平成11年度「国語に関する世論調査」の結果について

文化庁

Ⅰ.調査目的・方法等

調査目的 敬語や言葉遣いに関すること,国際化時代の日本語に関することなどについて,国民の意識や実態を調査し,国語審議会の審議の参考に供するなど,今後の施策の参考とする。
調査対象 全国の16歳以上の男女3,000人
調査時期 平成12年1月7日~1月18日
調査方法 個別面接調査
回収結果 有効回収数(率)2,196人(73.2%)

Ⅱ.調査結果の概要

1.外来語の使用について

(1)日常の言語生活に外来語を交えることへの好悪 <Q6>
―高年層は「好ましくない」の割合が高い―

 日常生活の中で,外来語や外国語を交えて話したり書いたりしていることについて,どう思うかを尋ねた。結果は以下のとおり。

どちらかと言うと好ましいと感じる ・・・・・・ 13.3%
どちらかと言うと好ましくないと感じる ・・・・・・ 35.5%
別に何も感じない ・・・・・・ 48.8%
分からない ・・・・・・ 2.4%

 「好ましい」と感じる理由は,「外来語や外国語でなければ表せない物事があるから」(68.3%),「外来語や外国語のほうが分かりやすいから」(39.6%),「日本語や日本文化が豊かになるから」(18.8%)など。(複数回答)
 「好ましくない」と感じる理由は,「外来語や外国語は分かりにくいから」(64.2%),「日本語の本来の良さが失われるから」(49.9%),「言葉が乱れて日本文化が退廃してしまうから」(30.2%)など。(複数回答)

 「年齢層別に見ると,40代以下では「別に何も感じない」という人が5割を超えているが,高年層で「どちらかと言うと好ましくないと感じる」の割合が高くなることが分かる。

日常の言語生活に外来語を交えることへの好悪のグラフ〔年齢別〕

(2)官公庁の広報やパンフレットなどにおける外来語使用についての考え <Q10>
―注釈や語の選択を求める人が8割―

 官公庁の広報やパンフレットなどを,読者にとって分かりやすいものにするために,外来語・外国語についてどのようにするのがよいと思うかを尋ねた。結果は次のグラフのとおり。

官公庁の広報やパンフレットなどにおける外来語使用についての考えのグラフ

2.英語と日本語の国際化について

(1)英語の国際語化についての考え <Q14>
―「良いことだ」が最多―

 国際化の進む現代において,英語が国際的なコミュニケーションのための言葉になっていく傾向について,どう考えるかを尋ねた。結果は次のグラフのとおり。

英語の国際語化についての考えのグラフ

(2)日本語を学ぶ外国人が増えることについての考え <Q15>
―「もっと増えていくとよい」が圧倒的―

 近年,海外で日本語を学ぶ人が非常に増えており,現在では数百万人にも達すると言われているが,これから世界中で日本語を学ぶ人がもっと増えていくとよいと思うかどうかを尋ねた。結果は,「そう思う」が8割を超えて圧倒的に高かった。(下表)

そう思う そうは思わない どちらとも言えない 分からない
81.8% 4.1% 10.6% 3.6%

 「そう思う」と答えた人に,日本語を学ぶ外国人が増えることに対して何を期待するかを尋ねたところ,選択率が5割を超えた選択肢は以下のとおり。(複数回答)

日本人と外国人の交流がもっと盛んになる ・・・・・・ 61.3%
日本の文化が世界の人にもっと理解されるようになる ・・・・・・ 57.7%
日本語が世界中でもっと通じるようになる ・・・・・・ 51.3%
世界の中に,日本や日本人に親しみを持つ人が増える ・・・・・・ 50.5%

3.言葉遣いについて

(1)気になる言い方 <Q1>
―「いただかれる」は半数強が「気になる」―

 敬語の使い方に関連して,規範的には誤用とされる言い方や,適切かどうか問題になる言い方の例を八つ挙げ,それぞれについて「気になる」かどうかを尋ねた。結果は次の表のとおり。

言い方 気になる 気にならない
(1) 御注文の品はすべておそろいになりましたか 24.8% 70.4%
(2) 就職はもうお決まりになったのですか 30.4% 64.3%
(3) 規則でそうなってございます 73.1% 22.7%
(4) こちらで待たれてください 77.6% 19.3%
(5) どうぞ,お体をお大事にしてください 16.7% 80.1%
(6) 昼食はもういただかれましたか 53.8% 41.5%
(7) (食品の注意書きで)本製品のお召し上がり方 25.9% 68.1%
(8) (吉田達夫先生に出す手紙のあて名として)吉田達夫 23.4% 69.1%

 6)の「いただかれる」は,謙譲語の「いただく」に尊敬の助動詞「れる」を付けて尊敬語として用いた誤用であるが,「気になる」は半数強であり,4割の人は「気にならない」としている(正しくは「召し上がりましたか」など)。
 他の文も,適切かどうか問題になる言い方を含んでいる。(1)と(2)は「御注文の品」や「就職」を主語として「おそろいになる」「お決まりになる」という尊敬語を用いることを不適切だと感じる人もいる言い方だが,「気になる」は2~3割にとどまった。(3),(4)は時々耳にするが一般的ではない言い方であり,「気になる」の割合が高い(それぞれ,「なっております」「お待ちください」などが一般的)。(5)は「お大事になさってください」などとする方が一般的だと思われるが,「気になる」の割合は低い。(7)は「お」を付けることが過剰だと感じる人もおり,(8)は先生に対して「様」では失礼だと感じる人もいるが,共に「気になる」は4人に1人であり,7割は「気にならない」としている。

