国語施策・日本語教育

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7 ローマ字教育の問題 (ローマ字教育の必要性についての審議)

 具体的な事がらの審議にはいる前に,まず,ローマ字教育の必要性について審議を進め,次のように決定した。

 国語の表記をやさしくして,教育や知識を広め,文化的国民を育て上げる一つとして,漢字・かなと並行してローマ字の学習を行うことが必要である。また,ローマ字は今日世界で広く行われている文字であり,日本でも国語を書き表わすために用いられることが多くなってきたので,ローマ字による国語の書き表わし方および読み方を学ぶのである。

 次いで勧告の内容について審議を進めた結果,第2項が最も重要であることを認め,これに対する具体的結論としては,「国語科における必修科目としてローマ字を含む」ということが妥当であることを確認した。
 続いて,ローマ字学習の開始学年・継続学年・教員の養成,その他の諸問題についても各委員から提出された意見を検討し,これまでに審議した事がらを参照して具体案をとりまとめるため起草委員会を設けることとなった。
 (起草委員は石黒・千葉・松浦・武藤・山崎の5委員が指名されたが,千葉委員は辞退されたので,けっきょく4名となった。)
 この申合せに従って,起草委員会が開かれ,国語教育におけるローマ字の取扱について,部会としての意見をとりまとめ,なお,次のようにそれぞれの箇条についての理由を確認した。

  1.  ローマ字による国語の読み書きを必修にする理由
    (1) ローマ字を学習することによって,国語教育の効果をいっそう高めることができる。
    (2) 現在,社会でローマ字が使われており,将来ますます普及する可能性があるから,児童にローマ字の学習をさせる必要がある。しかし,現行のように,各学校の選択に任せておいたのでは,ローマ字教育の効果をじゅうぶんに上げることができないから,これを必修とすべきである。
  2.  さしあたり第3学年からローマ字の学習を始める理由
    (1) ローマ字の学習も,文字教育の原則からいえば,第1学年から始めるべきであるが,国語教育の学習段階からいっても,教員の質と数から考えても,さしあたり第3学年から始めるのが比較的行われやすくまた,効果が上がると考えられる。
     現行制度に従い,すでに第3学年から行っている学校もあるから,この学年からならば,実施することができると思われる。
    (2) 従来の経験から考えて,ひととおり,ローマ字文をすらすらと読み書きする能力を養うためには,第3学年から始め,各学年とも最低限度,年間40時間は必要と思われる。
  3.  つづり方・分ち書きの方式が単一なものであるべき理由
     正規の教育課程として全国的にローマ字の学習を行うためには,単一なものでなければ,いろいろの不便を生ずるおそれがある。
  4.  教員の再教育についての具体的処置
     文部省・教育委員会,またはそれらから委託された民間団体などが必要な講習を行う。
  5.  中学校におけるローマ字学習の取扱を当分の間,現行のままとする理由
     中学校におけるローマ字学習の必須の問題は,小学校において,第3学年から必修科目としてのローマ字を授けられた児童が,中学校へ入学する年度からは考慮すべきであるが,それまでは,生徒の学力水準がまちまちであり,また,教員の質と数とから見て,一応,現行の取扱によるのが適当であろうと思われる。

 以上の理由のもとに,部会としての成案(第13回総会へ提出し審議の結果,さらに第16回部会において修正をほどこしたもの)を「国語教育におけるローマ字の取扱について」と題して第14回総会(昭和27.4.14)に報告したが,この問題はさらにローマ字調査分科審議会で審議することに決定した。

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