はじめに

 埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会(以下「委員会」という。)は,平成6年10月に,近年の開発事業の増大に伴う埋蔵文化財発掘調査件数の増加等の埋蔵文化財の発掘調査に関する諸課題に適切に対応するため,埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実について調査研究を行うことを目的として設置された。調査研究を進めるに当たっては,各地方公共団体等における実態を踏まえより審議を深めるため,都道府県・市町村教育委員会及びその関係機関の実務担当者からなる協力者会議を設置した。

 委員会では,概ね(1)埋蔵文化財保護体制の整備,(2)埋蔵文化財包蔵地の周知化と開発事業との調整,(3)発掘調査の方法・期間・費用,(4)出土遺物の取扱と保管法,(5)その他,の検討課題について調査研究を進めることし,まず埋蔵文化財保護体制の整備に関する諸課題について検討を行い,平成7年12月には「埋蔵文化財保護体制の整備充実について」の報告を行ったところである。

 本年は出土品の取扱いに関して委員会6回,協力者会議5回を開催して検討を行った。検討に当たっては,地方公共団体(注)を対象として実態調査を実施するとともに,埋蔵文化財の関係団体からの意見聴取も行い,出土品の取扱いの実態や経験を踏まえつつ,出土品の取扱いに関する現時点における学術上の成果を反映するものを目指した。

 委員会においては,まず保管・管理を要する出土品を選択する必要性とその考え方を検討し,さらに管理上の利便性も考慮して,出土品の適切な保管方法について検討するとともに,出土品の積極的な活用のあり方についても検討した。この報告はこの検討の結果をとりまとめたものである。

 なお,埋蔵文化財保護行政は,従来,ともすれば発掘調査の急増への対応に追われ,各地方公共団体での埋蔵文化財の取扱いの標準化・効率化に向けた取り組みが不十分であったことは否めない。今回は出土品の取扱いについて検討したが,今後とも埋蔵文化財保護行政に関して,従来の経験や学術上の成果を踏まえ,標準化・効率化に向けた積極的な検討を進める必要がある。

 委員会としては,今後,文化庁及び地方公共団体において,この報告を踏まえ,所要の施策の実施を進め,また,更に検討を要する課題に積極的に取り組むことを期待する。また,出土品の取扱いを改善するためには,専門職員の充実をはじめとする埋蔵文化財保護体制の整備・充実,埋蔵文化財センター等の施設の整備・充実が不可欠であり,そのためのいっそうの理解と積極的な取り組みを期待したい。

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