(2)敬語の正誤 <Q2>
―「御逝去される」は7割強の人が「正しい」と回答―

 八つの文を挙げ,それぞれについて敬語が正しく使われているかどうかを尋ねた。結果は次の表のとおり。  (1)~(8)のうち,(3),(6)では敬語が正しく使われているが,他はいずれも謙譲語(や謙譲語を作る形式)を尊敬語として用いた誤用を含んでいる。

言い方 正しく使われていると思う 正しく使われていないと思う
(1) 早期に御対処していただきたい 35.2% 53.4%
(2) お客様がまいられています 21.0% 72.9%
(3) 先生はいつ行かれたのですか 56.5% 36.1%
(4) 先生はあの展覧会を拝見されましたか 55.5% 37.0%
(5) 私に適当な方を御紹介して 44.2% 49.4%
(6) (会社で,部下に)お客様に最寄りの営業所を御案内してください 49.0% 43.6%
(7) あの病院は午後伺われたほうがすいていますよ 40.1% 52.0%
(8) ○○様は昨日御逝去されました 73.8% 16.8%

 (1),(2),(4),(5),(7),(8)はいずれも誤用を含むが,「正しく使われていないと思う」が7割を超えた(2)の「まいられて」から,「正しく使われていると思う」が7割を超えた(8)の「御逝去されました」まで,正誤の判断はまちまちであった。これらの中で,「御逝去される」という言い方は,規範的には正しいとは言えないが,一般にかなり浸透していると考えられる。

(3)ぼかす言い方 <Q3>
―若年層で使用が広がる―

 最近の会話で時々聞かれる,ぼかす言い方の例を挙げ,それぞれの言い方をすることがあるかどうかを尋ねた。結果は次のとおり。

言い方 ある ない
(1) お荷物,お預かりします」ということを,「お荷物のほう,お預かりします」と言う 30.3% 68.0%
(2) 「鈴木さんと話をしてました」ということを,「鈴木さんと話とかしてました」と言う 16.2% 82.4%
(3) わたしはそう思います」ということを,「わたし的にはそう思います」と言う 8.5% 90.1%

 (1)~(3)とも,「ある」の割合は全体ではそれほど高くないが,年齢層別に見ると,下のグラフに示したように,若年層で使用の広がりがあることが分かる。

ぼかす言い方のグラフ〔年齢別〕

4.国語の乱れや国語に関して困っていることについて

(1)国語の乱れについての意識 <Q16>
―「乱れている」が86%―

 ふだんの生活の中で接している言葉から考えて,今の国語は乱れていると思うかどうかを尋ねたところ,「乱れていると思う」という人が圧倒的に多かった。

非常に乱れていると思う ・・・・・・ 32.7% 括弧 乱れていると思う(計)
85.8%※
ある程度乱れていると思う ・・・・・・ 53.2%
余り乱れていないと思う ・・・・・・ 9.6% 括弧 乱れていないと思う(計)
10.3%
全く乱れていないと思う ・・・・・・ 0.7%
分からない ・・・・・・ 3.8%

※小数第2位四捨五入のため,ア・イの単純合計と一致しない。

 ア,イと答えた人に,どのような点で乱れていると思うかを尋ねたところ,「言葉遣い」(66.3%),「若者言葉」(62.5%),「敬語の使い方」(54.0%)が上位であった。(複数回答)

2)国語に関して困っていること <Q17>
―「外来語・外国語の意味が分からないことがある」が最多―

 国語に関して困っていることがあるかどうかを尋ねたところ,以下の結果であった。(複数回答)
 外来語・外国語や流行語・新語の意味が分からなくて困っている人の割合が,4割を超えて高いことが分かる。

外来語・外国語の意味が分からないことがある ・・・・・・ 45.8%
流行語や新しい言葉の意味が分からないことがある ・・・・・・ 42.4%
辞書を引かなければ書けない漢字がたくさんある ・・・・・・ 34.2%
年の離れた人たちが使っている言葉の意味がよく分からない ・・・・・・ 23.5%
新聞を読んでも,難しい言葉が多くて意味がよく分からない ・・・・・・ 22.8%
読めない漢字にたくさん出合う ・・・・・・ 19.4%
正しい文章の書き方がよく分からない ・・・・・・ 18.9%
敬語がうまく使えない ・・・・・・ 18.8%
送り仮名の付け方が分からないことがある ・・・・・・ 18.5%
人に対する話し方が上手ではない ・・・・・・ 16.5%
その他 ・・・・・・ 1.0%
特に困っていることはない ・・・・・・ 12.3%
分からない ・・・・・・ 0.4%

 この調査に関する報告書『平成11年度 国語に関する世論調査〔平成12年1月調査〕―言葉遣い・国際化時代の日本語―』は,大蔵省印刷局から刊行されている。(平成12年5月25日発行 本体価格1,360円。)

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