平成12年度「国語に関する世論調査」の結果について

文化庁

Ⅰ.調査目的・方法等

調査目的 言葉遣いの乱れや日常のあいさつなど言葉遣いに関すること,言葉のしつけや言語環境に関すること,情報機器を用いたコミュニケーションに関することなどについて,国民の意識や実態を調査し,今後の国語施策の参考とする。
調査対象 全国の16歳以上の男女3,000人
調査時期 平成13年1月10日~1月28日
調査方法 個別面接調査
回収結果 有効回収数(率)2,192人(73.1%)

Ⅱ.調査結果の概要

1.言葉遣いや,その乱れ

(1)言葉遣いの「乱れ」を感じるか <問2>
―9割弱の人が「乱れ」を感じることがある―

 ふだんの生活で接する人やテレビで見る人などの言葉遣いが,乱れていると感じることがあるかどうかを尋ねた。結果は以下のとおり。

よくある ・・・・・・ 31.5% 括弧 ある(計)
88.9%
時々ある ・・・・・・ 40.1%
たまにある ・・・・・・ 17.3%
ない ・・・・・・ 9.7%
分からない ・・・・・・ 1.4%

(2)どんなときに「乱れ」を感じるか <問2付問1>
―「ものの言い方が乱暴なとき」が最多―

 言葉遣いが乱れていると感じることが「ある(計)」と答えた人に,人がどんな言葉遣いをしているときに乱れていると感じるかを19の選択肢を挙げて尋ねたところ,選択者の多かった選択肢の上位1~5位は以下のとおり(複数回答)。

1 ものの言い方が乱暴なとき ・・・・・・ 50.3%
2 あいさつをきちんとしないとき ・・・・・・ 48.4%
3 人を傷つける言葉を使っているとき ・・・・・・ 44.9%
4 汚い言葉を使っているとき ・・・・・・ 43.1%
5 敬語を間違えて使っているとき ・・・・・・ 35.9%

(3)どの年齢層の言葉遣いが乱れていると感じるか <問2付問2>
―「中学生や高校生」が過半数―

 言葉遣いが乱れていると感じることが「ある(計)」と答えた人に,どんな年齢の人の言葉遣いが,乱れていると感じることが多いかを尋ねた。
 結果は次のグラフのとおりで,「中学生や高校生」(54.0%),「20歳前後から30歳前ぐらいまでの若者」(26.7%)の若年層を選んだ人の割合が高い。

どの年齢層の言葉遣いが乱れていると感じるかのグラフ

(4)自分自身の言葉遣いの乱れ <問3>
―4人に3人が感じることあり―

 ふだんの生活の中で自分自身の言葉遣いが乱れていると感じることがあるかどうかを尋ねた結果は次の表のとおり。各年齢層とも自分自身の言葉遣いの乱れを感じている人の割合が高いが,高年層ではやや数値が低く,60歳以上では3人に1人が「ない」と答えている。

(「分からない」は省略)

  よくある 時々ある たまにある ある(計) ない
全体 6.0% 29.2% 40.3% 75.4% 21.8%
16~19歳 5.4% 39.8% 35.5% 80.6% 16.1%
20~29歳 9.6% 30.1% 45.4% 85.1% 13.3%
30~39歳 7.3% 34.2% 41.0% 82.5% 13.6%
40~49歳 3.4% 33.4% 45.0% 81.8% 15.5%
50~59歳 6.1% 28.5% 41.3% 75.8% 21.5%
60歳以上 5.4% 22.7% 35.4% 63.4% 33.9%

※小数第2位四捨五入のため,「よく」「時々」「たまに」の合計が「ある(計)」と一致しないことがある。

(5)言葉遣いの乱れを改善する方法 <問4>
―「親のしつけ」が最多―

 言葉遣いの乱れを改善するためにはどうするのが有効だと思うかを,九つの選択肢から三つまで選んでもらう形で尋ねたところ,選択率が高かった上位3選択肢は次のとおり。

1 親がきちんと子供をしつける ・・・・・・ 63.5%
2 一人一人が自分の言葉遣いに気を付ける ・・・・・・ 52.4%
3 学校でもっと言葉遣いを指導する ・・・・・・ 35.7%

