文化庁主催 第4回コンテンツ流通促進シンポジウム“進化する音楽著作権ビジネス 〜音楽著作権等を活用した資金調達の可能性を探る〜”

第3部:パネルディスカッション

「音楽著作権等を活用した資金調達の展望と課題」

川瀬

 お待たせしました。ただいまから第3部を始めさせていただきます。「音楽著作権等を活用した資金調達の展望と課題」と題して、パネルディスカッションを行いたいと思います。

 本日は音楽著作権等を活用した資金調達の展望と課題を探るとともに、音楽著作権等を活用した資金調達の可能性を探っていただきたいと考えています。また、会場参加型で行いますので、何人かの有識者の方にご意見を伺うことにしています。なお、パネルディスカッションの模様は後日、文化庁のホームページで公表させていただきますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、本日のコーディネーターとパネリストの皆様をご紹介させていただきます。皆様のプロフィールについては、お手元のチラシをご覧ください。皆様方から向かいまして右手から、本日のコーディネーターをお願いいたしました、弁護士で青山学院大学法科大学院教授の松田政行様です。続きまして、パネリストのご紹介をいたします。先ほどご講演をいただいた株式会社フジパシフィック音楽出版代表取締役会長、朝妻一郎様です。社団法人日本音楽著作権協会常任理事、菅原瑞夫様です。音楽家でもあり、株式会社音楽館代表取締役の向谷実様です。みずほ証券株式会社インベストメントバンキングプロダクツグループ制度・ニュービジネス担当部長、北 康利様です。それではこれから先の進行はコーディネーターの松田様にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。


松田

松田

 ご紹介いただいた松田です。今日この壇上に上がっていただきました4人の先生方は、コンテンツ流通や音楽コンテンツの高度利用について日本の代表の方々です。先ほどの澤報告者から報告いたしました調査研究もこの4人のメンバーの大きな力があってできたものです。これをご参照いただけば、音楽コンテンツ流通のスキームをさらに高度化したものとして研究することができるだろうと考えています。それについても、もうすでにいくつか問題が出ています。評価の問題や新しいスキーム上の著作権関係団体が、音楽については、ある意味で錯綜しており、その調整関係なども図っていかなければならないということはありますが、現実に可能であろうということになっているわけです。

 さて、音楽コンテンツの一層の流通促進を図るためにコンテンツの新たな利用方が期待されていること自体は間違いないと思います。2006年の政府の知財推進本部におけるコンテンツ流通についても、かなり期待されていることは間違いありません。近時の法制を見ても信託業法やLLP(Limited Liability Partnership 有限責任事業組合)、いろいろな形で資金が集まり、高度な著作物がつくられる、なおかつその流通を促進するためにいろいろなスキームを考えようという研究が進んでいること自体は間違いないわけです。現実に、朝妻さんからのご紹介などもありますが、私は半分は実務家の仕事をしております。コンテンツ評価の問題はコーポレーションの評価を離れて、コンテンツ自体の固有の評価をして、それを取引の対象にしていきます。次にその取引の対象のものを証券化することによって、たくさんの方に参画していただきます。さらに次の段階は、その証券化した権利者の皆さん方が横の流通をしていきます。市場においては、証券化されたコンテンツを権利として売買していくという市場が生まれるところまで発展していくことが期待されていると報告されています。まだ一気にそこまではいかないわけですが、少なくとも第2段階まできたということは間違いないだろうと思っています。

 さらに、そのような新しいコンテンツ市場が生まれると、これはもう資産として評価し、資産として流通することになります。そうすると今での利用する側と、利用するものを開発する側の市場だけではなく、資産として動く市場が生まれるわけです。これは、財産権であれば当然の帰結でなければならないはずですが、日本ではまだそれほど活性化できなかったという諸事情があると思っています。それについても検討し、解消していかなければなりません。今まで出来上がりつつあるスキームを使って、ある意味では夢のあるコンテンツづくり、夢のあるビジネスづくりをどんどん発表していただきたいと思っています。4人の先生方は、まさにそのような構想をお持ちであり、ないしはすでに実務でノウハウとしてお持ちになっている方々ですので、場合によっては会場からのご質問も受けたいと考えています。

