願いいたします。
○宗務課長
 まずは公益法人制度改革についてでございます。ちょっと資料10を飛ばしていただいて,資料11を先にごらんいただきたいと存じます。
 公益法人制度改革につきましては,これまでも事あるごとにいろいろご説明を申し上げてきているところでございますが,いよいよ昨年12月にこの制度がスタートいたしたところでございます。その内容について簡単にご説明いたしますと,現行の公益法人制度は,いわゆる主務官庁におきまして法人の設立と公益性の判断というものを一体となって行っていたわけでございまして,そのことが,ともすると法人と所管官庁の癒着と言ったらちょっとあれかもしれませんけれども,その関係性に疑義が生じるというような場面も指摘されたというようなこともございまして,そういったことも踏まえまして,法人の設立と公益性の判断というのを分離いたしまして,法人の設立については,これは基本的には登記のみでできるというように非常に要件を形式化するとともに,公益性の判断につきましては,政府といたしまして国が所轄するものについては内閣府が一括してこれを実施し,都道府県が所轄のものについてはそれぞれの都道府県で実施をするというような制度になると。
 この制度の結果といたしまして,従来の社団法人,それから財団法人について,いわゆる公益社団法人・公益財団法人と,一般社団法人・一般財団法人と,この2つの区分に分離されるというような仕組みになるということでございます。一般社団法人と一般財団法人の中から必要な要件を満たしているものについて公益認定が行われるというような仕組みになるということでございます。
 この制度につきましては昨年12月に施行いたしまして,現在の財団法人・社団法人はいわゆる特例民法法人という位置づけで昨年12月から5年間のうちに新たな制度にすべて移行するということにされているところでございまして,今現在それぞれの法人におきまして,どのような形態で新制度に移行するかという検討がなされているところでございます。
 資料11−2でございますけれども,昨年12月から本年5月における移行の認定の申請状況,これを内閣府のほうで取りまとめたものでございますが,105件が新しい制度に移行しているところでございます。社団法人・財団法人は全国に2万以上あるというふうに言われておりますので,まだまだ,ごくごく一部が移行したに過ぎないということでございますが,いずれにいたしましても,今後5年間の間にすべて手続をしなければいけないということで,今現在それぞれの法人におきましていろいろと検討がされているところでございます。
 こういった制度改革を踏まえまして,資料10でございますけれども,昨年11月28日付で各都道府県に通知を出させていただきました。これは法律の施行通知でございまして,公益法人制度改革に関連してさまざまな措置が講じられている内容について通知をしているものでございますけれども,具体的にはこの改革に伴いまして宗教法人法についても手続的な面で一部改正がなされているということで,この通知を送ったものでございます。通知の細かい内容については省略させていただきますけれども,基本的には手続的な部分での整理を図ったものというふうにお考えいただければ結構でございます。
 それから,続きまして資料12でございます。税制についてでございます。
 ご承知のように,宗教法人につきましては,税制上は公益法人等ということで優遇的な税制が講じられているわけでございますけれども,本年度の税制改正の法人税関係におきまして,そこに黄色の線が塗られているような措置が講じられております。具体的には中小企業関係税制という枠組みの中で,今現在,年800万円以下の金額の法人税の税率が暫定的に,2カ年間でございますけれども,22%から18%に引き下げられているところでございます。この中小法人等という概念の中に公益法人も含まれておりますので,宗教法人につきましても税率が軽減されるものがあるということでございますので,参考までに紹介をしたところでございます。
 続きまして,資料13でございます。行政不服審査法案についてでございます。この行政不服審査法案は今現在開催されております国会に提出されているものでございますけれども,内容をご紹介する前に申し上げますと,この法案については今現在,全く審議されておりませんで,もう既に閉会が近づいてきておりまして,いずれにいたしましても,衆議院解散ということになりますと,すべての法案が廃案になりますので,そうなりますと,この行政不服審査法案については成立しないまま廃案になる可能性が非常に高いというのが現状であるというわけでございます。
 内容といたしましては,手続の一元化ということでございまして,従前,行政不服申し立てについては,異議申し立て,それから審査請求という2つの手続があったわけでございますけれども,この異議申し立てという手続を廃止いたしまして審査請求に一本化しようとする内容のものでございます。それから,審理の客観性や公正性を確保するという観点から,審理員による審理手続の導入,それから行政不服審査会への諮問手続の導入,さらには審理の迅速化に係るさまざまな措置というようなものが不服審査法の内容として盛り込まれているところでございます。