 言葉遣いの改善のために期待されているのは,第一に家庭でのしつけの改善であり,続いて本人の自覚や学校での指導であることが分かる。

2.家庭でのあいさつや子供の言語環境

(1)家族間のあいさつ <問5付問1>
―食事の前後に「する」は6割―

 家族と暮らしている人(全体の92.6%)に,朝起きてから寝るまでの,家庭内での六つの場面について,家族にあいさつをするかどうかを尋ねた。結果は次のとおり。

(1) 朝,初めて顔を合わせたとき ・・・・・・ 68.5%
(2) 食事を始めるとき ・・・・・・ 64.0%
(3) 食事が終わったとき ・・・・・・ 63.2%
(4) 外出するとき ・・・・・・ 83.9%
(5) 帰宅したとき ・・・・・・ 80.3%
(6) 夜,寝る前 ・・・・・・ 58.6%

 (1)~(6)のいずれかで「しない」「するときとしないときがある」と答えた人に,その理由を尋ねた結果は,「何となく」(45.9%),「する習慣がないから」(30.0%),「うっかりして」(16.7%)などであった。

(2)家庭で言葉遣いを注意されたこと <問6,問6付問>
―4人に1人「注意されたことなし」―

 小さい時から小学生ぐらいまでのころに,家庭で言葉遣いについて注意されたかどうかを尋ねた結果は次のとおり。

よく注意された ・・・・・・ 21.1% 括弧 注意された(計)
69.3%
時々注意された ・・・・・・ 25.2%
たまに注意された ・・・・・・ 23.0%
注意されたことはない ・・・・・・ 26.8%

 「注意された(計)」と答えた人に,主にだれから注意されたかを尋ねた結果は,母親60.4%,父親28.4%,祖母5.8%,祖父2.6%などであった。

(3)家庭で受けたしつけについての感想 <問7>
―よく注意された人は“満足度高”―

 自分が家庭で受けた言葉のしつけについて,現在どう思っているかを尋ねた結果は以下のとおり。

適切にしつけられたと思う ・・・・・・ 53.5%
もっときちんとしつけてくれれば良かったと思う ・・・・・・ 14.9%
厳しくしつけられ過ぎたと思う ・・・・・・ 3.7%
特に何も思わない ・・・・・・ 26.3%

 これを,家庭で言葉遣いについて注意されたかどうかの別によって集計すると次の表のようになる(数字は%)。注意された頻度が高い層ほど,受けたしつけへの満足度が高く,注意された頻度が低い層ほど「特に何も思わない」の割合が高くなっている。

  適切にしつけられたと思う もっときちんとしつけてくれれば良かったと思う 厳しくしつけられ過ぎたと思う 特に何も思わない
よく注意された 71.7% 14.9% 6.7% 6.5%
時々注意された 59.4% 19.6% 3.3% 16.7%
たまに注意された 55.4% 16.3% 2.6% 25.0%
注意されたことはない 35.6% 10.4% 3.2% 48.0%

(4)子供の言葉遣いに与える影響が大きいもの <問11>
―「テレビ」は「母親」より高選択率―

 子供の言葉遣いに与える影響が大きい人やものについて,13選択肢から選んでもらった結果,選択率の高かった上位5選択肢は次のとおり(複数回答可)。

1 テレビ ・・・・・・ 83.4%
2 母親 ・・・・・・ 67.8%
3 友達 ・・・・・・ 62.5%
4 父親 ・・・・・・ 61.6%
5 漫画 ・・・・・・ 44.6%

