国語施策・日本語教育

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議事 全体の組立について

藤 森

 相当微に入り細にわたって書いてあり,政策面についてはこれでよいが,実施面についてはなにも触れていないのはどうかと思う。これでは国語審議会と国語研究所とが同じに見られるおそれがある。

土岐会長

 この審議要領は,国語問題のあり方がどこにあるかをとらえ,そのあとでどれが重要かを審議会で取り出して審議をしていこうというのである。実施面は,取り上げた議題によって,そのつど考えていくべきで,一つの型にはまって,すべてのものに一定の方式でいくものではない。そのため第1草案にあった「当面の議題」という項も,省いたのである。

松 坂

 おほねおりのことはよくわかって,ありがたく拝見した。しかし,これだけのことを書くなら,ぜひ追加したいことが三つある。

  1.  国民大衆の国語能力が驚くべく乏しいということ。10ページに読み書き能力のことに触れてはいるが,もっと具体的に,その程度を説明すること。
  2.  タイプライタ・ライノタイプ・モノタイプなどについて,能率の問題が少しも取り上げてない。アメリカでは文字は打つもので書くものではない。1分間に700字も打つのに,邦文タイプはわずかに20字,この能率の差に国民能力のハンディキャップがある。具体案は別として,問題の所在を見のがしてはならない。
  3.  同音語の問題については,同音異義の新造語は望ましくないという触れ方だけである。すでにある語も整理されなければならない。

土岐会長

 松坂委員の発言は,審議の重点をどこに置くかということである。同音語については国語に対する感覚が乏しいと述べてあり,能率化のことも15ページに触れている。

松 坂

 具体案を揚げよというのではない。現状分析のまっさきに掲げなければならないことが,ほんの申しわけ的なのがふつごうである。

大 野

 全体の組立・並べ方を普通の論文の方式に従ってはどうか。
すなわち

  1.  国語に関する諸機関(草案の4)
  2.  国語問題の歴史的展望(草案の3)
  3.  国語の現状の分析(草案の2)
  4.  国語審議会の性格と任務(草案の1)
  5.  国語問題審議の基準(草案の5)

の順序とする。

田 口

 大野委員の意見は報告書等には常識的でいいが,国語は機関が左右するのではなく,国民各人がもっているものであるという意味から,原案のとおりでいいと思う。

土岐会長

 原案の順序を変える案と,原案のままと,二つの対立意見が出たが,これから決めていきたい。

颯 田

 これをどういう所へ,どういう目的で使うか,つまりあてはなにであるかによって決まると思う。

土岐会長

 中島委員から説明していただきたい。

中 島

 これは委員の心構えのもので,どこに出すかは,やはり会で決めてもらいたい。

土岐会長

 国語問題に対して国民一般が関心をもっていない。国語審議会は,現在の国民の意識を高めるためにも,こういうものが必要と考えた。またわれわれがどういう態度で国語問題を審議していくか,問題整理のためでもある。一つのもので両方の役にたてようという考えである。

颯 田

 そういう目的ならば原案のままでよい。

大 野

 爆弾を落して注意を喚起するためなら,このままでよい。ただ歴史的展望が現状のあとになったりするのは,普通の論文の形ならおかしい。

土岐会長

 組立については原案のままでよろしいか。

石 黒

 国民一般に理解させようとするなら,用字・用語など相当やさしく納得のいく形になしうると思う。発表の対象を決めたら,もっと効果的にすることができると思う。

土岐会長

 発表についてはこの前の総会でも,逆効果・危険・賛成と諸説があったが,ともかくもものを見ようということだった。もし発表していいとなれば,新聞にも載せてもらえるよう努力するし,国語課ではパンフレットにして,しかるべき方面に頒布すると言っている。全然秘密のうちに葬られることはない。

時 枝

 国語審議会の性格・任務について,内部から疑義があった。これはけっきょく世間が疑義をもっていることの反映であるから,白書を起草するには,世の中の疑義を解くことを念頭において書いた。そのことを前提として審議していただきたい。

土岐会長

 順序を変更することに意見はないか。

石 黒

 せっかく発表するなら,効果のあるような形式でありたい。用字・用語なども再考していただきたい。

土岐会長

 10人の委員の意見をまとめたので,全体としてバランスのとれない点がある。多少字句の修正をする余裕を残して決議してくだされば,あとでなおす。しかしその結果が期待にそうようになるかどうか,わからないが,われわれを信用していただきたい。全体の組立が承認していただけるなら,部分的の審議に移ってもいいか。(異議なし)

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