 私の挨拶はその程度にさせていただいて、最初は4名のパネリストの方々から大体5〜10分ぐらいの時間でそれぞれ発表していただき、会場に対するご挨拶に代えさせていただきたいと思います。順番は朝妻さんから始めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


朝妻

 先ほど私は講演をしましたので、基本的には講演が私のプレゼンテーションとして取っていただきたいと思います。あの中で、ボウイ・ボンド、Holland ―Dodger― Holland、Ashford&Simpsonなどの作家の著作権を対象として行なった資金調達では、デビッド・プルマンはいろいろがんばったのですが、その後あまりポピュラーになっていないと言うことに触れましたが、なぜポピュラーにならなかったのかという理由を言い忘れました。結局、それは作家の著作権を対象にして、作家と金融機関との間で行われたディールであり、音楽出版社が関与していません。音楽出版社にとっては、そのようなディールが行われたから、特にがんばろうというモチベーションが起きていないわけです。一方、当社で行なったFGMファンドなどでは、やはり自分のところで借入を起こしたということもあり、その対象になった楽曲が何とかもう1度収入を生むように、いろいろな形で働こうというモチベーションがありました。その結果が、一部は先ほどご覧いただいたような数字になって出ているのではないかと思います。

 先ほどの澤さんの研究報告にも出ていましたが、日本では作家個人の資金需要はあまり大きくないだろうと見られており、アメリカなどを見ても、作家が無理をしてあのような形でお金を集めても、結果はあまりよい形にはなっていません。ですから、対象とした楽曲を今後ともプロモーションしていくという、継続的な作家と出版社の協力体制が絶対に必要だろうということが先ほどお話できなかったことなので、ぜひそのことを頭に置いといてください。

 今回の著作権の資産評価に向けての動きは画期的であると何度かお話ししましたが、この資金調達スキームがうまく稼動するようになると、音楽出版ビジネス、音楽著作権ビジネスのダイナミックさがさらに増し、スケールとしても大きなものになっていくだろうと思っていますので、私はこの事自体が私たちの業界を非常に活性化していくものと大きく期待しています。


松田

 どうもありがとうございます。すでに会場の打ち合わせの段階で向谷さんから、朝妻さんのプレゼンテーションの中について、質問があるということです。皆様方にも同じような質問を持っている方がいらっしゃるかもしれませんので、ここで整理をさせていただきまして、向谷さんから質問を投げていただきたいと思います。挨拶をする前で申し訳ないのですが、朝妻さんのプレゼンが短いので、ここに挟みたいと思います。


向谷

 突然ですが、挨拶は後ほどにさせていただきます。先ほど朝妻さんのプレゼンテーションを聞いていて、1カ所だけ驚いたところがありました。CMでビートルズの曲を使用したら3000万円という、そのような言い値があることが驚きだったのですが。


朝妻

 基本的にコマーシャルの使用に関しては、指値というものができます。その権利者が「この値段でなければイヤです」と言えることになっているのです。ですから、向谷さんの作品でも、例えばタバコ会社からコマーシャルに使いたいという話があり、向谷さんはタバコを吸わないからこのコマーシャルの話が壊れてもいいと思ったとします。そして、「3000万円を出してくれなければOKじゃないよ」とおっしゃって、なおかつタバコ会社が「どうしてもその曲を使いたい」ということになると、3000万円でも成立する可能性はあります。また、「それに3000万円払うよりも、こちらを500万円で使えるのならこちらを使いたい」ということになってしまうこともあります。しかし、基本的には使用者と権利者との間の交渉で値段が決まっています。


向谷

 なるほど。そこが利用開発というところですね。ちなみに私は3000万円で結構ですのでよろしくお願いします。500万円でもいいです。


松田

 コマーシャルで音楽を使うことは通常の方法ですが、音楽著作物の通常の利用の他に、JASRACによる使用料規程によって支払われる使用料以外にも、今の話は一例だろうと思います。いろいろな面の利用をしていくことが確保されつつ、証券化スキーム等が確実になっていかなければならないという問題点もあるということであり、なおかつ音楽家、作曲家、著作権者としては、そういうものの利用の促進をできるスキームを考えていかなければならないということになるのだろうと思います。

 次に、JASRACの菅原さんにお願いしたいと思います。よろしくどうぞ。