文化庁主催 第5回コンテンツ流通促進シンポジウム“次世代ネットワーク社会の到来は著作権制度を揺るがすのか”

主催者挨拶

吉田大輔(文化庁長官官房審議官)

 皆様、こんにちは。本日はこの「第5回コンテンツ流通促進シンポジウム」にお運びくださいまして誠にありがとうございます。現在、著作権にかかわる様々な課題が取り上げられています。例えば、私的録音・録画問題、あるいは保護期間の延長問題などのような事柄については、ある意味で目前の課題ということで文化審議会の著作権分科会の中にそれぞれ担当の小委員会などを設けて鋭意検討しているところです。一方、そのような目前の課題とは少し離れて、今後の長期的な視点で著作権制度のあり方を考えることも非常に大事になってきています。去る5月末に決定された、政府の「知的財産推進計画2007」の中では、デジタルコンテンツの流通促進のための法制のあり方について、ここ2年以内に検討するということが謳われています。これは長い将来を見越しての検討となるかもしれませんが、創作や流通といった側面で様々な変化が起こってきているわけです。「次世代○○」などという「次世代」といった言葉を用いた新しいコンテンツ関連の商品が登場したり、インターネットを使った様々な発信や流通といったものが広がってきたりと、これまでの著作権制度では想定していなかったような新しい事態が生じてきています。

 このようなことから私たち文化庁の方では、昨年度、「次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方についての調査研究会」というものを設けました。ここ2、3年というわけではありませんが、もう少し長いスパン、だけれどもそれほど遠くない将来ということで、あるべき著作権制度について研究を行いました。この研究では法制度に限らず契約システムなども含めて幅広い視点から現行の著作権制度の枠組みにとらわれない、次世代ネットワーク社会において、どのような著作権制度が望ましいのか、また、著作権制度を改善するとすればどのような方策が考えられるのか、その際に克服すべき問題点としてはどのようなものが挙げられるのかなどについて様々な角度から研究、検討をいただきました。

 今回のシンポジウムでは、この後の金先生からの基調講演に続きまして、研究報告をさせていただきます。その後は研究会のメンバーによるパネルディスカッションを行う予定です。このようなことを通じて、次世代ネットワーク社会における著作権制度のあり方についてより幅広く、より深く考える機会を提供できれば幸いです。文化庁としてはこの文化の発展の基盤を成す著作権制度の整備、改善についてこれからもひとつひとつ取り組んでいくつもりですが、会場の皆様方におかれましても御理解と御協力をお願いしたいと思います。それではこれからのシンポジウム、どうぞ時間の許す限り、できれば最後までよろしくお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。