(5)子供の言葉遣いへのテレビの影響 <問12>
―「バラエティー番組の芸能人」が最多―

 テレビ番組の中で,子供の言葉遣いに影響の大きいものは何だと思うかを尋ねた結果,選択率の高かった上位4選択肢は次のとおり(9選択肢のうち三つまで選択)。

1 バラエティー番組の芸能人の話し方 ・・・・・・ 68.8%
2 アニメのキャラクターのせりふ ・・・・・・ 58.2%
3 コマーシャルに出てくる言葉 ・・・・・・ 49.9%
4 ドラマの俳優のせりふ ・・・・・・ 22.6%

3.家庭でのあいさつや子供の言語環境

(1)「やる」と「あげる」 <問14>
―「うちの子におもちゃを買ってあげる」派,増える―

 次の(1)~(3)の文について,「やる」「あげる」のうちふつう使うものはどちらかを聞いた。平成7年度調査における同じ質問の結果と併せて表にすると,下のとおり(数字は%)。(1),(2)で,平成7年度よりも今回の方が「やる」が減り「あげる」が増えている。

(1)植木に水を・やる/あげる

(2)うちの子におもちゃを買って・やりたい/あげたい

(3)相手チームにはもう1点も・やれない/あげられない

  やる あげる どちらも
平成7年 平成12年 平成7年 平成12年 平成7年 平成12年
(1)植木に水を 75.3% 68.9% 20.2% 24.1% 4.2% 6.6%
(2)うちの子におもちゃを買って 58.5% 46.8% 35.8% 44.8% 4.3% 7.4%
(3)相手チームにはもう1点も 79.5% 77.6% 16.1% 16.6% 3.2% 4.0%

(2)「ら抜き言葉」 <問14>
―「ら抜き」使用率ほぼ安定―

 次の(1)~(3)の文について,いわゆる「ら抜き言葉」でない本来の言い方と,「ら抜き言葉」のうちふつう使うものはどちらかを聞いた。平成7年度調査における同じ質問の結果と併せて表にすると,下のとおり(数字は%)。(2)で,平成7年度よりも今回の方が,本来の言い方と「ら抜き言葉」の併用者が増えている。(1)~(3)を通じ,「ら抜き言葉」をふつう使うという人の割合は,両調査でほとんど変化していない。

(1)こんなにたくさんは・食べられない/食べれない

(2)朝5:00に・来られますか/来れますか

(3)彼が来るなんて・考えられない/考えれない

  本来 ら抜き どちらも
平成7年 平成12年 平成7年 平成12年 平成7年 平成12年
(1)こんなにたくさんは食べ[ ]ない 67.3% 67.7% 27.2% 25.5% 5.0% 6.3%
(2)朝5:00に来[ ]ますか 58.8% 54.2% 33.8% 33.8% 6.3% 10.6%
(3)彼が来るなんて考え[ ]ない 88.8% 88.7% 6.7% 5.9% 3.1% 4.1%

(3)使用世代に偏りのある言い方 <問15>
―若者が使う「やっぱ」「きもい」「じゃん!」―

 八つの例文を挙げ,そのような言い方をすることがあるかどうかを尋ねた中で,年齢層による使用率の差が特に大きかったのは以下の三つの言い方(「やはりそうか!」を「やっぱそうか!」,「それ,いいじゃない!」を「それ,いいじゃん!」,「気持ち悪い」を「きもい」)であった。

使用世代に偏りのある言い方「やっぱ」 使用世代に偏りのある言い方「じゃん」 使用世代に偏りのある言い方「きもい」

(4)意味が変化して伝わることわざ <問16>
―「情けは人のためならず」は,過半数の理解が本来の意味とずれる―

 (1)~(3)のことわざの意味について,それぞれ二つの選択肢から選んでもらった結果は下の表のとおり。(○は本来の意味。)

