国語施策・日本語教育

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議事 ローマ字の問題について

青 野

 これは根拠のある消息か,あるいは憶測が知らないが,日本語の表記はゆくゆくローマ字にするということがだいたい決まっていて,現在の国語の諸問題は,ローマ字にゆく過程であるとの疑惑が国民の一部にある。審議会は白書のなかにそのことをはっきりさせなければ,ますます疑惑が加わって,せっかくの国語問題に対する関心を傷つけはしないか。

土岐会長

 表記法については,はじめから目標や方向を決めて議を進めるのではない。ローマ字についてもまったく同様である。

青 野

 国民の一部の憶測や不安を解く必要があるのではないか。

時 枝

 ローマ字になることについて不安であることなどは,国語審議会の取り上げるべき問題でない。どういう方法で現状に対処してゆくかが,審議会の態度で,世間の不安というのは,従来の審議会の態度に対する不安であろう。

青 野

 そのような疑惑を必ずしも審議会が解く必要はないが,問題のありかをはっきりすることは必要だ。発表が所期の効果をあげるかとうかの不安はある。

阿 利

 ローマ字関係のかたの意見が強いので,だんだんにローマ字のほうに引っぱってゆくというデマがだいぶある。御参考までに申し上げる。

中 島

 起草中の白書は,自慢するわけではないが,非常に客観的に書いてある。ローマ字運動があることは書いても,良い悪いは書いてない。急進的のかたからはなまぬるいと言われ,保守的のかたにはあるいは爆弾的かもしれないが,そうかといって中道ではない。わたくしはみなさんの意見をとりまとめた役をしただけであるが,原文についてじゅうぶん検討していただければ,いろいろの心配はないと思う。

舟 橋

 青野氏の説は使節団の報告と関係はないか。

青 野

 関係はない。4〜5年前から聞いていいる。

宮沢副会長

 ローマ字調査審議会の仕事を継続することと関係はないか。

青 野

 それとは関係がない。雑誌社の集まりでの話であるが,教科書のなかに「日本のことばはローマ字でなければならぬ」という思想があるということを聞いた。

土岐会長

 国定か検定か。

原課長

 国定の教科書にはそういことは書いてない。

石 黒

 国定のはわたくしが書いたが,そういうことは書いてない。

安 藤

 ローマ字教育は国語教育の一環としてやっているのである。

藤 森

 そういう新事態が審議会に生じたとすれば,白書のなかに態度をはっ きりして,疑惑を起こさせないようにするのが安全だ。

中 島

 その問題は白書にある。こういう事態が生じたことは当然書かれると 思う。

時 枝

 ローマ字調査審議会がなにをしていたか知らないが,今後国語審議会に分科会としてはいったため,仕事の内容が変ったような問題がある。

宮沢副会長

 今までのローマ字調査審議会はなくなったのである。新しい方針でやればいい。

時 枝

 世間の人は今までやってきたことを見ているので,そのまま引き継ぐのではないかという誤解をする。

土岐会長

 おそらくそのまま受け継がれるであろうが,しかし,分科会の審議で調整されてゆくと思う。

佐々木

 ローマ字調査審議会のことを白書のなかに入れるについて,国語をローマナイズする前提でないことを強調せずに,単に受け継ぐというだけでは,国民の誤解を深める。起草委員のかたに,はっきり書いていただきたい。

土岐会長

 この機会にザックバランに申し上げる。わたくし自身長い間ローマ字の問題に関係してきた。それが国語審議会の会長になったため,その方向にもってゆくのではないかというように観察されるとすれば,それは審議会というものの機能や運営に対する認識が足りないと思う。別々の問題で二つの立場は区別している。4〜5年前からのデマならわたくしに関係も責任もないが,最近の話ならその点誤解のないようにしていただきたい。

 ローマ字調査審議会は御破算になったのか。規則をそのまま引き継ぐのか。

宮沢副会長

 審議会が多すぎるから,なくなったのである。

原課長

 形式的には,文部省設置法のなかの「ローマ字調査審議会」を削除し国語審議会の設置目的を「国語およびローマ字に関する事項を調査審議すること」と改める。廃止によってローマ字調査審議会の委員は自然退職になる。

 形式はそうだが,内容はどうか。

宮沢副会長

 そういうことは国語審議会の新しい問題として取り扱えばいい。

 「国語およびローマ字……」というのは変である。

原課長

 ローマ字調査審議会令のなかの「ローマ字による国語教育」と「ローマ字による国語の表記法」の二つを合わせて「ローマ字」といったわけで,法律によって国語審議会がプラスになり,膨張したのである。

 「国語およびローマ字」ということばは法律で決まってしまったのか。

原課長

 そうである。

土岐会長

 「ローマ字」というのは国語表記法の一つと考えればいい。「国語およびローマ字」というのは多少おかしな文句であるが,国語問題の審議のなかにローマ字の事項が加わるのである。

原課長

 設置法の改正に伴い,政令の改正案は,きょう御了承願ったことを内容として検討する。4月1日から実施になるので,総会を開く時間がないから,会長・副会長に御相談して決めたい。

松 坂

 国語審議会の規則には,おかしなことばを使わないようにしてもらいたい。

原課長

 政令第3項に「ローマ字に関する事項」と入れ,「分科審議会(仮 称)を置く」を加えるつもりである。  従来の政令の内容には触れない。

 了承した。

土岐会長

 きょうはこれで散会とする。

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