 仮にこの法案が成立いたしましたときに宗教法人に関係する不服申し立てがどのように変化するかということでございますけれども,1枚おめくりいただきますと,文部科学大臣の所轄するものについて異議申し立てというものがあった場合には,従前は異議申し立てという観点から議論をしていったわけですけれども,これが新法におきましては審査請求という形になるわけでございます。ただし,宗教法人に関しましては,異議申し立てであっても,審査請求でありましても,宗教法人審議会による手続というものが担保されているということがございまして,そういった観点からしますと,審査請求というふうに形は変わりますけれども,実態としては大きな変化はないというような内容でございます。
 それから,都道府県知事の処分についてでございますけれども,現在は都道府県知事のものであっても文部科学大臣に対する審査請求という形になっているわけでございますけれども,改正後については,新法の適用なしというふうに書いてございますけれども,これは具体的には,この法律の中では,それぞれの審査請求についてはそれぞれの処分庁において行うというのが新法における原則になっているということでございますが,ただ,一定の期間については新法の適用をしないというようなことで,事実上はこれまでと変わらないというような形が,これは附則に書いてある内容でございますけれども,改正前の行政不服審査法の規定が当分の間その効力を有すると,これは法定受託事務に係るものに限定されているわけでございますけれども,このような規定になってございまして,都道府県のものについては引き続き同様の形で実施をするというのが,この行政不服審査法案の概要でございます。ただし,何度も申しますが,この内容については今現在,まだ国会でも審議されていないということでございまして,そのまま廃案になる可能性がございます。
 それで,仮にこの法案が廃案となったときに今後どうなるかということについては,これはまだ全然決定はしていないわけでございますけれども,いろいろ議論の過程の中では,新たに国会に法案を提出する際に当たっては,2ページにございます2番のところの「当分の間」という部分,従前の規定が効力を有するという部分については,これはもう適用しないという形のほうが望ましいのではないかというような議論もあるということでございまして,仮にそのような形になりますと,宗教法人に関して都道府県が行った処分に関しても,この宗教法人審議会が審査請求についての議論をするということではなくて,都道府県においてその議論をしなければいけないということになるわけでございますけれども,これについてはいろいろと今後検討していかなければいけない事項が多々あるというふうに考えておりますので,そういった意見があるということだけをご紹介させていただきたいというふうに考えております。まだそのような形になるというふうに決定をしているというわけではございません。そのような意見があるということだけをご紹介させていただきます。
 最後でございます。資料14,宗教法人をめぐる最近の事件等についてということでございまして,ここ1年間程度の間に新聞等で大きく取り上げられました宗教法人がらみの事件について4例ほどご紹介をいたします。
 1番目が,宗教法人に対する特定商取引法による業務停止命令と民事訴訟ということでございます。事案の概要,これはすべて報道等によるものでございますけれども,平成20年3月に経済産業省が,教法人Aが行いました特定商取引法違反によりまして,当該法人に対して3カ月間の業務停止命令というものを出したところでございます。また,この法人に対しては,高額な祈祷料を支払わせるなどの被害を受けたとして,昨年10月に民事訴訟,計1,600万円の損害賠償を求める民事訴訟が提訴されてございます。また,本年5月にも約1,280万円の損害賠償を求める訴訟が提訴されております。被害弁護団によりますと,さらに刑事告訴をするということも検討しているということだそうでございます。
 これは文部科学大臣所轄の法人でございます。したがいまして,対処状況といたしまして,まず文化庁といたしましては,昨年6月に代表役員や関係者に対して事情聴取を実施いたしまして,こういった事態が生じたということについての遺憾の意を伝えるとともに,適正な宗教法人の管理運営に努めるよう指摘をしたところでございます。いずれにいたしましても,文化庁といたしましては,今後の民事裁判等の状況を見守りながら,さらに今後の対応について検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 2つ目が,寺院の土地所有権の不正移転事件についてでございます。これは福岡県所轄の法人に関する内容でございます。平成20年10月に宗教法人Bの代表役員を含む関係者4名が寺院の土地を不正に取得しようとしたということで,有印私文書偽造・電磁的公正証書原本不実記録の疑いで逮捕・起訴されまして,本年3月に有罪判決が出ているところでございます。さらに,福岡県知事所轄の前代表役員についても本事件に関与した疑いがあるとして逮捕・起訴され,本年6月に有罪判決が出たところでございます。
 失礼いたしました。この宗教法人Bというのは文部科学大臣所轄の法人でございまして,この文部科学大臣所轄の法人の代表役員,この関係者が福岡県知事所轄の寺院の土地を不正に取得しようとしたということでございます。
 このような状況で,この事件に関しては宗教法人Bの代表役員と暴力団の関与というようなものも指摘されておりますし,そもそも宗教法人Bが不活動状況であったというようなことも指摘されているところでございます。
