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8 ローマ字つづり方の問題(協議の結果)

 第1回の部会において,まず,審議方針について協議した結果,「なるべく,すみやかに,少なくとも教育面においては,ローマ字のつづり方を一つの方式にまとめ,ローマ字教育を強力に推進しよう」という意見に一致した。
 次いで「いわゆる訓令式・日本式・標準式の3式の主張ないし理論的根拠などについては,もとの臨時ローマ字調査会(昭和5.11.25〜11.6.30),ならびに,さきのローマ字調査会(昭和23.10.12〜24.5.31),ローマ字調査審議会(昭和24.6.1〜25.3.31)において,ほぼ出尽した観がある。1日でも早く具体的に結論を出すために,この部会では理論の討議はやめて,現在,世間一般に行われている3式のうち,どれか一つを取り上げて基準とし,それに検討を加え,欠点と認められるようなものがあったならば,それを改めていくようにすればよい。基準とする式は何式でもよいわけだが,内閣訓令として効力をもっているいわゆる訓令式を取り上げるのがよいだろう。」また,「相当大幅に許容事項を認めることにすればよい。たとえば『シはsi(shi)と書く。』または,『シはshi(si)と書く。』というようにどちらを使ってもさしつかえないというように決めていけばよい。」との提案があり,これに対して「3式について各人が思うところをじゅうぶんに述べ合って総合的な結論に到達すべきである。」また,「3式をまったく平等に取り扱うべきである。」との提案があったが,けっきょく,あとの案が採択され,それぞれの式についての主張・説明が行われ,また,それらに対する質疑応答がくり返し行われた。
 なお,その間において,つづり方を決めるについては,

1) 3式だけを取り扱い,第4式などの新しい方式ものもは原則として採用しない。
2) 原則として1音について一つの書き方を決める。どうしても許容事項を認めなければならないものにかぎってふたとおりの書き方を認める。
 
 という2か条を確認した。
 第6回(昭和25.12.4)から第15回(昭和26.7.9)に至る部会においては上にもしるしたように,各式の主張・説明,およびこれに関する質疑応答が行われたのであるが,その間にもしばしば,議事の進行に関して,「このような質疑応答をくり返していると,けっきょく,臨時ローマ字調査会の席上で行われた議論のむし返しになって,結論を出すのが遅れるから,理論の論議はある一定の時間で打ち切り,その後は必ず具体的審議にはいるべきだ」というような意見が出された。そして,ついに第16回部会(昭和26.9.10)において,

1) 3式の主張・説明に関することは文書によって行う。
2) 次回からは五十音図により具体的審議にはいる。

という2か条が確認され,その後は,一方において,印刷物による各式の理論上の主張・説明を行いつつ,部会の席上においては,毎回具体的に審議が進められ,第1読会としては,一応次のように決定した。

 ただし,(6)を除いて,各項とも少数意見の留保つきである。

(1)「シ」は si または shi と書く。
(2)「チ」は ti または,chi と書く。
(3)「ツ」は tu と書く。
(4)「フ」は hu と書く。
(5)「ジ」は zi または ji と書く。
(6)「ダ行」は da(ダ) di(ヂ,ディ)du(ヅ,ドゥ)de(デ)do(ド)

 と書く。

(7)助詞の「ヲ」は wo と書く。
(8)はねる音「ン」は n と書く。
(9)つまる音はすべての場合に,つまる音を示す子音の部分を重ねて書く。
 ―ss―,または―shsh―  ―tt―,またはchch―
(10)「シャ」は sya または sha と書く。
 残りの「シュ・ショ,チャ・チュ・チョ,ジャ(ヂャ)・ジュ(ヂュ)・ジョ(ヂョ),クヮ・グヮ」などについても上記の方針による。
 なお,名詞の語頭を大文字で書くことについては多数の意見が一致したがこれの決定は,分ち書き部会にゆだねることとなった。
 以上の第1読会として決定した諸事項,ならびに決定事項中における「または」の解釈等については,第2読会において,さらに検討を加え,審議を続行することになっている。
 以上の各項をとりまとめ第13回総会(昭和27.3.10)へ報告した。このほか次の各項は,部会に提起された諸事項中,最も重要な事項であることを最終の部会において,改めて確認した。


  • 田口委員提案
      ラ行を la li lu le lo と書き表わすこと。
  • 井上委員提案
      「新宿」「お茶の水」などの最後の「u」を省略して書くことを認めること。
  • 服部委員の意見(ローマ字調査審議会当時に提出)
      タ行を ta ci cu te to
      チャ行をcya   cyu   cyo

 と書き表わすこと。

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