国語施策・日本語教育

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議事 (会長より)

土岐会長

 きょうは,運営,今後の方針について審議し,できれば部会をどうするかについてもお話し合いを願いたい。
 先月の総会のときも御意見が出たが,国語審議会の改組の理由,旧審議会と新審議会との性格の違いなどについて,わたくしの見解を述べてみたい。(賛成)
 国語審議会は,昭和9年12月に設けられた。それ以前に国語問題を調査して文部大臣に報告する機関として国語調査委員会・臨時国語調査会があったが,単に調査報告するだけでは,せっかく調査したものも握りつぶしになるおそれがあるというので,調査機関から諮問機関に変ったのが,国語審議会である。この審議会に対して昭和10年3月,文部大臣から次の四つの諮問事項が出た。

  1.  国語ノ統制ニ関スル件
  2.  漢字ノ調査ニ関スル件
  3.  仮名遣ノ改定ニ関スル件
  4.  文体ノ改善ニ関スル件

 この審議会が,本年6月1日に発展的に解消して新しい国語審議会となったのであるが,その改組の際,衆参両院では,審議会不要説が出た。その理由は,国語研究所が設立されて,今までの審議会のような仕事ができるなら,別に国語審議会をおく必要はないというのである。しかし,文部当局では,科学的な研究調査は国語研究所でやるが,大臣には国語問題についての諮問機関が必要であると主張し,けっきょく審議会が存置されることとなった。そして,委員選定のしくみも,今までは大臣から指名の形で委嘱任命されていたのが,今度は推薦母体からあげられた候補者を委員会で選考し,選ばれた人の承諾を得て決定するというように,選任の手続も違ってきた。改組委員の間で考えられていた審議会の性格は,諮問機関であると同時に,自主的な立場からも大臣に勧告するという2本だての形であった。しかし,今度の国語審議会令では諮問機関でなく,建議機関の性格が強くなっているから,大臣の諮問事項があるとしても,原則としては審議会で調査研究して建議する形になると解釈される。すなわち今までは受身の形だったのが,能動的に必要と認めるものを調査審議するのである。それには国語研究所の資料をもらうこともあり,それぞれの機関に頼んだものを審議会でまとめて建議することもあろう。建議することをうるというよりは,すぐ実施される見込みのついたものは,積極的に実施面に至るまで建議する責任があるのである。
 以上,わたくしの理解するところを述べたのであるが,前の審議会は国語に関する事項が主で,国語教育の振興方策にまで及んでいないし,国字の問題とその整理を先決問題とし,四つの諮問事項も完全には終っていないのであるが,新しい文部省設置法に基く国語審議会として,今度の審議会は,国語の改善と国語教育の振興の二つが大きな問題となっている。  ところで前の審議会のやったことを全面的に白紙にかえすというような考えが社会の一部にはあるらしいが,もし当用漢字表・現代かなづかい等を検討するということになれば,その前にじゅうぶん慎重に世論調査というようなこともやらなければならないと思う。すでに文芸家協会では,主として文芸家について調べたことがあるが,そういう社会の一部の調査でなく,社会全般のことがはっきりわからなければならない。そのためには,審議会が建議して,しかるべき機関に調査してもらうやり方もある。国語研究所との関係については,研究所では独自の立場で研究を進めているが,審議会で審議したほうがいいと考えたものは連絡をとってくれるだろうし,こちらから調査を依頼することもあろうが,注文を出すとか,下受け関係ではない。しかし,研究所の評議員には,審議会の委員を兼ねているかたが現在11人あるから,人を通して両者の連絡をはかることができる。国会との関係については,委員のなかに2名迎えて,国会との連絡を保つことになっている。以上,わたくしの理解をはっきりしておかないとみなさんの今後の御活動に疑義が出てきはしないかと思って,要点を申し上げた。議事についてお話し合いを願いたい。

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