 これに対する対処状況でございますけれども,この法人はいわゆる非包括宗教法人でございますので,当該法人の包括宗教法人のほうと連絡・打ち合わせを文化庁といたしまして継続をしておりまして,今後の対応について検討を進めているところでございます。
 それから2ページ目でございます。3番でございますけれども,宗教法人を悪用したとされる脱税事件でございます。これは岐阜県知事所轄の法人でございますけれども,内容といたしましては,東京都渋谷区の再開発をめぐる不動産会社の脱税事件がございまして,これに関連いたしまして,この会社の社長で宗教法人Cの代表役員が逮捕されたということでございます。
 内容といたしましては,この代表役員が渋谷区の宅地の地上げというものを行いまして,この地上げに当たって代表役員が実体のない当該宗教法人を介在させていたというようなことを通じまして脱税を図るというようなことが行われたのではないかということが疑われております。また,その宗教法人の現地では宗教儀式を装って大きな音を出すといったような嫌がらせ行為を行い,立ち退きを迫るといったようなことがあったようでございます。この代表役員につきましても暴力団との関係というものも指摘されているところでございまして,岐阜県のほうでは関係者を通じてこのような法人の実態把握に努め,また,刑事裁判の動向を注意深く見守るというようなことで対応を検討しているところでございます。
 それから4番目でございます。ラブホテル経営の宗教法人が所得隠しをしたとされる事案。これはついせんだって,かなり大きな報道がなされましたのでご承知の方もいらっしゃるかと思いますけれども,香川県知事所轄の法人についてでございますけれども,本年6月でございますが,長野県を中心として複数のラブホテルを経営する宗教法人が関東信越国税局の税務調査を受けまして,7年間で14億円の所得隠しを指摘されたということでございます。法人側は指摘を不服として異議申し立てをしているようでございます。このホテルについては客から得た休憩料,宿泊料の6割を課税対象として計上して,残りについてはお布施ということで非課税の扱いというふうにしていたようでございます。国税局はお布施を装った休憩料などを税務申告から除外したということが法人税を免れた脱税行為に当たるというふうに判断をしたようでございます。
 この法人についてでございますけれども,平成6年ごろまではどうも休眠状態にあったらしいということでございますけれども,近年においては,香川県の判断としては不活動ではないというような判断をしていたようでございますけれども,平成6年ぐらいに宗教法人の売買というようなものがあったのではないかというようなことについても疑われているところでございます。
 対処状況といたしましては,香川県のほうで関係者を通じて実態把握に努めているところでございまして,これを踏まえて今後の対応について検討するというふうにされているところでございます。
 先ほど不活動のところでも申しましたけれども,この4つの事件のうち,2,3,4についてはいずれも不活動宗教法人が関連するというふうに思われる内容でございまして,こういった観点を踏まえましても,やはり不活動宗教法人対策の重要性というものが非常に高いのではないかというふうに考えているところでございまして,対策をやはり推進していかなければいけないというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。
○大石会長
 ありがとうございます。
 資料10から13までは関連の法制度といいますか,仕組みについての改正案を含めたご説明でありました。資料14は最近の事件等についてということでございますが,これらを通じて何かご意見,ご質問等はございませんでしょうか。ございませんか。
 それでは,ないようでしたら,議題(4)につきましてはこれで終了したものといたします。
 本日用意しました議事の中身につきましては以上でございます。
 全体を通じて何かご意見,ご質問等ありましたらこの場でお願いしたいと存じますが,いかがでしょうか。
 特にご発言がないようですので,本日はこれにて閉会といたしますが,最後に今後のスケジュールにつきまして,事務局のほうから少し説明願います。
○宗務課長
 今後のスケジュールにつてでございますけれども,冒頭申し上げましたように,本審議会は具体的な審議事案が発生した都度,議論をいただくこととしているところでございますので,審議いただくべき事案が発生いたしましたら,その都度,先生方にご連絡をさせていただいて,会議を開催させていただきたいというふうに考えております。もし何もないようでしたら,また来年の同じぐらいの時期に開催をさせていただきたいというふうに考えております。
 最後になりますけれども,お手元に配付してございます資料あるいは冊子等につきましては,こちらのファイル以外についてはお持ちいただいて結構でございますけれども,大変厚くて重いものでございますので,席に置いていただければ郵送させていただきます。また,冊子等について必要ないということでございましたら,そのようにお申し出いただければ,そのようにさせていただきます。
 以上でございます。
○大石会長
 今あったんですが,郵送希望ということでしたら,紙に書いてここに置いていただければ発送できるということですね。わかりました。
 それでは,第156回宗教法人審議会をこれで閉じたいと思います。どうもお疲れさまでございました。

―― 了 ――

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