国語施策・日本語教育

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議事 国語審議会ですでに決定した事項の実施について

時 枝

前回のわたくしの意見につけ加えたい。審議会でやったことを必ず研究所に依頼せよというのではなく,できるだけこういう機関を利用して審議会の効果をあげよという意味である。

宮沢副会長

審議会に対して,今まで一国民として外部から見た感じを申し上げたい。審議会は,その決めたことを一般社会に強制するというようなことは考えられもせず,またできることでもない。審議会の力でなしうることは,とりあえず官庁で使う程度であるが,いちばん大きい影響をこうむるのは教科書である。新聞では自主的に実行しているのにすぎないのに,世間では国家の権力で強制したように誤解している人が多い。こどもの名の文字が戸籍法で当用漢字表の範囲内に制限されたが,こういう重大な事件が国会でなんの議論もなしに通ってしまったとことについては問題があるとしても,国民の選んだ国会で決定しておきながら,これを天下りと称するのはおかしい。ある代議士にこのことを話したら,まことにけしからんことだが,いつ通過したか知らなかったと言っていた。とにかく各方面で認識が足りない。また,世間には,政府の命令ですれば,どんな改良でもなしうると考えている人もあるが,反対に政府が権力的に強制するのはすべていけないと見る人もある。しかし,国語の問題は,国家の権力で押しつけることはできないし,その効果には限度がある。ただ民主的な時代において事業を達成するには,慎重に考えてやらなければならない。

田 口

国会のそういう態度に関して建議することはできないものか。

時 枝

改革案が教育面に実施されたため,いろいろ拘束される点が多く,教科書についても疑問が起っている。

土岐会長

過去の審議会においてじゅうぶん議を尽さずに案を通過させたとは考えられないが,今度の審議会としては,われわれで慎重にやることを申し合わせればいいのではないか。教科書に採用されたのは,審議会が適当なものと考えて答申したものを当局がいいと認めて取り上げたのであって,押しつけたのではない。こういうことは審議会としては,むしろその仕事が社会的に効果があったこととして喜ぶべきことではなかろうか。

時 枝

実施してみて,欠陥・支障が発見されるというのは,もう一度新しく考えなおしてみる必要があるということだというのである。

松 坂

審議会の責任については,戸籍法上の問題と教育上の問題とでは性質が違う。当用漢字表では,名まえの文字は国民生活に深い関係があるので地名とともに一般から切り離し,固有名詞には触れないとそのまえがきにもうたってある。戸籍法にこれが取り入れられたことで,審議会が責任を問われるのは迷惑である。
名まえの文字と教育上の新しい統制については,世論調査の必要があるとわたくしも思う。時枝委員は実施上の障害は案が不備だからだと言われるが,改革の際に多少の出血があるのは当然で,命とりになるような手術は困るが,早く健康体となるためには,多少の痛みはがまんしなければならない。

宮沢副会長

わたくしの発言が審議に多少でもブレーキをかけたとすれば申しわけない。天下りで強制的だと見ている人がいるのはまったく誤解にすぎないということ,名まえの文字のことは,このような重大なことを国会でなんら議論されもせず短日時のうちに立法化されたことについてみなさんの注意を喚起したまでである。

千 種

審議会が権力的に押しつけるという誤解をさけるようにする必要はあるが,名まえの文字の制限は審議会にとって迷惑だと言われることについては,われわれとしてはむしろ審議会で決められたことが社会で採用されたのを喜ぶべきだろうと思う。

土岐会長

出欠の御返事に添えていただいた御意見の要約をお手もとにさしあげてあるが,それについて順次御説明願いたいと思う。

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