(1)情けは人のためならず

ア人に情けをかけておくと,巡り巡って結局は自分のためになる ○
イ人に情けをかけて助けてやることは,結局はその人のためにならない

(2)一姫二太郎

ア一人目の子供は女,二人目の子供は男であるのが理想的だ ○
イ子供は女一人,男二人であるのが理想的だ

(3)かわいい子には旅をさせよ

ア子供が旅することを望めば,希望どおりにさせてやるのがよい
イ子供は手元で甘やかさず,世間に出して苦労をさせた方がよい ○

 
(1)情けは人のためならず 47.2%○ 48.7%
(2)一姫二太郎 60.9%○ 33.7%
(3)かわいい子には旅をさせよ 7.8% 90.8%○

 上の表のように,(1)は本来の意味で理解している人を,違う意味で理解している人が若干上回った。これを年齢層別にグラフにすると次のとおり。

意味が変化して伝わることわざのグラフ[年齢別]

(5)男女の言葉遣いについての意見 <問18>
―「違いがある方がよい」が過半数―

 男女の言葉遣いに違いがなくなってきていることについて意見を尋ねた結果を,平成7年度調査の同様の問いの結果と併せて示すと,次のグラフのとおり。「違いがある方がよい」は,今回,7年度に比べ8ポイント増加し,過半数に達した。

男女の言葉遣いについてのグラフ

4.情報機器と言葉

(1)携帯電話での話し方 <問20>
―若年層は“用件なし”や“長話”も2~3割―

 ふだん,携帯電話(PHSを含む)を使っている人(全体の46.9%)に,携帯電話で話すときの,話す内容や話し方について尋ねたところ,全体では「はっきりした用件のあるときに掛けることが多い」(93.5%),「要点を簡潔に話すことが多い」(83.7%)という回答が圧倒的に多かったが,20代以下では「特に用件のないおしゃべりをする事が多い」「だらだらと長く話すことが多い」と答える人の割合がやや高かった。

  特に用件のないおしゃべりをすることが多い だらだらと長く話すことが多い
男性 女性 全体 男性 女性 全体
全体 9.4% 15.4% 12.0% 6.6% 13.1% 9.3%
16~19歳 17.2% 30.2% 25.0% 20.7% 37.2% 30.6%
20~29歳 22.0% 37.5% 29.9% 16.0% 30.8% 23.5%
30~39歳 .9% 6.1% 8.2% 8.5% 5.2% 7.0%
40~49歳 3.0% 4.3% 3.5% 3.0% 1.1% 2.2%
50~59歳 6.6% 5.8% 6.3% 0.8% 3.8% 1.7%
60歳以上 4.5% 3.7% 4.3%

電子メールのやりとりで感じること<問21>
―若年層は言葉遣いや顔文字で親しみを増す―

 ふだん,電子メール(Eメール)を使っている人(全体の25.8%)に,電子メールのやりとりで感じていることについて尋ねたところ,そういう感じがすることが「ある」と答えた人の割合が圧倒的に高かったのは「電子メールには要点だけを書くので,簡潔なやりとりになる」(79.9%),「電子メールは話すように書けるので,思ったことが言いやすい」(75.1%)であった。
 「電子メールでは打ち解けた言葉遣いができるので,相手と親しくなれる」,「(^^)や m(_ _)mなどの顔文字を見ると,発信者への親しみを感じる」の二つは「ある」の割合が5割台だが,若年層ほど「ある」の割合が高いという傾向が顕著であった。

(「ある」の割合)

  電子メールでは打ち解けた言葉遣いができるので,相手と親しくなれる (^^)やm(_ _)mなどの顔文字を見ると,発信者への親しみを感じる
全体 53.9% 56.9%
16~19歳 78.3% 81.7%
20~29歳 65.4% 62.3%
30~39歳 49.1% 55.8%
40~49歳 45.8% 50.5%
50~59歳 28.6% 34.7%
60歳以上 39.3% 42.9%

 この調査に関する報告書『平成12年度 国語に関する世論調査〔平成13年1月調査〕―家庭や職場での言葉遣い―』は,財務省印刷局から刊行されている。(調査項目数28項目 199ページ 平成13年6月20日発行 本体価格1,360円)

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