国語施策・日本語教育

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議事 国語白書の公表について

園 田

 白書ができたら一般に知らせるそうだが,中島氏の総会での話では20枚ぐらいという見込で,それを紙面の少ない新聞に載せることはむずかしい。国語問題に関心のある方面に分けるには,どういう方法でするか。

土岐会長

 第1草案は12〜3枚,それを整理して15〜6枚になるかと思う。その要点のようなものも本文と同時にこしらえたいと思っている。できれば印刷して各方面に送り,意見を求めることにしたい。

藤 森

 発表するねらい,発表の効果について考えたか。国語審議会の性格などはもっと詳しく微に入り細にわたって書いてもらいたい。

土岐会長

 発表の効果があるかないかはわからないが,義務があると考えられる。各方面から反対も賛成もあると思う。それが国語審議会に対する世論を知る資料にもなる。白書の全体に現れたものが,審議会の性格を説明することになると思う。

時 枝

 白書の部会のひとりとして申し上げる。会長は効果のことはあまり考えていないようだが,われわれは大いに考えている。国語の問題を明らかにすることによって,一般の人たちに関心をもっていただく点で大いに効果がある。

土岐会長

 わたくしのことばは足りなかったが,そういう効果の得られることはもちろん望ましいが,それは予想しにくいという意味である。

時 枝

 賛否を求める性質のものではない。一般に知っていただくことがいちばんたいせつなのである。

土岐会長

 発表すれば賛否の意見も相当に出るであろうと思う。それが審議の役にたつものなら取り上げられることになろう。

藤 森

 せっかく発表しても逆効果が起りはしないかと考える。多少でも関心のある人は必ず何か言うに違いない。それをただ「聞きおく」程度でよいか。

時 枝

 逆効果とは具体的にどんなことか。

藤 森

 たとえば,当用漢字が現在使用されているが,使用させる方法がまったく不親切である。国語審議会は,学術用語の整理などにも相談にあずかるべきである。疑惑をもって実行をしぶっているむきもあるので,今ここでこういうものを発表すると,せっかく今までに決まったものをまたやりなおすという感じを与え,国語審議会は,実行の伴わないものをかってにやりなおすように世間はとる。実施面に支障をきたすような疑惑のあることは,発表しないほうがいい。

時 枝

 疑惑を生じるような書き方はしないつもりである。白書の書き方の形式に従って,疑惑をもつものにはもたせ,事をあからさまに知らせるのがたいせつである。

土岐会長

 逆効果のあるほど関心がもたれれば,それはむしろ効果的ではないか。

藤 森

 逆効果があるほど価値があるかどうか。

土岐会長

 白書を公にすることによって審議会の立場と誠意は認められると思う。

藤 森

 そういうものを人にしいることになりはしないか。官報に発表する場合は別だが。

原課長

 官報には発表しない。

土岐会長

 こしらえておいて委員の間だけのものとしておくほうが無事という御意見か。

藤 森

 白書は国語審議会の性格を明らかにするのが目的で,世間に発表することは考えていなかった。

土岐会長

 危険というべきかどうかは知らないが,そのくらいの覚悟は審議会がもつべきはずと思う。

藤 森

 それだけの覚悟があればけっこうである。

松 坂

 もし心配のようなことがあったらやめたらいい。要するに新しい国語審議会の性格は,従来の極秘を改めて,ガラス張りのなかでやると言う意味であらゆることを発表していいと思う。

舟 橋

 白書には,わたくしの言いたいことが書けていて,たいへんけっこうと思う。藤森氏の言われるせっかくということばにはマジックがある。せっかくと言われると何も言えなくなる。藤森氏の心配されるような非難がどんなにごうごうと起っても,それを当然見通して,白書のなかに書いてある。従来の官僚的な点を打破して,うやむやにせずに公表するところに,今度の審議会の発展性があり,大衆性がある。そういう意味で公表することはけっこうである。

中 島

 白書を作ろうとした理由は,逆効果もあるだろうが,そのままにしておけば,もっと悪いことが起るかもしれないからである。従来の審議会は天下りであるという非難があるが,しかし事情がわかれば必ずしもそうでない。ただ人工的に急激に上からの力で国民に押しつけるのはまちがいであることがわかった。失礼かもしれないが,会議の様子がとかく堂々めぐりになる。国語問題には,ことばを伝える面と受ける面とがある。われわれが議論をしていく前提条件として,われわれの頭のなかに入れておく必要として思いついたのである。公表については考えていなかったが,やはり発表したほうがいい。国語問題はオープンにしたほうがいい。旧審議会のやり方にも悪い点はあったが,世間の受け取り方も悪かった。言語問題は単に行政的にかたづけるべきものではない。社会慣習として考えるべき問題である。わたくし個人としてはマイナスの逆効果が起ればかえっておもしろいと思っている。

宮沢副会長

 わたくし個人の感想としては,発表は大いにやっていだきたい。ねらっている効果は時枝氏とは違うが,国民一般の関心が一番重大でどんなことも国民の協力がなければ長続きしない。できればパンフレットにしてでも,積極的に公表宣伝の労をとってほしいくらいである。

舟 橋

 発表する前に委員の間で抵抗や疑義があってはいけない。藤森氏はなにか疑義をもたれているようだから,徹底的に理性的に話し合ったら,わかる筋があると思う。システムができているのだから,発表してしかるべきである。審議会がガラス張りのなかでやるようになるのはまことにけっこうである。

宮沢副会長

 わたくしはぜひ発表して周知徹底させたい。ただし白書の内容による。ある特定の意見を強力に押しつけるのでなければいい。今まであったことを客観的に述べて,国民の協力を求めるところに重点があるのではないか。舟橋氏の言われたような,じゅうぶんに言わないうちに,強引に結論が出るというようなことのないようにしたい。人によっては危険というより,歓迎すべき点もあるかと思うが,問題を客観的に重点を強く指摘する方針にすれば,藤森氏の心配されたようなことはないと思う。

土岐会長

 客観的ということはじゅうぶん盛った草案である。部会の10人がその文章を検討し,4月に総会を開いてさらに検討し,公表していいということになった上で,発表する手順となろう。じゅうぶんに意見を尽さないうちに発表になることはない。白書の部会は総会の縮図のようで,なかなか活発に意見が交換されている。白書についてはだいたい御意見が出たことと思う。発表については改めておはかりするが,原則的には発表することになると思う。念のため,ローマ字のことは,さきほどの説明で御了解を得たことにしていいか。

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