HOME > 国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 第1期国語審議会 > 第2回総会 > 議事
議事 審議事項について
各委員の意見(要約)
- 当用漢字・現代かなづかいの疑義に関する処理方法。(時枝)
- 外国語の表記法。(石黒)
- 漢字の部首整理。(石黒)
- 国語審議会が国字審議会にならぬよう注意すること。(颯田)
- 当用漢字表以外の漢字を用いている固有名詞の扱い方を研究すること。(前田)
- 地名の文字の合理化につき具体案を作ること。(松坂)
- 事務局案について審議し,これを基礎に決めてゆくことがよい。(今井)
- 横書き普及についての内閣訓令告示案を作る。(松坂)
- 科学人全部の希望として横書き印刷を縦書きと同様に取り扱うこと。(田口)
- 話しことばについての研究に着手すること。(河竹)
- 話しことばのうち朗読法を新制大学の教養科目に加えること。(河竹)
- 演劇や映画におけることばについて審議すること。(河竹)
- 学術用語に使われる漢字と当用漢字との調整。具体的には,学術用語制定に際して当用漢字表にない漢字を使うことを認めること。(服部静)
時 枝
(1)さきほどわたくしの申し上げたことに対して松坂委員から反ばくがあったが,実際教壇に立っている人たちは,改革案についての疑義をどこへもってゆけば解決できるかわからなくて困っている。その点の処理およびどこに疑義があるかについて確かめなければならない。
土岐会長
世論調査をしてはどうか。
時 枝
わたくしのいう意味は,実際の起った疑義をどこへもってゆけば解決してもらえるかというのである。
原課長
国語課としてもある程度やっているが,さらに普及徹底をはかるとともに,来年度の予算に計上してあるワークショップを実施してもっと推進していきたい。
時 枝
普及徹底ではない。疑義の解決策である。
沢 登
現代かなづかいの表記法を正確に知るためには,旧かなづかいの知識がなければならない。高等学校の生徒は歴史的かなづかいと現代かなづかいの文法との違いを教えられていないので,具体的に迷惑することがたくさんある。われわれの手でデータを集めれば部分的に変更してもらえるものか。
保科事務官
現代かなづかいの大きな矛盾は,助詞の「は・へ・を」の除外規定である。理想主義の人々は前々から攻撃しているが,これはやむを得ぬ実施上の処置である。
時 枝
保科先生の言われたようなことはわかっている。具体的な例を言えば同じ「藤原」の読み方に,前の課ではフジワラとルビをふってあるのに,次の課では古典的教材であるためにフヂハラとあるような矛盾をどうするかというのである。
藤 森
当用漢字制定当時,福島県の人から文部省に疑問を問い合わせたが回答がなかったといって毎日新聞社へきいてきたことがある。疑問の処理法について処置がとられなければならない。また,当用漢字・現代かなづかいを教科書や新聞や戸籍法で実施してくれたのはありがたいことだ。せっかくお歴々が集まって審議して作っても,どこでも実施してくれなければなにもならない。審議会は実施面についても責任を負い,実施してくれるような権威あるものを作りたい。
中 島
すでに決定されたものの内部にある問題については,さっそく委員会をつくって検討してほしい。
土岐会長
すでにきまったものを再検討する部会と,新しい問題を審議する部会とを別々につくるか。それとも一つの部会で両方やるか。
石 黒
その問題は,ここにあげてある審議事項の説明がすんでからでよい。すでに制定されたものの解釈や疑義の解決については,文部省国語課の人が審議会の小委員会にも出て事情をよく知っているから,国語課で処理してもらい,なお疑義があれば主査委員会などにも相談して返事したらよい。
原課長
国語課では審議会の趣旨に沿ってできるだけ回答している。
石 黒
(2)外国語のかな表記の不統一に対し,基準を設ける必要がある。
(3)当用漢字の字体が整理されたについては,部首の整理も必要である。
颯 田
(4)これは提案というほどのものではない。会長に申し上げるだけである。
前 田
(5)当用漢字・現代かなづかいはありがたい。もっと各方面の実務に普及したい。しかし固有名詞に無制限に漢字が使えるのは弱点であり,保守的な人はそれを口実にして改革に反対する。タイプライタなどに適当な基準となるものを一般に示してほしい。公用文では地名・人名のかな書きを認めている。
松 坂
人名の文字は地名以上に執着があるから,まず地名を先にするのがよい。新しい地名には当用漢字表の範囲内でつけるよう,なんらかの方法で徹底したい。
今 井
(7)事務局案は問題の所在をかなりよく整理してあるから,これを基礎に審議すれば便利と思う。
松 坂
(8)公用文の横書き実施の時期が不徹底であった。国民の文書をも横書きの方向に進めることに努力したい。
時 枝
内閣訓令告示案を作る前に,それを審議会で審議する必要があるという意味を含んでいるのか。
松 坂
そうである。
田 口
(9)横書きの原稿は印刷所から拒否される傾向がある。外国語や数字・数式などを割愛し,知識の交換がさまたげられることが多い。次に日本語では,読むことの教育が遅れている。国会などでも発音がひどい。発音についての審議もしてもらいたい。
中 島
今までの活字は縦書き用で横びらきだから,横組には適しない。このような点の改善についても審議会は働きかける必要がある。
河 竹
(10)(11)(12)審議会は今まで文字ことばを主として審議してきたが,今後は話しことばについても手をつけてほしい。朗読法は話しことばと関連する。
颯 田
人名などで電話が通じないものがある。キクチ カズオなどは,音韻的にむりで美しさがない。
服 部(静)
(13)わたくしは,文部省学術用語委員会に関係しているが,当用漢字を決める際に自然科学方面のものをどの程度調べたか疑わしい。たとえば「胚」などは,どうしてもほしい文字である。当用漢字表の字数をふやすか,学術用語には多少の自由を認めてほしい。
原
たびたび変るのも困るが,地名・人名・科学用語の問題のあるから,漢字についてはぜひもう一度考えてほしい。
服 部(静)
教科書検定の際,当用漢字表外の文字が多いと減点するというが強制でないならば減点すべきではない。
時 枝
賛成。それから小・中学校で習字を課することを国会に出すというが研究所や審議会を通さずに決められることは危険である。審議会はそういう方面にも発言権がある。