事業詳細

地域と共働して文化遺産の活用を担う博物館連携事業

実行委員会
和歌山県立博物館施設活性化事業実行委員会
中核館
和歌山県立博物館

事業目的

地域における文化遺産をいかに継承していくかという問題は、高齢化や人口減少による地域コミュニティの縮小が全国的に顕在化する中で、今後、より重要性を増してくる。また東南海・南海地震に伴う津波被害が想定される中で、過去の被害記録を避難に活かし、また文化遺産の喪失を最小限に留めるための取り組みも必須となっている。これらの課題に対して県立博物館がその機能(調査・研究・収集・保管・展示・普及)を活用して、地域に伝わる文化遺産の価値・意味の顕在化と共有化を図り、また地域に伝わる文化遺産の新たな保管方法(新技術の利用)の提示と実践を行うことにより、地域と資料との結びつきをより強固なものとして、住民の地域の文化や歴史への関心を高めるための役割を、地元自治体や関係機関などとも連携しながら、能動的に担うことが本事業の主たる目的である。かつ視覚障害者など少数利用者のための鑑賞環境の整備を行うことで、あらゆる人々に開かれ情報を共有化する、新時代の理想的な博物館の構築につなげることも実践的に行う。さらには、こうした取り組みも含めて、和歌山県内の県立博物館施設において行われている特徴的な教育活動の詳細を、各館連携して世界の専門家や自国民に対して提示し、情報の共有化を図ることで、地域とともにある博物館の新たなあり方を検証するための基盤作りに資することを目的とする。

事業概要

本事業では、地域に伝わる文化遺産の価値や意味の顕在化・共有化と、その継承方法の新たなあり方について、学校・自治体・地域住民などと連携しながら、4つの取り組みを行った。

  • ①地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業では、これまでの5年間に行った調査事業の総括として県内外で20回の調査を行い、その成果を加えた冊子「『災害の記憶』を未来に伝える-和歌山県の高校生のみなさんへ-」を作成して、将来地域文化継承の担い手となる県内の全高校生と、関係地域に配布し、冊子内容は県立博物館HP上で公開したほか、コラム「先人たちからのメッセージ 防災減災わかやま」を産経新聞に掲載した(計6回)。
  • ②文化遺産の複製を活用した防犯対策事業では、県立和歌山工業高校及び和歌山大学との連携により、九度山町九度山の槙尾山明神社の高野明神立像・白鬚明神坐像、紀の川市国主の大国主神社の権大明神立像の文化財レプリカを作製し、お身代わり神像として、槙尾山明神社には9月27日、大国主神社には2月27日に奉納式を行い、生徒・学生と地域住民との交流を図った。
  • ③さわれる資料による博物館のユニバーサルデザイン化事業では、②の事業で製作した神像のレプリカをさわれるレプリカとして活用し、視覚に障害のある方をはじめ、あらゆる人が触れられる資料として準備した。またさわって読む図録は県立和歌山盲学校との連携により『さわって学ぶ神像の基礎知識』と題して作製し、視覚障害者の郷土学習、美術学習の教材とし、県立和歌山盲学校、県内公共図書館、近畿盲学校、主要点字図書館ほかに提供した。
  • ④ICOM京都大会海外研究者交流事業として、9月1日~7日に国立京都国際開館で行われたICOM京都大会では、会場内にブースを設けて②③の事業の取り組みについてパネル・レプリカ・触図図録・映像によって紹介し、世界と日本の博物館研究者にアピールを行った。また9月5日に行われたオフサイトミーティングでは、CECA(教育・文化活動国際委員会)の約90名の研究者を受け入れ、県立紀伊風土記の丘・県立博物館・県立近代美術館の見学とともに、印南中学校生徒による①の事業の紹介、和歌山工業高校生徒による②③の事業の紹介を行った。CECAの来訪にあわせて、和歌山県における特徴的な博物館活動を紹介した『まもって、そだてる 和歌山県の博物館活動』(言語・日本語/英語)を発行し、参加者に配布したほか、県内図書館・高校・全国大学・博物館・研究機関に配布して活用を図った。

実施項目・実施体系

  • 地域に眠る「災害の記憶」と文化遺産を発掘・共有・継承する事業
    • ①調査内容について企画・検討する会議の開催
    • ②調査対象地域における資料調査・聞き取り調査等の実施
    • ③調査成果を掲載した冊子の作成と事業・調査成果のウェブ公開
  • 文化遺産の複製を活用した防犯対策事業
    • ①文化財レプリカ作製
  • さわれる資料による博物館のユニバーサルデザイン化事業
    • ①文化財レプリカ作製
    • ②さわって読む図録作製
  • ICOM京都大会海外研究者交流事業
    • ①CECAオフサイトミーティング開催
    • ②博物館教育活動普及用資料作成

事業実績(PDF)

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