国語施策・日本語教育

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議事 国語問題審議要領と4部会の発足

田 口

 第5草案を見ると,この前の総会で決めた内容とうち違っている部分がある。たとえば発音の問題,美しい発声法などについて出した意見を入れることになっていたと了解していたのにはいっていない。これでは国語審議会ではなく,やはり国字審議会になってしまう。会の運営を公正にしてもらいたい。

土岐会長

 会の運営は,もちろん公正でなければならない。国語問題審議要領の審議に入る前に,部会についておはかりしたい。部会は臨時にいわゆる白書をまとめる部会のほかに,1月30日の総会で四つの部会を設けることに決まった。このうち,どの部会から発足するか,それとも同時に発足するか。

颯 田

 ローマ字の会は,4部会の列にはいることはできないのか。

原課長

 従来のローマ字調査審議会には,部会が三つあった。今回国語審議会のなかにその仕事を取り入れるにあたって,従来の仕事の関係もあるので,特に分科会として,そのなかに,つづり方・分ち書きの部会がおかれるはずである。

宮沢副会長

 ローマ字は仕事が大きいので,これが国語審議会にはいった際今のような形になった。また,定員とか予算などの関係もあると思う。

土岐会長

 今の件は,すでに前の総会で決まったのもであるから,御了解ずみのことと思う。4部会の発足について御意見を伺いたい。

時 枝

 各部会はそれぞれ関連性があるから,同時に発足してはいかが。

土岐会長

 それでは4部会は同時に発足することにしよう。部会の期日は,いずれ国語課から御連絡する。

前 田

 わたくしは,「公用文と法律用語」の部会に属しているが,実用文の研究ということがたいせつだと思う。公用文は実用文に含まれる意味の部会とされたい。なお,漢字の部会に対しての希望だが,当用漢字の数をふやすというような方向はとってもらいたくない。むしろ範囲をせばめて,その内容の研究という方向に進まれたい。

土岐会長

 公用文のなかに実用文も含まれているという了解のもとに仕事を進めてゆく。
 次に,国語問題審議要領は,この前の総会で,文章の統一整理の仕事を倉石委員にお願いすることに決まった。その結果が第5草案だが,倉石委員はそれを第4草案の整理と了解されたため,第4草案審議のときに出された新しい意見や修正は,そのままの形では織りこまれてはいない。御意見は総会後に文書で出していただくことにしたので,前総会での御意見が第5草案にはいっているというふうにはならなかった。これが田口委員の最初の御質問に関係する事情である。各委員の文書による意見は,別に印刷して,お手もとに配ってある。これの取扱についての御意見を伺いたい。

安 藤

 国語問題審議要領は,世間でも早く見たいと期待している。文書の修正などであまり時日を延ばすのは得策ではない。内容についての意見は,もう出し尽したと考えられる。それを整理して早く発表できるようにしたい。

田 口

 最後の案は,もう一度総会にかけてほしい。

宮沢副会長

 それは,文書による意見以外の点でもの意味か。

田 口

 そうだ。

時 枝

 起草委員のひとりとして,事情と希望とを述べたい。文書による意見を織りこんで最後案にするまでに至らなかったのは遺憾であるが,文書で出た意見は,まだ総会で審議されていないのだから,この点は切り離して審議されたい。

石 黒

 新しい意見のほかに,第4草案から省かれた部分がある。

倉 石

 わたくしの関係した第5草案は,総会にすぐ出るものとは了解していなかった。起草委員の間で検討したいと考えたのである。

時 枝

 あとから追加された意見について考えを述べたい。文書による迫加意見は,どんなふうに入れたらよいか問題になった。第1に田口委員の発音の問題だが,美しい声というのはどういうことになるのか,美しいの目標はなにであるか。
 次に,石黒委員提出の読み書き能力調査は,その出所が明らかにされていないので,審議会としては困る。数字についての解釈も問題である。
 松坂委員の能率の問題は,あまり詳しすぎるので,全部入れると,他の問題とのバランスの点で困る。
 服部委員のは,例であるから問題はない。

田 口

 今までは,すべて美しいとか芸術的とかいう目標を示したものが欠けていたと思う。次に第4草案中の話しことばの項にある演劇・映画・放送などにわたっての次に,正確な発音と発声法のことを入れるはずであったのが抜けている。なお,第5草案6ページ,“句とう点”のトウをかなで書いてあるのはどういうわけか。

時 枝

 芸術的ということは,発音のみのことではなく,文体や用語についてもいわれることで,ことばの点ではむしろ正確ということが,第1である。

石 黒

 「読み書き能力調査によれば」ということだけでは,不正確だというならば,「国立教育研究所の読み書き能力調査委員会の調査によれば」とすればよい。この調査は,これまで行われたもののなかでは信頼できるものと思う。国語審議会にその点で迷惑をかけることはないと思う。

松 坂

 わたくしの提出した地名・人名の関係は,表記法のなかに入れるほうが適当だと思う。みな入れてほしいと思うが,文章を短くすることは起草委員を信頼する。

服部(静)

 「外国語から翻訳されたものは」という部分を省けばよいと思う。

土岐会長

 以上のような各委員の意見を適当に取り入れて,もう一度中島・時枝・原の3委員と倉石委員をわずらわしたい。

田 口

 もし,わたくしの意見をそのまま入れないのならば,aの部分を抜いてもらいたい。aを入れると,どうしても発生法の説明をしなくてはならなくなる。それから,音韻の点も省いてほしい。

時 枝

 発声と発音とは違うのか。

田 口

 違う。

颯 田

 発声は音として出なくても,のどで出るものでもよいのだ。

藤 森

 「句とう点」のトウの問題なら,「くぎり符号」でもよいと思う。

石 黒

 読み書き能力調査の数字についての報告は,急ぐという国語課長からの話で書いたのに,第5草案には全然はいっていないのは,はじめからこれを省くつもりで処理されたように思われるが,どうか。

土岐会長

 内容の価値いかんではなく,草案のなかに入れると,考え方がいろいろに見られるというような理由もあったと思う。

石 黒

 田口委員も発言されたように,国語審議会は,ガラス張りでなければいけないのに,一部の人の間でかってに省くということは不明朗だ。

時 枝

 調査報告の出所が明らかでなかったので,一応省くことになったのだ。

土岐会長

 今までの御意見をじゅうぶん取り入れ,なおよく練ってもらった上で総会にかけることにする。

(約10分間休憩)

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